美竹蘭「陽が落ちて」青葉モカ「夜が明けたら、また」
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3: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/09/03(日) 19:35:52.06 ID:6LMiOYr90



 人生で初めての救急車体験は、あんまり余裕がなかったからよく覚えていない。病院まで運ばれて、そこそこ長い診察を受けて、右腕が骨折していると伝えられた。痛みも酷かったし、そうだろうなーと思いながらぼんやりと説明を受けていた。

 一通りのあれそれが終わった時にはもう夜の遅い時間。それなのに面会オーケーになった瞬間、Afterglowのみんなは病室になだれ込んできた。ちょっと心配性すぎだと思う。

「あれ、みんなこんな時間まで待ってたのー?」

「……あのケガだし、気になって」

 ぶっきらぼうな蘭の言葉が、でも一番に返ってきた。顔色は悪いなんてものじゃなくて、ほんと、心配かけてるなぁって思う以上にこっちが心配になる。それでもこうしてのんきなことを言っていれば、少しくらいは楽になってくれるかな。

 一拍遅れでみんなの視線があたしの右腕に集まっていくのを感じる。大仰に固定されたギプスを見て、ニュアンスは違えど表情を曇らせたのは誰も一緒だった。

「どーしたの、みんな。そんなにじーっと見て」

「茶化すようなことじゃないだろ。……その腕じゃギターも無理だろうし、バンドの活動の話もしないとな、って話してたんだ」

「……その、ね。ちょうどこの間、次のガルジャムにも出ないかって声がかかったの」

 絶対に避けては通れない、二か月後のガルジャムの話。骨折を告げられたその時から答えは決めてあった。だけど、もうちょっとだけ。返答の先にあるやり取りが目に浮かぶからこそ、もうちょっととぼけていたかった。

「おー、やったね。やっぱり前回のガルジャムで評判よかったのがプラスだったのかなぁ」

「かもね。……あの時は、いい演奏ができたと思う」

「そうだねっ。蘭ちゃんが作った新曲も、すっごくいい曲だったし!」

「……でも、その…………今回は、どうしよう……?」

 ひーちゃんは本当に、空気が読めないというか、逆に空気を読んでるというか。何の解決にもならないって分かってて、それでも先延ばしにしていたかった話をこうやってすぐ蒸し返してしまう。

 でも、そろそろあたしも覚悟を決めて話そうと思う。お医者さんからの長々とした説明を聞き流しながら考えてたこと、ぜんぶ。




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