270: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/09/30(土) 10:24:20.17 ID:ktVirj9S0
「あら加蓮ちゃん、半身浴やってみた?」
「あー、あれ一応やってみたんですけど、すごい汗かいて、しばらくぐったりしてましたよ、あはは」
「体力を消耗するものね、わかるわ。最初のうちは短い時間から慣らしていったほうがいいわよ」
「そうですね、そうします」
後日、加蓮は事務所で会った瑞樹とそんな会話を交わした。
しかしこれは口先だけの社交辞令であり、加蓮は再び半身浴に挑むつもりはなかった。
変に心配されても面倒だからと、誰にも相談することはなかったが、あんな恐ろしい体験をするには、一度だけで充分だ。
「……って、思ってたはずなんだけどねぇ」
あの不思議な出来事から1週間が経過したその日、加蓮は浴槽に張ったお湯の温度を調整していた。
日が経って恐怖心が薄れてきたのか、あれはいったいなんだったんだろうという、好奇心が上回った。
全く怖くないと言えば嘘になるけど、あのときは戻ろうと思って戻れたんだから、おそらく危険はないはずだ。
お湯の温度も量もほぼ同じ、時間帯もおよそ同じぐらいにした。
浴槽に入り、脚を伸ばす。あとはどうしたんだっけ? そうそう、目を閉じるんだったかな。
現実的に考えれば、あれはきっとうたた寝でもして、短い夢を観ていたのだろう。
それならそれでいい、夢だったと確認できれば納得もいくし、怖くもなくなる――んだけど、
――まさかホントにできちゃうとはね。
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