「藤原肇がそれを割る日」
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42:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:11:57.38 ID:pXJ6Ifkk0
「いつ捨てようかなって、ずーっと思ってはいるんだけどね」

 夕美さんは、そう言って苦笑してみせます。

「安物だったし、壊れちゃってるし、捨てちゃっても構わないんだけどさ。
 やっぱこういうの、何を植えたヤツだっていう思い出もあるから」


「夕美さんは、物も大切にされる優しい人ですね」
「優柔不断、ってのをすごく遠まわしに言ってたりしない? それ」

 疑るように覗き込む夕美さんの目を、私はやんわりと否定します。


「そう言えば、最初に岡山に来られた時」

 ふと、私は気になっていたことを思い出しました。

「備前焼も旅の目的と言っていましたが……夕美さんは、本当は何をお探しだったんですか?」

「本当は、って?」
「ご両親用の湯呑みが、本当にお求めの物だったのかなって」
「あぁ〜……」

 微妙に鋭いところを突くなぁ、と、夕美さんはまた苦笑しました。


「本当はね、植木鉢が欲しかったんだ……ネットで見てさ。備前焼の植木鉢」



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