94:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:32:51.51 ID:xy6mxyet0
「……とにかく、この事件が人間の内通者と深海棲艦の共同作戦であった事は十二分に理解した。
しかし、一番分からないのは、前任司令官が深海棲艦側の内通者になったことだ。正直、信じられない」
――そうだ、司令官という艦娘を守り、国民の命を守る職務に就く者がそんな事をするなんて考えられない。
それに深海側について何のメリットがあるのだ。
あの容姿端麗な前任司令官が深海側の人間だったとして、そちら側についた納得できる理由を知りたい。
95:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:33:59.06 ID:xy6mxyet0
「思うように動作しない?」
「はい。一般の人が艦娘の艤装を着けるとどうなるかは知ってますよね?」
「ええ。普通に沈んでいきます。自沈して前進することもできない」
「前任司令官もそれに近かったようです。
もちろん適合者ではあるので、一応航行はできたようですが、少しでも気が緩むと自沈していったそうです。
96:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:35:09.36 ID:xy6mxyet0
「はい。しかし、あの事件以降は、司令官が自分の性別を偽ることは軍規によって正式に禁止されました。
そんな訳で一部の司令部では変な騒ぎが起きたみたいですが……」
「そ、そうなんですか……。で、話を戻しますが、前任司令官は自分のコンプレックスが原因で深海側に回ったという事になりますかね?」
「まあ、そうなります。調査委の報告によると、前任司令官は事件前に自身が女である事や艦娘のなり損ないであった事が泊地内の艦娘にばれて、自身の自尊心を著しく傷つけられたことから、深海棲艦側と結託して事件を起こしたのではないかとあります」
「いやいや、自分のプライド傷つけられただけでそんな事しますか?」
97:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:36:01.94 ID:xy6mxyet0
「それは分かりませんが、事件の一週間前に吹雪中佐から柱島に苦情があったのです。
『司令官の過去や性別を偽る事は卑怯です。何故これが許されるのですか? 軍規で司令官の性別や過去を偽る事を禁止してください』……と」
「……いかにも真面目な子が多いと言われる吹雪らしい訴えですね。
ですが、これはちょっとキツイ。私も自分の過去は偽りたいですし……」
「え、ええ……。取り敢えずそんな経緯で、前任司令官はこの事件を首謀し、深海棲艦側に寝返ったということです」
98:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:36:57.03 ID:xy6mxyet0
「つまり、泊地日誌、司令官の日記や日誌、艦娘日誌や日記が消えていたということかな?」
「おお、よく分かりましたね。仰るとおりです。事件の事を隠すかのごとく、明石中佐の工廠日誌と日記以外は全て無くなっていました。
それ以外はなんともないのです。深海側に渡ったら不味い暗号表や戦術書、艦娘解体新書などの機密文書も全て残っておりました。
ただ、この泊地で起きた出来事が分かる日誌や日記系だけが全て無くなっていたのです」
「どおりで、調査委の報告が曖昧模糊としておりすっきりしない訳か……」
99:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:38:10.72 ID:xy6mxyet0
「ええ、聞き込み調査でもかなり落ち込んでおられました……。
結局のところ、所詮は小さな泊地で起きた事件の調査でしたから調査委の予算が底を尽きるのも早く、納得しないままで調査結果をまとめざるを得なかったのです。
それで、あの作戦や新戦術を考案出来る者、艦娘の行動を把握できる者は前任司令官しかおらず、加えて作戦遂行中に失踪したという行為の異常性を決め手として、事件を起こした経緯の確たる証拠や事件経過の記録には乏しいが、首謀者は前任司令官以外考えられないと言った結論に至ったのです」
私は電話越しにそれを聞き、窓の方を向いて相手に悟られぬようため息を吐いた。
100:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:39:16.32 ID:xy6mxyet0
「……もしもし? 少佐、聞こえてますか?」
「あ、ああ。すいません、考え事をしてました。因みにだが、海城さんはこの事件についてどう思ってますか?」
「私ですか? 立場としては前任司令官が首謀者という調査委の考えと同じです。
ただ、この事件についてはこれで調査を終わりにする事はできません。
この事件は深海棲艦と人間が繋がっているので、事件の全容を解明することは敵の内情を知る事にも繋がります。
101:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:40:22.48 ID:xy6mxyet0
「昇進と言う報酬が有ろうと無かろうと、私はやりますよ。
心に渦巻くこのもやもやを晴らしたいですし。
それに、これは此処のあとを継ぐ者の使命でしょう」
「そう言って頂けて光栄です。それでは、今後も事件解明に向けて協力お願いします。
あと、この話は明石中佐にはしても良いですが、他の艦娘にはしないで下さい。
102:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:41:37.20 ID:xy6mxyet0
それから、私は椅子を回転させ、司令室の窓を眺める。
ふと、愛々傘に目がいく。
シレイ/フブキ、そしてその上にそれを隠そうとする傷跡。
これは恥ずかしくなったからじゃなくて、仲違いしたからなのだろうか。
103:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:42:30.55 ID:xy6mxyet0
「司令、しつれいしまーす!」
「ただいま〜」
少しして、五月雨と妹が司令室に報告に来た。
「お疲れ、対潜哨戒はどうだった?」
104:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:43:08.63 ID:xy6mxyet0
「しっ、司令官? 司令官? 私の事をじろじろ見てどうしたんですか?? 怪我なんてしてないですよ?」
「あ、ああ、いや、自分でも気付かないうちに怪我してたりすることってあるからさ……」
「そうなんですか? でも、心配してくれてありがとうございますっ!!」
「いやいやー五月雨ちゃん、司令官の言葉にだまされちゃだめだって〜」
「何言ってるんだ北上、私の言葉に嘘はないぞー」
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