102:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:41:37.20 ID:xy6mxyet0
それから、私は椅子を回転させ、司令室の窓を眺める。
ふと、愛々傘に目がいく。
シレイ/フブキ、そしてその上にそれを隠そうとする傷跡。
これは恥ずかしくなったからじゃなくて、仲違いしたからなのだろうか。
たしかに、大好きだった者に自分のコンプレックスを触れられ卑怯者扱いされるのは辛い事だと思う。
同時に頭にくるかもしれない。
……だが、それだけであんな事をするのだろうか。
ふと、テレビで流れたこれまでの事件の数々を思い出す。
どれもよくよく考えればくだらない理由で他人をあやめている。
でも当事者にとって、それは重大事なのだろう。
彼女もそうだったのだろうか。
優秀だったにも関わらず、艦娘としてはなり損ないで、
それをとてもコンプレックスに思っていて、
少しでも悪い様に触れたら爆発するようなものだったのであろうか。
私は、紙袋から指輪の小箱を取り出して開け、初月司令官と吹雪の写真を見る。
初月司令官は優しく笑っている。
その笑顔の裏側に何を抱えていたのだろうか。
嫉妬? 憎しみ? 劣等感?
分からない。
――と、窓から二人が哨戒を終えて砂浜に上がってくるのが見えた。
陸に上がったとたんに五月雨は砂浜にどじっと転ぶ。それを妹が笑って、手を差し伸べていた。
私は写真を小箱に戻し、それを紙袋に仕舞う。それから、二人が司令室に報告しに来るのを待ったのであった。
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