86:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:22:13.38 ID:xy6mxyet0
「なるほど。やはり、この司令部はいわく付きだった訳ですか。
そして、北上が着任した日の電報に、『司令官は、毎日一度は本人事部に泊池の状況を報告・打電すること』と言ったような命令をしたのは、貴職が『その事』について調査しているからなんですね」
「ええ、その通りです。これについては今後も、続けて頂きたいと思います」
「分かりました。それならば、私も『その事』について知りたい。覚悟はできています。そして、出来る限り協力したい所存です」
「それは助かります。では、貴殿が着任する二ヶ月前の五月十日に起きた『豊後水道沖夜戦事件』について話していきます」
87:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:22:54.91 ID:xy6mxyet0
「はい。事件を簡単に説明すると、当時の五神島司令が作戦遂行中に失踪し、本泊地に所属していた七隻の艦娘のうち六隻が豊後水道沖で轟沈した事件です」
驚愕。
私がここに着任する前にそんな悲惨な事件が起きていたのか。
そして、その七隻のうち生き残った一隻というのが、非戦闘艦である明石中佐と言う事は言われなくても分かった。
中佐はそんな辛い過去を背負っていたのか……。
88:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:23:40.06 ID:xy6mxyet0
「……五神島司令、もしもし? 聞こえてますか?」
「あ、ああ、すいません。で、続けてください」
「はい、この事件については、不可解な点が多いのですが、とりあえず、事件事故調査委員会の報告をもとに事件を説明していきます」
89:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:25:12.74 ID:xy6mxyet0
受話器越しに海城が紙を捲る音が聞こえ、彼は説明を始めた。
「まず、当時の戦力ですが、五神島には六隻の戦闘艦と一隻の非戦闘艦が在籍していました。
非戦闘艦の一隻は明石中佐で、お分かりの通り唯一の生き残りです。
そして戦闘艦の六隻は、当時の階級でそれぞれ吹雪中佐、秋月少佐、五月雨少佐、大井中佐、摩耶少佐、瑞鶴大佐です」
「一世代前の司令部にも駆逐艦五月雨がいた訳ですか」
90:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:26:07.90 ID:xy6mxyet0
「そんな泊地がなぜ……?」
「それをこれから説明します。調査委によると〜〜〜〜」
それから海城は「豊後水道沖夜戦事件」の説明を長々延々とはじめた。
彼の話の要点をまとめると次の通りである。……要点をまとめても長いので、そこは理解いただきたい。
91:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:28:49.57 ID:xy6mxyet0
一、五月十日十七時半頃、『瑞鶴(改二)』を旗艦として『摩耶(改二)』と『秋月(改)』が豊後水道沖で哨戒活動中に、軽母ヌ級四隻とロ級三隻、敵の艦載機群を発見、これを迎撃。
二、瑞鶴は烈風改と流星改を展開し、敵艦載機と敵空母と対峙。
しかし、上がった敵機六十余は、通常ならば脳筋にも編隊に集中攻撃を仕掛けるが、今回は碁盤目状に大きく分散して飛行。
撃墜するのは容易くなるが、秋月や摩耶の得意の対空砲による一斉掃討ができず非効率的な戦闘を強いられた。
92:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:30:10.96 ID:xy6mxyet0
要点説明の筈がかなり長くなったが、これが「豊後水道沖夜戦事件」なのである。
「……本当に悲惨な事件だ。しかし、話を聞く限り、ひょっこり誰かしら生きてそうな気はしますが。
誰も轟沈を確認していない訳ですし」
「それは有り得ません。生存しているのに伝えない事は重大な軍規違反です。
捜索活動だって税金で行われている訳ですし、そもそも生きている事を隠すメリットがありません」
93:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:31:45.76 ID:xy6mxyet0
「前任者が内通者……そんなことがあるのか……」
「調査委の調査した結果では、ですが。
ただ確かに言える事は、事件日の深海棲艦側と前任司令官の動きは常軌を逸していました」
「……そうですね。人間側と深海側が結託しないと起こり得ない事が起きてますし……。
普通の深海棲艦なら戦闘時間を延ばして潜水艦に有利な夜戦で潰そうなんて策は考えつかない筈。
94:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:32:51.51 ID:xy6mxyet0
「……とにかく、この事件が人間の内通者と深海棲艦の共同作戦であった事は十二分に理解した。
しかし、一番分からないのは、前任司令官が深海棲艦側の内通者になったことだ。正直、信じられない」
――そうだ、司令官という艦娘を守り、国民の命を守る職務に就く者がそんな事をするなんて考えられない。
それに深海側について何のメリットがあるのだ。
あの容姿端麗な前任司令官が深海側の人間だったとして、そちら側についた納得できる理由を知りたい。
95:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:33:59.06 ID:xy6mxyet0
「思うように動作しない?」
「はい。一般の人が艦娘の艤装を着けるとどうなるかは知ってますよね?」
「ええ。普通に沈んでいきます。自沈して前進することもできない」
「前任司令官もそれに近かったようです。
もちろん適合者ではあるので、一応航行はできたようですが、少しでも気が緩むと自沈していったそうです。
96:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:35:09.36 ID:xy6mxyet0
「はい。しかし、あの事件以降は、司令官が自分の性別を偽ることは軍規によって正式に禁止されました。
そんな訳で一部の司令部では変な騒ぎが起きたみたいですが……」
「そ、そうなんですか……。で、話を戻しますが、前任司令官は自分のコンプレックスが原因で深海側に回ったという事になりますかね?」
「まあ、そうなります。調査委の報告によると、前任司令官は事件前に自身が女である事や艦娘のなり損ないであった事が泊地内の艦娘にばれて、自身の自尊心を著しく傷つけられたことから、深海棲艦側と結託して事件を起こしたのではないかとあります」
「いやいや、自分のプライド傷つけられただけでそんな事しますか?」
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