22: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/07/02(日) 17:17:24.95 ID:fE64C4yw0
「エミリー?」
声に違和感を覚えて顔を覗き込もうとしたが帽子を盾にして塞がれた。震えている肩と声は気のせいじゃない。
「み、見ないでください!」
23: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/07/02(日) 17:19:27.00 ID:fE64C4yw0
帽子に一粒、染みこんだ涙。それをぎゅうと握って誤魔化そうとするエミリーはひどく愛おしかった。
「大和撫子、なれませんでしたね」
なんでこの子はこんなにも。
24: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/07/02(日) 17:22:21.23 ID:fE64C4yw0
その夢を叶えるために今まで隣にいた。支えてきたつもりだった。それでも、叶えたと思わせてやれなかったのは完全に自分の不甲斐なさのせい。
だけど、エミリーがそう思えなかったとしても。
「仕掛け人さまはこんなに支えてくださったのに。ご贔屓さま方もたくん応援して下さったのに。私は、わたしは……!」
25: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/07/02(日) 17:23:50.10 ID:fE64C4yw0
そう言って頭をくしゃっとする。エミリーは帽子を顔から外して顔を上げる。涙で濡れた顔と腫れた目。
「しかけ、にん、さま……?」
「エミリーは大和撫子だったよ」
26: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/07/02(日) 17:26:04.98 ID:fE64C4yw0
「エミリーはそう思わないかもしれないけど、エミリーは自分にとって大和撫子だったよ」
山に修行へ行こうとした日のこと。三歩後ろを歩こうとした日のこと。横文字を使おうとしなかったこと。初めて出会った日のこと。全部大事な思い出で、宝物で。
そんな思い出を積み重ねていくうちに、エミリーが自分にとってかけがえのない存在になっていた。
気がついたときにはもう、エミリーは大和撫子になっていた。
27: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/07/02(日) 17:31:55.17 ID:fE64C4yw0
それを皮切りにしてしゃくりあげるように涙をこぼす。ロビーの隅から聞こえる少女の泣き声とそれを見ているだけの自分を世間は痛い目で見てくる。
落ち着いてきたあたりで帽子をエミリーの頭に被せる。エミリーは、真っ直ぐ見つめる。そっと手を伸ばして、目元の涙を拭ってくれた。
「……仕掛け人さまも大和撫子ですね」
28: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/07/02(日) 17:33:24.54 ID:fE64C4yw0
* * *
搭乗口の近くまでエミリーを送る。このゲートをくぐれば、多分エミリーが日本に来ない限り会うことはないだろう。
「エミリー……」
29: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/07/02(日) 17:35:41.15 ID:fE64C4yw0
「前略、仕掛け人さま」
あぁ、どうか、もう振り返らないでほしい。
きっとこんな顔を見たらエミリーは悲しんでしまうから。
30: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/07/02(日) 17:38:44.85 ID:fE64C4yw0
8あたりまでメール欄のところ変になってました。申し訳ありません。
忘れがちですがエミリーちゃんはまだ13歳なんですよね……。
三年後を想像して滾ってしまった結果です。エミリーちゃんいいです……。
31:名無しNIPPER[sage]
2017/07/02(日) 17:43:32.71 ID:l+DzvRs/o
おつ!
32: ◆NdBxVzEDf6[sage]
2017/07/02(日) 18:04:25.38 ID:hHQObHQQ0
せつないなあ、現実だったら帰国ってこともあるのかねえ
乙です
>>2
エミリー(16) Da/Pr
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