百合子「仲良しショッピングデート」
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1:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:34:05.11 ID:mht4CVJf0
​ぽちぽち、かちかち。
私はボタンをリズミカルに弾いていく。それに応じて液晶内のキャラクターは滑らかに動く……はずだった。
しかし、現実は厳しいもの。思い通り動くはずの私のキャラクターは、隣人の手によって操作されるキャラクターの猛攻を受けてなすがままにされてしまう。

「むむむ。……だけど、こんなものが私の全力だと思わないでね! 追い詰められた私の秘めたる力を見せてあげ――――」
「うん。そうすると、思った……。確殺コンボ入れるね…………?」

ズガガッ、ドドッ、ドバーンッ!
一発逆転を狙う、私の大ぶりでスタイリッシュな一撃は無駄のないタイミングで回避され、そして生まれた隙に迅速なコマンド操作による精錬された猛攻を叩き込まれてしまった。
快音とともに私のキャラクターは画面外に飛び出していった。無念……。
くはーっ、よくわからない声が口から洩れてしまう。

「杏奈ちゃん、やっぱり強いよー。全然かなわないや」

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2:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:34:51.27 ID:mht4CVJf0
同じソファに背を預ける隣人改め、杏奈ちゃんにそう話しかける。
私の言葉に、杏奈ちゃんはいつもの桃色のウサギパーカーを深くかぶってしまった。だけどそれは私と目を合わせようとしていないのではなく、照れているんだと思う。可愛い……、と口にしないで個々のの中で思った。

「百合子さんは…………自分のしたいコマンドだけじゃなくて、相手のコマンドも警戒したほうがいいと思う……よ?」
「うう、耳が痛い」
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:35:22.81 ID:mht4CVJf0
「杏奈ちゃん、めちゃくちゃ眠そうだね」
「うん……。実は、夜更かしして……練習してた…………」

うつらうつら、そんな表現がこれ以上にないほど、杏奈ちゃんの表情にはあうようだ。

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:35:56.79 ID:mht4CVJf0
………………あれ?
いつもなら杏奈ちゃんが何も言ってこない。いつもだったら「暑苦しい…………」とか「どきどきするから……駄目…………」とか言ってくるのに。
どうしたんだろう杏奈ちゃん。

抱きついたままなので杏奈ちゃんの表情はうかがえない。耳元に、ささやくように声を出す……なにか、卑猥な気配がする文字列だ、なんて思わなくもない。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:36:22.39 ID:mht4CVJf0
当たり前だけど、返答はない。
だけど、そうだったら嬉しいな。
答えは杏奈ちゃんのみぞ知る、ってね。
ともかく私は体勢のきつそうな杏奈ちゃんを起こさないようにそっと動かして、自分の膝の上に寝かせることにした。所謂膝枕である。ソファの上にそのまま寝かすと首を痛めそうだもんね、他意はないよ。
そして、手持無沙汰な手でなんとなく杏奈ちゃんのうさ耳の目立つ頭を撫でてみる。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:36:49.72 ID:mht4CVJf0
ちょっと前のことだ。
亜利沙さんが私に頼んできたことがあったのだ。

『百合子ちゃん! あなたを杏奈ちゃんの親友と見込んでお願いがあります!』

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:37:18.11 ID:mht4CVJf0

『それと杏奈ちゃんにどう言う関係が』
『実はですね。これを杏奈ちゃんにあげて欲しいんです』
『…………? 自分であげれば良いんじゃないですか?』

以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:39:12.37 ID:mht4CVJf0
「もちろん断ったからね。安心して、杏奈ちゃん」
「ぐぅ…………えへへ……」

亜利沙さんもよくあんなこと思いつくなぁ。杏奈ちゃんの使用済み枕カバー、なんてさ。
まあ確かに、そんなものがあったら自分の枕につけて寝るたびに杏奈ちゃんの匂いを堪能するけどね。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:39:49.32 ID:mht4CVJf0
「感触を楽しむのは、セーフだから……!」
「んぎゅ………………」

杏奈ちゃんが苦しそうな声を出したので指を離す。するとすぐに甘やかな表情に戻っていった。……私はなんということをしてしまったのか。杏奈ちゃんの眠りを妨げるなど……うう、反省。
しかし、触るのがダメとなると……嗅ぐしか、ない。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:40:22.43 ID:mht4CVJf0

「百合子、さん……?」
「ひいぃ!?」

あと数ミリ、そんな距離を残して私は潜水艦のごとく浮上させられた。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:40:56.66 ID:mht4CVJf0
「もうこんな時間!?」
「杏奈、二、三時間も寝てたんだ…………」

私の思っていた数倍は時針が回っていたようで、よく見たら窓の外は夜の帳が下りてきていました。
門限もあるし、早く帰らないと!
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:41:22.46 ID:mht4CVJf0
「百合子さん……。さっき、杏奈に顔を近づけて、何してたの…………?」
「え、えぇ!?」

まさかの追求。
杏奈ちゃん、寝ぼけてて誤魔化せるかな、と軽く見ていたけれどまったくの検討違いのよう。
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:41:52.05 ID:mht4CVJf0
ど直球の言葉が私の胸に突き刺さる。
す、好き。杏奈ちゃんのことを? 好きの定義によるよね。親愛的な意味だったら大好きだけど、恋愛的に好きかは別だし。
ただ一緒にゲームしたり、匂いを嗅いだり、触ったりしたいだけ――――いや、

そうだ。これはもう恋でしかない。
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:42:29.41 ID:mht4CVJf0
「杏奈も、好き……。百合子さんも、だからじっと見てたんだよね…………?」
「あ、えっと」

言わなきゃ。見ていたのはパーカーじゃなくて杏奈ちゃんだって。
だけど、振り絞った度胸が空振りした今の私にはそれは荷が重く……。
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:43:00.46 ID:mht4CVJf0
「……うん! いいね、行こうよ杏奈ちゃん!」

そう言うと杏奈ちゃんは嬉しそうに笑顔を晒してくれた。
お買い物、二人でお買い物。つまり、

以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:43:27.36 ID:mht4CVJf0
「あっ、こっちこっち。杏奈ちゃん!」
「おはよう、百合子さん……。おまたせ…………」

紫陽花色のルーズなワンピースに身を包む天女――――杏奈ちゃんがぱたぱたとこちらへ駆けてくる。可愛い。
今日は待ちに待った土曜日。天気はちょっとイマイチだけど問題ないよね。
以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:43:53.45 ID:mht4CVJf0
普通に考えればあのパーカーが売ってるお店だけど、それだとすぐにこので、デートが終わっちゃう。
私としてはもっと長引かせたいところ。
そんな風に思っていると、 杏奈ちゃんの視線がある広告に集まっているのを見つけた。
何見てるんだろう。と、視線を追うと、

以下略 AAS



18:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:44:33.17 ID:mht4CVJf0
「売り切れてる――――!?」
「うん……。結構、人気のやつだから…………」

なんということでしょう。急いで店に向かうも、目の前で最後の一つを掠め取られてしまう惨事に。
そんな……、
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:45:00.20 ID:mht4CVJf0
「もっと言えば……杏奈がもう少し早く此処に来てれば……」
「それを言うなら、私が先にゲーム屋行くなんて言わなければ……」

気まずい沈黙が私たちの間に生まれてしまう。杏奈ちゃんを責めようなんて全然思わないのに、本人からしたらこういうの気にしちゃうよね。
どうにかしないと、と周りを見渡す。すると、
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:45:28.15 ID:mht4CVJf0
「完全にお揃いってわけにはいかなくなっちゃったけど。…………どうかな、このルームウェア」

私が身に纏うのは薄い黄色に、同じく淡い青色のラインの入ったパーカー。
そして頭部には杏奈ちゃんとお揃いで、うさ耳が付いている。
うん、こっちの方がしっくりくるよ。
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[sage]
2017/06/25(日) 22:46:14.41 ID:mht4CVJf0
「ひゃあああああああああ」
「ゆ、百合子さん……! あそこで一旦雨宿りしよ…………!」

杏奈ちゃんが指差す方向に私もついていくことに。目的地は喫茶店。とりあえず屋根のあるところへ、という感じ。
自動ドアの中へ飛び込んでいく。鼻をくすぐるコーヒーの香りが落ち着かせてくれた。
以下略 AAS



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