11: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:39:11.81 ID:6jKTh3xi0
〜〜〜〜〜
翌日。気を取り直して……というわけではありませんが、なるべく昨日のことは気にしないように、事務所へ入りました。
すると、人形の前に1つ、人影が。
12: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:39:58.72 ID:6jKTh3xi0
普段なら一声、挨拶を掛けてから、通り過ぎて奥へと向かうところではあるのですが、今日、それは2つの理由によってできませんでした。
1つ目、この後のお仕事がフレデリカさんと一緒であるということ。
いくら人形の傍にいたくないからといって、ここでフレデリカさんと会話をしないのはあまりにも不自然です。
そして2つ目、これがどちらかといえば大きな理由なのですが。
13: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:40:39.86 ID:6jKTh3xi0
フレデリカさんが言った"この娘"が誰を指しているのかなんて、考えるまでもありません。
"見たくない"という恐怖心は、少しの怖いもの見たさという好奇心と、"確かめなければ"という表現しがたい義務感によって敗れ去りました。
返事をしながら人形の、その目に視線を移すと、その色は。
14: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:41:17.93 ID:6jKTh3xi0
〜〜〜〜〜
「フンフンフフーン♪」
15: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:41:46.85 ID:6jKTh3xi0
「あれー? あのスタジオ、どっちだっけ?」
「そこを左です。……フレデリカさん、私よりも行ってる回数多いですよね?」
16: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:42:28.49 ID:6jKTh3xi0
煙草だ。
ふと浮かんだのは、「煙草を持つ手は、子供の顔の高さだ」なんてどこかのポスターの言葉。
17: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:43:08.09 ID:6jKTh3xi0
「ってうわ! 高い! ナニコレ!?」
そんな私を正気に戻してくれた声は、いつもの調子で、言葉を放り投げています。
18: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:44:03.76 ID:6jKTh3xi0
パッと手が離れた時には、フレデリカさんはもう、前を向いていました。
その後の撮影のことなんて覚えていません。
指示なんて全然聞こえませんでした。足どりも表情も、きっと困らせるくらいに重くて。
19: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:44:32.75 ID:6jKTh3xi0
〜〜〜〜〜
事務所へ向かう足がどんどん鈍いものになっているという自覚はあります。
思わず立ち止まってしまうことがあります。
20: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:45:15.66 ID:6jKTh3xi0
取れた耳。
赤く染まった目。
21: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:45:45.84 ID:6jKTh3xi0
「さてさて〜! こっちから順に、親指〜、人差し指〜、中指〜、薬指〜、小指!」
「1つ1つは無臭なんだけど、全部に塗ったらそれはそれはハッピーで、思わずトリップしちゃう香りに!」
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