16: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/06/14(水) 22:42:28.49 ID:6jKTh3xi0
煙草だ。
ふと浮かんだのは、「煙草を持つ手は、子供の顔の高さだ」なんてどこかのポスターの言葉。
かろうじて相手の体を、すんでのところで避けたばかりの私には、そこから体を動かす余裕なんてなくて。
眼孔にみるみる迫る赤い光が視界にはあって、頭ばかりがのんきに動いていて。
一瞬、世界がスローモーションになった感覚すら覚えました。
声が出ない。目も瞑れない。
克明に浮かんでしまう結末が、脳にへばりついて離れなくて。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
――嫌
「ありすちゃん! 見て見てあのネックレス! ちょーかわいいと思わない!?」
そのトーンとは不釣合いな程の力強さで、硬直していた私の体が引っ張られました。
さっきまで私の顔が置かれていた場所を通り過ぎる赤色。
乱れた息と煙草の匂いの組み合わせは、私を咳き込む寸前まで追い込んで。
うるさく騒ぐ心臓は、私の全身から噴き出す汗を助長しているかのようです。
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