434: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:36:57.82 ID:4fkctst+O
藍子「なんでしょう?」
茜「お祭りですかね?」
435: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:42:43.22 ID:4fkctst+O
ーー午後二時三十三分から三十九分。
高度一万フィート。そろそろベルト着用サインがオフになるというとき、佐藤が突然席をたった。佐藤は紙袋を手に通路をどんどん進んだ。
436: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:43:54.21 ID:4fkctst+O
客室乗務員は耳障りな高音にふたたび振り返った。耳にした高音からすぐさま連想したのはホイールカッターの回転音だったが、その連想が正しかったことを客室乗務員はその目で確認することとなった。
コックピットと客室を隔てる扉から火花が散っていた。回転刃の高音は不快に変化し、硬い金属を削りとっている。はじめは困惑しているばかりだった乗務員の気持ちに、次第に焦燥感が沸き起こり、彼女はベルトに手をかけた。何度となく扱ってきた座席ベルトに指がもつれ、それが余計に焦燥を生んだ。
437: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:45:17.16 ID:4fkctst+O
ーー午後二時三十九分。
ゲン「手ぇー、震えてんじゃん」
438: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:48:09.99 ID:4fkctst+O
ーー午後二時四十分から五十五分。
コックピットに侵入した佐藤はまず機長の顔を左手で押さえ込み、右手に持ったネイルガンを喉元に押し付け、十秒ほどトリガーを引き続け機長を絶命させた。その様子を見ていた副操縦士は両腕を突き出し、狂ったようにバタバタさせた。佐藤は動き回る副操縦士の両手首をまるで空中にいる蝿を捕らえるかのように片手で押さえ込むと、ぐいっと引っ張り腕を延びきらせ、顔を剥き出しにした。
439: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:49:32.13 ID:4fkctst+O
副操縦士のヘッドセットから航空管制官の声が聞こえる。マイクが拾ったコックピット内の叫び声と航空路からの逸脱について、状況の説明を求めている。ーー……便、航路を外れている。さっきの叫び声のようなものは? コックピット内は現在どのような状況だ? ーー管制官は何度も何度も繰り返し問いかけ続ける。
進路を変更した旅客機がしばらく飛行していると、コックピットから見える景色が海上から港へと変化する。停泊中の大型船や広大な空間にまたがるコンテナターミナルの上を通過し、旅客機は街へと接近していく。
440: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:50:18.14 ID:4fkctst+O
ーー午後二時五十七分。
奥山「ああ……本当にやっちゃうんだ」
441: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:52:09.80 ID:4fkctst+O
ーー午後二時五十八分。
その物体に最初に気づいたのは卯月だった。
442: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:53:31.73 ID:4fkctst+O
ーー午後二時四十分から午後三時。墜落するまでの機内の様子。
午後二時四十分。佐藤によるハイジャックを目撃した客室乗務員はドアまで走り、コックピットの中へ入ろうとする。扉は固定されていて、乗務員ひとりの力ではどうしようもない。しばらくドアと格闘していると取手を握る指の先が真っ赤になり、爪が痛みを訴え始める。乗務員は取手から手を離す。振り返ると、乗客たちが席から身体を乗りだし、自分の方を見ていた。その瞬間、機体がおおきく傾く。ハイジャッカーが旅客機の進路を変更したのだと、乗務員は察知する。
443: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:55:17.52 ID:4fkctst+O
だが、迷っている暇はない。管制官を待たせ、乗務員は状況を説明する。機長と副操縦士がすでに殺害されたことに、乗務員たちは強い衝撃と動揺を覚える。そんな彼女たちを、現場を目撃した乗務員はほとんど叱咤するように、わたしたち客室乗務員は保安要員としてここにいるのだと言い聞かせる。
午後二時四十九分。乗務員たちは行動に移る。コックピットを奪取しなければ生存は叶わない。そのためには乗客たちの協力も必要になってくる。乗務員たちは乗客への状況説明と協力要請を決める。集まった乗務員たちに客室での対応を任せ、代わりの連絡要員を置いた客室乗務員は、新人といっしょに備品が機内を飛び回らないように固定作業を行うことにする。新人の手元はおぼつかない。コーヒーサーバーには淹れたばかりの熱々のコーヒーが注がれていて、揺れにあわせて縁から溢れていた。客室乗務員は荒っぽくならないよう気を落ち着けながらコーヒーを捨てた。その様子を見ていた新人の客室乗務員は、取り返しのつかないミスを犯したかのように青ざめていた。
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