436: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:43:54.21 ID:4fkctst+O
客室乗務員は耳障りな高音にふたたび振り返った。耳にした高音からすぐさま連想したのはホイールカッターの回転音だったが、その連想が正しかったことを客室乗務員はその目で確認することとなった。
コックピットと客室を隔てる扉から火花が散っていた。回転刃の高音は不快に変化し、硬い金属を削りとっている。はじめは困惑しているばかりだった乗務員の気持ちに、次第に焦燥感が沸き起こり、彼女はベルトに手をかけた。何度となく扱ってきた座席ベルトに指がもつれ、それが余計に焦燥を生んだ。
肩にかかったベルトがやっと外れる。客室乗務員は立ち上がろうとした瞬間、バランスを崩し、床に膝をついた。通路の壁に手を当て体勢を立て直し、乗務員は顔をあげる。
その瞬間、乗務員は恐怖に凍りついた。彼女の目に入ったのは、鍵が切断されひとりでに開いたコックピットへのドアと、そこへ入っていく帽子の男の後ろ姿だった。
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