新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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249: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:03:24.26 ID:7K73HWKCO

小梅が祝田通りのほうを指差した。プロデューサーは小梅の指の先にある建物に目を向けた。地上二十六階建てのビルがあった。中央合同庁舎第五号館。厚生労働省はこの庁舎に入居していた。


小梅「コ、コンビニに行くだけだから……大丈夫、だよね?」
以下略 AAS



250: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:04:23.89 ID:7K73HWKCO

武内P「白坂さん……ありがとうございます」


小梅の眼がすこしまるくなった。すこしの沈黙のあと、小梅は口を開いた。
以下略 AAS



251: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:06:38.64 ID:7K73HWKCO

誰もいないモニタールームは暗闇に包まれている。戸崎は機器が並ぶ空間へと続く階段に無言のまま腰をおろし、細く引き締まった眼をモニターに向けている。正面の巨大モニターには亜人擁護思想者の個人情報がリアルタイムで更新されていて、この二日間でその数は飛躍的に増えている。


下村「今日ですね」
以下略 AAS



252: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:08:37.30 ID:7K73HWKCO

省前に人々は集まらなかった。いるのは興味本位で携帯を片手に動画を撮ろうとする数人。閑散とした様子を見て、手に持っていた携帯はもう閉まっている。取材に来たテレビクルーも手持ち無沙汰だ。


戸崎「あんなことで人間は動かない。それに、ウェブ上には亜人の実験動画のフェイクなど山ほどある」
以下略 AAS



253: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:11:42.70 ID:7K73HWKCO

小梅は口を開きかけたが、なにも言わないまま車に乗り込んだ。通りの向こうでは頭にタオルを巻いた男が電話している。その男はなにかにぶつかったようによろめいた。男はうしろを確認したがなにもいない。男からすこし離れた位置に半袖パーカーの少年がいてフードをかぶっている。彼は男が前に向き直ったあとも首をめぐらしてなにかを目線で追うようにしていた。

窓から通りの様子を見ていた小梅は、フードの少年は自分の乗っている車を眼で追ったのかと思った。そのときだった。いつもそばにいる「あの子」がなにかに反応を示している。

以下略 AAS



254: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:13:34.81 ID:7K73HWKCO

なぜなら、黒い幽霊は亜人にしか見えないからだ。

この黒い幽霊は手の代わりに翼を持っていて、翼を広げたときの全長は五メートルにもなる。頭部は首の断面がそのままになったかのようで、先にいくにしたがって太くなっている。

以下略 AAS



255: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:14:45.57 ID:7K73HWKCO

田中の幽霊が厚労省の正面に立ち、ぞくぞくと集会にやってくる黒い幽霊たちを待ち受けている。田中は佐藤の言葉を思い出す。


佐藤 (田中君、この作戦は人間を集めるためのものじゃない。亜人を集めるためのものだ)
以下略 AAS



256: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:16:27.84 ID:7K73HWKCO

田中の幽霊の周囲に集会参加者の幽霊たちが集まってくる。田中はかれらに話しかける。


IBM(田中)『よく来てくれた。これから本当の集合場所を教える』
以下略 AAS



257: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:18:33.09 ID:7K73HWKCO

食卓にあがったカレーライスは、いままで家で食べてきたものよりルーの色が濃かった。半分くらいは黒色といった感じのカレーは見た目の通り味も濃く、口に入れた瞬間、芳香な匂いがひろがる。具材のひき肉をごはんといっしょに口の中でかき混ぜると、ほんとうにおいしい。


山中「作りすぎちゃったねえ。こりゃ、夕飯もカレーだね」
以下略 AAS



258: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:20:02.91 ID:7K73HWKCO

昼食のあと、皿洗いや雑事をすませ、ふたりは居間でテレビを見て過ごした。BSのチャンネルではむかしのアメリカ映画(『男性の好きなスポーツ』というタイトルだった)が放送されていて、なんとなしに眺めていたが、スクーターを運転する男が突如出現してきたクマとぶつかると、なぜかクマが人間と入れ替わりスクーターを運転するというシーンを見て、永井はおもわず吹き出した。

映画がおわったあと、チャンネルを地上波にかえる。この時間帯はたいていワイドショーしかやってない。話題は厚生労働省前での集会。集会に参加する人間はまったくいなかった。永井は厚労省前の空いた空間を見ながら、亜人は集まっているのだろうな、と思う。黒い幽霊をつかえば、カメラに映る心配もない。佐藤は亜人の仲間を集め、研究所襲撃より大規模な事件を起こすだろう。おそらく、より多くの人間が死ぬことになるだろう。



259: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:21:30.49 ID:7K73HWKCO

永井はあくびをする。冷たい麦茶を一口のんで、手のひらで畳の感触を確かめる。永井は平和だなあ、とほっと一息つく。佐藤が何をしようが、何人殺そうがそんなことはどうでもよく、可能な限りこのセーブゾーンに長く留まりたいと思う。

研究所から脱出するため河に飛び込んだあの日から丸一日かけて、永井はいまいる山村のちかくまで流されてきた。山中のおばあちゃんと出会ったのは偶然であり、幸運な出来事だった。なぜならおばあちゃんは、永井の正体を知ったうえで自宅に招き食事と寝床を提供してくれたからだ。永井はおばあちゃんの善意と提供してくれるものに感謝の気持ちをおぼえた。このふたつはとても大事だ。

以下略 AAS



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