新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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150: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:37:20.88 ID:5HbT9nK2O
美波は画面を凝視したまま、自分自身の肉体を締め付けるかのように身体を強張らせた。期待というより願望していた光景とテレビからもたらされる映像はまるで違っていた。リモコンでチャンネルを変えると、別の放送局が別の角度で同じ中継映像を届けている。カメラはゲートのすぐ横から記者の群れを掻き分けて進むワゴン車を見下ろしている。カメラは赤いテールランプを追いかけてパンしたが、その映像はスタジオに返され見れなくなった。美波はまたチャンネルを変えた。まるで機械を演じているかのような動きだ。美波は作動する部分と固定した部分を身体で分割しながら、いまこの夜だけでなくその後何日も同じ動作を反復していた。



151: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:39:40.17 ID:5HbT9nK2O
永井は意識を取り戻し眼は光を受容したが、視界は白一色に染まり何も見えなかった。眼に覆いをかけられているせいだった。瞼に触れる覆いの感触からそれが包帯であることがわかり、さらに全身に包帯がきつく巻かれていることがだんだんとわかってきた。腕に力を入れてみたが、すこし震えただけで上がらない。全身が手術台の上で固定されていた。永井がもがき身を捩るあいだ、自分の喉から出てくる音が声でなくなっていることに気がついた。喉はただの風穴になっていて、隙間風のような空気が漏れ出てくる音しか出さない。声帯が切り取られていたせいだった。


研究員1「トラック事故の現場に残された左腕のDNAと一致」

以下略 AAS



152: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:41:23.49 ID:5HbT9nK2O
切断した左腕を渡してから、研究員は丸のこを金切り鋏に持ち替えた。


研究員3「今度は脳の活動を観察しながらだ」

以下略 AAS



153: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:42:34.06 ID:5HbT9nK2O
背後からがりっという硬く耳障りな音がして振り向くと、手術室の中を見通せる見学室とのあいだに設置されたガラスに爪痕のような四本の線があった。このガラスは強化ガラスだった。ガラスの向こうにいる人物は影になっていて、そのうちの一人の腕が上がりスピーカーのスイッチを入れた。『どうした?』という声に研究員は聞き返した。


研究員3「いや……ガラスの傷、最初からありましたっけ?」

以下略 AAS



154: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:43:44.20 ID:5HbT9nK2O
下村の視線の向いている場所は、研究者や自分を計るかのように見つめる戸崎とは別のところだった。実験中の研究員たちの手前、だれもいないはずの空間に下村は眼を集中させている。


下村「……はい」

以下略 AAS



155: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:45:07.42 ID:5HbT9nK2O
もっと痛みを与えて観察しよう、という研究者の声がして、実際にスピーカーから指示を与えていた。黒い幽霊は何もかもに無関心な様子でぼおっと突っ立ったままで、ぼそぼそと呟きを発している。


戸崎「なぜだ……」

以下略 AAS



156: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:46:04.42 ID:5HbT9nK2O
下村「いま自覚してないとすると『幼少期からずっと』ということになります。長期間干渉しあわないまま過ごした結果、彼と黒い幽霊のリンクは、極めて不安定なのかもしれません……例えるなら、電波状況の悪いところで通話する感じでしょうか。ですから、いずれは彼らを攻撃する可能性が……」

戸崎「いまは?」

下村「え?」
以下略 AAS



157: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:47:19.12 ID:5HbT9nK2O

戸崎「……見てる……か……」


だがすぐに戸崎の視線は細く鋭いものに戻り、透明なガラスの向こうの戸崎には見えない幽霊に、忌々しいものを見つめるときのような侮蔑と憎しみに染まった眼を突きつけた。
以下略 AAS



158: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:48:28.22 ID:5HbT9nK2O
戸崎「きみがここでそうしていられるのは、私が秘密裏にかくまっているからにすぎない。しっかり働けよ。さもなくば……きみもああなる」


下村は頭を上げられなかった。じわじわと恐怖によって玉のような汗が滲んできた。実験室の音声がスピーカーから聞こえてくる。実験道具が出す高音と肉が掻き分けられる湿った音、低く響き渡る苦痛の音声が恐ろしいハーモニーを生んでいた。

以下略 AAS



159: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:49:31.08 ID:5HbT9nK2O
研究者1「反応がにぶくなってきたな」

研究者2「リセットするか」


以下略 AAS



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