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【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】
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448 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:44:46.35 ID:slb2WKgBo
N特尉「曽大佐。我々海軍の本分をお忘れか」
曽大佐「本分……!? そんなもの、深海棲艦の撃滅以外にないだろう! そうしなければ、海の平和は……」
N特尉「違う。我々の為すべきことは、国民の人命と財産を守ることだ。私は、戦わずに済むのなら、その道を選ぶべきだと考える」
N特尉「人の話を聞かずにすべて否定していたのでは、誰が歩み寄ろうとしているのか、誰が戦おうとしているのか」
N特尉「誰が救いを求めているのか、その声を聴き分けることもできないだろう」
曽大佐「寝ぼけたことを! だったらそのまま寝首を掻かれるがいい! 深海棲艦に裏切られ、そこにいる艦娘に殺されれば良いのだ!」
曽大佐「だいたい、俺だけがこんな目に遭うのは不公平だろう!! 貴様も俺のように、艦娘を沈めた報いを受けなければならんだろう!」
妙高「お言葉ですが、私がいる限り、そのようなことは起こりませんし、起こさせませんよ」
曽大佐「な……!」
妙高「かつてN提督がとった行動は間違いではありましたが、そうせざるを得なかった心情は理解できないほどではありません」
妙高「間違っているのなら正せばよいのです。自分の過ちに向き合い、考えを改め、そのうえで自分にできることをする……」
妙高「それができたからこそ……N提督が信頼に足る人物と私が信じているからこそ、私はN提督の元で働いているのですから」
曽大佐「信頼だと……!?」
449 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:45:31.41 ID:slb2WKgBo
妙高「あなたはどうなのですか? いまここに、この鎮守府に、あなたを心から慕い、信じる艦娘はどれほどいるというのですか!」
N特尉「妙高……」
妙高「あなたが何のために戦っているか。ただ深海棲艦の撃滅だと仰るのなら……」
曽大佐「だ、黙れ黙れ!! 艦娘の分際で、俺に意見するな!! 何が信頼だ!」
コロラド「……初春、そこをどいて」
初春「む?」
コロラド「曽大佐。あなたはどうして、ここまで深海棲艦を打ち倒そうとするの?」ズイ
曽大佐「な……っ、き、貴様! 寄るな!!」ジリッ
コロラド「……」ズイッ
曽大佐「よ、寄るんじゃない……! 来るなあ……っ!!」
コロラド「何を恐れているの? 恐れるべきは深海棲艦でしょう?」
曽大佐「来るなと言っているんだあ!!」
コロラド「……」ジッ
曽大佐「ひ……来るな……!」ガタガタ…
450 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:46:17.04 ID:slb2WKgBo
コロラド「はぁ……もう、いいわ。そういうことね」
妙高「どういうことです?」
コロラド「ここで話すべきことではないわ。あの提督の推測がおそらく当たっていたことだけは、確信できたけど」
妙高「……?」
磯波「あの……曽大佐がおじいさんになったのは、あの島の提督さんの仕業、と言うことになるんですか?」
初春「うむ。あの島に住まう者の中には、艦娘でも深海棲艦でもない、特別な力を持つ者たちがおってのう」
初春「その者たちから、提督があの玉手箱の作り方を教わったと聞いておる」
朧「深海棲艦からもいろいろ教えてもらった、って聞いてたけど?」
初春「うむ、確か、かーすどがす? に、深海の成分を練り込んだと聞いておるが」」
磯波「深海の成分……?」
初雪「……竜宮城が海底にあるから、とか……?」
妙高「関連性がないと言えないのが、なんとも言えませんね……」
451 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:47:01.41 ID:slb2WKgBo
N特尉「しかし……これからどうしたものかな。曽大佐との話が終わったら、鎮守府の実態を調べて結果を持ちかえる予定だったが」
長門改二「ま、待ってくれ。特務大尉殿は、調査が終わったら帰ると言うのか?」
N特尉「ああ、そうだが……」
長門改二「では、曽提督は……私たちはどうなるんだ?」
初春「そんなものは、おぬしたちは好きにすれば良かろう」
矢矧改二「で、でも、曽提督をあんな風にしたのはあなたたちでしょう!?」
初春「責任を取れと?」
矢矧改二「そ、そういうわけじゃ……」
初春「ふむ……わらわが責任をとれと言うのなら、取ってやらんでもないぞ?」
初春「この男のそっ首をこの場で撥ねてやろうという、後始末的な意味でなぁ……?」ドロリ
矢矧改二「な……!!」
N特尉「初春!!」
初春「まあ、それはそこのN特尉が許してはおかんじゃろうから、夢のまた夢でしかないがの」ハァ…
N特尉「あまり焦らせてくれるな。ため息をつきたいのはこっちだ」ハァ…
妙高「しかしこれは、曽大佐がワンマンですべてを決定してきたために、他に鎮守府の運営ができる艦娘がいなくなったということですか」
N特尉「この鎮守府の大淀はどうしたんだ」
矢矧改二「……通信室にいます。ただ、私たちが彼女と話したことはありません」
452 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:47:46.49 ID:slb2WKgBo
N特尉「とりあえず、案内してくれないか。引き続き、この鎮守府の実情の調査もしたい」
矢矧改二「わかりました……長門さん、一緒に行きませんか?」
長門改二「いや……すまない。私はまだここに残る」
長門改二「ここに来た艦娘に、曽提督がなぜこんなことになったのか、説明しなければならないし」
長門改二「その曽提督も、私が見ていないと何をするかわからないからな……」
曽大佐「……」ガタガタ…
N特尉「……」
長門改二「恐れながら、特務大尉殿。この鎮守府を見回ってきた後で良いので、我々はどうすればよいか、ご指示をいただきたい」
長門改二「少なくとも貴殿の感覚では、この鎮守府の規律は行き過ぎているところがある、と見ているのだろう?」
N特尉「……そうだな」
長門改二「恥ずかしながら、我々は貴殿の言う『普通』の感覚が分からない。そこからご教示いただけると助かる……!」
N特尉「承知した。本営に掛け合おう」
長門改二「……よろしく、頼む」ペコリ
長門改二「それから、大淀だが……あの曽提督をして厄介と評されている。彼女から話を聞くのは、一筋縄ではいかないかもしれないぞ」
N特尉「わかった。忠告感謝する」
453 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:48:31.81 ID:slb2WKgBo
* その後 *
* 曽大佐鎮守府内 工廠へ続く廊下 *
曽大佐の艦娘たち「「……」」ポカーン
幼大和&鳳翔改二「♪おーてーてー、つーないでー♪」
幼朝潮&夕立改二「♪のーみーちーをーゆーけぇーばー♪」
加賀改二「……」セキメン
幼赤城「かがしゃん? かがしゃんは、おしえてもらったおうたをうたわないんですか?」クビカシゲ
加賀改二(小首を傾げるさまがいちいち可愛らしい……)キューン
加賀改二「いえ……さすがに、少し恥ず……注目を集めてしまっていますから」
幼赤城「そうなんですか?」
夕立改二「加賀さんも一緒に歌うといいっぽい!」
加賀改二「こういう形で目立つのには、私は慣れていないんです」
鳳翔改二「さ、工廠につきましたよ。金剛さん」
金剛改二「ええ。明石ー!」
明石「ひいっ! み、みみみみなさまお揃いでっ!?」ビクビクッ!
454 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:49:16.32 ID:slb2WKgBo
金剛改二「あー、明石? もう、そんなに怯えなくていいのよ?」
明石「こ、ここ、今度はどんな無理難題……じゃなくて、ご用件でっ!?」ヘコヘコ
幼榛名「こんごうおねえさまの、おててをちりょうしてほしいんです!」
明石「へっ? ……ど、どちらさまで……?」
幼榛名「? はるなが、わかりませんか?」クビカシゲ
明石「は、榛名さ……えええええ?」
幼陸奥「ねえ。よくみたら、あかしもかおいろわるいわね?」
鳳翔改二「えっ? ……言われてみれば、確かに……」ジッ
明石「……ほ、鳳翔さん……?」
幼榛名「こんごうおねえさま。おててのちりょうは、はるながやります」
金剛改二「!」
幼榛名「あかしさんは、おやすみしたほうがよくないですか?」
金剛改二「……榛名は本当に優しい子ね……!」
明石「へっ? えっ?」
455 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:50:01.29 ID:slb2WKgBo
鳳翔改二「確かにこれまで、いろいろ押し付けすぎてきた気がしますし……」
鳳翔改二「いい機会です。明石さんにもゆっくり休んでいただいた方が良さそうですね」
明石「は……?」
鳳翔改二「なにか食べたいものはありますか? 良ければお台所をお借りして、何か作りましょう」
金剛改二「そうね、おかゆとか、何かおなかに食べ物を入れてから、ベッドで休んだ方がいいわね」
明石「……」ポカーン
明石「……」
明石「……」ジワッ
明石「な、なんなんですかあ……いきなり、私を心配するなんて、なにを企んで……」ボロボロボロ
幼大和「あ、あかしさん?」
明石「ちっちゃくなったり、優しくなったり! なにがあったんですかあ! みんなおかしくなっちゃったんですかあ!!」ウエーン!
加賀改二「……明石、ごめんなさい。あなたがそこまで疲弊していたことに、気付けなくて……」
456 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:51:01.27 ID:slb2WKgBo
N特尉「明石も重症だな……怯え切ってるじゃないか」
妙高「曽大佐が絶対権力のようになっていたんですね」
大淀「だから言ったじゃんか。新入り以外にまともな奴なんざこの鎮守府にはいねえってよォ」ケヒヒッ
朧「……こんなにガラの悪い大淀さん、初めて見たんだけど」ヒソヒソ
初雪「うん……目の下のクマもひどいし、すっごいタバコ臭いし」ヒソヒソ
磯波「この分だと、間宮さんも相当なんじゃないでしょうか……」
妙高「以提督鎮守府の間宮さんほどではないにせよ、覚悟した方が良いでしょうね」
N特尉「……ああ、もしもし。さっき話した人員の件、大淀以外も……そうだ、全員だ。ここの艦娘の教育もし直さないとまずいレベルだ」
N特尉「この鎮守府の憲兵および特別警察隊も、一度見直したほうがいい。ああ、そう伝えてくれ」
初春「もう本営に打診しておるようじゃの?」
妙高「ここもこんな有様だったなんて……」アタマオサエ
コロラド「ちょっと、こんなひどい鎮守府、他にもあるの?」
磯波「多いかどうかはわかりかねますが……そういう鎮守府ばかり調査してますね」
コロラド「Oh... Unbeleavable...」
初雪「憲兵さんも、この空気に慣れてるみたいだったのがびっくりした……」
大淀「そっち側もだいたい曽提督に丸め込まれちまってるからなァ」ヒッヒッ
N特尉「これだから特警にしても憲兵にしても、定期的に人員を入れ替えるように進言してるんだがな……」
妙高「長期間、同じ職場で任務を続けていると、どうしても慣れて馴れ合いが発生してしまいますからね」
幼赤城「まんしんしてはだめ……って、あたまのなかでいってるのはだれでしょう?」キョロキョロ
加賀改二「あ、赤城さん? 大丈夫ですか?」アセアセ
457 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:51:47.49 ID:slb2WKgBo
* 幕間 ちなみにその後の曽提督鎮守府のながむちゅ *
幼陸奥「わたしは、ながとがたせんかん、にばんかん、むちゅよ」
長門改二「むちゅ!?」ズギャーン!
幼陸奥「あ、あれっ? むちゅ、じゃなくて、わたしは、むちゅよ! ……あ、あれっ??」セキメン
長門改二「ぐ……っ! こ、これは……っ」モンゼツ
幼陸奥「むちゅ……む、ちゅ……うう、うまく、いえないよぅ……?」ナミダメ
長門改二「ぐぁああああ! か、かっ、かわっ……」ノケゾリ
長門改二「い、いや、ここで倒れるわけには……っ! む、陸奥! もう少しだぞ、がんばれ!」
幼陸奥「わ、わたしは、ながとがたせんかん、にばんかん、むちゅよーっ!!」
長門改二「ぐわああああ可愛すぎるうううううう!!!」バターン
幼陸奥「きゃあっ!? な、ながと!? だいじょうぶ!?」オロオロ
長門改二「だ……大丈夫だ……大丈夫だとも」ヨロヨロ
長門改二「……陸奥。慌てなくていい、自分のお名前を、ちゃんと言えるよう、練習しような?」ニコ…
幼陸奥「ながと……うん、むちゅ、がんばるわね!」ニコッ
長門改二「……ああ……心が洗われていく……」キラキラキラキラ…
幼赤城「ながとしゃんはどうしたんでしょう?」クビカシゲ
加賀改二(気持ちはわかるわ……)
458 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/01/20(土) 21:53:01.40 ID:slb2WKgBo
というわけで今回はここまで。
もうちょっと長くなるかと思いましたが、曽大佐鎮守府編はここまでです。
>427
赤城は「さ」、陸奥は「つ」の発音が覚束ない感じです。あざといですが可愛ければ良いんです。
>428
提督も深海棲艦になるついでに女性化させてますので、本当に何でもありでやらせてもらっています。
459 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/01/25(木) 00:09:45.70 ID:z+KblGpx0
お疲れ様です。
幼児化、大人化、加えて深海棲艦化、TS…あと洗脳。
…長いことやってるおかげでいくらでもタグ付けられそう。
460 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/01/31(水) 15:06:28.25 ID:sXZRkN5u0
大人吹雪たちの伏線なのかな?
461 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/02/11(日) 21:40:21.59 ID:BwvVJYMA0
保守点検
462 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:24:44.39 ID:quzN+98xo
続きです。
今回は墓場島のメンバーは提督以外お休みです。
463 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:25:49.48 ID:quzN+98xo
* 墓場島沖 海軍巡視船内 *
扉<Knock knock !
コロラド「コロラドよ! ××島の提督を連れてきたわ!」Bang !
X大佐「ああ、よく来てくれたね。提督、いつも来てもらってありがとう」
提督「ん? X大佐も同席してんのか。あんたも毎度毎度呼ばれて大変だな」
X大佐「僕は構わないよ。仕事でもあるし、僕が望んで来ているわけだしね」
コロラド「え? ちょっと、X大佐と知り合いなの!?」
提督「おう。海軍で深海棲艦との共存を目指してて、俺と仲良くしようとしてる変わり者だ」
コロラド「あなたには言われたくないんじゃないの!?」
提督「それより、そっちに座ってる若いのが、お前んとこの提督か?」
(ぽっちゃり体系の若い提督がかたかた震えながら座っている)
X大佐「うん。紹介するよ、こちらが川提督だ」
川提督「大変申し訳ありませんでしたああああ!!」ドゲザッ!
コロラド「Admiral !?」
提督「……」
464 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:26:31.60 ID:quzN+98xo
川提督「こここ、この度はご迷惑をおかけして大変申し訳ございません! 曽大佐の指示で艦隊を出したことに間違いはなく……!」ビクビク
川提督「ですので何卒! 何卒、ろ、ろ、老人にするのだけはどうかご勘弁をおおおお!!」プルプルガタガタ
提督「……出会い頭からこれかよ……」アタマオサエ
X大佐「ここに来る前からこんな感じだったよ。大丈夫だって言ったんだけどね」
提督「駄目だなこりゃ……おい」
川提督「は、はい!」
提督「お前と話すことはねえよ。とっとと出てけ」シッシッ
川提督「」
提督「聞こえなかったか? お前と話すことはねえっつったろ。失せろ」ギロリ
川提督「ひ、は、はいいいい!!」ダッシュ!
扉<ガチャドタバターン!
X大佐「……」
提督「ドアも静かに閉めろよな。ったくよぉ……」
コロラド「あんな風に凄んだら、怯えるに決まってるじゃない。ただでさえ、Admiral は Chicken heart なのに」
465 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:27:16.59 ID:quzN+98xo
X大佐「追い出して良かったのかい? いろいろ話を聞けるんじゃないかと思ったんだけど」
提督「いやー、無理だろあれじゃ。怯えてまともに話も出来なさそうだし、俺があいつから聞きたいのはお詫びと言い訳じゃねえんだ」
提督「ま、あいつが曽大佐の指示通りに動いたんなら、その指示通りに動いた現場のコロラドに聞いてもそれまでだしな」
提督「こっちから伝えたい話も、コロラドに持ち帰って伝えてもらえばいいさ。あいつの処分だって俺が口を出す話じゃねえ」
コロラド「ちゃんと話したほうが、あなたが本当はいいひとだってわかってもらえる気がするんだけど?」
提督「そんな理解いらねえよ。そもそも俺はもう人間と関わりたくねえんだ、これ以上面倒増やしたくねえっつうの」
コロラド「でも、ここに来ているってことは、人間との国交を考えてるってことでしょ? 矛盾してると思うんだけど」
提督「関わらないために、わざわざ人間に合わせて不可侵条約なりを結ぼうってんじゃねえか。そのための最低限の接触だ」
コロラド「最初から仲良くすればいいじゃない。私たちのやったことが悪かったとは思うけど、そこまで意固地にならなくても……!」
X大佐「コロラド、そこまでだ。君の言いたいことはわかるが、君の理想と彼の理想は違うんだ」
コロラド「……」
X大佐「あまりしつこいようだと、君にも退席してもらわないといけなくなる」
コロラド「……わ、わかったわよ」
提督「……へぇ、お前もそういう顔できるんだな。頼もしいな」
X大佐「肩書相応のことはできないとね。それに、僕は君との関係は継続していきたいんだ、つまらないことで君を困らせたくない」
提督「そうか」フフッ
466 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:28:01.59 ID:quzN+98xo
X大佐「ところでもう一人、君に会わせたい人がいるんだが、その人とは会ってもらえるかな?」
提督「ん? なんだ、ここには来てないのか?」
X大佐「別件の用事があって、そちらを済ませてからくるそうだよ。それまで川提督から話を聞こうと思ってたんだけど」
提督「あいつは本題までの時間潰しだったか。悪いことしたな」
X大佐「さて、じゃあそれまでの間に……とりあえず曽大佐だけど、彼は入院することになった」
X大佐「背が高くて筋骨隆々、まさに働き盛りの曽大佐が、いきなり?せこけた老人の姿になってたから、海軍では大騒ぎになっててね」
X大佐「これも君の仕業だと聞いたけど、これはもうちょっと、なんとかならなかったのかな?」
提督「なんねえし、したくねえな。俺たちは、一応は海軍と敵対したくないって表明してんだぜ」
提督「それを無視して、深海棲艦だからと言って見境なく攻撃してくるような連中を野放しにしておきたくなかったんだよ」
提督「だいたいあいつら、政府の艦艇が海域にいるのに無許可で武器構えてうろついてんだぞ? 海軍としても示しがつかねえだろ」
X大佐「まあね……けど、まさか曽大佐が艦隊を出すなんて、本当にやるとは思ってもいなかったよ。未だに信じられないな」ハァ
提督「おいおい、呑気な事言ってんじゃねえぞ。以前だって、F提督やらH大将やらが、J少将とかに殺されかけてんだぞ?」
提督「手段を選ばない過激な奴は、これからも出てくるって認識しとけよ。平時ならまだしも、まだ深海棲艦とは戦争中なんだからな」
X大佐「む……そう、だね。気が逸りすぎていたよ、申し訳ない」
467 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:28:46.69 ID:quzN+98xo
コロラド「……ところで提督? あのタマテバコの取り扱いは、ちょっと問題だったんじゃないの?」
コロラド「成功したから良かったものの、途中で開けたり、他の誰かが開けてたりしたらどうする気だったのよ」
提督「そうならないように、初春に説明して、初春に持たせたんだがな」
提督「まさかあっちの大和たちに持たせたってことのほうが想定外だぞ。多分、うまくいくと踏んでの作戦だったんだろうけどよ」
X大佐「その箱なんだけど、曽大佐だけが老化したのはどうしてなんだい?」
提督「理屈を説明するのは面倒臭いが、あの罠の発動には、いろいろ条件を付けてたんだ」
提督「人間にしか開けられない、かつ、人間にしか効果がないように作った。だから転んで箱がその辺を転がっても発動はしない」
コロラド「そんなことできるの!?」
提督「まあな。あまり無差別に効果があると面倒なことになるから、指示役さえ潰せりゃいいと思って俺が調整したんだ」
提督「これで他の連中が萎縮してくれればそれでよし。そうじゃなけりゃあ、次はねえぞ、ってことで思い知らせればいい」
提督「今回みたいな調整はくっそ面倒臭かったから、二度とやりたくねえけど」
コロラド「それじゃ、次は私たちもああなるってこと……!?」ゾッ
X大佐「さすがに次はないと思うよ。これまで僕たちのやり取りに難癖をつけていた将官たちも、曽大佐の写真を見たら絶句してたからね」
提督「そうなって欲しいもんだがな」
コロラド「もう、そうなってるでしょ。私の Admiral なんか怯えてて、まさしくその通りじゃない」ムスッ
468 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:29:32.46 ID:quzN+98xo
扉<コンコンコン
X大佐「!」
祥鳳「X提督、祢大将閣下がお見えになりました」チャッ
X大佐「ああ、ありがとう。どうぞ、お入りください」
祢大将「失礼するよ。川提督は追い出されたようだな?」スッ
妙齢のスーツの女性「……失礼いたします」スッ
コロラド(あら、なかなかダンディなおじさまじゃない……!)
X大佐「祢大将殿。改めて紹介いたします、彼があの墓場島の提督です」
提督「……」ペコリ
X大佐「こちらは川提督艦隊所属の艦娘、コロラドです。彼女は同席してもよろしいんで?」
祢大将「うむ。川提督からもヒアリングしようと思っていたのだ、彼女に代理を務めて貰おう」
X大佐「提督、こちらは祢大将殿。この方が君に会わせたい人と言っていたお方だ」
祢大将「よろしく。こちらは私の秘書だ」
女性→秘書「……」ペコリ
469 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:30:17.23 ID:quzN+98xo
祢大将「病院から電話が来ていて遅くなった。曽大佐の老化現象は君の仕業か……なかなか恐ろしいな」
提督「……」
祢大将「ところで、君のところの妖精は元気かな?」
提督「……!」
コロラド「妖精?」
祢大将「確か彼女は女神妖精だったと記憶しているが……」
提督「あいつは……燃えた島から俺たちを助けるために、力を使って消えた」
祢大将「……そうか。残念だ」
X大佐「……?」
祢大将「私は、彼の連れていた妖精と一度会ったことがある」
祢大将「本営の廊下で、彼の書いた手紙を中将へ届けようとしていたときだったな」
X大佐「そんなことが……?」
提督「あのとき、妖精を見つけてくれたのは、あんただったのか……」
470 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:31:01.46 ID:quzN+98xo
提督「あなたのおかげで、俺はこれまで多くの艦娘たちを助けることができた。感謝する」ペコリ
X大佐「!」
コロラド「!?」
秘書「……」
祢大将「私は妖精の訴えに応じてあげただけだ。その後の話については……まあ、いろいろ驚かされたがね」
コロラド「……」ポカーン
提督「……おい、なんでぼけっとしてんだよ」
コロラド「あなた、ちゃんとお礼を言えるのね?」
X大佐「コロラド……いくらなんでもそれは提督に失礼じゃないか?」
コロラド「わ、悪かったわよ……」
提督「謝んなよ、人物評としては正しいんだ。俺が不愛想で不躾で無礼の極みだってのは、今に始まったことじゃねえ」
コロラド「自分でそこまで言ってちゃ世話ないわよ!?」
提督「ところで、祢大将が俺に会って何を話すんだ? 今の妖精の話は俺も知らなかったが、そのためだけに会いに来たわけじゃねえよな?」
祢大将「H大将の指揮下から離れた曽大佐の後ろ盾になったのは、和中将だ」
提督「!」
471 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:32:01.56 ID:quzN+98xo
祢大将「和中将は徹底的にあの島の存在を忌み嫌っているようでね。彼の不始末ということで、私が詫びに来たのだ」
X大佐「祢大将殿は呉の鎮守府の最高責任者だ。和中将殿は祢大将殿の部下にあたる」
提督「呉の……なるほど。確かに祢大将が出てくるには真っ当な理由だが、俺はそこまでしなくていいと思ってる」
提督「俺たちは俺たちのやり方で、既に落とし前をつけさせてもらった。あんたから謝罪を受け取ったら、こっちも頭を下げなきゃならねえ」
祢大将「……謝罪は不要だと?」
提督「俺は、実際に関与した当事者以外を極力巻き込みたくないんだ。確かに、曽大佐は海軍の人間であり、あんたはその上官だろう」
提督「だが、H大将からこの島の事情を聴いて、H大将の意図に反発し、この島に攻め込むよう艦娘に指示したのは、他ならぬ曽大佐自身だ」
提督「後ろ盾になった和中将が焚きつけたという見方もあるなら、この場に詫びに来るのは和中将であるのが筋だろうし」
提督「むしろ祢大将は、身勝手に振る舞った曽大佐たちに振り回されたにすぎないと思ってる。H大将もな」
祢大将「私も被害者だと言いたいのかね?」
提督「あんたが曽大佐を唆したって言うんなら話は別だが、そうじゃないなら、俺たちに対する加害者とは言えないだろう」
提督「形式上の縁者のために頭を下げなきゃならないというのなら、俺の弟がやったことも、俺が頭を下げなきゃいけなくなる」
提督「そんな理不尽で馬鹿な話はなしだ。祢大将が頭を下げる筋の話じゃないと思ってる」
祢大将「ふむ……では、かつてあの島を取材しようとしたテレビ局の不手際についても、一言あったんだが」
提督「テレビ局……その話も今更だな。わざわざ掘り起こすまでもねえや」
472 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:32:47.55 ID:quzN+98xo
祢大将「なるほど。では、この話はやめにしよう。それとは別に、私からいくつか聞きたいことがあるんだが、いいかね」
提督「? 答えられる範囲でならいいが……」
祢大将「まず、君は、曽大佐についてどう考えているかね。どんな人物だと考えた?」
提督「そうだな……最初は、軍人の家系で、本家から見下されないために過激派になったと考えていたが」
提督「そうじゃなく、艦娘不信……というより艦娘嫌悪に近いか。艦娘に見下されたくない、って意識が強いのかと思っている」
提督「あいつの部下の大和たちの記憶を辿っていくと、深海棲艦の撃滅には積極的だが、その成果を褒めたりもしてないようだし……」
X大佐「記憶?」
提督「ああ。あいつらをまっとうにするために、有害な記憶を切り離してやってたんだよ。その時にあいつらの頭の中を見たんだ」
X大佐「……??」
提督「曽大佐の艦娘に対する態度は一貫して高圧的。口答えしたり、機嫌を損ねたりすると、すぐに殴られる」
提督「逆に艦娘を褒めるようなことは全くなく、何をしてもらっても感謝の言葉すらない。艦娘は完全に道具か召使い扱いだ」
提督「大和の頭の中は特にひどかったな。とにかく戦闘のことしか頭にないし、曽大佐のことを神様みたいに崇めてやがった」
提督「多分、一番最初のときに、曽大佐にこっ酷く怒鳴られてるのがトラウマになってたようだが……」
コロラド「……確か、その記憶を、全部消してあげた結果、ああなっちゃった、ってことだったわね?」
X大佐「???」
473 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:33:46.41 ID:quzN+98xo
提督「ああ、ひどい記憶を持った魂を俺が全部取り除いたんだ。そうしてやったら、体も痩せて細くなっちまってな」
提督「ガリガリじゃあ可哀想だから、代わりに無害な魔力を入れてやって……体も、精神年齢相応に調整してやった」
X大佐「いやいやいや、ちょっと待って……? 確かに、報告には大和や陸奥が海防艦並に幼い姿で帰ってきたって……」
コロラド「それも、提督の仕業なのよ」
X大佐「……深海棲艦がやったんじゃなかったのか」
提督「俺も半分、深海棲艦だぞ?」
X大佐「た、確かにそうだけど……」
祢大将「君が艦娘の記憶を操作して、悪い記憶をすべて消した結果、幼児のような艦娘になった……生まれ変わらせたと言うことか」
提督「別にあいつらを子供にするつもりはなかったんだが、結果的にそうなっちまった、って感じだな」
提督「いくら話が通じないとはいえ、うちにいる艦娘と同じ面した奴を沈めるのも気分が悪いし……」
提督「つっても、どいつもこいつもくっそ悪い面してたからなあ。害悪な部分は残らず切り捨ててやりたかったってのはあるな」
X大佐「……まるで工廠の建造妖精みたいだね、君は……」
提督「あいつらほどじゃねえよ」
コロラド(……なんか、嬉しそうね?)
提督「一応、あいつらをあの姿にした後で、工廠の妖精たちにも診てもらってる」
提督「問題もないって言ってもらえたし、余所に移ったとしても、曽大佐みたいな過激なことは言い出したりしないはずだ」
474 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:34:32.62 ID:quzN+98xo
祢大将「君の言い分だと、艦娘は悪い記憶ばかり持っていたことになるな。曽大佐は、艦娘にそこまでのことをしていたということかな?」
提督「俺はそう思う。あいつはとにかく、艦娘が自分に逆らえないようにしたかった、抑えつけたかったんだと思ってる」
コロラド「私もそう感じたわ。曽大佐に会う前に提督からそのことを事前に聞いてたから、曽大佐にはちょっと強く出てみたのよ」
コロラド「そうしたら、それが気に入らないらしくて、平手打ちされそうになったし」
コロラド「老人になった後も、ちょっと近づいたら来るなって叫ばれたの。あれは、曽大佐に怯まなかった私に怯えていたようにも思えたわ」
提督「……いま思ったんだが。艦娘嫌悪と言ったが、もしかしたら女性嫌悪と言ったほうが正しいかもな」
提督「女ばかりの姉妹の中に男が一人だったんだよな? 俺には姉妹はいないからわからねえが、そいつらに嫌な思い出でも作らされたか」
提督「曽大佐が艦娘だけを嫌ってるのかどうかがわからないから、もし人間の女性も嫌っていたら、の推測だが」
秘書「……」
提督「それからあんた。秘書だって言ってたが、あんたは曽大佐の姉だな?」
コロラド「えっ、そうなの!?」
秘書「……ええ、そうです。よくわかりましたね」
X大佐「曽大佐のお姉さんですか! この度は海軍の不手際で大変申し訳……」ペコリ
祢大将「ああ、いいよX大佐。彼女には事情をすでに話していて、理解もしてもらっている」
X大佐「そうでしたか……同じ海軍の人間として、申し訳ございません」アタマサゲツヅケ
コロラド(私も頭を下げたほうがいいのかしら……)ペコリ
475 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:35:17.42 ID:quzN+98xo
秘書「……私からも、弟の愚行をお詫びいたします。あの子がこうなってしまったのは、私たち姉妹の行いによるものです」ペコリ
祢大将「皆、顔を上げてくれ。私からも曽大佐の話をしよう」
秘書「……」
祢大将「まず、提督の考察はおおよそ当たっている物だと感じている」
祢大将「曽大佐には姉が4人、妹が2人いたのだが、その姉のうちの長女が、こちらの彼女だ」
祢大将「彼女の家柄は軍人の家系。その傍流の長女として生まれた彼女は、軍人になるべく厳しく育てられた」
祢大将「しかし、そのご両親は彼女だけを厳しく育てた一方で、妹たちは自由に育て、甘やかされ続け……」
祢大将「結果として、次女から下はいずれもとんでもない女性に育ってしまっていてね」
祢大将「私がこの件で曽大佐のご家族に事情を話しに行ったのだが……まあ、なかなかのことがあったのだ」
祢大将「なので、彼女が私の秘書をしていることも、あちらには秘密にしている。君たちも、このことは口を滑らせないでもらいたい」
提督「……」
秘書「……」ウツムキ
祢大将「さて、曽大佐が長男として生まれると状況が変わる」
祢大将「今度は長男を立派な軍人にするべく厳しく育て始め、一方の長女は軽視されるようになった」
祢大将「過剰な期待を背負わされて育てられたはずの彼女は、いきなりその荷を取り上げられ、好きに生きろと言われたそうだ」
提督「勝手が過ぎるな。子供は親の玩具じゃねえんだぞ、くそが……」ボソッ
476 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:36:01.56 ID:quzN+98xo
祢大将「彼女が戸惑う一方で、曽大佐は両親から厳しく躾され、我儘な次女たちからは顎で使われ……」
祢大将「そのあとから生まれた妹たちは、次女たちの姿を見てきたせいか、曽大佐に横柄な態度を取るようになったようだ」
コロラド「……なんてこと」
X大佐「では、曽大佐の艦娘に対する態度は、曽大佐の姉や妹たちから受けてきた態度に起因するものだと……?」
秘書「……私は、そう考えています」
コロラド「でも、あなたは、その妹たちとは違ってたんでしょ? 厳しく育てられたって……」
祢大将「長男の誕生を機に、彼女はご両親から一切気にかけてもらえなくなったそうだ」
祢大将「行く予定だった大学進学も取り消され、一切の金を出さないとまで言われたと。その後、彼女は家を出てご家族と縁を切っている」
提督「ってことは、それ以来、曽大佐と接触してねえってことか」
秘書「……」ウナヅキ
提督「じゃあ、曽大佐がああなったのは、あいつの同居家族が原因ってことだな。ま、今となっちゃあ、どうでもいいけどよ」
コロラド「ちょっと!? どうでもいいって……!」
提督「俺にはどうでもいいことだ。とりあえず、これでもう、曽大佐がこっちにちょっかいを出してくる心配はないんだろ?」
コロラド「じ、自分たちが良ければそれでいいの!?」
提督「当たり前だろ? 余所のご家庭の内情に俺が物申せってか? 当事者にしても赤の他人に首を突っ込まれたいと思わねえだろ」
コロラド「そ、それはそうだけど……その言い方だけは、本っ当になんとかならないのかしら」アタマオサエ
477 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:36:46.63 ID:quzN+98xo
提督「とにかく、いまの話が本当なら、そっちの姉貴も関係ない話だろ? 責任感じる必要はどこにもねえんじゃねえの」
祢大将「なるほど。彼はそう言っているが、君はどう思う」
秘書「……」ウツムキ
提督「……つうかそもそも、あんた、何者だ? 退魔師ってのは、いったいどういう肩書なんだ?」
秘書「!!」
提督「字面からして魔を退ける、なんて、ただ事じゃねえよな? やたらと俺を警戒してたのも、そういうことか?」
秘書「……!」ジリッ
提督「うおっ、なんだってんだよ、いきなり身構えやがって。あんたが何もしてこねえなら俺も何もしねえよ、少し落ち着け」
秘書「……」
コロラド「ね、ねえ、お姉さんはどうしていきなり身構えたの?」
祢大将「……彼女をここに連れてきた理由はもうひとつ。提督が危険な存在であるかを確かめるためだ」
提督「ボディガードも兼ねてるってことか?」
祢大将「そうだ。しかし、君は心配いらなさそうだな。彼女の正体を知っても、こちらを襲う気配もないとは」
提督「俺を試してたのか?」
祢大将「海軍大将として、君の存在が危険かどうか、自分の目で見極めなくてはならないと思ってね」
提督「そうかよ……そりゃあご苦労なこって」ハァ…
478 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:37:32.15 ID:quzN+98xo
祢大将「X大佐がえらく信頼しているから、どんな人物かと言うのも気にはなったのだ。彼女が言うには、どうも人間ではないようだが?」
X大佐「はい、彼からは半分深海棲艦だ、と聞いています」
コロラド「あ、私、彼がよく見る深海棲艦や子供になったところを見たことあるわよ」
X大佐「は? ……子供?」
提督「余計な事言うなよ……」
コロラド「いいじゃない、正直なほうがいろいろ信じてもらえるでしょ」
提督「ある程度はそうだけどよ、今のタイミングじゃ話がややこしくなるだけだろ」
提督「そもそもうちの連中は、俺も含めて人間とは距離を置いたほうがいいって奴の方が多いと思ってんだ」
提督「だから、俺たちは人付き合いを最低限にしようっつってんのに、余計な気を使って引っ掻き回すんじゃねえよ」
祢大将「……彼は本当に、戦いを含めて人との交流を避けたいようだな。これなら、戦争に参加したくない、と言う話は本当のようだ」
祢大将「であれば、中将殿からも聞いているが、政府には過度な期待をせぬよう、言って聞かせねばならないな」
提督「そっちもあまり気を使ってくれなくていいぞ? 政府からは、曽大佐艦隊の襲撃の前に、交渉のための書類だけは受け取ってるんだ」
提督「その中に変なことが書いてありゃ、こっちから文句を言うつもりでいる」
祢大将「そうか。まったく接触していないわけではないのだな」
479 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:38:31.39 ID:quzN+98xo
提督「あまりに話が通じない時は、海軍に話を回させてもらうつもりだが、まだ始まったばかりだしな……できる限り、こっちでやるさ」
提督「ただ、曽大佐と俺の弟があんな真似しやがったからな……正直、この後の話がどう転ぶかは予想できねえ」
提督「確か、政府に対する海軍の窓口は中将だったよな?」
X大佐「今はね。現状、与少将も一緒に窓口になってて、そのうちその任を引き継ぐ予定だよ」
提督「与少将の見た目だと舐められそうだな。あいつら、駆逐艦娘のことも、子供だと思って侮ってたらしいからなあ」
提督「極力俺たちでなんとかするが……これから連中がどんな態度取ってくるか、心配なのは変わらねえな」
祢大将「なるほど、政府とは穏便にことを進めようとしている、ということか」
祢大将「であれば、ストレートに訊こう。君は、政府の人間を襲撃している者に心当たりはあるかね?」
提督「は? ……なんだそりゃ?」
祢大将「やはり知らないかね。今の話しぶりから、関わっているようには思えないからこそ訊いたのだが」
X大佐「あの、それはもしや、先日の政府との会談を予定していた官僚が暗殺されかけた事件のことですか?」
提督「ああ!? 誰だよ、そんなことしやがんのは! そこまで俺たちの嫌がらせがしてえのかよ、くそが……!」ウヘェ
コロラド「提督は本当に知らないの?」
提督「知らねえよ! そもそも碌に知らねえ島の外のことを、俺たちがどうやってコントロールしろってんだよ!」
提督「普通に俺たちの妨害をしたい馬鹿がやらかし……」ハッ
X大佐「提督?」
480 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:39:19.00 ID:quzN+98xo
提督「……つうか、もしかしてそれもエフェメラの仕業か? くそ、あいつマジで手あたり次第じゃねえか……?」ブツブツ
秘書「何か知っているのですか?」
提督「……喋ってもいいが、あんたたちが俺の考えを信じられるかどうかがわからねえ」
提督「ただ、俺の考えっつうか予測が正しいなら、政府の人間への襲撃は一時的にでも止まるはずだ」
コロラド「? なにそれ、どういうこと?」
提督「俺が想定した犯人は、お前があの時、俺たちと一緒に見てたあの機械人形だよ」
コロラド「機械……ああ! あの Mechanical blonde girl ね! あいつ、結局何者だったの……?」
提督「……邪悪な神の下僕、ってところか。あいつは、世界を恐怖に陥れる邪悪な神を、この世界に呼び寄せようとしていたんだ」
コロラド「What's !?」
秘書「邪悪な神……!?」
提督「コロラドが言うメカ女……エフェメラって名前なんだが、そいつが俺の考える政府要人の襲撃犯だ」
提督「そいつは、その邪悪な神に作られた下僕でな。俺は、そいつに生まれる前から目をつけられていたらしい」
コロラド「生まれる前から!?」
提督「知ってると思うが、俺は半分深海棲艦だ。そういう特殊な生まれの人間を生贄にして、自分の崇拝する神の復活を企んだらしいんだ」
提督「そのために俺の父親に接触して、一族の繁栄を約束する代わりに、俺をその邪神の餌にしろと持ちかけたんだとよ」
X大佐(それで、提督は家族を忌み嫌っていたのか……)ムムム…
481 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:40:16.68 ID:quzN+98xo
提督「ところが、俺が予想以上にしぶとく生きのびてた。それで、そいつはおそらく計画を途中で変更したんだろう」
提督「俺を、その神に対する餌じゃなく、その神そのもの……そいつの依り代しようとした」
提督「結果的にはそれも失敗して、エフェメラは自滅したんだけどな」
コロラド「そういえば提督って、あの島の住人の一部からマジンサマって呼ばれてたわね?」
秘書「それが、エフェメラの崇拝する邪悪な神の名前ですか」
提督「……まあ、な。あんまり話したくないが、H大将とかにも喋ってるし、今更か……」ハァ
提督「とにかくだ。あいつは、俺に絶望を味わわせて、今以上に人間を憎むように仕向けたかったか……」
提督「あるいは俺たちに人間を殺させて穏便な解決を阻害することで、俺が人間と戦わざるを得ない状況を作りたかったんだろう」
提督「おそらく、政府の人間の暗殺もそのうちの一手だな。人間側に不信感を抱かせるための離間工作とも考えられるし」
提督「そうじゃなければ、エフェメラ自身が俺たちの島に乗り込みやすいように、邪魔になりそうな人間を退場させようとしてた、とかか」
祢大将「……どう思う」
秘書「嘘をついているようではないようです。確信しているわけでもないようですが」
祢大将「彼自身が正確な情報を掴めていないということか」
提督「あまり無理言ってくれんじゃねえよ。俺たちは日本で起きていることなんか全然情報入ってこないんだぞ」
提督「曽大佐の情報も、X大佐たちから善意でもたらされただけで、曽大佐の襲撃に川提督が関わってることすら知らなかったんだ」
提督「祢大将が呉の鎮守府の元締めだってことも、言われなきゃ知らなかったくらいには疎いんだぜ?」
482 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:41:02.09 ID:quzN+98xo
提督「そういう限られた情報のなかで、俺たちと政府の関係を乱そうとする奴と考えて思い当たったのが、そのエフェメラくらいなんだ」
提督「そっちの秘書が魔物退治の専門家だってんだから、そういう関わりがあるのかと思ってそいつを挙げたが……」
提督「それ以外の意味で言えば俺の父親も何を考えているかわからねえ。が、俺はあいつとは縁を切ったし、調べるんならそっちで頼みたい」
提督「国会議員になったって聞いたが、それでどこまで力を持ってるのか、俺は微塵も知らねえからな」
提督「弟が馬脚を現したことと、エフェメラの支援がなくなったことで多少力が削がれたと思いたいが……それも俺も希望的観測だな」
祢大将「なるほど……」
提督「ここまでぶっちゃけたついでだ、俺の考える不確定情報はもうふたつある」
提督「ひとつは、暗躍しているエフェメラが他にいないかどうかだ」
コロラド「え? あいつが他にもいるの?」
提督「魔神が作り出した自動人形であるエフェメラは、複数体いる。俺が知っているのは、俺の父親に接触した奴と、俺に味方した奴」
提督「前者はこの前ぶっ壊れて、後者は今のところ行方不明……ほかに何体いるかは俺も知らない」
提督「ただ、今のところエフェメラたちは全員、魔神のために動いてる」
提督「俺の父親に接触したエフェメラがこれまで何をしていたかを考えれば、人間にとって良くない存在であることは間違いないはずだ」
祢大将「……」
483 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:41:48.81 ID:quzN+98xo
提督「それからもうひとつは、俺以外の魔神の存在だ」
秘書「魔神が複数体いると?」
提督「魔神はかつて1柱だったが、封印の際にいくつもに分かたれて封印されたらしい。俺はその魔神の力の一部を持っている」
提督「分かたれた力の残りがどこにあるかはわからない。ついでに言うと、そいつらは絶対に俺とは性格が違うはずだ」
コロラド「絶対になの?」
提督「本来の魔神は、暴力と恐怖で人間を支配してたって聞いてる。だったらそいつも凶暴で残虐な性格って考えるのが自然だろ?」
提督「俺みたいに、いまの仲間たちとおとなしく平穏に暮らすことを望んでいる魔神なんてもののほうがイレギュラーなはずだ」
提督「その俺以外の魔神が、どんな形で現れるのか、それとも現れないのか……そこも俺には予測できない」
秘書「……」
提督「どうだ。こんな不安を煽るだけの絵空事みたいな話、あんたたちは、はいそうですかと信用できるか?」
コロラド「私は、あのエフェメラ? ってやつを見たから信じるわよ。提督が変身したところも見たしね!」
提督「……お前、見たからって信じるの早すぎるな?」
祢大将「普通の人間には見えない妖精も、存在を確認されている。君の話も、全く信用しないわけにはいくまい」
秘書「そうですね……実物を見るまではなんとも言えませんが、聞き流して良い話ではないと思います」
484 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:42:32.04 ID:quzN+98xo
提督「ふーん、信じるってか。それじゃあ、少しだけ見せてやるか……論より証拠だ」ズズ…
秘書「! みなさん、下がってください……!」
X大佐「こ、この寒気は……!?」
ズズズズ…
提督『ふふ……そこまで怯えなくていいんだぜ……?』
秘書「地獄の底から響いてくるような声……あなたが魔神ですか」
提督『……然り。我は、名を穢されし、魔を統べる神』
X大佐「っ!!」
コロラド「う、うわ……口調まで変わってる!?」
祢大将「……名を穢された……?」
提督『我の名は、眩き光に焼き消されたが故、今は提督の名と姿を借りている』
秘書「……」ジリッ
提督『……ああ、まどろっこしいな、この喋り方。もとに戻らせてもらうか』
ズズズズ…
提督「魔神はな、敵対する神に名前を隠されちまったんだよ。だから、俗称だった『魔神』がいまの神の名前さ」
秘書「……」
485 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:43:32.73 ID:quzN+98xo
提督「ああ、警戒しなくていいぞ。今のは魔神のことを知って欲しくて、ちょっとだけ力と雰囲気を外に出しただけだ」
提督「今ので魔神の気配は覚えたろ? こんな雰囲気を感じたら、魔神やその息のかかった奴がいると思ってくれ」
提督「俺も、俺以外の魔神の存在には警戒してるんだ。もし、やばいと思ったらこっちに連絡してくれていい」
祢大将「協力する、と言うのかね?」
提督「俺個人の判断としては、一応な。まあ、うちの連中の中には嫌がる奴も出てくると思うんだが……」
提督「とにかく、元来の魔神が世界に破壊と恐怖をもたらすというのなら、俺たちの望む平穏も同じように脅かされるはずだ」
提督「お互いどのくらい協力できるか、いざってときに戦力になれるかはわからねえが……」
提督「無駄にいがみ合って足を引っ張り合うのは、この手の話じゃあ絶対に避けるべきだろ?」
提督「俺たちのスタンスは変えてねえ。平時は疎遠にして、必要な時だけ手を組む。思想の違う生き物が共存するにはそれしかねえ」
秘書「……あなたは、本当に、人を害する気はないのですか」
提督「さっきも言ったが、俺たちは、俺たちの穏やかな暮らしを守りたいってだけだ。邪魔する奴が人間かどうかは関係ねえ」
秘書「……本当に、珍しいですね。私が見てきた世の魔物は、人間を食い物にする暴力と欲望の獣ばかりでしたので」
秘書「あなたが、妖精と仲良くしていたというのも、話を聞いた今なら頷けます」
提督「……仲良くできた相手が妖精だけだったってだけさ。その妖精が、俺の親代わりみたいなもんだった」
提督「その妖精が悲しむような真似はしたくない。だから人を必要以上に傷つけもしなかった……魔神の餌にならなかったのはそのおかげだ」
486 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:44:19.34 ID:quzN+98xo
提督「あいつがいなかったら、この場にいることも、艦娘と出会うことも、なかっただろうな」
祢大将「……」
秘書「……」
提督「ただ……その妖精は、深海棲艦の遺骸から作られた弾丸によって、一度この世界から消されている」
X大佐「……」
提督「うちの鎮守府には、その深海棲艦の遺骸から作った武器に苦しめられた艦娘や……」
提督「まさしく武器に作り変えられていた深海棲艦がいるんだ」
X大佐「……軽巡棲姫のことだね?」
提督「ああ。だから、それを作るのに関わった人間どもに限っては、俺は容赦するつもりはねえ」
提督「泣いて許しを請うたとしても、そいつらだけは絶対に許さねえ……!」ズズズ…
コロラド「……」ゾクッ
祢大将「深海棲艦から作った武器と言うと、中将の息子の大佐が研究していた武器のことだな?」
提督「ああ。そいつの一味以外にも、研究している奴らがまだ海軍内のどこかに潜んでいるらしい」
提督「J少将がその辺の情報を持ってたらしいんだが、残念ながらそうと知らずに俺が殺っちまったからな」
提督「海軍の中にそいつらを支援してる連中が潜んでる限りは、俺たちが海軍を無条件に信じることはできねえと思ってくれ」
487 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:45:17.27 ID:quzN+98xo
提督「できれば情報を貰えると助かる。そいつらの首を差し出してくれてもいいが、できればそいつらは俺の手で始末したい」
祢大将「……わかった、心に留めておこう。魔神に関する情報提供、感謝する」
秘書「……」ペコリ
祢大将「さて、他にあるかね?」
提督「窓口はどうする? X大佐に頼んでもいいのか?」
X大佐「うん、それは僕が窓口になろう。祢大将殿もよろしいでしょうか」
祢大将「いいだろう。機を見て連絡しよう」
提督「……」ペコリ
祢大将「では、我々はここでお暇しよう。提督、君と話ができて良かった。今後も、良い距離感の付き合いを期待しているよ」
秘書「……失礼いたします。ご無礼、ご容赦を……」
提督「……」ケイレイ
X大佐「祢大将殿、お時間ありがとうございました」ケイレイ
スタスタ パタン
提督「……ふう、やれやれ」
X大佐「緊張したかい?」
提督「秘書の女がずっとこっちを見張ってたからな」
488 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:46:01.40 ID:quzN+98xo
提督「こっちの言い分無視して何か仕掛けてくるかと思ったが、そんなこともなくてほっとしただけだ」
コロラド「ところで、なんであの女性がタイ・マーシー? ってわかったのよ」
提督「なんとなくわかるんだよ。修験道か何かをやってるみたいだったな、あれは」
コロラド「シュゲン……ふーん……?」
提督(魔神の目を使って略歴を見ただけなんだけどな。本当にあって助かるぜ、この力)
提督(あの女、家を出てから出家しようとしたらしいが、その寺で修行して魔物退治の力を得た、ってことらしいな)
X大佐「そういえば、祢大将が妖精と話ができる女性と知り合いだという噂があったなあ。おそらくあの人がそうなんだろうね」
提督(……となると、妖精を見つけてくれたのも、あの女か。礼を言い損ねたな、失敗したぜ)
X大佐「魔物と戦えるというのも、そういう不思議な力がなにか関係しているのかもしれないね」
コロラド「妖精は Demon じゃないと思うんだけど?」
提督「普通の人間には対応できない、って意味じゃあ、そこまで遠いもんでもないと思うがな」
提督「艦娘だって、人間にしてみりゃ十分にファンタジー世界の産物だろ。存在している以上はそうとも言えなくなったが」
コロラド「……」
489 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:46:46.76 ID:quzN+98xo
提督「ま、なんにせよ、本当なら仲良くできてりゃ種族なんてなんでもいいんだ。面倒臭く考えなくて済む方がいい」
X大佐「……人間がみんな、君みたいな考えを持っていたら、争いが起こらなかったんだろうね」
提督「だといいけどな。世の中そんなに簡単じゃねえからなあ……なあ、X大佐?」
X大佐「何かな?」
提督「お前、さっき俺が魔神の気配を出したとき、怖かったろ?」
X大佐「……それは、そうだね……恐ろしいと思ったよ」
提督「この力のことはできるだけ内密にしてくれよ。たとえその力を使わないと知っていても、それに対抗する力が欲しくなるのが人間なんだ」
X大佐「……」
提督「艦娘だって、軍の規則とか権利とかで縛って人間が『運用』してるだろ。まともに戦ったら艦娘にかなわないから、ってよ」
X大佐「それは……」
提督「残念ながら、世の中、X大佐みたいに艦娘から信用されてる人間ばかりじゃねえ」
提督「お前たちみたいに信頼関係を結べてるならともかく、大多数は……特に一般人は艦娘と縁のない人間ばかりだ」
提督「そいつらにしてみりゃ『それ』を抑え込む組織なりなんなりがないと、恐怖を感じるのは無理もないと思ってる」
X大佐「……」
490 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:47:46.49 ID:quzN+98xo
コロラド「私たちは、海の平和のために戦ってるんだけど」
提督「そうであってもだ。俺たちも同じで、条件付きだが害意がないことを証明……表明し続けないと、人間に寝首を掻かれると思ってる」
提督「そうでなくても、手前の利益のために俺たちを利用しようとしたり、一時の感情で陥れようとしたりする人間は必ず現れるからな」
提督「さっきも言ったが、お前はくれぐれも気を付けとけよ? ただでさえお人好しが過ぎるからな」
X大佐「……ありがとう。やっぱり君は、いい人だね」
提督「ビジネスの一環だよ。あんたに倒れられたら俺も困るってだけの話だ」
提督「とにかく、お前も何か身の回りでやばい話があるなら、こっちに投げとけ。わかる範囲で返事は返してやるからよ」
コロラド「Hm... 私、知ってるわ。こういうのをツンデレって呼ぶのよね?」
提督「つん……?」
X大佐「あははは……ちょっと違うと思うけどね?」
コロラド「……ねえ、そういえば、あなたが海に吹き飛ばした男がいたじゃない。弟なんでしょ? あいつ、どうなったの?」
提督「どうって、吹っ飛ばしてその後は俺も知らねえよ。どうでもいい」
コロラド「どうでも!?」
提督「あんな不始末やってのけたんだ。どのみち、島にはどうやっても来られねえだろ?」
X大佐「彼なら、その後救助されたよ。今は全身打撲で入院してる」
提督「ふーん」
X大佐「……おそらく、H大将殿から詳しい連絡が来るだろう。あとで連絡するよ」
提督「ああ……よろしく頼むぜ」
コロラド「?」
491 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:48:32.49 ID:quzN+98xo
* 退室後 巡視船内通路 *
コロラド「ねえ、提督? 曽大佐と違って、N特務大尉は酷い目に遭わせなかったみたいだけど、それはどうして?」
提督「ん? えーと……N提督の件で言えば、正確には卯月から頼まれたから、だな」
コロラド「ウヅキ?」
提督「あいつの鎮守府にいた駆逐艦娘の一人だ。そいつが、洗脳ツールでおかしくなった仲間と、N提督を助けたいと言ってたんだよ」
コロラド「だから、N特務大尉には何もしなかったの?」
提督「ああ。しょうがねえから、文句言うだけ言って、俺は手は出してねえ」
提督「卯月は、N提督のやり方は間違ってるとは言っていたが、同時に、N提督が故郷を取り戻したい気持ちも、理解できてたようだった」
提督「妙高たちも同じかどうかはわからねえが、そこまで厳しくしなくていいと思ったからこそ、今もああやって補佐してやってんだろう」
コロラド「ふぅん……いい関係なのね。それじゃ、曽大佐とは対応が全然違ってて当然だわ」
提督「まあな。聞いた限りじゃ、曽大佐に従う艦娘はいなかったんだろう?」
コロラド「人の話を聞かない狂信者的な子はいたわよ。問題あり過ぎて、今頃、Dailyの解体任務の候補になってるんじゃないかしら」
提督「……手の施しようがない、ってか?」
コロラド「気の毒だけどね。でも、変な話よね? 私たち艦娘は、艦隊のころの記憶を持ってて、自分の意志がちゃんとあって」
コロラド「建造された時から話ができるって言うのに、どうしてあんな男にほいほい騙されちゃうのかしら」
492 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:49:16.71 ID:quzN+98xo
提督「……確か、お前が聞いてきた話だと、歯向かう艦娘に大声で圧力をかけたんだったよな?」
コロラド「歯向かうっていうか、曽大佐の考えとちょっとでも違うと、怒鳴られてたみたいね? 手が出るのも珍しくないみたいだったわ」
提督「だとしたら、騙されたというより、歪まされた、だな。俺の父親と似たような手口か」
コロラド「え?」
提督「曽大佐は、艦娘が自分に逆らわないように、自分の言うことが絶対だと言い聞かせてきたんだろう」
提督「正しいことも時折混ぜて、艦娘の各々の思想を間違いだと必要以上にぶっ叩く。叩いて叩いて、歪ませたってことだ」
提督「頑なな奴なら反発するかもしれねえが、艦娘が、自分を率いる司令官からそんな態度を取られ続ければ、歪みもするさ」
コロラド「今の話だと、あなたも Moral harassment を受けていたってこと?」
提督「まあ、歪んでるのは違えねえ。曽大佐も、姉妹に貶められて歪んだから女を敵視して、女を自分より下に見ようとしたんだろう」
提督「その結果があの鎮守府なんだろうさ。思えば深海棲艦も女ばっかりだし、そいつらにも屈したくなくて躍起になった、ってとこか?」
コロラド「あなたの父親もそうだったの?」
提督「俺の場合は妖精の存在の全否定から来る俺の全否定だな。俺が折れねえんで、あっちも言い方が過激になったのかもしれねえが……」
提督「当時の父親が何を考えてたかはわかんねえし、今も理解したいとは思わねえ」
提督「そもそも生まれる前に俺を生贄にする宣言してんだぜ。俺の存在はあいつにとっちゃあ……」
コロラド「……提督?」
提督「荷物……邪魔者……? ちょっと違うな……実際、あいつにとって、なんだったんだろうな、俺は」
提督「なんて言えばいいかわからねえや……」
コロラド「……」
493 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/02/11(日) 22:50:02.75 ID:quzN+98xo
今回はここまで。
>459
提督だけで属性過多になっているので、ちょっと設定盛りすぎたかと反省しています。
>460
大人になる路線があるかどうかは、後に提督の口から言わせることにします。
>461
書きためていた分を投下したので、久々に間が開いてしまいました。
またお時間いただきたいので、またよしなにお願い致します。
494 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/04/03(水) 15:59:50.07 ID:Ip9ikeUUO
保守
495 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/04/10(水) 07:04:34.64 ID:bbe07uYk0
wktk
496 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/04/12(金) 23:11:03.63 ID:J+vEcUgT0
半年コースかぁ
497 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/04/14(日) 00:13:05.72 ID:zD8whw1O0
1です。
なんかPCから書き込みどころか
読み込みもできないんですが。
解除されるまで暫時お待ち下さい。
498 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/04/14(日) 23:05:50.17 ID:72t6XhYT0
追いついたー
マヂですか
早く解除されるのを願って続きを全裸待機
499 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/04/21(日) 03:01:32.05 ID:vt0jZKFu0
次で500だなぁ
500 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:34:16.96 ID:H2vvtUtFo
書き込みテスト
501 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:35:01.88 ID:H2vvtUtFo
おお、やっと書き込めた。
ここしばらくまったく書けなくてぐんにょりと悩んでて
ようやくある程度の形になったので投下しようとしたら
書き込みできずへこんでおりました。ひとまず書き込めるっぽいので投下します。
今回初めて名前が出てくるメディウムはこちら。
・フローラ・チュウシャキ:注射器を抱えたナースのメディウム。注射器を射出し、刺さった人間に謎の液体を注入して体調を崩させる罠。
巨大な注射器を抱えたナース姿の女性。柔和に見えるが薬物による尋問拷問もこなせるくらいには酷薄。魔神様も実験台の候補らしい。
・クロエ・ワンダーバルーン:サーカスのピエロのような装束のメディウム。風船が人間を包み込み、ふわふわと空へ飛ばしてしまう罠。
たくさんの風船を持ち歩く道化師。笑顔を振りまきつつ風船を配り、あらゆる悩みも空へと導いて、問題を忘れさせてしまおうとする。
・シャルロッテ・バナナノカワ:バナナを模した衣装を身に纏ったメディウム。足元におかれたバナナの皮が、人間を転ばせ怒らせる罠。
アイドルを自称する少女。キラキラしたものが好きでステージ上でも輝くためアイドルを目指す。努力する姿は人に見せたくないタイプ。
502 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:35:46.28 ID:H2vvtUtFo
* 墓場島鎮守府 埠頭〜本館連絡通路 *
提督「……」
大和「提督? こちらへ戻られてから、ずっと表情が優れないようですが……大丈夫ですか?」
提督「んー……まあ、ちょっと昔のことで考え事をしててな」
ニコ「もしかして、ぼくたちが関係することかな?」
提督「いや、俺が小さいころ……子供だった頃の話だ。だから、お前たちとはまだ出会ってないころの話になるな」
提督「多分、お前たちに話しても理解できない話だ」
大和「私たちにはわからないと仰るんですか!?」
戦艦水鬼改「ソレハ聞キ捨テナラナイワネ?」
提督「いやいや、わかんねえと思うぞ? だって俺の父親が何を考えてたか、って話なんだ」
ニコ「父親が?」
提督「ああ。あいつは俺が生まれる前に、エフェメラに言われて俺を魔神の生贄に差し出す契約をしたらしいんだよ」
提督「それから15〜6年くらい、まともな親子関係じゃなかったとはいえ、一応は一緒に暮らしてたんだ」
503 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:36:30.75 ID:H2vvtUtFo
提督「その間、あいつが何を考えて俺を育てていたのか、どんなつもりで俺と接していたのかがわからなくってなあ……誰か説明できるか?」
大和「……」
ニコ「……」
戦艦水鬼改「ソレハ確カニ、理解デキナイワネェ……」
大和「むしろ理解したくもありませんね」
ニコ「そういうことなら、エフェメラの思惑が多分に絡んでいた、と、考えるべきかな」
戦艦水鬼改「確カ、世間体ヲ気ニシテイタ、トカイウ話モ、ナカッタカシラ?」
大和「仮にも議員をやっているというのですから、義務教育中の息子を放り出すわけにはいかなかった、というのはあるでしょうね」
提督「むしろ、出来の悪い息子でも向き合って育てたっつう実績ができれば、逆に箔もつくか?」
大和「そういう見方もできるかもしれませんね。だとしても、結果的に勘当されているのですから、箔と言うほどのものもないのでは……」
戦艦水鬼改「トニカク、父親ノモトヲ離レタ後ニ、海軍ニスカウトサレテ、提督業ニ就イタンデショウ?」
戦艦水鬼改「私ニトッテハ、提督ガコノ島ニ来テクレタノハ、結果的ニ良カッタ話ダケレド」
戦艦水鬼改「ソレデ父親ノ評価ガ上ガッテタリスルノハ、チョット気分ガ悪イワネェ?」
大和「ええ、まったくです。提督は、ずっと一緒にいた妖精さんにいろんなことを教わったと聞いています」
大和「そもそも提督は、妖精さんとお話ができると言うだけで、必要以上に悪し様に言われたのですから、それだけでも心外です!」プンスカ!
504 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:37:15.89 ID:H2vvtUtFo
提督「……やっぱり、つまるところは世間体か。学生時代のいじめの事件で弁護士呼んだのもそういうことだろうな」
ニコ「べんごし?」
提督「ガキのころにいじめで自殺した奴がいたんだよ。俺は関わっちゃいなかったんだが、教師どもが俺に言いがかりをつけてきてなあ」
提督「それで親が弁護士呼んで、俺が関係ないことを俺の代わりに証明したんだ」
提督「そこだけ見れば子供思いにも見えるが、ありゃ単純に手前の保身のために呼んだんだろうな」ウンウン
大和「提督が納得できる答えを見つけたのはよろしいんですけどぉ……」ムー
戦艦水鬼改「改メテ、ソイツガ屑ダッテコトガ理解ッタワ」ムスッ
ニコ「魔神様、いつでもぼくたちを使ってくれていいんだからね」
提督「大丈夫だよ、そっちはそのうち人間どもの手で裁かれるはずだ」
大和「そうなんですか?」
提督「H大将がそいつの金回りを調べてる」
提督「調査に手こずってたらしいが、あいつの背後にいたエフェメラが調査の邪魔していたとしたら、あれから少しは進展があるはずだ」
提督「その後のお裁きの結果に納得いかなかったら、ニコたちの手を借りるかもしれねえが……」
提督「H大将たちが無能でない限りは、放っておいても二度と関わることはねえだろうな」
505 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:38:00.93 ID:H2vvtUtFo
ニコ「魔神様はそれでいいの……?」
戦艦水鬼改「弟ニモ同ジ対応ダッタワネ。ソモソモ、関ワリアイタクナイ、ッテコトカシラ?」
提督「下手に関わってぎゃーぎゃー喚かれても、つまんねえ捨て台詞吐かれて強がられても不愉快なだけだしなぁ」
ニコ「言葉を封じるメディウムが必要かな……フローラあたりにそんな薬がないか、聞いてみようかな」
提督「喋れなくして顔に一発蹴りでも……いや、やっぱやめとくか。どうせ許す気もねえし、何やったって気が晴れそうにねえな」
戦艦水鬼改「トリアエズ、ソイツノ考エヲ理解シヨウトスルノハ、ヤメタホウガイインジャナイ?」
提督「……そうか?」
大和「私も同感です。いくら考えても、提督のストレスにしかならないと思います」
ニコ「そうだね。殺す以外で関係を断ちたいと言うのなら、そいつらことは忘れてしまったほうがいいよ」
ニコ「どう始末するか、って方向でなら、ぼくたちがいくらでも考えてあげるけど?」
提督「……そうだなあ。どうしてそういう考えに至るのかを知りたくて考えてたんだが、狂ってるなら理解しようとするだけ無駄か」
戦艦水鬼改「一族ノ?栄ッテイウ、エフェメラトノ約束ノタメニ、アナタヲ生カシテイタ、トイウ程度ノ理由シカ、ナサソウジャナイ?」
大和「……提督がお労しい限りです」
506 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:39:00.73 ID:H2vvtUtFo
提督「そう渋い顔すんな。今はそいつから離れたわけだし、こうやってお前たちに心配もされてるから、俺的にはすげえ救われてんだぜ」
大和「そ、そうですか?」
提督「そうだよ、おまけにこっちはみんな俺の味方をしてくれて、至れり尽くせりだ。こんなボヤキに付き合ってくれて、本当に助かってる」
ニコ「魔神様、こういうことは自分だけで抱え込まなくていいんだよ? お姉ちゃんは、いつでも相談に乗ってあげるからね」
大和「その通りです! 提督はおひとりではないんですから! 大和もいつでも力になります!」
提督「なんか、お前たちは、自分自身のことより俺のことを心配してくれてるからなあ。そう思えば、昔のことなんて些細なもんだな」
戦艦水鬼改「フフ、気分ハ晴レタヨウダナ? 褒メテクレテ、イインダゾ?」ニヤッ
提督「そうだな……」
大和「それでは!!」リョウテヒロゲ
提督「ハグしろってか……いいけどよ」ギュ
大和「ありがとうございます!」ギュー
提督「んで、ニコはどうする?」
ニコ「えっ!? ぼ、ぼくも、その……同じでいいよ……」マッカ
提督「そうか?」ギュ
ニコ「……///」ギュー
507 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:39:46.12 ID:H2vvtUtFo
提督「ル級……じゃなかった、水鬼はどうする」
戦艦水鬼改「ソウネエ、ソレジャ私ハ……」ズイ
ンチューーー…
提督「!?」
ニコ「」
大和「」
戦艦水鬼改「……ンフッ」ペロリ
戦艦水鬼改「次ハ、モウ少シ、長メニイタダクワネ?」ニヤッ
提督「……そうか。まあ、お手柔らかにな」セキメン
ニコ「魔神様!? お、お姉ちゃんはそんなこと許してないよ!?」
大和「提督! 私も! 今後は私もそっちのがいいです!!」
ニコ「ちょっ、ぼくの話、聞いてた!?」
戦艦水鬼改「フフフッ」ニマニマ
508 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:40:30.99 ID:H2vvtUtFo
* 執務室 *
吹雪「あわわわ……し、司令官! 早くここから避難したほうがいいですよ!?」
提督「……」
軽巡棲姫「提督……? アナタハ、コイツト、ナニヲ、シテタノォ……!?」ヌォォォ…
戦艦水鬼改「オ前ニ、コイツ呼バワリハ、心外ネエ」
提督「……もしかして、アレ、見てたのか?」
クロエ「ええ、見てたらしいですよ? 先ほど遠征から戻ってきて、真っ先に執務室へおいでになりまして」
クロエ「それで、団長が戻って来てない、ということでそこの窓から外を眺めましたところ、団長のキスシーンを目撃したようです!」
クロエ「いやー、ニコさんもいるその真ん前で! 真昼間から団長も隅に置けませんねえ!」
ニコ「ぼくは許可してないよ?」
クロエ「おや、そうなんですか? そういうニコさんもニコさんで、大和さんの次に団長と抱き合っていたところは私も目撃しましたが?」
提督「そこまで見てて、お前は俺のキスシーンは見てなかったんだ?」
クロエ「軽巡棲姫さんに窓際から引き剥がされまして! で、ニコさん? 抱き着いたのはどうなんです? 本当なんですか?」
ニコ「! そ、それは……ぼくは魔神様のお姉ちゃんなんだから、そのくらい……!」
509 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:41:16.49 ID:H2vvtUtFo
軽巡棲姫「オネエチャンダカラッテ、ナニヲシテモイイト思ッテルノォ?」ヌラリ
ニコ「……うん。いいと思ってるけど?」フンス!
クロエ「開き直った!?」ガーン
提督「……」
クロエ「えー、団長? 団長からの何かしらの申し開きはございませんので?」
提督「面倒臭え」
クロエ「めんどう!?」ガビーン!
吹雪「司令官ってそういう人ですもんね」タラリ
大和「今の沈黙で、そう仰るのではないかと思っていましたが……」
クロエ「は、はあ、そうですか……それはそれとして、団長? そもそも、なぜニコさんたちと抱き合うようなことになったんです?」
提督「ちょっとした悩みを相談してたんだ。それで気分が晴れたから」
軽巡棲姫「ナンデ私ニ相談シテクレナカッタノォォオ!!?」
提督「こればっかりはタイミングの問題だろが。お前はいろいろ間が悪かったんだよ、この場は諦めろ」
吹雪「悩みって、どんな悩みだったんですか?」
提督「ん? 俺の父親が何を考えて俺を育ててたのかわからなくてな」
510 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:42:00.95 ID:H2vvtUtFo
提督「生まれる前から魔神の生贄にすることを決めてたってのに、どの面下げて父親面してたのか、お前たちは理解できるか? って」
吹雪「……」
軽巡棲姫「……」
クロエ「……」
提督「そこでクロエまで同じ顔すんのかよ」
ニコ「ぼくたちもこんな顔してたのかな?」
戦艦水鬼改「シテタワヨ?」フフッ
クロエ「私としたことが、思わず顔が固まってしまいました……しかしなるほど! そういうお悩みでしたら、このクロエの出番ですね!」
クロエ「そんな悩むにも馬鹿馬鹿しい悩みは、紙に文句を書きなぐって、この風船に括りつけて飛ばしてしまえばいいんですよ!」
吹雪「えええ!? それじゃ根本的な解決にならないんじゃ!?」
軽巡棲姫「私ナラ、提督ノ悩ミノ種ハ、根絶ヤシニ、シテキテアゲルワヨォ……?」
提督「いや、そこまでやる必要ねえって。忘れちまおうぜ、ってことで話は終わったんだ」
吹雪「い、いいんですか? 何もしなくて!」
戦艦水鬼改「イイコトニ、シタワ。ソモソモ、私タチモ、ソイツノ考エヲ理解デキルト思エナイシ? 考エルダケ、時間ノ無駄デショ」
大和「それに、海軍が大佐との関係を探っています。私たちが手を下すまでもなく、人の法の裁きを受けるでしょう」
511 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:42:46.38 ID:H2vvtUtFo
ニコ「そいつのことを考えても、腹が立つだけだしね。図らずともクロエの考え方が一番近いかな?」
クロエ「おお……!」
軽巡棲姫「チョット、納得イカナイノダケレド」
提督「俺の不快な相手をどうにかしようって気持ちはありがたいが、近々ケリの着きそうな話だからな。まあここは穏便に頼むぜ」ナデ
軽巡棲姫「……アナタガ、ソウ言ウノナラ、仕方ナイワネ……」モジモジ
吹雪「あ、し、司令官! 私も、なにかあればお手伝いしますから!」
提督「ああ、わかった。なんかあったら頼りにさせてもらう」ナデ
吹雪「はいっ!」パァッ
クロエ「……」
大和「クロエさんが面白くなさそうな顔をしてますね?」
ニコ「クロエだけ頭を撫でられてないからかな?」
クロエ「はっ!? いえいえ、なんのことでしょう!? そのような顔は」
戦艦水鬼改「シテタワヨ?」
クロエ「してないですよ!?」
提督「つうか、頭撫でるのも本人が望めばなんだけどな。吹雪や軽巡棲姫は前々からそうしてたから、自然な流れで撫でたけどよ」
512 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:43:30.90 ID:H2vvtUtFo
提督「むしろ、男に頭撫でられるのって、普通なら抵抗あるもんだろ? クロエだってそうじゃねえか?」
クロエ「はっ!? い、いえいえそんなことは! 団長から褒めていただけるというのは恐れ多いと言いますか、なんと言いますか」
戦艦水鬼改「ソウハ言ウケド、アナタ、イ級タチノ頭モ撫デテタデショ?」
提督「あ、そういやそうだ」
ニコ「あれはたぶん、人型じゃないから、犬か猫みたいな感覚で撫でてたんじゃない?」
提督「単純に労いたかっただけなんだがなあ……あんまり気軽に頭撫でるのも良くねえか」ウーン
大和「そんなことはないと思いますよ? といいますか、この鎮守府に嫌がる人がいるんですか?」
提督「山城」
大和「ああ……」
提督「あとあいつだ、クイーンハイヒールのヴァージニア」
ニコ「そうだね、ヴァージニアもプライドが高いから、嫌がられそうだね」
提督「ヒサメやヴェロニカあたりも喜ぶと思えねえし、あとは那珂とかシャルロッテとかも、気軽なお触わりは厳禁だろ?」
戦艦水鬼改「握手ハオーケーッテ言ッテナカッタ?」
提督「そうなのか? まあ、どっちにしろスキンシップは当人が望まない限りはやらないつもりだからな」
513 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:44:16.05 ID:H2vvtUtFo
軽巡棲姫「私ハ、モット触ワッテ、イイノヨォ?」スリスリ
ニコ「……魔神様、それよりお仕事しないと」
提督「わかってるよ。軽巡棲姫も手伝ってくれるか?」
軽巡棲姫「ウフフ、勿論ヨ」
ニコ「……ほら、いつまでくっついてるの? 早く離れて」ムスッ
クロエ「……」
戦艦水鬼改「……デ、アナタハ、提督ニ撫デテモラワナイノ?」
クロエ「はっ!? いえいえそんなことは!? 万が一にも私のメイクが団長の衣装に移ってはいけませんし!」
吹雪「メイク? 司令官にそこまでくっつくつもりですか?」
クロエ「そそそそのようなことはありませんでございますよ!!?」
ニコ「……クロエ、珍しく動揺してるね」
クロエ「いえいえいえいえ! あ、ちょっとわたくし外に出てまいります!」ピャッ
吹雪「あっ」
戦艦水鬼改「逃ゲタ」
514 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:45:01.22 ID:H2vvtUtFo
ニコ「クロエは何しに来たんだろう……」
吹雪「えっと、一応、お仕事のお手伝いに来たみたいなんですが」
吹雪「難しいことや都合の悪いことが書いてある書類は、全部風船を括りつけて飛ばしてしまおうと考えてたみたいで……」
提督「駄目じゃねえか」ガクッ
ニコ「クロエは『手に届くから悩みが生まれる、空へ放って手が届かなくなれば悩みは悩みでなくなる』っていう、独自の哲学の持ち主だからね」
ニコ「悩ましいことはなんでも風船にくっつけて、飛ばして笑ってしまおう、って感じなんだよね」
提督「この島の安定は、先送りしていい悩みじゃねえからな。クロエの話が通用するのは、その問題が解決してからだ」
戦艦水鬼改「ソウネェ。早ク平和ニシテ、私タチノ世界ヲ作ラナイトネェ?」
大和「ええ、その通りです」ウナヅキ
吹雪「……」ニコニコ
提督「吹雪、嬉しそうだな?」
吹雪「はい、それはもう! 深海棲艦のル級さんのほうから、平和にしようって言ってもらえたんですから!」
ニコ「……申し訳ないけれど、ぼくたちは、この世界のそういう交渉事にはあまりお役に立てないかな?」
提督「そいつはいいさ。こっちの世界のことはこっちの世界の住人に任せとけ」
提督「その代わり、決め事を破ってこっちに向かってくる愚かな連中を撃退するときは、メディウムたちに頼らせてもらうからな」
ニコ「うん。そう言ってもらえると嬉しいな」
大和「それでは、早速執務に取り掛かりましょう!」
軽巡棲姫「面倒ナコトハ、サッサト終ワラセテ、ソノ後ハ……ウフフフ」ニヤァ
戦艦水鬼改「抜ケ駆ケハ駄目ヨォ?」
吹雪「……あの、喧嘩しないようにお願いしますね?」タラリ
提督「……」
提督(我ながら、随分幸せな立場になったもんだな……)フフッ
515 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:45:46.53 ID:H2vvtUtFo
* 北東の海岸 *
クロエ「ううっ、このクロエ、何たる不覚! まさか団長と触れ合う機会を無碍にするとは!!」
クロエ「しかし! 道化たるこの私が、団長に思いを寄せていることを知られては、道化を演じるどころではなくなってしまいます……!」
クロエ「……ええい、かくなる上は!」
(ペンと便箋を取り出し、何かを書いて封書に閉じて、風船を括りつける)
クロエ「とうっ!」
クロエ「……これで良し! 団長への思いはこれで遥か遠くに」
深海艦載機<ブゥーン
クロエ「あ」
風船<スパーン!
クロエ「あああ!?」
手紙<ヒラヒラ…
クロエ「これはよくありません! あのお手紙にはもっと遠くに飛んで行ってもらわないと!!」
深海海月姫「アラ? コレ、ナニカシラ」ヒロイアゲ
南太平洋空母棲姫「オ手紙? アノ風船ニクッツイテタノ?」
クロエ「あああああ!! い、いけません! 返して! 返してぇぇ!!?」イヤァァァ!!
516 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/12(日) 21:47:46.04 ID:H2vvtUtFo
短いですが今回はここまで。
517 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/05/13(月) 05:37:35.17 ID:RixUp1Mk0
舞ってた
518 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:51:46.89 ID:2Z+U+lOLo
今回は再び海軍と不穏なお話です。
残念ながらメディウムと深海棲艦の出番はなし。
続きです。
519 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:52:34.28 ID:2Z+U+lOLo
* 翌日 *
* 墓場島沖 海軍巡視船 甲板上 *
ザザァ…
中将「おお、よく来てくれた。忙しいだろうに、連日呼び出してすまなかった」
提督「……いいえ。おひとりですか? 護衛の艦娘は……」
中将「ここにいるのは儂だけだよ。君に、頭を下げたかったのでな」
提督「!」
中将「儂の息子が、墓場島と呼ばれたあの島に、自分の意に従わない者、邪魔立てする者を置き去りにしたと聞いている」
中将「君もそのひとりだったと、赤城たちから聞いたよ。本当に、申し訳ないことをした。すまなかった」ペコリ
提督「中将……」
中将「ほかにも、儂の息子がやったこと、J少将がやったこと……海軍の愚行に君を巻き込み続けたこと」
中将「儂が頭を下げて済むようなことではないことは、重々承知している」
提督「……」
中将「謝らなければならないのは、過去のことだけではない。我々はこれからも、深海棲艦と対話するために君を頼ろうとしている」
中将「我が国のためと言う大義名分のもと、稀有な力を持っているというだけで、このような過酷な生活を強いてなお……」
中将「我々は、君に、負担をかけ続けようとしている。君を利用しようとしている」
520 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:53:17.45 ID:2Z+U+lOLo
提督「……」
中将「我々の我儘に付き合わせてしまい、申し訳なく思っている」
提督「……」
中将「……」
提督「……まあ、散々な目に遭わされたのは違えねえな」
中将「!」
提督「あの不愉快極まるくそ野郎に封じ込められた状況で、どうやって艦娘たちを気楽に生活させようかって悩んでいたのも事実だし……」
提督「今も今で、生活そのものはまだまだ不安定。海軍の一部の連中も、何を考えてるかさっぱりわからねえ」
提督「とにかく今は、あいつらを安心させてやるのが俺の望みだ。不安要素がたくさんある現状は、いい状態とは言えねえな」ハァ…
中将「……すまないな。人間と言うものは、みな自分のエゴのため……おのが望みのために、動いている」
中将「儂も、海の平和のため……人々が安心して海を行き来できるようにするため、多少の悪事も見逃してきた自覚はある」
中将「息子のことも……つまりはそういうことだ。君にいらぬ負担をかけたこと、本当に申し訳ないと思っている」
提督「……そうかよ」
中将「……」
提督「……」
521 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:54:01.58 ID:2Z+U+lOLo
中将「ところで、いきなり別の話をさせてもらうが。先日、I提督の亡骸が見つかったと報告があった」
提督「!」
中将「艦娘である翔鶴の首を抱えて白骨化した姿で、鎮守府の焼け跡、地下から……捜索したはずの場所から見つかったらしい」
中将「改めて供養して、彼女の両親と一緒の墓に納骨してもらえるそうだ。翔鶴も一緒にな」
中将「X大佐から、君が彼女のことを知っていたと聞いた。君の耳にも入れておきたかったのだ」
提督「……」
中将「そのI提督のご両親は、ある事件によって殺害された。実は、その犯人がまだ存命しておるのだが……」
中将「近々、ほかの凶悪犯とともに、海外に護送されることになった」
提督「護送? ……まだ殺さねえのかよ」
中将「うむ。それが我が国の司法が下した判決だ」
提督「……」
中将「その護送に用意された船だが、型落ちの古い船らしいのだ。それから護送時には、この島の近海を渡ることになった」
中将「道中は艦娘が護衛するとはいえ、船そのものの老朽化もあり、トラブルがないとも限らない……」
提督「……おい。本気かよ。あんた、俺にそいつらを事故に見せかけて始末しろってのか……?」
中将「……」
522 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:54:46.60 ID:2Z+U+lOLo
提督「その企みが明るみに出たら、洒落にならねえだろ。それじゃまるで、深海棲艦に襲わせて謀殺するのと同じ……」
提督「かつてF提督や、俺やあんたが、あのくそ大佐どもから殺されかけたあの状況と、一緒なんじゃねえのか?」
中将「……うむ、そうだな。だが、儂はそれで良いと思っている」
中将「あの犯罪者たちは、己の欲望を優先し、他者の財産を奪い、他者の命を脅かし……それを、間違っていないと……正しいと宣った」
中将「儂に、彼らを非難する資格はないのかもしれん。しかし、儂は、彼らの存在に憤ったのだ」
中将「君の個人的な部下は、悪人の魂を欲している、とも聞いた。君たちにとっても、都合が悪い話ではないと思うのだが」
提督「……」
中将「これは、儂のさいごの望みだ。その船に乗る者たちを、君の手で始末してほしい」
提督「……操船する乗員もか?」
中将「ああ。残念ながら、海軍にも始末に負えぬ愚か者がいるのでな」
提督「どんな連中だよ」
中将「ふむ……例えば、I提督からの支援要請を揉み消した男だな」
中将「I提督に思いを寄せていたらしいが、一向に靡かぬために、思い知らせてやろうとして、彼女を見殺しにしたらしい」
中将「それから、F提督の襲撃に関わった者も、今回、海外の泊地に着任させるついでと言う形で、護送に参加させることにした」
提督「……そうやって、なんらかの問題がある奴だけ乗せてたら、あからさますぎて怪しまれるんじゃねえのか?」
523 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:55:32.17 ID:2Z+U+lOLo
中将「そこは心配ない。その船には、儂も船長として同乗する」
提督「はあ!?」
中将「儂が一緒なら、彼らも怪しいとは思うまい。言っただろう、儂の『最期』の望みだと」
提督「……そっちの最期かよ」
中将「彼らを、儂もろとも屠って欲しいのだ。息子の蛮行に君を巻き込んだ罪を、儂の命で償わせてもらいたい」
提督「……」
中将「……」
提督「はぁ……そうきたか。そう、きやがったか」アタマオサエ
中将「……?」
提督「っざけんな! 何がもろともだ! 耄碌してんじゃねえぞこのくそじじい! 何考えてやがる!」
中将「くそ……!?」
提督「いいか! あんたの後任の与少将は、あんたを慕って海軍に入ってんだ。あんたが死んだら真っ先に嘆き悲しむのが与少将だ!」
提督「これから俺たちはX大佐や与少将と話し合っていかなきゃならねえってのに、ここであんたを俺たちが殺したらどうなる!?」
提督「与少将から恨まれて話が進まなくなるに決まってんだろ!? なんでわざわざ拗れそうな真似しようとすんだよ!?」
中将「む……」
524 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:56:16.65 ID:2Z+U+lOLo
提督「死んで詫びるだぁ? んなもん、手前が消えて楽になりたいってだけの逃げだろうが!」
提督「贖罪したいってんなら、生きてこれからも与少将をバックアップしやがれってんだ、くそが!」
中将「……き、君は、儂を恨んでないのかね?」
提督「あぁ? 別に恨んじゃいねえよ。むしろ、あんたには、轟沈した艦娘をあの島で運用できるように取り成してもらってる」
提督「あの頃の海軍のお偉方は、俺があの島で轟沈経験艦を運用することに対して文句しか言わなかったんだろ?」
提督「それを通してくれたんだ。これでも俺は、あんたには一応感謝してんだぜ」
中将「あの大佐が、儂の息子であってもか」
提督「それを言ったら、その息子に殺されかけたあんたこそどうなんだ、ってんだよ」
提督「いくら義理の息子だとはいえ、あんたのことは少なからず気の毒には思ったぞ?」
中将「……そうか。そこまで知っていたか……儂への連絡が少ないから、嫌われておったかと思っていたが」
提督「そりゃ俺が分を弁えてただけだ。准尉の俺が、大佐不在でもないのに中将に直接具申なんて、していい立場じゃねえ」
提督「いくら不知火がいたとはいえ、直属の上司である大佐を毎度毎度飛び越して話を通してたら、さすがに大佐も不快に思うはずだ」
提督「残念ながら、俺の命はあのとき大佐の手のひらの上にあった。余計な真似は、極力したくなかったんだ」
提督「人間の世界に関わりたくない、人の世の平和に貢献なんかしたくない、っていう、俺の本音もあったけどな」
中将「……」
525 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:57:01.32 ID:2Z+U+lOLo
提督「で? 仮に中将もろとも船を沈める計画がなしになったとして、だ」
提督「そうなったら、あんたはその船に乗らなくなるのか? そうなったとしたら、そいつらが素直に島の近くを通るのか?」
中将「……そうなればわからんな。他に航路もある。そもそも、エンジントラブル自体も儂がその場でリモコンで起こすつもりでいた」
提督「……」
中将「君に協力を頼めないとなると、諦めざるを得ないか。すまないが、今の話は聞かなかったことにしてくれ」
提督「いや、そうもいかねえんじゃねえか? そこまで話ができているってことは、それなりに準備が整ってるんだろう?」
提督「中将がそれなりの覚悟を持って計画し……そして、俺がここで断ると思ってもいなかった。そういうことだよな?」
中将「……そうだ。いま、君が儂に協力する理由がない」
提督「いいや? I提督が関わってるなら、ちょっと話が変わってくるぜ」
中将「? 君はI提督と面識はあったのかね」
提督「直接はねえよ。けど、俺はあの世で、I提督と、I提督の両親の事件に姉が関わったっていうQ中将に会ってきた」
中将「あの世で……!?」
提督「ああ。Q中将から聞いたが、I提督の母親を殺した奴は、母親の首を抱えたまま自殺して、永遠に一緒になろうとしてたらしいな?」
提督「その話を聞いて、俺も不愉快に思った口だ。んな狂った奴、ただ殺したんじゃ、そいつの望み通りになっちまう」
提督「だから中将。計画通りやってくれ。そのくそどもの血肉と魂はあの世には行かせねえ。もれなく俺たちの餌にしてやろうじゃねえか」
526 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:57:46.72 ID:2Z+U+lOLo
中将「や、やってくれるのか……!?」
提督「ああ。X大佐のところへ行った暁や川内も、もとはI提督のもとにいた艦娘だ。これも何かの縁って奴さ」
提督「ただ、海軍の連中は、その時の反応次第になるな……まあ、そのとき考えればいいか」
提督「で、あとはあんたは俺たちに助けられたていを装って、そのまま退役するなり相談役に徹するなりして、隠居すりゃあいい」
提督「あんたを助けりゃ、与少将にも恩を売れるしな」ククッ
中将「なるほど。君たちには、そのほうが都合がいい、か……」
提督「度を超えた要求をする気はねえから、安心しな。欲をかいて失敗した連中は、俺もたくさん見てきた」
提督「とりあえず、あとで日程を教えてくれ。万全の態勢で、そいつらを歓迎するからよ」
中将「わかった……何から何まで、重ね重ね、すまない。ここまで考えてくれるとは、儂としても望外であった」ペコリ
中将「かつて不知火からは、君が私に感謝していると聞いてはいたのだが……儂はそんなことはないと思い込んでおったのだ」
中将「大佐の独り善がりの決定に任せてあの島に君を行かせて、そのままにしてしまったのだからな」
中将「おまけにこの場で、君に変な気遣いをさせてしまった。儂も老いたものだ、みっともないところを見せてしまったな」
提督「……ま、俺が愛想悪くしてきたのも確かだし……これ以上気にしないでくれよ。俺も猫被るのやめたし、おあいこってことでよ」
中将「うむ……」
527 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:58:31.53 ID:2Z+U+lOLo
提督「にしても、あんたも結構、清濁併せ呑むってタイプか? 初めて赤城と顔を合わせた時も、そういう感想を抱いた記憶があるが」
提督「もしかしてあいつ、あんたに似たのか? 変なところで自己犠牲も厭わないような言い方もそうだし……」
中将「赤城がか……?」
提督「ああ。大佐の部下の艦娘を慮ったのか、それともあんたがいた鎮守府の名声を傷つけないようにしたのかは知らないが」
提督「わざと冷血漢を装いつつ、あの大佐のやってたことを白く見せてたのが、あの赤城だ」
提督「あいつも、自分が悪く言われることには躊躇も頓着もしてなかったからな」
提督「俺も人のことは言えねえが、あいつがそうなったのは……いや、そうしたのは、あんたの影響もあったのか、ってよ」
中将「……冷血漢か。儂の前では、そこまでではなかったのだがな。そうか、赤城が……」
提督「……」
中将「うむ。提督、良いことを思いついた」
提督「ん?」
中将「赤城を、君の妻にしてはどうかね」
提督「……はぁあ!?」
中将「儂は、前の妻とも子を残せなかった。いま思えば、赤城には儂の知る知識をすべて与えた、いわば娘のようなもの……」
提督「いやちょっと待て! どっから出てきたそんな話!!」
528 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 21:59:16.53 ID:2Z+U+lOLo
中将「不満かね? 君のことを話す赤城が嬉しそうにしていたことを思い出したのだよ。彼女もまんざらでは……」
提督「そうじゃなくてだな!? なんでそんな下世話な話になるんだよ!? 飛躍しすぎだろ!?」
中将「君のようないい男が、妻も娶らずに独り身のままでいるのは、些か忍びないと思ったのだが」
提督「余計なお世話だよ……あんたといいQ中将といい、じじいどもはとんでもねーとこで世話焼いてきやがるな、くそ……!」アタマカカエ
中将「君には、良い人生を歩んで欲しいと、思っただけだ……他意はない」
提督(? なんだ……何か言い淀んでるな。魔神の目で見てみるか)メヲトジ
中将「……提督? どうかしたかね」
提督「ふーん、なるほど。そういうことか」メヲヒラキ
提督「中将、俺も余計なことを言わせてもらうぞ。あんた、いまの後妻をなんとかしたほうがいい」
中将「!!」
提督「あんたが現役の間はとんと音沙汰なかったってのに、引退が近くなってからはあんたにすり寄って、甲斐甲斐しくしてるみてえだな?」
提督「健康でいて欲しいとのたまう割には、やたらと味の濃い飯ばかり出してきて……さては糖尿病にでもしてやろうって魂胆か?」
中将「……そんなことまで知っているのかね」
提督「残念ながら、俺はもう人間じゃないんでな。あんたの抱えた不調や不安を見ようと思えば見えちまうんだ」
529 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:00:06.33 ID:2Z+U+lOLo
提督「あんたが死にたがった一因がそれなんだろ。今の嫁には、金蔓としか見られていなかったのが虚しいからって、殉職を志願した、って」
中将「提督。やめてくれたまえ……これは私の問題だ」
提督「そうもいかねえよ。誰かが自暴自棄になって、その結果で嫌な奴が笑うのは面白くねえって言ってんだ」
提督「さっきも言ったが、与少将みたいにあんたを慕う人間のためにも、あんたにゃもう少し健康でいてもらわなきゃ困る」
中将「……」
提督「知ってんだろ? もともと俺は、この島が艦娘たちだけで統治できるようになったら、この島から去るつもりだった、って」
提督「それをうちの艦娘たちに知られて、顰蹙買って、どこにも行くな、死のうとするなって言われてよ」
提督「多分、同じことを与少将たちが言ってくるはずだ。こんな話、俺にだけ喋ったら、俺が非難されるのが目に見えてる」
提督「つまんねえこと考えてねえで、あんたは、今後どうやって生活していくか、そっちを考えるべきなんだ」
中将「……そうか。ある意味、君と同じことを考えねばならんと言うことか」
提督「……だな。結局、俺たちは同じ穴の狢だったってか?」
中将「かもしれんな。ふふ……」
提督「なんで楽しそうにしてんだよ……」
530 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:00:48.52 ID:2Z+U+lOLo
* 巡視船内 会議室 *
H大将「なんだ、苦虫を噛み潰したような顔をして。頭でも痛いのか」
朧「提督、さっきまで中将さんと話をしてきたんですよね?」
X大佐「なにかまずいことでもあったのかい?」
提督「……大丈夫だ。ちょっと面倒な話を聞いてきただけだ」
大淀「本当に大丈夫ですか? 何か都合の悪いことでも……」
提督「いや、そういうことじゃねえ。昔の、大佐のこととかでいろいろとな……まあ、終わった話だ。これ以上面倒にはならねえよ」
H大将「そうか。では俺から、少し気が楽になる話をしてやろう」
H大将「まず、北上たちの移籍だが、受け入れることにした。大井と荒潮に判断してもらったが、問題なく馴染めるだろう、とのことだ」
大淀「そうですか、であれば大変喜ばしいことです。ありがとうございます」
X大佐「僕たちの鎮守府も、暁と川内を受け入れることになったよ」
X大佐「響……ヴェールヌイが暁にべったりくっついて、うちのビスマルクがちょっとやきもち焼いてるけどね」
提督「……うちの暁はすげえ大人びてるらしいからな。あまり悪影響にならねえといいんだが」
X大佐「大丈夫だよ。僕たちが、みんなをサポートするから」ニコ
大淀「是非、よろしくお願いいたします」ペコリ
531 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:01:31.82 ID:2Z+U+lOLo
X大佐「それから、新人の礼提督のところには、五月雨、若葉、龍驤、雲龍の移籍が決定したよ。長門と潮は、保留になった」
朧「保留?」
X大佐「どうやら、長門がすごく頼れるらしくてね。他の鎮守府からも来て欲しいって言われてるくらいなんだ」
X大佐「引き抜き工作されてるから、まだ君の鎮守府に在任している扱いにさせてもらってる。そのほうがあの二人も安心するかと思ってね」
提督「ああ。そういう事情ならそうしてくれ、変な連中にうちの艦娘預けるよりずっといい」
X大佐「ほかの艦娘に関しては……L少佐の鎮守府には、千歳、足柄、古鷹、加古、朝雲、山雲の移籍が決定した」
X大佐「W大佐の鎮守府には、最上と三隈。仁提督の鎮守府には、伊勢、日向、黒潮が、それぞれ決定」
X大佐「F提督の鎮守府には、利根、筑摩、五十鈴、そして神通。神通は元の鎮守府に戻る形になるね」
大淀「五十鈴さんは筑摩さんと一緒の鎮守府に行くことにしたんですね」
提督「あいつもなんだかんだで心配性で面倒見がいいからな。筑摩と一緒なら大丈夫だろ」
X大佐「R提督の隼鷹も、同じように舞鶴の鎮守府に戻ることになった。あとは、与少将殿の鎮守府に、武蔵と那智が移籍予定、かな」
X大佐「最後に、城塞鎮守府。リンガ泊地の演習が盛んな鎮守府に移籍するのが、霧島、摩耶、鳥海、利根、名取、弥生、初霜」
朧「あれ? 鳥海さんは、加古さんと一緒じゃないんですか?」
提督「摩耶が鳥海のことを気にかけてたからな。古鷹も加古が心配らしい。それより、一番悩んでた名取たちも、行き先を決めたんだな」
朧「摩耶さんたちが以前一緒にいた、三日月たちに誘われたみたいですよ」
532 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:02:17.73 ID:2Z+U+lOLo
大淀「これで残留を希望している艦娘以外で、移籍が決まっていないのは川内さんだけになりますね。うるさいほうの」
提督「ああ、あの夜戦夜戦ってうるさいほうのあいつか……」
X大佐「そちらの川内については、引き続き移籍先を探してみるよ」
大淀「はい、よろしくお願いいたします」ペコリ
H大将「それから、先日の曽大佐のところの小さくなった艦娘については、解体せずに様子を見ることになった」
H大将「曽大佐の代わりに着任した提督が子供好きと言うこともあって、どうにか解体せずに済むよう張り切っているらしい」
H大将「憲兵や特別警察隊もすべて入れ替え、在籍している艦娘の再教育も平行に行われる。しばらくは戦力として期待できなくなるな」
朧「……やっぱり、そうなるんですね」
H大将「体制そのものが全て変わるわけだからな。今後は相互に監視しつつ、協力していく体制を作り上げてもらわねばならん」
提督「H大将はお咎めなしで済んだのか?」
H大将「俺か? 一応はな。曽大佐の離反は、あいつ自身の暴走、と言う形で処理された」
提督「ならいいや、海軍にもちゃんとまともな判断できる奴がいるみたいで安心したぜ」
H大将「……俺は心配されたのか?」
朧「だと思います!」
533 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:03:01.66 ID:2Z+U+lOLo
X大佐「その代わりじゃないけど、曽大佐を諫めることなくその気にさせてしまったということで、呉の和中将に処分が下っているけどね」
提督「……なんか、ますます逆恨みされそうだな?」
大淀「心配ではありますが、処分が下ったそうですし、今後こちらに接触してくる可能性は減った……と、考えてよろしいですよね?」
X大佐「うん、いいと思うよ。和中将もご自身で、もう関わりたくないと言っていたそうだ」
H大将「それから、お前の父親の件だが、無事逮捕された」
大淀「本当ですか!」
提督「ふーん……」
朧「……提督? 嬉しくないんですか?」
提督「いや、他人だしな。どうとも思わねえ……が、安心したっていえば、安心したか」
朧「……」
H大将「丁度、政府がお前たちと接触を試みた日を境に、妨害がなくなって決定的な証拠を掴めたと聞いているんだが……」
提督「妨害してた奴を倒したから、か?」
朧「やっぱりエフェメラが妨害してたんですね」
X大佐「この前、祢大将殿がいらしたときに話していた、魔神のしもべのことだね?」
H大将「深海棲艦とは異なる、世界の危機が迫っていたと聞いたが」
534 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:03:47.11 ID:2Z+U+lOLo
提督「あー、そう言われればそうだな。もしエフェメラの望んだ神が復活してたら、深海棲艦どころの騒ぎじゃなかったはずだ」
H大将「さらっと言ってくれるな。今は大丈夫なんだな?」
提督「ああ、ひとまず脅威は去った」
H大将「……一応、あらましは祢大将とX大佐から聞きはしたが、まさかお前の父親がそんな連中と繋がっていたとはな」
大淀「それで、その後進展はあったんでしょうか」
H大将「提督の父親はあっけないくらい神妙にお縄についた。この調査のために、何人もの刑事や調査員が行方不明になったと聞いている」
H大将「彼らをどこへやったのか、その件についても調査を進めるそうだ。と言っても、調査は難しいと思うが……お前はどう思う?」
提督「夢も希望もない言い方しちまうけど、全員殺されてんじゃねえかな。あのエフェメラが人間に手心加えるとは思えねえ」
提督「エフェメラがやったなら、凶器とか血痕みたいな証拠も残ってるかすら怪しいし、そいつらが死んだことを証明するのも難しそうだ」
H大将「そうなると、提督の父親が素直だったのは、エフェメラという後ろ盾を失ったことで観念したか……」
H大将「あくまで協力者がやったことで、証拠が見つからないからと開き直ったか。そのどちらか、ということになるか」
提督「あいつの考えてることは俺には理解できねえから、その辺の考察は俺はパスだ」
H大将「……提督、そういう貴様はどうなんだ?」
提督「? どういう意味だ?」
H大将「お前はメディウムの親玉だろう? お前自身は、生きるために人間の命を必要としてはいないのか?」
X大佐「!」
535 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:04:31.65 ID:2Z+U+lOLo
提督「……ああ、そういう意味か。それなら心配しなくていい。普通に飯食って寝て過ごすところは、今んとこ、これまでと変わりねえ」
提督「ぶっちゃけ、そっちも心配されるほど困ってねえしな。結構な頻度で命知らずどもが島に来てるしよ」
X大佐「な……!? ど、どういう意味だい、それは!?」
H大将「……お前の撒き餌が効果を発揮しているということか?」
提督「いや、盗掘目的の連中もいるっちゃあいるが、それより軍事的な目的でこの島を占拠しようとする奴らのほうが最近は多いぜ」
X大佐「!?」
H大将「なんだそれは……仮にも深海棲艦相手に、そんな馬鹿なことを考える国があるのか」
提督「それなんだが、おそらくそいつらは、俺たちが人間との交渉の席に立った理由を勘違いしてる気がするんだよな」
提督「俺たちはあくまで、人間と戦わないための話し合い、取り決めを交わしたいだけなんだが……」
提督「あいつらはそれを、俺たちが力を失って弱体化したせいで人間に助けを求めてきた、命乞いしてきた、と解釈したんだと思う」
X大佐「弱い深海棲艦たちだと思い込んだってことかい……?」
提督「たぶんな。人間より強い存在が、わざわざ人間と約束事なんかするはずがない、って考えたんだろう」
提督「最初は難民装った海賊みたいな連中が来てたんだが、少しずつ攻め込んでくる人数っつうか、規模がでかくなって」
提督「そいつら返り討ちにしてたら、艦隊連れてきやがったんだ。この間、新聞にもそれっぽい記事が載ってたよな? 偽装されてたけど」
H大将「記憶にないぞ、いつの記事だ?」
536 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:05:16.60 ID:2Z+U+lOLo
朧「少し前に、某国の空母が、深海棲艦と交戦したニュースが少し前にあったと思うんですが」
X大佐「……もしかして、通常兵器で深海棲艦と交戦できるかを実験して失敗したっていう……?」
H大将「あの無謀すぎる実験の件か」
提督「そうそう、多分それだ。実際には、島への侵攻中に、島の近海を縄張りにしてる深海棲艦に全滅させられたんだよ」
X大佐「え? 君たちは手を出してないのかい?」
提督「おう。俺たちは小さい船を返り討ちにしてきただけで、新聞に載った空母は俺たちは無関係だな」
H大将「なるほど、道中での全滅じゃ国としてのメンツも丸潰れ……それで実験ということにしたと。あまりに苦し紛れがすぎる発表だな」
X大佐「……途中で思い直せば良かったのに」アタマカカエ
提督「俺たちを侮りまくってたんだろうなあ。こんなはずはない、みたいな感じでよ」
提督「それで大戦力を投じて一気に制圧しようとしたんじゃねえかな。でかい船を持ち出したら深海棲艦に攻撃されることも忘れてな」
H大将「艦娘も随伴せずにか……」
提督「あの国、自前の艦娘いねえだろ。他国からレンタルして随伴させたら手前らのやってることがばれるから、できなかったんだろうけど」
提督「そういう大ドジをやらかすくらい、俺たちが利用しがいのあるコマに見えたんだろうな」
提督「艦娘と深海棲艦を大量鹵獲できたら大喜びするはずだぜ、あの国は。なんなら海軍にスパイが入ってたって話もそこ絡みだろ?」
H大将「よく知っているな……」
提督「一応、海軍にいたころはちゃんと新聞読んでたしな」
537 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:06:01.41 ID:2Z+U+lOLo
X大佐「……それで、その国の船は、撃退……したんだね?」
提督「ああ。別にその国に限らないが、領海に入った連中は全部始末してる」
X大佐「そうか……仕方ないな」
提督「ま、連中は政府と目的が違うからな。俺たちのことを力づくで従わせようとする連中なんざ、わざわざ慮ってやる理由がねえ」
X大佐「……H大将殿。各国に対する通知の文面を、もっと緊張感のあるものに変えるべきですね」
H大将「そのほうがいいな。しかし、なんでお前たちが攻撃を受けているという話をこちらに寄越さなかったんだ」
提督「内々で処理できている話だからな。わざわざ海軍に連絡して顔色伺う話じゃねえし」
提督「そもそも、海軍にこの話が行ってないってことは、そいつらがやってることが海軍に相談できないような類の話だってことだろ?」
提督「海軍はこういうのを取り締まるのもお仕事だって言うのかもしれないが、そいつらがおとなしくごめんなさいするとは思えねえ」
H大将「……だから俺たちに知らせなかったと?」
提督「以前もこの席で言ったが、死にたがりの尻拭いなんか海軍がやる仕事じゃねえよ」
提督「俺たちが海軍に求めているのは、俺たちの立場を各国へ通達してもらって理解してもらうことだ。余計な仕事は増やしたくねえ」
提督「これでも俺は、海軍に協力してもらってることには感謝してるんだ。下手に連絡してドンパチして海軍に被害が出ても気分が悪い」
提督「あの鎮守府にいた艦娘の居場所を作ってくれたりしているし、島そのものの扱いだって、こっちに都合良くしてもらってるしな」
X大佐「提督……」
H大将「……」
538 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:06:46.89 ID:2Z+U+lOLo
提督「だからこそ、頭の悪い連中のために海軍がしなくていい苦労をするのは、俺としちゃあ面白くねえな」
H大将「お前の言いたいこともわかるが、その苦労をしなければ、世界全体が足並みを揃えなければ、海全体の平和を作ることはできん」
提督「……あんな連中、見捨ててやりゃあいいのによ。よくやるぜ」
H大将「それが俺たちの仕事だ。もっとも、余所の国との対話は外務省に任せるしかないのが、もどかしいがな」
X大佐「……提督の父親の話からだいぶ話がそれてしまいましたが、次に提督の弟さんに関しても話したいのだけれど、いいかな?」
提督「弟のこと?」
H大将「ああ。お前の弟が、政府との交渉の日にあの島に上陸したらしいな」
H大将「お前はこの前、家族の話を出されたときに殺気立っていたが、実際に顔を合わせて大丈夫だったのか?」
提督「思ったよりもな。ガキのころの顔しか知らなかったもんで、会っても誰だかピンとこなかったからってのもある」
H大将「お前の弟は、あの島に上陸してまでお前に会いに行ったと聞いたが、それは何故だ?」
提督「うーん……なんか、単純に、あいつが俺に対していろいろ恨みがあったっぽいんだよな」
H大将「恨み? 恨まれるようなことをしてたのか……?」
提督「俺、あいつの言うこと最初から聞く気なかったから、覚えてねえんだよ……朧、覚えてるか?」
朧「えっと……提督を兄と認めない、みたいなこと言ってた気がします。お父さんに迷惑かけたとか、そういう理由で提督を悪く言ってて」
朧「一家の恥さらしとか……なんか、朧も聞いてて頭に血が上って、途中からよく覚えてなかったですけど」ムスッ
539 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:07:30.93 ID:2Z+U+lOLo
H大将「家柄に誇りを持ってたってことか? それで提督が気に入らん、と……逆恨みに近いな」
朧「はい。あ、あと、提督の代わりに島の統治者になるとか言ってましたよね?」
提督「言ってた気がするな。どうやって深海棲艦を従えるつもりなのか、何考えてんだと思いながら聞いてたけど……」
提督「島にいるメディウムたちも支配するつもりでいたらしいから、力で抑え込むつもりだったのかもなあ」
朧「エフェメラから魔神の力を借りて、その力で提督も殺すつもりでいたんですよね。あっけなく返り討ちに遭ってましたけど」
大淀「聞く限り、エフェメラの力を信じすぎて、自信過剰になっていたのかもしれませんね」
提督「かもな。そうじゃなきゃ、官僚のエリート街道から外れるような真似はしないだろうしな」
H大将「で、その弟だが……怪我をして入院しているんだが、退院とともに退職して田舎に帰るらしい」
提督「んん? なんだ、仕事辞めるのか」
H大将「おそらくだが、父親があっさりと逮捕に応じたこともあって、今の仕事を続けられなくなったと考えたんだろう」
H大将「どのみち、あの場に出てくるなと言われていたのに、それに背いたことで評価を落としているからな」
X大佐「それに加えて、同行した仲間に得体のしれない力……エフェメラの力でしょうね、それで怪我を負わせたそうです」
X大佐「省内で悪評が立ったとも聞いています、職場に居づらくなったのかもしれません」
H大将「残れたとしても、問題児として閑職に追いやられそうだな」
朧「……割と、提督の望んだとおりになった感じですね?」
提督「みたいだな」
540 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:08:17.01 ID:2Z+U+lOLo
朧「あの、H大将さん? 話は変わりますけど、提督のお母さんはどうなったか知っていますか?」
H大将「ん? ああ、一応調べたが、数年前から夫と別居中で、今も独り暮らしを続けているそうだ」
朧「そうですか……提督のお父さんが一族の繁栄を望んだ割には、誰も幸せになってないんですね」
H大将「……確かにな。だが、少し前まではそれなりに幸せだったろう。弟は官僚になってエリート街道を歩いていたし」
H大将「夫である父親は政治家となって、党内からも一目置かれる存在になっていた。金にもそこまで困っていなかったように見える」
H大将「夫婦の別居の理由も、海に近づきたくないから……父親の新事務所が海沿いにできたということなんだが、それを嫌がったそうだ」
H大将「お前たちの言っていた、深海棲艦に襲われた事件が余程堪えているようだな」
大淀「……そこからいきなり、夫が逮捕されて、息子さんが職を失うわけですよね。大丈夫なんでしょうか?」
X大佐「それは何とも言えないけど、仮に何かあっても、僕たちや提督が手出しして、どうにかできることでも、していいことでもないね」
提督「そうだな。俺たちには関係ねえ」
H大将「残念ながら、関係ない、というわけにはいかん。お前の父親のスキャンダルについては、これからも調査が続くだろう」
H大将「お前があの男の息子であることもマスメディアは知ったようだ。何をしてくるかわからんが、くれぐれも手を出さんようにな?」
提督「ちっ……手を出さない自信がねえな」
H大将「いいから言葉だけでも自重しろ。俺は言ったぞ、手を出すなとな」
541 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:09:01.70 ID:2Z+U+lOLo
朧「それ、提督が自重しても、メディウムや深海棲艦のみんなは自重しないと思いますよ」
H大将「わかっている。言うだけ無駄でも、俺の立場からは言っておかねばならん」アタマオサエ
提督「大将殿も大変だな」
H大将「お前が言うな、当事者だろう……!」
提督「そうは言ってもなあ……」
大淀「提督の評価に関わる話では手が出ても仕方ありませんよ? メディウムは特にそうでしょうし、深海棲艦も面白く思わないでしょうね」
H大将「……マスメディアにも注意喚起しなければならんな」
大淀「はい、是非そのようにお願いいたします。島に住む姫級、鬼級の数も増えましたし、私たちでも抑えきれるかどうか……」
H大将「増えたのか? 姫級が」
提督「おう。戦艦水鬼改に、軽巡新棲姫、防空巡棲姫、南太平洋空母棲姫、南方戦艦新棲姫……あと、深海海月姫と、欧州水姫か」ユビオリカゾエ
H大将「待て待て、どうしてそんなに一度に姫級鬼級が増えるんだ。洒落にならんぞ」
X大佐「それで、深海棲艦の名前を調べられる資料が欲しいって話だったのか……いったいどこから連れてきたんだい?」
大淀「今回増えた姫級や鬼級は、海軍でル級やタ級と呼ばれている深海棲艦が強化、進化したものなんです」
X大佐「また初めての事象が……」
542 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:09:47.82 ID:2Z+U+lOLo
H大将「まったく、話題に事欠かんな。お前たちと暮らしていた深海棲艦が強くなったのは今回が初めてか?」
朧「かつて提督が大佐に殺されかけた時、友好的な戦艦ル級さんが怒って、赤いオーラや黄色いオーラを纏うようになることがありました」
X大佐「Elite級やFlagship級になったってことかい……!?」
朧「そうです。今回は、曽大佐の艦娘との戦闘で提督が狙われたときですね。ル級さんたち深海棲艦が鬼級や姫級になったんです」
H大将「なんだそれは。提督がピンチになると、深海棲艦がパワーアップするとでも言いたいのか」
提督「それだけじゃねえな。欧州水姫は仲間のタ級がダメージ食らったときに怒って変身した、って言ってたよな?」
朧「あ、そうです、そういえばそうでした」
H大将「仲間を傷つけられると、深海棲艦がパワーアップする、と言う法則でもあるのか……?」
X大佐「いえ、これまでも大型の深海棲艦が、大打撃を与えてから強化されるケースは散見されていましたよ」
X大佐「さすがに、ル級やタ級が姫級鬼級になる現象は初めて聞く話ではありますが」
H大将「……お前、何かしたのか? なにかきっかけはないのか」
提督「おそらくなんだが……うちにいる連中の場合は、ある程度文化的な生活に触れたから、こうなったんじゃねえかと思ってるんだ」
H大将「……なんだそれは」
提督「深海棲艦てのは、地域によって差はあるが、それこそその辺の魚みたいな、だいぶ本能に寄った生活をしてるみたいなんだ」
提督「会話じゃなく信号を送って意思疎通し、海の中で魚と同じように寝て……さすがに衣服はどうだか知らねえけど」
543 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:10:32.00 ID:2Z+U+lOLo
提督「それが、俺たちの鎮守府に入ってもらったとき、俺たち人間の住処に近い鎮守府で暮らすようになってる。そこが変化点だと思うんだ」
提督「飯を食って、口で話し合って、布団で寝て。そうして人の気持ちを理解し、人の生活に触れて、人との関わりを思い出し……」
提督「人の心を知った結果、自分のルーツとなる艦の存在を思い出し、その姿に変貌した、と考えられそうなんだよな。俺の私見だけどよ」
X大佐「確かに、こちらに話しかけてくる深海棲艦は、姫級や鬼級といった、まとめ役の深海棲艦ばかり……」
提督「おそらく、人を理解し、思い出したからこそ、声を発するに至ったんじゃねえか?」
提督「特別海域の連中は、その方向性がちっとばかし人間に対する憎悪に偏りまくってる、とかな」
H大将「……」
朧「……なんだか、今の話を持ち帰ってもらったら、交渉役より研究者がいっぱい来そうじゃないですか?」
提督「うげっ……! そいつは勘弁してほしいな」タラリ
H大将「そこは大丈夫だろう。生きた深海棲艦を相手に研究したがる命知らずなんて、いないはずだ……多分」
朧「多分ですか……」タラリ
H大将「とはいえ、深海棲艦がパワーアップすると言う情報は、海軍としてみればあまり喜ばしくない情報だな……」
X大佐「そうは仰いますが、深海棲艦が強くなる理由のひとつが明確になったとすれば、十分有益な情報です」
X大佐「それに、提督とここの深海棲艦たちは話が通じないということではないようですから、必要以上に恐れる必要はないはずです」
X大佐「むしろ、人間の生活習慣を知ってもらっているのなら、人との対話にプラスの影響を及ぼすとも考えていいのではないでしょうか」
H大将「希望的観測ではあるが……提督と友好関係を結べているというのなら、まだ悪い情報とは言い切らなくても良いか」
544 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:11:17.08 ID:2Z+U+lOLo
H大将「お前のことだ、人間と争うな、くらいのことは、その深海棲艦たちにも言い聞かせているのだろう?」
提督「まあな。思ったよりも話が分かる深海棲艦ばかりで助かってるぜ」
H大将「ならいい。島を訪れる海軍の安全の確保についても、話は進んでいると思っていいな?」
提督「ああ、島の中では連絡は行き渡らせた。外海から来た奴にも警戒するよう伝えてるし、居着く気なら俺に会わせるよう通達もしてる」
提督「ただ、島の外にいる深海棲艦からの連絡は、いまんとこ、どこからも反応が来てねえな」
提督「北方棲姫あたりは性格が穏やかっつうか、人懐っこいらしいから、なにかしら返事くらいは来てくれるかと期待してたんだが……」
H大将「……そこはまだ実績がないからかもな。最悪、お前たちも余所の深海勢力からは信用を得られていないのかもしれん」
提督「まあ、そうかもなあ……いきなりそんな話をしても、罠だと思われてもしょうがねえ。舐められてんのかもしれねえし」
X大佐「そういう僕たちも、まだ交渉する人員があまりいないんだけどね」
X大佐「以前、島に上陸した時に、与少将殿と泊地棲姫が和やかに話していたのを見て、すごく希望が持てたんだけど……」
大淀「とりあえず、近日中に改めて政府との話し合いの場を持つことは決定しましたから、まずはそちらに集中したほうがよろしいかと」
提督「そうだな。とりあえず目の前の話し合いを成功させないとな」
X大佐「政府との交渉がうまくいった実績ができれば、静観してる深海勢力も、話し合いに動き出すかもしれないね」
提督「……そうなりゃ、交渉のために建てたあの建物も、いよいよ出番となるわけだな」
大淀「忙しくなりますね」ニコ
朧「朧もサポートします!」
提督「……」
H大将「そこで面倒臭そうな顔をするな」
X大佐「……」ニコニコ
H大将「そしてX大佐はなんで笑っているんだ」
X大佐「面倒臭い、と言うのが彼の本音ですよ。彼が我々に対しては遠慮しないで感情を出してくれているんです。いいことじゃありませんか」
提督「……ほんっとに変な奴だよな、お前」
H大将「お前も人のことは言えんからな?」
545 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/05/20(月) 22:12:01.67 ID:2Z+U+lOLo
ということで、今回はここまで。
546 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/06/01(土) 00:16:48.14 ID:zKOQ1ZX7o
今回、スレ初登場のメディウムはこちら。
タライのメディウム、フウリについては、可能であればWikiにてビジュアルも確認していただきたく。
・シルヴィア・シャークブレード:ダイバースーツ姿のメディウム。鮫の背びれのような刃物が地面を滑走し、人間を切り裂く罠。
泳ぐことが大好きなお姉さん。神殿の周囲には沼しかないため海に出て泳ぐのが夢だった。スーツは普段着にするには少々窮屈らしい。
・メアリーアン・スノーボール:防寒具に身を包んだメディウム。巨大な雪玉が落ちてきて、触れた人を巻き込み飲み込み転がっていく罠。
大きな雪玉を抱えたカントリーガール。田舎育ちのためか訛りが強く性格もおおらか。暖かい飲み物が好きで、時々皆に振舞っている。
・フウリ・タライ:裾の短いバスローブを纏った少女のメディウム。空から金だらいが降ってきて、人間の頭に直撃して怒りを誘う罠。
人前で話すのが苦手な少女。お風呂が大好きで、入っていればご機嫌なのだが、そのせいか服がバスローブしかないのを悩んでいる。
・マルヤッタ・トゥームストーン:墓石を背負い包帯を体に巻き付けた姿のメディウム。頭上から墓石を落として人間を押し潰す罠。
墓守を名乗る、語尾が特徴的な少女。ミイラのように体に包帯を巻き、なぜかその上に「まるや」と書かれたゼッケンをつけている。
続きです。
547 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2024/06/01(土) 00:17:32.82 ID:zKOQ1ZX7o
* 工廠 *
工廠妖精「あのちっちゃくなった大和たちも、無事暮らせるようになったんだって?」
朝潮「はい! そのように報告がありました!」
提督「あの時はありがとな、艤装や服のサイズも調整してくれて、助かった」
工廠妖精「いいよいいよ、大仕事だったけど、みんな可愛かったしね!」
提督「今回の一件もあったことだし、海軍に、うちの工廠の設備をグレードアップできないか、掛け合ってる」
提督「なんせ深海棲艦も使うドックだ、設備は充実してるに越したことはねえ」
工廠妖精「そうしてもらえると嬉しいね。増員は期待できないだろうから、設備面だけでも便利になって欲しいなー」
提督「……確かに、ここに来たい奴なんてそうそういないだろうなあ、艦娘ならなおさらだ」
提督「以前のようにここに流れ着いてきたとしても、それはそれで不幸なことがあった奴だろうし、増えないほうが望ましいんだよな」
工廠妖精「ここへ攻めてきた大和たちも、ある意味では不幸だったってことだよね?」
提督「まあ、そうだな……曽大佐の下に就いた時点でそうなんだろうな。なんか、あっちでやむなく解体処分になる艦娘もいるらしいしよ」
工廠妖精「それはしょうがないよ、余所の鎮守府の事情だもの。提督は提督で、この鎮守府にいるみんなを大事にしてあげないとね」
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