【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】

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548 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:18:18.43 ID:zKOQ1ZX7o

工廠妖精「久々に長門たちも戻ってきてるんでしょ? 困ってないか、話を聞いてあげたらいいんじゃない?」

提督「ま、そうだな。まずは目の前のことから解決してかねえとな」

朝潮「? 司令官、何か気になることが……」

 ドドドド…

工廠妖精「ん?」

比叡「司令! 司令!! しいいい、れえええ、えええい!!!」ドドドド…

朝潮「比叡さん!?」

工廠妖精「早速やってきたみたいだね……」

提督「ああ……まあ、比叡は来るだろうなって思ってたんだけどよ」

工廠妖精「なんだって? どういう意味?」

提督「それがなあ……」

 ドドドドキキーーーッ!

比叡「司令!! どうして金剛お姉様がまた島の外に行っちゃうんですかっ!!」プンスカ!

朝潮「ああ、その件ですか……!」
549 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:19:03.22 ID:zKOQ1ZX7o

提督「……それなんだが、金剛が前いた鎮守府で、ガキが無許可であちこち写真撮ったって話、聞いてるだろ?」

比叡「写真? あ、はい、写真を撮られたことは聞いてますけど……」

朝潮「本来、撮影禁止区域である鎮守府内で撮影を行ったために、処分が下った件ですね」

提督「そうそう、それだ。それでそのガキを連れてきた若い司令官が左遷されてな?」

提督「後釜が決まらなくて困ってて、それまで提督代理っつうか、提督見習の補佐を金剛にやって欲しい、って話なんだよ」

比叡「えええ……? それでなんで金剛お姉様が!? その鎮守府、他に人がいっぱいいるはずじゃないんですか!?」

工廠妖精「そうだよ、Q中将の直属の部下とかはどうしたの?」

提督「何でもできる優秀な奴らはあちこちに引き抜かれたらしい。どこも人材難だ、この前も俺が曽大佐を使えなくしたばかりだしな」

提督「もともと提督業は離職率が高えって言われてる。民間から引き抜いた連中も長続きしなかったり、知識不足で運営が覚束なかったり」

提督「だから元自衛官やら今の海軍の人間やらが代行なり補佐なりして、各地の鎮守府をやりくりするため、頻繁に配置換えが起きてる」

提督「いまはそれでも手が足りないんで、執務だけじゃなくいろいろ経験を積んでる艦娘が、補佐のために異動させられたりしてるんだ」

朝潮「礼提督のところに行った五月雨さんも、そのような感じでしょうか?」

提督「あそこは司令官自らスカウトしに来たようなもんだが、まあ近いかな」
550 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:19:47.77 ID:zKOQ1ZX7o

比叡「でも、だからってどうして金剛お姉様が……」

提督「Q中将夫人がまだ鎮守府の食堂に勤めてたから、ってのもある。金剛があっちにいたとき、いろいろ世話になってたんだと」

工廠妖精「Q中将の奥様に?」

提督「ああ。食堂とはいえ5年くらい務めてて、そこそこ鎮守府の事情を知ってるもんだから、海軍から質問攻めされて参ってるんだとよ」

提督「それで、中将夫人と特に親しかったっていう金剛が、夫人をサポートする意味でも出張る羽目になったんだ」

比叡「うー……そういうことなら、しょうがないかあ」ムスッ

提督「金剛には、中将夫人へ鎮守府から離れてもいいんじゃねえかって言ってみたらどうだ、って話もしたんだけどな」

提督「どうやらそれを話す間もなくこの騒ぎだ。この調子じゃあ、いま鎮守府に残ってる艦娘もちょっと頼りねえ面々なんだろう」

比叡「となると、金剛お姉様はまたしばらく帰ってこられなくなるんですか……」ションボリ

提督「ちょうどいい機会だ、金剛がこの島に住むのか、あっちに留まるのか、今回を機に結論出してもらうのもいいかもしれねえな」

比叡「ヒエエエエエ!? こ、金剛お姉様が、出て行ってもいいんですか司令!?」

提督「そこは、俺がどう思うより金剛がどう思ってるかが優先だ。前にも言ったけどよ」

朝潮「司令官、そのお話の際は、比叡さんは不在だったと思います」

提督「ん、そうだったか?」

工廠妖精「金剛のことだから、提督から離れたくないって言いそうだけどねぇ……」ボソッ
551 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:20:32.47 ID:zKOQ1ZX7o

提督「とにかく、比叡が金剛と離れたくないっつうんなら、それは金剛に訴えていいと思う」

提督「それ以外にも、比叡が金剛と一緒に向こうへ行く、っつう選択肢もあるんだぞ?」

比叡「……えええ?」

工廠妖精「それこそ大丈夫なの? ここの厨房を任せてる相手にそんなことを言って」

提督「それこそ比叡の自由にさせてやりたいんだけどな。ぶっちゃけこの島は、資材の面でも物流の面でも人材の面でも不自由極まりねえ」

提督「それどころか、俺たちは今後、人間だけじゃなく艦娘も仮想敵として対応を考える必要がある」

提督「この島に残るかどうか判断してもらうときにも言ったが、古鷹と並んで人一倍優しい金剛が、そのことに耐えられるかが単純に心配なんだよ」

提督「実際に俺たち……というか、メディウムは人間をだいぶ殺してるし、その辺の心境の変化も、そろそろ現れてくるんじゃないかと思ってる」

比叡「司令……」

提督「それに加えて、あの社交性と博愛精神を持つ金剛がここにいるのは、個人的にはちょっともったいないんじゃないかとも感じてる」

提督「あいつには、もう少しいい環境があるんじゃねえか、と、漠然とだが思ってたりするんだ。これは俺の独り善がりだけどな」

工廠妖精「……うーん」

提督「でだ、比叡も外の世界が見たいってんなら、金剛についてくのもありだと思うんだよ」

提督「そうでなくても、比叡が出撃したり、怪我して入渠して厨房に立てないときもあるんだ。比叡に任せっきりは良くねえよ」
552 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:21:17.50 ID:zKOQ1ZX7o

提督「スズカやセレスティアもいるし、なんなら他の艦娘や、深海棲艦から料理できる奴を募ってもいい……つうか、作れた方がいいな」

比叡「うーん、それは確かに……以前は長門さんにも厨房に立ってもらってましたから、それなりに出撃もできてましたねえ」

提督「前は戦艦だと比叡、長門、大和が厨房のローテーション組んでたんだよな?」

提督「長門も余所に移るかもしれない今、もう一人くらい増員できねえか検討するのも当然あっていいと思うんだ。大和の負荷も下げてやりたいし」

工廠妖精「確かにそうなんだよね……長門がいないから、私たちも人手不足なことが起きてて」

比叡「えっ?」

朝潮「あ、それはお裁縫のことですか?」

工廠妖精「そう。長門がミシン使えてたじゃない?」

工廠妖精「私たちも妖精用でミシンはあるんだけど、艦娘が使う小物とかだと、やっぱり長門に手伝ってもらったほうが速いんだ」

提督「ああ……そうか。暁も裁縫を勉強してたが、その暁もX大佐のところに行っちまったしなあ」

工廠妖精「お裁縫のできる艦娘が、みんな外に行っちゃったからね。そうなると、新しい布製品は外から買わなきゃいけなくて」

工廠妖精「みんなの普段着とかおしゃれ着とか、調達してリサイズするにも、いろいろとね〜」

提督「そういや、比叡の割烹着も長門のオーダーメイドだったな」

比叡「はい! サイズぴったりで着心地も良くて……そっか、同じものを作ってもらうのも、できなくなっちゃいますよね」シュン

提督「ほつれたりしたら修繕もできねえとな。俺も正直、裁縫はそんなに得意じゃねえっつうか、苦手な部類だし……」
553 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:22:02.60 ID:zKOQ1ZX7o

提督「メディウムにも仕立て屋はいねえんだよな。針仕事が一番得意なのはヴェロニカだが、得意っつっても刺繍が得意だって話だし」

提督「朝潮も修繕はできるが、服一着作れるほどのスキルはねえだろ?」

朝潮「は、はい、そうですね……申し訳ありません」シュン

提督「いや、謝らなくていいぞ……ん?」

戦艦棲姫「タシカ、コッチデ、良カッタノカシラァ?」キョロキョロ

集積地棲姫「! 提督、ココニイタノカ」

提督「おう、こっちに来るなんて珍しいな。どうした、何かあったか」

戦艦棲姫「入用ナモノガアルカラ、買イ物ガシタクテ。シュホ? ガ、コッチニアル、ッテ聞イタノダケレド」

提督「ああ、そりゃこっちだな。何が必要なんだ?」

戦艦棲姫「水着ッテ、置イテアルカシラ?」

提督「水着?」

集積地棲姫「サングラスモ、アルト嬉シイ」

提督「サングラスはあったよな……けど、水着はあったか?」

工廠妖精「あるにはあるけど、いま置いてあるのは潜水艦用の水着くらいかなあ?」
554 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:22:47.71 ID:zKOQ1ZX7o

工廠妖精「この前、新しい荷物が来てたけど、水着があったかどうかは、私は確認してないや」

工廠妖精「確か、一緒に新しい通販カタログが何冊か届いてたから、そっちを見たほうがいいかもしれないね」

戦艦棲姫「ソウナノ?」

工廠妖精「うん、カタログ探すからちょっと待ってて。えっと、どこに置いたっけ……?」ゴソゴソ…

提督「……さすがに水着やサングラスは俺たちじゃ作れねえな」

工廠妖精「それはそうだね。それはやっぱり市販品をお勧めするよ」

提督「なあ、集積地棲姫? この手の市販品つうか、人間の作ったものって深海棲艦も普通に使えるのか?」

集積地棲姫「モノニヨルナ。造リノイイモノナラ、ソレナリニハ使エルガ、安物ハスグ壊レテ駄目ダ」

提督「やっぱりか……」

工廠妖精「そうなの?」

提督「人間が深海棲艦に触れられると、そこから壊死するみたいな話があったろ?」

集積地棲姫「ソンナコトガアッタノカ?」

提督「ああ。無機物に対してもそうなったりしないか、気になって訊いたんだ」
555 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:23:32.53 ID:zKOQ1ZX7o

集積地棲姫「ソレデ人間ノ作ッタモノハ、壊レヤスカッタノカ」

提督「多分な。俺はそういうことなんじゃないかって思ってる」

戦艦棲姫「フーン……デモ、アナタ、軽巡棲姫トカニ触ラレテナカッタ?」ツンツン

提督「あ、俺は触られても平気だぞ」

集積地棲姫「エ、本当カ」ペタペタサワサワ

朝潮「!?」

戦艦棲姫「……ナントモナイノネ?」ベタベタムニムニ

提督「いや待てどこ触ってんだよお前ら」ポ

集積地棲姫「ダッテ私、人間ヲ触ッタコトナイシ」

戦艦棲姫「私タチト、カラダツキガ違ウカラ……ネェ?」

提督「戦艦棲姫のツレはどうなんだよ。あいつも筋肉質だろ、俺よりでけえし」

戦艦棲姫「アナタトハ、全然、違ウワヨ? 鉄ミタイナ感ジナノ」

朝潮「し、司令官大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!?」サワサワペタペタ

提督「大丈夫だよ、つうかお前までどさくさに紛れてどこ触ってんだ」

工廠妖精(朝潮も何気なくむっつりだよね……)
556 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:24:17.35 ID:zKOQ1ZX7o

提督「それより、どんなものでもすぐ壊れたりするのは問題だな。水着がすぐ破けるようじゃ最悪だ」

工廠妖精「あ、そこはわたしたちがいれば大丈夫だと思うよ?」

工廠妖精「わたしたちが特殊な加工をすれば、そういう装備品も簡単には壊れなくなるし、ドックに入ったときに一緒に直せるようになるよ」

提督「そんなことできるのか!?」

工廠妖精「うん。ほら、一部の艦娘って、すごい装飾の入った着物を着てる子もいるでしょ? あれを毎回買い直すとなったら、ねえ?」

提督「あー……着物じゃあ、物によってはウン百万とかになるんだっけか」

工廠妖精「そういうこと……っと。うーん、カタログ、見当たらないなあ。とりあえず酒保に行こうよ、そっちに置いてあるかも」

工廠妖精「で、その中でめぼしいものを見つけたら注文して、買って届いた後で私たちが加工してあげる」

工廠妖精「その場にあるものなら、すぐに加工してあげられるから、いいのがあったら教えてね」

集積地棲姫「ソウシテモラエルト、助カル」

戦艦棲姫「早ク行キマショ?」ルンルン

提督「……あ」

比叡「どうしました、司令?」

提督「なあ妖精、いまの話、メディウムにも適用できるか? できるんだったら、比叡にジュリアを呼んできて欲しいんだが」

工廠妖精「?」

比叡「?」
557 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:25:02.86 ID:zKOQ1ZX7o

 * それからしばらくして *

 * 酒保 *

シルヴィア「魔神さん、話は聞かせてもらったわよー!」

提督「おう、来たか……って、シルヴィア? お前も希望者なのか?」

シルヴィア「まあね。ほら、このダイバースーツっていうの? 私の体にぴったりじゃない?」

シルヴィア「泳ぐ分にはいいんだけれど、普段着として着るにはちょっと窮屈なの。陸にいるとき用のゆったりした服が欲しくって」

提督「なるほど、そういうことならいいんじゃねえか。それよりジュリアたちは……」

ジュリア「魔神様っ! あたくしたちも来ましたわよ!」

メアリーアン「よろすぐお願いすっただあ。ほれ、みんなも早くこっちゃくっただよぉ?」

フウリ「は、はい……よろしく、お願いしまひゅっ」

シエラ「お、お邪魔します……」

提督「思ったより希望者が多いな? ジュリアとフウリだけかと思っていたが」

シエラ「ちょ、ちょっと、私は、事情が違いますけど……」

長門「我々も邪魔するぞ、提督は……ああ、いたな、変わりはないか?」

提督「おう、お前たちも来たのか」
558 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:25:47.50 ID:zKOQ1ZX7o

三隈「お久し振りですわ、提督」

最上「やっほー、元気ー?」

潮「お邪魔、します……!」

提督「久し振りだな。良かったなフウリ、お前、潮と仲良かったろ」

フウリ「は、はいぃ! もう、会えて嬉しいです……!」

長門「提督も大変だったそうだな? ル級が戦艦水鬼になっていて驚いたぞ」

提督「まあな。お前たちも元気そうでなによりだ」

三隈「提督、早速ですが、こちらをどうぞ」

提督「ん? そいつは……」

三隈「以前、他の鎮守府からいろいろな雑誌をいただいていたことを思い出しまして。ファッション誌を持ってきたんです」

最上「W大佐の鎮守府で鈴谷達が買ってた本と同じのを、おみやげ代わりに買ってきたんだ!」

提督「マジか。すっげー助かる、まさしく渡りに船だ」

長門「そんなに丁度良いタイミングだったのか?」

提督「以前ジュリアが、今の衣装に不満がある、って言ってたことを思い出してな。衣装を変えたいメディウムに集まってもらったんだ」

ジュリア「そうなんですの。ほら、このあたくしの衣装、結構露出が激しいと思いませんこと?」
559 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:26:32.48 ID:zKOQ1ZX7o

ジュリア「個人的には、もう少し肌の露出を控えたほうが好みなんですけれど、この衣装を勝手に変えることもできなくて……」

長門「着替えもできないのか」

ジュリア「そうなんですの。例えばあたくしたちが傷ついて、治療のために魔力槽に入ると、衣服も一緒に復元するんですけれど」

ジュリア「この衣装をアレンジしようとしたりしても、結局直すときには元通りになってしまいまして」

提督「理屈はわからないが、艦娘の衣装と艤装と同じようなつくりになってるらしいんだ」

長門「なるほど。では、もとの衣装を着たり脱いだりする分には、問題ないんだな?」

ジュリア「ええ、脱ぐ分には何ら差し支えなく。仕方なくルミナに相談したところ、そもそもあたくしたちのこの姿は……」

ジュリア「あたくしたちの原型である罠そのものが、最高の力を発揮できる姿を顕現したものだと推測できる、と言うことらしいんですの」

ジュリア「確かに、あたくしが人間どもを張り倒して勝ち誇る分には、このくらい豪奢な姿であることが望ましいのでしょうけれど?」フフン!

朝潮「ジュリアさんのその姿にも、ちゃんと由来や理由があって、その姿になっている、ということですね」

提督「……ジュリアの場合はアレか。だいぶ前に流行った、ボディコンスーツに羽根つき扇子を持って踊ってたやつか」

最上「ボディコン……?」

三隈「長門さん、わかります?」

長門「いや、そのあたりの話は、私はよく知らないぞ」
560 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:27:17.52 ID:zKOQ1ZX7o

提督「好景気だったころ……日本のバブル期の娯楽のシンボルみたいなもんさ。俺もよく知らないから、わからなくていい」

ジュリア「聞くに享楽の象徴でしょう? できればタチアナのように、もう少しお堅い職が由来の衣装になって欲しかったのですけれど」

提督「しかし、それ以外だとハリセン振り回すのなんてお笑い芸人くらいだぞ。真面目なお前の性格からして、それもちょっとなあ?」

ジュリア「ええ、そもそも人間の男どもの耳目を集める趣味はございませんので、できればそれも御免被りたいですわねぇ」

提督「どっちかっつったらリンダがそうだよな……つっても、あいつはボケるばかりでハリセンでツッコミ入れられる側だが」

提督「とにかくだ。魔神は、魔神の知識の範囲でハリセンを振り回すのに最適な姿として、今のお前の姿を創造したわけだな?」

ジュリア「あなたがその魔神様でしてよ?」ズビシッ!

ジュリア「いま初めて聞いたばかりだ、と言わんばかりのその態度は、いささか白々しくありませんこと?」

提督「悪いがその辺は記憶にねえぞ。魔神の記憶から思い出そうとしても……あ」

最上「なにか思い出したの?」

提督「雰囲気で、って単語が出てきた」

ジュリア「いい加減ですわね!?」

三隈「……ジュリアさんのツッコミの鋭さなら、芸人さんでも良さそうですけど……」

ジュリア「謹んでご辞退申し上げておりましてよ!?」
561 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:28:02.68 ID:zKOQ1ZX7o

長門「とにかく、今の姿が不満だから、提督に直談判したわけだな?」

ジュリア「そういうことですわ。魔神様も覚醒しつつありますし、叶うのならばと申し立てしましたの」

ジュリア「魔神様があたくしたちをご創造なさったのですから、当然、衣装のリメイクも魔神様のお役目だと思いませんこと?」

提督「へいへい……けど、俺に服飾のセンスはねえからな。できればここにある既存の服でいいものはねえかな、と思ったんだ」

ジュリア「そうは仰いますけど、これは人間用の衣装でしょう? 私たちが着ても大丈夫なんですの?」

提督「妖精が、艦娘や深海棲艦が着ても大丈夫なように加工できる技術を持ってるんだと」

提督「メディウムにも応用できるんじゃねえかと思って、まずは今の衣装に悩んでるやつを優先して対応しよう、って考えたんだ」

シエラ「うーん、あくまで衣装の話デスか……いや、それでもいいかもしれないデス」ボソボソ

工廠妖精「提督ー、こっちのカタログあったよー。一緒に服飾の雑誌もあったから、ここに置いておくね」

提督「お、ありがとな。とりあえず、こいつと三隈が持ってきた本を見て、良さそうな服を探してみてくれ」

シルヴィア「そうね、それじゃ早速見せてくれる?」

ジュリア「シルヴィア? その前に、その腕についてる物騒な刃物、外してくださる? 本が引き裂かれてしまいますわ」
562 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:28:47.51 ID:zKOQ1ZX7o

 * *

メアリーアン「いろんな服が載ってあんだなあ」

シルヴィア「水着もあるのねー」

工廠妖精「あ、そうだ、水着なら新しいのがこっちに数着届いてたよ。見てみる?」

シルヴィア「実物あるの? ちょっと見せて!」タタッ

ジュリア「……意外と、地味ですわね」ペラリ

フウリ「わあ……これ可愛い……!」キラキラキラッ

提督「しかし、メアリーアンも別の服が欲しいと言うとは思ってなかったな」

メアリーアン「おらは、もうちょい軽めの普段着が欲しいんだあ。雪玉いじる分には、これでええんだげんど」

最上「この夏の陽気の島では、その防寒具はさすがに暑そうだね」

メアリーアン「おらぁ、この服でも暑さには慣れてるげんど、『かずあるなこーと』も憧れんだよなあ」ポヤッ

三隈「カジュアルなコートって仰ってるのかしら……あ、こっちのはいかが?」

メアリーアン「ほーお! これもええごんだなあ!」

フウリ「あ、あの、潮ちゃん、これ、可愛いと思わない?」

潮「えっ? 本当だ、可愛い……!」
563 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:29:32.86 ID:zKOQ1ZX7o

提督「シエラは見ないのか?」

シエラ「私は……どっちかというと、衣服じゃなくて、性格をもう少し変えて欲しいのデス」

シエラ「魔神様が、私たちの服を作り変えられるのなら、私の性格も、もう少し明るくしてもらいたいと思ってるデス……」

提督「性格を?」

シエラ「ルミナといろいろ相談したデスが……ジュリアも言ってた通り、私たちメディウムを生み出したのが魔神様デス」

シエラ「それなら、私たちの姿かたちや気質を変えることも、できるのではないかと……艦娘たちを幼子に変えた時のように、デス」

提督「ああ……あんな感じで性格も操作しろと?」

シエラ「可能であれば、デスが……」

提督「だったらやめといたほうがいいな。あれはあくまであいつらの攻撃的な部分を手当たり次第取り払っただけなんだ」

提督「どこをどう切り取ったら性格が変わるか、俺自身しっかり理解したうえでやったわけじゃねえんだよ」

シエラ「……ということは、魔神様も手探り状態、デスか」タラリ

提督「そうだな。もう少し練習っつうか、確認しながら施術しねえと不安だから、俺としてはやりたくないってのが本音だ」

提督「実験台が都合よく現れてくれりゃいいんだが、そうもいかねえだろうし」

提督「なにより、お前の大事な記憶を間違って消すわけにはいかねえからな」

シエラ「あう……残念、デス……」
564 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:30:17.91 ID:zKOQ1ZX7o

フウリ「あ、あの、ご、ご主人様っ! わ、わたし、これ、着てみたいですっ!!」ズズズイッ!

提督「うお、なんだ? お前がそこまでアピールするなんて珍しいな」

フウリ「ご主人様の力で、この服に変えられませんか!? 毛がふわふわなんです! すっごく可愛いんですよこのバスローブ!」

提督「お前なんでバスローブ選んでんだよ!? 外出用の服欲しかったんじゃねえのか。しかもこれ、子供用だぞ」

ジュリア「それは良いのではありませんこと? 魔神様がリサイズしてくださればいいだけのことですわ」

フウリ「ご主人様、お願いしますっ!!」

提督「……わかった、わかったよ。うまくできるかどうかわかんねえけど……」

フウリ「はいっ!」

提督「よし……」スッ

潮「提督がフウリちゃんの頭に手をのせて……どうするんですか?」

ジュリア「ルミナに聞いたのですけれど、魔神様はあたくしたちメディウムの形を変えられるかもしれない、と言うんですの」

ジュリア「魔神様はあたくしたちメディウムの創造主。直にメディウムに触れ、念じることで姿が変わる……らしい、ということですわ」

長門「ん? らしい、なのか?」

ジュリア「これまで誰も試したことがありませんから」

長門「……」
565 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:31:02.62 ID:zKOQ1ZX7o

潮「だ、大丈夫なんでしょうか……」

 ズズズズ…

 (フウリの衣装が変わって、雑誌の衣装の見た目になる)

フウリ「……ふ、ふわあああ!?」

提督「ふう、どうだ?」

フウリ「わあ、可愛い……すごいです、ご主人様! あ、でも、なんか、すーすーしますよ……?」

最上「ねえ提督、作った衣装が前半分しかできてないよ? 背中とおしりが丸出しなんだけど」

フウリ「キャアアアアアアアアアアア!?!?!?」カオマッカ

三隈「くまりんこー!?」キャーー!?

最上「あはは、三隈のその悲鳴も久し振りだね」

三隈「最上さんはマイペースが相変わらず過ぎますわ!?」

提督「そういやこれ、後ろからのデザインが載ってねえな。想像できなくて作り切れてなかったか……」

メアリーアン「ひゃあ、大胆だでざいんだべなあ」

長門「絶対デザインじゃないぞ、あれは」タラリ
566 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:31:48.06 ID:zKOQ1ZX7o

フウリ「ご、ごごごごご主人様ああああ!?」

提督「悪い。悪かった。とにかくもとに戻すからちょっと来てくれ」

 ズズズズ…

フウリ「……ご主人様のいじわる……」ナミダメ

提督「いや、本当に悪かった。誓ってお前に恥ずかしい思いをさせたいわけじゃねえから、あんまり睨んでくれるな」

最上「提督、こっちの本を見てよ! これなら後ろのデザインも載せてあるし、作れるんじゃない?」

提督「ん? そ、そうか? フウリ、もう一回トライしてもいいか?」

フウリ「こ、今度は大丈夫ですよね……?」プクー

提督「ああ、ちゃんと後ろも作る」

フウリ「……そ、それじゃあ……」

提督「よし、やるぞ……!」

 ズズズズ…

フウリ「……!」

最上「今度は成功したみたいだね!」

潮「良かったぁ……!」
567 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:32:47.27 ID:zKOQ1ZX7o

フウリ「わぁ……! これ、素敵……! いつもと違う、ひらひらした服もいいですね……なんだかウキウキします……!」クルクル ピョンピョン

提督「ふう、うまくいったか。機嫌が直ったようでなによりだ」

フウリ「……」クルクル…

潮「? フウリちゃん、どうしたの?」

フウリ「こ、この服、結構、汗ばむ……!」ヌギッ

三隈「くまりんこーーー!」キャーーーー!

潮「フウリちゃん!? ここで脱いじゃ駄目だよ!?」オロオロ

フウリ「汗かいちゃった……お風呂入りたい……」

提督「この服、布地は薄いがひらひらが多くて布が重なりまくってるデザインだな。こりゃ汗っかきにはつらいか……フウリ、元に戻すぞ」

フウリ「ふあい……」フラフラ

 ズズズズ…

フウリ「……やっぱり、元に戻ってきちゃうんですねえ……」ションボリ

提督「可愛くても肌に合わねえんじゃなあ。服選びもなかなか難しいもんだな……」ナデナデ
568 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:33:47.56 ID:zKOQ1ZX7o

長門「それなら、そうだな……提督。試しに、潮の制服をイメージしてもらえるか?」

提督「ん? 潮のか? ……やってみるか」

フウリ「ふえっ!?」

 ズズズズ…

フウリ(八駆制服)「わ、わわわ……!」

潮「わぁ……!」

長門「ふむ、いいんじゃないか?」

朝潮「思ったよりも違和感ありませんね……!」

シエラ「フウリが艦娘になったデス……!」

潮「お揃いだね、フウリちゃん!」

フウリ「お、おそっ、おそ……はわわわ……!」カオマッカ

 フラッ

提督「危ねえ!?」ガシッ

フウリ「きゅう……」
569 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:34:32.95 ID:zKOQ1ZX7o

潮「ふ、フウリちゃん!? 大丈夫!?」

提督「……なんでぶっ倒れてんだよ、フウリは」ダキカカエ

シエラ「えっと、あの、単純に、恥ずかしかったからじゃ、ないかと、思うデス」

提督「恥ずかしい?」

シエラ「いや、その、恥ずかしいというか、照れた、と、いうか……お揃いが、嬉しかったと思うのデスが」

最上「感激しすぎちゃった、って感じかな?」

提督「それでなんで倒れるんだよ。やっぱり元に戻してやるしかねえか」

 ズズズズ…

フウリ(元の服)「はう〜……」オメメグルグル

提督「こうなると、フウリが外で着ていける服なんてあんのか?」

三隈「露出を抑えて、かつ汗っかきが着ても問題ない服、ってことですよね……難しいですね」

シエラ「ある意味、今の姿が最適化されてる、ってことになるのデスか……」

提督「仕方ねえ、衣装を新しくするんじゃなくて、さっと羽織れるようなサマーコートでも見繕った方がいいな」
570 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:35:17.75 ID:zKOQ1ZX7o

ジュリア「……」ムー…

提督「ジュリアはジュリアで、自分の好みの服が見つからなさそうだし」

ジュリア「……残念ですわ。なかなか理想通りというか、これ! と言う絶妙な一品がありませんわね……」

メアリーアン「焦んねぐでいいべ。たくさんあっぺす、おらはもう少しゆっくり見さしてもらうだあ」

シルヴィア「ねえねえ魔神さん! こっちの水着、どうかしら?」バッ

提督「ん? 悪くはねえと思うが、水着? お前が探してたのは陸の上で着る服じゃなかったか?」

シルヴィア「あ、そういえば。ついつい泳ぐときに着る服を優先して考えちゃったわ……いっけない」テヘッ

提督「別に気に入ったんなら買っててもいいけどよ。サイズは大丈夫なのか?」

シルヴィア「そうそう! サイズを調整して欲しくて、さっきの妖精さんを探してたんだけど、先客がいるらしくてね」

提督「先客?」

工廠妖精「ふう、やっと終わったぁ」

 更衣室のカーテン<シャッ!

戦艦棲姫「コノ水着、ナカナカイイ感ジネ」(←黒い極小マイクロビキニ装備)

三隈「くまりんこーーーーーー!!!」キャーーー!

提督「なんだあの布面積は。ほぼ裸じゃねえのかよ」ドンビキ
571 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:36:02.59 ID:zKOQ1ZX7o

集積地棲姫「ダ……大胆スギナイカ?」タラリ

戦艦棲姫「ソンナコト、ナイト思ウケド」クルリ

シエラ「あ、あわわわ……お、おしりもほぼ丸見えデス……!」マッカ

長門「というか、後ろ姿は完全に裸だな……」ドンビキ

朝潮「そういえば、水着が欲しいということで、先ほどこちらに案内したばかりでしたね……」

最上「へーえ、提督、いつのまに戦艦棲姫とも仲良くなったの?」

提督「まあ、いろいろあってな」

潮「も、最上さんは、順応力が高すぎです……!」セキメン

戦艦棲姫「アラ、提督。丁度良ク、イイ水着ガアッタカラ、コレ、イタダイテイクワネ」

提督「おう、お気に召したんならいいけどよ……おい妖精、あんな水着、在庫にあったのかよ」

工廠妖精「あったんだよね、なぜか。わたしも、それでいいの? って訊いたんだけど、彼女がいいって言うから……」

戦艦棲姫「集積地モ、ソンナ囚人服ミタイナノジャナクテ、コッチノビキニヲ着レバイイノニ」ピトッ

集積地棲姫「ワ、私ハ、コレデイインダ……コッチノ、控エ目ナヤツデ……!」

戦艦棲姫「コッチニシマショ? ネェ?」グイグイ

集積地棲姫「ソ、ソンナ紐ミタイナノハ、チョット……!」
572 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:36:48.21 ID:zKOQ1ZX7o

シルヴィア「ねえ、思ったんだけど、あんまり布地が小さいと、日焼けしちゃわない?」

戦艦棲姫「アラ、ソウ? ソレジャ、ドウシヨウカシラ……」

ジュリア「やはり本人の希望に合わせるのがいいと思いますわ。最悪、恥ずかしがって海に出てこなくなっては、本末転倒ですわよ?」

戦艦棲姫「……集積地ニ、似合ウト思ッタンダケド」シュン…

集積地棲姫「エ……ソ、ソレナラ、コレジャナクテ、コッチノホウガ……」

戦艦棲姫「着テクレルノ!?」キラッ!

集積地棲姫「!? エ、マ、マア……ソウダナ」ビクッ

長門「ちょろすぎないか集積地棲姫」

提督「簡単に絆されてるな。おまけに押しに弱すぎる」

ジュリア「あら、いい趣味なさってますわ。そのくらい攻めるなら……こちらはいかが?」ハイレグー

シルヴィア「こっちもセクシーでいい感じじゃない?」Tバックー

戦艦棲姫「ソレモイイワネ……!」キラキラッ!
573 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:37:32.67 ID:zKOQ1ZX7o

集積地棲姫「……誰カ、助ケテクレ」

最上「大丈夫大丈夫。ちょっとくらい大胆でも問題ないよ。今は水着の上にTシャツ着たりして、肌を隠すみたいだからね」

戦艦棲姫「ソレジャ、モウ少シ大胆デモ……」

集積地棲姫「ソレ以上ハ勘弁シテクレ!」ガシッ

長門「最上は事態を悪化させるんじゃない」

最上「えー? そんなつもりはなかったんだけど」

フウリ「う、うーん……」ムクリ

潮「あ、フウリちゃん気が付いた?」

フウリ「う、潮ちゃ……へあっ!? な、なんかすごい恰好の人が……!?」

集積地棲姫「ソレヨリ、オ前、本気ソノ恰好デ海ニ出ルノカ!?」

戦艦棲姫「ソウヨ? アナタモモット開放的ニナレバイイノニ」ズズイ

フウリ「へ、へあああ……お、おふろじゃないのに、おしりがまるみえ……きゅうぅ……」クラクラッ

潮「フウリちゃーーん!?」ガシッ

朝潮「あの、司令官? 戦艦棲姫を見る限り、下着を履かないほうが健康的という説はやはり事実なのでは……?」

提督「そんなわけねえっつうの……お前、まだ利根の怪しい民間療法を信じてんのかよ」アタマカカエ

三隈「くまりんこくまりんこ……」アタマカカエ

シエラ「あ、あの……ま、魔神様も、くまりんこさんも、大丈夫なのデスか……」オロオロ

メアリーアン「みんな、なして脱ぎたがるんだべなあ?」
574 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:38:29.62 ID:zKOQ1ZX7o

 * その後のおまけ *

朝潮「司令官、提案なのですが」キョシュ!

提督「ん?」

朝潮「フウリさんは、いっそ水着を着たほうが良いのではないでしょうか?」

フウリ「ほえっ!?」

朝潮「湯あみが好きということですから、いつでも水に入れる衣装を、と考えたのですが、いかがでしょう」

提督「あー……それもありか。日本以外だと水着着て温泉入るらしいしな」

朝潮「確か、潮さんも水着を持っていたはずでは?」

潮「あ、そういえば……!」

フウリ「い、いえ、あの、さすがに普段から水着でいるのもちょっと……」

提督「遠慮したいか? それならそれでいいが。はっちゃんみたいに潜水艦娘でもなけりゃ、日頃から水着はちょっと不自然かもな」

朝潮「……シルヴィアさんも水着に近いのでは?」ウーン

提督「シルヴィアはそんなに肌出してるわけじゃねえぞ?」

朝潮「なるほど、そうですか……良いアイデアかと思ったのですが、仕方ありません」ムムム…

フウリ(……マルヤッタちゃんがそれに近い恰好してるけど、誰も気付きませんように……)プルプル
575 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/01(土) 00:41:23.27 ID:zKOQ1ZX7o
今回はここまで。
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/06/01(土) 13:03:07.27 ID:CiBknWQr0
おつやで
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/06/01(土) 20:01:59.27 ID:VeSaVRJ20
まってた
578 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:43:31.53 ID:+ekmNVAbo
>576-577
すみません、お待たせしております。

短いですが続きです。
579 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:44:18.38 ID:+ekmNVAbo

 * 鎮守府内連絡通路 *

朝潮「迷子ですか?」

由良「そう。そういうわけで、その深海棲艦を保護したんだけど」

提督「迷い込んできた深海棲艦……なあ」

朝潮「もしかして、外海の深海勢力からの使者でしょうか?」

由良「そういうわけでもないみたい。ただ、こちらに害意はないから、食堂の外のウッドデッキに案内して、休んでもらってるんだけど」

由良「提督さん、とりあえず会ってもらえないかしら。拍子抜けするくらい友好的だから」

提督「……まあ、そういうことなら話は早そうだな」


 * 食堂外 テラス席 *

軽巡棲鬼「コレ、オイシーー!」モグモグ

マーガレット「それは良かったです! いっぱいありますから、たくさん召し上がってくださいね!」

提督「……あいつか?」

由良「はい、この前海軍からいただいた資料によれば、あの個体は軽巡棲鬼と呼ばれている深海棲艦ですね」

由良「ただ、髪型がちょっと違ってて……資料の写真には髪をまとめてお団子にしてるんですが、あの軽巡棲鬼にはそれがないんです」
580 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:45:16.14 ID:+ekmNVAbo

提督「ふーん……なんつうか、深海棲艦らしくねえ深海棲艦だな?」

朝潮「朝潮も同感です。あんなににこにこ笑ってる深海棲艦は珍しいと思います」

提督「……まあいいや。ちょっと邪魔するぞ」

朝潮「失礼いたします!」

マーガレット「あっ、マスター!」

軽巡棲鬼「ワァ!? 艦娘ト……人間ノ提督サン!? 深海棲艦ガイルノニ!? ココッテ、ドウイウトコロナノ!?」

提督「俺は提督。こっちは今日の秘書艦の朝潮だ」

朝潮「駆逐艦、朝潮です!」ビシッ

提督「この島にはちょっと特殊な事情があって、深海棲艦と艦娘の両方が暮らしてる。俺はそのまとめ役みたいなもんだ」

マーガレット「私たちメディウムのマスターで、魔神様ですよ!」エッヘン

提督「ややこしくなるから、そっちの話はあとでな。で、お前は一体何者だ? とりあえず名前は?」

軽巡棲鬼「私、最新鋭深海棲艦ノ、阿賀野デース!」

提督「阿賀野? 軽巡級にそんな名前の艦娘がいたな……?」

朝潮「しかも、最新鋭深海棲艦、と言いましたね」
581 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:46:00.87 ID:+ekmNVAbo

提督「とりあえず、阿賀野……でいいのか? お前が何でこの島に来たのかを知りたいんだが、話せるか?」

軽巡棲鬼「ハーイ、エーットネェ……アレ? 阿賀野?」

提督「うん?」

軽巡棲鬼「……イマ、私、自分ノコトヲ、阿賀野ッテ言ッタノヨネ?」

提督「ああ、言ったな」

軽巡棲鬼「エエエ!? アレ? ドコカラ出テキタンダロ……」オロオロ

提督「……大丈夫か?」

朝潮「自分で言ったことに混乱しているんですか?」

軽巡棲鬼「チョ、チョット待ッテ……エット、ウン、ダンダン、ナントナク、ワカッテキタ……ドコカラ話シタライイノカナ」

提督「覚えてるところからでいいぞ。順番は後で整理すりゃいい。話せるだけ話してみてくれ」

軽巡棲鬼「ウン……私、今ハ深海棲艦ナンダケド、艦娘ダッタコロノコト、少シ覚エテテ」

提督「は? 艦娘だったって!?」

軽巡棲鬼「ソウナノ! 確カ……私、事故カナニカデ両足ガ動カナクナッチャッテ、スッゴイ落チ込ンデタノ!」
582 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:46:46.00 ID:+ekmNVAbo

提督「事故? どんな事故だ?」

軽巡棲鬼「ソコマデハ覚エテナインダケド。デモ、杖? ヲ、ツイテタコトハ覚エテテ」

軽巡棲鬼「背中モ痛クテ、歩ケルカドウカモワカラナイ、ッテ言ワレテタヨウナ、気ガスル」

軽巡棲鬼「ソレガスゴク悲シクテ、夜、海ノ近クデ泣イテタコトハ覚エテルノ」

提督「……そのあとは?」

軽巡棲鬼「ソノアトガヨク覚エテナクッテ……気付イタラ海中ニイテ、苦シクテ、意識ガ真ッ暗ニナッテ……」

軽巡棲鬼「イツノ間ニカ、コウナッテタ気ガスルノヨネー」

提督「お前が覚えているのは、そのあたりの記憶と、名前だけか?」

軽巡棲鬼「ソウネエ? ホカニ覚エテルコト……ウーン、スグニハ出テコナイカナア?」

提督「そうか。まあ、無理に思い出さなくていいぞ。忘れたってことは思い出したくない過去なのかもしれねえし」

軽巡棲鬼「ソウ? ソレジャ、マタ、ケーキ食ベテイイ?」

提督「……いいけどよ……切り替え速すぎんだろ」

由良「なんだか、いつもの質問、聞かなくても良さそうですね?」

提督「そうだなっつうか、すでに一回死んでるようなもんだしな……ん? お前、脚がないのか?」
583 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:47:31.04 ID:+ekmNVAbo

軽巡棲鬼「ア、コレ? 心配シナクテモ大丈夫ヨ? コレ、モトカラダシ、私、浮イテ移動デキルカラ」

提督「どうなってんだそれ……」

軽巡棲鬼「ン−トネ、ヨイショ、ット……コウナッテルノ。見エル?」グイ

提督「……脚の切り口っつうか、断面がなんかの噴射口みたいだな? ここから何か噴き出して浮いてるってか」

軽巡棲鬼「ソウナノ。タダ、ソノセイカ、移動スルダケデ、スッゴイエネルギー使ッチャウミタイデ、疲レルノヨネ〜」

提督「それ、艦娘のときに脚を怪我してたことが由来してんのか……?」

由良「いえ、軽巡棲鬼はもともとこういう見た目ですね。フロート船みたいに海の上を浮いて滑走してるようです」

提督「もとからなのか」

軽巡棲鬼「タブン、ソウヨ〜。私、自分ノ姿ガオカシイトカ思ワナカッタモン」

提督「なるほど……昔のことはとりあえずそこまででいいか。じゃあ今は今で、どうやってこの島に来たんだ?」

軽巡棲鬼「……ウーント、海ノ中デ気ガ付イテ、フラフラ〜ット海面ニ顔ヲ出シテ。デモ、誰モイナクテ……オカシイナ、ッテ思ッテテ」

軽巡棲鬼「キット私、イツモ誰カト一緒ニイタノヨ。艦娘ダッタ頃ニ、一緒ニイタ人ガ、イッパイイタハズナノ!」

由良「ってことは、どこかの鎮守府に所属していた、ってことですよね?」

提督「そうっぽいな。で、それからどうしたんだ?」

軽巡棲鬼「ソノアトハ、ヒトリナンダ〜ッテ思イナガラ、コレカラドウシヨウ、ッテ。ボンヤリシテタラ、オ腹ガ鳴ッチャッテ……」ポ
584 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:48:15.88 ID:+ekmNVAbo

軽巡棲鬼「行ク宛テモナイシ、仰向ケニ水面ニ浮イテ、波間ヲ漂ッテタノ。オ空ガ綺麗ネ〜トカ、オ腹スイタナ〜トカ思イナガラネ」

軽巡棲鬼「デ、プカプカ浮イテタラ、イツノ間ニカ、コノ島ニ流レ着イテテ。ソコデ出会ッタ潜水艦ノミンナニ見ツケテモラッテ……」

提督「潜水艦?」

軽巡棲鬼「ソウソウ。イキナリ魚雷ヲ構エラレチャッテ、ビックリシタケド、待ッテ待ッテーッテ叫ンダラ、ワカッテクレテ!」

軽巡棲鬼「モー、同ジ深海棲艦ダカラ撃タレナイト思ッテタノニ、ソンナコトナインダモン。ドウナルコトカト思ッタワヨ〜」

提督「お前、どこかの深海勢力に所属してるとかはないのか」

軽巡棲鬼「所属? ソウイウノ、深海ニモアルノ?」

提督「ああ。ここだと泊地棲姫が深海棲艦のまとめ役だな」

軽巡棲鬼「フーン、ソウナンダ? 挨拶トカ、シテキタ方ガイイ?」

提督「そうだな。この島の立ち位置が他の拠点とだいぶ違うから、面通しはあったほうがいいな。つうか、さっきいたはずだが」

由良「あれ? 泊地棲姫ってさっき厨房に……」

泊地棲姫(可愛いエプロン装備)「コーヒーヲ持ッテキテヤッタゾ」

軽巡棲鬼「キャーー、アリガトーーー!」

由良(ほぼ裸みたいな姿にフリフリヒラヒラのエプロン姿……この前までエプロンなかったのに)タラリ
585 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:49:01.18 ID:+ekmNVAbo

朝潮「……どうして厨房から泊地棲姫さんが?」

提督「好きなことやっていいぞ、って言ったらこうなってな……そういや朝潮はコーヒー飲めないんだっけか」

朝潮「はい、そもそも間食を控えていたため、こちらに来る機会を逸しておりました!」

提督「そこまでガチガチに真面目にならなくていいんだぞ?」

朝潮「司令官がお食事以外はお水しか口にしておられませんでしたので、それに倣っていました!」

提督「……俺もたまにこっちに来るか」

泊地棲姫「アア、来ルトイイ。歓迎スルゾ?」ククッ

マーガレット「泊地棲姫さんは、今やこのカフェのマスターですよ!」

軽巡棲鬼「エ、一番偉イ人ガ、カフェノマスター、ヤッテルノ? スゴーイ、格好イイ!」キャー!

泊地棲姫「コーヒー専門ダガナ」フフン

マーガレット「お茶菓子は、私や間宮さんが担当です!」エヘン!

提督「なんでかんで間宮も馴染んだみたいだな」

朝潮「ちゃんと役割分担ができてて、朝潮も感心しました!」
586 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:49:45.98 ID:+ekmNVAbo

提督「それにしても、艦娘のときの記憶を持った深海棲艦なんて、初邂逅だな。丁度いい、泊地棲姫も話を聞いてくれ」

泊地棲姫「ナンダ?」

提督「さっきお前がコーヒーを出した深海棲艦……」

泊地棲姫「軽巡棲鬼ネ?」

提督「ああ。どうやら、元艦娘だってのは間違いなさそうだ」

提督「怪我してたとか、他の誰かと一緒にいた、って話してたから、もともと人間社会にいたことは違いない」

提督「その後、何があったかはわからないが、おそらくあいつは何らかの形で轟沈してると思っていいだろう」

朝潮「司令官? これまでは艦娘が轟沈して砂浜に打ち上げられても、みんな艦娘のままだったと思うのですが……」

提督「そこはおそらくなんだが、そいつらは轟沈してからそんなに時間をおかずに浜に打ち上げられたんじゃないか、と思うんだ」

提督「由良にしても朝潮にしても、一度は沈んだとはいえ、そこまで長時間海底に沈んでたわけじゃねえだろ?」

由良「うーん、わからないけど……そういうことになるのかな」

提督「それ以外にも、川提督んとこの蒼龍に言われたんだよ」

提督「轟沈した艦娘が深海棲艦になるというのなら、どうして埋葬した艦娘たちは深海棲艦にならなかったのか、って」

提督「ある程度、時間が経たないと深海化しないとすれば、泊地棲姫が目撃したことがない、って言う話の裏付けにもなるんだけどなぁ」

泊地棲姫「ソコハソウダナ」
587 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:50:31.60 ID:+ekmNVAbo

由良「……その理屈だと、潜水艦の子たちは大丈夫なのかしら」

提督「そこは妖精たちが対策取ってんじゃねえか? でなきゃ今頃、世界中の潜水艦娘が深海化してるはずだ」

提督「その妖精たちの取った対策が、攻撃を受けて崩されて……加護がなくなって沈むと轟沈、って扱いになるんじゃねえかな」

提督「その状態で、艦娘が海底に留まり続けていると深海棲艦化する……ってのが、俺の考えてる説なんだが」

泊地棲姫「ソウダナ……アリ得ナイ話デハナイカモシレナイ」

由良「!」

泊地棲姫「深海ノ特ニ暗イトコロ……多クノ艦ガ、沈ンダ海域カラハ、強イ深海棲艦ガ現レルコトガ多イ」

泊地棲姫「ソコニ轟沈シタ艦娘ガ迷イ込ンダトシタラ……」

朝潮「し、深海棲艦になるんですか?」

泊地棲姫「……カモシレナイナ。ソレカ、ソコニ棲ム深海棲艦ノ餌ニナルカ……」

朝潮「餌……ですか」

泊地棲姫「餌ニナッタ艦娘ノ特徴ヲ引キ継イダリスレバ、転生シタヨウニモ見エソウジャナイ?」

由良「ぞっとしないわね……」

泊地棲姫「タダ、ソレモアクマデ、私ノ想像ダ。ソウイウケースヲ、ジカニ見タワケデハナイカラナ」

朝潮「……そう考えられる、ということですね?」
588 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:51:16.13 ID:+ekmNVAbo

泊地棲姫「タブンネ。ソノ話ヲサテ置イテモ、人間ニ対スル憎悪ヤ反感ヲ抱イタ深海棲艦ガ、鬼級ヤ姫級ニナッテイルノダカラ……」

泊地棲姫「ソウイウ『素養』ノアル艦娘ガ、ソウイウ海域デ沈メバ、ソウイウ深海棲艦ニナル、トイウノハ、アリ得ルカモシレナイ」

提督「けどよ、今回の軽巡棲鬼……阿賀野の場合は、阿賀野自身が人間に対して憎く思ってた感じじゃないよな?」

泊地棲姫「ソウ……ソコガワカラナイ。ソモソモ、深海棲艦デアリナガラ、アンナ風ニ明ルク振舞エル者ハ、私モ初見タコトガナイ」

マーガレット「あのぉ……でしたら、一度、魔神様があの人の魂を見てみたらいいのではないでしょうか?」

提督「……それしかねえかなあ」

泊地棲姫「アラ、躊躇シテルノ? アノ大和タチノ頭ノナカモ、イジクッタンデショウ?」

提督「敵だったからな。そうでもない他人の頭ん中を覗き見するのは、やっぱりちょっとなあ」

泊地棲姫「訊イテミレバイイジャナイ。軽巡棲鬼?」

軽巡棲鬼「モグモグ……エ? ワタシ?」

提督「なあマーガレット、あいつに出したケーキ、何個目だ?」

マーガレット「えっと、今のでホールケーキまるっと1個分ですね!」

提督「……」アタマオサエ
589 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:52:01.56 ID:+ekmNVAbo

泊地棲姫「トリアエズ、訊クダケ訊イテミレバ?」

提督「ああ……食ってる途中で悪いが、お前の昔のことを知りたい。協力してもらえないか?」

軽巡棲鬼「ンー、イイケド、私、アマリ覚エテナイヨ?」

提督「とりあえず、昔のことを調べるのは問題ないんだな?」

軽巡棲鬼「イイワヨー。私モ、私ノ昔ノコトハ知リタイシ!」

提督「よし、同意を得られたな」ガシッ

軽巡棲鬼「エ?」アタマツカマレ

 ズヴュッ!

軽巡棲鬼「ア゜ェッ?」ビクッ

朝潮「!?」

提督「……んー……」

軽巡棲鬼「……」ビクビクッ

由良「ねえ、今の音って何……?」タラリ

泊地棲姫「……フーン、ソウヤッテ頭ノ中ヲ見テイルノネェ」

 ズリュッ

軽巡棲鬼「オ゜ッ?」
590 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:52:45.88 ID:+ekmNVAbo

提督「……ふう、なるほど」

軽巡棲鬼「」シロメ

由良「何をしたんですか……」

提督「魔神の力で、魂の色とこいつの過去を探ってみた」

泊地棲姫「ナニカワカッタノ?」

提督「阿賀野はどこかの鎮守府で療養中だったみたいだな。事故で背骨をやったらしくて、そのリハビリ中だったようだ」

提督「けど、リハビリも難航してたらしく、松葉杖つきながら港に来て自分を責めて泣いて……そこで足を滑らせて海に落ちたらしい」

提督「そのまま意識を失って、沈んだところに深海棲艦の魂が入ってきて、今の姿になったみたいだな」

朝潮「深海棲艦の魂が!?」

提督「まあ、深海棲艦とは言ったが、いわゆる戦争時の戦没者の無念の魂みたいなんだ。それも、飢えの苦しみを味わった者たちのな」

由良「飢え、ですか……」

提督「そういう無念の魂が寄り固まって生まれるのが、深海棲艦……ってことなんだろうな、多分」

泊地棲姫「私モ、ソウナノカ……?」

提督「そりゃわからねえが、お前もお前で、人間に対する恨みというか、嫌な思いはあったんじゃねえか?」

泊地棲姫「確カニ、ソンナ感情モ、アッタヨウナ……」
591 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:53:31.32 ID:+ekmNVAbo

提督「で、あいつの頭の中っつうか、魂を見てみたんだが」

提督「ここでまともなもの、と言うよりケーキみたいな贅沢品が食えたのが幸いしたんだか、思ったより魂の色が穏やかな色調だった」

提督「あいつが深海棲艦になり得る感情ってのも、自分の無力さとか肝心な時に動かない自責の念からくる自己嫌悪が大部分みたいだったし」

提督「軽巡棲姫と比べても暗い色の魂がかなり少ないから、姿こそ深海棲艦だが、かなり艦娘寄りと言えそうだったな」

泊地棲姫「見タ目ダケガ深海棲艦、トイウ感ジカ?」

提督「そこまで……いや、そう言ってもいいかもしれねえな。とりあえず、しばらくの間は様子見しようと思う」

朝潮「承知しました!」ビシッ

マーガレット「あのぉ、魔神様? さっきからこの人の意識が戻ってきてないんですが……」

軽巡棲鬼「」シロメ

泊地棲姫「オイ提督、オ前ノヤッタコトダロウ」

提督「わかってるよ……おーい、阿賀野ー?」ユサユサ

軽巡棲鬼「……ハウッ!? コ、ココハドコ!? 私ハ最新鋭!?」

由良「こんなときにまで最新鋭にこだわるの!?」

軽巡棲鬼「ナ、ナンカ、イマ、阿賀野ノ大事ナトコロニ、ハイラレタヨウナ気ガ、シナイデモナインダケド!?」モジモジ

朝潮「……」

由良「……」

泊地棲姫「思ワセ振リナ、言イ回シダナ」
592 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:54:16.35 ID:+ekmNVAbo

提督「あー、それよりもだ。軽巡棲鬼……っつうか、お前のことはどう呼んだらいい? 阿賀野って自覚があるなら阿賀野と呼ぶが」

軽巡棲鬼→深海阿賀野「エ? ソウネェ……ソレジャ、阿賀野デオ願イシマース!」

提督「おう、んじゃこれからよろしく頼むぜ」


朝潮「司令官。今度、あの阿賀野さんに先程やったことと同じことを、朝潮にも試してみていただけますでしょうか」キリッ

マーガレット「え、あの頭の中を見るあれですか!?」

提督「別に試す必要ねえだろ……」アタマカカエ

朝潮「司令官には、この朝潮のことをもっと深く知っていただきたく!」ズイッ!

提督「わかったわかった……そのうちな、そのうち」ガックリ

軽巡棲姫「私ハ、ヤッテモラッタコト、アルワヨォ?」ヒョコッ

朝潮「本当ですか!!」

由良「……」

提督「お前もいきなり出てきて煽ってくれてんじゃねえよ……」アタマカカエ
593 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:55:01.08 ID:+ekmNVAbo
ということで、今回はここまで。
594 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:05:33.68 ID:OUf9SW8Ho
ルート的にこちらに行っていいものか、ものすごーーく悩みましたが……続きです。
595 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:06:16.70 ID:OUf9SW8Ho

 * 夜 提督の寝室 *

提督「ふー……毎日いろいろあり過ぎだ」

 扉<チャッ

如月「ふんふんふーん♪ あら、司令官! 今日もお疲れ様でした」

提督「……」

如月「どうしたの? 司令官」

提督「いや……俺の部屋に誰かしらいるのも、なんだか当たり前になっちまったなあ、って、しみじみ思っちまってなあ」

如月「……嫌だったかしら?」

提督「まあ……一人になる時間がない、って点では、少しな」

提督「あとは、俺はもともと他人に依存しなくてもいいように過ごしてきたからな。いまも単純にこれでいいのか、って戸惑ってる」

提督「けど、よく考えりゃ、これまでずっと妖精と一緒だったわけだしな……独りじゃ、なかったんだよな、俺は」

如月「司令官……」

提督「とはいうものの、毎日誰かが日替わりで部屋にいるっつうのも、それはそれでどうなんだ?」

如月「そうかしら?」

提督「なんか、まるで俺がお前たちを毎日とっかえひっかえしてるみたいでなあ……傍から見たらくそみたいな男って感じがしないか?」

如月「私たちが好きで押しかけてるんだもの、そうはならないわよ」フフッ

提督「そうだと嬉しいけどな……」アタマガリガリ
596 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:07:02.08 ID:OUf9SW8Ho

如月「嬉しいの!?」パァッ

提督「いや、嬉しいっつうか……」

如月「違うの……?」

提督「んー、まあ、なんだ。単純に喜べてないのは、俺がはしゃいで調子に乗ってしまいそうで怖いんだ」

提督「嬉しいことは嬉しいんだよ、これまでにないことだったし。それで舞い上がってお前たちに嫌な思いさせたくねえ、ってだけで……」

提督「あと、これまで厳しめに突き放してきてたのに、その態度をひっくり返してるわけだからなぁ。俺、結構な勢いで拒絶してたろ?」

如月「そうねえ……でも、いまはそうでもないんでしょう?」

提督「まあ、いまはな……」

如月「ふふっ、なら、それでいいじゃない。司令官は、これまで死ぬつもりでいて、だからこそ私たちとの関わりを避けてたんでしょう?」

如月「避ける理由がなくなったんだもの。変わって当然だと思うわ」

提督「変わって当然か……なあ、如月?」

如月「なあに?」

提督「俺って、そんなに変わったか?」

如月「ええ、昔に比べたらだいぶ変わったわ。柔らかくなった、っていうか、素直になったって言うか」

提督「んじゃあ、少し前に船の上で肩を並べて話をした時の俺と、今の俺の雰囲気は同じか?」

如月「? それだと、そこまで変わったように思えないけど……それってどういう意味?」クビカシゲ

提督「この前のエフェメラの襲撃で、魔神の魂が目覚めちまっただろ? そのせいで、俺の言動や行動が変になってないか……」
597 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:07:46.65 ID:OUf9SW8Ho

提督「お前から見て、俺の本質的なところが変わってないか、違和感ないかってところを確認したかったんだよ」

如月「ふぅん……そういうことなら、司令官は変わってないと思うわ。だって……」スッ

提督「……!」ダキツカレ

如月「……ほら。こうやって不意に抱き着くと、どぎまぎしてすぐに抱き返してくれないところは、これまでの司令官と一緒よ?」

提督「なるほど……」タラリ

如月「司令官は、自分が変わるのが嫌なの?」

提督「……俺の変化が魔神の力のおかげだと思いたくないってだけさ」

提督「魔神の力を得たから強くなったんじゃなく、お前たちと信じあえる仲になったから……って思いたいだけだよ」

提督「でなきゃ、こうやって如月を受け入れる資格もあったもんじゃないだろ?」ナデ

如月「……司令官って、本当に真面目よね」

提督「こういうのは真面目にならなきゃ駄目だろ? 如月だって冗談のつもりはないんだろうし」

如月「そうね……」

提督「如月……?」

如月「……それじゃあ、司令官? 今日こそは、私の気持ちも、冗談にしないで受け取ってくれる?」ギュ…

提督「っ!」

如月「私は、あなたが答えてくれるのを、ずっと待っていたんだけれど?」

提督「……」
598 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:08:31.14 ID:OUf9SW8Ho

如月「……」

提督「それってつまり……」ポ

如月「……」ポ

提督「そう……だな。あれだけのことを言って、この期に及んでちゃんと向き合わねえのも、どうかしてるな」アタマガリガリ

如月「!」

提督「受け止めきれるかわからねえが、努力はする……それでもいいか?」ダキヨセ

如月「司令官……!!」ヒシッ

提督「ただ、ちょっと、トラウマ持ちなんでな……その、できるだけ、みっともないことにならないようにするけどよ」ムムム…

如月「わ、わかってるわよぅ。私だって、初めてなんだし、ちゃんとできるかわかんないけど……」セキメン

提督「……お、俺だって、至らないところも多々あるっつうか、まともにわかってねえから……き、気負わなくていいんだからな?」セキメン

如月「……」

提督「……」

如月「ねぇ……お風呂、行きましょ?」マッカ

提督「……そ、そうだな」マッカ

 * * *

 * *

 *
599 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:09:16.40 ID:OUf9SW8Ho

 * 翌朝 食堂外 テラス席 *

如月「……」ポヤー

電「き、如月ちゃん? どうしたのですか?」

如月「……」ポヤー

電「……如月ちゃん?」ホッペツンツン

如月「! きゃっ!? ど、どうしたの!?」

電「それは電の台詞なのです。さっきからぼんやりしてて……」

如月「そ、そうね……ちょっと、寝不足っていうか……ふふ、うふふっ」ニヘラ

電「……」

扶桑「ああ、こっちにいたのね。如月さん?」

如月「は、はい?」

扶桑「ちょっとお話があるのだけれど……少しだけ、お時間、いいかしら?」テマネキ

如月「? なんでしょう?」

電「寝不足……」

電「……」ポクポクポク

電「……」チーン

電「なのです!?」ズギャーーン!

由良「電ちゃんはどうしたの?」

敷波「さあ?」
600 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:10:01.21 ID:OUf9SW8Ho

 * ランドリールーム *

扶桑「……」ニコニコ

如月「ええと、扶桑さん? お話と言うのは……」

扶桑「昨晩のことなのだけれど……」

如月「……!」

扶桑「お誘い、うまくいったのね?」ニコニコ

如月「……そ、それは……」セキメン

扶桑「うふふ、ごめんなさい、どうしてもそれを訊きたくて」ニコニコ

扶桑「ねえ、如月さん? 今後の参考のためにも、そのこと、あとで詳しく聞かせてもらえるかしら?」

如月「あ、あとでですか?」

扶桑「ええ。どういうアプローチをしたとか、提督に何をすると喜んでくれるのか。私のほかにも、知りたい人がいると思うの」チラッ

 コソッ

扶桑「ふふっ、はっちゃんも隠れてなくていいのに」

伊8「……ばれてましたか」コソッ
601 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:10:46.28 ID:OUf9SW8Ho

扶桑「はっちゃんのお部屋のお泊り日は明後日だったかしら。だとすると、はっちゃんには先を越されてしまいそうね、うふふっ」

伊8「いよいよ決戦です」フンス!

扶桑「そういうわけだから、今夜お部屋にお伺いしてもいいかしら?」

如月「え、ええ、構いませんけど……その、どうしてわかったんですか?」

扶桑「私は、洗濯した提督のお召し物を、毎日お部屋まで届けてるんだもの。お部屋の匂いで気付くわ?」

如月「ああ……そ、そういうことですか」ポ

伊8「ていうか、扶桑さんも、知らないふりして抜け目ないですよね」

扶桑「そうかしら? はっちゃんだってそうだったでしょう? ずっと提督に迫ってたと思っていたんだけど」

伊8「確かにそうですけど、一番手は如月ちゃんか大和さんあたりだと思って、自分からは一応遠慮してましたよ?」

如月「えっ」

扶桑「そこはそうねえ……でも、その次あたりに、あなたかル級さんあたりが来るんじゃないかって思ってもいたんだけど」

如月「えっ」
602 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:11:31.36 ID:OUf9SW8Ho

伊8「そんなに押しが強く見えましたか……あ、はっちゃんはみんなと争う気はありませんよ?」

伊8「提督のそばにいられればなんでもいいです。それこそ、セフレでもペットでも○○○でも構わないです」

扶桑「まあ、大胆。でも提督は、仮にはっちゃんが望んだとしても、ペットとか○○○扱いはしないんじゃないかしら」

扶桑「提督のことですもの、艦娘の人格や尊厳を損なうようなことは、たとえお遊びの場でも忌避すると思うわ」

伊8「うーん……多分、そうなるでしょうね、逆はあったとしても。如月ちゃんも、昨晩はすごく大事にされたんでしょ?」

如月「えっ!? え、ええ、その……すごく、気を使ってもらったっていうか」セキメン

扶桑「あら、今はダメよ、詳しい話はまた夜に、ね?」

伊8「……わかりました」ウナヅキ

扶桑「それじゃ如月さん、よろしくお願いね」フリフリ

如月「は、はい」

 スタスタ…

如月「……」

如月「……な、何を聞かれちゃうのかしら」ポッ
603 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:12:16.41 ID:OUf9SW8Ho

 * 一方の執務室 *

電「司令官さんっっ!?」トビラバーーン!

提督「!?」

霞「い、電!?」

ジュリア「な、なんですの!? なにごとですの!?」

防空巡棲姫「チョット、ウルサインダケド」

早霜「……」

電「司令官さんは! 『ああいうこと』が苦手ではなかったのですか!?」

提督「あ?」

霞「? ああいう……?」

ジュリア「何の話ですの?」

防空巡棲姫「意味ワカンナイ」

早霜「電さん。ああいうことというのは、どういうことでしょう?」

電「どういうこと、って、司令官さんは……あの、その」カオマッカ

提督「……!」ピクッ

早霜「……フフ、フフフ」ニヤリ
604 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:13:01.11 ID:OUf9SW8Ho

防空巡棲姫「ネエ、ナンノ話?」ハヤシモツンツン

早霜「電さんは、司令官のナニを問い詰めたいのかしら……?」

電「そ、それは、その……」カオマッカ

早霜「おそらく、司令官が昨晩、如月さんとナニをしていたか……ということですよね?」クリッ

提督「こっち見んな」ポ

早霜「つまり、昨夜はお愉しみだったということですね? 男と女のやることの、最後まで行ったということですね? フフフ……!」

霞「ちょっ……えええ!?」カオマッカ

防空巡棲姫「アア、ソウイウ……ヘー、提督サンモ、スミニオケナインダ」ニヤリ

ジュリア「は、は、破廉恥ですわぁぁぁぁ!!?」ハリセンスパーーーーン!

霞「あ、あ、あんた、何考えてんのよーー!!」

防空巡棲姫「? ……意味ワカンナイ。ソンナニ大騒ギ、スルホドノコトナノ?」

提督「とりあえず、霞も電もジュリアも落ち着け……」アタマカカエ

霞「落ち着いてなんていられないわよ!」

防空巡棲姫「……ソレ、マジデ意味ワカンナイ。ナンデ落チ着ケナイノ?」

霞「えっ!? そ、それは……」
605 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:13:48.17 ID:OUf9SW8Ho

早霜「まあまあ、それはさておいて……それで、司令官は、無事にことを終えたのですか?」ニチャァ…

提督「……一応はな。恥はかかさずに済んだ……と、思いたい。つうか、あまり追及してくれるな、くそ恥ずかしい」セキメン

電「はわわわ……ほ、ほんとうに、ほんとうなのですか……!?」カオマッカ

霞「だとしても、馬鹿正直に答えてるんじゃないわよ……」アタマカカエ

提督「言えばそれきりだ、言い淀んで変な想像を広められたくねえ。俺だってこれ以上話す気はねえぞ」

防空巡棲姫「フーン……提督サン、ソウイウ話、嫌イナンダ」

ジュリア「艦娘とスキンシップが多い割には、その反応は意外ですわね?」

提督「そういう希望が多いから、希望通り対応してるだけだ。俺の方から頼んだりはしてねえよ」

提督「そもそも俺は、学生ん時にひっでえ現場見ちまったショックで、男の能力が不能になっちまったからな」

防空巡棲姫「酷イ現場?」クビカシゲ

霞「知らないほうが幸せよ。とにかく、それであいつはそういう話を忌避するようになったってこと」

提督「ま、そういうことだ。で、この島に来た艦娘も、だいたいが人間に嫌な思いをさせられた艦娘ばかりだった」

提督「とくにセクハラされて逃げてきたような艦娘にとっては、俺がそういう行為のできない人間であるほうが都合がいいだろ?」

早霜「そのせいで、男性不信の艦娘にも、安心してくっつかれていたと」ニヤリ

提督「……まあ、そういう面もあったかもな。とにかく、それを別にしても、艦娘たちには好意的に接してもらえたし……」
606 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:14:32.22 ID:OUf9SW8Ho

提督「一部の艦娘には、しょっちゅうくっつかれたおかげで、多少克服できたというかなんつうか……」セキメン

防空巡棲姫「慣レチャッタンダ」

提督「……まあ、そうだな。すっげえにこにこしながら、くっついて来るんだ。それに俺が癒されてたのも、結果的には事実なんだ」

提督「とにかく、気分を悪くしなくなっても俺のコレが治ったわけじゃなかったから、俺はそれまでのスタンスを保つつもりでいたんだよ」

提督「それが、メディウムがやってきて、魔力槽に入れられて、体のほうも治っちまった。残りは俺の覚悟の問題だった、ってことだ」

ジュリア「魔力槽……キャロラインとの一件ですわね」

早霜「そして、今のままでは嫌だと熱烈に迫られて陥落した……ということですね?」

提督「間違っちゃいねえが、できれば『受け入れる覚悟を決めた』とか言って欲しいけどなぁ。俺が臆病だったのが悪いのは確かだけどよ」

防空巡棲姫「フーン……」

早霜「それで、司令官? 昨晩は、トラウマによる体調不良はなかったんですね?」

提督「そこはまあ、ありがたいことにな」ハァ…

防空巡棲姫「良カッタジャナイ。ナンデ、嬉シソウジャナイノ?」

提督「俺の体が好転したって点ではそうかもしれないが、こういうシモの話って、べらべら話していいもんか? 普通秘めとくもんだろ?」

ジュリア「お堅いですわ……」

防空巡棲姫「貞操観念ガッチガチダネ」
607 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:15:16.13 ID:OUf9SW8Ho

霞「……あああ、もう! とにかく!! まさかあんたが、よりによって駆逐艦に手を出すとは思ってもなかったわ!!」

霞「もうちょっと節度のある男だと思ってたけど、私の思い過ごしだったみたいね!! 見誤ってたわ!!」

提督「ま、ロリコン扱いされんのは当然だとは思うけどよ。如月放っておいて他の奴に手を出すのも、それはそれでちょっとなあ」

霞「!」

提督「確かに、見た目的な意味で、大和とか金剛とか他に適任がいたかもしれねえが……」

提督「なんでかんで俺はあいつに一番心配してもらって、一番世話になってんだ。真っ先に応えなきゃならねえ相手だと思ってたんだが」アタマガリガリ

電「……司令官さん……!」

霞「ああ、そう……で? 今後はどうするの? このことが皆に知れたら、艦娘どころか深海棲艦やメディウムも放っておかないでしょ?」

提督「そうなるだろうな。ま、向き合うしかねえだろ。ひとりひとり」

ジュリア「ひとりひとり? 魔神様をお慕いしている者が何人いるとお思いですの? 両手を使っても足りないのではなくて?」

提督「それでもだよ。逆にまとめて相手しようとするほうが嫌がられねえか? 横着してるように思われそうだろ」

防空巡棲姫「ドッチニシテモ、提督サンノ体力ガ心配ダネ」フフッ

提督「……つうか、霞や電に聞かせる話じゃねえと思うんだが」タラリ

霞「ほんっと今更過ぎるわね!!」マッカ

電「はわわわわ……」マッカ
608 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:16:01.23 ID:OUf9SW8Ho

早霜「私は、そうじゃないと言うの……?」

提督「お前は動じてねえどころか興味津々じゃねえか、言わせんな」

早霜「……フフフ、そうね。よく見てるわね、司令官……」ニマァ…

提督「ぶっちゃけ電もこの話で赤面するようなタマじゃねえと思ってたんだがな。しょっちゅう、あのマリッサにちょっかい出されてんだろ」

電「そ、それはそうなのですけどぉ……」

提督「お前の場合はマリッサが誰かに余計な手出しをさせないために、自分が囮になろうとしてたと思ったが……さては楽しくなってきたか?」

電「そそそそんなことないのです!?」

防空巡棲姫「ツマリ、コノ場デ一番純情ナノハ、コノ艦娘ダッテコトダネ」ジッ

霞「んなっ!? そ、そんなこと……!」

提督「いや、純情って言うのかそれ? どっちかっつうと、この鎮守府で一番常識的でしっかりしてるから、そういう反応なだけだろ?」

霞「……っ!」

ジュリア「あぁら、そうでしょうか。彼女はこの中で一番お子様だと思われたくないんでは?」

提督「ああ? わざわざ厭味ったらしく言い換えてんじゃねえよ、そういう貶めるような言い方すんなよな」

提督「霞が一番分別があるって話で、考え方が大人で節度があって、ちゃんと恥じらいがあるからこその反応だってんだろが」

霞「……っ」プルプル

電(霞ちゃんの顔が真っ赤なのです……)

早霜(ほめ殺しですね)
609 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:16:46.15 ID:OUf9SW8Ho

防空巡棲姫「ジャア、コノ艦娘トハ、性交シナインダ?」

霞「ちょっ、何言ってんのおおお!?!?」

提督「お前、もうちょっと言い方ってもんがあるだろ……」アタマオサエ

電「そう言いますけど、司令官さんも普段の言動はこのくらい無遠慮でストレートなのですよ?」ジトッ

提督「そりゃ悪かったよ、くそが……」

ジュリア「ええと……魔神様? それで、今後は本気で、真面目にひとりひとりお相手するつもりですの?」

提督「ま、当人から希望があればな。何事も、当事者が俺に言わない限りは動かねえってスタンスは、今後も変える気はねえぞ」

防空巡棲姫「フーン……」

早霜「そうだとすると、今夜以降も司令官は夜の個人面談で大忙しですね……フフフ」

霞「どういうことよ」

早霜「確か、今夜は大和さんで、次がル級さんだったはずですね」

電「ああ……絶対、逃してもらえなさそうなのです」

提督「……」

早霜「そのあとの順番で行くと、伊8さん、軽巡棲姫さん、朝潮さん、扶桑さん、榛名さん、泊地棲姫さん、大淀さん……」ユビオリカゾエ

霞「……」

電「いろいろと洒落が通じなさそうな人たちばかりなのです……」
610 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:17:31.30 ID:OUf9SW8Ho

提督「その中だと、楽に構えてられそうなのが朝潮と大淀くらいしかいねえ」アタマオサエ

霞「朝潮姉に手を出したら承知しないわよ!?」ギロリ

提督「出さねえよ。そもそもあいつ、本当に肩を並べて寝てるだけでにこにこしてるから、むしろ俺が癒されてるほうだぞ」

防空巡棲姫「元ル級モソウダケド、姫級ノ二人ハ前カラ提督ニ御執心ダッタシ。マ、ソウナッチャッテモ、ショウガナイヨネ」

ジュリア「本っ当に、魔神様のお体は大丈夫なんですの?」

提督「そこはもう、腹を括るしかねえんじゃねえの」

霞「いいから責任取ってあげなさい。朝潮姉も含めて、私にはどうやっても止められない人たちばかりだわ」マガオ

電「霞ちゃんが匙を投げたのです……」

早霜「明石さんへ、酒保に精力剤でも置くよう進言しましょうか」

提督「変な方向に気を利かすんじゃねえよ……行くなら俺が行く」

早霜「否定はしないのね。フフフ……」

提督「……」

ジュリア「魔神様、しゃきっとなさってくださいませ?」

提督「わかってるよ……ったく」
611 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:18:16.29 ID:OUf9SW8Ho
今回はここまで。
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/06/23(日) 00:06:55.82 ID:BIdsH9zZ0
うぽつ、ゆうべはおたのしみでしたね
613 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:09:47.94 ID:bjkl9tyOo
おたのしみでしたねえ。
さてさて、待ち受けるは修羅場修羅場……。
続きです。
614 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:10:32.92 ID:bjkl9tyOo

 * その夜 居住区内のとある一室 *

如月「……って感じで……」テレテレ

扶桑「あらあら」ニコニコ

伊8「ふむふむ……」

早霜「フフフ……」ニマニマ

軽巡棲姫「……アァァア……提督、提督ゥウ……早ク、早ク逢イニ行キタイ……!」ウズウズプルプル

戦艦水鬼改「我慢シナサイ。アナタノ順番ハマダデショ?」

軽巡棲姫「ナンデ……ナンデオ前ノホウガ、先ナノヨォォ……!」

ニコ「……」カオマッカ

ヴェロニカ「……ちょっと、ニコ? こういう話が苦手なら、どうして聞きに来ようとしたのよ」

ニコ「ぼ、ぼくは、お姉ちゃんとして、魔神様がどうしてるのか、心配だから聞きに来たんだよ……!」ワタワタ

ヴェロニカ「私はあなたのほうが余計に心配なのだけれど?」ハァ…

ノイルース「……」マッカ

オボロ「……」マッカ

ヴェロニカ「というか、なんであなたたちも縮こまってるの。後学のためとか言ってたくせに、その有様で何か学べると思って?」
615 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:11:17.67 ID:bjkl9tyOo

ノイルース「いえ、何と言いますか……」

オボロ「うむ……ここまで甘露と言うか、甘々と言うか……」

ノイルース「ええ、聞いているだけで顔が火照ってくるような話は、なかなか経験できないと言いますか……」

オボロ「それがしも、まだまだ修行不足か……くっ!」

伊8「意外とメディウムのみなさんは集まりませんでしたね? もっと大挙して押し寄せてくるかと思ってたんですけど」

ヴェロニカ「傍にいるだけでいい、みたいなおこちゃまな子が意外と多いのよ」

ヴェロニカ「今だって坊やのお部屋に表立って定期的に通ってるの、キャロラインくらいでしょ?」

ヴェロニカ「マリッサやケイティーみたいにぶっ飛んでる子もいるけど、マリッサは最初からこの子の話を参考にはしないでしょうし」

ノイルース「それこそ我が道を行きますからね。それからケイティーは引き続き懲罰中です」

伊8「両極端ですね」

ヴェロニカ「そういう艦娘も、坊やに興味がある子が多い割には、これしか集まってないのは意外じゃないの?」

伊8「メディウムとは少し事情が違いますけど……まず、駆逐艦の子たちは呼ばないようにしていました」

早霜「私は、聞いていましたので……フフフ」

伊8「それから、榛名さんは聞きたくない、って言ってましたね。陸奥さんはわざわざ聞くまでもない、って」

ヴェロニカ「むっ……そうなの?」
616 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:12:02.92 ID:bjkl9tyOo

伊8「もしかしたらふたりは、事前に情報を仕入れることで、本番の楽しみを減らしたくなかったのかもしれません」

ヴェロニカ「……ふん、そう」ムスッ

伊8「ヴェロニカさんも、そうしておけば良かったって思ってます?」

ヴェロニカ「別に。そんなことはないわ」プイッ

軽巡棲姫「ソレヨリ、モット話ヲ聞キタイノダケレド……アノ人ハ、ドウシタラ悦ンデクレルノォ……?」ズイッ

如月「えっ? えっと……そうね、司令官は、意外と……ごにょごにょ……」

軽巡棲姫「……ソレ、本当?」

如月「そうだと思うわ……」

戦艦水鬼改「チョット、ナニヲフタリデコソコソ話シテルノ」ズイ

ノイルース「ええ、肝心なところが聞こえませんでしたよ」ズイ

扶桑「内緒は良くないわ? 何の話だったの?」ズイ

軽巡棲姫「」ビクッ

如月「え、えっと……司令官は、キスが好きなんじゃないか、って」

ヴェロニカ「あら」キラッ

オボロ「まことでござるか!?」キラッ

伊8「その辺、詳しくお願いします」キラッ

如月「え? え、ええ、その……実は司令官に……」

ニコ「……///」ミミマデマッカ

早霜「ニコさんも照れていないで、しっかりと聞いたほうがよろしいかと……フフフ」

ニコ「わ、わかってるってば……///」
617 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:12:47.23 ID:bjkl9tyOo

 * 一方 工廠 *

明石「それで、みんな如月ちゃんのところに話を聞きに行ったらしくて。今頃あっちは盛り上がってるんだろうなあ」

敷波「……明石さんは興味ないの?」

明石「うーん、ないと言えば嘘になるけど、別に提督とそういうことをしたいとは思ってないかな」

軽巡新棲姫「ヘー、ソウナンダ」

明石「っていうか、敷波ちゃんからそういう話題が出てくること自体、私的には結構衝撃なんだけど?」

敷波「まあ……あたしも、何にも知らないわけじゃないからさ。こういう相談できそうな人、明石さん以外に知らないし」ポ

ブリジット「……し、敷波殿は、意外と、進んでいたのでありますな」セキメン

敷波「別に、進んでもないし。っていうか、進んでるって何さ?」ムッ

ブリジット「あ、いえ、そのぉ……す、すみませんであります……」

軽巡新棲姫「フフッ、フタリトモ、ウブナンダネー」ニマニマ

ブリジット「……かくいう軽巡新棲姫殿は、余裕でありますな?」

軽巡新棲姫「マーネ。ワタシモ、ソウイウ経験ハ無イケド、知識ガ無イワケジャナイシ、ソウイウノガ嫌ダッテワケデモナイシ」

軽巡新棲姫「ッテユーカ、逆ニ、ワタシハ興味ハアルカナー。コノ前ハ、エロ触手ヲ、特等席デ見テタワケダシ?」

敷波「ああ……」セキメン

ブリジット「マリッサの件でありますな……」カオマッカ
618 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:13:32.90 ID:bjkl9tyOo

明石「? 何かあったの?」

敷波「この前、島に攻めてきたあっちの大和さんを、クラーケンがさ……」

軽巡新棲姫「ドロドロノ、デロデロノ、グチョグチョニ、シタンダヨネエ」ニヤニヤ

ブリジット「それを我々も見てしまったのであります……」ミミマデマッカ

明石「……」アタマカカエ

敷波「さすがにああいう普通じゃないのは、あたし、好きじゃないから。その、やっぱり、するんだったら普通のほうが……」モジモジ

軽巡新棲姫「ソレナラ、提督ト普通ニシテクレバ、イイジャナイ」

敷波「ほえっ!?」マッカ

明石「何を唐突に言い出すんですか……」ズツウ

敷波「そ、そんな、やらないよ……!?」

軽巡新棲姫「ソウナノ?」

敷波「その、好き同士ってわけでもないのに、体の関係持つのって変だよ……司令官もそうだと思ってるはずだし」カオマッカ

軽巡新棲姫「フーン。ダッタラ、彼女ニナッチャエバ、イイジャナイ」

ブリジット「押しが強すぎるであります!?」シロメ
619 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:14:17.17 ID:bjkl9tyOo

敷波「かの……っ!? そ、それだって気が早いってば!! 司令官とは、まだそこまでの関係じゃないし……」

敷波「っていうか、他の子もいるしさ? あたしはまだ、今の関係のままのほうが、いいっていうか……」

敷波「司令官ってなんでも背負っちゃうし、変にプレッシャーかけて司令官の重荷にもなるのも嫌なんだよね、なんていうか……」

明石(ああ、甘酸っぱいなあ……)

軽巡新棲姫「フーン。ソレジャ、アタシガ彼女ニ立候補シチャオッカナ」ニンマリ

敷波「!?」

ブリジット「一足飛びすぎであります!?」

明石「いやー、それはそれで大変だと思うけどなあ。だって、ライバルが如月ちゃんに、大和さんに、金剛さんに……」

明石「ル級さん……じゃなくて、今は戦艦水鬼か、あとは軽巡棲姫に泊地棲姫に……さらにはメディウムのみんなにも好かれてるでしょ?」

明石「仮に二股三股が許されたとしても、そこへ割り込んでいくには、相当に大変だと思うんだけど」

ブリジット「群雄割拠でありますな……」タラリ

軽巡新棲姫「ッテイウカ、ミンナ堅苦シク考エスギジャナイカナー。提督サンモ、含メテサ?」

敷波「……まあ、別に誰が彼女になってもいいけどさ。きっと司令官は、みんなを分け隔てなく受け入れてくれると思うよ?」
620 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:15:02.12 ID:bjkl9tyOo

敷波「でも……それで司令官に無理させて、司令官の身になにかあったら、あたし怒るけど。それはいいよね?」ギロッ

明石「……」

ブリジット「……」

軽巡新棲姫「……」

敷波「ちょっと、なんでみんな黙っちゃうの?」

軽巡新棲姫「エ、ダッテ怖イシ……」

明石「提督みたいな目つきしてたから……」

敷波「え、司令官みたいだった?」パァッ

明石「そこで嬉しそうな顔をするのは間違ってるからね?」

ブリジット「敷波殿も愛情が重いであります……」
621 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:16:02.27 ID:bjkl9tyOo

 * そして *

大和「提督、ついに契りを結ぶ日が来たのですね……!」

 * 次の日の夜 *

戦艦水鬼改「マサカ、コンナ日ガ、来ルトハネ……!」

 * その次の日の夜 *

伊8「ずーっと待ってました。待ちくたびれました」シタナメズリ

 * そのまた次の日の夜 *

軽巡棲姫「絶ッ対、逃ガサナインダカラァ……!!」

 * またまた次の日の(略) *

朝潮「司令官には、朝潮のことを、もっともっと知っていただきたく!!」ズイッ!

 * またまたまた次(略) *

扶桑「提督……やっと、あなたに救ってもらった御礼ができるのですね……」

 * またま(略) *

榛名「提督になら、榛名は何をしていただいても大丈夫です!!」ハダカリボン

 * (略) *

泊地棲姫「私ガ見込ンダ男……簡単ニハ、果テテクレルナヨ……?」

 * (ry *

大淀「明らかに寝不足です! ちゃんと寝てください!!」ウワーン!

提督「おう……そ、そうさせてもらうから泣くな」メノシタニクマ
622 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:16:47.18 ID:bjkl9tyOo

 * 翌朝 工廠 *

明石「それで大淀はなにもしなかった、と……」

大淀「……」

明石「まあ、お部屋に泊まりに行っただけでも大きな進歩だとは言えるけど……どうして何もなかったのに、目の下にクマができてるのよ」

大淀「……眠れなかったの」

大淀「提督の隣で寝て、静かな寝息を聴きながら……細いなりにごつごつした、血管の浮いた腕と手の甲と、細くて長い指を触ってて」

大淀「提督の寝顔とか寝息とか、その腕とか肌の感触を確かめてるだけで時間を忘れちゃって……気付いたら朝日が昇ってたの」ウフフ…

明石「ふーん」

大淀「それよりも提督が明らかに眠そうにしてるのがつらくって……ずっとお仕事で頑張ってるのに!」

大淀「それからあの部屋! 今やもう完全にヤ○部屋じゃない!! 雄と雌の匂いが微かにベッドに残ってるし!」

明石「ヤ○部屋とかオスメスって、大淀……」ヒキッ

大淀「いいえ由々しき問題です! いくら毎日シーツを洗ってたとしても、あれじゃベッドに匂いがこびりつくのも時間の問題……!」

大淀「あんな環境で、提督が安眠できると思えないわ。早くなにかしら手を打たないと!」

明石「まあ、それなら……一応、もう手を打ったっていうか、有志が動いたって言うか」

大淀「えっ?」

 扉<ギィィ…

大淀「!?」ビクッ
623 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:17:32.14 ID:bjkl9tyOo

敷波「……ただいま」ヌッ

明石「あ、おかえりー」

ブリジット「ただいま戻りましたであります」

軽巡新棲姫「Aloha〜」

ヴェロニカ「……邪魔するわよ」

明石「あら、ヴェロニカさんも一緒だなんて珍しい」

大淀「ね、ねえ明石、なんか、敷波ちゃんがイライラしてるみたいなんだけど……敷波ちゃん、何かあったの?」

敷波「あー、あたし? ちょっとさ……説教、してきたの」

大淀「説教?」

ヴェロニカ「ええ。この子が、坊やと『おいた』した子たちを全員呼び出して、もっと体を気遣ってやれ、って、ね」

軽巡新棲姫「目ツキガ、提督サンニ、ソックリデサ。アレ、駆逐艦ノ出シテイイ雰囲気ジャナイヨー」

ブリジット「ぶっちゃけ滅茶苦茶怖かったであります……自分は同席したニコさんと震えてたであります」ガタガタ

明石「まあ、鬼神と呼ばれた艦娘の妹艦だからねえ」

大淀「……」タラリ
624 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:18:17.29 ID:bjkl9tyOo

敷波「これで少しは、みんなが司令官を気遣ってくれるといいんだけど」ハァ…

軽巡新棲姫「Gallery モ大勢イタシ、コレカラハ、ミンナ気ヲツケルンジャナイ?」

明石「でも、ひとりひとりだと次に同衾できるまでのサイクルも長いし、一回一回の行為が濃くなっちゃうのは仕方なくない?」

敷波「そうであっても手加減なしは駄目だよ。結局、それで司令官は寝不足になって、大淀さんが司令官と何もできなかったんじゃない」

大淀「えっ!? いえ、その……まあ、私はまだ、いいん、です、けど……」カオマッカ

敷波「……大淀さんがそう言うなら、ま、いいけどさ」フゥ…

ヴェロニカ「そんなアンニュイな顔するくらいなら、お嬢ちゃんも坊やを襲えばいいのに。人に説教するくらいなんでしょう?」

軽巡新棲姫「野暮ナコト言ワナイノ。ソコハ、乙女ノ事情、ッテヤツヨー?」

ヴェロニカ「……ふん、わかってるわよ」フゥ…

ブリジット「こう言いはしますが、ヴェロニカも言うほど魔神様に迫ってるわけでもないでありますし……」ボソッ

明石「気にはしてるけど手は出せない……つまり敷波ちゃんといい勝負だと」ヒソッ

ヴェロニカ「なんですって?」ジロリ

敷波「何か言った?」ギンッ

ブリジット&明石「「いいえなにも!」」ビシッ!
625 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:19:02.32 ID:bjkl9tyOo

軽巡新棲姫「大淀ハ、次ニ期待ダネー」

大淀「ちょ、ちょっと待ってください、私が提督の部屋に入ったことも、それで何もしなかったことも、皆さん周知済みなんですか」

軽巡新棲姫「ミンナ知ッテルト思ウヨ?」

ヴェロニカ「騒ぎを見に来た子たちも含めてね」

大淀「」シロメ

大淀「」シロメ

大淀「」ヒザカラクズレオチ

明石「ちょっ、大淀!?」

軽巡新棲姫「ソンナンデ、次ハ大丈夫ナノカナー」

ヴェロニカ「駄目に決まってるでしょう、言うまでもなく」



明石「それにしてもさあ、提督をおもちゃにしたいヴェロニカさんと、提督をおもちゃにされたくない敷波ちゃんがさ」ヒソヒソ

明石「同じような理由で似たような溜息をつくのって、なかなか芸術点高いと思わない?」ニチャァ…

ブリジット「自分にはそこまで恋バナを愉しむ余裕はないであります……」ドンビキ
626 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:21:14.72 ID:bjkl9tyOo
というわけで今回はここまで。
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2024/07/12(金) 17:23:34.63 ID:AZSXcyhM0
幼女か?いやアレね、頑張乙
628 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:47:48.54 ID:O6Y5narxo
もう一方、胸中穏やかではない方がおられるので。

続きです。
629 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:48:31.53 ID:O6Y5narxo

 * 一方 時雨の部屋 *

 (時雨のベッドの上で山城が時雨に抱き着いて眠っている)

山城「……」スヤ…

時雨「……」

 扉<コンコン

電「失礼、するのです」コソッ

吹雪「……時雨ちゃん、入っても大丈夫?」ヒソッ

時雨「うん、どうぞ」ムクッ

朧「それじゃ、お邪魔します」ソロッ

時雨「来てくれてありがとう、みんな座って。僕は、ここから動けないから、このまま話を聞かせてもらうけど」ベッドノフチニスワリ

山城「んむ……」

時雨「大丈夫だよ山城。僕はここにいるから」テヲニギリ

吹雪「……山城さん、相当ショックだったんだね、扶桑さんのこと」

電「今朝からこんな調子なのですか?」

時雨「これでも、だいぶ落ち着きはしたよ。それより、敷波の話を聞かせてくれる? どんな内容だったの?」

朧「うん。えーと、要は、提督に無理をさせるな、って話だったよね?」
630 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:49:16.07 ID:O6Y5narxo

電「なのです。司令官さんが毎日眠そうにしてたのは、結局そういうことだったので……」セキメン

吹雪「司令官が目に見えて弱ってたのを知ってたから、みんな反論しないで、おとなしく聞き入ってた感じだったね」

時雨「……そっか。鬼気迫るものを感じてたから、ひと騒動あるのかと身構えてたんだけど」

電「みんな調子に乗ってたのを自覚してたみたいだったのです。あと、敷波ちゃんの目つきと雰囲気が司令官さんそっくりだったのです」

朧「朧も、あんなに怖い敷波を見たのは初めてだったなあ。ブリジットさんが震えながら抱きついてたニコさんもちょっと気圧されてたし」

吹雪「由良さんも怯えてたもんね。初雪ちゃんだけ全然動じないで見てたのも、ある意味すごかったけど……」

時雨「そっか。見てみたかったなぁ。提督はどうしてたの?」

吹雪「今日はずーっと執務室にいるよ。寝ぼけててサインがぐちゃぐちゃになった書類が多いから、書き直すんだって」

吹雪「霞ちゃんが手伝いに行ったから、心配ないと思うけど」

朧「霞が? 提督と一緒にいて大丈夫なの? 朝潮のときの件で怒髪天になってたから、接触を避けさせてたと思うんだけど」

吹雪「あれは霞ちゃんの誤解だったってことで落ち着いたみたいだよ」

朧「誤解?」

電「あの日は、朝潮ちゃんが自分のことを魔神の力で全部見て欲しいと、司令官さんに迫ったそうなのです」

電「で、実際に見てもらったらしくて、そのあとも迫り続けたらしいのですが、司令官さんに窘められて、そこまでだったらしいのです」

吹雪「朧ちゃんが来る前に朝潮ちゃんがそういう話をしてて、それを聞いてた霞ちゃんが司令官のところに向かったんだよね」
631 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:50:00.93 ID:O6Y5narxo

朧「そうなんだ。じゃあ朧は、霞と入れ違いになったってこと?」

電「そういうことなのです」

時雨「霞が執務室に手伝いに向かったのは、提督へ勘違いのお詫びのためのついで、ってことかな」

電「だと思うのです」

時雨「でも、その様子だと、朝潮が提督とそういう関係になりそうなのは時間の問題に思えるね。根本的な解決には至らない気がする」

吹雪「そ、そうだね……」

 扉<トントン

那珂「時雨ちゃーん、入っていい?」

時雨「うん、どうぞ」

那珂「お邪魔しまーす……わあ、お客さんいっぱいだ」

吹雪「あ、那珂ちゃん!」

朧「どうして那珂さんが……あ、もしかして山城さんですか」

那珂「うん。まだ回復してないのかなーって」
632 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:51:00.47 ID:O6Y5narxo

朧「……ねえ、そろそろあたしたちは、おいとましよっか」

吹雪「そうだね。山城さんが起きるといけないし」

山城「起きてるわよ……」ボソッ

電「!」

朧「!」

吹雪「!」

那珂「山城ちゃん!」

山城「話は途中から聞いてたけど……あの邪知暴虐の限りを尽くすあの男を、止めようって話じゃなかったのね」ムクッ

吹雪「むしろ司令官が迫られてて困ってるんですけど……」タラリ

山城「あああ……扶桑お姉様を手にかけるだけに飽き足らず、艦娘どころか深海棲艦をも餌食にしてるだなんて……!」ワナワナ

時雨「山城、大袈裟だよ。深く考えすぎだって」

山城「何言ってるの時雨! このままじゃ、この鎮守府の女たちは全員あの男に食われるわよ!? なんて恐ろしい……!!」

吹雪(私はそれでもいいかなあ……)ポ

朧(……うん、嫌じゃないかも)ポ

電「はわわわ……」ポ

時雨「……みんな、満更じゃなさそうだね?」ボソッ

吹雪朧電「「!?」」
633 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:51:46.59 ID:O6Y5narxo

那珂「うーん、やっぱり山城ちゃんは考えすぎだと思うなあ。少なくとも那珂ちゃんは、提督さんとはそういう関係にはならないよ?」

山城「那珂ちゃん……そうね、那珂ちゃんは、私が守るわ……絶対、提督に渡すものですか」ギリギリギリッ

朧「うわぁ……」

吹雪「山城さん、そんなに扶桑さんが司令官に靡いたことが気に入らないんですか」ヒキッ

山城「ええ気に入らないわ。扶桑お姉様は、かつての鎮守府でこれ以上ない扱いを受けていたのよ……」

山城「あいつを……D提督を殺した後、扶桑お姉様は、自分の中に何もなくなってしまったと言っていたわ……」

山城「それほどまでに、耐え難い屈辱と怨嗟を抱えていた扶桑お姉様を支えることこそが、この山城の役目……だと言うのに!」

山城「よりによってあの男が! 扶桑お姉様の……お姉様の……ぅあああああ!!」アタマカカエ

那珂「山城ちゃん落ち着いてー!?」

吹雪「これは重症だね……」

時雨「これでも落ち着いたほうなんだけどね?」

電「山城さんは欲張りなのです」

山城「!?」

朧「ちょっと、電……?」

電「だって、そうなのです。山城さんは、扶桑さんにはずっと山城さんを見てて欲しいって考えてるように見えるのです」

時雨「……」
634 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:52:31.50 ID:O6Y5narxo

電「そのうえ、那珂ちゃんのことも、ファン1号だからってすごく熱心に追いかけてますし」

電「いまも、時雨ちゃんのことをそうやって独り占めしてるのです」

電「山城さんこそ、山城さん自身に都合の良い世界を作ろうとしてるのではないですか?」

山城「んなっ!? そ、そんなこと……!!」

電「だったら、扶桑さんや時雨さんを解放して欲しいのです。時雨ちゃんは、敷波ちゃんのことを気にかけていました」

電「でも、山城さんが心配だから、電たちに話の内容を聞かせて欲しいって頼んできたのです」

山城「私が……私が、時雨の邪魔をしてるっていうの……!?」

電「……」

山城「邪魔なんかじゃないわよ……私は、ただ……」

山城「私は、ただ、時雨と一緒にいたいだけよ……それが、悪いっていうの?」

山城「あのD提督のせいで、顔を合わせてもろくに話もできず! やっと一緒に出撃できたと思ったら、轟沈させられて!!」

山城「その上、時雨まであんな目に遭わせて……私は……私は、時雨と、何もできなかった。時雨のために、何もできなかった!!」

山城「その時間を取り戻したいだけよ……扶桑お姉様と……時雨と……あの時、どうやっても手に入らなかった、あの時間を……」ポロポロポロ…

山城「私は……扶桑お姉様と時雨の笑顔を、ずっと見ていたいだけよ……それだけなのよ……!!」
635 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:53:16.26 ID:O6Y5narxo

朧「……えっと、那珂さんは?」

山城「そんなの歌ってる那珂ちゃんの笑顔と歌声が最高過ぎてずっと見ていたいだけに決まってるじゃない」デロリ

吹雪(怖っ!?)

朧「い、いまの話に、那珂さんが出てこなかったから……」

山城「それとこれとは話が別よ? 区別して当然でしょう?」

山城「あんな不幸のどん底みたいなD提督鎮守府の思い出に那珂ちゃんを巻き込もうだなんて暴挙は絶対に許しておけないわよ?」

朧「そ、そういう意味ですか」

山城「そうでなくても那珂ちゃんがここに来るまで、どれほど不幸極まりなかったか……!」

那珂「山城ちゃん……!」

朧「……」

山城「……わかってるわよ。電の言う通りよ」

山城「こんなの、どうせ私の独り善がりだって。扶桑お姉様の笑顔が、私以外の誰かに向くのが、気に入らないだけ」

山城「那珂ちゃんの歌だって、私が聴きたいから。時雨にすがっているのも、私が甘えたいだけ……それが、私の幸せだから」

山城「……でも、扶桑お姉様にも、那珂ちゃんにも、時雨にも……幸せに、なって欲しいって気持ちは、本当よ……」ウナダレ

時雨「山城……」

吹雪「……」

朧「……」
636 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:54:01.42 ID:O6Y5narxo

電「……山城さん?」

山城「……なによ」

電「司令官さんも、みんなに幸せになって欲しいって気持ちは、一緒ですよ?」

山城「……」

電「司令官さんは、きっと、山城さんの幸せも叶えてあげようとするのです」

電「島にいるみんなに、笑顔でいて欲しいって……そのために、司令官さんはいつも行動しているのです」

山城「だからわかってるわよ、そんなこと……あいつが、それこそ邪知暴虐の限りを尽くして、人間たちを追い払って」

山城「どんな手を使ってでも、自分がどんな目に遭ってでも、私たちを幸せにしようとしてることくらい、わかってるわよ……!」

時雨「それで扶桑が提督を褒めるのが気に入らないだけだよね。実際山城が陣頭指揮取ってそういうことしたわけじゃないし」

山城「……うぐ……っ」

吹雪「あー……」

電「時雨ちゃん、核心を突いちゃったのです」

那珂「んもー、山城ちゃんったら、大人げないんだから〜」

山城「……うう、那珂ちゃんに言われたら返す言葉もないわ」グスグス
637 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:54:46.25 ID:O6Y5narxo

時雨「ねえ山城? 山城は、ずっと扶桑に見ててもらいたいの?」

山城「……そ、そうよ」

時雨「ふーん、そっか……ねえ、山城……?」

山城「なによ……」

時雨「僕じゃ、ダメかな?」テレッ

山城「!?」

時雨「山城がそうだったたように、僕も、扶桑や山城とのコミュニケーションを、ずっとD提督に邪魔されていたんだ」

時雨「それどころか、八つ当たりも同然の山城たちの悪口を、ずっとD提督から聞かされてて、不愉快で仕方なかったよ」

時雨「山城たちに嘘をついて、沈めたと聞いた時は立っていられなかった」

山城「……」

時雨「それで、D提督のところから逃げて、轟沈して。山城たちと出会った後も、僕はずっと、この島の様子を眺めてるだけだった」

時雨「すぐそこに山城も扶桑もいるのに、全然話が出来なくて、触れることもできなくて……すごく寂しかったんだ」

山城「時雨……」

時雨「こうやって、やっとみんなと触れられるようになった後も、山城からは避けられてた気がしたんだよね」
638 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:55:30.91 ID:O6Y5narxo

時雨「扶桑からは逆に思いっきり抱き着かれたけど。ねえ、山城はなんで僕とのスキンシップは避けてたの?」

山城「す、スキンシップって、お、おかしいでしょ!? 戦艦が、駆逐艦にべたべたしてたら……!」

時雨「今朝はそうでもなかったじゃないか。山城は、つらくなったから僕に頼りに来たんじゃなかったの?」

山城「そ、それは……」

時雨「ああ、もしかして扶桑に遠慮してたのかな? 僕は構わないよ。むしろ、もっと触って欲しいな」ニコ

山城「あ、あんた、何を言い出すの……!?」

時雨「僕の正直な感想だよ。扶桑が提督に靡いたことに落ち込んで、僕を頼ってきたのも、扶桑には悪いけど嬉しかったし……」ズイ

時雨「不貞寝するときに抱き枕にされたのも、悪い気分じゃなかった……っていうか、むしろ役得? って感じだったし、ね」テレッ

山城「……じょ、冗談は、やめなさいよ……」

時雨「冗談? それこそ冗談じゃないよ。そうじゃなきゃ、僕のベッドで山城を寝かせる理由がないと思うんだけど?」ズズイ

山城「……っ」

時雨「だからさ」オシタオシ

山城「っ!」オシタオサレ

時雨「僕はもっと山城に触れ合いたいんだ。山城も……僕のこと、もっと好きにしていいんだよ……?」オオイカブサリ

山城「……っっっ!!」ゾクゾクゾクッ
639 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:56:15.92 ID:O6Y5narxo

時雨「ふふっ、山城、耳まで真っ赤だ。恥ずかしいの? それとも……興奮してるの?」フーッ

山城「っ、ちょ、ちょっと待ちなさい時雨! みんな見てるでしょ!?」アセアセ

時雨「みんな?」フリムキ

 ガラーン

山城「」

時雨「みんななら空気を読んで部屋から出て行ってくれたよ?」

山城「……ウソデショ?」

時雨「僕の部屋に来て、ベッドに入って……ふたりっきり」ポ

山城「」

時雨「なんて顔してるのさ。朝に山城が訪ねてきたときだって、同じシチュエーションだったじゃないか」

時雨「山城……いいよね? 山城も好きにしていいから、僕も……」ニコ

山城「ちょ、待っ、しぐっ、こ、こころの、準備が……!!」

時雨「……嫌なの?」ションボリ

山城「えっ!? い、いえ、嫌じゃないけど……」

時雨「やったぁ」ニマァ

山城「ひっ」
640 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:57:00.81 ID:O6Y5narxo

 * 時雨の部屋の外 *

那珂「聞き耳立てちゃ駄目だよ?」

電「……気になるけど、仕方ないのです」

吹雪「時雨ちゃんも、山城さんのこと心配してたからね……」

電「荒療治が必要だって言ってたのです」

朧「だ、大丈夫なのかな……」タラリ

那珂「うーん、でも那珂ちゃん、山城ちゃんの気持ち、ちょっとわかるなあ」

電「そうなのですか?」

那珂「うん。だってほら、那珂ちゃんはアイドルでしょ? アイドルは恋愛禁止とか言われたりするじゃない?」

那珂「みんなに夢を与えて、みんなから愛される存在だからこそ、現実をにおわせるような行為は忌避されてるって言うか」

那珂「あんまり自分であまり言いたくないけど、ぶっちゃけアイドルって清廉さと言うか、処女性を求められてると思うんだよね!」

電「ぶっちゃけすぎなのです!?」

那珂「きっと山城ちゃんは、扶桑さんにもそういうのを求めてる気がするんだよねー」

朧「ああ……!」

那珂「山城ちゃんにとって、扶桑さんは支えなきゃいけない相手って言うのもあるけれど」

那珂「それ以上に憧れを抱いてる感じでしょ? 崇拝の対象になってる。だから神聖視して偶像化して……綺麗さを求めすぎてる感じ?」
641 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:57:45.94 ID:O6Y5narxo

那珂「神様みたいな存在だから、ずっと綺麗なままでいて欲しい、ずっと高嶺の花であり続けて欲しい、みたいな」

那珂「だからこそ、自分が触るのも恐れ多いのに、どうして提督さんが、って思ってるんだと思う」

吹雪「……綺麗なものを、ずっと綺麗なままで取っておきたい、ってことなのかな?」

那珂「そういうことだと思うなあ」ウンウン

那珂「扶桑さんに処女性求めてるってのもあるし、その扶桑さんを寝取られたのが悔しいってのもあるんだろうけど」

電「だからぶっちゃけすぎなのです!」

朧「でもそれじゃ、扶桑さんを縛ることになるんじゃ……あ、それで電が解放しろって言ってたのか」

電「なのです。司令官さんは好きにしろと突き放しますが、山城さんは逆なのです」

那珂「山城ちゃんは結構、独占欲が強いと思うよ? 那珂ちゃんのことも大事にしてくれるけど、ちょっと用心深すぎるってくらいだし」

那珂「握手するときも恐る恐る触ってる感じ? 腫れ物扱いじゃないけど、割れ物に触るような……大事にされてる感はすごかったなあ」

那珂「多分、時雨ちゃんに対しても、必要以上に気遣ってくれてる感じはするね!」

朧「気に入った人に対する過保護が過ぎる感じですかね……」

那珂「そういうところは提督さんとそっくりだよね、素直じゃないところとか、ベクトルが違うけど面倒臭いところとかも含めて!」

那珂「山城ちゃんは絶対認めようとしないだろうけど! あ、提督さんも認めたがらないかな?」

電「那珂さん今日はいろいろぶっちゃけすぎじゃないですか!?」
642 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:58:31.44 ID:O6Y5narxo

那珂「とにかく、山城ちゃんの扶桑さんに対する理想が崩れちゃったからこそ、時雨ちゃんに甘えたくなっちゃったんだろうね」

那珂「那珂ちゃんに抱き着くのは山城ちゃん的にはご法度みたいだし、だから時雨ちゃんに向かったんじゃないかな」

吹雪「そっかぁ……確かに山城さん、ちょっと潔癖なところもありますもんね」

電「……あの、いま思ったのですけど、まずくはないですか?」

吹雪「なにが?」

電「山城さんが時雨ちゃんにも清廉さや潔癖さを求めているとしたら、今まさに時雨ちゃんがそれをぶち壊そうとしてるわけですよね?」

那珂「……」

吹雪「……」

朧「……」

電「……」

那珂「那珂ちゃん的には、これ以上いい方法が思いつかないかなあ。頑張って! ってしか言えないなー」

吹雪「えっ」

朧「えっ」

電「いっそのこと、山城さんは一度、現実をしっかり見る必要があると思うのです」

那珂「電ちゃん厳しーい!」

吹雪「……山城さん、立ち直れるのかな」

朧「どうだろ……」アタマカカエ
643 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:59:16.57 ID:O6Y5narxo

 * 後日談 *

扶桑「……山城?」ジロリ

山城「ひっ!? ど……どうされました、扶桑お姉様」

扶桑「あなた、時雨と一緒のお布団でお休みしたんですって?」ジトッ

山城「はうっ! そ、それは、そのお、お休みと言いますか……」シセンオヨギ

扶桑「……時雨のお部屋のお布団で、抱き合って寝たと聞いたのだけれど?」ジトッッ

山城「ど、どこからそんな話が漏れたんですか……!?」

扶桑「やっぱりそうなのね……!? 山城ったら、私を差し置いて時雨と仲良くして……」

山城「……! ふ、扶桑お姉様? そ、それはですね……」

扶桑「山城ばかり、ずるいわ……!」

山城(扶桑お姉様が、私に嫉妬してる……!?)ゾクゾクッ

扶桑「山城? どうやって時雨と仲良くなったのか、教えなさい? 私、時雨にはちょっと避けられてるのよ?」ガシッ

山城「ふえっ!? ちょ、ちょっと待っ」

扶桑「どうなの? やーまーしーろー?」ズズイ

山城「ふあああ!?」

山城(ほほを膨らませて迫ってくる扶桑お姉様可愛いいいい!?)

提督「何やってんだ、あのふたり」

時雨「イチャイチャしてるだけだから、放っておいていいよ」
644 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 13:00:00.52 ID:O6Y5narxo
というわけで今回はここまで。
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/07/16(火) 08:26:38.59 ID:/GQVRtUJo
那珂ちゃんさんのぶっちぎりな吹っ切れ具合たまらんねw
646 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:34:02.53 ID:P7OtzRTpo
お待たせしました、続きです。
今回はメディウムは別行動中です。
647 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:34:47.07 ID:P7OtzRTpo

 * 数日後 *

 * 墓場島 埠頭 *

 (墓場島沖で黒煙を上げながら沈む輸送船)

与少将「中将閣下あああああ!!!」ウワーン!

武蔵「少将殿、落ち着いてくれ! 私の水偵から、中将閣下が船から脱出されたとあった!」

与少将「本当かああああ!!!」ウワーン!

提督「うるせえな……無事だから安心しろ。ほれ」ユビサシ

 ザザァ…!

大和「提督! 中将閣下をお連れしました!」

中将「す、すまんな大和」ダキカカエラレ

与少将「おおお、よくぞご無事でぇぇぇ!!」ウワーーン!

提督「ご苦労さん。中将だけか?」

大和「はい、他の人たちはすでに逃げていたようで、船内には誰もいなくなってまして……」チュウジョウオロシ

提督「中将残して全員逃げたってか? ひっでえなそれ」
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