【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/26(火) 09:52:30.23 ID:cAqDqD950
ごめんなさい🙇‍♀️
重複しました
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/27(水) 21:25:21.00 ID:4jjNObB30
とりあえず目先の一難は去った、ですが艦これ世界影牢世界両方にまだまだ脅威が残っているという伏線が張られました。
残り七割の魔神の魂のほか、那珂と榛名の養成所の伏線も未回収だったと思いますし、これからが楽しみですね。
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/01/02(火) 14:40:44.81 ID:EoUKWc/pO
あけおめ!なのです!
協力者を失った父弟がどう動くか気になるところ・・・父のほうは政治面の地力でまだ邪魔な存在足りえそうだけど弟は魔翌力失ったらダメそう
351 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 20:56:35.64 ID:VA68R6Meo

今年は正月早々いろいろ酷いニュースが飛び交ってますが、とりあえず私は引き続き書き込めそうです。

今回登場のメディウムはこちら。

・ルミナ・ヘルレーザー:白衣を纏いモノクルをかけた科学者のメディウム。レーザービームが縦に走って一直線上の人間を焼き切る罠。
  メディウムや魔神さえも研究対象にする狂科学者。モノクルはもとは宝石加工用だったが、なぜかすべてを焼き切る凶悪兵器になった。

こういう科学者キャラは、設定の話をするときに重宝します。というわけで、今回は深海棲艦たちと川提督の艦娘のお話です。
352 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 20:57:16.31 ID:VA68R6Meo

 * 数時間後 *

 * 入渠ドック脇 休憩スペース *

明石「あ、提督! やっと来ましたか!」

提督「おう。深海棲艦たちも含めて全員揃ってんだよな?」

明石「揃ってますけど! なんだってこんなことになったんですか!? 今度はいったい何をしちゃったんです!?」

提督「お前は毎回、俺が何かやらかしたみたいな言い方するんじゃねえよ」

明石「そんなこと言っても原因はあなた以外にないでしょう? いいから早く行ってください、待たせてるんですから!」

提督「お、おう」


 * 入渠ドック内 *

明石「まったくもう……本当に、いったい何をしたんだか」

眠ったように動かないイ級「」

眠ったように動かないロ級「」

明石「……毎度毎度、本当にろくな事しないんだから、あの人は……!」

ヒサメ「まったく、あの男は意識せずいろいろとやらかしてくれるのう」ホホホ

明石「笑い事じゃありませんよ、まったくもう」
353 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 20:58:16.39 ID:VA68R6Meo

ルミナ「それにしても興味深いね。魔神君が撫でたら動かなくなる、ってどういう理由なのかしら」

初春「南太平洋空母棲姫じゃったか。考えられる理由がそれしかないと言っておったからのう」

明石「それ以外に外的要因はない、ということですか」

ヒサメ「しかし……その深海棲艦は随分と面倒見がいいのう?」

初春「この2隻の深海棲艦は、あの南太平洋空母棲姫がこの島の周辺で発見したそうじゃ。以来、行動を共にしておったらしいぞ」

ルミナ「時雨君を見つけた時も随伴していたって話よね」

明石「この島の周辺で、ですか……」

 バキン!!

明石「うわ!? な、なにこれ!? イ級とロ級の背中にひびが……!」

 バキン! バキン! バキン!!

ルミナ「おお、背中が割れたよ!? なんだいこの中身は……」

ヒサメ「なんじゃこれは。真っ白な液体で満たされておるのか?」

明石「ええええ!? 深海棲艦の駆逐艦の外殻の中身って、こうなってたの!?」

初春「む、待つのじゃ、中から何か出てくるぞ!」

 ズリュウ!

明石「て、手ぇぇ!?」

 (乳白色の液体の中から伸びた白くて細い手が、外皮に手をかけ力を入れると)

 ビチャッ…ズルゥ!

 (液体の中から真っ白な少女が現れる)

全員「「!?!?!?」」
354 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 20:59:01.31 ID:VA68R6Meo

 * 一方その頃 *

 * 入渠ドック脇 休憩スペース *

提督「まずはお前たちが何者か、教えてもらうか」

コロラド「……私たちは、川提督艦隊。旗艦のコロラドよ」

提督「ふーん……で、そっちにいるのは霧島と、確か蒼龍か。装備が知ってるのと違うが、そこの二人は見たことあるな」

霧島改二「はい、私が霧島です。川提督指揮下のもと、第二改装まで受けております」

蒼龍改二「えっと、同じく第二改装まで受けた、航空母艦、蒼龍です!」

飛龍改二「私は飛龍です。蒼龍と同じ第二航空戦隊の航空母艦です」

綾波改二「私は、綾波型駆逐艦、綾波と申します」

天龍改二「俺の名は天龍! フフ……怖いか?」

提督「天龍? つうと、お前だな? 死ぬまで戦わせろとかほざく奴は」

綾波改二「あ、言うことは言いますけど、あくまでポーズですよ? 駆逐艦が真似するといけないので、駆逐艦の前では言いません」

天龍改二「そりゃそうだけどよ!?」

提督「ふーん、つまり、本当はそんなに怖くねえんだな?」

天龍改二「いや、怖がれよ!」
355 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 20:59:46.50 ID:VA68R6Meo

提督「怖がれっつってもなあ……見た目で言えばこっちのが怖いだろ」

戦艦水鬼改「コロラド、ネエ? 会ッタコトアッタカシラ……」

軽巡新棲姫「スグニハ思イ出セナイワネー」

南方戦艦新棲姫「名前ハ、ナントナク、ワカルケドナア」

南太平洋空母棲姫「トイウカ、ミンナ米軍艦ダッタノ?」

泊地棲姫「私ニツイテキタンダカラ、ソウダト思ッテイタンダケド……コノ子ハ、ソウデモナカッタノヨネ」

欧州水姫「余ノヨウナ、例外モイルトイウワケダナ。トコロデ、コノ場ニハ、余モ参加シテテイインダナ?」

防空巡棲姫「聞キタインナラ、イインジャナイ? 軽巡棲姫ハ聞カナクテイイ、ッテ言ッテタンダシ……私モ、寝テテイイ?」フワァ

深海海月姫「アナタハ話ヲ聞キナサイヨ……」

綾波改二「そうですよねえ。こんなに大勢の鬼級姫級が一堂に会するのを見てから、天龍さんを怖がれと言うのは無理がありますね」

天龍改二「ちくしょう!」ガクーッ

提督(面白い奴だな)
356 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:00:31.05 ID:VA68R6Meo

霧島改二「それにしても……あの姫級たちが、私たちと一緒に椅子に座って戦うことなく対面しているというのは、初めてと言いますか」

飛龍改二「ぶっちゃけ、生きた心地がしないよ?」アオザメ

蒼龍改二「こんな場を設けられるなんて、ここの提督さんって、本当に何者なんですか?」ヒヤアセ

提督「んー? まあ、運が良かったんだよ、いろいろとな」

天龍改二「とにかくよ、こっちの姫級たちはあんたの部下ってことでいいんだよな?」

提督「いや、部下じゃねえぞ。知り合いっつうか、仲間っつうか……」

泊地棲姫「上下関係ハ、ナイヨウナモノダナ。対外的ニハ、コノ男ガ代表ト言エルカ」

戦艦水鬼改「ソレカ、島ノ同居人、トイッタトコロカシラ。私自身ハ、コノ男トハ、モット親密ナ仲ニナレテモ、イイノダケレド」フフッ

泊地棲姫「抜ケ駆ケスルナヨ?」ジロリ

戦艦水鬼改「アラ。私ハ、素直ナ願望ヲ、クチニシタダケヨ?」ニヤリ

天龍改二「あー……仲が良いってのはわかったから、喧嘩はやめてくれよ。俺たちじゃとても止められる気がしねえ」

軽巡新棲姫「ダヨネー、ワカルワカル」

綾波改二(オランダの軽巡洋艦さんが混ざってる気がしますね)
357 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:01:16.61 ID:VA68R6Meo

提督「えーっと、一応紹介するとだな。泊地棲姫と、んーと確か、ル級とタ級と……」

天龍改二「いや待てそれはさすがに違うだろ!? どう見ても普通のル級とかタ級と一緒にはできねえだろ!?」

提督「つってもなあ。それぞれなんて呼ばれてるか、俺も把握してねえし……」

コロラド「私が分かるわ」

提督「何?」

コロラド「あなたはさっきも言ったけど、イギリスの戦艦、ネルソンよ」

欧州水姫「ホウ……断言スルカ」

コロラド「ええ。見てて確信するくらいにはね。それから……あなたは、アイオワでしょ?」

戦艦水鬼改「!」

コロラド「そして、あなたはホノルルで、あなたはアトランタ」

軽巡新棲姫「ウーン、ソウカモ?」

防空巡棲姫「アー、ソウ言ワレレバ、ソウ呼バレテタカモ」

コロラド「それから、あなたは……きっとサラトガね。シスター・サラ」

深海海月姫「……ソウ……?」
358 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:02:01.74 ID:VA68R6Meo

コロラド「そして、サウスダコタと、ホーネット……!」

南方戦艦新棲姫「ナントナク、ソンナ気ガスルナ。霧島トハ、会ッタヨウナ気ガスルシ」

南太平洋空母棲姫「ソウネ。ソノ名前、懐カシク感ジルワ」

コロラド「私の知ってる U.S.Navy が、こうして姫クラスの深海棲艦になってるところを見るなんて……」

コロラド「どうしてこうなっちゃったのかしら……」ウナダレ

提督「お前たち、自分の名前がはっきりしないのか?」

戦艦水鬼改「ソウネエ。ナントナク、ソウナノカ、ッテ感ジ? アイオワ、ネェ……確カニ、ソウカモ」

コロラド「絶対そうよ! その主砲、規格や特徴が合致してるもの! アイオワでなければ同じアイオワ級のニュージャージーだわ!」

提督「傍目に見て、それが正しいとしても、自覚がねえんじゃなあ……」

蒼龍改二「なんだか、記憶喪失の人に名前を訊いてるみたいな感じだね?」

提督「あー、言い得て妙だな」

天龍改二「なあ綾波? お前、欧州水姫と戦艦水鬼の名前がパッと出てきたってことは、本営の資料にはあるはずだよな?」

綾波改二「そうですねえ。全員分あるかどうかはわかりませんが、取り寄せて照合してもらうといいかもしれませんね?」

提督「お、そういう資料あんのか。名前だけでもなんて呼ばれてるか確認してえな。でないと、なんて呼びゃいいかわからねえ」
359 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:02:46.84 ID:VA68R6Meo

ルミナ「やあやあ魔神君。丁度いい頃合いだし、ちょっと私もお邪魔させてもらっていいかな」スタスタ

深海棲艦たち「「!」」

提督「ルミナ? 丁度いいってなんだよ?」

ルミナ「そちらの艦娘の皆さんにも、確認のためにちょっと聞いて欲しいんだ。深海棲艦と、艦娘の違いについての仮説をね」

ルミナ「多分、深海棲艦のみんなの姿が変わった理由の話もできるだろうからね」

泊地棲姫「私タチノ話ダト?」

提督「ふーん……とりあえず、聞いてもらっていいか?」

霧島改二「……コロラドさん、どうしますか?」

コロラド「え? え、ええ、いいわよ。いまの話に関係しているって言うのなら、話してちょうだい」

ルミナ「了承いただけたのであれば、まずはこちらの二人をご紹介! おいでー!」テマネキ

白露型?「ハイハーイ!」

暁型?「ゴキゲンヨウデス!」

提督「……んん? なんだ? 暁……じゃねえな?」

蒼龍改二「なんだか、北方棲姫みたいなワンピースを着てるわね……?」

天龍改二「そっちのは夕立か? つっても、肌の色どころか髪の毛も服も真っ白だし……いや、村雨か? どっちだ?」
360 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:03:46.85 ID:VA68R6Meo

飛龍改二「っていうか、二人ともあからさまに深海棲艦っぽくない? 目も真っ赤だし、ツノも生えてるじゃないの」

南太平洋空母棲姫「ネエ、ソノフタリ、モシカシテ……」

ルミナ「ねえ魔神君? 君は、ソニアとクレアが乗っていた深海棲艦の駆逐艦の頭を撫でてあげてたよね?」

提督「ああ、それがどうかしたか?」

ルミナ「この二人はそれぞれ、駆逐イ級、駆逐ロ級と呼ばれていた深海棲艦だよ。君が撫でてあげてた、あの2隻さ」

白露型イ級「ソウイウコトッポイ!」

暁型ロ級「ヨロシクナノデス!」

飛龍改二「ええええええええええ!?」ガタッ!

蒼龍改二「イ級とロ級ううううう!?」ガタッ!

天龍改二「どういうことだよそれは! わっけわかんねえ!」

提督「……は?」ポカーン

ルミナ「いやいや、魔神君まで呆けてないで。ほら、あの時雨君を見つけたヲ級君が連れてたあの2隻が、この二人なんだけど」

南太平洋空母棲姫「ソノ『ヲ級』ッテ私ノコトヨネ?」

ルミナ「そうなの?」
361 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:04:32.20 ID:VA68R6Meo

南太平洋空母棲姫「アノ駆逐艦タチハ、コノ島デ知リ合ッタノヨ。コノ島ノ周辺デ生マレタミタイダケド」

提督「島の周辺で……?」

ルミナ「えーと、驚くのは後にしてもらって、ちょっといいかな? ひとまず、これは私の仮説として聞いて欲しい」

ルミナ「まず、彼女たちは、轟沈した艦娘の魂が混ざり合ってできたと考えられるんだ」

霧島改二「轟沈艦……!?」

提督「もしかして、この島に埋葬したやつか?」

蒼龍改二「埋葬!?」

提督「ああ。そういや一時期、白露型や暁型が大勢流れ着いた時期もあったが……まさか、そいつらの生まれ変わりだってか?」

ルミナ「多分ね。おそらくだが、以前、大和君や軽巡棲姫君と一緒に、魂について話をしただろう?」

ルミナ「その時と一緒で、君は無意識に彼女たちの艦娘としての意識を呼び起こしたんじゃないかと思うんだよね」

提督「……それじゃ、俺は迂闊に深海棲艦に触れねえってか?」タラリ

ルミナ「それはちょっとわからないかな? 軽巡棲姫君みたいに触れてても問題ない子もいるからね」

暁型ロ級「ワタシハ、ヨカッタトオモウワ!」

白露型イ級「アシガハエテ、オカノウエデモ、ハシレルッポイ!」ワイジバランスー

提督「おいおい、スカートまくれちまうぞ。足を下ろせ」

白露型イ級「ハーイ」

天龍改二「もう少し慌てろよ。冷静すぎねえか」
362 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:05:16.15 ID:VA68R6Meo

ルミナ「今回の事象を鑑みるに、艦娘にしても深海棲艦にしても、そして私たちや魔神様にしても……」

ルミナ「その魂の出来上がり方は、かつての艦の魂の寄せ集めにすぎないんじゃないか? と私は考えていてね」

天龍改二「寄せ集め!? なんだよそりゃあ!! 認めねえぞそんな話!?」

深海海月姫「静カニシテ、話ヲ聞イテ」ジロリ

天龍改二「ハイ」

綾波改二(さすが姫級、プレッシャーが尋常じゃないですね)

ルミナ「さて、いろいろ言いたいことはあると思うけど、まずは艦娘と深海棲艦の違いは何か? という仮説の話をするね」

ルミナ「私の考える結論から言ってしまうと、魂の作られ方が違うのよ」

綾波改二「作られ方、ですか?」

ルミナ「そう。艦娘は、ある核となる魂があって、その魂が主導権を持つんだけれど」

ルミナ「一方の深海棲艦は、いろんな魂が乱雑に混ざり合って、その中で強い魂が主導権を持つようになってから、姿が出来上がる」

ルミナ「最初から誰になるかが決まってて作られるのが艦娘、誰になるのか決まらないまま作られるのが深海棲艦、って感じかしら」

霧島改二「誰になるのか決まらないまま……?」
363 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:06:01.85 ID:VA68R6Meo

ルミナ「考えてもみてよ、これまで出会った深海棲艦の……そうだね、例えば駆逐艦の姿はどうだったかな?」

ルミナ「大きく分類してイ、ロ、ハ、ニ級が確認されてて、最近ナ級も見つかったんだっけ?」

飛龍改二「ナ級……ソウネ……」ヌラッ

綾波改二「ソンナヤツ、イマシタネ……イナクテイイノニ」ヌラッ

南方戦艦新棲姫「アイツラ、チョット私タチニ似テナイカ?」タラリ

防空巡棲姫「……危険ダネ」タラリ

ルミナ「深海棲艦の一般的な駆逐艦は、大雑把に分けて5種類。それに対して、この世界全体の駆逐艦の数は相当なものだ」

ルミナ「なんで深海棲艦の駆逐艦の種類が少ないのか。それは、彼女たちが自分が何者か、生まれた時にはっきりしていなかったからだ」

ルミナ「例えば、君! 綾波君で良かったかな? 敷波君に似てるね、そういえば」

綾波改二「は、はい! 敷波は私の姉妹艦ですよ。同じ綾波型です」

ルミナ「ああ、そうだったのか。うん、君は自分のことを『綾波』だと、生まれた時から認識してるよね? 綾波であって敷波ではないと」

綾波改二「それは、そうですねえ」

ルミナ「それは魂が、自分が綾波だと自覚し認識しているからであって……」

ルミナ「もしそうでなければ、自分が何者かをちゃんと認識できずあの姿になる、と推測してるのよ」
364 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:06:46.27 ID:VA68R6Meo

綾波改二「その理屈だと、私たちが記憶喪失になったら、あの姿になってしまうってことですか?」

ルミナ「いや、今のその姿は記憶喪失になる前に作られるわけだろう? さすがに変わらないと思うんだけど」

提督「試したいとか言うなよ?」

ルミナ「そこは言わないよ!?」

綾波改二「……深海棲艦には、明確な自我がない、ってことなんでしょうか?」

ルミナ「おそらくね。そのまとまらない自我をまとめるために、生者への怨恨や憎悪という心の方向性で一体化したり」

ルミナ「或いは自分が何者かを仮に決めてしまって、まとまらなかった力をまとめている、と、考えてるの」

提督「艦娘の建造には妖精が携わる。建造妖精が誰になるかを定まるようにサポートしてると考えれば、その仮説も成り立つわけか」

ルミナ「魂のまとまり方によって、イ級だったりロ級だったりになるけれど、最初から芯が決まっていれば、艦娘になって海に現れる」

ルミナ「この二人も、自分が暁型の誰なのか、白露型の誰なのかがはっきりしてないじゃない? 二人とも、自分の名前はわかる?」

白露型イ級「ナマエ……シラツユハ、ナントナクワカル!」

暁型ロ級「ワタシハ、ヨクワカラナイ……デス」

天龍改二「そうなのか……確かにまあ、どっちつかずな感じの見た目だけどよ」ウーン

ルミナ「それから、同じ鎮守府の中でも同じ艦娘が現れることがあると思うけど、微妙に個性が違うことってない?」

ルミナ「それは魂の混ざり方が違っていたり、逆に大事なものが抜け落ちたりするから、と推測してるの」

提督「……ここに来る前に似たような話をしたな、そういえば」
365 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:07:31.09 ID:VA68R6Meo

ルミナ「そこの金髪の艦娘が……」

コロラド「コロラドよ」

ルミナ「コロラド君が、深海棲艦のみんなの名前を呼んだ時に反応が薄かったと思うんだけど」

ルミナ「艦娘が、自分の名前やルーツがなんであるかをちゃんと言えるのに対して」

ルミナ「深海棲艦のみんなが、さっきも『多分こうなんじゃないか?』って感じで自信なさげに話してたのも」

ルミナ「そういうことじゃないかな、と考えているの」

天龍改二「……そんじゃあ、深海棲艦たちが、自分はこいつだ! って認識したら、艦娘になるのか?」

ルミナ「残念ながら、深海棲艦が艦娘になったり、逆に艦娘が深海棲艦になる可能性は、かなり低いというか、ほぼないんじゃない?」

ルミナ「一度決まって生まれてきたものが、その逆のものに突如生まれ変わる、というのは考えにくい」

ルミナ「せいぜい、ここにいるみんなのように、違う深海棲艦に進化……いや、深化するとか、形態が変わるだけになるんじゃないかな」

ルミナ「そしておそらく、それをひっくり返す唯一の現象は『轟沈』しかない、と、私は推測しているよ」

提督「そういや、お前とは以前もそういう話をしたっけな。やっぱそう考えるのが自然か」

全員「「……」」
366 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:08:16.38 ID:VA68R6Meo

ルミナ「そう言えば、魔神君がかつてこの島で行っていた研究……実際には研究ではないけれど」

ルミナ「彼が、轟沈した艦娘をそのまま運用していたことを、君たちは知ってるのかしら?」

飛龍改二「そうなの!?」

蒼龍改二「全然知らなかったんだけど!?」

天龍改二「聞いてた以上にやべー奴じゃねえか!」

綾波改二「でも、だからこそ深海棲艦の皆さんに好かれたのでは……」

提督「そこは関係ないと思うぞ?」

綾波改二「そ、そうなんですか……?」

コロラド「ね、ねえ、なんでみんなそんなに驚いてるの?」

提督「お前は知らないのか。轟沈した艦娘が深海棲艦になる、って話。海軍じゃ有名な訓話だぞ」

コロラド「そ、そうなの……!?」

軽巡新棲姫「ソノ訓話、私モ知ラナカッタケドネー」

欧州水姫「深海棲艦ガ艦娘ニナル、ッテイウ、逆パターンモアッタラシイガ、ドウナンダ?」

泊地棲姫「ドチラモ、アルト言ワレテルケド、私ガ実際ニ、ソノ場面ニ立チ会ッタコトハナイワヨ」

綾波改二「そうなんですか……」
367 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:09:00.93 ID:VA68R6Meo

霧島改二「しかし、あなたはなぜそんな危険なことを……?」

提督「俺はもともと、理不尽な扱いをされて島に逃げてきた艦娘を助けたかったんだ」

提督「轟沈して死にかけたそいつをうちの鎮守府に着任させるときに、その話が出てきて危うく話が駄目になりそうになった」

提督「そこで俺は、この島の立地を理由に、轟沈艦をこの島限定で着任できるようにできないかと持ちかけたんだ」

霧島改二「なるほど……然程重要ではない隔離された鎮守府であれば、有事の際に被害が余所に及ばないからと?」

提督「そういうことだ。だからこの島の人間は俺一人だった。まあ、個人的に人間と関わりたくなかったから、好都合だったが」

戦艦水鬼改「ダカラコソ、私ガコノ島ニイタコトモ、隠シテモラエテタノヨネ」

提督「ああ。俺だけだったからな」

天龍改二「大胆なヤローだな……万が一でも見つかったら、ただじゃ済まねえってのに」ヘヘッ

綾波改二(天龍さん、そういう無茶をする人が好きですよねえ)

ルミナ「そうして魔神君はその轟沈した艦娘たちとずっと付き合ってきたわけだけど、結果的に誰も深海棲艦になることはなかった」

ルミナ「逆に、魔神君と一緒に過ごしていた深海棲艦も、艦娘になることはなかった」

ルミナ「となると、海で轟沈して肉体が滅んだ時……魂だけになった時に、初めて生まれ変われるんじゃないか、と考えられるわけなのよ」

天龍改二「……確かに、新しい艦娘との邂逅は、海で見つけるか、建造するか、だな……」
368 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:09:46.43 ID:VA68R6Meo

ルミナ「海で見つけるケースは、建造よりも発生頻度が低い。自然発生するケースと言うのは、生まれ変わるケースとも考えられる」

ルミナ「もしそうだとしたら、誰かがその瞬間の場面に立ち会うことも、そこまで多くないとも言えるだろうね」

ルミナ「そして、沈む前の自分の艦の名前を色濃く覚えているのであれば、その艦娘として生まれ変わるケースもある……」

コロラド「……だたし、必ずしもその艦娘に生まれ変われるとは限らない、と言うわけね……」

霧島改二「海域の大物の深海棲艦を倒した際に、似た姿の艦娘と邂逅することはありますが、確かにその確率は決して高くありませんね」

提督「なんだ? そういう事例があんのか?」

霧島改二「はい、特に、特別海域でよくあることですね」

提督「特別海域……なんか、強大な深海棲艦が生まれ出た海域って奴か?」

霧島改二「はい。そういった海域に出没する深海棲艦は、その傾向が強いようです」

綾波改二「ここにいる姫級の皆さんも、その特別海域によく出てくるんですよ。性格は全く逆で、すごく攻撃的ですけど」

提督「お前たちはそういう連中を討伐しているってことか」

霧島改二「そうですね。ですので、こうやって戦わずに会話ができているだけでも、私たちとしては驚くべきことですね」
369 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:11:16.48 ID:VA68R6Meo

綾波改二「例えば、コロラドさんがサウスダコタさんと呼んでいるあなた」

南方戦艦新棲姫「ン? ワタシカ!」

綾波改二「はい。良くない例え話をしますが、仮にあなたを私たちが撃沈したとします」

南方戦艦新棲姫「オイ!?」

綾波改二「そうすると、艦娘のサウスダコタさんと邂逅できることがあるんです」

提督「なんだと?」

南方戦艦新棲姫「ジャア、ワタシガ沈メバ、艦娘ニナルノカ!?」

コロラド「それが必ずじゃないから困るのよ……」

提督「なんだよ……艦娘にならなかったら、殺され損じゃねえか」

綾波改二「そうなんです、コロラドさんもさっき言ってましたが、必ずしもその艦娘に生まれ変われるわけじゃないんです」

コロラド「私の知ってる U.S.Navy が、みんな深海棲艦になってたんだもの。敵でしかないと思ったらショックだったわ」

コロラド「こうやって普通に話せてるからいいのかもしれないけど、私としてはやっぱり、みんなに艦娘になって欲しいって思っちゃうのよね」ムー

南方戦艦新棲姫「艦娘ニ、カ……」ウーン
370 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:12:16.16 ID:VA68R6Meo

提督「なんだ、艦娘になりたいのか?

南方戦艦新棲姫「イヤ、イマノ姿ハ、ソレナリニ気ニ入ッテルカラナ。飽キタラ考エナクモナイナ!」

コロラド「ちょっと! いい加減なこと言わないで! やるんなら確実に生まれ変われる方法でお願いするわよ!?」

南方戦艦新棲姫「ソウダナ! ジャア、生マレ変ワリハ、ソノウチダナ! ソノウチ!」

防空巡棲姫「敵ニ心配サレテル」

軽巡新棲姫「新鮮ダネ!」

ルミナ「ふむ……轟沈させた艦娘や深海棲艦が、即座に逆の存在になったところは……」

ルミナ「少なくともこの鎮守府の艦娘、深海棲艦では見たことがないのよね」

ルミナ「見られる機会になるのかと思ったけど。まあ、事情が事情だし、仕方ないか」ブツブツ

蒼龍改二「ね、ねえ、轟沈した艦娘をこの島に埋葬したって言ってたけど……本当なんですか?」

提督「ああ。北東の砂浜に無数に打ち上げられてたんでな。可哀想だし水葬もできねえから、丘の上に埋めたんだ」

蒼龍改二「その、埋葬した艦娘が深海棲艦になったことはないんですか?」

提督「そういや、ねえな……?」

綾波改二「もしかして、海から引き揚げたからでしょうか?」

ルミナ「うーん、考えられるとしたら、そこしかないかしらね」
371 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:13:01.21 ID:VA68R6Meo

霧島改二「考察としては、ある程度納得できるものではありますね……失礼ですが提督、彼女は何者です?」

提督「あんまり詳しく言えないが、俺の協力者、身内だと思ってくれ」

飛龍改二「っていうか、提督のことをマジン君って呼んでたけど。あの『えふぇめら』? っていうのも何者だったのかな」ヒソヒソ

蒼龍改二「あの人も大きくなったり小さくなったりしてたし……どういう意味だろうね? 頭が追い付かないよ」ヒソヒソ

ルミナ「ちなみに、この仮説を後押しする考察として、強化の上限についても話しておこうか」

天龍改二「上限?」

ルミナ「そう。艦娘は、強化しても限界もすぐ見えてくる。それは、最初から器が決まってるからで……」

ルミナ「深海棲艦はその器自体があいまいだから、その辺の雑な魂も無尽蔵に取り込んで、いくらでも存在を大きくできると考えられるの」

ルミナ「ただし、結合力が弱いから極端に脆い部分ができるという欠点も発生する。だからこそ再結合もしやすいと言うのもあるんだけど」

ルミナ「艤装も史実の艦艇と比較して食い違いがあったりするのも、その無尽蔵に取り込むという点が原因だと思うんだけど」

ルミナ「だから、艦娘が第二改装? という、段階を踏んで強化するのに対し、深海棲艦は独自に強化していく、と言う点が違ってくるのよね」

霧島改二「聞けば聞くほど面白い推論ですね……」

ルミナ「まあ、まだ推論の域よ。これが正解かどうかは、これから調べてみたいんだけど、いいよねえ?」ニタリ

深海棲艦たち「「」」

提督「おいおい……」アタマオサエ
372 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:13:46.31 ID:VA68R6Meo

戦艦水鬼改「来ルナ、セクハラ魔人」テイトクノセナカニカクレ

深海海月姫「視姦魔人ヨネ」テイトクノセナカニカクレ

提督「おいルミナ、お前いつの間に不名誉な呼び名ができてんだよ……」アタマカカエ

ルミナ「いやいや魔神君、その程度の呼び名は些細な事さ。それより邪魔はしないでくれたまえよ?」ニジリニジリ

ルミナ「まさか深海棲艦が変異して姫級になるところを間近で見られるなんてねえ……」

ルミナ「いったいどういう感じに変化してるのか、まずは隅々まで見せてもらおうかなぁ?」キュピーン!

ニコ「……ルミナ?」

ルミナ「あ」

ニコ「魔神様のお許しなく、この島の深海棲艦や艦娘に手を出しちゃだめだよって、何回言えば理解してくれるのかな?」

ルミナ「いやあ、艦娘と深海棲艦の謎を解明できそうな、今の話をすれば許してくれるかなあって」

ニコ「後始末するのは、メディウムを束ねるぼくなんだよ? そういうわけだから……ブラックホール」

ベリアナ「もー、また私の出番なのぉ?」フヨッ

ルミナ「」ダッシュ!

ベリアナ「あ、逃げた」

ルミナ「もうブラックホールに閉じ込められるのはこりごりだよーー!!」

ニコ「……やれやれ」

ベリアナ「ニコちゃん、もういい? 早くあっちに行きましょ?」

ニコ「うん。邪魔したね」
373 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:14:30.93 ID:VA68R6Meo

飛龍改二「今の水着の子、浮いてなかった!?」

蒼龍改二「浮いてた浮いてた!」

綾波改二「……結局、彼女たちは何者なんでしょう」

提督「聞いてすぐ理解できるような存在じゃねえから、いっそ忘れたほうがいいぞ?」

飛龍改二「もおお、ここっていったいどういう島なのよー!?」ヒシッ

蒼龍改二「やだやだ怖い怖い帰りたいー!」ヒシッ

白露型イ級「トコロデ、連レテコラレタ私タチハ、ドウシタライイノ?」

提督「あー、そうだな……」

初春「なんじゃルミナめ、こちらに二人を置いてきぼりにしておったか」ニュッ

初春「提督よ、すまんがこの深海の二人、わらわが連れて行っても良いかの?」

提督「ああ、話は終わったところだから構わないが」

初春「ちょっと訊きたいことがあってのう。危険な目には遭わせぬから、安心せよ」

提督「まあ、お手柔らかにな?」

暁型ロ級「行ッテクルノデス!」ブンブン

提督「ああ、ついでに明石に適当な下着見繕ってもらえ。ノーパンでその辺うろつかれても困る」

飛龍改二「ちょっ!? 履いてなかったの!?」

天龍改二「だからもう少し慌てろっつったんだけどな……」アタマオサエ
374 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:15:16.94 ID:VA68R6Meo

提督「それにしても、初春が呼びに来るって……あ、もしかして」ウヘェ

軽巡新棲姫「ナニカ思イ当タルコト、アッタノ?」

戦艦水鬼改「ソノ顔ハ、ロクデモナイコトニ思イ当タッタ顔ネ?」

提督「ああ……あとで全員フォローしとく。まあ、俺の考え通りなら、本当にろくでもねえことなんだ」

コロラド「ねえ。それよりも、曽提督の艦娘はどうする気? できれば、引き渡してほしいんだけど……」

提督「その話なら断る」ギラリ

コロラド「……っ! あ、あなたたちを騙し討ちしようとしたのは謝るわ! でも……!」

提督「然るべき罰を受けさせる。そこにお前たちの意志が介入することは許容できねえ」

コロラド「然るべき罰……?」

提督「なあに、殺しはしねえよ。連中の、邪悪な心を、綺麗に洗い流してやろうって考えてるだけさ……!」ニヤァ

コロラド「……っ!!」ゾクッ

飛龍改二「悪い顔だわ」シロメ

蒼龍改二「悪人よ」シロメ
375 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:16:01.12 ID:VA68R6Meo

霧島改二「だ、大丈夫なんでしょうか……」

提督「大丈夫かどうかは、連中次第だな。素直になればよし、そうでなければ……つうか、あいつら絶対素直になんかならねえか」

綾波改二「痛い目を見ること確定じゃないですか」

天龍改二「洗脳でもする気かよ……」

提督「洗脳されてたのはむしろ今のあいつらじゃねえか? あんなトチ狂った戦闘狂の艦娘なんか、俺はこれまで見たことねえぞ」

提督「ま、安心しな、俺がばっちり呪縛から解き放ってやるからよぉ……!」ニタァァ

飛龍改二「悪い顔だわ」シロメデアワブクブク

蒼龍改二「悪人よ」シロメデアワブクブク

 ヒュンッ

朧「いま誰か泡を吹きました!?」シュタ!

防空巡棲姫「何シニ来タノ、アンタ……」

軽巡新棲姫「テイウカ、忍者ミタイジャナカッタ!?」キラキラッ!

提督「目を輝かせてる場合じゃねえよ。おいコロラド、とりあえずお前らが知ってる曽大佐の情報を全部話せ」

提督「でなきゃお前らも、ただで帰す気はねえぞ」ギロリ

コロラド「……わかったわ。あなたたちには助けられているんだもの、私たちもそれなりの態度を示さないとね……!」

 * * *

 * *

 *
376 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:16:48.26 ID:VA68R6Meo

 * その後 *

天龍改二「それにしてもここの大将、思ったより全然話がわかるんだな。もっと自己中な奴かと思ってたぜ」

綾波改二「この分だと、大和さんたちのこともそれほど心配しなくても良い気がしますね?」

天龍改二「そうだけどよぉ、あの大和も俺たちの思ってた以上に狂ってたぜ? 話してどうにかなるもんかあ?」

綾波改二「対話では難しいでしょうね。曽大佐が深海棲艦との戦いをやめようとしない限りは……」

防空巡棲姫「提督サン? コイツラ結構余裕アルミタイナンダケド」

提督「いいんじゃねえの? 俺たちとやりあう気はねえんだろ」

天龍改二「ああ、その辺はちゃーんと弁えてっからよ。捕虜の俺たちが自由にさせてもらってんだからな」

綾波改二「好きに寛いでいいなんて言われたときは驚きましたし、まさか酒保まで開放していただけるなんて思いませんでした」

提督「話が通じる奴を拘束しておく理由はねえからな。その辺ぶっ壊したりしなきゃ」

 ゴンッ

南方戦艦新棲姫「ウワ、ヤベエ! 艤装展開シタラ、壁ニ穴開イチマッタ!」

欧州水姫「何ヲシテイル! 修理シロ、修理!」

南方戦艦新棲姫「ワカッテルヨ! オ前モ手伝エ!」

欧州水姫「ナゼ余ガ!?」

天龍改二「……あいつら、どっちも、もとはタ級なんだっけか」

防空巡棲姫「自分ノ艤装ノ、サイズニマダ慣レテナイッポイネ……」

提督「わざとじゃなきゃいいけどよ……心配だな、こりゃ」
377 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/03(水) 21:23:25.27 ID:VA68R6Meo
というわけで今回はここまで。

>348
お気になさらず。自分も過去には三重書き込みをやらかしましたので……。

>349
伏線回収はとりあえず掬えるところは必死に掬っております。
スレ自体は年内に終わらせたいと思っていますが……。

>350
弟は弟でそこそこ能力はありますが、いかんせん今回のやらかしが致命傷になりますかねえ。
父親も海軍の一部に目をつけられていますし、その辺もそのうち書いてみるつもりでいます。
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/01/06(土) 00:07:13.80 ID:kXLLQw9D0
その三重書き込みより前の時代から見てるなぁ...懐かしい
379 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:00:36.22 ID:QAWrUrqZo

囚われの曽大佐の艦娘がどうなったか……。
短いですが、続きです。
380 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:01:18.65 ID:QAWrUrqZo

 * 夕方 *

 * 封印神殿内 *

 ピチョン…

捕獲牢の中の赤城改二「……ここ、は……どこです……!?」

赤城改二「く……体が、重い……力が入らない」ググッ

赤城改二「この、鳥籠は、いったい……」

提督「ん? 目を覚ましたのか」

赤城改二「! あなたは……っ!!」

 (提督が暗闇から現れ、それと同時に石畳の通路を照らす松明に火が灯り)

 (赤城の捕獲牢を含めて7個の捕獲牢が並んでいる光景が浮かび上がる)

提督「休んでていいぞ。どうせ起きていられねえだろ」

赤城改二「それは、どういう意味です……くっ」クラッ

提督「この捕獲牢はな、捕獲した者の魔力と生気を奪うんだ。そいつがぎりぎり生きられるだけの力を与えつつ、な」

赤城改二「……あなたの、好きには、させません……!」

提督「そうやって強がっても、いまは指を動かすことすらきついだろ? おとなしく寝てな」
381 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:02:02.36 ID:QAWrUrqZo

赤城改二「……こうやって、歯向かうものを、閉じ込めているのですね……!」

提督「そうはそうだが、部外者を閉じ込めたのはお前らが初めてだぞ?」

提督「ここは、俺の鎮守府で馬鹿をやった奴を懲らしめる、いわゆる懲罰房みたいなもんだ」

赤城改二「懲罰房……?」

提督「おい、ケイティー。起きてるか」ユサッ

他の捕獲牢に入れられたケイティー「……あ、ああ……旦那様ぁ……!」ニタァァ

ケイティー「やっと……やっとお会いできた……」テヲノバシ

提督「お会いできたーじゃねえよ。一応毎日見には来てんだぞ? っつうかお前、毎回毎回やり過ぎだって言ってんだろが」

提督「お前はなんで俺が艦娘やほかのメディウムと話してるだけで襲い掛かってくるんだよ」

ケイティー「旦那様に近づく悪い虫は、退治しなければなりませんので……」

提督「だからそういうのやめろっつってんだろが。ったく、全っ然反省してねえな?」

ケイティー「わ、わたくしは、旦那様のことを思って……」

提督「もう少しこの中に入ってろ」デコピン

ケイティー「ヘブッ!?」バチーン ガクッ

提督「はぁ……本来は、こういう感じで、仲間に襲い掛かるような奴を懲らしめるための部屋なんだ。ほぼケイティー専用だけどな」
382 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:02:47.18 ID:QAWrUrqZo

提督「で、この捕獲牢が生かさず殺さずには丁度いいんで、これに入ってもらって反省を促し、自戒してもらってると言うわけだ」

赤城改二「……」

提督「けど、お前らが素直に反省するとは思えねえな。お前らには、深海棲艦に対して過剰すぎる敵意が詰め込まれすぎてる」

赤城改二「……何を、しようと、言うのです……!」

提督「これからお前らの悪い部分を切除する」

赤城改二「せ、切除……!?」

提督「ああ、だから休んでていいぞ。どうせ起きててもしょうがねえ」ガシャ…

 (提督が赤城の隣の捕獲牢に手を伸ばし、自分のほうに引き寄せる)

赤城改二「……その鳥籠は……大和さん……!」

提督「さてと。気になってたのはこいつの『魂の色』だ。どんなもんか、見せてもらおうかね」

赤城改二「た、魂!? な、何をする気ですか、やめなさい……っ!!」

 (気を失って横たわる大和改二の頭を、提督が捕獲牢の外側から鷲掴みにして、提督が目を閉じる)

大和改二「……う……」ピクッ

提督「おお……こりゃあひでえな、真っ黒じゃねえか。うちの大和とは完全に別風景だな」

赤城改二「い、いったい何の話です!? とにかく、その手を放しなさい……!」
383 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:03:31.87 ID:QAWrUrqZo

提督「うるせえな……少し静かにしてろ」

 ズブ…ッ

大和改二「ふぎッ!?」ビクンッ!

赤城改二「ひっ!? て、提督の指が、大和さんの頭の中に沈み込んでる……っ!?」

提督「この赤は爆炎の赤っぽいな……こっちの黒は黒煙か? マジで戦うことしか頭にねえな、こいつ」

大和改二「あッ……あが……ッ!? わっ、ワた、しィは……いったい、なに、ヲ……ッ!?」ビクビクビクッ

提督「何をどうしたら、大和の魂をここまでどす黒く染められるんだ? 曽大佐の野郎は一体何を吹き込んだんだよ……くそが」

提督「この辺りの魂、いらねえな。敵意か殺意か、攻撃的な色しか入ってねえ。こりゃ艦娘じゃなくても害悪でしかねえぞ」グリッ

大和改二「グェゲ……ッ!?」ビクンッ!

提督「ここも……ここも真っ黒だ」グリュグリュッ

提督「ん? こりゃ、あのレ級との記憶か? これも酷えな……こんなに憎悪を前面に出して戦う必要あるかよ」

大和改二「ア゛オ゛ッ!? グエ……ゲエァ、ゴアッ……!!」ガクガクガクッ

赤城改二「ひ、ひいいっ!!」

提督「見れば見るほど敵意の塊だな……曽大佐はここまで深海棲艦を憎んでるのか?」ズブブッ

提督「それにしちゃあ身内が殺されたって話とかもないようだが……曽大佐が艦娘にいい顔してる印象も全然ねえな」グリグリッ
384 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:04:17.26 ID:QAWrUrqZo

提督「もしかしてあいつ、艦娘が嫌いなのか……? まあいい。綺麗な部分がちょっと残ってただけでも良しとするか……」ズリュズリュ

提督「魂、だいぶ減っちまうな。ニコには悪いが、俺の魔力の一部で補っておくか……」グチュグチュグチュ

大和改二「アガ……オ、オブォォ……ウ、ゴベェ……!!」ビクンビクンビクン

赤城改二「あ、あああ……や、やまと、さん……!」ガタガタ

提督「ふう……こんなもんか……」ズポッ

大和改二「ハヘッ」ガクガクッ

提督「ん? なんだこりゃ!? 大和の体がえらく細ってやがる。魂削ったら体も削れるとか聞いてねえぞ……?」

提督「……捕獲牢に大和の魂を吸わせたおかげで魔力が回復してるな。この魔力でついでに大和の体も魂に合わせるよう調整しておくか」

赤城改二「あ、あ、頭の中を、いじくるなんて……っ」ガタガタガタ

提督「よし、これでしばらく様子見だな。これで性格もちったあまともになってくれるといいんだが……さてと」フリムキ

赤城改二「ひっ!?」

提督「先に起きてるお前をやっちまうか。騒がれても面倒だ、おとなしくしてろよ……!」

赤城改二「い、いやっ、こないで……おねがい、たすけてぇ……! おねがいだか」

 ズブッ

赤城改二「ら゛……っ」

 * * *

 * *

 *
385 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:05:02.23 ID:QAWrUrqZo

 * その夜 *

 * 提督の私室 *

提督「くっそ疲れた……今日一日でいろいろあり過ぎだぞ……」

提督「はあ……俺の部屋もベッドも広すぎだろ。なんで毎回誰かが泊まりに来る前提なんだよ、くそ……」

提督「……」

提督「……」

提督「まあ……それも悪くねえのかもな。あんな風に、俺の無茶をわかってくれたり、にこにこと笑ってくれたりしてんだもんな」

提督「……あいつらにも、何かしら返してやれるもんがねえとな……」

提督「何が、いいかねえ……」

提督「……」

提督「すー……」スヤァ…

 扉<チャッ…

ニコ「……魔神様?」コソッ

ニコ「あれ、寝ちゃったのかな……」

ニコ「……」
386 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:05:47.33 ID:QAWrUrqZo

ニコ「……」

 ホッペツンツン

提督「ん……」スヤスヤ…

ニコ「……」

ニコ「魔神様……ぼくは、このままでいていいのかな」

ニコ「きみが、魔神様と、そうでないものに分かれた時……『きみ』は、そうでないものに分かたれてしまった」

ニコ「ぼくが、慕っていたのは、魔神様じゃなかった……そうなのかな」ウツムキ

ニコ「……」

提督「すー……」スヤァ…

ニコ「……」

ニコ「なんだい、ぼくが真面目に悩んでるのに。本当に……寝坊助なんだから」

ニコ「……」

 『我は、かの女の一部なり』

 『女。汝もまた、我の一部ぞ』

ニコ「……いいのかな。魔神様……ぼくは、きみを、好きでいて」
387 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:06:32.45 ID:QAWrUrqZo

ニコ「ふたつに分かたれた魔神様は……性格と、神格に、分かたれた」

ニコ「それが、改めて、ひとつになったんだから……」

ニコ「きみは、ぼくの魔神様……それで、いいよね?」

ニコ「……だから……」

 チュッ

ニコ「ぼくは……お姉ちゃんは、ずっと一緒だからね……?」

提督「すー……」

ニコ「……」

ニコ「……」

ニコ「はっ!? ぼ、ぼくは、いったい何を……!」カオマッカ

ジェニー「いやいや、ちょっと待ってよ、なに? 今の控えめなキスは」

ニコ「!?!?!?」

ジェニー「前はもっとがっつりディープにやってたじゃない。ほら、やっちゃいなさいよもう一回。遠慮する間柄じゃないでしょ?」

ニコ「っ、っ!?」クチヲパクパク

ノイルース「おや。二人とも、あるじ様の寝室で何をしているのです?」スッ

ジェニー「あれ、ノイルース? あなたこそ、どうしてここに?」

ノイルース「……あるじ様はおやすみのようですね。おやすみの邪魔にならないよう、まずはお部屋から出ましょうか」
388 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:07:32.25 ID:QAWrUrqZo

 * 提督の私室前 *

ノイルース「……なるほど。ニコさんがあるじ様のお部屋に忍び込んだと」

ニコ「ま、まだ起きてると思ったんだよ」

ノイルース「艦娘や深海棲艦に見つかってはいませんね?」

ニコ「ま、まあね……?」

ジェニー「私はたまたま見つけたけどね」

ノイルース「艦娘たちの間では、夜間、あるじ様のお部屋に出入りできる者が日ごとに決められております。ニコさんも御存知ですね?」

ジェニー「え? そうなの?」

ノイルース「ええ。以前その禁を破ったケイティーが、今も姿をなかなか見せないのは、そういうことだと聞き及んでいますが?」

ジェニー「えええ?」

ノイルース「ですので、ニコさんと言えども、今後は魔神様のお部屋への出入りは控えていただきませんと」

ニコ「……そういうつもりじゃなかったんだけど」

ジェニー「っていうか、ノイルースはいいの?」

ノイルース「今日は私があるじ様のお部屋にお邪魔する日です。皆さんとそのようにお約束しました」

ジェニー「ええええ!? いつの間に!」

ノイルース「ニコさんもあるじ様も、今朝は大変だったと聞いております。心配なのは理解できますが……」
389 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:08:16.93 ID:QAWrUrqZo

ニコ「……もう大丈夫だよ。ぼくは、魔神様が、魔神様であればいいんだから……」

ノイルース「?」

ニコ「魔神様がエフェメラのせいで、魔神様と深海棲艦のふたつに分けられたとき……ぼくは、深海棲艦のほうに、冷たくしちゃったんだ」

ニコ「これまでいろいろ話をしてきた魔神様が実は深海棲艦で……魔神様は、その中でずっと眠ってた」

ニコ「それに気付けなかったことに謝りたかったのと……改めて『魔神』になった魔神様に、ぼくを、受け入れてもらいたかったんだ」

ジェニー「ニコちゃん……そっか。あの時は確かにそうだったよね……」

ノイルース「なるほど。あるじ様に、懺悔をしに来たと」

ジェニー「ん? 懺悔? 懺悔でキスしにくるかなあ?」

ノイルース「……は?」

ジェニー「さっきニコちゃんがリーダーにキスしてたんだよね。それがすっごい控え目でさ?」

ニコ「じぇ、ジェニー!?」

ノイルース「……」

ジェニー「以前やったときは、口の周りが涎だらけになって、記憶も怪しくなるくらいがっつりやってたのに、今更遠慮しなくても……」

ニコ「ジェニー!? ちょっと!!」オロオロ

ノイルース「……困りますね、ニコさん」

ニコ「いや、それは、その」
390 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:09:02.57 ID:QAWrUrqZo

ノイルース「話したいことがあるのであれば、しっかりお話しして、あるじ様のお耳に入れておかなければならないのでは?」

ニコ「え……?」

ノイルース「本日のあるじ様はお疲れの様子……今宵はゆっくりお休みいただこうかと思いましたが、気が変わりました」ニコノウデツカミ

ジェニー「き、急にどうしたのノイルース?」

ノイルース「ジェニー、すみませんが、今日のところは私とニコさんとあるじ様だけでお話をさせてください」メラッ

ジェニー「へ? ……わ、わかったけど」

ニコ「ちょ、ちょっと、ノイルース……?」ヒキズラレ

ノイルース「そこまでやっているのであれば、もう一度改めてそのラインまで立っていただきませんと」グイグイ

ニコ「何を言ってるの!?」ズルズル

ノイルース「そのような中途半端な意思と態度で、ただでさえライバルの多いあるじ様と一緒にやっていけるとお思いですか?」

ノイルース「艦娘や深海棲艦の皆さんのほうが余程覚悟が決まっているではありませんか。ニコさんも我々メディウムを率いるのであれば……」クドクド

 扉<パタム

ジェニー「……ノイルースは、いったい何に怒ってるのよ……」

ミリーエル「あれっ? ジェニー、こんなところでどうしました?」

ジェニー「あっ、ミリーエル! 実はねえ、ノイルースが……」

 *

ミリーエル「……ああ、問いただしにかかりましたか。お説教が始まったというか、長女としての使命感に駆られたんだと思いますよ」

ジェニー「使命感……?」

ミリーエル「ノイルース姉さんは面倒見がいいのですが、たまに行き過ぎるところもありまして……」

ジェニー「お節介心に火がついちゃったかあ。結構、世話焼きなんだねー」

ミリーエル「迂闊に口を出すとこちらにも飛び火しますので、早めに退散したほうが良いと思いますよ」
391 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:10:02.49 ID:QAWrUrqZo

 * 翌朝 *

 * 執務室 *

提督「よう、おはようさん」

大淀「おはようございます、提督」

不知火「昨日は大変でしたね……おや? この香りは」

提督「ああ、昨晩はニコとノイルースが部屋に来ててな。リラクゼーションだかなんだかで、香木を焚くのがノイルースの趣味らしい」

不知火「なるほど……良い趣味ですね」

大淀「え、ニコさんと、ノイ……」

提督「ノイルースな。ファイアーボールのメディウムの」

大淀「も、もうそんな人たちまで提督のお部屋に……!?」

不知火「大淀さん、予定表を見てなかったんですか。しっかり書いてありましたよ」ヒソッ

提督「けど、なんかニコが説教されてたんだよなあ。ちゃんと俺に認めてもらえとか……」

提督「俺としては、ニコが深海棲艦だった俺を無視しても当然のことだと思ってたから、そこまで叱ってやるなって言ったんだけどな」

不知火「提督が深海棲艦に、ですか」

 ズズズズ…

提督棲姫「おう。お前たちは見てなかったと思うが、こんな感じの見た目になってたんだよ」

大淀「!?」
392 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:10:47.39 ID:QAWrUrqZo

不知火「これは……声まで女性のものになってますか」

提督棲姫「魔神の要素から深海棲艦の要素を引っぺがされちまってな。それでこの姿にになっちまったんだ」

提督棲姫「軽巡棲姫には、提督棲姫なんて呼ばれるしよ……ま、その通りだから否定できねえけど」

 ズズズズ…

提督「ふう。やっぱ、こうやって変身して説明すると手っ取り早いな」

大淀「は、はい。でも、いきなりですからびっくりしましたよ……」

提督「いくらか魔神の新しい能力にも慣れておこうかと思ってな……ん?」モゾッ

提督「ちょっと悪い……」ウワギヌギヌギ

不知火「どうかなさったんですか?」

提督「いや、なんか今、変身したときに服の中が寄れたっつうか……不知火、ちょっと上着預かってくれ」ヌギヌギ

不知火「はい?」ウケトリ

大淀「……」

提督「ウエストのサイズも変わっちまったせいで、下着がずれて気持ち悪いんだ……ちょっと下着を直してくる」モノカゲカクレ

大淀「……」ガンミ

不知火(大淀さんの視線が司令に集中していますね……)

不知火「そういえば、司令? 先ほどの深海棲艦の姿で、海の上を走れるのでしょうか?」

提督「ん? そういや試してねえな。今度誰か随伴してもらって試してみるか……ちょっと怖えけど」
393 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:11:32.01 ID:QAWrUrqZo

 * 一方 提督の私室 *

ノイルース「ニコさん……昨晩は眠れましたか」

ニコ「……」フルフル

ノイルース「私も、緊張して眠れませんでした……」セキメン

ニコ「……まさか、魔神様と一緒に寝ることになるなんて、予想してなかったよ」セキメン

ノイルース「私もです……艦の娘たちはみな、あのあるじ様の温もりと心地よさを求めているわけですね」

ノイルース「残念ながら、私はまだそこで安眠できるまでの境地には、至れませんでしたが……」ポ

ニコ「……少しずつ、慣れて行かないといけないね。ぼくがこんなんじゃ、みんなに笑われちゃうよ」

ノイルース「ええ、是非そうなさってください。私もそのように努めます……」

ニコ「……え? わたしも?」ハッ

ノイルース「……!! は、いえ! そ、それは……」カオマッカ

ニコ「……」

ノイルース「……」
394 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:12:17.13 ID:QAWrUrqZo

ニコ「ぼ、ぼくは、魔神様のお姉ちゃんだからね!?」

ノイルース「そ、そこでそう仰られましても!? と言いますか、なぜそれを今!?」

 扉<コンコン チャッ

扶桑「あらあら、それじゃ、私はニコさんをお義姉様とお呼びしないといけないかしら」ウフフ

ニコ「!?」

ノイルース「!?」

扶桑「すんすん……あら? この香り……エレノアさんが使ってる香木かしら」

ノイルース「ど、どうしてそれを……?」

扶桑「それなりにメディウムの皆さんとは、仲良くさせてもらっていますからね。うふふっ」ニコニコ

扶桑「ところで……昨晩は、ニコさんがお泊りの順番ではなかったような?」

ニコ「そ、それはその……」

扶桑「ふふ、大丈夫よ。誰にも言わないから、心配いらないわ」
395 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:13:03.07 ID:QAWrUrqZo

ニコ「……本当に? 君だって、魔神様のことはすごく気に入ってるんでしょう?」

扶桑「そこも心配しなくて大丈夫。私は、メディウムのみんなにも感謝しているから」

ノイルース「感謝……ですか」

扶桑「ええ。私の……かつて居た鎮守府の、あの男の呪縛を解いてくれたのは、メディウムのみんなだったでしょう?」

扶桑「私は、深海棲艦に命を助けられて……提督たちにも、山城と一緒にいろいろ助けてもらえたわ……」

扶桑「時雨は、あの時死んでしまったけれど……それでもまた、会って話ができるようになった……!」

扶桑「私はみんなに感謝しているの。そして、その中心に立って、私たちを守ってくれている提督にも……そう、とても感謝しているわ」ニコ…

ニコ「……」

ノイルース「と、ところで扶桑? どうしてあなたはここに?」

扶桑「私はいつもこの時間に、提督のお部屋の洗濯物を回収しているの」

扶桑「お部屋に泊まる子の中には、お寝坊さんもいるから、その時は提督に代わってベッドメークもしているわ」

ノイルース「そういうことでしたか……」

扶桑「提督は早起きでしょう? たまに、その残り香を堪能しに来る子もいるから、早く退散したほうがいいかもしれないわよ」フフッ

ニコ「!」スンスン
396 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:14:01.86 ID:QAWrUrqZo

扶桑「もっとも、その提督の残り香で、このお部屋にいたことがばれてしまうかもしれないけど……シャワーでも浴びてきたほうが」

ニコ「……ノイルース」

ノイルース「は、はい?」

ニコ「ぼくは、今日は一日、神殿のお部屋にいるから」

ノイルース「はい?」

ニコ「今日はこっちに顔を出さないから。よろしくね!」ダッ!

 神殿への扉<パッ! ガチャ! パタム! フッ…

ノイルース「……あっという間に神殿のお部屋に逃げられてしまいましたね」アタマオサエ

ノイルース「扶桑の言う通り、せめてシャワーを浴びたほうが良かったと思いますが……」

扶桑「せっかくの提督の残り香を、洗い流したくなかったんでしょうね」

ノイルース「ああ、なるほど……」ポ

ノイルース「ところで扶桑? さきほど、ニコさんをお姉様? と呼んでいましたが……」

扶桑「ええ、彼女が提督のお姉さんだというのなら、私の義理のお姉さんになるかもしれないでしょう?」ニコ

ノイルース「……なっ!?」

扶桑「私は第何夫人になれるのかしらね? 愛人枠でも構わないけれど……うふふ」
397 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/09(火) 00:15:29.97 ID:QAWrUrqZo
今回はここまで。

>378
長く続けていますが、このスレで完結させたいと思います。
……いつの間にか400近くになってしまいましたが……。
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/01/12(金) 00:46:24.24 ID:3/34d2Id0
頭の中というか魂の要素弄ってる?
これ下手したら廃人化したり植物状態になるやつでしょうか。
しかし提督の残り香とは…
399 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:01:50.36 ID:2HZv23fAo

今回は曽大佐のお仕置き編になります。思ったより長くなったので数回に分けて投下。
ちなみにメディウムも深海棲艦も提督も出てきません。

というわけで続きです。
400 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:02:32.40 ID:2HZv23fAo

 * 襲撃から数日後 *

 * 曽大佐鎮守府 執務室へ続く廊下 *

N特尉「我々は帯同せずに、大和たちだけを執務室に向かわせて良かったのか?」

妙高「コロラドさんもいますから、大丈夫でしょう。それに、最初は行くべきではないとのお話ですし」

N特尉「……そうか……」チラッ

朧「……」ジロリ

初雪「……」ジトッ

初春「なんじゃ? わらわたちの顔に、なんぞついておるか?」

N特尉「……鹵獲した曽大佐の艦娘を返すついでに、曽大佐の鎮守府を見てこいというお達しだったが……」

N特尉「まさか、お前たちと一緒に行けと言う話になるとは……」アタマオサエ

初春「ふっ、貴様の自業自得じゃろうて」

N特尉「まったくだ。もう少し仕事のしやすい環境を望んでいたんだが……いや、言うまい。身から出た錆だ」

磯波「司令官……」

N特尉「あまり心配そうな顔をしなくていいぞ、磯波。仕事はいつも通りだ、そこは何も変わらない」

N特尉「それより、我々が曽大佐の執務室に入るのはまだ早い、ということでいいんだな?」

初春「うむ。まあ、しばし眺めておるが良い」
401 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:03:17.51 ID:2HZv23fAo

 * 曽大佐鎮守府 執務室 *

矢矧改二「曽提督、N特務大尉殿がもうすぐこちらにいらっしゃるそうです」ペコリ

鳳翔改二「深海棲艦に鹵獲された大和さんたちを連れてくる、というお話でしたね……?」

曽大佐「ふざけた話だ……海軍はどこまであいつらに浸食されているんだ! 特別任務を担う尉官すらも深海棲艦と通じているというのか!」

加賀改二「大和さんや赤城さんが囚われたと聞いたときは、驚きましたが……これはどうやら、いろいろな意味で油断できないようですね」

曽大佐「殲滅できると言うからこそ送り込んだんだ。この失態、どうしてくれようか……!」

長門改二「曽提督、私を出せ。陸奥ではなく、私を出すべきだったのだ」

金剛改二「ヘイ、長門? 私も一緒に行きマス……榛名の汚名は、私が雪がせて貰うデス」

夕立改二「かたき討ちっぽい! 全部ぶっ潰すっぽい!!」

 コンコンコン

曽大佐「入れ!!」

コロラド「失礼します」チャッ

曽大佐「貴様は……川提督のところの海外艦か!! 我が艦隊を支援するどころか、足を引っ張るような真似をしおって!」

曽大佐「よくも恥ずかしげもなく、私の前に姿を見せたものだな! 失態たぞ! 情けないとは思わんのか!」

コロラド「……」
402 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:04:02.41 ID:2HZv23fAo

曽大佐「大和たちも来ているんだろう! さっさと入らせて何があったのかを報告させろ!!」

コロラド「……いいわよ、大和。入って」

大和?「はーい!」

矢矧改二「えっ?」

海防艦より幼い外見の大和(以下「幼大和」)「やまと、はいります!」トテトテトテッ

曽大佐「な、なあっ!?」

鳳翔改二「……大和、さん?」

幼赤城「あかぎ、はいります!」

幼陸奥「おじゃまするわね。あっ、ながとー!」テヲフリ

幼榛名「はるな、さんじょうしました!」

加賀改二( ゚д゚)

長門改二( ゚д゚)

金剛改二( ゚д゚)

幼由良「ゆらです!」

幼朝潮「あさしおです!」
403 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:04:47.70 ID:2HZv23fAo

夕立改二「こ、金剛さん、どういうことっぽい!? なんでみんな小っちゃくなったっぽい!?」オロオロ

金剛改二「わけがわからないデス……!?」オメメグルグル

矢矧改二「こ、こんな、子供みたいな……いくらなんでも、別人じゃないの!?」

幼大和「ていとく、とってもおおきいですね! やまとです、よろしくおねがいします!」ペコリ

幼艦娘たち「「よろしくおねがいします!」」

金剛改二「」チーン

長門改二「こ、金剛!? しっかりしろ!?」

曽大佐「……なんだこれは。どういうことか説明しろ」

コロラド「その前に、あの島の提督から親書を預かってきています」

曽大佐「なに……?」

コロラド「大和」

幼大和「あっ、そうでした! あかぎさん!」

幼赤城「これですね。よいしょ……っと」

 (赤城が背負っていた黒光りする立派な木箱をおろして、大和に手渡す)

幼大和「ていとく、これをどうぞ!」ニコニコッ

曽大佐「……」
404 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:05:31.80 ID:2HZv23fAo

コロラド「……」

曽大佐「ふ……」ワナワナ

幼大和「?」

曽大佐「ふざけるな!!」バシーッ!!

幼大和「ひっ!」ビクッ!

 木箱<ガッ、ゴロゴロガラン!

鳳翔改二「て、提督!? 落ち着いてくだ……」

曽大佐「何が親書だ! 貴様らは負けて戻ってきたのだぞ! 恥を知れ! へらへらするな!!」

幼大和「ひい……っ! て、ていとく、こわいです……っ!」タジッ

曽大佐「怖いだと!? 貴様ら艦娘が、怖いだと!? 寝ぼけたことを言うな!!」

曽大佐「深海棲艦を殺すために生まれたお前たちが、この程度のことで怯えていて戦えると思うか!!」グワッ!

幼大和「ひうう……っ!」ビクビクッ

幼赤城「やまとさん……!」ヒシッ

幼由良「こ、こわいよぅ……!」ヒシッ
405 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:06:16.77 ID:2HZv23fAo

曽大佐「ええい、泣けば許されるとでも思っているのか! クソガキどもめ!!」

幼榛名「こんごうおねえさまぁ、たすけてください……!」チラッ

金剛改二「は、榛名……!」グラッ

金剛改二(こんなに可愛い榛名の姿はこれまで見たことがないデス……しかし、ここで手を貸しては、逆に曽提督が……)

金剛改二「……ウグウゥ……!」グラグラグラ

夕立改二「こ、金剛さん!? しっかりするっぽい!」

曽大佐「おのれ……奴らは我々の大和を返すと言っていたのだぞ! それを、こんな見知らぬガキどもを送ってくるとは!」

曽大佐「最初から深海棲艦を信用しろと言うのが間違いだったのだ!! どれだけ我々を馬鹿にするつもりだ!!」

加賀改二「……そ、そう、よね。あの赤城さんが、こんな……こんな……ううっ……!」

長門改二「加賀! しっかりしろ!」

曽大佐「おい貴様!! 本当の大和はどこへやった! 本当のことを言え!!」

コロラド「……」

曽大佐「何をためらう! 早く言え!」
406 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:07:02.95 ID:2HZv23fAo

コロラド「ここにいるのが、あなたの艦隊の大和よ。あの島の提督がそう言っていたの」

曽大佐「っ……伝書鳩か貴様は!! この、役立たずが!!」ブンッ!

 ガッ!(曽大佐の平手打ちを、コロラドが事も無げに左腕でガードする)

曽大佐「ぐ……っ! 貴様、上官に歯向かうか!!」

コロラド「……」

曽大佐「……なんだその目は!」

コロラド「……」ジロリ

曽大佐「……くっ!!」タジロギ

コロラド(……これは、あの提督の言う通りかしら)

コロラド「彼からは、すべてその親書にしたためた、としか聞いていないわ」

コロラド「何があったのかを知りたいのなら、その箱を開ければいいじゃない。その役目は、私ではないはずよ」

曽大佐「……っ!!」ビキビキッ!

長門改二「お、おい、貴様コロラドだな!? 我々の提督に対するその非礼、看過できるものではないぞ!!」

コロラド「……あなたは、長門ね?」
407 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:07:46.95 ID:2HZv23fAo

コロラド「あなたが仮に、曽大佐がこれまでやってきたことを知っているとしたら、先にそれをどうにかすべきだと思わなくて?」

長門改二「どういう意味だ……話をすり替えるな! 私は、無礼が過ぎると言っているんだ……!」ギリッ…!

幼陸奥「ひ……!」ビクッ

長門改二「く……!」

夕立改二「長門さん……?」

コロラド(長門も、小さくなった陸奥が怯えているのを見るのは嫌なようね……)

コロラド「とにかく。何を言われても、私はこの大和たちを『元の鎮守府に返すように』としか言われてないの」

コロラド「しかも彼は……あの提督は、これはあくまでお願いであって、嫌ならやらなくていいとまで言っていたわ」

コロラド「この場で曽大佐から、この件で叱責されるであろうことも予測してね」

曽大佐「うぬ……っ!!」

コロラド「そもそも、私たちのこの戦いは奇襲作戦よ。逆に沈められても文句は言えないものだったわ」

コロラド「だというのに、不意に現れた深海棲艦から、あの島の艦隊に助けてもらって」

コロラド「その一方でこの本隊は、私たちを救援に来た深海棲艦を背中から撃って……それで負けたのよ。本当に情けないわ」

曽大佐「貴様、言わせておけば……っ!!」

長門改二「コロラド……っ!!」
408 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:08:32.63 ID:2HZv23fAo

コロラド「今後、私やあなたに従った川提督がどんな処分を受けるかわからないし、それも甘んじて受けるべきだとは思うけれど」

コロラド「レ級の撃退に協力する姿勢を見せたあの島の提督が、あなたに何を伝えようとしたのかくらいは、知っておくべきではなくて?」

曽大佐「……」チラッ

 (床に転がったままの黒光りする立派な木箱)

曽大佐「この俺に……親書だと」

矢矧改二「て、提督! 私が拾います」タッ

曽大佐「その必要はない!!」

矢矧改二「え?」

曽大佐「こんなものは……こうだ!!」ガッ!

コロラド「ちょっと、踏みつけるなんてどういうつもり……!?」

曽大佐「ふんっ!!」

 木箱<グシャ バキバキッ!

幼由良「!」ビクッ

幼赤城「そ、そんな……!」
409 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:09:16.76 ID:2HZv23fAo

幼朝潮「せ、せっかくもってきたのに……!」

幼大和「うう……ぐすっぐすっ」メソメソ

幼陸奥「やまと、なかないで……!」ウルッ

幼榛名「うえええん……!」グスグス

金剛改二「……ふぐううう……!」ズキズキズキ

夕立改二「こ、金剛さん!? 胸を押さえて……どこか痛むっぽい?!」

鳳翔改二「曽提督、さすがにそれは、やり過ぎなのではないでしょうか」オロオロ

曽大佐「深海棲艦と手を組むような愚か者の言葉に耳を傾ける必要はない!! このゴミを持ち帰って伝えろ! 我々は、貴様らに」

 割れた木箱から噴き出す白煙<ブシューーーーー!!!

曽大佐「屈しは……なぁっ!? な、なんだこの煙は!!」

 白煙→カースドガス<ブシューーーーー!!!

曽大佐「うおお、なんだ!? 何も見えんぞっ!」モワモワモワッ

コロラド「え、ええ!? なに!? 何が起きたの!?」
410 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:10:01.97 ID:2HZv23fAo

矢矧改二「曽提督!」

夕立改二「真っ白で何も見えないっぽい!!」

鳳翔改二「ま、窓と扉を開けてください! 早く!」

長門改二「一体何だというんだ!! くそ、扉はどこだ!?」

コロラド「ちょっと、走ってぶつかったらこの子たちが怪我をするじゃない! 静かに歩きなさいよ!」

長門改二「す、すまん!!」

 モワモワモワ…

長門改二「む、煙が晴れてきたか……?」

鳳翔改二「み、皆さん大丈夫ですか!? 具合が悪くなったりしていませんか!?」

夕立改二「前が見えなくなっただけで、苦しい感じも全然しなかったっぽい!」

金剛改二「煙と言うより湯気のような、ただ白いだけの煙でしたネ……?」

コロラド「もし催涙ガスなら刺激臭とかがあるはずだけど……いったい、なんの煙だったの?」

矢矧改二「提督、大丈夫ですか……?」

曽大佐(老人化)「……フガッ?」

矢矧改二「ってええ!?」

鳳翔改二「!?」
411 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:10:46.78 ID:2HZv23fAo

コロラド「ちょっ……!?」

加賀改二「えっ、誰ですかあれは」

長門改二「まさか……曽提督か?」

金剛改二「」シロメ

夕立改二「金剛さん!? しっかりするっぽい!!」ユサユサ

曽大佐「なんだ……俺の身に何が起こっ……ぐう!? い、いたたたた!?」ビキッ!

曽大佐「か、体が痛いし、足取りが重いぞ!! それに目がかすむし……体に力がまるで入らん……!」ヨロヨロッ

矢矧改二「……」ボーゼン

曽大佐「矢矧! 間抜け面でぼーっと突っ立っているな!! 何が起こったのか説明し……ぅげほっ! げほ、げほっ!!」

 扉<ガチャtッ

初春「ふむ、やっと箱を開けたか。随分と悶着あったものじゃの……ん? なんじゃ、開けずに壊したのかえ?」

コロラド「初春!?」

曽大佐「ぐぬう、誰だ!! ドアを開けっぱなしにしたやつは!! ……あいつは誰だ!?」

初春「なんとまあ、予想以上の姿になったのう……それより、やはりわらわのことは覚えておらぬか」

幼朝潮「あっ、はつはるさん!」
412 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:11:32.48 ID:2HZv23fAo

幼陸奥「ごめんなさい、あのはこ、こわされちゃったの……」

幼大和「せっかく、ていとくさんから、おくりものだって、いわれたのに……」ジワッ

初春「ああ、気に病むことはないぞ。もともと、壊されても構わぬものじゃったからの。開けずに捨てられようものなら考えたものじゃが」

幼榛名「ところで、あのおじいちゃんはだれですか?」

幼由良「はこからけむりがでてきたら、あのおじいちゃんがいたんです」

初春「ああ、あれが曽大佐じゃ。多分」

幼赤城「そうなのですか? さっきまでいた、つよそうなおとこのひとと、ぜんぜんちがいますけど……」

曽大佐「ぐぅ……目が見えん! あれは誰だ!」ヨボヨボ

矢矧改二「初春です。この鎮守府にはいないはずですが……」

曽大佐「ああ!? 誰だってぇ!?」

矢矧改二「初春です!!」

鳳翔改二「もしかして……耳まで遠くなってますか」

金剛改二「」ヨロフラァ…

夕立改二「金剛さん!! 本当にしっかりするっぽい!!」ガシッ!
413 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:12:16.93 ID:2HZv23fAo

コロラド「ちょっと初春!! あの箱のギミックはいったいどういうことよ!」

初春「ん? コロラドは玉手箱を知らぬのか?」

コロラド「タマテバコ?」

初春「うむ。日本では有名な御伽噺でのう」

初春「砂浜で、子供にいじめられていた亀を助けた浦島太郎という若者が、そのお礼に海底の城でおもてなしを受けるという噺でな」

初春「その浦島太郎が帰り際に渡される箱が玉手箱でのう。開けると煙が出て、あの通り齢を取りおじいさんになる、という代物じゃ」

コロラド「なんでよ!?」

初春「浦島太郎が元の砂浜に帰ったあとは景色が全然違っていて、生家もなくなっていたんじゃと」

初春「それはおそらく、浦島太郎がおもてなしを受けている間、陸の上では数十年の年月が経っていたんじゃと言われておる」

初春「ゆえに、箱を開けたことで、浦島太郎が本来陸の上で過ごしていた時の年齢になった、と、考えられておるんじゃ」

コロラド「ええ……? わけがわからないわ。今の話のどの辺が教訓になるっていうの?」

初春「欧米では童話にも何かしら教訓を持たせるようじゃが、日本の昔話は理不尽な結末も多いからのう。無理に理解せんでも良い」

コロラド「……結局、あのタマテバコは、なんだったの? なんであんなことを?」

初春「……」
414 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:13:01.71 ID:2HZv23fAo

夕立改二「タマテバコ……金剛さん、知ってるっぽい?」

金剛改二「」

夕立改二「へ、返事してっぽい!!」オタオタ

長門改二「か、加賀は、今の昔話? は、知っているか?」

加賀改二「え、ええ……少しだけ。ただ、玉手箱を持って帰ってきたという部分は私も知らなかったわ」

初春「……基本的な教養すら、この鎮守府では教えられておらんと言うか。ふむ……」ボソッ

矢矧改二「て、提督、大丈夫ですか……?」

曽大佐「おのれ、足に力が入らん……さっきの煙の仕業か!? 矢矧、手を貸せ!」

初春「さて。久しいのう、曽提督。最早、見る影もないがの」

曽大佐「……誰だお前は? 久しいなどと言われても、俺の艦隊に貴様がいた記憶はないぞ!」

初春「ふむ、当然ではあるか。わらわも、この鎮守府には3日と居らんかったからの」

鳳翔改二「3日? ……どなたか、知っておいでで?」

長門改二「いや、知らないな?」
415 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:14:47.27 ID:2HZv23fAo

初春「なぬ? 長門には追い掛け回された記憶があるんじゃが?」

長門改二「なんだと? 私は記憶にないぞ」

初春「むう……その様子じゃと、本当に覚えてもおらんようじゃな」

矢矧改二「あなた、いったい何のつもりで……」

初春「……夕立が5隻」

夕立改二「ぽい!?」

初春「村雨が4隻、暁と響と電が3隻ずつ、雷が2隻で、白露と時雨が1隻ずつ、じゃったかの」

初春「それから、朝潮型が6隻、吹雪型が5隻、綾波型と初春型が4隻ずつ、それから……」

初雪「睦月型と陽炎型が1隻ずつ」ヌッ

朧「そして球磨型と長良型も2隻ずつ、だったよね」スッ

加賀改二「……!」ハッ

初春「……なんじゃ、おぬしたちも来たのか」

N特尉「万が一にも、初春に間違ったことを起こされるわけにはいかないからな……っと、もう入って大丈夫なのか?」

妙高「煙はなくなっているから大丈夫みたいですよ」

磯波「心配なら、スマホでやりとりしますか?」

N特尉「スマホのビデオ通話でか? そこまで大袈裟にしていたら、さすがに間抜けに見えるな。やめておこう」
416 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:15:32.13 ID:2HZv23fAo

加賀改二「もしや……」アオザメ

夕立改二「加賀さんもどうしたの!? 顔色悪いっぽい!」

鳳翔改二「失礼ですが、あなたがたは……?」

N特尉「申し遅れました、私はN特務大尉! 妙高と磯波は私の部下。初春たちは協力者として他の鎮守府より同行してもらっています」

N特尉「我々は、曽大佐の艦娘の監督の方法に問題があると伺い、実態を確認するため参じた次第です」

曽大佐「N特務大尉? 貴様か……深海棲艦の手下に成り下がった、特別警察扱いの下っ端というのは!!」

N特尉「……」ヒクッ

妙高「……」カチン

磯波「……」ムカッ

朧(この三人、結構似たもの同士っぽいなあ)

N特尉「ずいぶんな挨拶ですな。まあいい、早速だがひとつずつ伺いましょう。私が深海棲艦の手下というのは、何を根拠に?」

曽大佐「あの島の提督から、俺の艦娘を引き取る取引をしたらしいな! その時点で深海棲艦に媚びを売った非国民ではないか!!」

曽大佐「おまけに連れてきたのは、似ても似つかぬ偽物だ! これで仕事をしに来たとほざくか!? 深海棲艦の犬め!!」

初雪「……なにそれ」

朧「その言い草は、さすがにアタシも頭にくるんだけど」
417 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:16:19.50 ID:2HZv23fAo

N特尉「ふふ……いや、結構結構。謂れのない誹りを受けるのも、この仕事を請け負ってからは慣れたものだ」

N特尉「まず、この小さな艦娘たちが貴君の艦隊の所属であったことは間違いないぞ。その箱に……なんだ? 壊したのか!?」

曽大佐「持って帰れ! そんなもの、見たくもない!」

N特尉「そうはいかない。この箱の中には貴君に見てもらわなければ困るものが入っている」スッ

 チャリチャリッ

N特尉「見ろ。これは貴君が大和たちに渡した指輪だ」チャラッ

曽大佐「!!」

鳳翔改二「そ、それは本物ですか!?」

N特尉「カッコカリの指輪はすべて海軍からの支給品だ。誰から誰に向けたものか、裏に刻印が入っている。ご確認いただきたい」スッ

鳳翔改二「……では、私が改めさせていただきます」スチャッ

朧(ここの鳳翔さん、細かいものを見るとき眼鏡かけるのか……)

鳳翔改二「……間違い、ないようですね。同じ刻印が、私の指輪にも同様にありました」

長門改二「あいつらが陸奥たちを殺して奪ったんじゃないのか!?」

N特尉「それはないと思うがな。少なくとも彼は、私たちよりもはるかに艦娘のことを思い遣ることのできる人物だ」

長門改二「何を根拠に!!」
418 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:17:01.80 ID:2HZv23fAo

N特尉「根拠はこの初雪と朧だ。この二人は、深海棲艦の棲むあの島の艦娘で……」

長門改二「あ、あいつの部下だと!?」

N特尉「そして、私の元部下でもある」

鳳翔改二「そういうことでしたか……!」ジロッ

長門改二「貴様らはやはりグルだったということだな!」ギリッ…!

N特尉「残念ながら、そういう間柄ではない。私はかつて、大湊の鎮守府で艦隊を率いていたが……」

N特尉「ある海域の攻略のために捨て艦という戦法を執った。そのとき、この朧を轟沈させている」

加賀改二「!」

N特尉「朧はその後、××国××島に流れ着き、そのままその島の鎮守府に着任して活動することになった」

N特尉「のちに墓場島と呼ばれたその島の鎮守府を管理していたのが、いま、深海棲艦と共に暮らしている提督だ」

長門改二「ご、轟沈経験艦だと……!?」

鳳翔改二「解体せず、そのまま運用していたというのですか……!?」

朧(……ふーん。こっちの長門さんや鳳翔さんは、そういう目で朧を見るんだ……)ムスッ

N特尉「なので、私と彼がグルだと言うのは言いがかりだな。私は彼らに憎まれ疎まれることはあっても、望んでつるむようなことはない」

朧「……」
419 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:17:46.98 ID:2HZv23fAo

加賀改二「初雪も、そうなのですか……?」

N特尉「いや。初雪は、私が艦娘管理ツールを使って酷使したために、過労で遠征途中に意識を失い艦隊から落伍したのだ」

N特尉「その初雪を保護し、人道に反した私を糾弾したのも、同じくあの島の提督だ」

加賀改二「管理ツール……もしや、艦娘洗脳ツールのことですか?」

N特尉「そうとも言われているな。それを使ったことにより、私は鎮守府の運営の権利を奪われ、本営の命により今の任務に就いている」

初雪「……」

加賀改二「……あなたが、洗脳ツールを使った目的は何です?」

N特尉「効率化のためだ。当時、私は深海棲艦を撃滅すべく、分単位で艦娘の行動を指示できるようにと、そのツールを導入した」

N特尉「少しでも、この国から……私の故郷から深海棲艦を駆逐するため、手段を選ばぬ非道な方法を、一度ならず二度、選択した」

加賀改二「……」

金剛改二「……」

長門改二「その程度のことで貴様が罪を問われるのは、おかしくないか?」

N特尉「!」

初雪「……どういうこと……?」
420 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:18:31.87 ID:2HZv23fAo

矢矧改二「人類のために、艦娘を使ったのでしょう? 正しいことに使ったのであれば、何ら問題はないのでは……」

鳳翔改二「かつてこの鎮守府でも、捨て艦自体は行われていたと聞いていますし……」

鳳翔改二「覚悟を決めたのでしたら、そこまで咎められることではないのでは」

磯波「妙高さん……ここの人たち、思想というか、考え方が……」ヒソヒソ

妙高「ええ、いけませんね……」ヒソッ

鳳翔改二「さすがに、その捨て艦で沈んだ艦娘が戻ってきた、という話までは、知りませんでしたが……」

加賀改二「……つまり、あなたが連れてきたその初春は、私たちの鎮守府で捨て艦にした艦娘のうちの一人……」

N特尉「!」

長門改二「なんだと!?」

加賀改二「そして、さっき初春が言っていた、白露型や暁型の数。あれは、曽大佐が沈めた捨て艦の数……」

鳳翔改二「!!」

加賀改二「そう、言いたいのね……!?」キッ

N特尉「……どうなんだ、初春」

コロラド「ちょっと、今の話、本当なの!?」

初春「……」

長門改二「曽提督……そうなのか!?」

鳳翔改二「提督……!?」
421 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:19:17.53 ID:2HZv23fAo

曽大佐「そんな昔のことなど、覚えているか!」フガッ!

曽大佐「捨て艦など、珍しい戦術でも何でもない! その程度のことでうろたえるな!」

曽大佐「使える手段は何でも使うべきだ! そんな弱腰な態度で、深海棲艦を相手に勝利など掴めるか!!」

曽大佐「お前たち艦娘は兵器だ! 深海棲艦という侵略者を打ち滅ぼすための兵器だ! それ以外のなんだというのだ!!」

加賀改二「……っ」

N特尉「これは、取り付く島もなさそうだな」

コロラド「……」

曽大佐「鳳翔! この指輪は本物だと言うのか!」

鳳翔改二「は、はい……!」

曽大佐「だとしたら、この役立たずの餓鬼どもが、我々が見送った大和の成れの果てだと……そう、言うんだな!?」

鳳翔改二「そ、そうだと、思われます……!」

曽大佐「そうか。ならば、こいつらは解体しろ! 我が艦隊には不要だ!」

鳳翔改二「な!?」

幼大和「!!」
422 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:20:02.11 ID:2HZv23fAo

曽大佐「聞こえなかったか! 俺はこいつらを解体しろと言ったんだ!!」

N特尉「……本気ですか」

曽大佐「当然だろう! こいつらは負けたんだぞ! 戻ってくることが出来なければ、今頃海の底に沈んでいたはずの艦娘だ!」

曽大佐「戦力を失うという意味では、海の藻屑になるのも、解体するのも同じこと! 役立たずどもを艦隊に置いておく理由などない!」

曽大佐「いや、解体すればいくらかの資材になるのだ! ただ轟沈させるより何倍も我が艦隊のためになるだろう!!」

N特尉「……」

曽大佐「我々は、いつの間にか甘えていたようだ。艦隊が負けても、迅速に下がれば誰も沈むことはないと」

曽大佐「それが大きな間違いだったのだ! 深海棲艦に敗北すれば、すべてを失う! 本来、戦争で生還できる保証など、どこにもない!」

曽大佐「負ければ死ぬ! それだけの話を、我々は、忘れていただけなのだ!!」

初春「……」

曽大佐「我が艦隊がこれ以上無様な敗北を重ねないよう、見せしめとして大々的に解体処分を行わなければならん!」

曽大佐「とっととそいつらを、工廠へ連れていけ!!」

鳳翔改二「……っ」

幼大和「ぐすっ、ぐすっ……やだ……もう、やだぁ……!」

鳳翔改二「!」ハッ
423 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:21:01.92 ID:2HZv23fAo

幼大和「やまと、ここが、おうちだって、きいたのに……もう、やだぁ……」

幼大和「こんなとこ、おうちじゃないぃ……!」ポロポロポロ

鳳翔改二「……」ズキッ

幼赤城「や、やまとさん……!」

幼陸奥「わたしたち、どうなるの……かいたい、されるの……?」

幼由良「そんなの、やだあ……!」グスグス

長門改二「……っ」

幼朝潮「きたばっかりだったのに……おやくに、たちたかった、です……」ポロポロポロ

幼榛名「は、はるなは……はるなはぁ……」グスッ

金剛改二「ぐ、う、うぎぎぎ……うがあああ!」グラングラングラン

加賀改二「……」ウツムキ

夕立改二「あうう、金剛さんも加賀さんも、さっきから様子がおかしいっぽい!!」オロオロ

曽大佐「おい、特務大尉! 貴様は、こいつらが俺の艦娘だから連れてきた! そうだな!?」

曽大佐「だとしたら、俺がこいつらをどうしようと、俺の勝手だ! 解体は我らの任務のうちにも入っている! そうだな!!」

N特尉「……その通りだ。貴君配下の艦娘をどうするかは、貴君の自由だ」

曽大佐「そうだろう! そうだろう!! 俺が俺の艦娘に何をしようと、貴様にそれを止める権限はないのだ!!」

曽大佐「俺のしていることは正しいのだ! なにも間違ってはいない! ふはははっぐえっ、げほ、げほげほっ!」
424 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:21:48.72 ID:2HZv23fAo

N特尉「……」

妙高「N提督! 何かいい方法は……!」

N特尉「今の時点では彼のやることに違法性はない。俺たちが手出しすることはできない」

N特尉「今の状態で彼の説得は難しいだろう。この場で起こった出来事を本営に報告し、大将たちの判断を仰ぐしかない……!」

妙高「しかしそれでは、大和さんたちが解体されてしまうのでは……」

N特尉「この場で防ぐ方法はない。俺が手を出せば越権行為になる……!」

コロラド「ねえ、N特務大尉。あなたは、彼がなぜあそこまで深海棲艦を滅ぼしたがってるか、知っていて?」

N特尉「ん!? い、いや、彼の家系の影響じゃないのか? 傍流ではあるが軍人の家系で、そこから来る責任感だと思っているが……」

コロラド「あの提督とは、何も話していないのね?」

N特尉「あ、ああ、そこは俺は何も聞いてないぞ」

曽大佐「ぜえ、ぜえ……なんで、こんなに疲れるんだ? おい矢矧、お前、背が伸びたか?」

矢矧改二「ち、違います! 曽提督が縮んだんです!」

曽大佐「縮んだ? 何を馬鹿なことを!」
425 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:22:31.84 ID:2HZv23fAo

磯波「あ、あの、すみません、どなたか大きめの鏡を持ってきてもらえませんか……?」

加賀改二「鏡?」

磯波「曽大佐のあの御様子では、ご自身の身に何が起こったのか、理解できていないのではないかと思います……」

加賀改二「そ、そうかもしれないけれど……」

夕立改二「夕立が持ってくるっぽい!!」ダッシュ!

加賀改二「でも……見せていいものなのかしら」

磯波「ご自身の身に何が起こったのかを理解できていないほうが、問題になると思いますよ……?」

曽大佐「ぐぬう……こいつらが来てから、体が言うことをきかん! やはりあの煙に毒を仕込んでいたんだろう!!」

矢矧改二「で、ですから、曽提督が……」

夕立改二「矢矧さんどいてー! 鏡、持ってきたっぽい! 見てもらうのが一番早いっぽい!!」バッ!

曽大佐「き、貴様!? 勝手にどこかの鏡を……」

 鏡『よう、ジジイ!』

曽大佐「お、お、おおおおおおお!?」

曽大佐「な……なんだ!? なんだこの、この貧相な姿わあああああ!!」
426 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/14(日) 20:28:56.28 ID:2HZv23fAo
今回はここまで。

影牢に「タマテバコ」なる罠はありませんが、
初期にあったカースドガス(動きが鈍化するガス)を魔改造して作り込んだものとお考えください。

>398
魂に含まれる害毒な要素を切り取った結果、邪気がなくなり幼児化した、というような感じです。
残り香については、由良さんをはじめとするクンカー勢が詳しいかと……(丸投げ)
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/01/15(月) 07:38:50.99 ID:CXTK4E9p0
魂の総量が減った結果、それに合わせて体が小さくなったのか。理解。それにしても幼いメンツは絶対可愛い。
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/01/17(水) 02:47:36.90 ID:15aDMDXy0
大人化も幼児化もなんでもありですね。最高です。
429 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:30:04.63 ID:slb2WKgBo
それでは続きです。
430 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:30:46.80 ID:slb2WKgBo

初春「……やっと自覚しおったか」フンッ

曽大佐「馬鹿な! これが……これが俺の姿……!!?」ワナワナワナ

曽大佐「俺は……俺はまだ40だぞ? なんだこれは……なんだこの顔はぁぁ……!」ヘナヘナヘナ…

曽大佐「うそだ……俺が、なんで、なんでこんな目に……」

 ゴソッ

曽大佐「ん?」

 (曽大佐が頭を抱えると、ごっそりと頭髪が抜け落ちて、皺だらけの指に絡みつく)

曽大佐「ぎ……ぎゃあああああああ!! お、お、俺の、髪がああああ!!?」

矢矧改二「ひっ」

曽大佐「……ぁ……あああ……」シオシオ…

鳳翔改二「」ポカーン

加賀改二「」アッケ

長門改二「」アングリ

金剛改二「」シロメ
431 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:31:32.02 ID:slb2WKgBo

N特尉「うわ……あんなに抜け毛がごっそり……」アオザメ

妙高「……一気に老人感が出ましたね……」

初雪「落ち武者ヘアー」ボソッ

磯波「ふぐっ……!?」クチオサエ

朧「初雪、笑わせないで……」クチオサエ

初雪「ん、ごめん」

コロラド「……ちょっと、あとでオチムシャって何のことか教えなさいよ」ヒソヒソ

初雪「うん」コク

夕立改二「わぁ……曽提督さん、いきなりハゲたっぽい……」ドンビキ

曽大佐「ハゲてないわあああああ!!!」

夕立改二「きゃっ!? ゆ、夕立は嘘ついてないっぽい! ちゃんと鏡、見るっぽい!」

曽大佐「やかましい! 口答えするなああ!!」ブンッ!

夕立改二「ひっ!」カガミガード

 鏡<ポキョン

曽大佐「……」
432 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:32:16.50 ID:slb2WKgBo

夕立改二「……」プルプル

曽大佐「ぎ……」

夕立改二「?」

曽大佐「ぎゃあああああ! 腕が、腕が痛えええ!!」ゴロゴロゴロ

矢矧改二「曽提督!? だ、大丈夫ですか!?」

夕立改二「ゆ、夕立、何もしてない! してないっぽい……ぽいじゃなくて、してない! ……よね?」

初春「うむ、鏡を見せて、それから殴りかかってきたところを頭を庇っただけじゃ。夕立からは、曽大佐になんら危害を加えておらん」

夕立改二「だよね……えっと、あのね? 初春?」

初春「む?」

夕立改二「曽提督さん、もしかして、めちゃくちゃ弱くなったっぽい?」

初春「まあ、老人になったんじゃから、筋肉も落ちて弱くなったことは確かじゃと思うがの?」

初春「しかし、まさか曽大佐があの場面で夕立を殴ろうとするとは思わなんだ。鏡が割れたら大惨事じゃろうに」

夕立改二「そのくらいなら、よくあることだよ?」

初春「よくあること?」

夕立改二「うん、窓のガラスくらいなら平気で叩いて割るし。その交換修理も明石さんに押し付けて、交換が遅いとまた怒るし」
433 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:33:02.04 ID:slb2WKgBo

夕立改二「夕立も、曽提督さんに報告したり、機嫌が悪くなったりすると、ばしって叩かれてたから」

初春「なんじゃと。それはまことか」

夕立改二「うん、本当。これまでも、たっくさん! 夕立、強いからそんなに痛くなかったけど、なにかあるたびグーで叩かれて」

夕立改二「それで……いま気付いたんだけど、夕立、曽提督さんのこと、そんなに好きじゃない……」

初春「……ぽい、は、つかないんじゃな?」

夕立改二「つけなくていいっぽい……もう、こんなつまんないことで怒られるの、嫌だもん」

夕立改二「あ、それと……さっき言ってた、今の夕立が来る前の夕立を5隻沈めたって、本当っぽい?」

初春「うむ、本営に残っておる記録から調べた結果じゃ」

初春「ただ、その5隻というのも、わらわが沈んだ時と同じ時期の轟沈艦を調べた結果じゃからな」

初春「もしかしたら、それ以上の艦娘を沈めているかもしれぬ」

夕立改二「……そう……そうなんだ」ショボン

曽大佐「うぐううう!! 夕立、貴様あああ!」ヨロヨロッ

夕立改二「ひっ! ゆ、夕立、何もしてない! 初春もそう言ってるっぽい! あ、ぽくない! 言ってる!!」

曽大佐「この……馬鹿犬めがあああ! 解体だ! 貴様も解体処分だあああ!!」

夕立改二「ぽいっ!?」
434 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:33:46.43 ID:slb2WKgBo

曽大佐「連れていけ! 早くこの馬鹿どもを処分しろ!!」

加賀改二「さすがにそれは横暴よ……夕立は、鏡を持ってきてあなたに見せただけだわ」

曽大佐「くっ……なんだその目は! 貴様も俺に楯突くか……ぐっ、こ、腰が……!」ヨロッ

曽大佐「ま、まともに立つことすらできんとは……ええい、加賀! 頭が高いぞ! しゃがめ!」

加賀改二「……は?」

長門改二「て、提督……いくらなんでも、それは」

曽大佐「なんだ長門! 貴様も俺に意見する気か!! どいつもこいつも……俺の上から話しかけるな!!」

長門改二「……そ、そのようなつもりは」オロオロ

曽大佐「なんだその顔は! この鎮守府がここまで評価されているのは、お前たちを指揮する俺の成果だ! 頭が高い!!」

曽大佐「この鎮守府で、その俺に逆らい、口を出すことがあってはならんのだ! そうしなければ、海の平和など生まれん!!」

N特尉「違うぞ曽大佐!! 我々海軍は……」

曽大佐「いいや違わん! 深海棲艦の犬がこの俺に意見するな!」

N特尉「曽大佐!! 我々海軍の本分は国民の……」

曽大佐「やかましい! この侵入者どもも捕まえて全員吊るし上げろ! こいつらは敵だ! 深海棲艦の手先だ!!」
435 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:34:46.42 ID:slb2WKgBo

加賀改二「何を……何を言っているの」

長門改二「……」ヒキッ

矢矧改二「曽提督! 落ち着いてください!」

曽大佐「落ち着けだと!? 敵襲だぞ!! この鎮守府の最高権力者であるこの俺がこんな目に遭っているんだぞ! 早くこいつらを」

金剛改二「っいい加減にしやがれこのファッキンクソテートクがああああ!!!!!」

曽大佐「!?」ビクッ!

N特尉「!?」ビクッ!

長門改二「こ、金剛!?」

金剛改二「さっきから黙って聞いてりゃ、俺言うことを聞け、俺に逆らうなと、自分のことばかり……!」ビキビキビキ

幼榛名「こ、こんごうおねえさま……!?」

金剛改二「私が! あなたの厳しさを受け入れてきたのは、そうでなければ深海棲艦と戦い続けられないからだと信じていたからよッ!」

金剛改二「深海棲艦に命を脅かされている人たちのために! どんな犠牲が出たとしても、強い意志で戦い続けなければいけないと!!」

金剛改二「あなたのその言葉を信じて、私たちは体を張って、命を懸けて、戦ってきたのよ!!」ギリギリギリッ!!

金剛改二「けどなあ! 今日のやり取りを見て確信したわッ!! 『おまえ』は! おまえのためにしか戦っちゃいないってことをなああ!!」

矢矧改二「……」

朧「金剛さんの語尾が……」

夕立改二「壊れたっぽい……」
436 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:35:31.44 ID:slb2WKgBo

金剛改二「曽提督がここまで愛の感じられないバカヤローだとは思ってもなかったわ!! ふざっけんじゃねえええええ!!」

初雪「もう語尾どころじゃないんだけど……」

加賀改二「……残念だけど、私も金剛さんと同じ感想を抱いたわ。もう、曽提督の下で戦いたいと、思えない……」

長門改二「加賀……!?」

加賀改二「私たちは、つけを支払うときが来たのよ。裁きを受けるときが来た……特務大尉が、それを告げに来た。そうなのでしょう?」

加賀改二「思い返せば、仲間を犠牲にすることを前提にして作戦を立てることを、間違いだと進言しなかったのが、私の過ち……」

加賀改二「この鎮守府の歪んだ『普通』に逆らわず……いいえ、逆らって解体されることを恐れた、私の怯懦が生んだ罪」

加賀改二「初春だったわね。私は、あなたのこと、ちゃんと覚えてはいないけれど……あなたたちがいたころのことは覚えてるわ」

初春「!」

加賀改二「確か、あなたがいたころにも、長門や金剛がいたと思うけれど……」

加賀改二「彼女たちは解体されたわ。捨て艦をやめるよう、彼に意見したがために……」

金剛改二「え!?」

長門改二「わ、私に先代がいたのか!?」

加賀改二「ええ。特に長門は、殴りかからんとする勢いで……それに引き換え、私ときたら」

初春「……」
437 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:36:17.30 ID:slb2WKgBo

加賀改二「我が身可愛さに、曽提督を諫めようともせず……だからいま、恥を晒して生き永らえてここにいる……」

加賀改二「今の長門が着任したとき、曽提督がいきなり怒鳴りつけたのも、きっと、そういうことがあったから……」

加賀改二「何をしても曽提督に逆らわないように刷り込んだ。そうなのでしょう、曽提督?」

長門改二「……!」

加賀改二「大和は……見る限り、何も覚えていないようね。それはある意味、不幸中の幸いかもしれないわ」

幼大和「?」グスン

加賀改二「曽大佐が新しく着任した艦娘に恐怖を刷り込み……私はそれを知りながらも止めずに傍観し、唯々諾々と従った……」

加賀改二「ここにいる子たちを解体するというのなら、異を唱えなかった愚かな私も解体されて然るべきよ」

金剛改二「加賀!? あなたはここに残らないと駄目でしょ!? あなたはこの鎮守府の、空母機動部隊の要よ!?」

加賀改二「そんなものは関係ないわ。要と言うのなら、私よりも、皆を思い遣る心を持つあなたのほうが、適任よ」

鳳翔改二「金剛さん、加賀さん。そこまでよ」

金剛改二「!!」

加賀改二「鳳翔、さん……!」

鳳翔改二「曽提督。改めてお伺いします。ここにいる、大和さんたち。および、夕立、金剛、加賀……」

鳳翔改二「この者たちを、全員解体するのですね?」ヒザマズキ

金剛改二「鳳翔……!?」

加賀改二「あなたは、その男に傅くのですか……!」
438 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:37:02.41 ID:slb2WKgBo

曽大佐「……くどい。俺は、さっきからそう言っているだろう! 命令を変えた気はない!」

鳳翔改二「そうですか……わかりました。致し方ありませんね」

金剛改二「鳳翔……っ! まさか……!」

加賀改二「……」ウツムキ

鳳翔改二「曽提督。短い間でしたが、お世話になりました」セイザ

曽大佐「!?」

鳳翔改二「鳳翔は、故郷(さと)に帰らせていただきます」ペコリ

金剛改二「……ほ、鳳翔?」

 指輪<コトン

鳳翔改二「これも、お返しいたします」

加賀改二「鳳翔さん……?」

鳳翔改二「この鎮守府に来て、ほんのわずかの間に、皆さんと肩を並べられるほどに鍛えていただいたこと、本当に感謝しております」

鳳翔改二「また、艦娘は敵艦を沈めることで世界に貢献できる。敵の命を必ず奪うが任務ゆえに、我々もまた命を惜しむべきではない」

鳳翔改二「そのように、曽提督から常々ご教示いただいておりましたが……」
439 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:37:47.27 ID:slb2WKgBo

鳳翔改二「これまで曽提督の手足となって、懸命に戦い抜いてきた功労者である大和さんたちを、ただの一言も労うこともなく」

鳳翔改二「ましてや、子供の姿にされた艦娘を、目障りと言わんばかりのその態度に、私は、疑問を覚えてしまいました」

鳳翔改二「私はそれを……鳳翔として、艦娘として。人を守る身として、看過して良いものか、受け入れてよいものか、と」

曽大佐「……なっ、なあっ……」

鳳翔改二「曽提督のご意向に沿うことのできない不束者ですので、指輪をお返しし、ここから去ることを決意した次第にございます」

鳳翔改二「大和さんたちも私が一緒に連れて行きます。轟沈も同然の身であれば、いなくなったとて同じことでしょう」スクッ

鳳翔改二「あとのことは、どうぞご心配なく……」

金剛改二「待ちなさい鳳翔! そういうことなら、私も連れて行きなさい!」

鳳翔改二「金剛さん……?」

幼榛名「こ、こんごう、おねえさま……!?」

金剛改二「ああ、榛名……ごめんなさい、あなたを、たくさん怖がらせてしまったわね」ニコッ

幼榛名「こんごうおねえさま!? おててが、まっかに……!」

加賀改二「手のひらから出血が……金剛、あなた、手を握りしめすぎて、手のひらに爪が食い込んだのね?」

金剛改二「あはは、加減できなくなっちゃって……」

幼榛名「こんごうおねえさま、かわいそう……! はやく、あかしさんにみてもらいましょう!」ウルウル

鳳翔改二「ええ、それが良いですね。工廠に行きましょう、解体ではなく、修理のために」
440 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:38:31.36 ID:slb2WKgBo

夕立改二「待って待って! 夕立も一緒に行くっぽい!」

鳳翔改二「わかりました、では、ご一緒しましょう」ニコッ

夕立改二「ほーらー、加賀さんも、一緒に行くっぽい!!」

加賀改二「わ、私も……!?」

夕立改二「加賀さんも解体される仲間っぽい! だったら、夕立たちと一緒に行くのがいいっぽい!!」ニコー

加賀改二「……そう……そうね」

夕立改二「あ、あとこれ! 夕立、もういらないから!」ポイッ

 指輪<チャリンッ

曽大佐「な……」

 指輪<チャリリンッ

金剛改二「私のも返すわ!」フンッ!

加賀改二「……お世話になりました。失礼します」

曽大佐「……!!」

矢矧改二「……」アッケ
441 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:39:16.97 ID:slb2WKgBo

幼榛名「こんごうおねえさま、はやくいきましょう!」フリフリ

鳳翔改二「さ、みなさん、工廠はこちらですよ」

幼大和「あ、あの、ほうしょうさん、おてて、つないでいいですか?」テレッ

鳳翔改二「……! ええ、いいですよ、行きましょう」ニコッ

幼大和「はいっ!」パァッ

幼榛名「こんごうおねえさまも、おててをだしてください!」

金剛改二「えっ? 榛名、私の手は……」

幼榛名「おまじないをしてあげます!」テヲトリ

金剛改二「??」テヲトラレ

幼榛名「むむむー……いたいのいたいの、とんでいけー!」クルクルピーン

金剛改二「……!」

幼榛名「おけがはなおせないですけど、いたいのは、これですこしやわらいだとおもいます!」

金剛改二「……ふふっ、そうね……!」ニコッ

幼榛名「さあ、こんごうおねえさま、いきましょう!」ニコニコッ
442 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:40:01.33 ID:slb2WKgBo

夕立改二「夕立も手をつないであげる!! 由良! 朝潮!」

幼朝潮「えっ、いいんですか?」

幼由良「ゆらも、いいの?」

夕立改二「いまは夕立がお姉ちゃんっぽいから、手をつないであげるっぽい!!」

幼朝潮「そ、それじゃ、よろしくおねがいします!」キュッ

幼由良「なんだか、へんなかんじ……でも、うれしい、かなっ」キュッ

夕立改二「加賀さんも、そっちの二人と手を繋いでくるっぽい!」

加賀改二「えっ?」

幼陸奥「……」ジーッ

幼赤城「どうしました、かがしゃん?」クビカシゲ

加賀改二(……小さい赤城さんが可愛すぎて心臓が持たないわ)キューン

幼赤城「かがしゃん? おむねをおしゃえて、くるしそうですけど、だいじょうぶですか?」クビカシゲ

加賀改二「え、ええ、大丈夫……だけど、私は……」

加賀改二(……私は、艦娘の犠牲を容認した身。このまま、生きていていいのかしら……)
443 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:40:46.37 ID:slb2WKgBo

幼赤城「かがしゃん。いっしょに、いきましょう?」ニコー

加賀改二(……でも、この笑顔は、守っていきたい。守っていかなければ……この身に換えても)

加賀改二「そうね。みんなで、行きましょうか」

幼陸奥「うん……」チラッ

加賀改二「! ああ、長門が気になるの?」

幼陸奥「うん……」ションボリ

加賀改二「大丈夫よ、長門はお仕事をしているだけ。話が終われば、きっと後から来るわ」

幼陸奥「……ほんとう?」

加賀改二「もし来るのが遅いようなら、私が呼びに戻るから。みんなで、工廠で待っていましょう?」シャガミ

幼陸奥「……うん!」パァッ

夕立改二「加賀さん遅いっぽい! 早く来るっぽい!」

加賀改二「……あなたこそ、この子たちと歩幅を合わせて歩きなさい」

夕立改二「わかってるっぽい!」

 ワイワイ…

曽大佐「……お、俺の」ヘナヘナ…ヘタッ

曽大佐「俺の……鎮守府の艦娘が……俺に、逆らう、なんて……っ!!」
444 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:41:46.19 ID:slb2WKgBo

曽大佐「……解体だ。あいつらは、できそこないだ! 存在を許すな! 解体しろ! 今すぐにだ!!」

長門改二「……し、しかし……」

曽大佐「何をしている長門! 俺の言うことをきけ!」

長門改二「……」

曽大佐「長門!!」

N特尉「……」

妙高「N提督? どうなさいました?」

N特尉「いや、鳳翔が短い間と言っていたが……もしかしてここに鳳翔が着任したのは、鳳翔の第二改装が発表されてからか……?」

矢矧改二「……そ、そういえば、そうかもしれません。一時期、ひたすら空母を建造していましたから……」

N特尉「そうか。いや、別にそれが悪いとは言わん、戦力が欲しいなら必死にもなるだろう。ただ、第二改装が発表がごく最近の話だからな」

磯波「そうだとしたら、鳳翔さんを相当に特別扱いしたんでしょうね……」

N特尉「カッコカリまで済ませたのに、こうもあっさりと三行半を出されたのでは、まあ、なんというか……」

妙高「同じ男としては、同情を禁じ得ない、と仰いますか?」

N特尉「いやいや、同情する気はないぞ? 言ってしまえば、鳳翔の能力目当てに指輪を渡したようなものだからな」

N特尉「悪し様に言い換えれば体目当てでカッコカリしたようなものだろう? 同じ男として、そういうのは許容したくない」
445 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:42:32.14 ID:slb2WKgBo

N特尉「そもそも、もうちょっと信頼関係を築いてからと言うか、お互いを知り歩み寄る時間があってから渡すべきだと思うんだ」

妙高(N提督も、お固いというか、お古いというか……)

N特尉「……まあ、曽大佐の見た目も含めて、こうはなりたくないな、とか、みじめだという気持ちは、多分にあるがな」ボソッ

妙高「それはある意味で同情なのでは?」

N特尉「だからそれはないよ……仮にも指輪を渡した相手に、あの態度はないと思うぞ? 母が大好きな私の父とは雲泥の差だ」

磯波「あの……曽大佐は、そこまで物事をロマンチックに考えてはなさそうですよ?」

N特尉「指輪を単なるブーストアイテムとしか考えてないと? ……そうか。寂しい話だな」

初春「何を呑気に語っておるか。それよりも、この鎮守府の現状を憂うべきじゃぞ」

初春「曽大佐による艦娘に対する圧力と暴力が日常化しており、この鎮守府ではそれが普通であると認識されておるようじゃ」

初春「その結果、他の鎮守府に対しても、非常に攻撃的な思想を持つ艦娘が多かった、と推測できるが?」

朧「……そういうことなんだろうね。矢矧さんや長門さんは、いまも戸惑ってるみたいだし」

磯波「私も、そう思います。モラルハラスメントも多分に含んでいたと言えそうですね」

矢矧改二「……」

長門改二「……」
446 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:43:18.80 ID:slb2WKgBo

コロラド「それより初春は私の質問に答えなさいよ。あなた、この鎮守府の出身なの?」

初春「うむ。着任して3日で捨て艦にされたのじゃ」

初春「ここでの思い出なぞ、せいぜい長門に追いかけられたくらいでな。しかし、やられっぱなしはやはり癪でのう」

初春「ここにいる朧も、N特尉に一泡吹かせておる。それを羨ましいと思ったゆえに、この場で彼奴めの鼻っ柱を叩き折ろうとしたわけじゃ」

コロラド「……誰かが味方になってくれると思ってたの?」

初春「その辺は考えておらんかったな。誰も味方にならぬなら、それはそれでN特尉の仕事がやりやすくなるだけであろうし」

初春「まあ、まさか、わらわのいたころの長門たちが懲罰で解体されていたというのは、ちと予想しておらんかったかのう……」

コロラド「それにしてもよ!? Suicide attack で40人以上も沈めたなんて本当なの!? 戦術以前の問題だわ……」

朧「多分、どんな手を打てばいいかわからなくて、試行錯誤を繰り返した結果、ってこと……なのかな?」

初春「下手な鉄砲……そのうちの一発がわらわであったということじゃな。意味があったか、それとも無駄玉であったかは最早わからぬがの」

曽大佐「……くそっ……艦娘のくせに、なんでこんな真似を……!! どうして、俺に逆らう……!!」

初春「貴様がわらわたちに敵対したからに決まっておろう。貴様がわらわたちや提督に手を出さねば良かったのじゃ」

初春「あの島に住む提督は、艦娘も深海棲艦も、戦わずに済む安息の地を求めておる」

初春「それを貴様は潰そうとした。じゃから提督も、貴様を叩きのめしたにすぎぬ」
447 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/01/20(土) 21:44:02.79 ID:slb2WKgBo

曽大佐「だからと言って、俺をこんな姿にするかぁ……!? この、人でなしどもがぁ……!」

初春「貴様のように艦娘を使い捨てにする輩がそれを言うか。それでは復讐されて当然じゃな」フフッ

曽大佐「なにが復讐だっ! 道具の……道具の分際で!!」

初春「その道具たる艦娘を、これっぽっちも大事にせぬ者が辿る末路としては、相応しいものじゃと思うがのう」

初春「これは、貴様の自己満足のために海の藻屑と化した、わらわとその同胞(はらから)の恨みと心得よ」ギロリ

初春「ただ殺すなど生温い。生き恥を晒し、長く永く苦しむ術(すべ)はないものか……」

初春「そこまでわらわに考えさせたのは、貴様のこれまでの所業ゆえじゃぞ……!」

曽大佐「っ……!」

初春「貴様のような愚か者が二度と現れぬよう、海軍にも見せしめとして大々的に知らしめてやらねばならんしのう?」

曽大佐「見せしめだと……ふざけやがって……!」

初春「ふざけてなどおらぬ。貴様も先刻、大和たちを見せしめのために解体するとのたまっておったではないか」

初春「貴様はすべてにおいて判断を間違ったのじゃ」

初春「有無を言わさず深海棲艦をすべて殺すことを是としたのも、艦娘を道具のように扱ったことも」

曽大佐「間違いなものか……! 深海棲艦を滅ぼさなければ平和な海など来るはずもないのだぞ……!?」
830.15 KB Speed:1.3   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)