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侑「ポケットモンスター虹ヶ咲!」 Part2
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442 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/30(金) 14:46:13.95 ID:loIPccok0
🐏 🐏 🐏
遥「……ん……ぅ……」
彼方「あ、遥ちゃん……!!」
遥「……おねえ、ちゃん……?」
彼方「よかったぁ〜〜〜……!! 遥ちゃん痛いところない!?」
彼方ちゃんは遥ちゃんをこれでもかと言わんばかりに抱きしめます。
遥「い、痛い痛い、お姉ちゃんの抱きしめる力が強すぎて痛いよ……」
彼方「いたたたたた!!?」
遥「えっ!? なんでお姉ちゃんが痛がってるの!?」
エマ「だ、ダメだよ、彼方ちゃん……! 固定したとはいえ、右腕の骨が折れてるんだから……!」
彼方「は、遥ちゃんが目を覚ました喜びで忘れてた……」
あの後──エマちゃんが見つけてきてくれた倒木の破片を添え木にして……応急処置をしてもらった。
そして、遥ちゃんの傷だけど……。
彼方「遥ちゃん、背中の傷は平気?」
遥「え? ……言われみれば……全然痛くない……」
彼方「ママンボウのお陰だね〜ありがとうママンボウ〜」
「ママァ〜ン」
遥「ママンボウが治療してくれたんだ……ありがとう」
「ママァ〜ンボ」
ママンボウの治癒効果は本当に目を見張るほどで、すっかり切り傷が塞がっていた。
遥「でも……ちょっとふらふらするかも……」
彼方「血を流しちゃったからね……しばらくは大人しくしてないとダメ〜」
遥「う、うん……」
彼方「というか、どうやってここまで来たの?」
遥「えっと……お姉ちゃんの持ってる端末のGPS表示を見てたら……15番水道の端っこで消えちゃったから……そこにいるんだって思って……」
彼方「うん?」
そういえば、わたしと遥ちゃんは支給されてる端末を持っていて、お互いの端末位置は検索できるんだった。
遥「それで、病院から抜け出して……ある程度、船で移動したあと……ハーデリアに掴まって……泳いできた」
彼方「なんて危ないことしてるの!?」
遥「ご、ごめんなさい……! でも……居てもたってもいられなくって……」
彼方「もう〜……誰に似たんだか〜……」
エマ「ふふ、誰に似たんだろうね?」
くすくす笑うエマちゃん。
そういうエマちゃんもゴーゴートの背に腰かけたまま……足に添え木をしていて……。
443 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/30(金) 14:47:02.54 ID:loIPccok0
遥「エマさんのその足は……」
エマ「あ、うん……わたしも足の骨が折れちゃったみたいで……」
彼方「ごめんね、エマちゃん……結局、怪我させちゃった……」
エマ「うぅん、わたしは大丈夫。こうして……姫乃ちゃんを止めることも出来たし……」
姫乃「……きゅぅ〜……」
完全に目を回して気絶している姫乃ちゃんは、今はロープで手足を縛った状態で手持ちも全部彼方ちゃんが回収済み。
外に出ていたポケモンも全部ボールに戻したから、もう姫乃ちゃんは完全に戦闘には参加できない状態になっています。
彼方「しばらくしたら、みんなのところに戻ろうね……」
エマ「うん。……わたし、やっぱりまだ果林ちゃんとお話ししなくちゃいけない。伝えきれてないこと……たくさんあるから
きっと戦闘は激化しているだろうけど……。さすがにすぐには動けない……。
今は、侑ちゃんとかすみちゃんを信じるしかない……かな……。
444 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/30(金) 14:47:43.94 ID:loIPccok0
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かきこんでいます
でんげんを きらないでください...
【ウルトラキャニオン】
口================== 口
||. |○ o /||
||. |⊂⊃ _回/ ||
||. |o|_____. 回 | ⊂⊃| ||
||. 回____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||.○⊂⊃ | ○ |‥・ ||
||. | |. | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ||
||. | |. | | | ||
||. | |____| |____ / ||
||. | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o ||
||. | | | | _. / : ||
||. 回 . |_回o | | : ||
||. | |  ̄ |. : ||
||. | | .__ \ : .||
||. | ○._ __|⊂⊃|___|. : .||
||. |___回○__.回_ _|‥‥‥: .||
||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o‥| | | ||
||. / | | | ||
||. / o回/ ||
口==================口
主人公 彼方
手持ち バイウールー♂ Lv.79 特性:ぼうだん 性格:のんてんき 個性:ひるねをよくする
ネッコアラ♂ Lv.77 特性:ぜったいねむり 性格:ゆうかん 個性:ひるねをよくする
ムシャーナ♀ Lv.78 特性:テレパシー 性格:おだやか 個性:ひるねをよくする
パールル♀ Lv.76 特性:シェルアーマー 性格:おとなしい 個性:ひるねをよくする
カビゴン♀ Lv.80 特性:あついしぼう 性格:わんぱく 個性:ひるねをよくする
コスモウム Lv.75 特性:がんじょう 性格:なまいき 個性:ひるねをよくする
バッジ 0個 図鑑 未所持
主人公 エマ
手持ち ゴーゴート♂ Lv.40 特性:くさのけがわ 性格:むじゃき 個性:ねばりづよい
パルスワン♂ Lv.43 特性:がんじょうあご 性格:ゆうかん 個性:かけっこがすき
ガルーラ♀ Lv.44 特性:きもったま 性格:おっとり 個性:のんびりするのがすき
ミルタンク♀ Lv.41 特性:そうしょく 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
ママンボウ♀ Lv.40 特性:いやしのこころ 性格:ひかえめ 個性:とてもきちょうめん
エルフーン♀ Lv.40 特性:いたずらごころ 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
バッジ 1個 図鑑 未所持
彼方と エマは
レポートに しっかり かきのこした!
...To be continued.
445 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:11:45.72 ID:8UVAxvmj0
■Intermission🍊
千歌「──バクフーン!! “ひのこ”!!」
「バク、フーーーンッ!!!!」
「フェロッ…!!!?」
鋭く飛ぶ“ひのこ”が高速で飛びまわるフェローチェを撃ち落とす。
クリーンヒットした“ひのこ”がフェローチェを撃墜するが、
「ガドーンッ!!!」
すでに私の背後では、ズガドーンが頭を外して投げるモーションに入っている。
千歌「フローゼル!! “ハイドロポンプ”!!」
「ゼーーールゥゥゥ!!!!!」
「ガドーーンッ…!!!?」
投げようとしていた頭ごと激流でぶっ飛ばし──直後、ドォォンッ!! と音を立てながら、ズガドーンが爆発する。
千歌「くっ……!」
強引に距離を取ったから、爆発のダメージこそなかったものの、爆風が吹き付けてくる。
そして、爆風に一瞬動きを止めた私に向かって、
「────」
カミツルギが斬撃を伴って、上から飛び掛かってくる。
その斬撃を、
「ウォッフッ!!!」
飛び出したしいたけが“ファーコート”と“コットンガード”で強引に受け止め、剣を受け止められ一瞬止まったカミツルギを、
「ワォーーーーンッ!!!!」
ルガルガンが“ドリルライナー”で突っ込んで仕留める。
千歌「今なら、空に抜けられる……! 逃げるよ!!」
「ピィィィィィ!!!!」
私はムクホーク以外をボールに戻して、その場を離脱した。
🍊 🍊 🍊
千歌「……はぁ……はぁ……。……さ、さすがに……このままじゃ……ヤバイ……」
息を切らしながら、飛び込んだ断崖にある横穴から外を覗く。
そこには──
446 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:12:24.55 ID:8UVAxvmj0
「ブーーン」「フェロ…」「────」「──ジェルルップ…」
マッシブーン、フェローチェ、カミツルギ、ウツロイド……いや、それだけじゃない。
ありとあらゆるウルトラビーストの姿が確認出来た。
大型のウルトラビーストであるテッカグヤやツンデツンデもいる。
……さすがにアクジキングは、見た瞬間全力で逃げたけど……。
千歌「……たぶん……歩夢ちゃんの影響……だよね……」
ここに来たときから、ちらほらウルトラビーストは見かけていたし……恐らくこの世界は今、果林さんたちがウルトラビーストを呼び込んでいる世界とウルトラビーストたちが住んでいる世界のちょうど狭間にあるんだと思う。
彼女たちが歩夢ちゃんの力でウルトラビーストたちの呼び寄せを開始した結果、中継地点のようになっているこの世界にウルトラビーストたちが溢れかえっているんだ……。
彼女たちが歩夢ちゃんを使ってまでウルトラビーストを呼び寄せているのは恐らく捕獲目的だろうし、出来ることなら撃退したいけど……。
手持ちの体力も限界な上に……数が数……撃退するどころか……。
千歌「逃げ切れるかな……あはは……」
さすがに、この絶体絶命の状況に乾いた笑いが漏れる。
千歌「ダメだダメだ……! 弱気になるな……!」
弱気を打ち消すように、頭を振る。
千歌「とにかく、一点でいいから、うまく包囲網を抜けられそうな穴を作れば……!」
そう思った瞬間──背後でドォンッと嫌な音がした。
千歌「……!?」
ギョッとして振り返ると──背後の壁にヒビが入っている。そして、またドォンッという音ともに、壁のヒビが大きくなっていく。
千歌「や、やば……!! ムクホーク、逃げるよ!!」
「ピィィッ!!!!」
ムクホークと一緒に横穴の外に逃げ出そうとした瞬間、
「──シブーーーンッ!!!!」
ショルダータックルで壁をぶっ壊しながら、マッシブーンが突っ込んできた。
──避けきれない……!
千歌「“フェザーダンス”っ!」
「ピィィィィッ!!!!」
咄嗟の判断で、大量の羽毛をまき散らし、マッシブーンの攻撃力を落とすが、
「ブーーーーンッ!!!!」
千歌「ぐっ……!!」
タックルに吹っ飛ばされて、断崖の横穴から追い出される。
外に飛び出た瞬間、
「ピィィィッ!!!!」
447 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:13:24.01 ID:8UVAxvmj0
ムクホークが私の肩を掴んで飛び立つ。
千歌「ムクホーク!! 高度上げてっ!!」
「ピィィィッ!!!」
状況確認もまだ出来ていないけど、確実にウルトラビーストたちのど真ん中に放り出された。
狙い撃ちにされる前に上空に逃げようとしたが、
「ピッ…!!!?」
ムクホークが急に掴んでいた私の肩を離す。
千歌「へっ!?」
急に浮遊感に包まれ、何事かと思った直後──ピシャーーーーンッ!!! という空気を劈く音が上から轟いてくる。
この音は──“かみなり”だ……!
落下しながら私の視界には──
「────ジジジ」
巨大なデンジュモクの姿が目に入る。
ムクホークは“かみなり”の予兆に気付き、私を巻き込まないために、咄嗟に掴んでいた私を離して巻き込まれないようにしてくれたんだ……!
──猛スピードで落下する私は、地面に向かってボールを放つ。
千歌「しいたけーーー!! “コットンガード”ぉーーー!!!」
「──ワッフッ!!!」
飛び出したしいたけが、体毛をもこもこと膨らませ、私はそこに向かって落下する。
──バフンという音と共に、しいたけの上に不時着したあと、
千歌「っ……!」
すぐに顔を上げ──
「ピィィィ……」
千歌「ムクホーク、戻って!!」
“かみなり”の直撃で黒焦げになって落ちてくるムクホークをボールに戻す。
ムクホークの機転のお陰で助かったけど──これで飛んで逃げることも出来なくなった。
そして、周りは──
「フェロ…」「ガドーーン」「──ジジジ」「シブーーン!!!!」
ウルトラビーストに取り囲まれていた。
千歌「バクフーン! ルガルガン! フローゼル!」
「バクフーーッ!!!」「ワォンッ!!!」「ゼルゥッ!!!」
千歌「諦めてたまるかぁぁぁ!!!」
「ワッフッ!!!」
私はポケモンたちと一緒に駆け出す。
448 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:13:59.73 ID:8UVAxvmj0
千歌「“ひのこ”!!」
「バクフーーーッ!!!!」
「フェロッ!!!?」
駆け出すと同時に、防御の薄いフェローチェを撃ち抜き、
千歌「“ストーンエッジ”!!」
「ワォンッ!!!!」
「──ジジジジ…」
ルガルガンが、範囲攻撃の得意なデンジュモクを優先して倒す。
「ガドーンッ」
他のウルトラビーストを攻撃している隙に、頭を投げようとしている、ズガドーンに向かって、
千歌「“アクアジェット”!!」
「ゼルゥゥゥゥッ!!!!!」
「ガドーンッ…!!!?」
フローゼルが“アクアジェット”で黙らせ、
千歌「走るよ……!!」
「バクフッ!!!」「ワォンッ!!!」「ゼルッ!!!!」
全員で包囲網を抜けるために走り出すが、
「ワッフッ!!!」
千歌「……!?」
背後でしいたけが鳴く。
後ろを確認する間もなく──
「シブーーーーンッ!!!!」
突っ込んできたマッシブーンのショルダータックルでしいたけが突き飛ばされ、それに巻き込まれるように私も吹っ飛ばされる。
千歌「……っ゛……ぐ……っ……!!」
吹っ飛ばされながらも、しいたけが私の身体を守るように抱き着いてきて──空中で姿勢を制御しながら、自分を下にして地面に落っこちる。
千歌「…………ぐ……」
痛みを堪えながら起き上がると──
「ワフ…」
しいたけが私の下で戦闘不能になっていた。
千歌「しいたけ……ごめんね、ありがとう……戻って……」
「ワッフ…──」
449 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:14:36.80 ID:8UVAxvmj0
しいたけをボールに戻す。
恐らくしいたけは私を庇って、死角からのマッシブーンの攻撃を受け止めようとしてくれたんだ。
しいたけが守ってくれなかったら、私の身体はマッシブーンのタックルによって、今頃バラバラになっていた……。
タックルだけでも大ダメージを受けていたはずなのに、落下の衝撃からも守ってくれたんだ……。
──でも、一難去ってまた一難。
「────」
千歌「テッカグヤ……!」
目の前で、テッカグヤがバーナーをこちらに向けていた。
「バクフーーーッ!!!!」
「────」
吹っ飛ばされた私に駆け寄りながら、バクフーンが“もえつきる”でテッカグヤを焼き払う。
「ゼルッ!!」「ワォンッ!!!」「バクフーーーッ!!!」
フローゼルが、ルガルガンが、バクフーンが、私を守るように周囲を固めるけど──
「ッシブーーンッ!!!」「──ジェルルップ…」「────」「フェロ…」
マッシブーンに、ウツロイド、カミツルギ、フェローチェ……いや、それだけじゃない。
さっきとは別固体のデンジュモクやズガドーン、テッカグヤがこっちに近付いてくるのが見えるし……戦う意思があるのかはともかく、ツンデツンデも遠方に確認出来る。
さらに──
「──ドカグィィィィィ!!!!」
アクジキングの鳴き声まで聞こえてくる。
手持ちは残り3匹……。みんな体力は限界ギリギリ。しかも、バクフーンは炎が燃え尽きてしまっている。
この戦力差は……もう……無理だ……。
千歌「……はぁ……はぁ……」
私は息が切れて、膝をついてしまう。
そこに向かって──
「シブーーーンッ!!!!」「フェロッ!!!」「──ジェルルップ…」
ウルトラビーストたちが一斉に飛び掛かってくる。
千歌「くっそぉぉぉぉぉ……!!」
諦めかけた──次の瞬間、
「──“ハードプラント”!!!」
「──ガニュゥムッ!!!!!」
響く声と共に──
「マッシブッ!!!?」「フェロッ…!!!?」「──ジェルルップ…」
450 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:15:14.32 ID:8UVAxvmj0
急に地面から生えてきた大樹が、ウルトラビーストたちを巻き込みながら、一気に成長していく。
大樹は私たちを守るよう壁のように、周囲を取り囲んでいく。
千歌「……この、技……!」
この技を使える人を……私は一人しか知らない。
上を見上げると──
梨子「──千歌ちゃぁぁぁぁんっ!!」
千歌「梨子ちゃんっ!!」
ピジョットに乗った梨子ちゃんが、上空から一直線に舞い降りてくるところだった。
それと同時に──
「ガニュゥムッ!!!!」
メガニウムが私の近くに着地する。
千歌「メガニウム……! ありがとう……!」
「ガニュゥムッ♪」
メガニウムの“ハードプラント”によって、救われた。
梨子「千歌ちゃん、無事……!?」
千歌「お陰様で間一髪……!」
プラントたちの防壁の中に降り立った梨子ちゃんが駆け寄ってくる。
が、
「ガドーンッ!!!」
ズガドーンの鳴き声と共に──樹木の壁のすぐ外で爆発音が響く。
梨子「きゃ……っ!?」
千歌「……っ……!」
──“ビックリヘッド”が炸裂した。
強烈な爆発と爆炎によって、樹木の壁が一瞬で焼け崩れる。
「──はーーい!! 消火しちゃうよーー!! “ハイドロポンプ”!!」
「──ガメェェェェッ!!!!!!」
千歌「……!」
けど、炎はすぐに上から降ってきた大量の水によって消火される。
上を見上げると──カメックスが首と手足を引っ込めたまま、ランチャーだけを外に出し、水流の逆噴射で空を飛びながら、大量の水で消火を行っていた。
千歌「曜ちゃぁーーーん……っ!!」
曜「助けに来たよ!! 千歌ちゃん!!」
そして、曜ちゃんがヨルノズクから飛び降りて、私に駆け寄り抱き着いてくる。
451 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:16:54.72 ID:8UVAxvmj0
曜「絶対……無事だって、信じてた……!」
千歌「うん……っ……! 絶対、助けに来てくれるって……信じてた……っ……」
梨子「ふふっ」
再会を喜ぶ私たちに、
「マッシブ!!!」「フェロッ!!!」
飛び掛かってくる、マッシブーンとフェローチェの姿。
でも、その攻撃は──
ルビィ「──コラン!! “リフレクター”!!」
「ピピィッ!!!!」
「シブッ…!!?」「フェロッ…!!?」
降りてきたルビィちゃんとコランによって、弾き返される。
そして、弾かれた2匹に向かって──
花丸「──カビゴン!! “のしかかり”!!」
「ゴンッ!!!!」
「シブッ…!!!」「フェロ…ッ」
降ってきた花丸ちゃんのカビゴンが“のしかかり”でまとめて押しつぶす。
千歌「ルビィちゃん……! 花丸ちゃん……!」
ルビィ「助けに来たよ!! 千歌ちゃん!!」
花丸「どうにか、間に合ったみたいだね……」
ただ、ウルトラビーストたちの猛攻は止まらない。
コランが展開してくれた、“リフレクター”を、
「────」
カミツルギが斬撃で破壊する。
ルビィ「ぴぎっ!?」
花丸「か、“かわらわり”……!?」
「────」
カミツルギが二の太刀を振り下ろそうとした瞬間──
善子「──……遅い」
「…ソル」
いつの間にか降り立っていた善子ちゃんとアブソルが、カミツルギよりも速い斬撃で斬り裂いていた。
「────」
カミツルギが崩れ落ちる。
452 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:18:29.54 ID:8UVAxvmj0
善子「本気の千歌の方が、100倍速いわ……」
千歌「善子ちゃん……っ!!」
善子「ヨハネだって言ってんでしょ」
千歌「えへへ……うんっ! ヨハネちゃん!」
善子「素直でよろしい」
みんなが──みんなが助けに来てくれた……!!
花丸「それにしても……すごい数ずらね〜……」
ルビィ「うん……何匹くらいいるのかな……?」
梨子「……まあ、数えきれないくらいいることはわかるかな」
善子「でも、私たち全員揃ってたら……これくらい訳ないでしょ?」
曜「当然!! みんな、千歌ちゃんを守るよ!!」
梨子「ピジョット!!」
曜「カメックス!!」
善子「アブソル!!」
花丸「デンリュウ!!」
ルビィ「バシャーモ!!」
梨子ちゃんの“メガブレスレット”が、曜ちゃんの“メガイカリ”が、善子ちゃんの“メガロザリオ”が、花丸ちゃんとルビィちゃんが首から提げているお揃いの“メガペンダント”が──同時に輝きだす。
梨子・曜・善子・花丸・ルビィ「「「「「メガシンカ!!!」」」」」
「ピジョットォ!!!」「ガメェーーーッ!!!!」「ソルッ!!!!」「リュゥ!!!!」「バシャーーーモッ!!!!」
5匹が同時に光に包まれ──メガシンカする。
曜「撃ち抜け……!! “ハイドロポンプ”!!」
「ガメガメガメガメェェェェェッ!!!!!」
「ズガッ!!!?」「ガドドッ!!!?」「ドーーンッ!!!?」
連続で発射される水砲が、周囲のズガドーンたちを的確に撃ち抜き、
善子「──“かまいたち”!!」
「ソルッ!!!」
「────」「──」「───」
極太の風の刃がまとめて、カミツルギたちを薙ぎ払う。
「──フェロッ!!!!」「ローーチェッ!!!」「フェローーーッ!!!!」
飛び掛かってくる、フェローチェたちは、
ルビィ「“ブレイズキック”!!」
「シャァーーーーモッ!!!!」
「フェロッ…!!!」「ローチェッ!!?」「フェロォ…!!?」
“かそく”するメガバシャーモが高速軌道で動き回りながら、炎の蹴撃で片っ端から叩き落していく。
「──」「────」
空からこっちに向かってくる、テッカグヤたちを、
453 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:21:05.21 ID:8UVAxvmj0
花丸「“かみなり”!!」
「リュウッ!!!」
「────」「──」
花丸ちゃんがメガデンリュウの“かみなり”で正確に撃ち落とす。
そして、
「──ジェルルップ…」「──ジェル…」「──ルップ…」
接近してくるウツロイドたちを、
梨子「ピジョット!! “ぼうふう”!!」
「ピジョットォォォォォ!!!!!」
梨子ちゃんとメガピジョットが“ぼうふう”で吹き飛ばした。
千歌「みんな……すごい……!!」
頼もしい仲間たちの戦いっぷりに目を潤ませていると、
「──ジジジジ」「──ジ、ジジジ」
デンジュモクたちが電撃を体に溜め始める。
千歌「……! い、いけない……! 電撃が……!」
花丸「任せるずら!! ドダイトス!! マンムー!!」
「ドダイッ!!!!」「ムオォォォォ!!!!」
花丸「“ぶちかまし”!! “10まんばりき”!!」
「ドダイトォスッ!!!!!」「ムォォォォォッ!!!!!!」
「──ジジ…ッ」「──ジジジ…ッ」
でんきタイプの効かない、じめんタイプのドダイトスとマンムーが体に電撃を纏ったデンジュモクたちを、強力なじめん技で無理やりぶっ飛ばす。
「マッシブーンッ!!!!」
突然、飛び掛かってくるマッシブーン。
曜「カイリキー!!」
「──リキッ!!!」
「シブッ!!!?」
それを曜ちゃんのカイリキーが4本の腕で組み伏せる。
5人が力を合わせて、迎撃をする中、
「────ツンデ」
先ほどまで遠方にいたツンデツンデが、戦闘に刺激されたのか、こっちに向かって“ジャイロボール”で猛スピードで転がってくる。
曜「うわ、なんかでかいのきたよ!?」
梨子「任せて……! 行くよ──ダイオウドウ!!」
「──パオォォォォォォ!!!!!」
梨子ちゃんの繰り出したダイオウドウが真正面から、ツンデツンデに体をぶつけて、押し止める。
──押し止めたツンデツンデを、
454 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:21:45.09 ID:8UVAxvmj0
善子「でかした、リリー!! ゲッコウガ!!」
「ゲコガァッ!!!!」
善子ちゃんのゲッコウガが──石垣の継ぎ目に沿って大きな水の手裏剣で斬り裂くと、
「…ツンデ」
ツンデツンデがバラバラになって崩れ落ちる。
梨子「善子ちゃん!! リリー禁止って言ったでしょ!?」
善子「善子言うな!?」
気付けば──周囲のウルトラビーストはほとんど倒しきっていた。
千歌「みんな……すごすぎだよ……!」
あと残るは──
「──ドカグィィィィィ!!!!!」
さっき鳴き声だけ聞こえていたアクジキングが岩山を喰らいながら、こっちに向かって走ってくる。
曜「や、山食べてるよ!?」
ルビィ「ぅゅ……あ、アクジキングさん……」
花丸「山って、おいしいのかな……?」
梨子「そこ……?」
善子「……なかなかやばそうなのが来たわね」
見るからにヤバイウルトラビーストなのに、みんなは割と能天気な反応をしている。
善子「あ、そうそう……千歌」
千歌「ん?」
善子「忘れ物よ。ロッジで寂しく待ってたから、連れてきた」
そう言って、ボールを投げ渡してくる。
千歌「……!」
善子「最後の見せ場、あげるから……やっちゃいなさい」
千歌「……うん!!」
私は善子ちゃんから受け取ったボールを放る。
千歌「行くよ!! ルカリオ!!」
「──グゥォッ!!!!」
千歌「メガシンカ!!」
ボールから飛び出したルカリオが、私の“メガバレッタ”の輝きの呼応して──メガルカリオへと姿を変える。
「──グゥォッ!!!!」
千歌「ルカリオ……私の波導……感じるよね」
「グゥォッ!!!」
455 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:22:29.99 ID:8UVAxvmj0
もう疲れ切っているはずなのに……。
頼もしい仲間たちが助けに来てくれた。
その嬉しさと喜びで、すごくすごく、気持ちが高揚していた。
「ドカグィィィィィッ!!!」
──本来、アクジキングは見たら即逃走してもいいくらい危険な相手だけど……。
千歌「今は……負ける気がしない」
「グゥォッ!!!!!」
ルカリオの波導が一気に膨れ上がる。
そして、両手に波導のエネルギーを集束し始める。
千歌「波導の力……見せつけるよ!!」
「グゥォッ!!!!」
ルカリオが──両手を前に構えると同時に、波導のエネルギーが膨れ上がる。
千歌「“はどうのあらし”!!!」
「グゥォォォォォ!!!!!!!」
両手の先から極太の波導のレーザーが発射され──アクジキングに向かって飛んでいく。
「ドカグィィィィィッ!!!!」
アクジキングは大口を開けて、飛んできた“はどうのあらし”を飲み込んでいく。
が、
「ドカ、グィィィィ…!!!?」
波導エネルギーを飲み込んでいたはずのアクジキングの口の中で──青いエネルギーが膨張し始める。
千歌「いっけぇぇぇ……!! 波導、最大っ!!!」
「グゥォォォォォォォ!!!!!!」
私の気合いの掛け声に呼応するように──“はどうのあらし”はさらに一段階太くなり、膨張したエネルギーは、
「ドカグィィィィィィ!!!!!!!?!!?」
アクジキングを中心に──大爆発を起こした。
その爆発の勢いがあまりに強すぎて、
千歌「ど、どわぁぁぁ!!?」
まだ結構距離があるはずなのに、爆風で立っていられずに尻餅をつく。
梨子「きゃぁぁぁ!!?」
ルビィ「ピギィィィィィッ!!!?」
曜「み、みんな伏せてっ!!」
善子「少しは手加減しなさいよ、アホー!!?」
千歌「ご、ごめーーーん!?」
花丸「このデタラメな感じ、やっぱ千歌ちゃんずら〜」
456 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:23:13.97 ID:8UVAxvmj0
しばらくの間、吹き荒ぶ爆風に耐えたあと……顔を上げると──
「……ドカ、グィィィィ……」
アクジキングはひっくり返って動かなくなったのだった。
🍊 🍊 🍊
曜「はい、千歌ちゃん♪ オレンサンド♪」
千歌「いただきまーす!! はむ、はむ、はむっ!! もぐもぐ……んぐっ!?」
梨子「ああもう……そんなに焦って食べるから……はい、お水」
千歌「ごくごくごく……!! ぷはっ……はぁ……はぁ……死ぬかと思った……」
曜「たくさんあるから、ゆっくり食べて」
千歌「うん……ありがとう」
せっかく絶体絶命のピンチを乗り越えたのに、危うく世界一情けない理由で死ぬところだった……。
花丸「みんな〜“げんきのかたまり”と“かいふくのくすり”ずらよ〜」
「バクフー」「ワォンッ」「ゼルゥ」「ピピィ」「ワッフ」
ルビィ「ポケモンさんたちのご飯もたくさんあるからね!」
「ワフ、ワフワフッ!!」
ルビィ「わわ!? し、しいたけ……落ち着いて……」
千歌「あはは、しいたけ食いしん坊なのに、ずっと我慢してたもんね〜」
やっと思う存分食事が出来て、しいたけも嬉しそうだ。
善子「それにしても……ここ、岩と砂しかないんじゃない? よくこんな場所で2週間以上生きてられたわね……」
千歌「ホント死ぬかと思ったよ……」
ほぼ砂漠の中に岩山が生えてるみたいな世界だったしね……。野生のポケモンが持っている“きのみ”がなかったら死んでたと思う。
善子「千歌の生命力には感心するわ」
千歌「それ褒めてる……?」
善子「ま、6割くらいは」
千歌「全面的に褒めてよ〜……」
──2週間振りに思う存分ご飯を食べ、ポケモンたちも回復してもらって……。
千歌「よっしゃぁ! 完全復活!!」
身体に力がみなぎってくる。やっぱりご飯は大事だね、うんうん。
457 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 01:23:55.19 ID:8UVAxvmj0
梨子「それにしても……善子ちゃんがタマムシまで迎えに来たときはびっくりしたよ……」
善子「作品作ってる間、連絡確認しなくなる癖、直しなさいって何度も言ってるじゃない」
梨子「はい、反省してます……」
花丸「まあまあ、梨子ちゃんも忙しいんだよ」
善子「ちょっと……その言い方だと私が暇みたいじゃない!!」
ルビィ「もう、二人ともこんなところまで来てケンカしてないでよ〜!」
千歌「あはは、いつものみんなだ♪」
最近6人で集まれる機会なんて中々なかったから、こうしてみんなの会話を聞いていると、懐かしくなってしまう。
そんな中、
曜「千歌ちゃん」
千歌「ん?」
曜「海未さんから、渡すようにって言われて持ってきたよ」
曜ちゃんが私に、ある物を差し出してくる。
千歌「……!」
曜「あと、伝言もあって……」
千歌「……いや、そっちはいいや」
曜「え?」
千歌「……聞かなくても、わかるから」
どうしてこんなものを曜ちゃんに預けたのか……それを考えればわかる。
きっと、海未師匠は……こう言っていたはずだ。
──『役目を果たしなさい』──……と。
千歌「……行かなきゃ」
私は……もうひと踏ん張りするために、この世界を後にする──
………………
…………
……
🍊
458 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:11:42.96 ID:8UVAxvmj0
■Chapter064 『かすみとしずく』 【SIDE Kasumi】
──────
────
──
かすみ「はー……はー……」
果南「結局完走に2日掛かったね。……まあ、途中で睡眠も取ってるし……初回としては上出来かな」
かすみ「そ、そりゃどーもです……」
果南「それじゃ、今日は宿で休みな。明日は早朝に出るから」
かすみ「わかりました……」
果南「お、素直だね。てっきり、もう行きませんとか言うと思ったのに」
かすみ「だって……かすみんにとって……この修行は必要なんですよね……?」
果南「そうだね」
かすみ「なら、やってやりますよ……」
果南「そっかそっか♪ やっぱり、私が見込んだだけのことはあるよ♪」
そう言いながら果南先輩は、かすみんの頭を撫でます。
かすみ「やーめーてー……髪崩れちゃいますぅ〜……」
果南「あはは♪ あれだけ、ひぃひぃ言いながら走ってたのに、髪型に気を遣うのすごいね」
かすみ「髪のセットは乙女の命なんですぅ!!」
ぷりぷり怒りながら、果南先輩の手を振り払う。
果南「あはは♪ かすみちゃんって、ちょうどいいサイズ感だから撫でたくなるんだよね」
かすみ「むー……確かにかすみんは超絶可愛いから、ナデナデしたくなるのはわかりますけどぉ……」
それにしても果南先輩って、飄々としていて何考えているのか、よくわかんないんですよねぇ……。
彼方先輩よりも謎かもしれません……。
かすみ「あのー……果南先輩」
果南「ん?」
かすみ「どうして、かすみんの面倒見てくれるんですか……? かすみんが可愛いから?」
果南「あはは♪ 確かにかすみちゃんは可愛いけど、それが一番の理由ではないよ」
かすみ「じゃあ、どうして?」
かすみんにはずっと疑問でした。どうして果南先輩みたいな人が、わざわざかすみんに稽古を付けてくれるのか……。
いや、あの、正直内容が死ぬほどキツイのはどうにかして欲しいんですけど……。
果南「そうだなぁ……強いて言うなら──かすみちゃんの中に可能性を見たから……かな」
かすみ「可能性……? いや、確かにかすみん可能性の塊だと自負してますけどぉ……」
果南「あはは♪ そういうとこそういうとこ♪」
かすみ「……?」
果南「ポケモンバトルで……いや、人が生きていく上で一番大切なことってなんだと思う?」
かすみ「え?」
459 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:12:39.96 ID:8UVAxvmj0
急に難しいこと言いだしますね、この人……。
かすみ「うーん……。……みんなから愛される可愛い女の子になること?」
果南「あははっ、確かにそりゃ大事かもね! ポケモンバトルで役に立つかはわからないけど」
かすみ「じゃあ、なんなんですか……」
果南「諦めないことだよ」
かすみ「諦めないこと……?」
果南「生きてるとさ……どんな人でも苦しくて、足が止まりそうになることがたくさんあるんだ。戦うのが苦しくなったり、前に進めなくて辛くなったり、目標を見失って未来に希望が持てなくなったり……」
かすみ「果南先輩もですか?」
果南「うん、そうだよ」
かすみ「……お気楽能天気そうなのに……?」
果南「お? そんな生意気なこと言うのはこの口かな〜?」
果南先輩が、かすみんのほっぺを摘まんで引っ張ってくる。
かすみ「い、いひゃい〜……かしゅみんのかわいいほっへがのびちゃいまふぅ〜……」
果南「ホントにほっぺぷにぷにだね。ずっと引っ張ってたいかも」
かすみ「ひゃめて〜……」
果南「はいはい。じゃ、もう生意気なこと言っちゃダメだよ」
果南先輩はやっとほっぺを摘まんでいた手を放してくれる。
果南「……みんなだよ。みんな、前に進めなくなるときがあるんだ。侑ちゃんも、せつ菜ちゃんも……きっと私の見てないところで、歩夢ちゃんも、しずくちゃんもたくさん挫折して悩んでたんじゃないかなって思うんだ」
果南先輩はそう言って……目を細める。
果南「だけど、かすみちゃんだけは違った。……どんなに苦しいことがあっても、挫けそうなことがあっても、辛いことがあっても、かすみちゃんだけはずっと前を向くことをやめなかった。それはかすみちゃんが思っているよりも、ずっとずっと、すごいことなんだよ」
かすみ「そういうもんなんですか……?」
果南「そういうもんだよ。そしてそれは誰にも負けない武器になる」
かすみ「誰にもって……千歌先輩とか、せつ菜先輩にも?」
果南「うん……かすみちゃんはいつか、千歌やせつ菜ちゃんにも負けないくらい強くなるって私は思ってる」
かすみ「……。……な、なんですか……めちゃくちゃ持ち上げるじゃないですか……///」
果南「私は本来弟子なんて作るタイプじゃないんだけどね。……でも、かすみちゃんを見てたら……かすみちゃんにだけはいろいろ教えてみたくなった」
果南先輩が珍しく真剣な顔で言うから……かすみんなんだか恥ずかしくなっちゃって目を逸らしちゃいます。
かすみ「……そ、そういうことなら……かすみん……しばらく、果南先輩に教わってあげてもいいですよ……?」
果南「ふふ♪ じゃあ、教わってくれるかな♪」
かすみ「は、はい……その代わり……かすみんのこと、強くしてください!」
果南「うん、私に教わるんだから、強くなってくれないと困るよ♪」
──
────
──────
460 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:16:28.08 ID:8UVAxvmj0
かすみ「ジュカイン!! “ソーラーブレード”!!」
「カインッ!!!」
しずく「サーナイト、“サイコキネシス”♡」
「サナッ」
ジュカインが陽光の刃を振るうのに対して、メガサーナイトはサイコパワーで自身の目の前に黒い球体を作り出す。
すると、“ソーラーブレード”はその球を中心に軌道を捻じ曲げられ──しず子を避けるように飛んで行ってしまう。
かすみ「“リーフストーム”!!」
「カインッ!!!」
今度は背を向け、しっぽミサイルに纏わせて“リーフストーム”を放つけど、
しずく「ふふ♡ 当たらないよ♡」
それも、黒い球に逸らされて、明後日の方向へ飛んで行ってしまう。
かすみ「……ブラックホール」
しずく「あはは♡ さすがに勉強してきたんだね、偉いよかすみさん♡」
事前に確認してきたサーナイトの図鑑によると……こう書かれていた。
『サーナイト ほうようポケモン 高さ:1.6m 重さ:48.4kg
未来を 予知する 能力で トレーナーの 危険を 察知し 空間を
ねじ曲げることで 小さな ブラックホールを 作り出す 力を 持つ。
胸の 赤いプレートは 心を 実体化したもの と言われている。』
しずく「そう、サーナイトはサイコパワーで小さなブラックホールを作り出せる。これがあれば遠距離攻撃は全部逸らすか吸い込むことが出来ちゃうんだよ♡」
「サナ」
しずく「それにサーナイトがメガシンカのパワーで出来るようになったのは防御だけじゃないよ……♡ “ハイパーボイス”!」
「サーーーナーーーッ!!」
──サーナイトから強烈な音波攻撃が発せられ、かすみんたちに襲い掛かってくる。
「カインッ…!!」
かすみ「ぐ、ぅぅぅぅぅっ!!」
咄嗟に耳を塞いで鼓膜を守るけど──強力な音波は、耳だけでなく、物理的な衝撃となって、かすみんたちを吹き飛ばす。
衝撃で身体が浮くかすみんを、
「カインッ…!!」
ジュカインが、尻尾を伸ばして、吹き飛んでいかないように助けてくれる。
かすみ「あ、ありがと……! ジュカインは平気?」
「カインッ!!!」
しずく「ふふ♡ かすみさんのジュカインもメガシンカしてすっごくたくましくなったね♡ でも、メガシンカでドラゴンタイプが増えたせいで……“フェアリースキン”のメガサーナイトとは相性が悪くなっちゃったね♡」
しず子がくすくすと笑いながら言う。
かすみ「……相性なんて、パワーでくつがえしてあげる」
しずく「へー♡ 楽しみ♡」
461 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:17:19.58 ID:8UVAxvmj0
そう言いながら、しず子がすっと手を上げる。
攻撃の予兆を感じ、ジュカインも刃を構える。
──しず子が“サーナイトナイト”を持っていたのは最初から知っていたし、果南先輩と一緒にサーナイト対策はしっかりしてきた。
もちろん厄介な音波攻撃への対策も……!
しずく「サーナイト」
「サーーーーー──」
空気を吸うサーナイト、そしてそれを見て、
「カインッ…!!!」
刃を構えるジュカイン。
──果南先輩曰く……音波攻撃を攻略するには……。
果南『音より速く攻撃すればいいだけだよ』
とのこと……。
お陰で──……めちゃくちゃ可愛くない技を習得させられました……。
「カインッ!!!!」
自らを“ふるいたてる”ことによって、ジュカインの腕の筋肉が隆起する。
強化した筋力で振り下ろす──神速の斬撃……!!
しずく「“ハイパーボイス”!!」
「──ナーーーーーーーッ!!!!!!」
かすみ「“かまいたち”!!」
「カァインッ!!!!!!!」
飛んできた音波を──音速の刃が斬り裂いた。
しずく「……! へぇ……♡」
音を斬り裂いたのと同時に、
かすみ「行くよっ!!」
「カインッ!!!」
ジュカインが地を蹴って飛び出す。
俊足のジュカインは一瞬でメガサーナイトに肉薄し──
「カインッ!!!」
“リーフブレード”を逆袈裟斬りの要領で振り上げる。
かすみ「いっけぇぇぇ!!」
攻撃が決まった──そう思った瞬間。
しずく「ふふ♡」
しず子がサーナイトの前に飛び出してきた。
462 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:18:13.40 ID:8UVAxvmj0
かすみ「!? ジュカインッ!?」
「カ、カインッ!!!?」
ジュカインの刃が──しず子の脇腹を斬り裂く寸前で止まる。
しずく「“マジカルシャイン”♡」
「サナ!!!」
「カインッ…!!!?」
ジュカインは目の前で強烈な閃光を食らって仰け反り、
しずく「頭ががら空きですよ……♡ “サイコショック”!」
「サナッ!!!」
サーナイトが目の前に作り出した──ちょうどジュカインの頭くらいのサイコパワーのキューブが、ジュカインの頭にぶつけられる。
「カイン…ッ!!!!」
かすみ「ジュカインッ!!」
ジュカインの体がグラリと揺れたけど、
「カイ、ンッ!!!!」
ジュカインはドンと震脚しながら踏ん張る。
しずく「あはは♡ 今のも耐えるんだね♡」
かすみ「っ……!! “アイアンテール”!!」
「カインッ!!!」
ジュカインが身を捻って、尻尾を振るうけど、
しずく「はい、ダメです♡」
また、しず子が前に出てきて、
かすみ「っ……!! ジュカイン、ストップッ!!」
「カ、カインッ…!!!」
しずく「“サイコキネシス”♡」
「サナッ!!!」
「カインッ…!!!」
サイコパワーでジュカインが、かすみんの方に吹っ飛んできて──
かすみ「ぐ……!?」
巻き込まれるようにして、ジュカイン共々地面を転がる。
かすみ「……っ゛……!!」
しずく「あはは♡ 咄嗟に“グラスフィールド”を展開して衝撃を殺したんだね♡ すごいすごーい♡」
かすみ「……ジュカイン……! 立てる……!?」
「カインッ…!!!」
ジュカインは声を掛けると、すぐに立ち上がる。“グラスフィールド”を展開してくれたお陰で、大きな怪我にこそならなかったけど……。
463 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:20:34.32 ID:8UVAxvmj0
しずく「ふふ……♡ かすみさんは、私のこと攻撃出来ないって──信じてたよ♡」
かすみ「しず、子ぉ……!!」
しずく「かすみさんは私には絶対勝てないよ♡ だって、私が私である以上、かすみさんは私を傷つけられないもの♡ あはは♡ 今の私……すっごく悪役っぽいね♡」
かすみ「……ぐ……!!」
思わず拳を握りこんでしまう。
……まさか、ここまでしてくるなんて思ってなかった。
怒りで腸が煮えくり返りそうですけど……むしろ、そのお陰で完全に腹が決まった。
かすみ「何がなんでも正気に戻してやるから……っ!!」
👠 👠 👠
せつ菜「……っ!!」
しずくちゃんが逆にポケモンの盾になったのを見て、せつ菜が今にも飛び出しそうになったけど……かすみちゃんのメガジュカインが攻撃を寸止めしたのを見て、その場に踏みとどまる。
せつ菜「…………」
果林「……しずくちゃんが自分の命に頓着しないと言ったのは貴方よ?」
せつ菜「わかってます……」
せつ菜はいつでも助けに入れるように身構え始める。
とはいえ……私もしずくちゃんがあそこまでするのは予想外だった。
お陰でせつ菜の視線は完全にしずくちゃんに釘付けになってしまっている。
……しずくちゃんは恐らくあの行動がもっとも私のためになると考えているのかもしれないけど……いや……案外、せつ菜の気を引きたいだけの可能性もあるのかしら……?
せつ菜としずくちゃんはウルトラディープシーにて、数日間寝食を共にしていたし……浅からぬ絆が芽生えていても……。
そこまで考えて、私は頭を振る。
いや……だとしても、フェローチェの魅了以上の動機で動くことはありえない。
どうにも、フェローチェというポケモンが持っている毒は、感性の強い人間相手だと影響が強すぎる。
調節が効かないものだから仕方ないけど……。
……まあ、せつ菜の注意が向こうの戦闘に寄っているのは別に構わない。
だって、
「キーーーッ!!!!」
侑「ぐぅっ……!?」
「ウォーーーグッ……!!!!」
空中で必死に攻撃を避けていたウォーグルを、今しがたファイアローが上から攻撃を加えて叩き落としたからだ。
「コーーーンッ!!!!」
侑「“ハイドロポンプ”ッ!!」
「フィーーーオォーーーーッ!!!!」
464 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:23:13.38 ID:8UVAxvmj0
落下しながらもキュウコンの炎はフィオネの激流が相殺する。
咄嗟の防御は一人前だけど……いつまでもつかしらね。
👑 👑 👑
かすみ「避ける気がないなら、動きを封じればいい……!! ダストダス!!」
「──ダストダァ!!!」
ダストダスをボールから出し、
かすみ「“どくガス”!!」
「ダァァァス!!!!」
両手からしず子に向かって“どくガス”を噴出する。
しずく「“ミストフィールド”♡」
「サナ」
かすみ「ぐ……」
しずく「“どくガス”……“ミストフィールド”で掻き消えちゃったね♡」
かすみ「なら、直接捕まえるだけ……!! ダストダス!!」
「ダストダァァス!!!!!」
直接しず子を捕まえようと、ダストダスが腕を伸ばす。
しずく「“サイコキネシス”♡」
「サナ」
片腕をサイコパワーで止められるけど──まだ、もう片腕が逆側から、しず子に向かって迫っている。
行ける……! そう思った瞬間、
「ベァァァァ…!!!」
かすみ「……!」
しずく「私にも手持ちは複数いるんだよ?」
そう言いながら、もう片方の手は──しず子が繰り出したツンベアーがガッチリと掴んでいた。
ツンベアーは冷気で掴んだダストダスの腕を凍らせながら、
「ベァァァッ!!!!」
手前に思いっきり引っ張る。
「ダストダァッ…!!!?」
そのパワーにダストダスが引っ張られ体勢を崩して、転ばされる。
かすみ「ダストダス!?」
しずく「パワーはこっちに分があるみたいだね♡」
「ベァァァ…」
465 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:24:05.64 ID:8UVAxvmj0
そして、そのままダストダスの腕を凍らせ、地面に縫い付けるようにして動けなくする。
が──氷漬けにされながらも、ジュウジュウと音を立てながら、ダストダスの腕の氷が溶けはじめる。
しずく「……! ツンベアー下がって!」
「ベァァァッ」
異変を察知して、ツンベアーがダストダスの腕から離れると同時に──ダストダスの腕の氷が完全に溶け自由になり、
かすみ「“ロックブラスト”!!」
「ダストダァッ!!!」
ダストダスが、手の平の先をツンベアーに向け岩を発射しようとした瞬間、
しずく「……ふふ♡」
しず子がその間に割って入ってくる。
「ダ、ダストダァ…」
ダストダスは困った表情になり、攻撃を止めてしまう。
かすみ「……腕、戻して」
「ダストダ…」
ダストダスが私の指示に従って、伸ばした腕を戻す。
しずく「あれ? もう終わり? なんだ、つまんないなー♡」
かすみ「ねぇ、しず子」
しずく「ん?」
かすみ「これが……本当にしず子の望んだことなの……?」
しずく「そうだよ?」
かすみ「自分を盾にして……そんな無茶苦茶な戦い方してでも……しず子がそこまでして戦う理由は何……?」
しずく「果林さんにフェローチェを魅せてもらうためだよ♡」
私はギュッと拳を握る。
かすみ「……しず子……いっつも、かすみんが危ないことしたら叱ってくれたじゃん……。……なのに、なんでそのしず子がこんな戦い方するの……」
しずく「なんでって……当たり前でしょ? ──あんなに美しいポケモンを魅せてもらえるんだよ?♡」
かすみ「…………っ」
──そのとき、わかってしまった。
もう……私の知っているしず子は……いないんだ。
誰よりも真面目で、誰よりも優しくて、誰よりも努力家で、いっつもお小言を言いながら……それでも私の傍にいてくれたしず子は……もう、いないんだ……って。
はる子が言っていた……毒が回りすぎると……もう治療出来ないって……。つまり、しず子は……もう……私が助けたところで……。
それがわかった途端──
かすみ「……ぅ……ひっく……っ……」
涙が出てきた。
466 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:25:12.38 ID:8UVAxvmj0
しずく「泣かないでかすみさん。かすみさんは何も悪くないよ♡ ……これが本当の私だっただけ♡」
かすみ「…………」
しずく「だから、かすみさんが泣かなくていいんだよ♡」
かすみ「…………」
しずく「黙らないでよ〜……。……うーん……あ、そうだ! そんなに悲しいなら、かすみさんも一緒にフェローチェの虜になろう♡ 幸せな気持ちになれるよ♡」
かすみ「…………」
しずく「戦いをやめてくれれば、かすみさんのこと果林さんに紹介してあげる♡ だから──」
かすみ「ああああああああああああああああああああっ!!!!! うるっさいっ!!!!!!! バカしず子っ!!!!!!!」
しずく「……!?」
私の大きな声に驚いたのか、しず子は一瞬ビクリと身を竦める。
しずく「な、なに……突然……!?」
かすみ「……決めた……」
しずく「……何を?」
かすみ「……最初は正気に戻すつもりだったけど……もうやめです。……とっつかまえて、ふんじばって、気絶させて……引き摺ってでも連れて帰る……」
もうきっと……連れて帰っても、しず子は元には戻ってくれない……。でも……。
かすみ「……引き摺って、連れ帰って、療養施設に叩きこんで……一生ウルトラビースト症の治療を受けさせてやるっ!!」
しずく「…………」
かすみ「それで……!!! それで……っ」
しずく「それで……?」
かすみ「かすみんが……病気のしず子のこと……一生面倒見てやりますよ……!!」
しずく「……!?///」
かすみ「ジュカイン!!」
「カインッ!!!」
私はジュカインに飛び乗り──同時にジュカインが地を蹴って飛び出した。
しずく「つ、ツンベアー!!」
「ベァァァァ!!!!」
進路を塞ぐように、ツンベアーが飛び出してくるけど──
「ダストダァァァッ!!!!」
「ベァァッ!!!?」
ダストダスが両手を伸ばし──ツンベアーを地面に押さえ付ける。
その隙に、ジュカインはツンベアーを飛び越え、しず子に迫る。
しずく「正面突破……!? サーナイト!! “サイコショック”!!」
「サナッ!!!」
サーナイトが正面に特大のサイコパワーのキューブを作り出すけど──ジュカインは腕の刃に光を集束していた。
もちろん“ソーラーブレード”だけど……これはただの“ソーラーブレード”じゃない。
果南先輩と考えた──次の段階に進化した、最強の“ソーラーブレード”だ……!!
本来大きく伸びるはずの光の刃は──ジュカインの腕の刃の形に沿うようにして、集束していく。
大きく伸びると範囲がある分、威力が分散する……なら……!!
467 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:26:28.44 ID:8UVAxvmj0
かすみ「全部の太陽エネルギーを……!! 一本の小太刀に……!!」
「カイィィンッ!!!!!」
光り輝く、腕の小太刀を縦に振り下ろすと──特大のサイコキューブは、真っ二つに斬り裂かれた。
しずく「っ……!? “サイコキネシス”!! ブラックホール展開!!」
「サナッ!!!!」
斬り伏せたキューブの先で、サーナイトがサイコパワーでブラックホールを作り出す。
でも、関係ない……!!
しずく「!? ブラックホールに突っ込んでくる気!?」
かすみ「吸い込まれるよりも速く──斬り伏せる……!!」
「カインッ!!!!」
振り上げられる神速の光剣は──真空の刃を作り出し、ブラックホールすら真っ二つにしてみせる。
しずく「なっ!?」
「サナッ…!!!」
かすみ「しず子ぉぉぉぉっ!!!!」
「カァァァインッ!!!!!」
サーナイトはもう目と鼻の先──ジュカインが刃を構える。
が、
「サナッ!!!!」
サーナイトの胸の赤いプレートから──パステル色の輝きが溢れ出す。
しずく「“はかいこうせん”っ!!!」
「サナァッ!!!!!!」
かすみ「……!!」
“フェアリースキン”によって強化された、至近距離からの最大威力の大技……!!
だけど……!!
「カィィィィンッ!!!!!!!」
ジュカインの刃は、“はかいこうせん”をど真ん中から斬り裂きはじめる。
しずく「“はかいこうせん”まで斬るつもり……!?」
「サーーーーナーーーーッ!!!!!」
「カインッ…!!!!」
輝きの奔流の中、踏ん張るジュカインの体が揺れる。
確かに至近距離から放たれる“はかいこうせん”の威力がとんでもないのはわかる、だけど……!!
私の──私たちの刃を作り出す力の根源は……諦めない心だから……!!
かすみ「諦めなければぁぁぁぁ……!! 斬れないものなんて──ないっ!!」
「カァァァインッ!!!!!!!!」
しずく「……!!」
「サナッ!!!」
ジュカインの刃が完全に“はかいこうせん”を斬り伏せようとした瞬間、
468 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:27:40.37 ID:8UVAxvmj0
しずく「……っ!!」
しず子が飛び出してくる。
わかってるよ、それも知ってる。だから──
かすみ「──私がいるんだよっ」
私は、ジュカインから飛び降り……割って入ろうとする、しず子に向かって──飛びついた。
しずく「!?」
かすみ「いっけぇぇぇっ!!! ジュカインっ!!!」
「カァイィィィィンッ!!!!!!」
ジュカインの集束“ソーラーブレード”が──
「サ、ナ…ッ」
サーナイトを……斬り裂いた。
そして、
しずく「は、放して……!!」
かすみ「しず子ぉっ!!!!」
私はしず子の両腕を掴んで、馬乗りになる。
そして、思いっきり頭を引く。
しずく「や、やめ……!」
そのまま頭突きの要領で──頭を振り下ろした。
しずく「っ……!!」
しず子が目を瞑った。
………………。
…………。
……。
──コツン。
しずく「え……」
かすみ「しず……こぉ……っ……。……もう……かえろう……っ……」
しずく「かすみ……さん……」
私は……しず子のおでこに、自分のおでこをくっつけたまま……ポロポロと涙を流していた。
……本当は一発かましてやるつもりだったのに……。
しず子を目の前にしたら……結局、出来なかった。
かすみ「わた、しが……ずっと……ずっと……いっしょにっ……いるからぁっ……だから、だからぁ……っ……」
しずく「………………」
かすみ「しず、こが……っ……いないの、……いやなの……っ……だから、……っ……かってに、いなくならないで……よぉ……っ……わたしが、……まもって、あげるから……っ……そばに、……いてよぉ……っ……」
しずく「…………かすみさん……」
469 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:28:35.56 ID:8UVAxvmj0
涙で滲む視界の向こうで──
しずく「…………本当に……強く、なって……ここまで来たんだね……」
しず子が……笑っていた。いつもの、あの笑顔で……。
かすみ「しず……子……?」
が、そのとき、
「──ズガドーン!! “シャドーボール”!!」
「──ガドーーーンッ!!!!」
聞き覚えのある声が響くと同時に──後ろに向かって思いっきり引っ張られる。
かすみ「わっ!?」
何かと思ったら──
「カインッ!!!!」
私を引っ張ったのはジュカインで──今の今まで私が居た場所を、特大の“シャドーボール”が通り過ぎていく。
かすみ「い、今の……!?」
距離を取って顔を上げると──
せつ菜「……しずくさん、無事ですか」
「…ガドーンッ」
かすみ「せつ菜……先輩……」
せつ菜先輩がズガドーンを携えて、しず子に手を差し伸べていた。
しずく「……ありがとうございます」
せつ菜「貴方の全力見せてもらいました。ですが、それよりも彼女は強い……。……なので、約束どおり……ここからは私が助太刀します」
「ガドーン…」
かすみ「……っ!」
せっかくしず子を連れ戻せそうだったのに……こんなところで、せつ菜先輩が割って入ってくるなんて……!
さすがにこの状況で2対1になるのは分が悪すぎる……。
しずく「……せつ菜さん、ありがとうございます。出てきて、バリコオル」
「…………」
しず子がせつ菜先輩の手を取って立ち上がりながら、バリコオルをボールから出す。
せつ菜「いえ、約束したので」
しずく「そうですか……。……ごめんなさい」
せつ菜「……? 何故、謝るんですか?」
しずく「……せつ菜さんが……本当に優しい人で助かりました」
せつ菜「……? なに言って……」
直後──せつ菜先輩の背後に……高い高い“リフレクター”と“ひかりのかべ”の二重の障壁が出現する。
470 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:29:33.44 ID:8UVAxvmj0
せつ菜「……!? な、なにを……!?」
突然の展開に目を見開くせつ菜先輩、そしてそれと同時にしず子は大きく息を吸って──
しずく「歩夢さぁぁぁぁぁぁんっ!!!!! 今ですっ!!!!!!!」
大きな声を張り上げた。
🎹 🎹 🎹
「コーーーーンッ!!!!!」
「キーーーーーッ!!!!!」
侑「くっ!!! “ブレイククロー”!! “みずのはどう”!! “どばどばオーラ”!!」
「ウォーーーーッ!!!!」「フィーーーオーーー!!」「ブーーイィッ!!!!」
地上に叩き落とされ、なお激しく攻撃してくるキュウコンとファイアローの攻撃を捌いているときだった。
しずく「──歩夢さぁぁぁぁぁぁんっ!!!!! 今ですっ!!!!!!!」
侑「!?」
「ブイッ!!?」
リナ『なに!?』 || ? ᆷ ! ||
しずくちゃんの大声が聞こえてきて、ギョッとする。
果林「な、なに……!?」
それは果林さんも同様だったらしく……一瞬、攻撃の手が止まる。
それと同時に──
歩夢「──……ウツロイド!! “アシッドボム”!!」
「──ジェルルップ」
先ほどまで、車椅子の上でぐったりしていたはずの歩夢が──急に立ち上がり、歩夢の頭の上に寄生しているウツロイドが果林さんへ攻撃を放った。
侑「えっ!?」
「ブイッ!!!?」
リナ『嘘!?』 || ? ᆷ ! ||
果林「なっ!? キュウコンッ!!」
「コーーーンッ!!!!」
果林さんは咄嗟の判断でウツロイドの“アシッドボム”を火炎で蒸発させるが、その一瞬の隙に歩夢が駆け出して──
歩夢「ウツロイド!! 飛び降りるよ!!」
「──ジェルルップ」
歩夢「……たぁっ!!」
そのまま、何の躊躇もせずに──崖から飛び降りた。
何が起こったのか理解出来なかったけど──
侑「……歩夢っ!!!」
「ブイッ!!!!」
471 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:30:09.64 ID:8UVAxvmj0
私は反射的に駆け出していた。
歩夢は空中に飛び出すと──ウツロイドに掴まって落下傘の要領で降りてくる。
果林「……キュウコン!! “かえんほうしゃ”!!」
「コーーーンッ!!!!」
そこに向かって放たれるキュウコンの火炎。
侑「“ハイドロポンプ”!!」
「フィオーーーーッ!!!!!」
それを阻止するように、フィオネが“かえんほうしゃ”を消火する。
果林さんも急なことに動揺しているのか、威力が十分に乗せ切れていない。
果林「く……!? ファイアロー!!」
「キーーーッ!!!!」
先ほどまで、私たちを執拗に攻撃していたファイアローが歩夢の方へと飛び立とうとした瞬間、
「ウォーーーーグッ!!!!!」
「キーーーッ…!!?」
ウォーグルが爪で押さえつけるようにして、飛行を中断させる。
その間に私は駆ける──
歩夢「う、ウツロイド!! もうちょっとだから、頑張って……!」
「──ジェルルップ…」
果林「“ひのこ”!!」
「コーーンッ!!!!」
数で撃ち落とすのを優先してきたのか、9つの狐火がウツロイドに向かって降り注いでくる。
歩夢「よ、避けて……!!」
「──ジェル…」
ふわふわと軌道を変えながら、避けようとするも──1発の“ひのこ”がウツロイドの傘に直撃し、爆発する。
歩夢「きゃぁっ!?」
「──ジェルップ…」
その爆発の衝撃で歩夢がウツロイドを掴んでいた手を滑らせた──
歩夢「きゃぁぁぁぁぁぁ!!?」
侑「歩夢ーーー!!!!!」
私は歩夢が落ちてくるその場所に向かって──滑り込んだ。
朦々と砂煙が立ち込める中──
私は──
──歩夢を、ぎゅっと……抱きしめていた。
472 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:31:36.24 ID:8UVAxvmj0
侑「歩夢……っ……」
歩夢「──……侑ちゃん……絶対助けに来てくれるって……信じてたよ……」
侑「うん……っ……」
「ブイィ…」
リナ『歩夢さん……本当に歩夢さんだよね……』 || > _ <𝅝||
歩夢「えへへ……イーブイとリナちゃんも……」
「ブイィ♪」
リナ『うん♪』 || > ◡ <𝅝||
侑「歩夢……っ……もう……絶対、離さないから……っ」
歩夢「……うん……ずっと……離さないで……」
私は、世界一大切な幼馴染をぎゅっと……ぎゅっと……力強く抱きしめた。
💧 💧 💧
かすみ「え……なに……どういうこと……?」
かすみさんがぽかんとしている。
そして、
果林「なにが……起こってるの……?」
バリコオルが展開した透明な壁の向こうで、果林さんが目を見開いて驚いていた。
私はそんな果林さんに向かって、
しずく「──そもそも、どうしてウツロイドは例外だと思ったんですか」
声を張り上げながらそう言葉をぶつける。
果林「え……」
しずく「歩夢さんにポケモンを手懐ける──いえ……ポケモンと仲良くなる歩夢さんの才能が、どうしてウツロイドには例外的に効かないと思ったんですか?」
果林「……ま、さか……しずくちゃん……貴方……!!?」
しずく「果林さん……私にこう言ってくれたじゃないですか。『舞台に立つときは、自分が今何を求められていて、今の自分に必要な役割を考えて……その上で出せる最高の自分を演じてみるといい。役割を理解していれば自ずとチャンスは巡ってくる。』って。だから……私は私の舞台で、私の役割を理解して──演じました。そして、チャンスは巡ってきました」
果林「……!? じゃあ、フェローチェの毒に侵されていたのも……!?」
しずく「ええ。私は貴方たちに付いていったあのときから……──フェローチェになんてこれっぽちも興味ありませんでしたよ♡ 私の狂人演技、どうでしたか? まんまと騙されてくれましたよね♡」
果林「……………………やって、くれるじゃない……」
「コーーーンッ!!!!!」
怒りに任せてキュウコンが炎が飛んできますが──“ひかりのかべ”に防がれて霧散する。
しずく「このときのためだけに、ひたすら“リフレクター”と“ひかりのかべ”の練習をしていたんです。破らせませんよ……!」
果林「く……!」
473 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:32:26.39 ID:8UVAxvmj0
せつ菜「つまり……貴方は全員まとめて謀ったと……」
「ガドーン」
そう言いながら、ズガドーンが“シャドーボール”を集束しながら、私に向かっていつでも発射できる状態にしていた。
せつ菜「数日間……寝食を共にした仲ですから……言い訳くらい、聞きますよ」
しずく「……そもそも……歩夢さんが攫われた時点で、絶望的な戦力差を埋める方法を私はずっと考えていたんですよ」
せつ菜「……」
しずく「だけど……どんなに考えても……戦力差は絶望的だった……だから、私は考えたんです──」
あのとき──カーテンクリフの遺跡で、彼方さんと遥さんの容態を見守っていたときのこと……。
──────
────
──
彼方「しずく……ちゃん……はるか、ちゃんのこと……おね、がい……」
しずく「彼方さん……!? そんな身体で、どこに行くつもりですか!?」
彼方「みん、なを……たすけ、なきゃ……戦闘に……な、ってる……」
確かに先ほどから激しい戦闘の音が響いているけど……。
しずく「なら、私が行きます……! 彼方さんはここに──」
彼方「ぜっ、たい……ダメ……、かり、んちゃんは……フェロー、チェを……持って、る……」
しずく「え……?」
彼方「いい……? ぜったい、ここに……いるんだよ……!!」
そう残して、彼方さんは身体に鞭打ちながら、階段を駆け上がっていった。
──フェローチェがいる……つまり、それは……。
しずく「かすみさんたちが戦っているのは……ウルトラビースト……!?」
待っていろと言われたけど……。
遥「…………」
すっかり気を失って、ぐったりしている遥さん。
でも上では戦闘が起こっていて、助太刀に行かないとかすみさんたちが危ない……でも、どうすれば……。
そのとき──
『──侑ちゃんっ!! かすみちゃんっ!! 逃げてぇぇぇっ!!』
しずく「……!!」
歩夢さんの叫び声、
『──もう、やめてぇぇぇぇぇっ!!!!』
しずく「……! 遥さん……ごめんなさい……!!」
私は階段を駆け出す。
階段を駆け上がった先にあった光景は──
474 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:34:12.43 ID:8UVAxvmj0
彼方「…………」
かすみ「……っ゛……ぅ……」
侑「歩夢……行っちゃ……ダメだ……!」
歩夢「侑ちゃん……来ないで……」
侑「……!!」
ボロボロになって気を失っている彼方さん。
満身創痍の侑先輩とかすみさん。
そして……歩夢さんが、目の前のある大きな空間の穴に向かって──果林さんと一緒に歩いているところだった。
歩夢「ごめんね……」
侑「あゆ……む……」
歩夢さんが連れ去られようとしている。
今、私に何が出来る? ポケモンを出して戦う……? いや、無理だ。
侑先輩やかすみさんに勝てなかった相手に、私が挑んだところで勝てるわけがない。
だから歩夢さんは自分を犠牲にして付いていくことを選んだんだ。そうじゃなきゃ、無抵抗に付いていったりするはずがない。
私は目の前で起こっている出来事に対して、脳をフル回転させながら分析し、激しく思考する。
──今、私に、何が出来る……?
その自問自答が至った答えは──
しずく「フェローチェ……」
果林さんの横に居るポケモンだった。
──ドクリと胸が高鳴る。あのときのフェローチェに酔う感覚を身体が思い出す。
でも──もし、これに抗って、敵の懐に潜入出来たら……? もしかしたら、今度こそ……本当に正気を失って……壊れてしまうかもしれない。
だけど、
しずく「……やるしかない」
今、私に出来ることは──いや……今、私にしか出来ないことは、これしかない……!
果林「さぁ、歩夢この穴に──」
しずく「──待ってください!!」
私は──大きな声で果林さんを引き留めた。
しずく「…………」
かすみ「しず……子……?」
──オウサカ・しずく。あなたは今から──フェローチェの虜になった、可哀想な女の子……。
しずく「…………私も、連れて行ってくださいませんか……♡」
この瞬間から、私は──私の戦場に自らを駆り出したのだった。
──
────
──────
475 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:36:00.56 ID:8UVAxvmj0
しずく「そして、その先で……せつ菜さん、貴方が彼女たちに与していることを知りました」
せつ菜「…………」
しずく「貴方が敵だとしたら……恐らく、まともに戦って勝てるトレーナーは千歌さんしかいない。ですが、その千歌さんも捕らえられていた。そこで私は考えたんです──まともじゃない戦況に貴方たちを引き摺り込むしかないと」
そう言った瞬間、
「サ…ナ…」
私のすぐ足元で、瀕死寸前になっていたサーナイトが私の足を掴む。次の瞬間、フッと視界が切り替わる。
かすみ「へっ!? し、しず子が急に目の前に……!?」
せつ菜「っ……!? “テレポート”……!?」
しずく「かすみさん、走るよ!!」
かすみ「う、うん……!」
私はかすみさんの手を取って走り出す。それと同時に、
しずく「サーナイト、お願いね……!」
「サナ…」
サーナイトに私のバッグを持たせ──再度“テレポート”させる。
せつ菜「くっ……!! 待ちなさい!!」
かすみ「えとえとえと……かすみん、何がなんだか……」
しずく「簡単に言うとね……! 私は最初から──せつ菜さんと果林さんを分断させて、多対一になる形を作ろうとしてたってこと!!」
かすみ「……!! じゃあ……!!」
しずく「かすみさん!! 二人でせつ菜さんを倒すよ!!」
かすみ「しず子……!! うんっ!!」
かすみさんとの共同戦線による──せつ菜さんとの戦いの火蓋が切って落とされた。
🎀 🎀 🎀
歩夢「侑ちゃん……」
侑「歩夢……」
ああ……久しぶりの侑ちゃんの匂い……侑ちゃんの温もり……ずっとこうしていたいけど……。
リナ『ゆ、侑さん、歩夢さん……再会が嬉しいのはわかるけど……』 || >ᆷ< ||
歩夢「そうだね……侑ちゃん、行こう」
侑「歩夢……うん!」
リナちゃんに促されて立ち上がる。
直後──
果林「──“かえんほうしゃ”!!」
「コーーーンッ!!!」
476 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:39:18.29 ID:8UVAxvmj0
上から炎が降ってくる。
歩夢「ウツロイド!! “ミラーコート”!!」
「──ジェルルップ」
その炎を反射する。
果林「くっ……!!」
「コーンッ!!!」
果林さんたちは反射されたと判断した瞬間すぐに身を引いたから、ダメージは与えられなかったけど……十分牽制にはなった。
それと同時に、
「サナ」
しずくちゃんのサーナイトが目の前に“テレポート”してくる。
サーナイトは私にしずくちゃんのバッグを預けたあと──ぱぁぁぁっと、優しい光を放ち……。
「サナ…」
パタリと倒れてしまった。
リナ『今の……“いやしのねがい”……!?』 || ? ᆷ ! ||
侑「た、確か使ったポケモンが戦闘不能になる代わりに、控えのポケモンが全回復する技だよね……?」
つまり……。
歩夢「ありがとう……しずくちゃん……!」
しずくちゃんのバッグに入っていたサーナイト用のボールに倒れたサーナイトを戻し──さらにしずくちゃんのバッグから、私のボールベルトを取り出して腰に着ける。
そして最後に……たくさんの回復アイテムが詰まったバッグの奥に、小箱を見つける。
その箱を開けると──
歩夢「……ありがとう……しずくちゃん」
477 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:39:56.74 ID:8UVAxvmj0
心の底からのお礼を呟いて──私は箱から取り出したローダンセの髪飾りを身に着ける。
私の大切なものは……しずくちゃんが全部守ってくれた。
手持ちたちの育成から、回復まで、全部……大事な侑ちゃんからの贈り物も……全部……全部……!!
あと、私に出来ることは──
果林「“ほのおのうず”!!」
「コーーーンッ!!!!!」
──ゴォっと炎を周囲にまき散らし、私たちの逃げ場を塞ぐようにキュウコンが炎を吐いてくる。
果林「……逃がさないわよ……」
怒りを顕わにした果林さんが、崖の上から見下ろしてくる。
歩夢「侑ちゃん……私と一緒に……戦って……!」
侑「うん! 私……歩夢と一緒なら、誰にも負けないから……!!」
二人で頷き合って、
侑・歩夢「「二人で倒そう……! 果林さんを……!!」」
私と侑ちゃんは果林さんを倒すために──前に踏みだした。
478 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2022/12/31(土) 12:40:35.83 ID:8UVAxvmj0
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かきこんでいます
でんげんを きらないでください...
【ウルトラキャニオン】
口================== 口
||. |○ o /||
||. |⊂⊃ _回/ ||
||. |o|_____. 回 | ⊂⊃| ||
||. 回____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||.○⊂⊃ | ○ |‥・ ||
||. | |. | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ||
||. | |. | | | ||
||. | |____| |____ / ||
||. | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o ||
||. | | | | _. / : ||
||. 回 . |_回o | | : ||
||. | |  ̄ |. : ||
||. | | .__ \ : .||
||. | ○._ __|⊂⊃|___|. : .||
||. |___回○__.回_ _|‥‥‥: .||
||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o‥| | | ||
||. / | | | ||
||. / o回/ ||
口==================口
主人公 侑
手持ち イーブイ♀ Lv.75 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
ウォーグル♂ Lv.74 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
ライボルト♂ Lv.74 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
ニャスパー♀ Lv.70 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
ドラパルト♂ Lv.71 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
フィオネ Lv.69 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:245匹 捕まえた数:10匹
主人公 歩夢
手持ち エースバーン♂ Lv.63 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
アーボ♂ Lv.63 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
マホイップ♀ Lv.61 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
トドゼルガ♀ Lv.62 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
フラージェス♀ Lv.60 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
ウツロイド Lv.70 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
バッジ 3個 図鑑 見つけた数:207匹 捕まえた数:20匹
主人公 かすみ
手持ち ジュカイン♂ Lv.76 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
ゾロアーク♀ Lv.72 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
マッスグマ♀ Lv.70 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
サニゴーン♀ Lv.70 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
ダストダス♀✨ Lv.71 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
ブリムオン♀ Lv.71 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:239匹 捕まえた数:14匹
主人公 しずく
手持ち インテレオン♂ Lv.65 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
バリコオル♂ Lv.64 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
アーマーガア♀ Lv.64 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
ロズレイド♂ Lv.64 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
サーナイト♀ Lv.65 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
ツンベアー♂ Lv.64 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
バッジ 0個 図鑑 見つけた数:208匹 捕まえた数:22匹
侑と 歩夢と かすみと しずくは
レポートに しっかり かきのこした!
...To be continued.
479 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 03:19:39.68 ID:w+jDVHjQ0
■Intermission☀
──音ノ木上空。
穂乃果「……うーん」
私はリザードンの背の上で、腕を組んで首を傾げる。
穂乃果「……ウルトラビーストの出現率は日に日に上昇してるし……野生のポケモンがウルトラビーストに襲われる件数も増えてるんだよね……」
相談役から貰ったデータを見ながら呟く。
正直、こういうデータを見る、とかは苦手なんだけど……それにしたって、少し妙だなと思ってしまう。
穂乃果「これは、地方の危機に含まれないってこと……? 龍の咆哮すらないなんて……」
もちろん龍の咆哮は、メテノの墜落の方じゃなくて、本物の方のこと。
確かに、グレイブ団事変のときに比べると、目に見えて危機に思えないのはわかるけど……向こうだって、目で見て判断しているわけじゃないはずなのに……。
穂乃果「うーん……」
「──何を唸っているのですか」
穂乃果「……!」
声がして、振り向くと、
海未「ずっと、ここに居るんですね」
海未ちゃんがカモネギに掴まって飛んでいた。
穂乃果「なんだ、海未ちゃんか……」
海未「なんだとはなんですか……。……作戦が始まったことだけ伝えようと思って」
穂乃果「……! わかった」
海未「場所はわかりますか?」
穂乃果「15番水道にある幽霊船だよね。相談役から聞いてる」
海未「なら、よかった。可能であれば……助力を頂けるとありがたいです」
穂乃果「わかった」
海未「よろしくお願いします」
それだけ言うと海未ちゃんは私に背を向ける。
480 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 03:20:43.20 ID:w+jDVHjQ0
穂乃果「もう行っちゃうの?」
海未「ええ。本当に用件を伝えに来ただけなので」
穂乃果「なら、ポケギアに連絡入れてくれればいいのに……」
海未「普段滅多に出ない癖によく言いますね」
穂乃果「う……それは、ごめん……」
海未「……ふふ、冗談ですよ。……たまたまスケジュールに微妙な隙間があったので、パトロールがてらに幼馴染の顔を見に来ようと思っただけです。……居る場所がわかること自体が珍しいんですから、貴方は」
穂乃果「そっか」
海未「ええ。……穂乃果」
穂乃果「なに?」
海未「今回の騒動……片付いたら、久しぶりにことりと3人で……ご飯でも食べに行きましょう」
穂乃果「いいね、行きたい!」
海未「言質……取りましたからね。放り出したら承知しませんよ」
穂乃果「はーい」
海未「……では」
海未ちゃんは今度こそ、飛び去っていった。
穂乃果「…………」
私は傍らにある音ノ木に目を向ける。
穂乃果「……今回は……見逃してくれるってことなのかな……?」
私は未だ何の音沙汰もない龍神様に向かって、一人呟くのだった……。
🏹 🏹 🏹
──ローズシティ。ニシキノ総合病院。特別治療室。
真姫「こっちよ」
海未「ありがとうございます」
真姫に病室まで案内をしてもらう。
真姫「それじゃ私は、もう行くわね……」
海未「はい。忙しい中、ありがとうございます」
真姫「ん」
私を案内し終わると、真姫はすぐにその場を後にする。
彼女にはこの後やることがありますからね。
病室に入ると、
理亞「……海未さん」
海未「理亞、こんにちは」
481 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 03:21:33.19 ID:w+jDVHjQ0
私に気付いた理亞が、少し不安そうな顔をする。
まあ、これから行うのは事情聴取ですから……多少の不安はあるでしょう。
そして──事情聴取をする当の本人に顔を向ける。
海未「……それと、聖良。……初めましてという方がいいでしょうか」
聖良「……ええ。お会いするのは初めてですね……」
海未「その様子だと……すっかり、声は出るようになったようですね」
聖良「ふふ、理亞がずっと話し相手になってくれていましたからね」
そう言って笑う聖良は、意外にも悪人の顔の片鱗は感じられず……その表情は、私が幼い頃、年の離れた姉から向けられていた顔に近い物を感じました。
……つまり、姉の顔ということです。
聖良「それで、私に聞きたいのは……グレイブ団事変の真相というところでしょうか?」
海未「……それもですが……今、この地方は少々立て込んでいまして……。貴方に聞きたいのは、この人物たちのことです」
そう言いながら、私は端末に二人の人物の写真を表示して、聖良に見せる。
聖良「……愛さんと果林さんですか」
海未「……! やはり、面識があるのですね」
聖良「はい。私たちの飛空艇──Saint Snowの設計をしてくださったのは愛さんです。……そして、果林さんからは資金協力を頂いていました」
海未「どうりであれほどの規模の飛空艇が作れたわけですね……。彼女たちとはどうやって?」
聖良「ディアンシーの研究をしている際に、私の研究内容をどこかで掴んでコンタクトを取ってきたという感じでした」
海未「では、向こうから……?」
聖良「はい」
海未「ふむ……」
自分から協力を名乗り出たということは……。
海未「……向こうの要求はなんだったんですか?」
必ず対価を求められたはずだ。
聖良「ディアンシーの捕獲に成功し、全てが終わったら──ディアルガ、パルキア、ギラティナを渡す約束をしていました」
海未「なんですって?」
私は少し考える。……確かにその3匹を手中に収めておけば、こちらは果林たちを追跡することがほぼ不可能になっていた。
……ということは、彼女たちはこの3匹の伝説のポケモンたちの力で、自分たちを追跡される可能性に最初から気付いていた……?
それなら一応筋は通っていますが……なんだか釈然としない。
聖良とのコンタクトがグレイブ団事変の前ということは……3年以上前のことなわけだ。
そのときには果林はモデル事務所をフェローチェの力で掌握し、表舞台に出ていたとはいえ……そこまで想定出来るものなのでしょうか……。
海未「果林は……その3匹を手に入れて何をしようとしていたのかわかりますか?」
聖良「いえ、そこまでは……という以前に、その3匹を欲しがっていたのは果林さんではありませんよ」
海未「果林ではない……? では……」
聖良「はい、その3匹を欲しがっていたのは愛さんです。加えて、そのことは果林さんには言わないで欲しいと言われていたので……。果林さんに言われたことと言えば……そうですね……出来る限りオトノキ地方内の戦力を削って欲しいとは言われましたが……」
海未「……」
482 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 03:22:29.24 ID:w+jDVHjQ0
果林の目的は理解出来る。オトノキ地方内の戦力を削れば、ウルトラビーストを撃退することもままならなくなるからだ。
だが……愛の目的が理解出来ない。
先のとおり、彼女がエンジニアとして、私たちの追跡をその時点で想定して、対策を打っておいたということも考えられなくはないですが……。
だとしたら、果林に隠す理由はなんでしょう……?
海未「まだ……私たちがわかっていないことがある……?」
リナや彼方のような、かつて組織に所属していた人間にも、知られていない何かが……?
聖良「私が彼女たちについて知っているのは……これくらいですね」
海未「そうですか……。……ありがとうございます」
そう言って私は席を立つ。
理亞「あ、あの……海未さん……! ねえさまは……これから、ねえさまはどうなるの……?」
海未「……事態が落ち着いたら、グレイブ団事変について、改めて事情聴取をすることになると思います」
理亞「そうしたら……ねえさまは……」
聖良「罪を償うことになるんでしょうね」
海未「……貴方が素直に罪を認めるなら、そうなるでしょう」
理亞「……ねえさま」
聖良「いいのよ、理亞。……私が犯した罪は事実ですから」
理亞「……」
聖良「私が寝ている間に……貴方はジムリーダーとして、多くの人に囲まれるようになっていた……。貴方が笑ってくれているなら……私はそれで満足です」
理亞「……ねえさま……」
海未「……とりあえず、後日また来ます。そのときに改めてお話ししましょう」
聖良「はい」
私は、そう残して──聖良の病室を後にした。
……それにしても……愛はディアルガ、パルキア、ギラティナを手に入れて……何をする気だったんでしょうか……?
………………
…………
……
🏹
483 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:04:19.83 ID:w+jDVHjQ0
■Chapter065 『決戦! ポケモントレーナー・せつ菜!』 【SIDE Shizuku】
しずく「──とりあえず一旦、せつ菜さんから距離を取ろう!!」
「ベァ…!!!」
かすみ「う、うん! 行くよ、ジュカイン!」
「カインッ!!」
かすみ「ダストダスは一旦戻って!」
「ダストダァ──」
私はかすみさんの手を引きながら、峡谷の細い道へと走り出した。
その際かすみさんは、体が大きく走るのが苦手なダストダスを一旦ボールに戻す。
せつ菜「……逃げるなら内側にいるバリコオルを倒すまでです! ズガドーン! “かえんほうしゃ”!!」
「ガドーンッ!!!」
ズガドーンが、透明な壁を作っているバリコオルへ攻撃を仕掛けるが、
「…………」
バリコオルは無言のまま、壁をすり抜け、壁の外側へ移動する。
しずく「バリコオルの特性は“バリアフリー”です!! 展開解除自由自在ですから、自分が通る部分だけ解除してすり抜けることも出来ますし、再展開もすぐ出来ます!!」
せつ菜「く……!」
しずく「“バリアー”を解除したいなら……!! まずは私たちを倒すことですね!!」
そう言いながら、私はかすみさんの手を引き、峡谷の細道を曲がる。
しずく「次は……こっち……!」
かすみ「み、道知ってるの……!?」
しずく「出来る限りの下調べは徹底的にしたから……! 今はとにかくせつ菜さんを奥に誘い込むよ!」
かすみ「なんで!?」
しずく「広いフィールドで戦うと絶対に力負けするから! 少しでも、複雑な地形で搦め手を使わないと勝ち目がないって話!」
かすみ「ぐぬぬ……悔しいけど、確かにせつ菜先輩を真っ向から倒すのはきついかも……」
せつ菜さんはただでさえ強いのに……彼女が今使っているのはウルトラビースト。しかも、私の認識が間違っていなければ、せつ菜さんが持っているウルトラビーストの数は3体だ。
かすみさんは以前に比べたら信じられないほど強くなったし、性格的に真っ向勝負で戦いたいかもしれないけど……相手はあのせつ菜さん。勝率を少しでも上げるために策を弄する必要がある。
幸いここら一帯の地形は頭に叩き込んだ。複雑な峡谷の道をかすみさんの手を引きながら突っ走る。
しずく「……はぁ……はぁ……もうちょっと奥まで引っ張りたい……けど……」
ある程度走って、せつ菜さんと距離を離したところで、
かすみ「しず子……!」
かすみさんが足を止めて、私の顔を覗き込んでくる。
しずく「ん? なに?」
かすみ「ホントにホントに……フェローチェのこと……もう大丈夫なの?」
484 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:05:23.26 ID:w+jDVHjQ0
かすみさんは心配そうな表情でそう訊ねてくる。
……確かにかすみさんにとっては大事なことか。
もし、私がまだ完全にフェローチェの魅了から脱していないとなったら、いつ発作が起きるかもわからないまま戦うことになるだろうし……何より純粋に心配してくれているんだと思う。
ここからは、かすみさんとの共闘がどれだけうまく行くかに全てが懸かっている。せつ菜さんを引き離している今のうちに、話しておくべきだろう。
しずく「……平気だよ。もうフェローチェになんか、なんの興味もない」
かすみ「ホントに……? ずっと、果林先輩のフェローチェの近くに居たんでしょ……?」
……確かに、果林さんの信頼を得るためには、フェローチェに心酔している演技をし続ける必要があった。
だから、何度かご褒美と称してフェローチェを魅せてもらっていた。……そのとき、私の体内にある毒が何度も暴走しかけたけど……。
しずく「平気だよ……私は平気なの。……フェローチェの毒には絶対に負けない……」
かすみ「な、なんでそう断言できるの……?」
しずく「ふふ♪ かすみさんが言ったんだよ?」
かすみ「え?」
しずく「かすみさんの方が……フェローチェなんかよりも、可愛くて、美しくて、綺麗で、魅力的なんでしょ?」
かすみ「え、あ、そ、それは……///」
かすみさんの顔が赤くなる。
私は……いつかかすみさんが言ってくれた、この言葉のお陰で、負けずにいられた。
しずく「それとも、かすみさんは……私のこと、こんなに魅了しておいて……責任取ってくれないの……?」
かすみ「へっ!?/// あ、いや、だから、あれは別にそういう意味じゃなくて……しず子を助けるために必死で……/// あ、でも、しず子がそう思ってくれるのは嬉しくって……その……///」
しずく「ふふっ」
耳まで真っ赤になるかすみさんを見て、くすくす笑ってしまう。
しずく「あ、でも……フェローチェに魅了されてるのも悪くないかもなー……」
かすみ「へっ!? な、なんで!?」
しずく「だって、そうしたら──かすみさんが一生面倒見てくれるって言ってたから……それも悪くないかな〜……って」
かすみ「ぅ……/// だ、だから……それは……///」
しずく「そう言ってくれて……嬉しかった……」
そう言いながら、かすみさんの指に私の指を絡めると──なんだか、心地の良いドキドキがしてきて……この気持ちの方がフェローチェの魅了なんかよりも、ずっとずっと……幸せな気持ちだった。
──そのとき、近くでドカンッ!! と爆発音がする。
せつ菜さんが追い付いてきた……!
かすみ「や、やば……走るよ……!」
しずく「あ、うん」
かすみさんが私の手を引いて走り出す。
……むー……なんか誤魔化されちゃったな……。まあ、いいけど。
なんて、思っていたら、
485 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:06:06.64 ID:w+jDVHjQ0
かすみ「あ、あのさ……」
しずく「ん?」
かすみ「……べ、別に……病気とかじゃなくても……しず子の面倒くらい……ずっと、見て……あげなくもない……から……///」
しずく「……へっ!?///」
──完全に不意打ちだった。自分の顔が一気に熱くなるのを感じる。
かすみ「だからっ……!! 今は、せつ菜先輩に勝たなきゃ!! 勝って、帰るよ!!」
そう言いながら、かすみさんが──あるものを投げ渡してきた。
かすみ「せつ菜先輩に勝つには必要でしょ!」
しずく「……! うん!」
それを受け取り確認した直後に──私も代わりにあるものをかすみさんに投げ渡す。
かすみ「さぁ〜て……! それじゃ、いっちょやってやりますか〜!」
しずく「うん……!」
位置も十分奥まで来た。
ここでせつ菜さんを迎え撃つ……!!
🎙 🎙 🎙
せつ菜「……」
「ガドーンッ!!!」
先ほどからズガドーンが炎弾を放ち、岩壁を爆破で破壊しながら進んでいる。
さっき一瞬だけ、岩壁の影に彼女たちの逃げる姿を見つけられたが……また、奥へと走り去っていってしまった。
せつ菜「……誘い込んでいるわけですか……」
しずくさんは明らかに地形を把握し、死角の少ない場所を選んだ逃げ方をしている。
恐らく、ここの地形も事前に下調べをしていたのだろう。
最初から全て……私を倒すために作戦を立てていたわけだ。
せつ菜「あの言葉も、全部……演技──嘘だったんですね……」
胸がジクりと痛んだ気がした。せっかく……やっと、私の気持ちを理解してくれる人が現れたと思ったのに……。
せつ菜「とんだ……大女優ですね」
そして、今も彼女は策を弄し、私を誘い込んでいる。
それがわかった上で、攻め込むのは愚策だとわかっているけど──
せつ菜「いいですよ……その誘い……乗ってあげますよ。もちろん……ただで思惑通りに誘われるつもりはありませんが……!」
私も、やられたまま引き下がるなんて、性分が許さない。
486 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:06:47.41 ID:w+jDVHjQ0
せつ菜「ズガドーン!! “ビックリヘッド”!!」
「ガドーーーーンッ!!!!!」
私はダメージ覚悟の爆発技で開戦の狼煙を上げた。
👑 👑 👑
かすみ「…………」
しずく「…………」
二人で物陰に隠れて、せつ菜先輩を待ち構える。
しずく「音が……止んだ……?」
しず子の言うとおり、先ほどから鳴り続けていた爆発音が突然止まる。
……が、その直後……先ほどとは比べ物にならない轟音と共に──岩壁がこちらに向かって雪崩のように襲い掛かってきた。
しずく「っ!?」
かすみ「しず子!!」
かすみんは咄嗟にしず子の腕を掴み、
「カインッ!!!」
私たち二人をまとめて抱き上げて、ジュカインがその場から離脱する。
それと同時に、
しずく「ツンベアー戻って!!」
「ベァ──」
しず子が崩れ落ちてくる岩から、間一髪でツンベアーをボールに戻す。
かすみ「い、いきなりなんですか……!?」
しずく「まさか、“ビックリヘッド”……!?」
かすみ「それって、前に見た自爆するやつ!?」
しずく「うん……体力が大きく削れるから、こんな序盤から使ってくるとは思ってなかったのに……」
ガラガラと崩れるの岩の隙間から、せつ菜先輩の姿が見えた。
せつ菜「……見つけましたよ……」
直後、
「────ジジジジ」
せつ菜先輩の傍らに──巨大な電線のようなポケモンが姿を現す。
かすみ・しずく「「……!?」」
487 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:08:31.37 ID:w+jDVHjQ0
そして、そのポケモンの体が──青白くスパークしながら、帯電を始める。
でも、かすみんたちは今……崩れる岩から逃れるために──空中に跳んでいた。
しずく「空中じゃ逃げ場が……!?」
かすみ「ジュカインッ!! 尻尾立てて!!」
「カインッ!!!」
せつ菜「“かみなり”!!」
「──ジジジ」
直後、カッと周囲が青白い閃光に照らされ──ピシャーーーーーンッ!! と轟音を立てながら空気を震わせる。
“かみなり”というよりも──もはや青白い光の柱のような雷撃を、メガジュカインの特性“ひらいしん”で受け止めます……が、
かすみ「威力が……強すぎる……っ!」
以前見た、侑先輩のメガライボルトの“かみなり”を彷彿とさせる──いや、もしかしたらそれ以上かもしれない電撃は、ジュカインの尻尾に吸収しきれず、バチバチと周囲に爆ぜ散っている。
しずく「地面にいないから、電気を逃がしきれてないんだよ……!」
かすみ「わかってるっ! “やどりぎのタネ”!!」
「カインッ!!!」
ジュカインが地面に向かって、“やどりぎのタネ”を吐き出し──
かすみ「とりゃぁっ!!!」
電撃が爆ぜる中、ジュカインの背中のタネに手を伸ばしてもぎ取る。
そのとき──バチンッ!!
かすみ「っ゛……!?」
爆ぜた“スパーク”が指先に当たり──全身が痺れて動けなくなる。
──感電した。
気付いたときには、かすみんの身体はフラりと落下を始める。
しずく「かすみさんっ!!」
落ちそうになったかすみんの腕をしず子が掴み、
しずく「ロズレイド!! “アロマセラピー”!!」
「──ロズレイドッ!!!」
心地の良い香りと共に、身体の痺れが和らぐ。
かすみ「っ……!! しず子、ありがと……っ!!」
お礼を言いながら、真下に向かって、タネをぶん投げる。
すでに地面で成長を始め、ツタを伸ばし始めている“やどりぎのタネ”の横に、ジュカインの背中のタネが落ちてきて弾けると──
ツタは一気に成長し──太い樹となって、ジュカインの足元まで伸びてくる。
「カインッ!!!」
──その樹木に着地すると同時に、ジュカインの尻尾で吸いきれずに爆ぜていた電撃は、樹を通って、地面へと逃げていく。
488 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:09:58.42 ID:w+jDVHjQ0
かすみ「ジュカインの背中のタネは……植物を急成長させるほどに栄養満点なんですよ……!」
しずく「それよりかすみさん、身体は平気……!?」
かすみ「ちょっと、ビリっとしただけ……!」
正直、感電した瞬間、軽く意識が飛びかけたけど……当たったのは指先だったし、すぐに“アロマセラピー”を使ってくれたお陰で痺れも一瞬で取れたから、動けないほどのダメージにはなっていない。
が、もちろん息をつく暇などない。
せつ菜「“うちおとす”!!」
「ガドーーーンッ!!!」
ズガドーンが落ちていた石に業炎を纏わせ、火球にして飛ばしてくる。
しずく「ロズレイド! “にほんばれ”!!」
「ロズレ!!」
かすみ「“ソーラーブレード”!!」
「カインッ!!!!」
強い日差しの下で、集束“ソーラーブレード”を作り出し、火球を真っ向から斬り裂く。
せつ菜「“でんじほう”!!」
「──ジジジジッ」
かすみ「尻尾向けて!!」
「カインッ!!!」
今度は尻尾の“ひらいしん”で吸収し、地面に流して無効化する。
せつ菜「なら……“やきつくす”!!」
「ガドーーーーーンッ!!!!」
畳みかけるような攻撃──今度はズガドーンが、やどりぎの樹木の根本に業炎を噴き付ける。
とんでもない火力で焼かれた樹木は一気に炎で焼け崩れ──グラリと傾き始める。
かすみ「わったたっ!? ジュカイン!! 地面に向かって跳んで!!」
「カインッ!!!」
空中に居たらダメ……!! とにかく、地面に着地しないと……!!
傾く樹木を蹴って、地面に向かって一直線に飛び出すけど、
せつ菜「“かみなり”!!」
「──ジジジジジ」
その一瞬の隙にすら攻撃を放ってくる。
しずく「ロズレイド! “パワーウィップ”!!」
「ロズレ!!!」
“かみなり”がジュカインの尻尾に落ちるのとほぼ同時に──ロズレイドが腕にある花から“パワーウィップ”を伸ばして地面に突き刺す。
──落雷の轟音が空気を震わせる中、今度はそれがアースの代わりになって、地面に電撃を逃がす。
やっとの思いで着地をするも、
せつ菜「“かえんほうしゃ”!!」
「ガドーーーンッ!!!!」
せつ菜先輩の猛攻は止まらない。
489 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:10:35.73 ID:w+jDVHjQ0
しずく「ツンベアー!! “しおみず”!!」
「──ベァァ!!!」
再びボールから繰り出されたツンベアーが、炎に向かって口から“しおみず”を発射するが──ジュゥゥゥッ! と音を立てながら、どんどん蒸発していく。
せつ菜「そんな威力で受けきれると思ってるんですか!!」
しずく「く……っ!!」
確かにみずタイプじゃないツンベアーだと消火が追い付かない。でも、少しでも炎の勢いを殺してくれれば十分……!
かすみ「行くよ、サニゴーン!! “ミラーコート”!!」
「──ニゴーーーンッ!!!」
ツンベアーの目の前にサニゴーンの繰り出し──“ミラーコート”で反射する。
かすみ「自分の炎で燃えやがれです〜!」
反射された“かえんほうしゃ”がせつ菜先輩たちに迫りますが──
せつ菜「“だいもんじ”!!」
「ガドーーーンッ!!!!」
その炎をズガドーンが“だいもんじ”で相殺する。
かすみ「う、嘘!?」
しずく「……! 反射の可能性を考えて、あえて1段階弱い技を選んでたんだ……!」
かすみ「どんだけ先読みしてるんですか……!」
せつ菜「リスクをケアして攻撃するのは、当たり前のことですよ……」
かすみ「な、なら……!!」
「ニゴーーーーンッ!!!!」
周囲の岩石がふわりと浮かび上がる。
かすみ「いっけぇーー!! “ポルターガイスト”!!」
「ニゴーーーンッ!!!!」
大きな岩石たちが、せつ菜先輩を襲いますが──
せつ菜「“かみなりパンチ”!! “ほのおのパンチ”!!」
「──ジジジ」「ガドーーーンッ」
大きな岩石さえも、雷撃と業炎を纏った拳がやすやすと割り砕いていく。
かすみ「こ、攻撃が通らない……っ」
しずく「ツンベアー!! “つららおとし”!!」
「ベアァァァ!!!!」
しず子が間髪入れずにサニゴーンの目の前に巨大なつららを落として氷の壁を作る。
せつ菜「“マジカルフレイム”!!」
「ガドーーーンッ!!!!!」
分厚い氷の壁が炎を防ぐと思いきや、ものすごい勢いで溶け始める。
490 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:11:24.71 ID:w+jDVHjQ0
かすみ「ひ、日差しが裏目に出てる……!」
しずく「く……!! インテレオン、“あまごい”!!」
「──インテ!!」
しず子が出したインテレオンが雨を降らせて炎の勢いを弱めようとするけど──あまりの炎の勢いに消火が間に合わず、燃え盛る炎がサニゴーンに襲い掛かる。
かすみ「“ミラーコート”!!」
「ニゴーーーンッ!!!」
2度目の“ミラーコート”を構えるが──
せつ菜「2度も同じ技で反射出来ると思ってるんですか?」
かすみ「……!?」
“マジカルフレイム”はサニゴーンの目の前で──クンと軌道を上に逸らし──
「ベァァァッ!!!?」
その背後に居たツンベアーに襲い掛かる。
しずく「ツンベアー!?」
「ベァァ…」
ツンベアーが炎に焼かれて、その場に倒れる。
さらに、
せつ菜「──“ロックブラスト”!!」
「ガドーーンッ!!!!」
「ニゴーーンッ…」
炎を纏った岩石がサニゴーンを吹き飛ばす。
さらに、追撃、
せつ菜「“かみなり”!!」
「──ジジジジッ」
かすみ「ジュカインッ!! 尻尾立ててぇっ!!」
「カインッ!!!!」
落ちてきた青い柱をジュカインの“ひらいしん”で吸収する。
……が、青白い稲妻は何故かさっきよりも威力が強く、吸収しきれなかった電気が、稲光となって、周囲に迸る。
しずく「かすみさんっ! 伏せて!!」
かすみ「わわっ!?」
しず子に腕を強引に引っ張られ、転ぶように伏せると──今さっきまでかすみんの頭があった場所を稲妻が走る。
かすみ「な、なんで吸収できないの……!?」
しずく「たぶん、ズガドーンしか攻撃してないタイミングあったから、その間に“じゅうでん”してたんだと思う……っ! きゃぁっ!?」
しず子の目の前に──バチンと稲妻が爆ぜて、声があがる。
「カインッ…!!!」
かすみ「ぐぅ……っ! ……じ、ジュカイン頑張ってぇ……!!」
491 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:12:28.40 ID:w+jDVHjQ0
本来でんき技を無効化するはずなのに、ウルトラビーストの規格外のパワーのせいで、それすら完遂しきれない。
“かみなり”が終わるのを身を伏せたまま耐えていると、
「ガドーンッ」
かすみ・しずく「「……!?」」
伏せている私たちの目の前にズガドーンが立っていた──巨大な影の球を集束しながら。
かすみ「……っ……! ブリムオン!!」
「──リムオンッ!!」
しずく「インテレオン!!」
「インテッ!!!」
かすみ・しずく「「“シャドーボール”!!」」
「リムオンッ!!!」「インテッ!!!」
「ガドーーンッ」
ズガドーンから発射される“シャドーボール”に、2匹の“シャドーボール”をぶつける。
2匹掛かりで同じ技をぶつけるが──
しずく「ダメ……っ! 向こうの方がまだ強い……っ!」
巨大な“シャドーボール”に、こっちの2つの“シャドーボール”が飲み込まれ始める。
でも、
「カィィィンッ!!!」
まだ、ジュカインは“かみなり”を吸収しきれていない……!
ジュカインを失ったら“ひらいしん”も使えなくなり、デンジュモクの範囲攻撃で一網打尽にされて一巻の終わり……!
何がなんでもジュカインは守らなきゃ……!
かすみ「ブリムオンっ! “ひかりのかべ”!!」
「リムオンッ!!!」
2匹の“シャドーボール”を飲み込んだ、ズガドーンの特大“シャドーボール”が“ひかりのかべ”に衝突して、影のエネルギーが爆ぜ散る。
だけど、どんどん影の球は“ひかりのかべ”にめり込むようにして、かすみんたちの方へと迫り出してくる。
かすみ「お、抑えきれないぃぃぃ……! さ、“サイコキネシス”ッ!!」
「リムォォンッ…!!!!」
追加の技で、“シャドーボール”を押し返そうとするけど──ゆっくりと影の球がかすみんたちに迫ってくる。
巨大な影の球が目と鼻の先まで迫ったそのとき──
しずく「インテレオン……!?」
しず子の声が響く。それと同時に、
「インテッ!!!!」
インテレオンが体に“あくのはどう”を纏って、“シャドーボール”に自ら突っ込んだ。
衝突と同時に、“シャドーボール”の影のエネルギーが一気に破裂し──
「インテッ…!!!」
492 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:13:16.75 ID:w+jDVHjQ0
インテレオンが吹き飛ばされる。
しずく「戻って……!! インテレオン……!!」
直撃を受けたインテレオンは、あえなく戦闘不能……ですが、お陰で“シャドーボール”は消え去った……!
かすみ「ブリムオンッ!! “サイコ──」
目の前のズガドーンに攻撃を食らわせてやろうと思ったけど、
せつ菜「“オーバーヒート”」
「ガドーーンッ」
こっちが攻撃態勢に入るよりも早く、ズガドーンの体から真っ赤な熱波がかすみんたちを襲った。
かすみ「あっつ……!!?」
「リムオンッ…!!!?」
“ひかりのかべ”で防いでいるにも関わらず、全身が焼け焦げるような熱波が周囲一帯に広がっていく。
そんな中、
「リムオンッ!!!」
かすみ「ブリムオン……!?」
ブリムオンが一歩前に出て、さらに私の周囲だけサイコパワーで熱波を逸らし始める。
かすみ「だ、ダメ……!! ブリムオンが燃えちゃう……!!」
「リムゥォォォンッ!!!!」
しずく「ロズレイドッ、“はなふぶき”ッ!!」
「ロズレッ!!!」
しず子が、少しでも熱波を防ぐようにと、ブリムオンの目の前にお花の壁を吹かせるけど──向こうは業炎、こっちは花。花は一瞬で燃え尽きてしまう。
そのとき、ちょうど、
「……カインッ!!!」
ジュカインが“かみなり”を吸収しきり、
かすみ「か、“かまいたち”ッ!!」
「カインッ!!!!」
背後から、ジュカインが刃を振るって作り出した“かまいたち”が飛んできて、それを身を捻って避けながら、かすみんは後ろに逃げる。
真空の刃が熱波をど真ん中から斬り払う。
どうにか、広がる熱波に対する逃げ道を見つけて、かすみんが致命傷を受けるのは免れたけど──
「リム…オン…」
ブリムオンが崩れ落ちた。
かすみ「……っ……」
やっと落ち着いたフィールドでは──先ほど“マジカルフレイム”で戦闘不能になったツンベアーが横たわり、“ロックブラスト”で弾き飛ばされたサニゴーンが気絶して転がっている。
「ガドーンッ」
そんな中、目の前でくねくねと身をくねらせているズガドーンと、かすみんの間に割って入るように、
493 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:13:56.73 ID:w+jDVHjQ0
「カインッ!!!」
ジュカインが割り込んでくる。
せつ菜「……そのジュカイン、よく育てられていますね……ウルトラビースト2匹との攻防の中心にいながら、未だに主人を守るために前に立っている」
かすみ「……」
せつ菜「ですが……力不足です。……ウルトラビースト2匹の力には及ばない。……しずくさん、計算高い貴方も……最後の最後でつく陣営を間違えたようですね……」
しずく「……」
せつ菜「2対1なら勝てると思いましたか?」
しずく「……はい、そう思っていました。──そして、今も……思っています……!!」
「ロズレッ!!!!」
ロズレイドがしず子の言葉と共に、ジュカインの前に踊り出した。
せつ菜「!? ロズレイドが単身……!?」
ズガドーンとの相性がすこぶる悪いロズレイドが前に飛び出してくるのは、さすがのせつ菜先輩も予想外だったらしく、一瞬判断が遅れる。
ロズレイドは両手の花をズガドーンに向けて、
しずく「“わたほうし”!! “どくのこな”!!」
「ロズレィッ!!!!」
2つの花から、それぞれ別の技をズガドーンに向かって、放出する。
せつ菜「悪あがきを……!! “マジカルフレイム”!!」
「ガドーーンッ」
「ロズレッ…!!!」
至近距離から“マジカルフレイム”で焼かれて、ロズレイドが戦闘不能になる──けど、
かすみ「ダストダス!! “ベノムトラップ”!!」
「──ダストダァァスッ!!!!!」
ボールから飛び出したダストダスが、“どく”状態の相手にだけ効く毒霧を噴射する。
「ガ、ドォーーンッ」
“わたほうし”と“ベノムトラップ”によって、ズガドーンの動きが鈍った瞬間──
「ガァァァァァーーーーーッ!!!!」
上空から、鳴き声が響く。
せつ菜「なっ……!?」
かすみ「さぁ、かましてやってください、アーマーガア!!」
「ガァァァァァァ!!!!!!」
「──ジ、ジジジジ」
上空から突っ込んできたアーマーガアが、“ボディプレス”でデンジュモクに向かって突っ込む──と同時に、デンジュモクの足元にヒビが入る。
せつ菜「……!?」
かすみ「実はかすみん……まだ得意な戦法があるんですよ……!」
494 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:15:02.04 ID:w+jDVHjQ0
その亀裂はどんどん大きな亀裂となり──
かすみ「動かない相手になら特に有効──落とし穴作戦ですっ!!」
「──グマァァァァァァ!!!!!!」
「──ジジジジ」
せつ菜「落とし穴……!?」
穴の中からマッスグマが雄叫びをあげる。それと同時に、せつ菜先輩ごと巻き込んで地面が崩落を始めた。
せつ菜「くっ……!?」
せつ菜先輩は軽い身のこなしで、その場から飛び退きますが──大きな巨体のデンジュモクはそうもいかない……!
「──ジ、ジジジジ」
せつ菜「こんな巨大な穴、いつから……!?」
しずく「最初からですよ」
せつ菜「最初から……!?」
かすみ「逃げてるように見せかけて──せつ菜先輩の足元にはずっと穴を掘って追いかけるマッスグマがいたんですよ!!」
崩落する地面に足を取られ、さらに上からアーマーガアの“ボディプレス”を受け、体勢を崩したデンジュモクの巨体が倒れ始める。
せつ菜「デンジュモクッ!! “ほうでん”!!」
「──ジジジジジジジ!!!!」
「ガァァァァァッ…!!!!!」「グマァァァァッ…!!!?」
“ひらいしん”で吸い寄せる前に、直接電撃を浴びせられたアーマーガアとマッスグマが気絶して動きを止める。
だけど、もうバランスを崩したデンジュモクに、攻撃を回避する術はないし──
「ガ、ドォォーーーーンッ」
動きの鈍ったズガドーンじゃ、もうサポートも間に合わない……!
かすみ「ダストダス!! “にほんばれ”!!」
「ダストダァァァス!!!!」
降っていた雨をダストダスが再度晴らし──
「カィィィンッ!!!!!」
ジュカインが、大地を踏み切って──飛び跳ねた。
雲の切れ間から、差し込む陽光の帯の中──太陽の光を輝く剣に集束して、
かすみ「“ソーラーブレード”ォォォォォッ!!!!」
「カィィィィィィィィィンッ!!!!!!!!!」
バランスを崩し傾くデンジュモクの体を──頭から足の根本まで一直線に斬り裂いた。
「──ジ、ジジジジ」
最大威力で斬り裂かれたデンジュモクは──そのまま、ゆっくりと大地に崩れ落ちたのだった。
495 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:16:07.56 ID:w+jDVHjQ0
かすみ「やったぁ!! ナイスだよ、ジュカイン!!」
「カァァインッ!!!!」
が、喜ぶのも束の間──ボォンッ!! と音を立てて、ジュカインが爆炎と共に吹き飛ばされた。
「カィンッ…!!!?」
かすみ「ジュカイン……!?」
爆発に吹き飛ばされ、地面を転がったジュカインは──
「カ、ィンッ…」
ついに戦闘不能になってしまった。
かすみ「じ、ジュカイン……!」
せつ菜「……確かに、デンジュモクを倒したのはお見事でした……。……ですが、いくら動きが鈍っていても、他のポケモンを攻撃している間に炎で狙い撃つのは容易いことです……!!」
「ガドォーーンッ」
かすみ「だ、ダストダス……!!」
「ダストダァスッ!!!!」
ダストダスが、腕を伸ばしてズガドーンを拘束する。
せつ菜「……“にほんばれ”のサポートをする時間で、ズガドーンを拘束するべきでしたね。尤もそれでは、ジュカインの“ソーラーブレード”が間に合いませんでしたが」
そう言うと同時に──
「ガドーーーン」
ダストダスに拘束されているズガドーンの頭が──ポロリと落ちる。
かすみ「……!?」
せつ菜「ですが……ウルトラビースト2匹相手に、相討ちまで持っていったことは……素直に評価しますよ。──“ビックリヘッド”」
ズガドーンの頭が膨張し、爆発──しようとした瞬間。
──パァァァァンッ!!!! と音を立てて、落ちたズガドーンの頭が、水の弾丸に撃ち抜かれた。
せつ菜「……え……?」
撃ち抜かれた頭は不発し、
「ガ、ドォン」
自身のエネルギーの大部分を内包する頭部を撃ち抜かれたことによって、ズガドーンの体も崩れ落ちた。
せつ菜「……な……に……?」
さすがに何が起こったのか理解出来なかったのか、せつ菜先輩が驚きで目を見開く。
しずく「……せつ菜さん。私の手持ちには──インテレオンがいるんですよ。遠方にアーマーガアが運び出し、そこから“ねらいうち”にさせてもらいました」
せつ菜「インテレオン……? インテレオンはさっき戦闘不能にしたはずです……!」
しずく「ええ、そうですね」
そう言いながら、しず子が手の平にボールを乗せて、せつ菜先輩に見せつける。
496 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:17:57.43 ID:w+jDVHjQ0
しずく「──この子が、本当に……インテレオンなら……ですが……」
せつ菜「は……?」
そう言いながら、しず子が戦闘不能になって、フィールドに倒れているロズレイドとツンベアーをボールに戻す。
かすみんも倣うように……ジュカイン、マッスグマ、サニゴーン、ブリムオン──そして、“アーマーガア”をボールに戻した。
せつ菜「……え……あ、アーマーガアはしずくさんのポケモンではなく、かすみさんのポケモン…………?」
かすみ「一時的に、ですけどね」
せつ菜「一時的に……まさか……戦闘前に……交換していた……? じゃあ、しずくさんの最後のポケモンは……!?」
しずく「せつ菜さんが、かすみさんの手持ちを把握していなくて……助かりました」
……そう、こんなことが出来るポケモンは──特性“イリュージョン”を使えるポケモンしかいない。
せつ菜「……ゾロ……アーク……?」
かすみ「……純粋なバトルじゃ、せつ菜先輩の方が、私たち二人より強いかもしれませんけど……騙し合い化かし合いでは、かすみんたちの方が1枚上手だったようですね」
せつ菜「…………」
せつ菜先輩は一瞬黙り込みましたが、
せつ菜「…………はは……ははは……あはははははははっ!!」
すぐに大きな声で笑いだした。
せつ菜「確かにすごいです……!! こんな戦法を取ってくるなんて、考えてもいませんでした……仮に私が貴方たちの立場だったとしても、思いつかなかったと思います……。一人のトレーナーとして……素晴らしかったと賞賛したいです。……ですが──」
「────」
「ダストダァ…ッ」
ダストダスが──突然崩れ落ちる。
かすみ「ダストダス……!?」
せつ菜「……まだ、私には……ウルトラビーストがもう1匹残っています……」
「────」
この離れた距離から一瞬で肉薄し、ダストダスを斬り裂いたポケモンは──小さな折り紙のような見た目をしたウルトラビースト。
かすみ「……カミツルギ……」
せつ菜「……本当に、賞賛に値します。……ですが、貴方たちの負けです」
かすみ「…………っ」
どうする……どうする……。
本当の本当に私の手持ちは1匹も残っていない……。
せつ菜「覚悟は……出来ていますね……」
「────」
カミツルギがこっちに、剣先を向けてくる。
直後──
497 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:21:37.82 ID:w+jDVHjQ0
「────」
──パァンッ!! と音を立てながら、音速で飛んできた水の弾丸が、カミツルギによって斬り裂かれた。
それと同時に、
しずく「かすみさん、逃げるよ!!」
かすみ「しず子……!」
しず子が私の手を引いて、走り出す。
せつ菜「この状況でまだ、逃げられると思っているんですか……?」
「────」
カミツルギがものすごいスピードで追いかけてくるけど……そんなカミツルギを狙い撃つように、連続で水の弾丸が飛んでくる。
せつ菜「……本当の本当に、悪あがきですね……」
「────」
せつ菜先輩はゆっくり私たちの後を追いながら、カミツルギは音速の水の弾丸を、それよりも速い斬撃で斬り払っていく。
しずく「まだ……まだインテレオンがいるから……!! まだ、負けてないから……!!」
かすみ「……しず子」
しずく「私は……諦めない……!! 諦めないことを……今まで何度もかすみさんから教えてもらったから、絶対に諦めない……!!」
そう言って握られた、しず子の手は──震えていた。
しずく「二人で生きて帰るって約束したもん……! だから、だから……!!」
だけど──激しい戦闘の後で、体力が限界だったのかもしれない。
しず子が足をもつれさせ、
しずく「あっ……!?」
──転んだ。
「────」
背後に迫るカミツルギ。
かすみ「しず子っ!!」
私は咄嗟に、転んだしず子に覆いかぶさり、カミツルギからの攻撃の盾になるように、跳び付こうとした──のに。
しず子は私の腕を引っ張りながら、自分は身を捻り、私が跳び付く勢いを利用して、まるで合気道のような方法で、逆に私を自分の背後に投げ飛ばした。
かすみ「……っ!?」
私は地面を滑る。
すぐに身を起こして振り返るけど、
「────」
もう、カミツルギがしず子に向かって、刃を振り上げていた。
498 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:23:16.13 ID:w+jDVHjQ0
しずく「……護身術……まさか、初めて使う相手が──かすみさんだとは思わなかったよ」
しず子はそう言って、笑った。
💧 💧 💧
──刃が迫る。
もうこの距離は絶対に避けられない。でもいいんだ。かすみさんを守れるなら。
それに私──せつ菜さんを、傷つけちゃったから……。
みんなを助けるためとはいえ……苦しんでいるせつ菜さんを、利用することを選んだ悪い子だから……。
もしその報いを受けなくちゃいけないんだとしたら──それは私の役目だから。
かすみ「──しず子ぉぉぉぉぉっ!!!!!」
しずく「ばいばい……かすみさん。……大好きだよ……」
背中でかすみさんが叫ぶ自分の名前を聴きながら──私はお別れの言葉を呟いて──目を閉じた。
…………。
…………。
…………。
あれ……?
おかしいな……。……痛みがない。
もしかして……痛みを感じる暇もないくらい……一瞬で死んじゃったのかな……?
私がゆっくり目を開けると──
しずく「……え……」
私の目の前には、
かすみ「う……そ……」
みかん色の髪の女性と、青色の波導を纏ったポケモンが居た。
せつ菜「……なん……です……って……?」
この地方最強のトレーナー──オトノキ地方・チャンピオン。
千歌「……」
「グゥォ」
千歌さん、その人だった。
499 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:24:13.01 ID:w+jDVHjQ0
🍊 🍊 🍊
千歌「……しずくちゃん、平気?」
しずく「……は、はい……」
千歌「そっか、よかった。……下がってて」
「グゥォ」
ルカリオが波導の剣で受け止めたカミツルギの刃を振り払う。
そして私は──せつ菜ちゃんを見据える。
せつ菜「う、動かないでください……!!」
千歌「それは聞けないかな」
せつ菜「動くなっ!! カミツルギ! “いあい──」
千歌「“いあいぎり”」
「グゥォッ」
「────」
ルカリオの神速の波導が──カミツルギを一瞬で斬り裂き、カミツルギはその場に崩れ落ちた。
せつ菜「う……そ……」
せつ菜ちゃんが膝をつく。
かすみ「す、すご……」
しずく「な、何も見えなかった……」
せつ菜ちゃんが、膝をついたまま、拳を握りしめる。
せつ菜「…………」
千歌「せつ菜ちゃん、立って」
せつ菜「……え」
千歌「まだ、ポケモン……居るでしょ?」
せつ菜「…………!」
千歌「大切な……“せつ菜ちゃんのポケモンたち”が、まだいるでしょ?」
せつ菜「…………」
私がどうしてここまで来たのか、それは──
千歌「あのとき……出来なかったバトル、しに来たよ」
私はそう言いながら、バッグから──マントを取り出し、それを羽織る。
せつ菜「──チャンピオン……マント……」
千歌「そうだよ。……オトノキ地方のチャンピオンの証……チャンピオンマント」
せつ菜「……それを羽織る意味……わかっているんですか……!?」
千歌「わかってるよ」
意味、それは──このマントを羽織ってするバトルは、いついかなるモノであったとしても──オトノキ地方の頂点を決める、正式なチャンピオン戦となるということ。
500 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:24:52.29 ID:w+jDVHjQ0
せつ菜「わ、私が貴方に何をしたのか、理解して──」
千歌「んー、それはもう、この際どうでもいいや」
せつ菜「……!」
千歌「今更私たちが語るのは、言葉じゃなくていいよ。……ポケモンバトルで語ろうよ」
せつ菜「……」
千歌「私が勝ったらチャンピオン防衛。せつ菜ちゃんが勝ったら──今日からせつ菜ちゃんがオトノキ地方のチャンピオンだよ」
せつ菜「…………」
せつ菜ちゃんが、腰からボールを外して手に持った。
千歌「ありがとう」
──あのとき、私が未熟だったせいで、伝えられなかったことを伝えに……ここに来たから。
オトノキ地方のチャンピオンとして──誰よりも、ポケモンバトルを愛する……一人のポケモントレーナーとして。
千歌「──オトノキ地方『チャンピオン』 千歌!! 行くよ、せつ菜ちゃん……!!」
今度はちゃんと──伝えてみせるから……!!
501 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/01(日) 12:25:57.21 ID:w+jDVHjQ0
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かきこんでいます
でんげんを きらないでください...
【ウルトラキャニオン】
口================== 口
||. |○ o /||
||. |⊂⊃ _回/ ||
||. |o|_____. 回 | ⊂⊃| ||
||. 回____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||.○⊂⊃ | ○ |‥・ ||
||. | |. | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ||
||. | |. | | | ||
||. | |____| |____ / ||
||. | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o ||
||. | | | | _. / : ||
||. 回 . |_回o | | : ||
||. | |  ̄ |. : ||
||. | | .__ \ : .||
||. | ○._ __|⊂⊃|___|. : .||
||. |___回○__.回_ _|‥‥‥: .||
||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o‥| | | ||
||. / | | | ||
||. / o回/ ||
口==================口
主人公 かすみ
手持ち ジュカイン♂ Lv.78 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
ゾロアーク♀ Lv.73 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
マッスグマ♀ Lv.72 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
サニゴーン♀ Lv.71 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
ダストダス♀✨ Lv.72 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
ブリムオン♀ Lv.72 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:242匹 捕まえた数:15匹
主人公 しずく
手持ち インテレオン♂ Lv.66 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
バリコオル♂ Lv.65 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
アーマーガア♀ Lv.65 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
ロズレイド♂ Lv.65 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
サーナイト♀ Lv.65 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
ツンベアー♂ Lv.65 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
バッジ 0個 図鑑 見つけた数:212匹 捕まえた数:23匹
かすみと しずくは
レポートに しっかり かきのこした!
...To be continued.
502 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 02:32:28.29 ID:VUrl28Mg0
■Intermission✨
──やぶれた世界にて、ゲートの維持を続けていると……。
果南「真姫さん、こっちだよ」
真姫「……やぶれた世界……初めて来たけど、想像以上におかしな場所ね……」
真姫さんを先頭にした5〜6人ほどの集団を、果南がこのゲートまで案内してくる。
鞠莉「チャオ〜真姫さん」
ダイヤ「こんな状態のままで、恐縮ですが……」
わたしたちは、珠経由でディアルガとパルキアに指示を送りながら、挨拶をする。
彼女の後ろには、数人のリーグ職員と……四十代前半くらいの夫婦の姿があった。
鞠莉「そちらの人たちが事前に聞いていた……」
真姫「ええ、そうよ」
事前に聞いていた──ゲート先に通すことになっている人たちだ。
わたしが軽く会釈すると、ご主人は会釈を返し、奥様は深々と頭を下げてくれた。
真姫「鞠莉、ダイヤ、果南。ゲートの維持、お願いね」
ダイヤ「はい、お任せください」
鞠莉「みんなが帰ってくるまで維持するのが、わたしたちの役目だからね♪」
果南「何かあったときは私が対処するから、こっちは任せて」
真姫「ありがとう。それじゃ、今からこのゲートを潜って……世界を移動する。貴方たちは絶対に私たちから離れないようにして。その代わり、貴方たちの身の安全を最優先に守ることを、私含め、ポケモンリーグが全面的に保障するわ」
真姫さんが夫婦に向かってそう伝えると──彼らはその言葉に頷く。
真姫「行きましょう……!」
そして真姫さんたちは、ゲートを潜り──侑たちの向かった世界へと、飛んでいった。
ダイヤ「うまく……行けばいいのですが……」
鞠莉「こればっかりは、わたしたちにはどうすることも出来ないからね……」
果南「とにかく今は私たちに出来ることをしよう」
3人で頷き合う。
果南「って、言っても……この感じだと私の役割はあんまりなさそうだけどね〜」
確かに果南の言うとおり、ダイヤもわたしも、ディアルガとパルキアのコントロールが大分安定している。
このまま何事もなければ、ゲート維持自体は問題なく最後までこなせそうだ──と思った、まさにそのときだった。
「──よっと……なーるほどねー。ここ、やぶれた世界ってやつだよね。こーゆーカラクリだったのかー」
──人影がゲートから、こちらの世界に躍り出てきた。
一瞬、今入っていった真姫さんたちが、何かの事情ですぐに引き返してきたのかと思ったけど──
その人物の容姿は──明るい金髪をポニーテールに結った少女の姿をしていた。それはまさに……数日前、会議で確認した姿そのもので、
503 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 02:33:19.88 ID:VUrl28Mg0
愛「表と裏の狭間にある世界から、ディアルガ、パルキア、ギラティナの力で、無理やり空間直通ゲートを伸ばすとは……よー考えたねー」
わたしたちの敵である──ミヤシタ・愛、本人だった。
ダイヤ「……っ!?」
鞠莉「な……!?」
果南「ラグラージッ!!!」
「──ラァグッ!!!!」
果南が一瞬で攻撃態勢に移行し、繰り出したラグラージが飛び掛かる。
が、
「リシャァーーンッ」
愛「まぁまぁ、そー焦んないでよー」
「ラ、ラァァァグッ…!!!」
愛の傍らに居るリーシャンが一鳴きすると、作り出された音の障壁でラグラージが弾き返される。
果南「な……!? 止められた……!?」
愛「……もっとゆっくり楽しもーよ。……愛さんが遊んであげるからさ」
愛はそう言いながら──不敵に笑った。
………………
…………
……
✨
504 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:30:44.67 ID:VUrl28Mg0
■Chapter066 『決戦! チャンピオン・千歌!』 【SIDE Setsuna】
──ドクン、ドクンと心臓が脈打ち、口から飛び出してきそうだった。
もう二度と、戦うことがないと思っていたのに。あれで──あの戦いで終わりだと、全て終わってしまったと……思っていたのに。
千歌さんが──私の目の前に居た。
今の私に勝てるの?
ウルトラビーストもなしに、彼女に……勝てるの……?
『特別』のない私が……『特別』な彼女に、勝てるの……?
そこまで考えて──私は頭を振った。
やめよう。そんなことを考えても意味はない。
ギュッとボールを握り込む。
『特別』がなくても、私は彼女に何度も挑んだ。
そして何度も負けて、何度も何度も悔しくて泣いて、それでも何度も何度も何度も彼女の戦いを見返して、考えて、分析して……次は勝てるようにと、そう自分に言い聞かせて、私は──私たちは強くなった。強くなってきた。
私のトレーナー人生は──千歌さんを倒すためだけに存在していたと言っても過言ではない。
これはきっと、千歌さんの最後の気まぐれだ。
もう二度と巡ってこない、本当の本当に最後のチャンス。彼女を超えるための──最後のチャンスなんだ。
せつ菜「……すぅ……。……はぁ……」
息を吸って、吐いて──ボールを握り込んだ。
せつ菜「行くよ……! ゲンガー!!」
「──ゲンガァァーーーッ!!!!」
ボールからゲンガーが飛び出す。
せつ菜「“シャドーボール”!!」
「ゲン、ガーーーッ!!!!」
フィールドに飛び出すと同時に発射された“シャドーボール”が猛スピードでルカリオに向かって飛んでいく、だが、
千歌「……“はっけい”っ!!」
「グゥオッ!!!!」
千歌さんとルカリオが“シャドーボール”に掌打を合わせるように放つと、パァンッと音を立てながら、“シャドーボール”が霧散する。
大丈夫、これくらいのことは当たり前。やってくるに決まってる。
だけど、私が次の攻撃に入ろうと思ったときには、
「──グゥォッ!!!!」
ルカリオは“しんそく”でゲンガーに肉薄していた。
そして、波導の剣を構える。
──恐らく技は、“いあいぎり”。本来ゴーストタイプのゲンガーには効かない技だが、彼女のルカリオが放つ刃は実体のないものすら“みやぶる”必中の斬撃。
あまりに速過ぎる、“しんそく”の居合が、ゲンガーを捉えようとした瞬間──
千歌「……!! ルカリオッ!!」
「グゥォッ…!!!」
505 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:39:19.48 ID:VUrl28Mg0
ルカリオの刃がゲンガーにあと紙切れ1枚ほどで当たるか当たらないかの場所で、寸止めされた。
何故なら、ゲンガーが──黒いオーラを纏っていたからだ。
千歌「“みちずれ”……!」
さすが千歌さん。あの速さでありながら、咄嗟に攻撃を止められる判断力。そしてルカリオの技量。
ただ、それによって生じた隙に、
せつ菜「“あくのはどう”!!」
「ゲンガーッ!!!!」
「グゥオッ…!!!」
全方位に広がる“あくのはどう”でルカリオを吹き飛ばす。
そして、吹き飛んだことにより距離が離れた瞬間に、ゲンガーの口から、
「أ̷͕͈͈͆͊̂̀͂̾͂̃̿̂ͅن҉̱͚̬͍̘̟͎̙́̏̉̓́ا̸͈̞̭͎̰͚̥̮̮̱͔̄̓̌͒͂̇́́̑ ل̸̫̝͖̝̘̝͍̦̝͕̈͒̉̄͛ع̴͎͇̗̯͉̳̰̫͚̘͇͙̽̀̄̈́̐̽̃̈́̓́̓ن̷̗̲̠͎͖͖͖͉͂̃̈́̋̌̀̐̑̆͐͊ ي̶͙̙͖̙̘͔͖̬̰͙́̊̂͂̐̃م҉͔͚̳̦̗̍̀̀̌̿̚ك҈̖͍͙͍̞̩̾͂͒̈́̌̿̍̚ͅن҈̰̫͍͙͓̬͚̍̉͊̿̌̚ك҉̲̥̥̮̗̫͕̟̋̔̈̇̅̓́̀̍͆ ا҉̞͙̖͍̭̈̍̏̽ͅل̷͈̫̮͈̙͔̖̠̞͒̽̍͑̎̓̑̉̈͗͊ق̸̩̤̝͓̥̜̜̝̠̐͊͛̍̔̈́̿̍͋̓ي̶͖͎͚͇̥̙̩̊̔͂̅̿ا̴͔̣̗̲̫̳̠̫̙̦̃̉̓͛ͅͅم̸̟͓͇͚̯̜͓̥̮̞͚͆̑̓̌ ب҈͚͎͓̯͖̥̓̈̅̆ͅه̷͚͉̦̝̥̘͉̩͙̥̆̌͂̄̑́̊̽̐͑」
この世のものとは思えないような、呪いの歌が流れだす。
千歌「……! ルカリオ、戻──」
せつ菜「“くろいまなざし”!!」
千歌さんが一瞬で、“ほろびのうた”に気付きルカリオを戻すためにボールを投げるが、私はそれよりも早く“くろいまなざし”で交換を封じる。
交換は封じた……!! これで、千歌さんのエースを同士討ちに──
「グゥォッ!!!」
と思った瞬間、ルカリオが“しんそく”により再び一瞬でゲンガーの懐に潜り込み、
千歌「“ともえなげ”!!」
「グゥォッ!!!」
波導を纏った手でゲンガーの腕を掴みながら、真後ろに身を捨てつつ、足で押し上げるようにゲンガーを放り投げた。
「ゲンガ──」
せつ菜「……!」
“ともえなげ”によって放り投げられたゲンガーは、私のボールに勝手に戻っていく。
──相手を強制的に控えに戻させる技だ。
千歌さんはゲンガーが場から退場して“くろいまなざし”が解除されると同時に、
千歌「ルカリオ戻れ!! 行け、フローゼル!!」
「グゥォッ──」「──ゼルゥゥゥゥッ!!!!」
ルカリオを戻し、代わりにフローゼルを繰り出しながら走り出す。
せつ菜「スターミー!!」
「──フゥッ!!」
千歌「フローゼル!! “かみくだく”!!」
「ゼルゥッ!!!」
私がスターミーをボールから出すと、千歌さんは一瞬の判断で相性のいい“かみくだく”を選択指示するが、
506 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:40:05.34 ID:VUrl28Mg0
せつ菜「“かたくなる”!!」
「フゥッ!!!」
「ゼルッ…!!?」
噛み付いたフローゼルの歯がガキッと硬い音を立てる。
間髪入れず、
せつ菜「“マジカルシャイン”!!」
「フゥッ!!!」
「ゼルッ…!!!」
至近距離から激しい閃光で焼き尽くす。
ダメージを負いながら吹っ飛んだフローゼルに向かって、
せつ菜「“10まんボルト”!!」
「フゥッ…!!!」
今度はこっちが相性のいい“10まんボルト”で攻める。
千歌「“アイアンテール”!!」
「ゼルッ…!!!!」
フローゼルは吹っ飛ばされながらも尻尾を硬質化し、それを地面に突き刺し、
千歌「“いわくだき”!!」
「ゼルッ!!!!」
後ろに飛ばされている反動も利用し、てこの原理で足元の岩を砕きながら捲りあげて、盾にする。
普通なら驚いてしまうけど……千歌さんならそれくらいのことはしてくる……!!
せつ菜「それくらい、読んでます!!」
スターミーの“10まんボルト”は岩の盾に阻まれたように見えたが、岩にぶつかると沿うように回り込み、岩の後ろのフローゼルに向かってバチバチと音を立てながら襲い掛かるが──
千歌「“みずびたし”!!」
「ゼルッ!!!」
フローゼルが、巨大な球状の水の塊を目の前の岩に向かって吐き出すと、“10まんボルト”は岩の水分に吸着されるように、それ以上前に進めなくなる。
千歌「水は電気をよく通すから、水に巻き込まれると進めなくなるんだよ!」
せつ菜「……!」
確かに、導電体の水から、絶縁体である空気中に向かって放電をするのは極めて難しい。
ご丁寧に“みずびたし”にする際も、口から出している水流から感電しないように、一度口の中で球状にしてから、ある程度の水量を纏めて発射し、自身と電撃の接触部分が出来ないようにしているのも芸が細かい。
千歌「フローゼルへの電気攻撃対策は完璧だから!」
せつ菜「なら、これはどうですか!! “10まんボルト”!!」
「フゥッ!!!」
千歌「だから、効かないって!! “みずびた──」
再び放った“10まんボルト”に対して、千歌さんが再び“みずびたし”を指示しようとした瞬間──ボンッ!!! と音を立てながら、フローゼルの目の前で爆発が起きた。
「ゼルッ…!!?」
千歌「うわぁっ……!?」
507 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:41:09.24 ID:VUrl28Mg0
千歌さんは爆風でフローゼルと一緒に地面を転がりながらも、すぐに受け身を取って立ち上がる。
千歌「ば、爆発した!?」
今の“10まんボルト”は電撃による直接攻撃が狙いじゃない。
私が利用したのは放電中に起こる電熱だ。
水は電気を流せば、水素と酸素に分解される。水素は熱を加えると酸素を使って爆発的に燃焼する物質。なら、2度目の電撃による電熱で急に加熱されたら爆発するに決まっている。
吹き飛んで出来た隙に向かって、
せつ菜「“こうそくいどう”!!」
「フゥッ!!!」
スターミーが体を高速回転させながら、フローゼルに向かって突っ込んでいく。スピードアップしながらの渾身の突撃……!
せつ菜「“すてみタックル”!!」
「フゥッ!!!」
千歌「っ……! “スイープビンタ”!!」
「ゼルッ!!!」
フローゼルはすぐに体勢を立て直し、硬い尻尾でスターミーを弾き飛ばすが、
「フゥッ!!!」
弾き飛ばされても、スターミーは高速軌道で、すぐに切り返してくる。
千歌「も、もう一発っ!!」
「ゼルッ!!!」
2撃、3撃と連続で弾き返すが──高速回転しながらスターミーはどんどん速度を上げていく。
このままだと、捌ききれなくなることに気付いた千歌さんは、
千歌「“あまごい”!!」
「ゼルッ!!!!」
雨を降らせ始める。雨が降り始めると──
「ゼルッ!!!」
フローゼルは尻尾のスクリューを高速回転させながら、ものすごいスピードで動き出し、スターミーの突進を回避する。
せつ菜「……! “すいすい”……!」
“すいすい”は水中や雨の中で、自身の素早さを倍加させる特性。
さらに、
千歌「“アクアジェット”!!」
「ゼルッ!!!」
水流を身に纏い、超加速しながらフローゼルが、横回転するスターミーの丁度中央のコア部分に突撃してくる。
「フゥッ…!!!?」
せつ菜「スターミー!?」
お互いが超高速軌道で動いていることもあって、その一撃でスターミーがバランスを崩し回転しながら墜落して、突起部分が地面に突き刺さる。
508 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:42:05.73 ID:VUrl28Mg0
千歌「そこだっ!!」
「ゼルッ!!!」
その一瞬の隙を見逃さずに、尻尾を高速回転させ始めるフローゼル。あれは見たことがある──“かまいたち”の予備動作……!
スターミーはどうにか突起の先から水を逆噴射させることで、地面に刺さった体をすぐに引き抜くが、フローゼルはもう攻撃の体勢に入っていた。
千歌「“かまいたち”!!」
「ゼルッ!!!!」
せつ菜「“スキルスワップ”!!」
「フゥッ!!!!」
が、スターミーのコアが光ると同時に──スターミーがまさに目にも止まらぬスピードで、風の刃を回避した。
千歌「うそっ!?」
せつ菜「“すいすい”、貰いましたよ!!」
「フゥッ!!!!」
先ほどのさらに倍のスピードで雨の中を駆けるスターミーは、今度こそフローゼルの背後を取り、体を回転させながら突撃を炸裂させ──
千歌「“うずしお”ッ!!」
「ゼルゥッ!!!」
「フゥッ!!!?」
せつ菜「な……っ!?」
──たと思ったら、巨大な水の渦がフローゼルの背後に発生し、突っ込んできたスターミーを逆に渦の中に捕えてしまった。
千歌「これでも速い相手を見切るのは得意なんだよ!!」
せつ菜「くっ……!! “こうそくスピン”!!」
「フゥッ!!!」
スターミーはすぐさま体を逆回転させ、渦を対消滅させる。
渦から解放された瞬間、
千歌「“ソニックブーム”!!」
「ゼルッ!!!!」
フローゼルの尻尾から、音速の衝撃波が飛んでくる。
せつ菜「“ちいさくなる”!!」
「フゥッ!!!!」
スターミーが指示と共に一気に体を小さくし、攻撃をギリギリ回避する。
千歌「く……!」
間一髪の回避。
スキルスワップにより、フローゼルの特性が“しぜんかいふく”に変わってしまったせいか、速度の面でスターミーに大きく軍配が上がっていたことも大きいだろう。
私はスターミーの回避を確認し、間髪入れずにボールを投げ込む。
せつ菜「ドサイドン!!」
「──ドサイッ!!!!」
509 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:44:00.70 ID:VUrl28Mg0
ドサイドンがボールから飛び出すと同時に、大きな腕をフローゼルに向かって振りかぶる。
「ゼルッ…!!?」
千歌「……っ!」
せつ菜「“アームハンマー”!!」
「ドサイィィッ!!!!」
振り下ろされる重量級の拳に対して、
千歌「しいたけ!! “コットンガード”!!」
「──ワッフッ!!!」
ボールから飛び出したトリミアンが、フローゼルを庇って、攻撃を受け止める。
ボフンと音がして、“ファーコート”に打撃が吸収される。
そして、その隙に、
千歌「フローゼル!! “ハイドロポンプ”!!」
「ゼルゥゥゥッ!!!!」
トリミアンの影から、フローゼルが“ハイドロポンプ”でドサイドンを攻撃してくる。
……が、
「ドサイッ…!!!」
ドサイドンはダメージを受けながらも、“ハイドロポンプ”を耐えていた。
ドサイドンはもともとタフな上に、特性は“ハードロック”。弱点タイプのダメージを軽減する特性なのが活きている。
さらに、ドサイドンの体からキラキラと輝く鉱物のようなものが舞い散る。
千歌「……!? や、やばっ!?」
せつ菜「“メタルバースト”!!」
「ドサイッ!!!!」
「ゼルゥッ!!!?」
さらにそのダメージを、はがねのエネルギーに変換し、フローゼルに叩きつけた。
「ゼ、ゼルッ…」
千歌「戻って、フローゼル!!」
さすがに、耐えきれず動けなくなったフローゼルをボールに戻しながら、
千歌「しいたけ!! “アイアンテール”!!」
「ワッフッ!!!」
トリミアンが硬質化した尻尾をドサイドンに突き刺してくる。
せつ菜「そんな威力じゃ、ドサイドンの防御は貫けませんよ!!」
「ドサイッ!!!!」
お返しとばかりに、ドサイドンが“アームハンマー”を叩き付けるが、
またしても──ボフンッと音を立てながら、強力な打撃がいとも簡単に吸収される。
千歌「それを言うなら、こっちも防御力が自慢だよ!」
「ワッフ!!!」
510 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:44:38.42 ID:VUrl28Mg0
さっきの高速軌道の戦いとは打って変わって、今度はどっしりと構えた物理戦が始まる。
──が、そんな悠長にやるつもりは最初からない。
せつ菜「そうは言っても……得意なのは物理攻撃に対してだけですよね!! “アームハンマー”!!」
「ドサイッ!!!!!」
三たび振り下ろされる、重量級の拳が──
「ギャウッ!!!?」
千歌「なっ!!?」
今回は毛皮に衝撃を吸収されずに、トリミアンを押しつぶす。
そして、怯んだところにドサイドンが手の平を突き付ける。
せつ菜「“がんせきほう”!!」
「ドッサイッ!!!!!」
ドサイドンの手の平に空いた穴から、巨大な岩石が発射され、
「ギャウンッ!!!!」
砕ける岩石がトリミアンを吹き飛ばした。
千歌「し、しいたけ!! 戻れ!!」
これで2匹戦闘不能……!!
千歌「……防御しきれなかった……? ……違う、防御力で受けてなかったんだ」
せつ菜「そうです……“ワンダールーム”です」
「フゥ!!」
小さくなり、いつの間にか私の足元まで戻ってきていたスターミーが鳴き声をあげる。
体を小さくし、“ほごしょく”によって姿を眩ませていたスターミーが使っていたのは、“ワンダールーム”という技。
フィールド上にいる全てのポケモンの防御と特防を入れ替えるという不思議な効果を持つ。
それによって“ファーコート”を無効化し、“コットンガード”の上から押しつぶしたというわけだ。
せつ菜「さぁ……次のポケモンを出してください……!!」
千歌「……その前に」
せつ菜「……? なんですか……」
千歌「ドサイドン、戻した方がいいよ」
せつ菜「……はい? 何を──」
何を言っているのかと思った瞬間、
「ドサイッ…!!!」
ドサイドンの巨体が崩れ落ちた。
せつ菜「な……!?」
千歌「しいたけがドサイドンに突き刺してたのは──ただの“アイアンテール”じゃないよ」
一瞬何かと思ったが、
511 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:45:11.07 ID:VUrl28Mg0
せつ菜「……“どくどく”……!」
すぐに思い至った。ひっそりと刺した尻尾から“どくどく”を注入されて、“もうどく”状態にさせられていたというわけだ。
私は言われたとおり、ドサイドンをボールに戻す。
せつ菜「……やるじゃないですか」
千歌「せつ菜ちゃんこそ!!」
スターミーが再び“ほごしょく”で姿を消す中、お互いが次のポケモンのボールをフィールドに放つ──
👑 👑 👑
安全圏に避難してきたかすみんたちは、千歌先輩とせつ菜先輩のバトルを見て言葉を失っていました。
かすみ「……一つ一つの判断が早過ぎます……」
しずく「……これが……最強クラスの人たちの戦い……」
かすみん……自分が強くなった自覚はありますけど……このレベルのバトルはまだ出来る気がしません……。
かすみ「……というか、せつ菜先輩……ウルトラビーストで戦ってたときより、強くない……?」
「──そういうことなのよ、要は」
かすみ「え?」
声がして振り返ると──
善子「……千歌がここに来た理由は、きっとそういうことなのよ」
しずく「ヨハネ博士……!」
ヨハ子博士はかすみんたちに近付いてきて──ギューッと抱きしめてきた。
善子「二人とも……無事でよかったわ……」
かすみ「よ、ヨハ子博士……」
しずく「ヨハネ博士……ご心配をお掛けしました……」
善子「無事ならいいわ」
ヨハ子博士はそう言いながら、かすみんたちの頭を撫でる。
かすみ「あ、あのあの……それでそういうことって……どういうことですか……?」
善子「……見てればわかるわ」
しずく「見てれば……わかる……?」
ヨハ子博士はそれ以上多くは語らなかった。……見てればわかるって、どういうことだろう……?
善子「頼んだわよ……千歌」
512 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:45:59.46 ID:VUrl28Mg0
🎙 🎙 🎙
千歌「ルガルガン!! “ドリルライナー”!!」
「──ワォンッ!!!!」
体を回転させながら猛突進してくるルガルガンに対して、
せつ菜「エアームド!! “てっぺき”!!」
「──ムドーーーッ!!!!」
こちらはエアームドを繰り出して、攻撃を真っ向から受ける。
──ギャギャギャと耳障りな音が鳴り響き、ギィンッ!! と音を立てながらルガルガンを弾き返す。
弾かれたルガルガンに向かって、
せつ菜「スターミー!! “ハイドロポンプ”!!」
「フゥッ!!!」
小さい姿かつ“ほごしょく”によって潜伏しているスターミーが“ハイドロポンプ”でルガルガンを狙撃する。
ルガルガンに対して相性のいい大技のはずだが、
千歌「見つけた!! “ドリルライナー”!!」
「ワォンッ!!!」
むしろ、千歌さんは──“ハイドロポンプ”に真っ向から突っ込んできた。
ルガルガンは激流を真っ向からドリルのパワーで穿ちながら、突っ切ってくる。
せつ菜「スターミー!! 一旦退避しなさい!!」
「フゥッ!!!」
スターミーは攻撃を中断し、再び“ほごしょく”で姿を消す。
千歌「逃がしちゃダメ!!」
「ワォンッ!!!」
スターミーが姿を消し、岩に突っ込んだルガルガンはそのまま弾けるように、スターミーの追跡を始める。
せつ菜「エアームド!! “フリーフォール”!!」
「ムドーーーッ!!!!」
だが、そんなことは許さない……!
エアームドがルガルガンに向かって、鉤爪を構え上から急襲した──瞬間、
「ピィィィィィッ!!!!!!」
「ムドーッ!!!?」
ムクホークがエアームドに向かって突っ込んできた。
そのまま大きな爪でエアームドを地面に押し付けながら──
千歌「“インファイト”!!」
「ピィィィィィィッ!!!!!!」
513 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:46:44.32 ID:VUrl28Mg0
爪と翼と嘴を使って、猛打を叩きこんでくる。
激しい近接攻撃だが──エアームドの防御を貫くにはまだ足りない……!
せつ菜「そこです!! “ドリルくちばし”!!」
「ムドーーーッ!!!!」
攻撃に集中するあまり、防御がおろそかになっている部分を突いて、“ドリルくちばし”をムクホークの胸部に叩きこむ。
「ピィィッ…!!!!」
嘴が直撃し、ムクホークは一旦後ろに逃げたが──
すぐに、爪でエアームドを抑えつけようとしてくる。
そのとき、
「──フゥッ…!!!?」
スターミーの鳴き声が聞こえてくる。
せつ菜「くっ……!」
このムクホークの執拗な攻撃が、ルガルガンがスターミーを追いかけるための足止めだと言うのはわかっていたが、気付けば小さな小さなスターミーがルガルガンの口に咥えられていた。
ただ──いくらなんでも見つけるのが早過ぎる。
千歌「“かみくだく”!!」
「ワォンッ!!!」
せつ菜「コスモパワー!!」
「フ、フゥッ!!!!」
ガキン!! と音を立てながら、辛うじてキバを耐える。
せつ菜「“サイコショック”!!」
「フゥッ!!!!」
そして、ルガルガンの口の中にサイコパワーで1個だけキューブを作り出し、
「ワ、ワォ…!!?」
ルガルガンの口を無理やりこじ開ける。
今のうちに脱出させ──
「ピィィィィィィッ!!!!!!」
「ム、ムドーーーッ!!!!」
せつ菜「……!?」
今度はエアームドの鳴き声があがる。目を向けると、ムクホークが足でエアームドの体を掴み、低空飛行しながら引き摺り始めていた。
そのまま、ムクホークが飛び立とうとした瞬間、
せつ菜「エアームド!! “ボディーパージ”!!」
「ム、ムドォー!!!!」
514 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:47:28.43 ID:VUrl28Mg0
エアームドが掴まれていた部分の鋼の鎧をパージして、脱出する。
でも、今度は、
「フ、フゥゥ!!!!」
せつ菜「……!!」
スターミーがルガルガンの足に踏みつけられじたばたしていた。
──ルガルガンはスターミーの姿を完全に捉えている……!?
そこで、やっと気付く。
せつ菜「……しまった、“かぎわける”……!?」
相手は最初からスターミーの姿ではなく──ニオイで追っていたことに気付くが、もう時すでに遅し。
千歌「“ブレイククロー”!!」
「ワォンッ!!!」
「フゥッ…!!!?」
踏みつけていたスターミーを、防御を貫く爪撃で切り裂いたあと──
千歌「“アクセルロック”!!」
「ワンッ!!!」
「フゥゥッ…!!!?」
たてがみの岩を高速で突進しながら叩きつけられ──スターミーは戦闘不能になる。
せつ菜「く……っ! 戻りなさい、スターミー!!」
私はスターミーをボールに戻しながら──視線をエアームドに戻すと、
「ムドーーッ!!!!」
「ピィィィィィッ!!!!」
上昇して逃げるエアームドをムクホークが追いかけているところだった。
千歌「“こうそくいどう”!!」
「ピィィィィィッ!!!!!」
千歌さんの指示でムクホークが加速し──
千歌「“すてみタックル”!!」
「ピィィィィッ!!!!!」
“すてみ”による渾身の一撃が──エアームドに直撃した。
「ムドォォォッ…!!!!」
せつ菜「エアームド……!!」
あまりの破壊力に全身の鎧をばらばらに砕かれ、落下を始めるエアームドを、
「ピィィィィッ!!!!!」
515 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:48:12.97 ID:VUrl28Mg0
ムクホークが掴んで、そのまま地面に急降下を始める。
千歌「“ブレイブバード”!!」
「ピィィィィィッ!!!!!」
そのまま一直線に──エアームドごと地面に墜落し、その衝撃で地面にヒビが入る。
千歌「エアームドが硬くても、こっちのパワーの方が上だったね!」
千歌さんが胸を張って自慢げに言ってくるが、
せつ菜「……あはは、千歌さん。忘れていませんか?」
千歌「……え?」
せつ菜「私のエアームドの特性──“くだけるよろい”ですよ」
「ムドーーッ!!!!」
千歌「わ、忘れてた!?」
直後、鎧を脱ぎ去って加速したエアームドが、ムクホークの足元から飛び出し──
せつ菜「“はがねのつばさ”!!」
「ムドーーーッ!!!!」
「ピィィィィッ!!!?」
ムクホークの脳天に叩きこむ。
「ピィィッ…!!!」
脳震盪を起こしてふらつく、ムクホークに向かって、
せつ菜「“ガードスワップ”!!」
「ムドーーーッ!!!」
“くだけるよろい”で下がった自身の防御力を──ムクホークに移す。
“ガードスワップ”はお互いの防御の能力変化を入れ替える技だ。
せつ菜「エアームド──」
私がエアームドに次の指示を出そうとした瞬間、千歌さんも迎撃態勢に移る。
せつ菜「“てっぺき”!!」
千歌「させな──“てっぺき”!?」
「ワォンッ!!!!」
だが、千歌さんはムクホークへの追撃を予想していたのか、エアームドが防御を固めてきたことに面食らって驚きの声をあげる。
それと同時に、飛び込んできたルガルガンの爪を──ギィンッ!! と音立てながら、エアームドの鎧が弾き返す。
“くだけるよろい”で下がった防御は“ガードスワップ”でフォローし、さらに再び“てっぺき”で硬質化させた鎧で、ルガルガンの爪を弾く。
──そもそも、ここで千歌さんが自由に攻撃をさせてくれるはずがない。
だから、私の選択肢は最初から……防御一択。
それに──
千歌「い、今のうちにムクホーク!! 逃げ──」
もうすでに、ムクホークへの攻撃は完了している……!
516 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:49:10.98 ID:VUrl28Mg0
「ピィィィィィッ!!!!?」
千歌「……!?」
──突然、上空から落ちてきた、無数の鉄の剣が、ムクホークを斬り裂き、
「ピ、ピィィィ…」
ムクホークは戦闘不能になってその場に倒れ込む。
千歌「今の……“くだけたよろい”で砕けた破片……!?」
そうだ。最初から私の作戦は、あの場でムクホークを動けなくさえすれば、もう完了していた。
そして今のうちに、
せつ菜「エアームド!! “はねやすめ”!!」
「ムドーーー」
エアームドが地上に降り立ち、回復を始める。
千歌「っ……! “ドリルライナー”!!」
「ワォンッ!!!」
地上に落りたエアームドに向かって、ルガルガンが回転しながら突っ込んでくる。
それに合わせるように、
せつ菜「“ドリルくちばし”!!」
「ムドーーーッ!!!!」
両者のドリルの先端が真っ向からぶつかり合い、耳障りな音が周囲を劈く。
──ギャギャギャギャ!!! と大きな音を立て──ガキンッ!! という音と共に、お互いのポケモンが弾かれて、後ろに飛び退く。
せつ菜「……はぁ……はぁ……」
千歌「……はぁ……っ……はぁ……っ」
激しい攻撃の応酬に、さすがに息が切れる。それにしても……。
せつ菜「……千歌さんって、何度戦っても、いつもなにかしら前に見たことを忘れてますよね」
千歌「う……!? ……で、でも、“くだけるよろい”を攻撃に使うのは見たことなかった! 今の知らなかったもん!」
せつ菜「特性さえ知っていれば防げたはずでは?」
千歌「そーいうせつ菜ちゃんだって、私の技で見切れてないのたくさんあるじゃん!」
せつ菜「な……!? で、ですが、毎回少しずつ改善されてるじゃないですか!? 前に10番道路で戦ったときは、ほぼ見切っていたようなものです!!」
千歌「それでも、私たちもどんどん強くなるから、完全に攻略されることはないけどねっ!」
せつ菜「強くなってるのは私たちだって同じです!! いつか──いえ、今日こそ、完全に攻略してみせますよ!! エアームド!!」
「ムドーーッ!!!」
エアームドが戦闘不能になったムクホークの傍に突き刺さっている鉄の刃を一本引き抜き嘴に咥える。
その動作の隙に、
千歌「“アクセルロック”!!」
「ワォンッ!!!!」
517 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:49:49.63 ID:VUrl28Mg0
ルガルガンが飛び出してくる。
──ギィンッ!! ルガルガンのタテガミの岩と、エアームドの鉄の刃が鍔迫り合う。
パワーが拮抗する中、
せつ菜「引きなさい!」
「ムドォ!!!」
エアームドが身を引く、
「ワォッ…!!?」
急に身を引かれて、ルガルガンが一瞬前につんのめるが、
千歌「“ストーンエッジ”!!」
「ワ、ワォンッ!!!」
千歌さんはよろけて前に踏み込む動作を、咄嗟の判断で攻撃に変換する。
ルガルガンの踏み込みと同時に鋭い岩が飛び出してくるが、
「ムドォ!!!」
エアームドはその岩を足蹴にして、空に飛び立つ。
が、ルガルガンはすぐに自身のタテガミの岩で、“ストーンエッジ”を割り砕き、
千歌「“ロックブラスト”!!」
「ワンッ!!!」
砕いた岩を投げ飛ばしてくる。
せつ菜「“きりさく”!!」
「ムドォーーーッ!!!」
その岩を鉄の刃で斬り裂きながら、
せつ菜「“てっぺき”!!」
「ムドォッ!!!」
さらに体を硬質化しながら、エアームドは岩石の弾丸の中、ルガルガンに向かって急降下を始める。
せつ菜「“ボディプレス”!!」
「ムドーーーッ!!!!」
「ワォンッ!!!?」
硬い鉄の鎧ごと、上空からルガルガンに叩きつけた。
ここまでのダメージも含め、これが決め手となり、
「ワ、ワォン…」
崩れ落ちるルガルガン。
せつ菜「わ、私たちの勝ちです!!」
千歌「……残念、相打ちだよ」
千歌さんの言葉と共に──
518 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:50:44.81 ID:VUrl28Mg0
「ムドォ…」
エアームドも崩れ落ちた。
せつ菜「エアームド……!?」
驚いて、倒れたエアームドを見ると──胸にルガルガンのたてがみの岩が折れて、突き刺さっていた。
せつ菜「か、“カウンター”……!」
千歌「これ折れるとまた生えるまで時間かかるんだけどねー……ま、仕方ない! せつ菜ちゃん相手にたてがみの岩一本の犠牲なら上出来だよ! 戻れ!」
そう言いながら、千歌さんはルガルガンとムクホークをボールへ戻す。
せつ菜「……戻ってください」
私も戦闘不能になって倒れているエアームドをボールに戻す。
千歌「さぁ、次だよ!!」
千歌さんがボールを構える。
せつ菜「望むところです……!!」
私も次のボールを構えたところで、
千歌「──せつ菜ちゃん」
千歌さんが私の名前を呼んだ。
せつ菜「なんですか?」
千歌「……楽しいね……!」
せつ菜「え……」
千歌「せつ菜ちゃんとのバトルは……予想外のことがたくさんあって……! 知らない技が、戦術がたくさんあって……! 何度戦っても、ドキドキワクワクする! ──せつ菜ちゃんは?」
せつ菜「……私は」
私は──
──胸が……ドキドキしていた。
でも、最初の動悸とは全然違う。
これは、このドキドキは──
せつ菜「──わけ……ないじゃないですか……」
このドキドキの正体なんて──そんなの……前から知っている。
せつ菜「──……楽しくないわけ……ないじゃないですか……っ!!」
千歌「うんっ!! そうだよねっ!!」
何度も何度も感じてきたこの高揚感。
そうだ、私は……ポケモンバトルの、この感覚がずっとずっと……大好きだったんだ。
519 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:51:28.82 ID:VUrl28Mg0
千歌「私も今、さいっこうに楽しい!! だからさ、もっともっと楽しいバトル、しようよっ!!」
せつ菜「望むところですっ!!」
千歌「行くよ、ルカリオ!!」
「──グゥォッ!!!」
せつ菜「行きますよ、ゲンガー!!」
「──ゲンガーーッ!!!」
私の“メガバングル”と、千歌さんの“メガバレッタ”が同時に光り輝く。
せつ菜・千歌「「メガシンカ!!」」
「ゲンガァァァァァァァァァッ!!!!!!」「グゥォォォォォッ!!!!!!!」
メガゲンガーから影の力が、ルカリオから青い波導の力が溢れ出し、空間を震わせる。
千歌「ルカリオッ!! 波導全開ッ!! 行くよっ!!」
「グゥオッ!!!!!」
せつ菜「ゲンガーッ!! 全身全霊で迎え撃ちますよっ!!」
「ゲンガァァァァァァ!!!!!!」
🎙 🎙 🎙
千歌「ルカリオ!! 波導の力を斬撃に……!!」
「グゥオッ!!!」
せつ菜「“ふいうち”!!」
「ゲンガッ!!!」
「グゥオッ!!!?」
千歌「……!」
千歌さんの攻撃は確かに必中必殺の一撃。
だけど、ノータイムで連発出来るようなものではないし、一定以上の集中が必要になる。
攻撃を撃たせないことがもっとも正しい。
千歌さんも私の魂胆に気付いたのか、攻撃方法を切り替えてくる。
千歌「“ボーンラッシュ”!!」
「グゥオッ!!」
剣状にしていた波導を長い骨の形にし振り回す。
せつ菜「“ゴーストダイブ”!!」
「ゲンガッ──」
それを避けるように、ゲンガーが影の中に潜り、“ボーンラッシュ”が空振る。
千歌「なら……!」
「グゥォッ!!!」
ルカリオは地面に骨を突き立て──それに掴まったまま上に伸ばして、上へと逃げる。
千歌「メガゲンガーは体が影に埋まってるから、空には追ってこれないでしょ!!」
「グゥオッ!!」
せつ菜「確かにそうですね、ですがこれならどうですか!!」
520 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:52:07.91 ID:VUrl28Mg0
今しがた影に飛び込んだ場所──即ちルカリオが骨を突き立てた地面が、ジュウウッと音を立て始める。
それと同時に、骨がグラリと揺れる。
「グゥオッ…!!?」
千歌「溶けてる……!? “ヘドロばくだん”だ……!! ルカリオ、離脱!!」
「グゥォッ!!!」
ルカリオが“しんそく”で飛び出しながら、地上に向かってジャンプする中、地面がドロドロに溶け始め、そこからゲンガーが顔を出す。
相手が空中にいる間がねらい目……!!
せつ菜「“シャドーボール”!!」
「ゲンガァァァァッ!!!!!」
ゲンガーの口から特大の“シャドーボール”が放たれる。
せつ菜「落ちながらで受け切れますか!!」
“はっけい”で対抗してくると思ったが──何故かルカリオの落下が急に止まり、
せつ菜「……え!?」
軌道を読み違えて外れた“シャドーボール”が、そのまま明後日の方向に飛んでいく。
よく見たら、ルカリオの足元が、わずかにスパークしているのがわかった。
せつ菜「まさか、“でんじふゆう”!?」
千歌「“ラスターカノン”!!」
「グゥゥゥォォォッ!!!!!!」
集束した光線が空中に浮いたルカリオから発射される。
せつ菜「く……!? “シャドーボール”!!」
「ゲンガァァァァ!!!!」
“ラスターカノン”に向かって、再度“シャドーボール”を発射するが──
特性“てきおうりょく”で強化された“ラスターカノン”は“シャドーボール”を貫いて、ゲンガーに直撃する。
「ゲ、ゲンガァァッ!!!!」
せつ菜「ゲンガー……!?」
千歌「さぁ、ガンガン行くよー!!」
「グゥオッ!!!」
ルカリオが再び“ラスターカノン”の態勢に入るが──
「ゲンガ…!!!」
ゲンガーが空にいるルカリオに向かって手をかざすと──急に集束していた光が弱まり、消滅する。
千歌「ふ、不発……!? しまった、“かなしばり”……!?」
一瞬で正解にたどり着くのはさすがです……!
521 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:52:55.59 ID:VUrl28Mg0
千歌「でも、空にいればそっちの攻撃は──」
せつ菜「“かみなり”!!」
「ゲンガァッ!!!!」
「グゥオッ!!!?」
千歌「うわぁっ!!?」
目の前で、特大の落雷が発生し、空中にいるルカリオに直撃する。
ダメージを受けたルカリオがふらりと落ちてくる。
無防備に落ちてくるルカリオに向かって──
せつ菜「“きあいだま”!!」
「ゲンガァーーーッ!!!!」
気合を集束したエネルギー弾を発射する。
千歌「ルカリオーーーッ!!! “はどうだん”ッ!!」
「グゥ…オォッ!!!!」
落下しながらも、ルカリオの発射した“はどうだん”が“きあいだま”とぶつかり合い、相殺しあう。
そのまま、着地したルカリオは、跳ねるような身のこなしでゲンガーに接近し、
千歌「“はっけい”!!」
「グゥオッ!!!!」
波導を纏った掌打をぶつけてくる。が、
せつ菜「“したでなめる”!!」
「ゲンガァァァ〜〜〜」
「グゥオッ!!!?」
千歌「いっ!?」
それに合わせるように──ゲンガーがベロリと舌を出す。
ルカリオの“はっけい”はゲンガーの舌にべちょりと音を立てながらぶつかった直後、
「ゲンガッ…!!!?」
波導のエネルギーによって、ゲンガーが吹っ飛ばされる。
だが──
「グ、グゥオ…!!!」
千歌「ま、“まひ”した……!!」
“したでなめる”の追加効果で“まひ”させた。
さらに、
せつ菜「“たたりめ”!!」
「ゲンガァァッ!!!!!」
弱り目に“たたりめ”。状態異常の相手には倍の効果を発揮する呪いの攻撃でルカリオを攻撃する。
「グゥ、オォォォ…ッ」
苦悶の顔を浮かべながら膝を突くルカリオに向かって──
522 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:53:47.46 ID:VUrl28Mg0
せつ菜「“シャドーボール”!!」
「ゲンガァァァァッ!!!!」
三度目の正直の特大“シャドーボール”を発射する。
怯んだルカリオは避けることも出来ず──
「グゥォォォッ…!!!!」
影の球に呑み込まれる。
せつ菜「よし、このまま……!!」
千歌「“あくのはどう”!!」
「グゥオォォォォッ!!!」
せつ菜「……!」
だが、ルカリオは影の球の中から全方位に向かって“あくのはどう”を放って、“シャドーボール”を吹き飛ばす。
そして、影の球から出てきたときには──
「グゥオ…」
その手に──波導で出来た剣を手にしていた。
千歌「波導の力を斬撃に……!!」
せつ菜「させないっ!! “シャドーパンチ”!!」
「ゲンガァァッ!!!!」
ゲンガーが自身の両手を影に沈めると──ルカリオの足元の影から、拳が飛び出す。
が、
「グゥオ」
ルカリオは波導の剣で、冷静に受け止める。
でも……“いあいぎり”の集中は切った……!!
攻撃を畳みかけようとした瞬間──
「ゲンガッ…!!!?」
せつ菜「な……!?」
ゲンガーの影から──波導のエネルギーが拳の形をして飛び出してきて、ゲンガーの体にめり込んでいた。
せつ菜「……“まねっこ”……!?」
“シャドーパンチ”を真似され、背後からの突然の攻撃でゲンガーが怯んだ隙に──
千歌「波動の力を斬撃に──」
「グゥオッ!!!」
千歌さんとルカリオが必中必殺の型を完成させる。
せつ菜「“ゴーストダイブ”!!」
「ゲンガッ!!!」
苦し紛れの回避択。ゲンガーが影に潜り込むが、
523 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:54:32.95 ID:VUrl28Mg0
千歌「影ごと斬り裂け──“いあいぎり”!!」
「グゥゥオッ!!!!」
下から上に向かって薙がれる波導の剣が、ゲンガーの潜った影を一閃する──
一瞬、フィールド上が静寂に包まれたが──
数秒後、
「…ゲン、ガ…」
影の中から戦闘不能になったゲンガーが浮かんできたのだった。
千歌「はぁ……はぁ……斬ったよ……!」
「グゥオッ!!!」
せつ菜「ウインディッ!!」
「──ワォンッ!!!」
千歌「……!」
間髪入れずに飛び出したウインディが、
せつ菜「“ねっぷう”!!」
「ワォォォンッ!!!!!」
“ねっぷう”でルカリオを焼き尽くす。
「グゥォォォッ…!!!!」
千歌「ぐ……っ!!」
最後は斬られたとは言え──不発も含めれば全力の集中技を3回も使わせた。
集中が必要不可欠な技はその分負担も大きい。畳みかけるなら、今しかない……!!
千歌「波導、全開ッ!!!」
「グゥゥゥゥオオオオオッ!!!!!!」
ルカリオが“ねっぷう”の中、両手の平をこちらに向けて──残りの波導エネルギーを発射してくる。
せつ菜「“だいもんじ”!!」
「ワァォンッ!!!!!」
それに対して、巨大な火炎で真っ向から立ち向かう。
千歌「ルカリオッ、頑張れぇぇぇッ!!」
「グゥ、オォォォォッ!!!!!」
波導と“だいもんじ”がぶつかり合い、拮抗するが──
「グゥ、ォォォォォ…!!」
ルカリオもさすがに体力の限界だったのか──次第に火炎が優勢になり。
千歌「くっ……!!」
「グゥ、ォォォォッ…!!!!」
“だいもんじ”がルカリオを飲み込んだ。
業炎は千歌さんごと飲み込んだように見えたが──炎が晴れると、
「グゥ、ォ…」
524 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:55:17.06 ID:VUrl28Mg0
戦闘不能になったルカリオの向こうで、
「──バクフーーーンッ…!!!!」
千歌「……やっぱり、ここまで追い詰められちゃうか……」
業炎から主人を守るように、バクフーンが千歌さんの前に立っていた。
👑 👑 👑
しずく「……これで、お互い……最後の1匹……」
かすみ「…………しず子、どうしよう…………かすみん、千歌先輩を応援しなくちゃいけないはずなのに…………せつ菜先輩は敵なのに……今、どっちにも負けて欲しくないって……思ってるかも……」
しずく「…………私も……」
胸が熱かった。
死力を尽くして戦う二人の姿を見ていたら、どうしようもなく、胸が熱かった。
胸が熱くて、ドキドキしていた。
🎙 🎙 🎙
せつ菜・千歌「「“かえんほうしゃ”!!」」
「ワォォォンッ!!!!」「バクフーーーンッ!!!!!」
2匹の“かえんほうしゃ”が真っ向からぶつかり、フィールドに炎を散らす。
ぶつかった、火炎の勢いは──
せつ菜「互角……!!」
千歌「なら……!!」
先に動いたのは、千歌さんだった。
千歌「“ふんか”!!」
「バクフーーーーンッ!!!!!!」
バクフーンの背中から──爆炎が飛び出す。
せつ菜「ウインディ!!」
「ワォンッ!!!」
私はウインディに飛び乗り、
せつ菜「“しんそく”!!」
「ワォンッ!!!!!」
降ってくる火炎弾の中、ウインディが私を乗せて猛スピードで走り出す。
私は上を見上げ──落ちてくる火山弾の軌道を見ながら、ウインディのたてがみを引っ張り、避ける方向を伝える。
「ワォンッ!!!!」
525 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:56:03.58 ID:VUrl28Mg0
ギリギリの軌道で炎弾を避け──最短ルートでバクフーンに肉薄し、
せつ菜「“インファイト”!!」
「ワォンッ!!!!」
打撃を食らわせようとした瞬間、
千歌「“ふんえん”!!」
「バクフーーーンッ!!!!」
せつ菜「ぐっ!?」
「ワォンッ!!!」
バクフーンが背中をこちらに向けて、“ふんえん”を噴き出す。
全身が燃えるように熱かったけど──
せつ菜「今は……私の心の方がもっと熱い……!! “かえんほうしゃ”!!」
「ワァォォォォンッ!!!!!!」
炎の中で、ウインディが炎を噴き出す。
千歌「くっ……!?」
「バクフーーンッ…!!!」
“ふんえん”を押しのけて、火炎がバクフーンと千歌さんに襲い掛かり、
せつ菜「“フレアドライブ”ッ!!」
「ワァォォォォンッ!!!!!!」
全身に炎を纏ったウインディが、自身の出した炎を突っ切りながら──バクフーンに突撃した、が、
「バクフーンッ!!!!」
バクフーンはそれを両手で受け止める。
千歌「負けるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「バク、フーーーーーーンッ!!!!!!!!!」
ウインディを受け止めながら、千歌さんに気合いの声に呼応するように、バクフーンの背中から気合いの炎が噴き出す。
千歌「“れんごく”ッ!!!」
「バクフーーーーーーーンッ!!!!!!!!」
さらなる爆炎が、バクフーンの口から放たれる。
せつ菜「“だいふんげき”ッ!!!!」
「ワァァァォォォォォンッ!!!!!!!」
ウインディも全身からありったけの業炎を放ち、お互いの炎がぶつかり合う。
せつ菜「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」
「ワァォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!!」
千歌「燃えろおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」
「バクフーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!」
お互いの爆炎が業炎が、ほのおのエネルギーぶつかり合い……膨張した熱が──爆発した。
526 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:56:37.00 ID:VUrl28Mg0
せつ菜「ぐぅぅぅぅっ……!!?」
「ワォンッ…!!!」
千歌「ぐぅぅぅぅぅっ……!!」
「バクフーンッ…!!!」
お互いが爆風で吹き飛ばされる。
せつ菜「……ぐ、ぅぅぅ……ッ……!!! まだ……まだ、です……ッ……!!!」
「ワォォォンッ…!!!!」
燃えるような熱さの中、立ち上がると──
千歌「はぁ……はぁ……ッ……!!」
「バク、フーーーンッ…!!!!」
千歌さんも立ち上がっていた。
お互いの体力はもう限界。
恐らく次がお互い最後の技になるだろう。
だから、私は──
せつ菜「千歌さんッ!!!!」
千歌「……!?」
せつ菜「Z技を……使ってくださいッ!!!!」
千歌「……!!!」
せつ菜「あの技を超えないと──私は胸を張って、貴方に勝ったと言えないからッ!!!!」
最後だからこそ、手加減なしの全てとぶつかり合いたかった。
『特別』だとかそうじゃないとか、もうそんなことはどうでもよくて。
今はただ──全力の千歌さんとぶつかり合いたかった。
千歌「うんっ!! バクフーーーーンッ!!!! 行くよっ!!!!! 全力のZ技っ!!!!!」
「バクフーーーーーーンッ!!!!!!!」
千歌さんの腕についたZリングが──燃えるような赤色の光を灯す。
そこから、エネルギーがバクフーンへと流れ込み──
「バクフーーーーーーンッ!!!!!!!!!」
バクフーンから抑えきれないほどの炎熱のエネルギーを感じた。
千歌「行くよッ!!!!! せつ菜ちゃんッ!!!!!」
せつ菜「はいッ!!!!! 千歌さんッ!!!! 私は、今日、ここでッ!!!!! 貴方を超えますッ!!!!!!」
「ワォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
千歌「“ダイナミックフルフレイム”ッ!!!!!!!」
「バクフーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!」
バクフーンから──視界一杯を覆いつくすような業炎が──放たれた。
527 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:57:09.56 ID:VUrl28Mg0
🎙 🎙 🎙
せつ菜「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」
「ワォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
向かってくる大火球に向かって、ウインディが全身全霊の炎で迎え打つ。
とんでもない炎熱を肌で感じる。
だけど、
せつ菜「負けるかあああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
「ワォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!!!」
雄叫びをあげながら、立ち向かう。
──熱くて熱くてたまらない、苦しいはずなのに、今は、この瞬間が、この戦いが、終わって欲しくない。そんな気持ちでいっぱいだった。
そうだ。私が大好きなポケモンバトルはこれだったんだ。
ただ強い人と全力でぶつかり合って、胸が熱くなる。この瞬間が大好きだったんだ。
だから私は──ポケモンバトルが大好きだったんだ。
……ふと、思う。
私はいつから、この気持ち忘れてしまっていたのだろうか。
いつから勝ちにばかり拘るようになってしまったんだろうか。
いつから──選ばれることに拘るようになってしまったんだろうか。
本当は、『特別』だとかそんなこと、どうでもよくて──ただ、この楽しくて大好きな時間を、ずっとずっと味わっていたかった。ずっとこの中にいたかった。それだけのはずだったのに。
お父さんにポケモンを取り上げられそうになった瞬間、なくなってしまうと思った瞬間、怖くなってしまった。
だから私は、在り方ばかり考えて、ただ──結果だけを示そうとして。
でも違った。そうじゃなかったんだ。私の本当の気持ちは、強い自分を見せつけることなんかじゃない。実績を誇示して納得させることなんかじゃない。
ただ──私がポケモンを、ポケモンバトルを大好きだって気持ちを──伝えなくちゃいけなかったんだ。
せつ菜「……気付くのが遅いよ……私……っ……」
涙が零れて──炎の中で一瞬で蒸発する。
取り返しの付かないことをしてしまった。
大好きなポケモンで──人を傷つけてしまった。
許されないことを、してしまった。
これが終わったら……私はもう、ポケモントレーナーではいられない。
だから。きっとこれが最後だから──
せつ菜「全部の炎ッ!!!!!!! 出し切ってッ!!!!!! ウインディィィィィィィィィッ!!!!!!!!!!」
「ワォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!」
528 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:58:38.61 ID:VUrl28Mg0
👑 👑 👑
──なんでだろ。なんで……。
かすみ「なんで……かすみん……泣いてるの……っ……?」
せつ菜先輩と千歌先輩が全力でぶつかる姿を見ていると、胸が燃えるように熱くて、勝手に涙が溢れてくる。
しずく「私は……っ……わかる、気がするよ……っ……」
かすみ「え……」
しず子もポロポロと涙を流しながら、
しずく「だって、全力で何かをする人たちの姿は……っ、見ている人たちの心を──震わせるものだから……っ……」
かすみ「っ……!!」
そっか、今私の心は──震えてるんだ。
そう思ったら、居てもたっても居られなくて──
かすみ「せつ菜先輩ッ!!!! 千歌先輩ッ!!!!! どっちも頑張ってぇぇぇぇッ!!!!!」
かすみんは思わず叫ぶ。
ただ、全力で全てを懸けて戦う人たちに、自分の心の震えが少しでも届くようにと──
善子「……人とポケモンは、どうしてポケモンバトルなんてものをするのかしらね」
しずく「え……?」
善子「……歴史の中で、何度もポケモンを戦わせるのをやめさせようとしたことがあったらしいわ。戦いは野蛮だとか、ポケモンを傷つけるなとか、理由はいろいろあった。それでも……人もポケモンも……戦うことを、競い合うことをやめなかった」
しずく「………………」
善子「私たちは今……その答えを……見ているのかもしれないわね……」
🎙 🎙 🎙
せつ菜「あああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
燃え盛る炎の中で、
「ワォォォォォォォォンッ!!!!!!!!」
相棒と一緒に──生まれて初めて捕まえたポケモンと一緒に──ただ、心を燃やす。
529 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 13:59:36.30 ID:VUrl28Mg0
────────
──────
────
──
せつ菜「やっと……捕まえた……!」
「ワン…」
せつ菜「私の……初めての……ポケモン……!!」
「ワン…」
せつ菜「よろしくね、ガーディ!」
「…ワンッ」
──ガブリ。
せつ菜「いったぁっ!!?」
真姫「……まさに飼い犬に手を噛まれるね」
せつ菜「うぅ……が、ガーディ……わ、私、君のトレーナーなんだよ……?」
「ガルル…」
せつ菜「ま、真姫さぁん……」
真姫「ふふ、最初はそんなものよ。大丈夫、きっとすぐに仲良くなれるから」
せつ菜「ほ、ホントかなぁ……?」
「ガルル…」
──
────
せつ菜「やったぁ♪ 勝ったよ、ガーディ♪」
「ワンッ♪」
──ペロ。
せつ菜「きゃっ!? あはは♪ く、くすぐったいよ、ガーディ♪」
──
────
「ワォォォォォンッ!!!!!」
せつ菜「これが……ウインディ……! ガーディの進化した……姿……!」
「ワォンッ」
せつ菜「……うん。一緒にもっともっと強くなろう……。誰にも負けないくらい、強く、強く……!」
「ワォォォォォォォンッ!!!!!」
──
────
──────
────────
せつ菜「私とウインディは……ッ!!!! 誰にも負けないッ!!!!!!」
「ワォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!!」
雄叫びをあげながら、業炎に立ち向かう──が、
せつ菜「ぐぅぅぅぅぅぅっ……!!!!」
「ワォォォォォンッ…!!!!!!」
一向に勢いが弱まらない千歌さんたちの炎に次第に押され始める。
530 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 14:00:46.47 ID:VUrl28Mg0
せつ菜「まだッ!!!! まだ、終わらせないッ!!!!!!!」
「ワォォォンッ!!!!!!!!」
せつ菜「最後までッ!!!!! 諦めないッ!!!!!!」
「ワォォォォォンッ!!!!!!!」
せつ菜「最後まで……諦めたくないッ!!!!!!!」
「ワォォォォォォォンッ!!!!!!!」
👑 👑 👑
──せつ菜先輩側の炎が徐々に押され始めたのが、かすみんの目にもわかった。
かすみ「っ……!!! せつ菜せんぱぁぁぁぁぁいっ!!!!! 負けないでぇぇぇぇぇっ!!!!!!」
しずく「せつ菜さぁぁぁぁぁぁんっ!!!!!! まだ……まだ終わってないですよーーーっ!!!!!」
あの業炎の中、声が届くのかわからないけど──かすみんたちは叫ぶ。
ただ、真っすぐに戦う──先輩に向かって。
そのとき──
「菜々ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」
男の人が──菜々先輩の名前を呼んだ。
男性「負けるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」
女性「菜々ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!! 頑張ってぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」
その人と並んで、女の人が──菜々先輩の名前を叫んだ。
誰かはわからないけど──心の底から、菜々先輩のことを応援して叫んでいるのが、一目でわかった。
🎙 🎙 🎙
せつ菜「う、あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
「ワォォォォンッ…!!!!!!!!!」
目の前に迫る炎が大きくて、熱かった。
──ああ、これがチャンピオンの炎なんだ。
熱さに朦朧とする頭で、そう、思った。
いつか、届くかな。
いつか、この炎を超えられるかな。
……うぅん、いつか。超えよう。
「ワ、ォォンッ……」
せつ菜「…………やっぱり、千歌さんは……強いなぁ……」
炎が私を飲み込もうとしている。
そのときだった──
531 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 14:01:32.51 ID:VUrl28Mg0
『っ……!!! せつ菜せんぱぁぁぁぁぁいっ!!!!! 負けないでぇぇぇぇぇっ!!!!!!』
せつ菜「え……」
『せつ菜さぁぁぁぁぁぁんっ!!!!!! まだ……まだ終わってないですよーーーっ!!!!!』
せつ菜「この……声……」
かすみさんと……しずくさんの……声……。
せつ菜「……っ……!!! ウインディッ!!!!!!」
「ワォォォォォンッ!!!!!!!!!」
まだ終わってない。終わってない。終わりたくない……!!
──違う。そうじゃない、終わりたくない、じゃない。
せつ菜「私は……ッ!!!!!! 勝ちたいッ!!!!!!!!」
「ワォォォォォォォンッ!!!!!!!!!」
『菜々ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!』
せつ菜「……!!」
この声──
『負けるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!』
せつ菜「おとう……さん……っ……」
お父さんの、声だった。
どうして今聞こえるのかわからないけど──お父さんが私を応援していた。
『菜々ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!! 頑張ってぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!』
せつ菜「おかあ……さん……っ……」
お母さんが私を応援していた。
『菜々ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!! お前はこんなところで終わるのかぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!! チャンピオンになるって言っただろうっ!!!!!!!!』
『菜々ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!! 最後までっ、諦めないでぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!』
──お父さん、お母さん。
せつ菜「──うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!! ウインディィィィィィィィ!!!!!!!!!! “もえつきる”までぇぇぇぇぇ!!!!!! やきつくせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
「ワォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ウインディが──全身全霊の炎を、ぶつけた。
532 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 14:02:11.58 ID:VUrl28Mg0
🎙 🎙 🎙
せつ菜「……………………はぁ…………はぁ…………」
「ワォ、ン…ワォン…!!」
千歌「…………はぁ…………はぁ…………」
「バク…フーーンッ…!!」
せつ菜「…………止め、ました……よ…………」
千歌「あ、はは…………すご、すぎ…………」
せつ菜「ウイン、ディ……」
「ワォ…ン…ッ」
私はウインディと一緒に歩き出す。
せつ菜「決着をつけ……ましょう……」
「ワォ、ン…」
もうすぐそこに──手を伸ばせば、チャンピオン、に──
「ワォ…ン…」
せつ菜「………………」
ウインディが──崩れ落ちた。
せつ菜「………………負け……か……」
私は立ち尽くして、空を仰いだ。
私のポケモンは全て、戦闘不能になった。
この勝負は……私の負けだ。
千歌「……せつ菜ちゃん」
千歌さんがよろよろとした足取りで、目の前まで歩いてくる。
そして、
千歌「……さいっこうの……バトルだったよ……」
私を抱きしめた。
533 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 14:03:04.63 ID:VUrl28Mg0
千歌「また……やろうね……」
せつ菜「千歌……さん……。……でも、私は……もう……ダメですよ……」
千歌「そんなこと……ない……」
せつ菜「ダメ、なんです……私は……ポケモンを使って……人を、傷つけてしまった……もう、ポケモントレーナーを続ける資格なんて……私には……っ……」
千歌「…………せつ菜ちゃん。……ポケモンは好き?」
せつ菜「え?」
千歌「…………ポケモンバトルは、好き?」
せつ菜「………………はい」
千歌「なら……もうそれだけで十分だよ。……せつ菜ちゃんは……それだけで、ポケモントレーナーだよ……資格とか、そんなもの……必要ないよ……」
せつ菜「……千歌……さん……っ……」
「──間違えたなら……またやり直せばいいわ」
せつ菜「……!」
声がして振り向くと──
真姫「……菜々」
真姫さんが居た。
せつ菜「真姫、さん……わ、私……」
真姫「いい。……今は、何も言わなくていいから」
せつ菜「…………真姫……さん……」
真姫「私よりも……ちゃんと話さないといけない人が来てるから」
せつ菜「え……」
その言葉を聞き──真姫さんの後ろを見ると、
菜々父「菜々……」
菜々母「菜々……」
せつ菜「お父さん……お母さん……」
お父さんとお母さんがいた。
せつ菜「あ…………わ、わたし……その……わた、し……おとうさんと、おかあさんに……迷惑……かけ……て……」
千歌「せつ菜ちゃん、そうじゃないよ」
せつ菜「え……」
真姫「今貴方が伝えなくちゃいけないことは……そういうことじゃないでしょ?」
せつ菜「………………はい」
私はお父さんとお母さんの前に歩み出て、二人の顔をしっかりと見る。
せつ菜「お父さん……お母さん……私──ポケモンが大好きなの。……ポケモンバトルが大好きなの。……危ないこともいっぱいある、うまく出来ないこともいっぱいある。だけど──大好きなの」
菜々母「……うん」
菜々父「……そうか」
せつ菜「だから、私がポケモントレーナーでいることを……許してください……! 私は大好きなものを諦めたくないから……! 大好きを諦めたら──私が私でいられなくなっちゃうから……! だから──」
菜々父「……じゃあ、いつかはチャンピオンにならないといけないな……」
せつ菜「え……」
534 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 14:04:04.37 ID:VUrl28Mg0
お父さんはそう言って、私の頭を一度だけ撫でた。
その後、背を向けて──
菜々父「……私は、ポケモンを好きにはなれないけどな……」
それだけ言うと、数人のガードの人と共に、お父さんは行ってしまった。
せつ菜「えっ……と……?」
菜々母「……ふふ、許してくれるって」
せつ菜「そ、そういうことで……いいの……?」
菜々母「お父さん……菜々にいろいろ言っちゃったから、素直に認めづらいみたいだけど……菜々のポケモンリーグのビデオ見てるとき、すっごく熱くなってたのよ?」
せつ菜「え?」
菜々母「判定に対して、『今のは合理的に考えて審判がおかしかった。やり直すべきだ』って」
せつ菜「お父さんが……?」
菜々母「そうよ。……菜々の試合を見てたらね……菜々がすごく真剣で、菜々は本当にこれが大好きなんだって……お父さんもお母さんも、わかったから」
そう言いながら、お母さんは私を抱きしめる。
菜々母「ごめんね、菜々……。私たち……貴方ともっともっとお話ししなくちゃいけなかった……。……遅いかもしれないけど……これからたくさん、菜々の大好きなもの、大切なもの……私たちに教えてくれないかな……?」
せつ菜「…………うん……っ……。私こそ……今まで……ちゃんと、言えなくて……ごめんなさい……っ……」
菜々母「うぅん……大丈夫よ」
お母さんは私を抱きしめながら、頭を撫でてくれた。
菜々母「それでね……。実は菜々……貴方に会いたいって人がいるの」
せつ菜「え……?」
そう言って、お母さんが私を離すと──その後ろに、その人が居た。
善子「──こうして……博士として会うのは……初めてかもしれないわね。せつ菜。……いいえ──菜々」
せつ菜「ヨハネ……博士……?」
善子「やっと、会えた……」
ヨハネ博士は私の目の前まで歩いてくる。
善子「手、出して」
せつ菜「え?」
善子「いいから」
私が手を出すと──
善子「これから頑張りなさい。……貴方は──このヨハネにとって、初めて旅に送り出すトレーナーなんだから」
せつ菜「……あ」
私の手の平に上に──真っ赤なポケモン図鑑と……モンスターボールが1つ、置かれていた。
善子「貴方のポケモン図鑑と──」
ヨハネ博士が私の手に乗せられたモンスターボールのボタンを押し込むと──
535 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 14:04:35.73 ID:VUrl28Mg0
「──ベアーマ!!」
私の足元に、灰色の小さな熊のようなポケモンが姿を現した。
善子「貴方の最初のポケモン──ダクマよ」
その言葉を聞いて、
せつ菜「……ぁ……っ、……ぅぁぁっ……」
「…ベァ?」
私は思わず図鑑とボールを持ったまま──両手で顔を覆って、膝を突いてしまう。
せつ菜「ぅっ……ぅぁぁぁっ……!!」
ポロポロと涙が溢れ出して……そんな私を──ヨハネ博士が抱きしめる。
善子「……あのとき、手を離しちゃって……ごめんね……。……でも、もう大丈夫だから……貴方は、私の大切なリトルデーモンよ……」
せつ菜「う、ぁ、ぁぁぁっ……ぅぁぁぁぁぁぁん……っ……うぁぁぁぁぁぁ……っ……」
「ベァ?」
私は小さな子供のように、声をあげて泣きじゃくる。
こうして私は……長い長い戦いの果てで、やっと── 一人のポケモントレーナーとして、始まることが出来たのだった。
本当に……本当に……長い……長い……道の果てで──
536 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/02(月) 14:05:08.19 ID:VUrl28Mg0
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かきこんでいます
でんげんを きらないでください...
【ウルトラキャニオン】
口================== 口
||. |○ o /||
||. |⊂⊃ _回/ ||
||. |o|_____. 回 | ⊂⊃| ||
||. 回____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||.○⊂⊃ | ○ |‥・ ||
||. | |. | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ||
||. | |. | | | ||
||. | |____| |____ / ||
||. | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o ||
||. | | | | _. / : ||
||. 回 . |_回o | | : ||
||. | |  ̄ |. : ||
||. | | .__ \ : .||
||. | ○._ __|⊂⊃|___|. : .||
||. |___回○__.回_ _|‥‥‥: .||
||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o‥| | | ||
||. / | | | ||
||. / o回/ ||
口==================口
主人公 せつ菜
手持ち ダクマ♂ Lv.5 特性:せいしんりょく 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
ウインディ♂ Lv.86 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
スターミー Lv.81 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
ゲンガー♀ Lv.84 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
エアームド♀ Lv.79 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
ドサイドン♀ Lv.82 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:10匹 捕まえた数:9匹
せつ菜は
レポートに しっかり かきのこした!
...To be continued.
537 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/03(火) 01:01:28.94 ID:Sh64zN700
■Intermission✨
果南「“アクアテール”!!」
「ラァグッ!!!!」
愛「……よっと!」
愛がラグラージの振るう尻尾を、後ろに飛び退きながら避けると、
「リシャンッ!!!!」
愛の陰から、リーシャンが飛び出してくる。
愛「“しねんのずつき”!」
「リシャンッ!!!!」
「ラグッ!!!?」
的確にラグラージの顎下を突き上げるように、リーシャンが体をぶつける。
果南「く……っ!! “アームハンマー”!」
「ラァグッ!!!」
ラグラージはすぐに顎を引き、目の前にいるリーシャンに向かって拳を振り下ろすが、
愛「“ねんりき”♪」
「リシャンッ」
リーシャンの周囲に力場が発生して、ラグラージの腕を弾く。
鞠莉「ね、ねぇ……ま、まずくない……?」
ダイヤ「果南さんが……リーシャン1匹に押されてる……!?」
鞠莉「わたしたちも加勢に入った方が……!」
一旦ゲートを閉じてでも、愛の撃退をするべきかと思ったけど、
果南「ダメっ!! 二人はゲート維持に集中して!!」
果南は私たちの加勢を拒否する。
ダイヤ「ですが……!」
愛「そーだよー。加勢してもらった方がいいんじゃない〜?」
愛がケラケラと笑いながら果南を挑発する。
果南「相手の狙いはゲートでしょ!? こんなんで、ゲート閉じてたら、それこそ思うツボだって!!」
愛「へー押されてる割に冷静じゃん」
果南「そもそも私は、二人のゲート維持を邪魔させないためにいるんだ……! ラグラージ、メガシンカ!!」
「ラァグッ!!!!」
ラグラージが光に包まれ、メガラグラージへと姿を変え、腕の噴出口から空気を逆噴射しながら、ラグラージが急加速する。
果南「“たきのぼり”!!」
「ラァァァァグッ!!!!!!」
538 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/03(火) 01:02:18.75 ID:Sh64zN700
ラグラージがリーシャンに向かって、滝すら登れるような、ものすごいスピードで飛び出す。
が、
愛「じゃ、こういうのはどう?」
愛はそう言いながら、リーシャンを胸に抱え込み──自らラグラージに向かって走り込んでくる。
そして、そのまま──スライディングをするように、突撃してくるラグラージの足元を潜り込んで、
愛「“ハイパーボイス”!」
「リシャァァァーーーーンッ!!!!!!」
「ラグッ…!!!?」
ラグラージの真下から、真上に指向性を向けた“ハイパーボイス”によって、ラグラージの体が宙を浮く。
果南「なっ……!?」
そして、滑り抜けた愛の手には、
「──ルリッ!!!」
果南「ルリリ……!?」
愛「“たたきつける”!!」
「ルリッ!!!」
愛はルリリの胴体を右手で掴み、自身の腕を横薙ぎに振りながら──その勢いをプラスしたルリリの尻尾が果南の脇腹辺りに飛んでいく。
果南「がっ……!?」
果南は咄嗟に腕でガードしたけど──その勢いに負けて吹っ飛ばされた。
鞠莉「果南っ!?」
ダイヤ「果南さんっ!?」
愛「……ダメだよ、これはただのバトルじゃなくて、戦争なんだからさ〜」
愛がそう言い放つのと同時に、
「ラグゥッ…!!!?」
先ほど真上に飛ばされたラグラージが、落下してくる。
果南「ぐっ……! ぅ……っ……」
愛「って、マジ!? あれ直撃したのに、すぐ立つんだ!」
果南「鍛えてるからね……」
果南が腕を押さえながら立ち上がると同時に、
「ラァァァァグッ!!!!」
ラグラージが大きな腕を振りかぶって、愛に飛び掛かる。が、
愛「“ねんりき”」
「リシャンッ!!」
その拳との間に飛び出したリーシャンが──また力場でラグラージの拳を弾く。
539 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/03(火) 01:02:52.63 ID:Sh64zN700
「ラグッ…!!!」
腕をかち上げられて、隙が出来たところに、
愛「ほら、“プレゼント”だよ」
「ルーリィ〜」
ルリリが“あわ”を吐き出し──それは、ラグラージの顔の目の前で大爆発した。
「ラ、グ…ッ!!!」
至近距離で爆弾の爆発を受けたラグラージは、そのまま白目を向いてひっくり返る。
果南「ラグラージ……!! く……ギャラドス!!」
「──ギシャァァァ!!!!」
果南はすぐに倒れたラグラージの代わりに、ギャラドスを繰り出した。
ダイヤ「……鞠莉さんっ!!」
わたしの名前を呼びながら、ダイヤが“こんごうだま”を投げ渡してくる。
ダイヤ「ディアルガの制御、お願いします!!」
鞠莉「え!?」
そう言いながら、ダイヤは、
ダイヤ「ハガネール!!」
「──ガネェェェェルッ!!!!!」
ダイヤ「メガシンカ!!」
ハガネールをメガシンカさせる。
ダイヤ「“アイアンヘッド”!!」
「ンネェェェェーーーールッ!!!!!」
メガハガネールは全身を回転させながら、愛に向かって突っ込んでいく。
それに対して愛は、
愛「リーシャン」
「リシャンッ」
リーシャンを左手で掴んで、ジャンプしながらリーシャンを下に向けると──空気に弾かれるように上空に向かってジャンプする。
ダイヤ「なっ……!?」
突然予想外の大ジャンプをされ、ハガネールの攻撃が相手のいない地面に突き刺さる。
愛は、そのままハガネールの上に着地し、
愛「あらよっと……!」
そのまま、ハガネールの体の上を走りだす。
そして、右手に掴んだルリリをブンと振ると──伸びた尻尾が猛スピードでダイヤの側頭部に迫る。
540 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/03(火) 01:04:38.55 ID:Sh64zN700
ダイヤ「……!?」
果南「ギャラドス!! “アクアテール”!!」
「ギシャァァァァァッ!!!!」
ダイヤに向かって迫るルリリの尻尾に合わせるように、ギャラドスが尻尾を振るって弾き返す──が、
「ギシャァァッ…!!!」
ギャラドスの尻尾も振りかぶり切れずに弾かれ、ダイヤのすぐ真横の地面に叩きつけられる。
ダイヤ「く……っ……!?」
果南「ダイヤ、無事!?」
ダイヤ「は、はい……!!」
愛「へー、やるじゃん」
ハガネールの上でステップを踏む愛だが──
「ンネェェェーールッ!!!」
愛「おろ?」
ハガネールが勢いよく尻尾を振り上げて、愛を上空にぶん投げる。
そのまま、
「ンネェェェェェルッ!!!!!」
大きな顎を開きながら──愛に向かって、頭から突撃していく。
ダイヤ「“かみくだく”!!」
「ンネェェェェルッ!!!!!」
空中で無防備な愛に、大顎がバクンと噛みついた──ように見えたが、
「ン、ネェェェェル…!!!」
愛「ふー、危ない危ない……」
ダイヤ「嘘……でしょ……っ!?」
ハガネールの口の中で、リーシャンが発生させた球状の力場がハガネールの大きな顎を無理やり押し開いていた。
愛を守る力場の球はハガネールが口を閉じようとする勢いを利用して──スポンと上に飛び出し、
愛「ルリリ!! かますよ!!」
「ルリッ!!!」
空中に飛び出した反動を利用して、ルリリを振りかぶった。
愛「“アイアンテール”!!」
「ルーーリィッ!!!!」
遠心力を使って伸ばされたルリリの尻尾が、
「ンネェェェーーールッ!!!!!?」
ハガネールの頭を真上から殴りつけ──
ダイヤ「……!?」
541 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2023/01/03(火) 01:05:23.49 ID:Sh64zN700
その衝撃を受けハガネールが白目を向いたまま──ダイヤに向かって、猛スピードで倒れ込んできた。
ハガネールの巨体はダイヤを巻き込み、その重量で大地を割り砕く。
果南「ダイヤッ!!?」
鞠莉「ダイヤッ!!!」
果南がダイヤに向かって駆けだす。
ダイヤは──
ダイヤ「…………」
押しつぶされこそしなかったものの、ハガネールが割り砕いた大地に巻き込まれ──全身のあちこちから出血しながら、気を失っていた。
愛「重量級のポケモンを使うと、こういうリスクがあるんだよねー」
果南「ダイヤッ……!!!」
果南がダイヤを瓦礫の中から救出しようとした瞬間──
愛「“ハイパーボイス”!!」
「リシャァァァァァーーーーンッ!!!!!」
鞠莉「果南っ!! 避けてっ!?」
駆け寄る果南に向かって、“ハイパーボイス”が迫る。
果南「“アクアテール”!!」
「ギシャァァァァッ!!!!」
それに対抗するように、ギャラドスが尻尾を音を超える速度で縦薙ぎにし──音波攻撃自体を吹き飛ばす。
愛「うぉっ!? マジ!?」
愛もさすがにそんな方法で“ハイパーボイス”を防がれると思っていなかったのか、驚きの声をあげる。
果南「ダイヤ……!!」
ギャラドスが攻撃を防ぎ、その間に果南がダイヤを瓦礫の中から抱き上げる。
ダイヤ「……か、な……ん…………さ……」
果南「喋らなくていい……! とにかく治療を──」
「──ギシャァァァッ!!!?」
果南「!?」
ギャラドスの鳴き声に驚き果南が視線をギャラドスに戻すと──ギャラドスの首に、ルリリの伸ばした尻尾が巻き付いていた。
愛「……よそ見してるなんて余裕だね〜」
「ルリッ」
その巻き付けた尻尾を戻す勢いに引っ張られるように愛がギャラドスの頭部に向かって飛び出し──
愛「リーシャン、行くよ!」
「リシャァンッ」
左手に持ったリーシャンが発生させた力場を、まるで拳のようにして──
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