侑「ポケットモンスター虹ヶ咲!」 Part2

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742 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:32:56.59 ID:jK0Y5xHa0

──『……愛さん。……もし……生まれ変われるなら……』──

──『……次は……世界中の……うぅん、宇宙中のみんなと……繋がりたいな……っ』──


愛「……………………」


ゆっくりと目を見開く。


愛「……………………」


アタシは起き上がって、先ほど自分の涙で濡らしたメモ紙と、りなりーの論文を見た。


愛「……………………りなりーは…………死んだんじゃない…………バラバラになったんだ…………」


なら──


愛「…………りなりー以外も…………宇宙全部が…………バラバラになれば…………りなりーは…………みんなと、繋がれる…………。……あはは。……あはは、あはははははは、あははははははははっ!!!!!」


アタシの笑い声が──部屋中に響く。


愛「そうだ……!!!!! まだ、りなりーの夢は死んでない……!!!!! アタシが……アタシが叶える……叶えるんだ……!!!!!! りなりーの夢を……っ……!!!!!」


このときから──狂気の歯車が、アタシの中で、動き出し始めてしまった。





    👏    👏    👏





数日後……カリンが、逃げ出したカナちゃんとその妹の遥ちゃんを乗せたウルトラスペースシップを……撃墜したという噂が流れてきた。

あまりに衝撃的な内容だったのか、見張りが交替の際に話しているんだから、嫌でもわかってしまう。

噂が聞こえ始めて、数日もしないうちに──


果林「──……愛、入るわよ」


アタシの部屋の中に、カリンが強引に押し入ってきた。


愛「……や、カリン。来ると思ってたよ」

果林「もっと落ち込んでると思ってたわ……」

愛「アタシもカリンはもっと落ち込んでると思ってた。……聞いたよ、カナちゃんの乗ったシップ……カリンが撃墜したんだってね」

果林「…………」


カリンはアタシを一瞥すると──手に持っていたチョーカーをアタシの首に着け始める。

そのとき見たカリンの目は──酷く濁っていた。

ああ、アタシと同じ目だ。

自分の目的のためなら──全てを捨てる覚悟をした人間の……目。


果林「……愛……私に協力しなさい……」

愛「…………ああ、これが首輪ってわけか。逆らったときは電撃? それとも、首でも飛ぶ?」

果林「電撃よ……。死なれたら困るわ……貴方には、やってもらわないといけないことが、たくさんあるからね……」

愛「アタシがこんなおもちゃで言うこと聞くと思ってんの?」
743 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:34:11.73 ID:jK0Y5xHa0

挑発するように言うと、カリンは躊躇なく、手に持ったリモコンのスイッチを押し込む。

直後──


愛「っ゛、ぁ゛!!?」


首に着けられたチョーカーから電流が走り、アタシは痺れて床に転がる。

そんなアタシを見下ろすように、


果林「……もう一度言うわ、愛。私に協力しなさい……」


カリンがそう──命令してきた。


愛「……っ゛……。……まあまあ、カリン……そう、焦んないでよ……」

果林「…………」

愛「……言うこと聞くつもりはないんだけどさ……協力はしてやってもいいよ……」

果林「……は?」


カリンはアタシの言葉に怪訝な顔をする。


愛「……その代わり……カリンもアタシに協力してよ……」

果林「……この状況で交渉しようって言うの?」

愛「どっちにしろ、アタシの頭が必要なんでしょ? いーよ、アタシの頭脳でよければ貸してあげるよ。ただ──アタシにもやりたいことが出来たから、それはやらせてもらう」

果林「…………」

愛「どーせこのおもちゃに発信機も付いてんでしょ? カリンの監視範囲内でアタシはアタシのやりたいことをやる。アタシはカリンの求める知恵と技術を提供する。それでお互いWin-Winっしょ?」

果林「……わかったわ」


カリンはアタシの言葉に頷いた。


愛「交渉成立だね〜♪ これからはカリンの駒として、せっせと働いてあげるよ」

果林「……信用してるわ、愛」

愛「へいへい、任せろ〜」


信用……ね。

アタシも信用してるよ、カリン……。

こうして──新生“DiverDiva”の計画が、始まったのだった。





    👏    👏    👏





……アタシはりなりーを失った。カリンはカナちゃんを……。

完全に政府の方針と一致した動きを見せていたカリンの発言権は強く、アタシもカリンに首輪を嵌められていたこともあって、すぐに軟禁は解除された。

──まあ、その日のうちに構造を完全に理解して、いつでも外せるようにはしてたんだけどね。

そうしたら、ポケモンたちもみんな戻ってきた。……ただ、ニャスパーはどこにもいなかった。

りなりーがいなくなったことを知って……この場から去ってしまったのかもしれない。
744 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:36:19.29 ID:jK0Y5xHa0

愛「……ベベノム」
 「ベベノ」

愛「……みんな……いなくなっちゃったね……」
 「ベノ…」

愛「……でも、アタシは……全部取り戻すよ」
 「ベノ…!!」

愛「……アタシに力を貸してくれる?」
 「ベベノムッ♪」

愛「ありがとう……愛してるよ、ベベノム」
 「ベベノ♪」


──その後、アタシたちは政府が滅ぼすと決めた世界へと移動し……そこで計画を始めた。

アタシはアタシで──どうやって、宇宙全てを情報レベルに分解するかを考え続けながら……ありとあらゆる情報機関にクラッキングし調べた結果──ディアルガ、パルキア、ギラティナというポケモンの伝承にたどり着いた。

時間の神、空間の神、反物質の神が揃えば……恐らく、特異点を強引に発散、インフレーションさせることが可能だろう。

なんせ3匹の力を合わせれば、時空を歪め、重力すら反転出来るのだ。特異点からエネルギーが発散されれば……全宇宙にエネルギーが押し寄せ……飲み込まれることになるだろう。

そして、その理論を思いつくと同時に……グレイブ団の首領・聖良が、その3匹を探し求めていたことにたどり着く。

彼女はあくまでディアンシーに会うのが目的だったため、アタシは目的が達成された後はその3匹を貰うというのを交換条件に、技術協力と資金提供を行った。

カリンには、彼女が世界を混乱させている間に計画を進行させるとか適当なことを吹いたら、割とあっさり信じてくれた。

まさか……彼女の計画が、勇敢なポケモントレーナーたちの手によって、あっという間に収束してしまったのには驚いたけどね……。

──こんな、全てを利用してやると決めたアタシにも……人の心が残っていたのか、本格的に自分たちが動き出す際──彼女の病室に忍び込んでまで顔を見に行ったのは、自分でも意外だった。

もちろん、表向きの理由としては、ディアルガ、パルキア、ギラティナの有益な情報を持っていないかを確認しに行ったつもりだったけど……冷静に考えれば病室にそんなものが転がっているわけもないので、きっとあれは……アタシが最後に見せた人の顔の感情だったんだと思う。同情という名のね……。


愛「……待ってて、りなりー……すぐにりなりーのところに行くからね……」


──
────
──────
────────



愛「もうすぐ……もうすぐ、一つになれるよ……りなりー……待っててね……」
 「アーゴヨンッ!!!」


アタシは──特異点の中心へと、突き進む……。





    🎹    🎹    🎹





──だんだん東の空が白んできた。


しずく「もうすぐ……暁時ですね」

かすみ「な、なんか緊張してきた……」

せつ菜「私たちは……離れていた方がいいですかね」

彼方「そうだねー。儀式をするのはあくまでコスモウムたちと、その主人だからー」


彼方さんの言葉に、歩夢と顔を見合わせて頷き合う。
745 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:41:09.96 ID:jK0Y5xHa0

侑「……歩夢」
 「────」

歩夢「うん」
 「────」


二人で、遺跡の中でも一際高い場所にある祭壇を見る。


果林「……まさか、コスモッグたちを進化させるのが……“SUN”でも“MOON”でもないとはね……」

彼方「ホントにね〜」

リナ『侑さん、歩夢さん。コスモウムは日輪と月輪が交差する場所で、交差する時に、人の心に触れ、化身へと姿を変える……きっと、二人の心に反応して、太陽の化身か月の化身へと進化するはずだから』 || ╹ ◡ ╹ ||

エマ「頑張ってね! 二人とも!」

侑「はい、行ってきます」
 「────」

歩夢「行ってきます」
 「────」


私は歩夢と手を繋いで──祭壇を上り始めた。





    🎹    🎹    🎹





侑「……ねぇ、歩夢」

歩夢「なぁに?」

侑「私たち……なんか、すごい所まで来ちゃったね」

歩夢「……そうだね」


祭壇から見た景色は── 一面雲海に覆われている。……まるで、空の上にでもいるかのようだった。


侑「太陽の化身か月の化身だってさ」

歩夢「そうだね」

侑「どっちになると思う?」

歩夢「……リナちゃんが言ってたとおりなら……私たちの心に反応して、姿を変える……ってことだよね」

侑「そうなるね」


二人で手を繋いで、祭壇の頂上へ立つと──雲海の向こうから、日が昇り始める。

──暁時だ。

それと同時に──


 「────」
 「────」


2匹のコスモウムが激しく私たちの周囲を飛びまわり、輝き始める。

進化の時だ。


歩夢「侑ちゃん」

侑「ん」

歩夢「私たちの心の中にあるのが、太陽なのか、月なのか……それならもう、決まってるよ」

侑「決まってる……。……そうだね」
746 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:42:29.00 ID:jK0Y5xHa0

私は歩夢の言葉に頷いた。


侑「──歩夢は、私の太陽だから」

歩夢「──侑ちゃんは、私の太陽だから」

侑・歩夢「「私たちは……お互いがお互いの──太陽だから」」

 「────」「────」


暁の光に照らされて──朝と夜が入り混じるこの時、この場所で──2匹のコスモウムは──


 「──ガオーレッ!!!!」「──ラリオーナッ!!!!」


『光り輝く白銀の太陽』と『赤く燃える赫灼の太陽』へと姿を変えたのだった。





    🎹    🎹    🎹





 「──ガオーレ…」「──ラリオーナ…」

リナ『ソルガレオ にちりんポケモン 高さ:3.4m 重さ:230.0kg
   別世界に 棲むと いわれる。 全身から 無尽蔵の 光エネルギーを
   放出し 闇夜も 真昼のように 照らす。 遥か 大昔の 文献に
   太陽を 喰らいし 獣と いう 名前で 記録が 残っている。』

歩夢「太陽を喰らいし獣……」

侑「ソルガレオ……」


私たちはコスモウムが進化したポケモン──ソルガレオを見上げる。


果林「まさか……どっちも太陽の化身になるなんて……」

彼方「なんか……勝手にどっちかが太陽でどっちかが月だって思い込んじゃってたね……」


結果はどちらも太陽の化身──白銀の太陽と真っ赤な太陽だった。


 「──ガオーレ…」「──ラリオーナ…」


ソルガレオたちが、身を屈める。


侑「うん、ソルガレオ……!」

歩夢「行こう……愛ちゃんを止めに……!」


私たちは、ソルガレオの背に乗る。
747 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:43:33.55 ID:jK0Y5xHa0

かすみ「かすみんも乗りたいです〜!!」

せつ菜「私も乗ってみたいです!!」

果林「ダメよ、突入するのはあの二人だけ」

彼方「ウルトラスペースは生身で行くのは危険な場所だからね〜……何人も相乗りするのは危ないから〜」

かすみ「え……じゃあ、かすみんたちなんでここまで付いてきたんですか!?」

せつ菜「まさか……お見送りのため……ではないですよね……?」

果林「私たちには私たちで、やることがあるのよ」

しずく「やること……ですか……?」

姫乃「これから、ソルガレオたちの力によって……大きなウルトラホールが開くことになります」

遥「そこからは恐らく……ウルトラビーストが飛び出してきます」

かすみ「……なるほど、そういうことですか」

しずく「侑先輩たちが帰って来るまで……私たちは、そのウルトラビーストを捌き続ける」

せつ菜「確かに……1匹たりとも通すわけにはいきませんからね」

果林「そういうことよ」

エマ「か、果林ちゃん……! わたしも手伝うね……!」

果林「ええ、お願いね。でも、無茶はしちゃダメよ? エマは私の傍から離れずに戦うこと……いいわね?」

エマ「うん♪」

姫乃「……距離が……近い……」

果林「姫乃も、頼りにしてるわ」

姫乃「……! は、はい!! お任せください!!」

しずく「……はぁ〜……」

かすみ「しず子……何、うっとりしてんの……」

彼方「遥ちゃんは、お姉ちゃんから離れちゃダメだよ〜?」

遥「うん! もし負傷しても、私が皆さんを治療します!」

彼方「よろしくね〜遥ちゃん〜♪」


そして、果林さんが私たちに向き直る。


果林「侑、歩夢。貴方たちの帰る場所は……私たちが死守する。だから、愛のこと……よろしくね」

侑「はい!」

歩夢「絶対に愛ちゃんを止めて……帰ってきます」


私たちは、果林さんの言葉に頷いた。


侑「イーブイ、振り落とされないようにね」
 「ィブイ♪」

歩夢「サスケも……今日はお昼寝しないでね?」
 「シャーボッ!!!」


自分たちのポケモンに声を掛け──最後に、


侑「リナちゃん!」

リナ『うん!』 || > ◡ < ||


私がリナちゃんの名前を呼ぶと、飛んできて私の腕に装着される。
748 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:44:26.32 ID:jK0Y5xHa0

侑「行こう……! 愛ちゃんの居る場所へ! リナちゃんの想いを……伝えに……!」

リナ『うん! 侑さん、歩夢さん、私全力でサポートするね!』 ||,,> ◡ <,,||

歩夢「うん、お願いね、リナちゃん♪」

侑「頼りにしてるよ!」
 「ブイ♪」


私たちを背に乗せた白銀と赫灼の太陽が、


 「──ガオーレッ!!!!」「──ラリオーナッ!!!!」


“おたけび”を上げると──目の前に大きなウルトラホールが口を開く。


侑「歩夢」

歩夢「侑ちゃん」

侑・歩夢「「行こう! 愛ちゃんを止めに……!!」」


私たちは、最後の戦いへと──2匹の太陽と共にウルトラスペースを、走り出した。


………………
…………
……
🎹

749 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:48:00.64 ID:jK0Y5xHa0

■Chapter073 『ツナガル未来の為に』 【SIDE Yu】





「ガオーレッ!!!!」「ラリオーナッ!!!!」


──2匹の太陽は、光の速さでウルトラスペース内を駆けて行く。

猛スピードで流れる景色の中、他の世界へ繋がっているであろうウルトラホールを傍目に見ながら、私たちは進んでいく。


歩夢「す、すごいスピード……」

リナ『ソルガレオが持ってる光のエネルギーを速度に変換してるみたい!』 ||,,> ◡ <,,||

侑「この速さなら……愛ちゃんに追い付ける……!!」
 「ブイッ!!」

リナ『ただ、ソルガレオから絶対に振り落とされないようにね。ソルガレオの周囲にはエネルギー場が発生してるから、侑さんたちに影響がないだけで……ウルトラスペースが生身で耐えられる環境じゃないのには変わりないから』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「了解! 歩夢、気を付けてね!」

歩夢「うん♪ 侑ちゃんも」


歩夢がニコリと笑って返してくる。

そんな私たちを見て、


リナ『二人とも……旅立ちの頃に比べると、すごくたくましくなったね』 || ╹ ◡ ╹ ||


リナちゃんが、そんなことを言う。


歩夢「え、そ、そうかな……?」

リナ『特に歩夢さん! 最初はバトルは怖いって言ってたけど……今はすっかり頼もしくなった』 || > ◡ < ||

歩夢「……きっと、そうなれたのは……侑ちゃんが隣にいてくれたからだよ」

侑「歩夢……」

歩夢「……これまでずっと侑ちゃんが守ってくれたから、助けてくれたから。でも、これからは私も侑ちゃんを支えられるように、もっともっと強くなって……今度は私が侑ちゃんを守るんだって決めたから。侑ちゃんを隣で守るためなら、もう戦うのも怖くない」


歩夢はそんな風に言う。だけど──


侑「私はずっと前から……歩夢に助けられてばっかりだよ」


最初は私が歩夢を守らなくちゃいけないなんて息巻いて……空回りしたこともあったけど──いつの間にか、歩夢と一緒に戦うようになっていて、私も歩夢に背中を預けるようになっていて……。


侑「私も……歩夢が隣に居てくれるから戦える。歩夢が居てくれるから、勇気が湧いてくる。立ち向かえるんだ」

歩夢「侑ちゃん……」

侑「私は一人で戦ってるんじゃない。歩夢が、リナちゃんが、イーブイが……みんながいるから戦えるんだ」
 「イブイ♪」

歩夢「うん……私も、侑ちゃんが、リナちゃんが……サスケやみんながいるから戦える」
 「シャボ」

リナ『侑さん……歩夢さん……。……うん!』 ||,,> ◡ <,,||

 「ガオーレッ!!!」「ラリオーーナッ!!!!」


──ここまで旅をしてきて……出会ったポケモンたち。出会った人たち。いろんな出会いがあったから……今、私はこうして戦えている。


侑「そして……これからも、いろんな人たちと、いろんなポケモンたちと……新しい出会いを、新しい冒険をしたいから……」

歩夢「うん。……そうだね……。これからも、きっとたくさん、楽しいこと、わくわくすること……たくさんあるはずだから……」

リナ『誰かと誰かが繋がっていく明日のために……!』 ||,,> ◡ <,,||
750 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:48:34.91 ID:jK0Y5xHa0

──私たちはそんな当たり前の未来を守るために……。


侑「世界を……救おう!」
 「ブイ♪」

歩夢「うん♪ 私たちで!」
 「シャボ」

リナ『リナちゃんボード「ファイト、オー!」』 ||,,> ◡ <,,||

 「ガオーレッ!!!」「ラリオーーナッ!!!!」


愛ちゃんのいるところまで──あと、少し……!





    👑    👑    👑





──侑先輩たちがウルトラスペースに入っていって……。


しずく「侑先輩、歩夢さん、リナさん……どうか、ご無事で……」

かすみ「大丈夫だよ、しず子。侑先輩たちなら……絶対、愛先輩を止めて帰ってきてくれるって!」

せつ菜「ですね! 今は私たちに出来ることをしましょう!」

しずく「かすみさん……せつ菜さん……。……はい、そうですね」

果林「……なんて言ってる間にも」

彼方「お出ましみたいだね〜」


 「──ドカグィィィィッ!!!!」


エマ「わ……!? す、すっごい大きなウルトラビーストさん……!?」

遥「アクジキング……!」

姫乃「よりにもよってですね……」


ウルトラビーストの中でも一際大きな強敵……! ですが──


かすみ「前は苦戦しましたけど……今のかすみんは、あのとき以上に強いですよ!!」

しずく「私も、ウルトラビーストについてはたくさん研究したんです……!」

せつ菜「今更、この程度の相手、造作もありません!!」

 「ドカグィィィィィッ!!!!!」


侑先輩、歩夢先輩、リナ子……!

ここはかすみんたちが食い止めます。だから、世界を……お願いします……!



751 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:49:19.49 ID:jK0Y5xHa0

    👏    👏    👏





──ここまで、長かった。

りなりーが居なくなってから……毎日が地獄のようだった。

世界の全てが灰色に見えた。朽ちているように見えた。……壊れているように見えた。

何度も何度も悔いた。自分の無力さを、非力さを嘆いた。

世界で一番大切な人すら守れない……自分を呪った。

それが、やっと……やっと、終わる。

だのに──


愛「……最後の最後まで……アタシを邪魔する人たちは……いなくならないんだね」


振り返ると──


 「──ガオーーレッ!!!!」「──ラリオーーナッ!!!!」


白銀と赫灼の太陽が、背後から迫ってきていた。





    🎹    🎹    🎹





侑「──愛ちゃんっ!!」


ウルトラスペースの中に──愛ちゃんと共に前を飛ぶアーゴヨンと、時空・空間・反物質の神たちを見付ける。


愛「……こんな場所まで、よく追ってこられたね……。……これから大事な用事が残ってる神たちを傷つけられたら堪ったもんじゃない……。一旦戻れ」
 「ディアガ──」「バァァル──」「ギシャラァ──」


愛ちゃんが神のポケモンたちをボールに戻しながら、私たちを睨みつけてくる。


歩夢「愛ちゃん……! こんなこと、もうやめて……!」

リナ『愛さん……!! こんなことしても、誰も喜ばない……!!』 || > _ <𝅝||

愛「それを決めるのは、お前じゃない……──りなりーだ……!!」
 「アーーーゴヨンッ!!!!」


愛ちゃんの言葉と共に──アーゴヨンのお尻の毒針が黄色く輝き始める。


愛「“ヘドロウェーブ”!!」
 「アーーーゴヨンッ!!!!」


その輝きは濃縮されたブライトカラーの一筋の毒液となって、私たちに向かって発射される。


歩夢「ウツロイド!! “ヘドロウェーブ”!!」
 「──ジェルルップ…」


歩夢がボールからウツロイドを繰り出し、同じ技で対抗するが──ウツロイドの出した紫色のヘドロの波動を橙色の輝くヘドロ液が貫いてくる。


 「──ジェルップッ…!!」
752 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:50:21.60 ID:jK0Y5xHa0

愛ちゃんの攻撃はウツロイドをいとも簡単に弾き飛ばし──


歩夢「……っ……!?」


背後に居た歩夢の眼前に迫る。


侑「歩夢っ!!」
 「ガォーーーレッ!!!!」


私は咄嗟に、ソルガレオと一緒に歩夢の前に飛び出す。

“メタルプロテクト”を身に纏ったソルガレオの鋼鉄の体なら、受け止められると踏んでの防御だったが──ソルガレオの側面に攻撃が当たった瞬間、ジュウウウウウッ!!! と音が立つ。


 「ガォーーーーレッ……!!!!」
侑「な……っ!?」

リナ『侑さん!? 防ぎきれてない!?』 || ? ᆷ ! ||


どくタイプの攻撃なのに、はがねタイプで防ぎきれない……!?


侑「く……ニャスパー!! フィオネ!!」
 「ウニャァーーーッ!!!」「フィォ〜〜」


私は咄嗟にニャスパーとフィオネを出し、


侑「ニャスパー!! “サイコキネシス”!! フルパワー!!」
 「ウニャァァァッ!!!!」


ニャスパーが真上から、一直線に突き刺さる、橙色のヘドロ液を真下に向かって捻じ曲げる。


 「ガォーーーレッ…!!!」


その隙にソルガレオはその場から退避し、


侑「フィオネ! “ハイドロポンプ”!!」
 「フィーーーオーーーッ!!!」


フィオネが激しい水流によって、ソルガレオの体に付着した毒液を洗い流す。

幸いそれで毒を洗い流すことはできたけど──ソルガレオの鋼鉄の装甲は、毒によって変形していた。


歩夢「侑ちゃん……!! ソルガレオ……!! 大丈夫……!?」

侑「こっちは大丈夫……! それよりウツロイドは!?」

歩夢「こっちもどうにか……」
 「──ジェルルップ…」


吹っ飛ばされたウツロイドも、ふよふよとウルトラスペースを漂いながら、歩夢の傍に戻ってきていた。


侑「よかった……。それにしても……ソルガレオの鋼鉄の体でも受けきれないなんて……」

リナ『キズナ現象によって強化された影響だと思う……』 || > _ <𝅝||


──直後、真上から、


愛「──そうだよ。ゆうゆと歩夢じゃ、今のアタシたちは……止められない」

侑「!?」

愛「“エアスラッシュ”!!」
 「アーーーーゴヨンッ!!!!!」
753 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:50:53.34 ID:jK0Y5xHa0

いつの間にか真上を取っていたアーゴヨンが巨大なオレンジ色に輝く風の刃を、私たちに向かって放ってくる。


歩夢「ソルガレオ!! “テレポート”!!」
 「ラリオーーーナッ!!!!」


咄嗟に歩夢がソルガレオごと私たちに突進し──直後に全員を巻き込んで“テレポート”する。

──視界がフッと切り替わり、次の瞬間には私たちの目の前を巨大な風の刃が真下に向かって通り過ぎて行った。


侑「あ、ありがとう、歩夢……」

歩夢「う、うぅん……でも……ソルガレオ2匹分だと、ほとんど移動できなかった……」
 「ラ、ラリォーーナッ…」

リナ『質量が大きいと“テレポート”の移動距離や精度は下がっちゃうから……でも、歩夢さんの判断がなかったら直撃してた……』 || > _ <𝅝||


それにウルトラスペースのような安定しない空間で使ったからか、歩夢のソルガレオには疲労が見える。回避には何度も使えないかもしれない……。


愛「へー……やるじゃん。アタシのリーシャンでも、ここじゃうまく“テレポート”出来ないのに……」
 「アーゴ…!!!」

侑「愛ちゃん……!! もうやめて……!!」

愛「……ここまで来て、やめてくださいって言われてやめると思ってんの? “エアカッター”!!」
 「アーーーゴッ!!!!」


またしても真上から風の刃が降ってくる。

だけど、今度はさっきのような大きな一刃ではなく──複数の小さな風の刃が降ってくる。


 「ウーニャァッ!!!!」


それに向かって、ニャスパーが飛び出し、耳を全開にする。


侑「イーブイ!! サポートするよ!! “どばどばオーラ”!!」
 「イッブイッ!!!!」


イーブイからオーラが発され──僅かに“エアカッター”のスピードが鈍ったところに、


 「ウニャァーーー!!!」


ニャスパーが全力“サイコキネシス”で“エアカッター”をどうにか逸らす。

それでも、全てを逸らしきることは出来ず、


 「ガオーレッ…!!!」「ラリオーナッ…!!!」

歩夢「きゃぁぁぁぁっ……!?」

侑「ぐ……っ……!」

リナ『侑さんっ!! 歩夢さんっ!!』 || > _ <𝅝||


体の大きなソルガレオに攻撃が被弾し──ギャ、ギャギャギャと、耳障りな音と共に、風の刃で鋼鉄の鎧の表面が抉られる。

攻撃を受け、その身を大きく揺するソルガレオたちに、私たちは必死にしがみ付く。


歩夢「ソルガレオ……!! “ワイドガード”……!!」
 「ラリオーーナッ!!!!」


そんな中、歩夢が咄嗟に防御技を指示すると、ソルガレオの真上に大きなエネルギーの壁が出現し、風の刃を弾き飛ばす。
754 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:51:48.05 ID:jK0Y5xHa0

歩夢「侑ちゃん、平気……!?」

侑「た、助かった……ありがとう……」

リナ『“エアカッター”なのに……すごい威力……』 || > _ <𝅝||


本来はそんなに強力な技じゃないはずなのに、キズナ現象によって強化されたアーゴヨンは、ソルガレオの鋼鉄の防御すら平気で貫いてくる。

そんな中、愛ちゃんは攻撃を防いだニャスパーを見下ろす。


愛「……そのニャスパー……ドッグランでアタシを助けたニャスパーだよね」

 「ニャ〜」

愛「……やっぱり……りなりーのニャスパーだったんだね……」

 「ニャ〜」

愛「ねぇ、ニャスパー……。……アタシは今から、りなりーのところに行くんだ……。……一緒に行こう……りなりーのところに……」


愛ちゃんはそう言うけど、


 「ニャァ〜」


ニャスパーはふるふると首を振る。


愛「……そっか……。……ニャスパーも……わかってくれないんだ……。……でも、大丈夫……みんな一つになるから……」

リナ『愛さん……もうやめて……! そんなことしても、何も戻らない……! 誰も望んでる結果にならない……!』 || > _ <𝅝||

愛「だから……それを決めるのは……りなりーだ……」

リナ『璃奈だって、こんなこと望んでない……!! 望んでるわけない!!』 || > _ <𝅝||

愛「この問答にこそ意味がない……君の言葉は……どこまで行っても、りなりーの言葉じゃないんだよ……」

リナ『愛さん……』 || 𝅝• _ • ||

愛「……こんなところまで追ってきて、説得しようなんて甘いこと考えてないでさ……。本当にアタシのやってることが間違ってるって思うなら……力尽くで止めてみなよ……」
 「アーーーゴ…!!!」

愛「アタシもアーゴヨンも……とっくに覚悟は決まってるんだ……!! “りゅうせいぐん”!!」
 「アーーゴヨンッ!!!!」


アーゴヨンの全身がカッと眩く光る。直後──ウルトラスペース内だと言うのに、大量の流星が私たちに向かって降り注いでくる。


侑「く……ソルガレオ!!」
 「ガオーーレッ!!!」


ソルガレオが“おたけび”をあげながら、自身の体に周囲のエネルギーを集束し始める。

それと同時に私はソルガレオから跳び下りて、


侑「ウォーグル!!」
 「──ウォーーーッ!!!」


ボールから出したウォーグルの脚に掴まる。


侑「“メテオドライブ”!!」
 「ガオーーーレッ!!!!!」


ソルガレオは、自身に集束したエネルギーと共に、隕石のように真っ向から突進し──“りゅうせいぐん”を割り砕きながら、突き進む。

確かにアーゴヨンのパワーはすごいけど……こっちだって、ウルトラビーストなんだ……!!


 「ガオーーーーレッ…!!!!!」


“りゅうせいぐん”を正面突破しているにも関わらず、ソルガレオは全く勢いを衰えさせることなく──愛ちゃんたちに突っ込んでいく。
755 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:52:21.95 ID:jK0Y5xHa0

愛「……! アーゴヨン!!」
 「アーーゴッ!!!」


愛ちゃんは、砕ける“りゅうせいぐん”の影から飛び出してくるソルガレオに気付き、すんでのところで“メテオドライブ”を回避する。

それと同時に、


歩夢「ウツロイド……! 侑ちゃんたちを守ってあげて……!」
 「──ジェルルップ…」


ウツロイドが歩夢の指示で、ウォーグルの背中に張り付く。

今は歩夢のソルガレオが近くにいるから大丈夫だけど……もし離れてしまったら、ウルトラスペースの環境に耐えられなくなってしまうからだ。

愛ちゃんが“メテオドライブ”を回避したことで、


 「ガオーレ…!!!」

 「ラリオーナ…!!!」


自然と、上下に位置した2匹のソルガレオで挟み撃ちの形になる。


愛「やっと攻撃してきたね……」

侑「……」

愛「来なよ……ゆうゆ、歩夢……! どっちの考えが正しいか……白黒付けようじゃん……!!」
 「アーーーゴッ!!!!」


──アーゴヨンが輝く翼をしならせながら、猛スピードで飛び出してくる。


愛「“りゅうのはどう”!!」
 「アーーーーゴッ!!!!」


アーゴヨンの口にドラゴンのエネルギーが集束され──バヂバヂと音を立てながら、私たちに向かって一直線に飛んでくる。


侑「ドラパルト!! “りゅうのはどう”!!」
 「──パルトッ!!!!」


ドラパルトも対抗するように“りゅうのはどう”を発射し、


歩夢「ウツロイド!! “パワージェム”!!」

 「──ジェルルップ…」


ウォーグルの背中の上から、ウツロイドが“パワージェム”を発射する。

でも、2匹掛かりでも、どうにか軌道を逸らすのが限界──


侑「くっ……!!」
 「ウォーーーグッ…!!!」


直撃こそ避けたものの、アーゴヨンの発射した“りゅうのはどう”が目の前を過ぎるだけで、その余波によって、私たちは吹き飛ばされる。


歩夢「侑ちゃん!!」
 「ラリオーーナッ!!!!」


歩夢のソルガレオが吹き飛ばされた私たちを追って、駆け出そうとするが、


愛「“ドラゴンダイブ”!!」
 「アーーーゴッ!!!!!」


畳みかけるように、アーゴヨンが猛スピードで迫ってくる。
756 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:53:06.46 ID:jK0Y5xHa0

リナ『侑さんっ!? 避けてっ!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「っ……!」
 「ウォーーグッ…!!!」


ウォーグルはすぐに体勢を立て直したが──相手が速すぎる。

回避は無理……!


侑「ならっ……!!」
 「ウォーーーグッ!!!!!!」「パルトッ!!!!!」


ウォーグルが爪を、ドラパルトが尻尾を、身を捻りながらアーゴヨンの上から同時に叩き付けるようにして──攻撃を逸らす。

──彼方さん直伝のいなし術……!


愛「……! へぇー……!」


攻撃を捌かれ、アーゴヨンがすれ違いざまに通り過ぎた……瞬間──グイッと足が後ろに引っ張られる。


侑「……!?」
 「ウォーーグッ!!!?」


何かと思って下に目を向けると──


 「ルリ…!!!」

侑「ルリリの尻尾……!?」


いつの間にか、愛ちゃんが右手に掴んでいるルリリの尻尾が、私の足に巻き付いていた。

そしてそのまま、尻尾が戻る反動を利用して、


愛「さぁ、もういっちょだ……!!」
 「アーーーーゴッ!!!!」


アーゴヨンが再び“ドラゴンダイブ”で突っ込んでくる。

しかも今回はルリリの尻尾が私の足に絡みついているため、さっき以上に高い精度で真っすぐ私に突っ込んでくる。


侑「く……っ……イーブイ!! “わるわるゾーン”!!」
 「イッブイッ!!!」


苦し紛れにイーブイがゾーンを発生し、本当に僅かにアーゴヨンの突進速度が緩んだように見えたが、


愛「焼け石に水って言うんだよ……!! そういうの!!」
 「アーーーーゴッ!!!!!」


アーゴヨンは“わるわるゾーン”の中をお構いなしに突っ切ってくる。

避けきれない……!! そう思った瞬間、


歩夢「ソルガレオ!! “てっぺき”!!」
 「ラリオーーナッ!!!!!」


私たちの間に赫灼のソルガレオが、身を硬めながら飛び込んでくる。

だけど──アーゴヨンの猛烈な突撃に、


 「ラリオーーナッ…!!!!」
歩夢「きゃぁ……!!」
757 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:53:41.92 ID:jK0Y5xHa0

ソルガレオがパワー負けして、こちらに押されてくる。

それどころか、“ドラゴンダイブ”を真っ向から受けた“メタルプロテクト”にビシリとヒビが入る。


愛「邪魔っ!!」
 「アーーゴッ!!!!」


アーゴヨンが突撃したまま、ガパッと口を開き──そこにドラゴンエネルギーが集束され始める。


歩夢「……!」


至近距離で“りゅうのはどう”を撃たれそうになった瞬間、


侑「ソルガレオッ!! “メテオドライブ”!!」

 「ガオーーーーレッ!!!!!!!」


真上から、ソルガレオが急降下してくる。


愛「ち……! あっちが先!!」
 「アーーゴッ!!!!」


アーゴヨンは咄嗟に上を向き、真上から迫ってくるソルガレオに“りゅうのはどう”を発射する。

だが、こちらも大技による突進──“りゅうのはどう”を真っ向から突っ切っていく。


愛「くっ……」
 「アーゴッ」


愛ちゃんたちはこれ以上の撃ち合いを不利と見たのか、2匹のソルガレオに対して放っていた、“りゅうのはどう”と“ドラゴンダイブ”を中断し、またしてもソルガレオの大技をすんでで躱す。

どうにか歩夢から引き剥がすことが出来た──けど、これじゃまだダメだ。

私の足にルリリの尻尾が絡みついている。

これがある限り、愛ちゃんはいくらでも私を捕捉出来る。


侑「なら……!!」


私は──ウォーグルの脚を掴んでいた手を……自分から放した。


リナ『侑さん!?』 || ? ᆷ ! ||


私は落っこちながらルリリの尻尾を手で掴み──


侑「フィオネ!! “ハイドロポンプ”!!」
 「フィーーーオーーーーッ!!!!」


小脇に抱えたフィオネの“ハイドロポンプ”を逆噴射させる。

ルリリの尻尾の戻る反動も使い、割って入って助けてくれた歩夢のソルガレオを飛び越えるようにして──

一気に愛ちゃんの方へと接近する。


愛「なっ……!?」


逆に利用されるとは思っていなかったのか、愛ちゃんが一瞬動揺する。

その一瞬の隙に、私はアーゴヨンのお腹の突起に手を掛けてしがみつく。


 「ブイッ!!!」


そして肩に乗っていたイーブイが愛ちゃんに向かって飛び出す。
758 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:54:17.27 ID:jK0Y5xHa0

侑「イーブイ!! “めらめらバーン”!!」
 「ブーーーイィッ!!!」


至近距離からの突撃──絶対に避けられない距離。

だと思ったのに、


 「ルーーリィッ!!!!」
愛「ちょ!? ルリリ!?」


ルリリが自分から愛ちゃんの前に飛び出して、攻撃を受けに出てきた。


侑「く……!?」

 「イッブィッ…!!!」


突撃の反動で跳ね返るイーブイを、


 「ウニャァ!!」


頭にしがみついていたニャスパーが、サイコパワーで私の元に引き寄せ救出。


愛「ルリリ……!!」
 「ルリィ…」


愛ちゃんは直撃を受け、瀕死になったルリリをキャッチしながら、


愛「離れろ……!!」


アーゴヨンにしがみついている私に蹴りを入れてくる。


侑「ぐっ……!?」


蹴り飛ばされ、私がウルトラスペースに放り出された──瞬間、


 「ガオーーーレッ!!!!!」


白銀のソルガレオが私の真下に滑り込み、間一髪で救出される。


歩夢「侑ちゃん、大丈夫!?」
 「ラリオーナッ!!!」

侑「な、なんとかね……」
 「ブィ…」


近寄ってきた歩夢と共に、再び愛ちゃんと相対する形になる。


愛「……生身で突っ込んでくるなんて……大した度胸だね。一歩間違ったら、ウルトラスペースの中に消えるところだったよ?」

侑「でも、お陰で……ルリリは倒せた……」

愛「……全くね。やるじゃん。正直……見くびってたよ……。……でも、もう遊びは終わり」
 「アーーゴッ!!!」


アーゴヨンが毒針をこちらに構える──


愛「“ヘドロウェーブ”!!」
 「アーーーゴッ!!!!!」


直後、橙色の毒液が毒針から噴き出す。

ただ、最初に使った集束された一本の毒液じゃない──3本の針から、辺り一帯を覆いつくすようなとんでもない範囲に毒液が発射され、それはまるで毒の壁のように私たちに迫ってくる。
759 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:54:47.99 ID:jK0Y5xHa0

侑「……!?」

リナ『こんなの避けられない……!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「じゃあ……!!」

歩夢「防ぐしかない……!!」


私は咄嗟に、ドラパルトとウォーグルをボールに戻し、


侑「歩夢!!」

歩夢「うん!!」

侑・歩夢「「“ワイドガード”!!」」

 「ガオーーーレッ!!!!!」「ラリオーーーナッ!!!!!」


2匹分の防御技で広範囲攻撃を防ぐ。

最初の集束されたものと違って、広範囲に散っている分、攻撃力は低いと踏んでの防御策。

目の前に展開した大きな防御壁に眩しい蛍光色の毒液がべったりと張り付き前が見えない。

もし、これを破られたら──全員毒まみれになることになる。恐らく一滴でも当たろうものなら致命傷になるような猛毒。

だけど──ここは私たちの読みが勝っていた。

次第に勢いが弱まり──“ワイドガード”をべったりと覆っていた毒液が徐々に下に落ちて流れていく。

ただ──


リナ『……!? 毒液の向こうから、超巨大なエネルギー反応!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「……なっ……!?」

歩夢「え……!?」


“ワイドガード”の向こう──アーゴヨンは、バヂバヂと周囲にエネルギーをスパークさせながら、超オレンジの光を放っていた。


愛「──“アルティメットドラゴンバーン”!!」
 「アーーーーゴッ!!!!!」


アーゴヨンの全身から、一気にエネルギーが発散され──それは空を飛ぶ一匹のドラゴンのような形になって──私たちに向かって超高速で突っ込んできた。

回避か防御かの判断すら間に合わず──直撃しそうになった瞬間、


 「──ジェルルップ」

歩夢「ウツロイドッ!?」


ウツロイドが私たちの盾になるように、“ミラーコート”を身に纏って、飛びだしていた。

が、もちろん攻撃を受け切れるわけもなく──ウツロイドを中心に、ドラゴンエネルギーが大爆発を起こした。


 「ガオーーーーレッ…!!!!」「ラリオーーーナッ…!!!!」


その爆発で、ソルガレオの巨体さえも軽々と吹き飛ばされ──


侑「ぐ、ぅぅぅぅぅ……っ!!!!」
 「ブィィィィィィッ!!!!!」「フィオーーーーッ!!!!!」「ウニャァァァァ〜〜〜!!!?」

歩夢「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

リナ『みんな!!!! 絶対手離しちゃダメ!!!! 耐えて!!!!!』 || >ᆷ< ||


私たちはポケモン共々必死にソルガレオにしがみつく。

だけど──余りの衝撃に、
760 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:56:01.33 ID:jK0Y5xHa0

侑「……あ」
 「ブイッ…!!!?」


私は手を──ソルガレオから離してしまった。

イーブイを肩に乗せたまま、ウルトラスペースに放り出されそうになった瞬間、


歩夢「侑ちゃんッ……!!!」
 「シャーーーボッ!!!!!」


歩夢の腕に尻尾を巻き付けたサスケが体を伸ばして、私の腕に噛みついた。


侑「っ゛……!!」


痛みを感じると同時に、私もサスケの体を掴む。


 「シャーーーーーボッ!!!!!」


サスケが全身の筋肉を使って、私を歩夢の方へと引っ張る。

それと同時に歩夢が私に向かって手を伸ばす。


歩夢「侑ちゃんッ!!!」

侑「歩夢ッ!!!」


伸ばした手が──ギリギリで、届いた。


歩夢「……っ!!」


歩夢がぐっと引き寄せ、私は歩夢に抱きしめられる形でどうにか難を逃れた。

歩夢にぎゅっと抱きしめられたまま──揺れるソルガレオの背の上で、じっと耐え続け……。


 「ラリオーーナッ…!!!」


やっとソルガレオが態勢を立て直す。


歩夢「ゆう……ちゃん……っ……」


揺れも衝撃もひとまず収まったけど……私を抱きしめる歩夢は、震えていた。


歩夢「…………ゆう……ちゃん……っ……」

侑「歩夢……もう大丈夫だよ……。私は……無事だから……」

歩夢「…………」

侑「ありがとう、歩夢……」

歩夢「……うん」


歩夢の背中を優しく叩きながら、二人で顔を上げる──

すると、


 「──ジェ…ル…」


私たちの近くを……ボロボロになったウツロイドが漂っていた。


歩夢「……っ……!! ウツロイド、戻って……!!」
 「ジェ…ル…ップ…──」
761 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:56:43.41 ID:jK0Y5xHa0

歩夢はすぐさまウツロイドをボールに戻す。


歩夢「ごめん、ごめんね……痛かったよね……ありがとう……っ……」


ギュッとボールを胸に抱きながら、ウツロイドへの謝罪とお礼を口にする。

ウツロイドが盾になってくれなかったら……私も歩夢も間違いなく、ウルトラスペースの彼方に吹き飛ばされていた……。


 「ガオーレッ!!!」


そこに、白銀のソルガレオが私のもとへと戻ってくる。


 「フィオーーッ!!!」「ウニャァ〜〜」


ソルガレオにしがみついていた2匹も無事で安心する。

……けど、


愛「──あっはは、間一髪だったね」

侑「……!」


気付けば──愛ちゃんがアーゴヨンと共に、目の前に来ていた。

爆風でかなり吹き飛ばされたはずなのに……。

恐らくアーゴヨンの猛スピードの飛翔能力で、吹っ飛ばした先から追い付いてきたのだろう。


愛「……見た? 今のZ技」

侑「Z……技……」

リナ『なんで、Z技が……』 || > _ <𝅝||


Z技は特別な道具を使って発動する超大技だ……。

でも、愛ちゃんはそんな道具を使った様子はなかった。


愛「Z技はね……ウルトラスペースに溢れる輝きのエネルギーと……ポケモンとのキズナを同調させて使うんだ。……本来はその同調に道具を使うんだけどね……アタシとアーゴヨンは……すでにキズナで繋がってる」
 「アーーーゴッ」


直後──アーゴヨンに再び超オレンジのエネルギーが集束され始める。


歩夢「に……二発目……?」


歩夢がソルガレオの上でへたり込む。


愛「……すごいと思うよ。あのとき出会った新米トレーナーたちが、ここまでアタシと張り合ったこと……誇っていいと思う」


愛ちゃんは私たちを見据えながら言う。


愛「でもね……ゆうゆや歩夢とじゃ……覚悟も、想いも、痛みも、強さも……積み重ねてきたキズナも……比べ物にならなかったってことだよ」


愛ちゃんはそう言うけど、


侑「そんなことないよ」
 「…ブイ」

愛「……?」

歩夢「侑……ちゃん……?」


私は──ぎゅっとイーブイを抱きしめて立ち上がる。
762 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:57:28.58 ID:jK0Y5xHa0

侑「覚悟はしてきた。大切な人たちを守りたい想いもある。戦うことの辛さも、失うことの痛みも知ってる。強さだって……ここまで旅して、いろんな経験をしながら……みんなと強くなってきた……」
 「ブイッ!!!!」


──イーブイが、光を放つ。


愛「な……」

侑「キズナだって……!! ここにある……!!」
 「イッブィッ!!!!!」


ここまで何度も困難と立ち向かってきた。どんな苦しい戦いも、イーブイと一緒に切り抜けてきた。

Z技の条件が……この場であることと……特別なキズナの繋がりだって言うなら──


侑「私と相棒だって……特別なキズナで結ばれてる……!!」
 「イブィッ!!!!!」


イーブイの周囲に、8色の光の球が浮き上がり──そこから8本の光の筋がイーブイに向かって注がれる。


歩夢「……侑ちゃんと……イーブイの……Z……技……」

リナ『“ナインエボルブースト”……!?』 || ? ᆷ ! ||

 「イッブイッ!!!!!!」


イーブイの体に8つの光の力が注がれ強化される。

私は、8色の光包まれて輝くイーブイを抱いたまま、


侑「歩夢」
 「ブイ♪」

歩夢「侑ちゃん……?」


へたり込んでしまった、歩夢に手を差し伸べる。


侑「……私とイーブイを……信じて」
 「ブイ!!」

歩夢「……うん!」


歩夢が私の手を取って立ち上がる。

立ち上がって──私の抱きかかえるイーブイの頭を撫でる。


歩夢「……この光……あったかい」


絶望的な状況なのに、その光は不思議と──安心するあたたかい光だった。


愛「……この土壇場で、技を覚醒させるとは思わなかったけど……でも、それでアタシのアーゴヨンの技を超えられる?」
 「アーーーゴッ!!!!」


気付けば、アーゴヨンの全身から今にも溢れ出しそうなくらいに、エネルギーが充填されている。


侑「……勝てるよ。だって、イーブイとのこのキズナは……私一人の分じゃないから」

愛「一人分じゃ……ない……?」


──私はずっと考えていた。

どうして、このイーブイは──“相棒わざ”を覚える、この特別なイーブイが……私のもとにやってきてくれたのか。

それは──いろんな人と出会う喜びを、繋がるきっかけを、私に教えるためだったんじゃないかなって。
763 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:58:16.45 ID:jK0Y5xHa0

──せつ菜ちゃんと戦って覚えた“めらめらバーン”。

──愛ちゃんと共闘して覚えた“びりびりエレキ”。

──エマさんに教えてもらった憩いの場で“すくすくボンバー”を覚え。

──彼方さんに稽古を付けてもらっているときに“いきいきバブル”を。

──しずくちゃんとピンチを乗り越えるために“こちこちフロスト”が。

──かすみちゃんと決死の戦いの中で“きらきらストーム”を閃き。

──璃奈ちゃん……リナちゃんとの一騎打ちで“どばどばオーラ”を。

──果林さんとの死闘の中で“わるわるゾーン”を覚えた。


イーブイがその身に覚えてきたことは……全部、私が旅の中で経験した、誰かとの出会いと、人との繋がりの中で生まれたんだ。

そして……もう一人。


侑「……歩夢」
 「ブイ」

歩夢「うん」


私は歩夢の肩を掴んで抱き寄せる。

イーブイには……まだ閃いていない、私の旅を一番近くでずっと支えてくれた──歩夢との、繋がりとキズナが残っている。


侑「だからこれが──最後の“相棒わざ”だ」
 「ブイッ!!!!」


私の旅の出会いと、キズナと、繋がりを象徴するこの技は──

イーブイが眩い光に包まれる。


リナ『新しい……“相棒わざ”の……反応……。……イーブイが……今、覚えた……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「うん。……私とイーブイ……歩夢とリナちゃんと……旅で出会った全ての人との繋がりとキズナがある……!! それは愛ちゃんにだって……負けたりしない……!!」
 「ブイッ!!!」

愛「……上等じゃん……」
 「アーーーゴヨンッ!!!!」


愛ちゃんとアーゴヨンが攻撃を構える。


愛「どっちの覚悟が、キズナが本物か……今ここで試してやろーじゃん!! アーゴヨンッ!!」
 「アーーーゴッ!!!!!」

愛「“アルティメットドラゴンバーン”!!」
 「アーーーーーゴッ!!!!!!」


アーゴヨンから超オレンジのエネルギーが放出され──1匹のドラゴンのような形となって、襲い掛かってくる。


侑「イーブイ」
 「イブイ♪」


イーブイに声掛けると、イーブイが嬉しそうに笑った。


侑「いっけぇぇぇ!!! イーブイ!! “ブイブイブレイク”!!」
 「イッブイッ!!!!」


イーブイが全身に光を纏って……ソルガレオの背を蹴り──猛スピードで飛び出した。

超オレンジのドラゴンと──キズナの力をその身に纏ったイーブイが、衝突し、周囲にエネルギーが弾け飛ぶ。
764 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:58:54.17 ID:jK0Y5xHa0

愛「そんなのただのすごい“たいあたり”でしょ!! アタシとアーゴヨンのキズナが負けるわけない!!」
 「アーーーーーゴッ!!!!!!」

侑「ただの“たいあたり”じゃない!! 私たちの今までの旅で見てきたもの、出会った人たちの想い、全部を乗せた“たいあたり”だよ!!」
 「ブゥゥゥゥゥィィィィィィィィィィッ!!!!!!!!!!!!!」


最後の“相棒わざ”とドラゴンのZ技が、ウルトラスペースの中で、轟音と衝撃波を発生させながら空間を揺らす。


 「ブゥゥゥイィィィィィッ!!!!!!」


イーブイの気迫はドラゴンのエネルギーの中を徐々に徐々に前に進んでいくが──


 「アーーーーーゴヨッ!!!!!!!!!!」


アーゴヨンも一歩も引かない。次から次へと自身のパワーを超オレンジに輝くドラゴンエネルギーに変換し、放出してくる。


 「ブ、ブィィィィィッ…!!!!」


一瞬、その勢いに飲み込まれそうになるけど──


歩夢「イーブイーーーー!! 頑張ってーっ!!」

 「イッブゥゥゥゥゥゥィッ!!!!!!!!」


歩夢の声援で、イーブイの纏う光が大きくなる。

このイーブイの力は──繋がりの力だから。


──あのとき、ゴルバットの攻撃に巻き込まれそうになった君を……助けたときから始まった。キズナの力だから。

あのときから……たくさん助け合って、ここまで来た。私と──私の相棒は、ここまでの全部を力に変えて、走ってきたから……!!


侑「イーブイッ!!!! いっけぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!」
 「イッブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥイッ!!!!!!!!!!」


イーブイの光がより一層大きく膨れ上がり──


愛「うそ……でしょ……」


超オレンジで大閃光するドラゴンを内側から──大爆発させた。

──轟音と共に、先ほどとは非にならないほどの衝撃波が私たちに向かって飛んでくる。


侑「ぐぅ……っ……!! 歩夢ッ!! 私から離れないで……ッ!!」

歩夢「う、うん……っ!!!」


二人で身を伏せながら、ソルガレオの背にしがみつく。


 「ラリオーーーナッ…!!!」


必死に衝撃波に耐える赫灼の太陽を、


 「ガオーーーレッ!!!!!!」


白銀の太陽が後ろから支える。


 「ウニャァ〜〜〜」「フィオ〜〜〜!!!!」

リナ『ニャスパーもフィオネも、あとちょっとだから耐えて〜〜〜!!!』 || >ᆷ< ||
765 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:59:40.53 ID:jK0Y5xHa0

揺れる空間の中で必死に耐え続けると……次第に衝撃波は収まり始め──


 「──ブィィィィィ……」

侑「……!! イーブイッ!!!」

歩夢「……侑ちゃん!?」


イーブイがこちらに向かって吹っ飛んでくる。

私はイーブイに向かって、一目散に駆け出して、


侑「イーブイッ!!」
 「ブィ…」


イーブイに跳び付くようにキャッチする──と、同時に浮遊感。


リナ『侑さん!? 跳んだら落ちる!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「!?」


イーブイを助けること以外、何も考えてなかった……!?

飛び出してしまった私の真下に──


 「ガオーレッ!!!!」


滑り込むようにして、白銀のソルガレオが救出してくれた。


侑「あ、ありがとう……ソルガレオ……」
 「ガオーーレッ」

歩夢「……ほっ……」


どうにか、無事助かった……。


愛「……あっはは、あはははははははははっ!!!!」

侑「……!!」

愛「はぁ……っ……はぁ……っ……強い……強いね、確かに強いよ……っ……ゆうゆ……っ。それは認めてあげる。だけどね──」
 「…アーーーゴヨッ…!!!」

侑「……うそ」

歩夢「……そん、な……」


愛ちゃんとアーゴヨンは──まだ、倒れていなかった。

すでにボロボロだけど……それでもまだ、しっかりと飛んで、私たちを見据えていた。


愛「最後に勝つのは──やっぱり、アタシたちだ……!!」
 「…アーーーゴッ!!!!」


アーゴヨンがその身からカッとオレンジ色の光を放つと同時に──引き寄せられるようにどこからともなく、“りゅうせいぐん”が降り注いでくる。

──向こうも満身創痍による攻撃だけど……ボロボロの私たちを倒しきるには、十分すぎる攻撃だった。


愛「これで……終わりだぁぁぁぁぁっ!!!」


迫る流星。

どうにか逃げられないか、避けられないか、考えたけど──数が、多すぎる。

いや──
766 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:00:51.93 ID:jK0Y5xHa0

侑「ソルガレオ!!」
 「ガオーーーレッ!!!!!」


白銀のソルガレオと一緒に──赫灼のソルガレオの前に踊り出す。


歩夢「侑ちゃん……!? だめぇッ!!!」


せめて、歩夢だけでも……!!!

そう思って前に出たけど──それは必要のないことだった。

突然、私たちの目の前に──


 「──アーーーーゴヨンッ!!!!!!!!」

侑「……!?」


紫色の影が躍り出てきたからだ。


侑「アーゴヨン……!?」


しかも、愛ちゃんの持っているアーゴヨンと違う──紫色のアーゴヨンだった。

私たちに向かって降り注いでくる“りゅうせいぐん”は──


 「アーーーゴヨンッ!!!!!!」


突然現れた紫色のアーゴヨンの“りゅうせいぐん”によって──私たちに当たる前に、全て流星同士の衝突によって……砕け散った。


愛「な……」
 「アーゴ…」

 「アーゴヨン…」

侑「な、なにが……起きたの……?」

歩夢「野生の……アーゴヨンが……助けて、くれた……?」

 「アーーゴヨンッ」
リナ『まさか……君は……』 || ╹ᇫ╹ ||

 「アーゴヨン…!!!」

愛「……なんで……お前まで……アタシを裏切るの……?」
 「アーーゴ…」

 「アーーゴヨンッ!!!!」

愛「……くっそぉぉぉぉ……!! アーゴヨン!! “りゅうのはどう”……!!」
 「アーーーゴッ…!!!!」


愛ちゃんのアーゴヨンが“りゅうのはどう”を口から発射するのと同時に──


 「アーーーゴヨンッ!!!!!!」


紫色のアーゴヨンも──同じように“りゅうのはどう”を放っていた。

愛ちゃんたちは……もう体力が限界だったんだろう……紫のアーゴヨンが放った攻撃は……愛ちゃんのアーゴヨンの“りゅうのはどう”を真正面から貫き──


愛「……!!」
 「アーーーーーゴォッ……!!!!!」

愛「……ぐぅぅぅぅ……っ……!!」


愛ちゃんのアーゴヨンに直撃したのだった。

──最後の一撃を受けた、愛ちゃんとアーゴヨンは、
767 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:01:26.77 ID:jK0Y5xHa0

愛「く……そ……。…………」
 「アー…ゴ…」


──揚力を失って……ふらりと落ちていく。


愛「……あは、は……。……や、っと……。……お、わ、れる……。……りな、りー……。……いま……そっちに……いく、よ……」


愛ちゃんたちが、ゆっくりとウルトラスペースに……落ちていく──


リナ『──ニャスパァァァァァァァーーーーッ!!!!!!!!! 愛さんをッ!!!!!! 助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!』 || > ᆷ <𝅝||

 「ウニャァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!」


ニャスパーが……ソルガレオの頭を踏み切って──落ちていく愛ちゃんたちに向かって、跳びはねた。

そして──


 「ウニャァァァァァァァッ!!!!!!!」


全力のサイコパワーで、愛ちゃんとアーゴヨンを“テレキネシス”によって、救出した。


愛「………………」
 「アー…ゴ…」


──こうして……最後の戦いは、終わりを迎えたのだった……。





    🎹    🎹    🎹





──あの後……紫色のアーゴヨンはいつの間にか、ウルトラスペースの彼方へと、消えてしまっていた。

恐らくあのアーゴヨンは璃奈ちゃんと愛ちゃんの……。


愛「………………」

侑「ボールは……これで全部かな」

リナ『……うん。間違いない』 || ╹ _ ╹ ||


ニャスパーが間一髪で助けた愛ちゃんは……今はソルガレオの上で、腰を下ろしたまま……黙って俯いていた。

……もう戦う力が残っていないのか……その気力がないのか……。先ほどまでの激しい戦いぶりが嘘のように、大人しくなっていた。

どちらにしろ、ディアルガ、パルキア、ギラティナ含め……愛ちゃんの持っている全てのポケモンのボールを回収した。

開閉スイッチも壊したから……自分から飛び出してくることもない。
768 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:02:26.87 ID:jK0Y5xHa0

愛「………………」

リナ『……愛さん』 || ╹ _ ╹ ||

愛「…………なんで」

リナ『…………』 || ╹ _ ╹ ||

愛「……なんで……助けたの……」

リナ『それは……』 || 𝅝• _ • ||

愛「……やっと……りなりーのところに……行けると思ったのに……」

リナ『…………』 || > _ <𝅝||

愛「……やっと終われるって……思ったのに……。……ねぇ……なんで……? ……なんで、助けたの……? ……ねぇ……!!」

リナ『…………』 || > _ <𝅝||

愛「答えてよっ!!」


激しくリナちゃんに向かって詰め寄る愛ちゃん。


愛「ねぇ……!!! 答えてよ!!!! なんで、助けたのっ!!!?」


詰め寄る愛ちゃんの前に──


歩夢「…………」


歩夢が歩み出て──

──パシンッ。

愛ちゃんの頬を叩いた。

私はその光景に……呆気に取られてしまった。


侑「……あ、歩夢が……人を……叩いた……?」


私はそんな光景を今まで一度も見たことがなかったため、心底驚いてしまった。

それは私だけではなく、


愛「…………ぇ……」


愛ちゃんも同様だったようで……。突然のことに目を丸くしていた。


歩夢「…………まだっ、……わからないの……っ……!!」


歩夢は怒っていた。大粒の涙を目に溜めながら……怒っていた。


歩夢「……リナちゃんが……璃奈ちゃんだからだよ……っ……!」

愛「……ぇ……」

歩夢「……前に愛ちゃんを助けたときと何も変わらない……っ!! リナちゃんが、璃奈ちゃんだからだよっ!! なんで、わからないのっ……!!」


歩夢の目から、ぽろぽろと涙が零れだす。


愛「…………変わら……ない……?」

歩夢「…………璃奈ちゃんが願ったことは……愛ちゃんと同じなんだよ……」

愛「……アタシと……同じ……? …………──……ぁ……」


歩夢の言葉に……何かに気付いて──愛ちゃんの目から、涙が零れだした。
769 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:03:25.31 ID:jK0Y5xHa0

愛「…………アタシ……りなりーに……生きてて……欲しかった……、……世界なんて……どうでもいいから……生きてて……欲しかった……」

リナ『愛……さん……』 || 𝅝• _ • ||

愛「…………そっ、か……りな、りーは……アタシに…………生きてて、欲しかったんだ…………」


それは鏡のようで──愛ちゃんが……心の底で願っていたことのように……。

璃奈ちゃんは──自分の夢だった、『みんなと繋がる』ことよりも……それ以上に……愛ちゃんに生きて欲しかった。

生きていて……欲しかった。

生きていて……欲しがった。

ただ……愛ちゃんに……この世界で生きていく未来を、選んで欲しかった。


愛「……ぁ、ぁぁっ……」


愛ちゃんが──泣き崩れる。


愛「……ぅ、ぅっ、ぁぁぁぁっ、……り、なりーっ、……りな、りーっ、……りな、りー……っ……ぅぅっ、ぁっ、ぅぁぁぁぁぁぁっ」


──しばらくの間……ウルトラスペースには、愛ちゃんの嗚咽が……静かに静かに……響いていたのだった……。





    👑    👑    👑





 「──ジ、ジジ……ジ……ジ……。……」


──ズウン、と音を立てながら、デンジュモクの巨体が崩れ落ちる。


せつ菜「……はぁ……はぁ……やっと……倒せました……」
 「ワォンッ…!!!」

かすみ「はぁ……はぁ……これで……何匹目……ですか……?」
 「カイン…ッ」

しずく「はぁ……っ……はぁ……っ……ご……50匹……くらいかな……」

彼方「さすがに……きついかも〜……」

果林「……数が……多すぎる……」


長い間続く、度重なる戦闘にかすみんたちはもう限界ギリギリでした。


エマ「み、みんな、大丈夫……!?」

姫乃「弱ったポケモンはこちらに……!!」

遥「怪我した方が居たら、すぐに診ます……!!」


後方で回復を任せていたエマ先輩とはる子、その二人の護衛をしていた姫乃先輩が駆け寄ってくる。


かすみ「侑先輩……歩夢先輩……リナ子……早く……帰ってきて……」


祈るように呟いた──そのときだった。

目の前のウルトラホールが眩く輝いて……その向こうから──


せつ菜「……! 皆さん!!」

しずく「……! あのポケモンたちは……!」
770 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:04:25.56 ID:jK0Y5xHa0

真っ白な太陽と、真っ赤な太陽が──こちらに向かって駆けてきているところだった。


かすみ「……侑先輩ーーー……! 歩夢先輩ーーー……! リナ子ーーー……!!」


気付いたら、私は走り出していました。





    🎹    🎹    🎹





──ホールから飛び出すと、


せつ菜「侑さーん!! 歩夢さーん!! リナさーーん!!」

しずく「皆さん……よくぞ、ご無事で……っ……」


せつ菜ちゃんが手をぶんぶん振りながら駆け寄り、しずくちゃんは口元を押さえて涙を堪えていた。


 「ガォーレ」「ラリォーナ」


2匹のソルガレオが身を屈め──私たちは、“暁の階”へと降りていく。

そんなに長い時間ではなかったはずなのに……すごく久しぶりに地面を踏みしめた気がした。

そして──


かすみ「ゆ゛う゛せ゛んぱ〜い゛……!! あ゛ゆ゛む゛せ゛んぱ〜い゛……!! リ゛ナ゛こ゛ぉ゛〜〜……!!」


かすみちゃんが涙でぐしゃぐしゃになりながら、私たちに抱き着いてくる。


侑「おっとと……」

歩夢「きゃ……」

リナ『かすみちゃん……』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「み゛んな゛、か゛え゛って゛き゛て゛く゛れて゛……よ゛か゛った゛よ゛ぉ゛〜……」


かすみちゃんはもうすでに涙でぐしゃぐしゃだった。


侑「ただいま……かすみちゃん」

歩夢「ごめんね……心配掛けちゃったかな……」

かすみ「し゛んぱい゛し゛た゛にき゛ま゛って゛る゛じゃな゛い゛です゛か゛ぁ゛〜〜〜……!! い゛っし゛ゅ゛うか゛んもも゛と゛って゛こ゛な゛い゛か゛ら゛ぁ゛……、ゆ゛う゛せ゛んぱいた゛ち゛、ま゛け゛ち゛ゃった゛んじゃな゛いか゛って゛ぇ゛……」

しずく「そうですよ……っ、どれだけ心配したと思ってるんですか……っ……」

侑「え……!?」

歩夢「い、一週間……?」

侑「私たちがウルトラスペースに居たのって……せいぜい半日くらいじゃ……」

リナ『……ソルガレオの力を使って亜光速で移動してたから……私たちが半日と感じていた間に、こっちでは一週間経過してたんだね……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「そ、そういうものなの……?」

リナ『そういうもの。むしろ、一週間くらいで済んでよかった』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||


そういうものらしい……。つまり、かすみちゃんたちは……一週間もウルトラビーストたちの猛攻に耐えながら、私たちを待ち続けてくれていたらしい……。
771 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:05:24.75 ID:jK0Y5xHa0

侑「ご、ごめんね……!! そんなことになってるなんて知らなくて……!!」

せつ菜「ですが……信じていました。きっと、お二人なら、帰ってきてくれると……」

歩夢「せつ菜ちゃん……」

かすみ「せ゛つ゛な゛せ゛んぱい゛す゛る゛い゛て゛す゛ぅ゛……!! か゛す゛み゛んか゛い゛お゛う゛と゛お゛も゛って゛た゛の゛に゛ぃ゛……!!」

せつ菜「え、あ……す、すみません……!」

しずく「はいはい……涙拭いてからにしようね。ほら、可愛い顔が台無しだよ?」

かすみ「か゛わ゛い゛く゛な゛い゛の゛や゛た゛ぁ゛〜〜……」

しずく「大丈夫だから、もう全部終わったからね……なでなで」

かすみ「し゛す゛こ゛ぉ゛〜……」

しずく「ちょっと今日は落ち着くまで、時間が掛かりそうです……」

せつ菜「それだけの戦いだったんです……今日くらいは存分に泣いても誰も文句は言いませんよ」

侑「うん。……ただいま、かすみちゃん」

歩夢「ただいま……待っててくれて、ありがとう」

かすみ「ひぐ……ひっく……っ……。……お゛か゛え゛り゛、な゛さ゛い゛〜……」


私たちが再会を喜び合う中、


彼方「3人とも……おかえり」

果林「……おかえりなさい」

エマ「侑ちゃん……歩夢ちゃん……リナちゃんも……よかった……っ……」

姫乃「……こっちでも、泣きださないでくださいよ……はい、ハンカチ……涙拭いてください……」

エマ「ご、ごめんね……ありがとう、姫乃ちゃん……」

遥「ふふ♪ ……おかえりなさい、侑さん、歩夢さん、リナさん」


彼方さんたちも、こちらにやってくる。


果林「無事に……終わったみたいね……」

侑「はい……!」

果林「それと……」


果林さんの視線が──


愛「…………」


やっと、ソルガレオの背から降りてきた、愛ちゃんに向けられる。


果林「……愛」

愛「…………」


果林さんは、愛ちゃんに歩み寄り──


果林「…………ごめんなさい」


愛ちゃんを抱きしめた。
772 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:06:07.38 ID:jK0Y5xHa0

愛「…………カリン……?」

果林「私……自分のことばっかりで……貴方の痛み……全然理解してなかった……」

愛「…………」

果林「……ごめんなさい……」


そして、


彼方「……愛ちゃん……ずっと一人にして……ごめんね……」

愛「……カナちゃん……」


彼方さんも愛ちゃんをギュッと抱きしめる。


彼方「……仲間がこんなに辛い思いしてたのに……わたしも……カリンちゃんも……自分たちのことでいっぱいっぱいで……、愛ちゃんの痛みに全然寄り添ってあげられなかった……」

愛「…………まだ…………アタシを……仲間って……言ってくれるんだね……」

彼方「……もちろんだよ……。途中で道は違えちゃったけど……わたしたちはずっと……4人で世界を救う為に……戦ってきたんだもん……」

果林「……私がしてしまった過ちは……元には戻らない……それでも……また、やり直したい……。……仲間として……」

彼方「……うん。……みんなで、やり直そう……」

愛「…………カリン…………カナちゃん…………。…………うん」


かつての仲間同士……抱き合う、3人を──


リナ『…………』 || ╹ _ ╹ ||

侑「リナちゃん」

リナ『……なぁに?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「行っておいで」

リナ『…………でも、私は……璃奈じゃ……』 || 𝅝• _ • ||

侑「大事なのは……姿形じゃないよ」

歩夢「本当に大切なのは……リナちゃんが、愛ちゃんたちを想う心……なんじゃないかな」

リナ『侑さん……歩夢さん……』 ||   _   ||


リナちゃんは少し考え込んだけど──


リナ『……私、行ってくる……!』 || > _ < ||


愛ちゃんたちのもとへと飛んでいった。


リナ『みんな……!!』 || > _ < ||

愛「……ぁ……」

果林「……璃奈ちゃん」

彼方「……ふふ……やっと4人、揃ったね」

リナ『……私……私も……またみんなと……やり直したい……。……こんな姿になっちゃったけど……。……ダメ……かな……』 || > _ < ||

彼方「……もちろん大歓迎だよ〜♪ ね、果林ちゃん♪」

果林「ええ……また4人で」


頷く彼方さんと果林さん、


愛「……ぁ……ぇっと……」
773 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:06:38.91 ID:jK0Y5xHa0

愛ちゃんはリナちゃんの言葉に目を泳がせていたけど──


果林「ほら……愛も」

彼方「……愛ちゃん」

愛「…………」


果林さんが愛ちゃんの背中を叩き、彼方さんが愛ちゃんの肩に手を置く。


リナ『……愛さん……』 || ╹ _ ╹ ||

愛「…………」


二人が向き合う。だけど──


愛「………………すぐには…………ごめん…………」


愛ちゃんはそう言って、目を逸らす。


リナ『……! ……だ、だよね……ごめんなさい……』 || 𝅝• _ • ||

愛「でも……」

リナ『……!』 || ╹ᇫ╹ ||

愛「…………少しずつ……受け止めていくから……。……あの子が選ばせてくれた未来を……受け止めていくから……」

リナ『……愛さん……』 || 𝅝• _ • ||

愛「だから……少しだけ……もう少しだけ……待ってて……──りなりー」

リナ『……!! 今……』 || 𝅝• _ • ||

愛「…………」


愛ちゃんはそれっきり、口を閉ざしてしまったけど──


リナ『うん……待ってる。待ってるね……!』 || > ◡ <𝅝||


リナちゃんには──うぅん、璃奈ちゃんには、ちゃんと伝わったようだった。


姫乃「…………」

エマ「姫乃ちゃんたちは……行かなくていいの……?」

姫乃「……入れませんよ……。……あそこは、あの4人の場所ですから……」

遥「はい……やっと……長いわだかまりが解け始めたんです……今は4人で……」

姫乃「……だから、邪魔……出来ませんよ」

エマ「……そっか。……偉い偉い」

姫乃「……頭撫でないでください……」

エマ「……ふふ、遠慮しなくていいんだよ♪」

姫乃「してません!!」

遥「ふふ、すっかり仲良しですね♪」

エマ「うん♪」

姫乃「あぁもう……。……まあ、いいですよ……今くらい……」


──こうして……長かった戦いは……終わったのだった。
774 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:08:36.37 ID:jK0Y5xHa0

歩夢「侑ちゃん」

侑「ん」

歩夢「帰ろっか」

侑「うん」


私たちはやっと……平穏な日常へと、帰っていく──



775 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:09:06.29 ID:jK0Y5xHa0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【暁の階】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.●⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口
776 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:09:40.27 ID:jK0Y5xHa0

 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.79 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.76 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.76 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.75 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.74 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.73 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
      ソルガレオ Lv.77 特性:メタルプロテクト 性格:ゆうかん 個性:からだがじょうぶ
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:259匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.65 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.66 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.64 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.63 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.62 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ソルガレオ✨ Lv.77 特性:メタルプロテクト 性格:なまいき 個性:ひるねをよくする
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:227匹 捕まえた数:20匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.80 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.74 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.73 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.72 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.73 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.73 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:262匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.67 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.67 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.67 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.67 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.67 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.67 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:238匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ダクマ♂ Lv.38 特性:せいしんりょく 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.86 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.82 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.84 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.80 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.83 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:75匹 捕まえた数:9匹


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



777 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:14:24.67 ID:gpGK8xOx0

■Chapter074 『それから……』 【SIDE Yu】





 『──さん……侑さん……起きて、侑さん』

侑「…………ん、ぅ…………」


声がして、ぼんやりと目を開ける。


リナ『朝だよ、侑さん♪』 || > ◡ < ||

侑「……リナちゃん……おはよ……」

リナ『おはよう♪』 || > ◡ < ||


リナちゃんの挨拶と同時に──


 「ブィ♪」
侑「ぐぇ……」


イーブイがお腹に飛び乗ってくる。


侑「それやめてって言ってるのに……」
 「ブイブイ♪」

リナ『イーブイも早く起きろって言ってるよ♪』 || > 𝅎 < ||

侑「起きるから……」
 「ブイ♪」


イーブイをお腹の上から降ろして、ベランダへと出て行くと──


歩夢「──あ、おはよう、侑ちゃん、リナちゃん♪」
 「シャーボ」


いつものように、ベランダ越しに歩夢が待っていた。


侑「おはよ、歩夢。サスケも」

リナ『おはよう♪』 || > 𝅎 < ||

 「ブイ」


私が歩夢たちに挨拶をしていると、とことこと私の後を付いて部屋から出てきたイーブイが、器用にベランダの手すりに飛び乗って、歩夢の部屋へと歩いて行く。


 「ブイ♪」
歩夢「イーブイもおはよう♪」


歩夢が挨拶しながら、イーブイを抱っこすると、イーブイは嬉しそうに鳴く。


侑「落ちても知らないよ……」

歩夢「そのときは侑ちゃんが助けてくれるから平気だよね〜♪」
 「ブイ♪」

侑「歩夢……あんまり甘やかさないでよ〜……」


まあ……こんな会話が出来るのも……平和だからこそだけどさ……。
778 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:15:08.29 ID:gpGK8xOx0

リナ『歩夢さんは久しぶりのお家のベッドだったと思うけど……昨日はよく眠れた?』 || ╹ᇫ╹ ||

歩夢「うん、たくさん寝て、調子がいいくらい♪」

侑「やっぱり、自分の家のベッドが一番だよねぇ……病院のベッドはなんか気疲れしちゃうし……」

歩夢「あはは……そうだね。私はみんなでお泊りしてるみたいで楽しかったけど」


──なんで病院のベッドの話が出るかというと……私たちはつい最近まで、検査入院のため国際警察の持っている医療機関で過ごしていたからだ。

私、歩夢、かすみちゃん、しずくちゃん、せつ菜ちゃんの5人は戦いのために何度もウルトラスペース内を行き来していたため、“Fall”のような症状が出ていないかの検査をする必要があった。

幸い、誰にも症状らしい症状は出ていなかったし……特にかすみちゃんは、5人の中でも一番ウルトラスペースで過ごした時間が少なかったために、入院したのはたった1日だけで……。


かすみ『なんで、かすみんだけ一人ハブられてるみたいになってるんですかっ!』

しずく『退院出来るんだからいいでしょ……』


逆に文句を言って、しずくちゃんに呆れられていた。

私は最後の戦いで長時間ウルトラスペースに居続けたため、せつ菜ちゃんも長い間、別の世界で過ごしていたことから、1週間ほど掛けて精密検査を行った。

そして、異常がなかったため退院。

歩夢はウツロイドの毒の影響がないかなどを詳しく調べたため……さらに1週間長く入院していたけど……全く問題がなかったということで、昨日退院になった。

ただ……しずくちゃんはまだ入院中だ。


侑「しずくちゃん、元気だった?」

歩夢「うん。少しずつウルトラビースト症もよくなるだろうって」

侑「そっか……よかった……」


しずくちゃんは……フェローチェから受けたウルトラビースト症による後遺症が少し残っていた。

ただ、本人の意思の強さで、ほとんど克服しかけていたらしく……さらに、果林さんがフェローチェとフェローチェの知識を提供したことによって、快復も十分に見込めるとのことらしかった。


侑「……さて……今日はどうする……?」

歩夢「うーん……せっかくだし、9番道路の方にお散歩に行かない? 太陽の花畑に行きたいな♪」

侑「ふふ、わかった」

歩夢「じゃあ、私準備するから、侑ちゃんも朝ごはん食べたら来てね♪」

侑「了解」


歩夢がパタパタと部屋に戻っていく。


侑「……あ」

リナ『どうかしたの?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「イーブイ……歩夢が連れてっちゃった……」

リナ『……相変わらずどっちが“おや”なんだか……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「ホントにね……。……んー……」


私はベランダで軽く伸びをする。

空を見上げると──


侑「……今日も平和だね」

リナ『うん』 || ╹ ◡ ╹ ||
779 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:16:31.65 ID:gpGK8xOx0

青い青い空が広がっていた。

みんなで守った……どこまでも続く、青い空が──





    🎹    🎹    🎹





さて……あの後、みんながどうなったかを少し話そうかな。

まず、かすみちゃんとしずくちゃん。


かすみ「さぁ、行くよジュカイン! いざ、チャンピオンロードへ!」
 「カインッ!!!」

しずく「ふふ、張り切ってるね♪」

かすみ「もちろん! かすみん、このままチャンピオンになっちゃうかも!」

しずく「頑張ろうね♪ 応援してるよ!」

かすみ「うん! しず子、ちゃんと付いてきてね!」

しずく「もちろん。かすみさんとなら、どこまででも」

かすみ「じゃあ、しゅっぱ〜つ!!」
 「カインッ!!!」


かすみちゃんはしずくちゃんが退院後、またすぐに二人で旅に出たみたい。

あっちこっちのジムで本気のジムリーダーと戦ったり……今は四天王への挑戦もしているという話を聞いたり聞かなかったり。

しずくちゃんは、そんなかすみちゃんと一緒に、冒険を続けているみたい。

前にセキレイで会ったときに、しずくちゃんには旅の目的があるのか訊ねてみたら──


しずく『今は……かすみさんと一緒に、この楽しい旅を続けられたら……それだけで幸せなんです。……あ、これ、かすみさんには内緒にしてくださいね……? ……さすがに本人に知られるのは、恥ずかしいので……なんて♪』


そんな風に言って、いたずらっぽく笑っていた。

今も二人はこのオトノキ地方のどこかで、仲良く冒険をしている。



 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.81 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.75 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.73 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.72 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.73 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.73 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:269匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.67 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.67 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.67 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.67 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.67 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.67 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:256匹 捕まえた数:23匹



780 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:17:20.38 ID:gpGK8xOx0

    🎹    🎹    🎹





次にせつ菜ちゃん。せつ菜ちゃんには千歌さんの誘拐幇助の容疑が掛けられていたんだけど……千歌さんがこれを真っ向から否定。

頑なに、あれはたまたまバトル中に起こったアクシデントだったとリーグに主張し続け……果林さんからも、せつ菜ちゃんはあくまで自分が無理やり言うことを聞かせていたという証言から、完全にお咎めなしとまではいかなかったけど、リーグから厳重注意を受けるくらいに落ち着いた。

……ただ、せつ菜ちゃんもせつ菜ちゃんのご両親も、逆にそれでは納得がいかなったらしく……特にせつ菜ちゃん本人が、ちゃんとペナルティを科して欲しいとリーグに強く主張したらしい。

まさかの当事者からの申し出に海未さんは相当頭を悩ませたらしいけど……結局、3ヶ月間のトレーナー活動の制限及び地域への奉仕活動を言い渡され、ペナルティを受けたせつ菜ちゃんは何故か満足気だったとか……。

そして……せつ菜ちゃんの事実上の責任者だった真姫さんは責任を取って、ジムリーダーを辞め……るつもりだったらしいけど……これも、せつ菜ちゃんのご両親が反対し不問に……なるかと思いきや、これまた何故か当事者の真姫さんが、「それじゃ、示しが付かない」と海未さんに直談判。

悩みに悩んだ海未さんは、突然のジムリーダー辞職は街への影響も大きすぎるという理由から、辞職は受け入れず、3ヶ月間の謹慎ということに落ち着いたそうだ。

なんだか、せつ菜ちゃんと真姫さんの頑固さは……ある意味似た者同士なのかもしれない。

真姫さんが謹慎中は臨時で梨子さんがジムを見ていたそうだ。

そして、せつ菜ちゃんは今──


せつ菜「……これじゃ、全然ダメ」

菜々父「……これでダメなのか」

せつ菜「確かに硬い素材だとは思うけど……私のポケモンのスピードも乗せたら、簡単に壊せちゃうかな。硬度だけじゃなくて、もっと靭性を高めないと耐えられないと思う」

菜々父「わかった。改良しよう。……また、時間があるときに、意見を聴かせてくれ」

せつ菜「うん、わかった」

菜々母「二人ともー、お仕事の話もいいけど、いい加減ご飯にしましょうー?」

せつ菜「あ、お母さんが呼んでる……! 行こ、お父さん」

菜々父「そうだな。菜々」


以前のように、修行の日々を過ごしながら……時折お父さんのお仕事を手伝っているそうだ。

その内容は……ポケモンの攻撃にも耐えられる装甲や建材の研究。

ただ、前と違って、ポケモンと人とを断絶するものとしてではなく、人とポケモンがよりよく共存するために……ポケモンが苦手な人や小さな子供でも安心してポケモンと触れ合えるようにするための道具を研究しているそうだ。

最近はよくご両親とポケモンバトルの観戦に行くことも増えたらしく、この間会ったときにその話を嬉しそうに話してくれた。

すっかりわだかまりは解消され──前以上に笑顔が明るくて、元気で……そして、誰よりも強い、私が憧れたせつ菜ちゃんに戻ってくれて……本当に心の底から安心している。

もう、心配の必要はなさそうだ。



 主人公 せつ菜
 手持ち ダクマ♂ Lv.51 特性:せいしんりょく 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.86 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.82 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.84 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.80 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.83 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:143匹 捕まえた数:9匹



781 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:18:32.73 ID:gpGK8xOx0

    🎹    🎹    🎹





次は彼方さんと遥ちゃん。

あの戦いのあと……国際警察とオトノキのポケモンリーグは連携して、プリズムステイツ政府と交渉をしていくことになったようです。

そして、その間に立つのは彼方さんたち……なんだけど……。

彼方さんたちはプリズムステイツからは敵として認識されていたため、国際警察の護衛を付けた状態で、一旦プリズムステイツへ向かい、璃奈ちゃんの事故や……そもそも、世界を救うために政府がやろうとしていた他世界への侵略を公表。

詳しくはわからないけど……かなりいろいろあった中で、結局政府の代表や役員たちが更迭されることになったらしい。そして、組織も事実上の解体……。

今後どういう形になっていくのかはわからない。住民たちを移住させるのか、どうにか新しい解決方法を見つけるか……そこにまだ答えは出ていないけど……全てを一からやり直して、一歩ずつ一歩ずつ、誰もが笑える未来を目指して、こっちの世界と向こうの世界を行き来しながら日々奔走しているそうだ。

ちなみに、あの戦いが終わったあと、私と歩夢の2匹のソルガレオは彼方さんにお返しした。

もともと私たちのポケモンではなかったし……今後、世界間を行き来して、交渉をしていくには必要だと思ったからだ。

そして、リナちゃんも、たびたび知恵を貸すために彼方さんのところに呼び出されている。

そういえば……それについて、彼方さんのところを訪れた際に、こんな会話をした。


リナ『ディアルガたちの力を使えば、救えないかって?』 || ╹ᇫ╹ ||

彼方「うん……。愛ちゃんは爆発させようとしてたけど〜……うまく力をコントロールすれば出来るんじゃないかなって〜……」

リナ『……うーん。……出来るかもしれないし、出来ないかもしれない』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「伝説のポケモンでも、出来るかわからないの……?」

リナ『特異点への到達自体、今のままじゃ事実上の片道切符みたいなものだし……。それに、すごい力を持ってても、ただインフレーションさせることと、制御するのじゃ難易度も変わってくる。どれくらいの規模や制約があるのかをしっかり確認しないと……難しい。試してみる価値はあるけど、それは結局これからの研究次第かな……』 || ╹ᇫ╹ ||

彼方「そっか〜……なかなか簡単には行かないね〜……」

リナ『それに……理論を提唱していた私が言うのはおかしいかもしれないけど……どこかから無理やりエネルギーを持ってきても……結局どこかで歪みが生じちゃうんじゃないかなって……今は思ってる』 || 𝅝• _ • ||

侑「……」

リナ『規模が大きすぎてわかりづらいけど……結局、起こっているのは自然現象だから……無理やり仕組みを変えるんじゃなくて、どう折り合いを付けていくかを考えなくちゃいけなかったのかなって……』 || > _ <𝅝||

彼方「……それは……そうかもしれないね……」

リナ『もちろん、抜本的に解決出来る方法があるかもしれないし、それはこれからも探していく。自分たちの住んでいる場所はもう寿命だから諦めようって言われても、誰も彼もが「はい、わかりました」とはなかなかならないし……そういう考えの違いはまた争いを生む。そういう問題も含めて……私たちは向き合っていかなくちゃいけないんだと思う』 || ╹ _ ╹ ||

侑「……もし、私たちに何か協力できることがあったら、遠慮なく言ってください……! リナちゃんや彼方さんたちが私たちの世界を守ってくれたみたいに……私たちもそっちの世界を助ける何かが出来ればって思うから……」

彼方「ありがとう、侑ちゃん〜……その気持ちだけでも心強いよ〜」

リナ『うん! そのときはお願いさせてもらうね!』 || > ◡ < ||


果たして、世界の寿命というものが人の手にどうにか出来るものなのかはわからないけど……誰もが手を取り合える落としどころが見つかればと願うばかりだ……。

そして……これはいつか、私たちの世界にも訪れる問題だということも忘れないように……。



782 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:19:37.76 ID:gpGK8xOx0

    🎹    🎹    🎹





果林さんたちは、戦いのあと……本人たちもわかっていたように、国際警察に捕まり、収監されることになった。

ただ、他世界の住人というのは当たり前だけど前例がなく……扱いには困っている模様。

果林さんたちが罪を認めて、償う気で居るのが、ある意味救いかもしれない──


エマ「果林ちゃん、体調崩してない……? ご飯ちゃんと食べてる……? 朝はちゃんと起きられてる……?」

果林「……その話、先週の面会でもしたわよ。……大丈夫よ、ご飯は食べてるし、至って健康。……朝は……まあ、頑張って起きてる」

エマ「なら、いいんだけど……。……他の二人は……? 特に姫乃ちゃんは面会に来ても会ってくれなくて……」

果林「愛と姫乃もたまに会うけど……模範囚みたいよ」

エマ「ちゃんと出来てるんだね……! よかったぁ……みんな偉いよ……!」

果林「はぁ……悪いことして捕まったんだから、ちょっとまともなことしたって、別に偉くないわよ……」

エマ「そ、そんなことないよ……!」

果林「全く、エマ……そんなんじゃ、悪い人に騙されないかが心配だわ……」

エマ「だ、大丈夫だよ……たぶん」

果林「……あんまり心配しないで、エマ。私たち……少しでも早く外に出て、彼方や貴方と一緒に……やり直すつもりだから。待ってて」

エマ「果林ちゃん……。……うん、待ってる」


エマさんは……あの戦いのあと、牧場での仕事を辞め──なんと、ポケモンリーグの職員になったらしかった。

海未さんも事情を知っていたし、彼方さんや果林さんとの交友関係もあるエマさんから、二つの世界の橋渡しを手伝いたいと申し出があり、採用したらしい。

もちろん、そういう立場になるにはいろいろ準備も必要なので……今は職員として働きながら、勉強中だそうだ。

ただ、今でも牧場の仕事は好きらしく、休みの日にはコメコに帰って牧場のお手伝いをしているらしい。

あまりの働きぶりに、コメコの人たちも海未さんも少し冷や冷やしてるらしいけど……。エマさん本人は割とケロっとしている辺り、やっぱり山育ちの体力はすごいってことなのかな……たぶん。



783 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:20:10.66 ID:gpGK8xOx0

    🎹    🎹    🎹





そして最後に──


愛「……いらっしゃい、ゆうゆ、歩夢」

侑「……愛ちゃん」

歩夢「……元気?」

愛「あはは、困ったことに割と元気なんだよね……意外とご飯もおいしいしね。もんじゃが出てこないのはちょっと寂しいけど……」

歩夢「もんじゃ……差し入れが出来たらよかったんだけど……」

愛「冗談だって、真に受けないでよ。もう、歩夢ったら素直なんだから♪」


そう言って愛ちゃんはカラカラと笑う。


愛「あと……ゆうゆの背中に隠れてないで、出ておいでよ」

リナ『……こ、こんにちは』 || ╹ _ ╹ ||

愛「表情硬いよ。表情を豊かにするために璃奈ちゃんボードを考えたんだからさ、笑って──りなりー」

リナ『うん』 || ╹ ◡ ╹ ||


愛ちゃんにはこうして、リナちゃんと一緒に定期的に会いに来ている。

まだぎこちなさはあるものの……愛ちゃんもリナちゃんも……少しずつ、少しずつ、今の形を受け入れようと頑張っている。


愛「みんな……ありがとね。あんなしょーもないことしたアタシに……何度も面会に来てくれて」

歩夢「しょうもなくなんて思ってないよ」

侑「私たちも……ドッグランで助けてもらったし」

愛「あはは♪ あれを助けてもらったなんて言えるの、ゆうゆたちくらいだよ♪ お人好し過ぎて心配になっちゃうよ……」


愛ちゃんはそう言って笑うけど──


愛「……でも、りなりーが……そんな優しい人たちと出会えてよかったって……今は……心の底からそう思うよ」

リナ『愛さん……』 || 𝅝• _ • ||

愛「ほら、泣かないでって! 相手と楽しく話したいときは〜?」

リナ『リナちゃんボード「にっこりん」』 ||,,> ◡ <,,||

愛「そうそれそれ♪」

リナ『うん!』 ||,,> ◡ <,,||

愛「さってと……アタシはそろそろ戻ろうかな」

侑「もう行っちゃうの……?」

愛「心配して来てくれる人がいるだけで……アタシには十分すぎるよ」


そう言って、面会室から出て行こうとする際、


愛「あ、そだ……歩夢」


愛ちゃんが振り返って、歩夢を呼ぶ。
784 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:20:47.81 ID:gpGK8xOx0

歩夢「?」

愛「……もしまた、アタシがバカなことしそうになったら……引っ叩いて、目覚まさせてね」

歩夢「え、えっと……ご、ごめんね……叩いちゃって……」

愛「……くく♪ その返し……歩夢らしいや♪」


愛ちゃんは笑いながら、去っていくのだった。





    🎹    🎹    🎹





侑「──ん〜……良い天気……」
 「ブィィ…」

歩夢「そうだねぇ……」
 「シャーボ…zzz」

リナ『今日暖かいね、お外でお昼寝しても大丈夫そうなくらい』 || > ◡ < ||


花畑に歩夢と二人で寝っ転がっていると、リナちゃんの言うとおりぽかぽかしていて、眠ってしまいそうだ。


侑「……歩夢」

歩夢「んー?」

侑「次は……どこ行こうか……」

歩夢「ふふ……♪ 侑ちゃんと一緒ならどこへでも♪」

侑「……そういうのが一番困るんだけどなぁ……」

歩夢「だって……侑ちゃんとなら、どんな景色も……宝物なんだもん……♪」

侑「じゃあ……その新しい宝物……探しに行こうか……!」


私は起き上がって、歩夢に手を差し伸べる。


歩夢「うん♪」


歩夢が私の手を取って──


侑「イーブイ! リナちゃん!」
 「イブイッ♪」

リナ『うん!』 || > ◡ < ||

侑「歩夢!」

歩夢「うん♪ 行こう、侑ちゃん♪」

侑「新しい冒険の旅に……!!」


──また、ポケットモンスターの世界へ……!!

785 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:21:37.16 ID:gpGK8xOx0

 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.80 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.76 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.76 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.75 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.74 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.73 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:261匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.66 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.66 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.64 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.63 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.62 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:240匹 捕まえた数:24匹



786 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:22:10.13 ID:gpGK8xOx0

    🎹    🎹    🎹





 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...

 侑と 歩夢は
 レポートに しっかり かきのこした!



787 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:22:58.01 ID:gpGK8xOx0

    ☀    ☀    ☀





相談役「……穂乃果さん、ここまでありがとう」

穂乃果「いえ……今回は私……いいところなかったなぁ……」

相談役「ふふ、世代交代かしら?」

穂乃果「まだ、負けるつもりないですよー!」

相談役「冗談よ」

穂乃果「……それにしても……これ以上は、いいんですか……?」

相談役「……今回は結局、何も異常を確認出来なかったから……。……リーグ側からはひとまずね……」

穂乃果「……本当に……今回は見逃してくれただけ……なのかな……」


穂乃果「龍神様──レックウザは……」





    🔔    🔔    🔔





  「──ヴァァァッ…」


バチバチと稲妻をスパークさせながら、飛翔する鳥ポケモンに向かって、


 「精靈球!!」


精靈球──モンスターボールを投げつけると、そのポケモンはボールに吸い込まれ、カツーンと音を立てながら、地面に落下した。


 「それじゃ、ミア。あとはよろしくね」


そう言いながら私は、今しがたポケモンを捕まえたボールを投げ渡す。


 「I got it.」

 「さて……そろそろ始めましょうか……」


私は、この地方にある大きな大きな大樹──音ノ木を見据える。


 「待っててね……──栞子」


そう呟いて……。



788 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:23:57.08 ID:gpGK8xOx0

    🔖    🔖    🔖





 「──────キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」

栞子「……ダメです…………。……ダメです……ッ……」

 「──────キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」

栞子「お願い……します……。……龍神様……」

 「──────キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」


額を汗が伝う。

苦しい。だけど、今解き放つわけにいかない。

ウルトラビーストによる襲撃は終わっても……まだこの地方の危機は……去っていない。

今、怒れる龍神様を……解き放ってしまったら……。

オトノキ地方は──……壊滅する。





...Next EpisodeΔ


...To be continued.



789 : ◆tdNJrUZxQg [sage saga]:2023/01/11(水) 14:08:26.52 ID:mgX0GYuD0
残り分量的にこの板で終わらないのと、キリがいいので次スレに行きます。

次スレ
侑「ポケットモンスター虹ヶ咲!」 Part3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1673413466/
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2023/03/18(土) 12:53:21.06 ID:84Q7DkhpO
幕張イベまで10日連続
私生活垂れ流し配信/3日目【3/10】

「ポケモンORAS(オメガルビー)人生縛りをやる人」
(10:18〜)

https://www.twitch.tv/kato_junichi0817
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2023/03/19(日) 17:19:20.42 ID:2fT54XhjO
「ポケモンORAS/オメガルビー
人生縛りをやる人2日目」(後編)

▽vsナギ戦〜ストーリークリアまで
(10:31〜)

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