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勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編の完結
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528 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:26:02.96 ID:ckhR7HQw0
『明け方』
ギギギー バタン
盗賊「…」コソコソ
女オーク「すぅ…」zzz
剣士「すや…」zzz
盗賊「…」---なるほどな---
盗賊「…」---この2人はこんな風に極寒を生きて来たか---
盗賊「…」---わかるぜ?---
盗賊「…」---馬車の中でそうやって温め合ってたんだろ?---
盗賊「…」---俺も姉御に温めて貰った事がある---
盗賊「…」---姉御は俺だけの物じゃ無かったけどな---
盗賊「…」---まぁ羨ましい限りよ---
盗賊「…」---しかしまぁ…---
盗賊「…」---貧しく育った方が愛は育むな---
盗賊「…」---俺はロボを温めてやらんとイカンな---
盗賊「…」コソーリ ギュゥ
ロボ「…」クルリ
盗賊「動くんじゃ無ぇ」ヒソ
ロボ「…」ピタ
盗賊「ちっと寝る…」ヒソ
ロボ「…」
盗賊「暖かいか?」ヒソ
ロボ「…」
盗賊「…」---待ってろ---
---お前に命を与えてやる---
---------------
529 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:26:42.99 ID:ckhR7HQw0
『昼前』
ユサユサ ユサユサ
学者「兄貴!そろそろ起きて下せぇ!」
盗賊「んが?」パチ
剣士「あ!!起きた?」
盗賊「やべぇ…がっつり寝ちまった…」ゴシゴシ
学者「昨夜は遅かったんすか?」
盗賊「まぁな?繋いである鎖を切るのに手こずってよ…」
学者「そら大変でしたねぇ…」
盗賊「寒くて死ぬかと思ったわ」
剣士「鎖?」
盗賊「あぁ気にするな…こっちの話だ」
剣士「そう…ねぇ朗報だよ!姉さんが船動かすの手伝っても良いと言ってるよ」
盗賊「おぉ!!説得成功か」
剣士「それで?これからどうすれば良い?持って行く物とか準備しないと…」
盗賊「う〜ん…お前等剣を使うと言ってたな?」
剣士「あるよ!!」
盗賊「なら最低限戦える準備だけしてくれ」
剣士「それだけ?」
盗賊「まぁ特に何か持って行く事も無いんだが…そうだ!今からソリを調達してくるからそこに荷物をまとめてくれ」
剣士「分かった!」
盗賊「おいゲス!!」
学者「へい!!」
盗賊「お前魚を買い付けて来い…あと塩とか適当に食料買ってソリに積んでくれ」
学者「分かりやした」
盗賊「そうだミライ!そこにある小さな炉を持って行って構わんか?それから石炭も欲しいな」
剣士「家に有るだけ持って行けるよ…石炭は樽に一杯分有るかな」
盗賊「まぁ何とかなるか…早速俺はソリ調達行って来るから荷物のまとめはやっといてくれ」
剣士「うん…姉さんにも伝えて置く」
盗賊「姉は何処行ったんだ?」
剣士「炭坑の方さ…向こうに色々荷物を残してるから取りに行った」
盗賊「そうか…出発は夜だから準備はゆっくりで良いぞ」
学者「じゃぁ兄貴!!買い付け行って来やす」タッタ
--------------
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:27:13.61 ID:ckhR7HQw0
『夕方』
ヨッコラ ドサリ
盗賊「ようし!これで一通り荷物は乗ったな?」
剣士「姉さん遅いなぁ…」オロオロ
盗賊「炭坑は遠いのか?」
剣士「そんなに遠くない…何か有ったのかな?」
学者「ハハーン…兄貴!これ手切れ金を要求されてるパターンじゃ無いっすかね?」
剣士「手切れ金?」
盗賊「まぁ良くある事なんだ…仕事を辞めると言ったら金を要求されるのよ」
剣士「そんな事が…」
盗賊「ミライ!お前炭坑の場所は知ってるんだな?」
剣士「うん…」
盗賊「ゲス!お前一緒に行ってやれ…得意なやつだろ」
学者「良いんすか?又怪我人が出ちまいやすが?」
盗賊「ほどほどにだ…ついでにピンハネした分も取り返して来い」
学者「ウヒヒヒ腕がなりやすねぇ…」ボキボキ
盗賊「さて俺はもう一度港を見て来る…夜には戻って来いよ」
学者「分かりやした…ミライ君…案内して下せぇ」
剣士「うん…行こう!」スタ
盗賊「じゃぁロボ!付いて来い」
ロボ「ピポポ…」プシュー
---------------
531 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:27:49.10 ID:ckhR7HQw0
『旧軍港』
ヨイショー ドスン
盗賊「ようし!!ロボはこの樽の中で見張りをしていてくれ」
ロボ「ピポポ…」プシュー
盗賊「魚を降ろした漁船は桟橋を離れて向こう側に船を移動するんだ…」
盗賊「そのタイミングでいつも通り光で知らせて欲しい」
盗賊「光を見て俺らは一気にあのキャラック船に乗り込む」
盗賊「まぁ…夜になったら殆ど人は居ないからそんなに難しい仕事じゃない」
盗賊「出来るな?」
ロボ「ピポポ…」クルリン
盗賊「ようし!ちっとの間一人になるが…孤独死すんなよ?」
盗賊「じゃぁ上手くやれ…俺は一旦戻る」ダダ
--------------
532 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:28:26.67 ID:ckhR7HQw0
『その夜』
ゴソゴソ ゴソゴソ
学者「いやぁぁ随分あいつ等貯め込んで居やしたねぇ…」スタ
盗賊「おぉ!!戻ったか!!」
学者「へい!やっぱり手切れ金で揉めて居やしたよ」
盗賊「怪我は無いか?」
女オーク「お陰様で…」
盗賊「なんだ元気無ぇな」
剣士「ショック受けてるんだ…一生賢明働いたのに騙されて居たのを知ってさ」
盗賊「まぁなんだ…そういう輩は多い」
学者「でもピンハネされた分は大分取り返して来たと思うんすがね…」ジャラリ
盗賊「そりゃお前の取り分じゃ無いだろ」
女オーク「いえ…私が要らないと言ったから…」
盗賊「マジか…まぁ良い!!おいゲス!!今度レーションたっぷりおごってやれ!!」
学者「へいへい…ウヒヒヒ」
盗賊「そろそろ出発だから急いで準備しろ!」
剣士「姉さんの分はもう全部積んで有る…もう体一つで良いよ」
盗賊「そうか…ほんじゃ俺とリッカでソリを引くぞ」
女オーク「え!?どうして私の名を…」
剣士「あ…教えちゃった…ダメだった?」
女オーク「その名で呼ばれた事が無いから…」
剣士「あぁ…僕も名前では呼ばないね」
盗賊「なんだ呼ばれて気持ち悪いのか?何て呼べば良いんだ?」
女オーク「リッカ…」
剣士「僕もそう呼んだ方が良い?」
女オーク「…」
剣士「ねぇリッカ!…なんか恥ずかしいなぁ」
盗賊「何言ってんだ馬鹿!リッカで良いだろ…てかそろそろ出発の筈なんだ…ソリ引くの手伝え」
女オーク「え…あ…うん」スタ
盗賊「ミライとゲスはソリに乗れ…チョロチョロすると邪魔だ」
剣士「ロボは?」
盗賊「もう先に行ってる…」
ピカーーーー
盗賊「お!!合図だ!!行くぞ乗れ!!」グイ
学者「どんぴしゃでしたねぇ…」ピョン
剣士「あわわ…」ピョン
女オーク「ど…何処へ?」グイ
盗賊「港に決まってんだろ…急ぐぞ」
ススススー ズリズリ
--------------
533 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:29:09.53 ID:ckhR7HQw0
『港の桟橋』
ドタドタ
剣士「えええ!!?こ…この船!?」
盗賊「大きな声出すな!!黙って荷物を放り込め!!」
学者「ロボは向こうの樽っすね?回収して来るっす」
盗賊「樽ごと頼む…樽はその内必要になる」ワッセ ワッセ
学者「転がしても構わんすか?」
盗賊「背負ってこいアホが!!ロボは俺の一部だと言っただろう!!」ワッセ ワッセ
学者「わ…分かって居やすとも…トホホ」ダダ
女オーク「こ…これって…」ヨッコラ ドスン
剣士「まさかこんな方法で…」ワッセ ワッセ
盗賊「ようし!!ソリもこっから投げ入れるぞ!!リッカそっち持て!!」グイ
女オーク「フン!!」グイ
盗賊「さすが力持ちだな…いくぞ!?わっせぇぇぇ!!」
ドスーン!
盗賊「ようし乗って良いぞ!!」
剣士「ほ…本当に?」
盗賊「ビビるな!周りにゃ誰も居無ぇ!!」
剣士「あわわ…」ピョン ヨジヨジ
盗賊「リッカも乗って直ぐに帆を開いてくれ…」
女オーク「え…あ…ええと」ピョン ヨジヨジ
学者「兄貴ぃぃ…重いっす」ヨタヨタ
盗賊「ヘタレがぁ!!」グイ ドスン
学者「ひぃひぃ…」
盗賊「ようし!!桟橋のフックからロープ抜くぞ?飛び乗れ!!」スポ
学者「へい!!」ピョン スタ
盗賊「ヌハハ楽勝だ楽勝!!」ピョン スタ
--------------
534 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:30:28.86 ID:ckhR7HQw0
『船出』
ユラ〜リ グググ
盗賊「桟橋から離れりゃこっちのもんよ」
学者「やりやしたね?」ガッツ
盗賊「ゲス!!とりあえずお前が舵やれ!!船尾楼の内側にある」
学者「舵が楼の内側にあるタイプなんすね?」
盗賊「おう!!もう扉の錠は開けてある…あとは何とかして慣れろ」
学者「分かりやしたぁ!!」ダダ
盗賊「リッカとミライ!!帆の開き方は分かるか?」
剣士「何とか…ロープが凍ってて硬い…うぬぬぬ」グイグイ
盗賊「まぁ…ここまで来たら誰も追っては来れんから落ち着いてヤレ…俺は船首側の縦帆を開いて来る」ダダ
女オーク「ミライ!?そこは私がやるから…あなたは下に降りてロープを引っかける役をお願い」
剣士「分かったよ…」ピョン スタ
女オーク「よし!!」グイ シュルシュル
バサバサ
剣士「これ…漁船の時と一緒かな?」
女オーク「多分…私もそっちに降りる」ピョン ドスン
剣士「確か…この引っかけにグルグル回して…」グルグル
学者「お?お?お?…横に流れて…」
盗賊「おいゲス!!動き始めたから舵切って上手い事進めろ!!」
学者「へ…へい!!」グイ
ユラ〜リ グググ
盗賊「縦帆開くぞ!!」バサ
女オーク「ミライ!!今度は後ろの三角の帆を!!」ダダ
学者「おぉ…どんどん陸から離れて行くっすね…」
盗賊「ふぅぅぅ…後は慣れだな…しかし雪に月が反射して夜でも明るいのが救いだ」
学者「兄貴ぃ…これ2人じゃやっぱきつかったっすね?」
盗賊「だな?丁度良く人員を確保出来て良かった」
-------------
535 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:31:10.21 ID:ckhR7HQw0
『氷河の壁』
ズドドドドド ザブーーーン
盗賊「またクソでかいのが崩れたな…波が来るぞ!!何かに掴まって置け!!」
学者「氷河の壁からは離れた方が良いっすね…」グイ
盗賊「だな?…しかしやはり夜は暗い…このまま進めて良いのかどうか…」
グラ〜リ ユラ〜 ギシ
剣士「甲板に置きっぱなしの荷が動いてる!!」
盗賊「波が収まるまで甲板には出るな…波を被って落ちたら死ぬと思え」
剣士「石炭の入った樽が動いてて落ちちゃいそうだよ…」
盗賊「しゃぁ無ぇ…俺が行って来る!!炉で火を起こす準備しとけ」
剣士「うん…気を付けて」
ユラ〜リ ググググ
盗賊「うぉととととと…確かにこりゃ樽がどっか行っちまいそうだ」ダダ
-------------
536 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:31:42.87 ID:ckhR7HQw0
『小型の炉』
ボゥ… メラメラ
盗賊「よし…これで船尾楼の中だけはちったぁ温かくなる…」
剣士「4人共ここで寝泊まり?」
盗賊「炉が一つしか無いからそうなるな…持って来た毛皮を広げて寝床を確保して良いぞ」
学者「この船はな〜んも乗って無いんすね…」
盗賊「確認したが荷室の方に木材が少し乗ってるだけだな…あと腐った水が入った樽がいくつか有る」
剣士「あ!!そういえば水を持って来てない!!」
盗賊「おう心配すんな…空の樽があるからそいつに雪を突っ込んどきゃその内溶ける」
学者「さすが兄貴ぃ!!計算済みなんすね!!」
盗賊「まぁ…そういうのは夜が明けてからで良いだろう…喉が渇くなら雪食っとけ」
剣士「アハハそっかぁ…」
盗賊「んん?どうしたリッカ!にやけてるぞ?」
女オーク「何でも無いわ…ミライが楽しそうだから」
剣士「楽しいというか…まさか船を盗んでこんな事になると思って無かったからさ…ドキドキしてる」
盗賊「俺はちゃんと自己紹介したぜ?本職は泥棒だってな」
剣士「でも大丈夫?…この船はどこかのお金持ちの物だよ?」
盗賊「そんなん知らん!今は俺の物だ」
学者「まぁまぁミライ君!行動しないと何も手に入らないんす」ズイ
盗賊「そら俺が言った言葉だ!!ヘタレが言って良い言葉じゃ無ぇ!」
学者「兄貴ぃ…俺っちもたまには良い台詞言わせて下せぇ」
盗賊「さて!!…波も落ち着いた様だし荷物を此処に入れるぞ」スタ
剣士「そうだね…」スタ
--------------
537 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:32:14.93 ID:ckhR7HQw0
『翌朝』
ユラ〜リ ギシ
盗賊「風に乗ってるつもりだったがあまり速度出て居なさそうだ…」
学者「そうっすねぇ…流氷と一緒に流れてるって感じっすね」
盗賊「帆の塩梅はこれから慣れて行く必要がありそうだ…進んでない原因は多分帆の使い方がマズい」
女オーク「あまり速度を出すと逆に危ないらしいわ」
盗賊「流氷とぶつかるってか?」
女オーク「そう…氷は船よりも硬いから簡単に沈没してしまうそうよ」
盗賊「なるほど…まぁ昼間は帆走に慣れて夜はゆっくり行く感じにするか…」
剣士「ところでこれから何処へ?」
盗賊「このまま陸と氷河の間を抜けて地庄炉村という所に行く…5日くらいを見込んでたが…もっと掛かりそうだな」
剣士「地図とかある?」
盗賊「無い…だから陸を見失わない様に進める」
剣士「暖を取る石炭足りるだろうか…」
盗賊「船尾楼の隙間風をどうにかして節約するだな…まぁ今日はとりあえず船の掃除だ」
剣士「あ!!ちょっと探検して見たかったんだ」
盗賊「おう掃除ついでに行って来い!!良い物見つけたら持って来いよ?」
剣士「うん!!姉さん!!…ちが…リッカさ〜ん…う〜んなんか呼びにくいなぁ…」
盗賊「何言ってんだお前…」
女オーク「呼んだ?」ドスドス
剣士「船の掃除がてら探検に行こうよ…自由にして良いみたいだ」
盗賊「行って来い行って来い!!俺らは帆の使い方研究しとるわ…」
剣士「行こう!」グイ
女オーク「ウフフ…」スタ
ドタドタ
学者「な〜んかあの二人ぎこちないっすねぇ…」
盗賊「色々有んだろう…ほっとけ!」
--------------
538 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:33:03.80 ID:ckhR7HQw0
『甲板』
ドルァァァァ フン!!
盗賊「…しかしロープがカチカチになってて巻き取りシンドイな…ハァハァ」
学者「お?お?…おぉ…兄貴ぃ!!やっぱり横帆は追い風無い時は畳んだ方が速度出るみたいっす」
盗賊「なるほどな?だが頻繁に出し入れすんのはキツイわ…」
学者「夜の内は追い風だったんすけどねぇ…」
盗賊「どうせ昼と夜で向きが変わるんだろ…まぁ昼間だけ進めるなら前後の縦帆で進めって事だ」
学者「夜が追い風なんで上手く乗りたいっすねぇ…」
盗賊「氷山が無くなりゃそれでも良いだろうな…まぁ一応は進んでる訳だ…ゆっくり行くぞ」
ドタドタ
盗賊「よう!!何か見つけたか?」
剣士「掃除して火山灰を集めたんだ」
盗賊「そんなもん海に捨てておけ」
剣士「これ水と骨粉まぜて練れば粘土替わりに出来るよ…船尾楼の隙間風対策さ」
盗賊「骨粉なんか持って来て無いだろうが」
剣士「何かの骨が転がってたよ?炙って砕けば骨粉に出来る」
盗賊「骨?そんなん有ったか?」
剣士「一番下の船底って言うのかな?そこがゴミ捨て場になってたみたい…貝殻とかもあるよ」
盗賊「ヌハハそんな所まで見てないわな」
剣士「骨粉にしたら食料にもなるんだ」
盗賊「そうか…」---こいつ…骨を食って飢えを凌いできた訳か---
盗賊「…」---そうだ忘れてた…本来俺もそっち側の人間だったんだ---
剣士「自由にやってて構わないよね?」
盗賊「おう任せた!!こりゃ報酬払わんとな」
剣士「なんか新しい家が出来たみたいで楽しいよ…いっぱい工夫が出来そう」
盗賊「そりゃ結構!!」---見習わんとな---
--------------
539 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:33:40.04 ID:ckhR7HQw0
『船首』
バサバサ
盗賊「こんなもんか?」エッホ エッホ
学者「ひぃひぃ…帆の張り替えはしんどいっすねぇ…」
盗賊「動いてりゃ寒くも無ぇ!!慣れろ!!」グイ グイ
学者「ふぅぅぅ…やっぱ縦帆は横風受けて進むようになってるっすね…」
盗賊「その様だ…ちっと進む方角考えながら張り替えする必要がありそうだ」
学者「縦帆だけで大分速度出るみたいっすね…」
盗賊「うむ…夜の内は後方の縦帆だけで十分だな」
学者「そろそろ休憩しやせんか?」
盗賊「そうだな…魚仕入れて来ただろ?一匹焼いて食うか…」
学者「良いっすねぇ…リッカさんとミライ君も呼んで来るっす」
盗賊「おう!!俺は火を起こして置く」ダダ
--------------
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:34:24.94 ID:ckhR7HQw0
『小さな炉』
メラ パチパチ
学者「なんかちっこい炉を囲って食事するのも良い感じっすね…」モグ
盗賊「ほら干し芋焼けたぞ…食え」ポイ
女オーク「ありがとう…」ハム
盗賊「ミライは魚食うか?」
剣士「う〜ん…僕は芋が良いかな」
盗賊「なんだ魚が新鮮で美味いんだがな…」
剣士「僕は木の実とか根が好みなんだ…姉さんも同じ」
盗賊「そうか…まぁ良い…こりゃ魚が余りそうだ」ガブ モグ
剣士「レーション一杯あるけど?」
盗賊「そりゃ保存食だから残しとけ…どうしても食い物が足りない時に一口食えば良い」
剣士「そうだったんだ…」
盗賊「ほんで?掃除の方はどうよ?」
剣士「殆ど終わった…あぁそうそう!!荷室にあった樽に入った水…あれ水じゃ無くて油だよ」
盗賊「なぬ!?」
剣士「水なら凍るでしょ?」
盗賊「おぉ!!そういやそうだったな…油が残ってたのか」
学者「あ!!ロボに少し油をさした方が良いっすね…ここは海の上なんで錆びちまいやす」
盗賊「そりゃラッキーだ…そうか油が有るとなりゃ明かりにも困らんな」
学者「ランプ持って来て無いじゃないっすか…」
剣士「銅貨を叩いて延ばせば簡単な器は作れるよ…心材にロープの屑を入れればちょっとしたランプになる」
盗賊「お前作れるんか?」
剣士「僕は手先が器用で細工が得意なんだ…直ぐに出来るよ?」
盗賊「そりゃ助かるな…明かりが有ると無いとじゃ随分違う」
剣士「じゃぁ直ぐに作って来る…姉さんハンマー借りるね」スック
盗賊「銅貨ならたらふく持ってるぜ?」ジャラリ
剣士「あ!!それ使わせて貰うね」スタ
学者「いやぁ稀に見る良い人材を雇ったみたいっすねぇ…」
盗賊「だな?正直ここまで働けるとは思って居なかった…リッカは何か出来るんか?」
女オーク「え…私はミライの様に器用じゃないの…力仕事なら出来る」
盗賊「まぁそれで十分っちゃ十分だ」
---------------
541 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:34:58.53 ID:ckhR7HQw0
『お手伝いロボ』
カチャカチャ…
学者「大分ボロが来てるっすねぇ…軸受けを交換しないと直に壊れそうっす」
盗賊「やっぱりそうか…ここん所動きがおかしいと思ってたんだ」
学者「油差して少しは長持ちするとは思うんすが…そろそろ交換を考えた方が良いっすね」カチャ
盗賊「部品は手に入りそうか?」
学者「軸受けはジャンク屋を回って探せば見つかると思いやす…それよりも…」
盗賊「何だ?」
学者「人口筋肉の替えが見つからんかも知れんっす…もう作って無いんすよ」
盗賊「どの部分よ?」
学者「これ小動力化の為にモーターは使わないで人口筋肉で動いてるんす…耐用年数はとっくに超えてるっすね」
盗賊「そんな事前の整備時には言われなかったぞ?」
学者「まだ壊れて無いから言わなかっただけっすね…人口筋肉は寒さに弱いんであんま無理すると切れちまいやす」
盗賊「こいつも温めてやる必要が有るってか…」
学者「大事にするならそうっすね…切れたら替えが無いのは覚えて置いて下せぇ」
盗賊「ちぃぃ…そうだ!!キラーマシンの中にも同じような物が有るだろう…それで代替効かんのか?」
学者「キラーマシンの人口筋肉も同じ様に耐用年数超えてる筈っス…問題はもう作って無い事なんす」
盗賊「そういう事か…」
学者「キラーマシンから人口筋肉だけ取り外してストックしておくのは良さそうなんすが…考える事は皆同じなんすよ」
盗賊「そう簡単に見つからん訳だな?」
学者「そうっすね…さて可動部への油差しは終わりっす…ちっと動いて見て下せぇ」
ロボ「ピポポ…」ウィーン
学者「ロボの筐体に入れっぱなしの俺っちのバヨネッタ…回収しときやす」
盗賊「あぁ忘れてた…俺のラッパ銃も入ってるだろ」
学者「そのラッパ銃も手入れしやしょうか?」
盗賊「これは自分でやる」カチャ
--------------
542 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:35:37.53 ID:ckhR7HQw0
『船尾楼』
ユラ〜リ ギシ
盗賊「ロボ…お前はしばらくこの部屋からは出ない方が良さそうだ…ここならそれほど寒くない」
ロボ「ピピ…」シュン
盗賊「どうも無理させてた様だ…悪かったな?」
盗賊「お前用の毛皮が有るのは良いが…自分で発熱しないから保温になって無いのがなぁ…」
学者「ああ!!」
盗賊「何だ急に?」
学者「ソレっすね…発熱させれば良いっすね」
盗賊「何か案が有るのか?」
学者「白金…プラチナっす…プラチナは油と反応して発熱するんす」
盗賊「んなもんそうそう手に入らん…」
学者「機械の中に色々使ってるんすよ…ガラクタでも集めればいくらか回収できるんす」
盗賊「ふむ…地庄炉村でガラクタ探してみるか…10年前はあの辺もいくらか戦地になってた筈…」
学者「姉御の計画では地庄炉村の後は何処に行く感じなんすか?」
盗賊「盗賊ギルドから支援を得て荷を運ぶ先がフィン・イッシュなんだが…詳細が書かれていない」
学者「信用できるんすかね?」
盗賊「確かに…用心はしておかないと足物見られそうだな」
学者「どうやって接触するんすか?」
盗賊「酒場でコブラ酒を注文するらしい…その後向こうからアクションが有るんだとよ」
学者「うほーなんか楽しみっすね」
盗賊「俺は気に入ら無ぇがな…どうせ見定められてるんだろう…」---姉御抜きで話が通るんだろうか---
---------------
543 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:36:07.79 ID:ckhR7HQw0
『オイルランプ』
ユラユラ ピカー
盗賊「おぉぉ!!良いランプが出来たじゃ無ぇか…」
剣士「一人一個づつだよ…油は一杯あるからずっと点けて居ても良いね」
盗賊「おい!!このランプの上で湯を沸かせそうだな?」
剣士「そうだね?」
盗賊「おーし!!これでロボを温められるぞ…」
学者「あいやいやダメっす…暖め過ぎると脳が死んじまいます」
盗賊「んな事は分かってる!部屋を暖めりゃロボも温まるって話だ」
学者「ロボの筐体に入れちまうかと思いやした」
盗賊「そんな危ない事する訳無いだろう」
剣士「火山灰と骨粉で簡単なモルタル作るから炉を使わせて貰うよ」ゴソゴソ
盗賊「ほぉ?お前何でも作るんだな?」
剣士「うん…こういうの好きなんだ…今日は部屋を暖かくして休めるよ」
盗賊「そうか…ほんじゃこっちはミライに任せて俺らはそろそろ帆を畳みに行くぞ!」スック
学者「あぁぁぁ…寒いんすよねぇ…手が痛くなるんすよねぇ…」
盗賊「何ヘタレた事言ってんだ!行くぞ」グイ
---------------
544 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:36:40.33 ID:ckhR7HQw0
『夜』
ガチャリ バタン
盗賊「うぅぅぅ寒ぶっ…」スリスリ
学者「あぅぅぅ…」ガクガク ブルブル
女オーク「湯が沸いてるけど?」
盗賊「おう!ちっと飲むわ…」
剣士「もう帆は畳んだの?」
盗賊「うむ…夜は氷山との激突が怖いからあまり動かん事にした…まぁ…海流が丁度向こうに行ってるから流れに任せる」
剣士「なんか楽しいなぁ…」ワクワク
盗賊「そりゃ結構!もうモルタルで隙間は埋めたんか?」
剣士「うん!大分暖かくなったよ…壁の木材が冷たくなってるのはもう仕方ないね」
盗賊「布か何かで一枚仕切が出来りゃ良いんだがな…」
剣士「今はランプだけで部屋を暖めてるからね…限界な気がするなぁ…」
盗賊「なぬ!?炉は使って無いのか!」
剣士「隙間風が入って来なくなったからさ…下手に炉を使うと危ないかなと思って」
盗賊「炉は石炭2〜3個で良いんだ…空気が入らんほどここも機密が高い訳じゃ無いぞ?」
学者「空気が無くなるなら先にランプが消えるんでランプが点いてる内は大丈夫っすよ」
剣士「お!?そういう事か…」
盗賊「しかしこれで炉無しか…こりゃ快適に寝られそうだ…今晩は交代で睡眠な?」
剣士「じゃぁ先に寝て良いよ…僕は興奮して今全然眠れない」
盗賊「もうちっと暖かくなってからな?ふぅぅぅ…しかし外は死ぬほど寒いな…こりゃ船も放置するわ…」
-------------
545 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:37:12.01 ID:ckhR7HQw0
『数日後_昼間』
ザブ〜ン ユラ〜リ
剣士「大分海氷が減って来たね」
盗賊「だな?太陽で船に乗ってる雪が解けちまうから飲料用の水は急いで確保しとかんとイカン」
剣士「空いてる樽が1個しか無いね」
盗賊「う〜む…油が入った樽を開ける訳にもイカンしなぁ…」
剣士「そうだ!木材が少し乗ってたから木箱を作ろう…そしたら石炭を入れてる樽が1個空く」
盗賊「湯を沸かしてるから結構水を使うんだよな…まぁ樽2つありゃ何とか足りるか…」
剣士「あと何日掛かるのかな?」
盗賊「正直分からん…キ・カイを出て5日ぐらいのつもりだったんだが…」
剣士「通り越しちゃったって事は無いよね?」
盗賊「それは無いと思う…灯台を一度も見て居ないだろう?」
剣士「へぇ?灯台があるんだ…」
盗賊「地庄炉村は10年ぐらい前までフィン・イッシュとの貿易港だったのよ…今じゃ廃れた様だが…」
剣士「僕初めて行くんだ…何があるんだろう?」
盗賊「亜麻の生産地だ…他にも少し硫黄と金が掘れるらしい…そうそう…後木材だな」
剣士「キ・カイでは木は全然生えない…」
盗賊「大分温いから針葉樹が生えるんだ…何つたっけな…スプルースだっけな」
剣士「木が有ると言う事は実も生ってるよね?」
盗賊「お前は木の実が好きだったな?…もう一個忘れてたんだが地庄炉村はナッツが有名だ」
剣士「おぉぉ!!姉さんは色んな食べ物ガマンするから食べさせてあげたい」
盗賊「ガマン?何でよ?」
剣士「貧しいから僕の分を残す為にガマンしちゃうんだよ…貰ったレーションも食べてない」
盗賊「おっとヤメロヤメロ…俺はその手の話に弱い…話題変えるぞ?」
剣士「あぁゴメン…同情を買うつもりは無かった」
盗賊「お前剣を使うと言っただろう?」
剣士「うん…どうして?」
盗賊「ちっと俺と立ち回って見るか?まぁ…チャンバラよ」
剣士「ええと…良いのかな?姉さんに許可貰わないと…」
盗賊「武器は使わん…凍った魚でチャンバラするだけだ」
剣士「魚?アハハハ…面白そう」
盗賊「ようし!ほんじゃ好きな魚を選べ」
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546 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:37:53.72 ID:ckhR7HQw0
『立ち合い』
コン コン ビシ!
盗賊「…にゃろう!!」ダダ ビシ
剣士「あたっ…」ズダダ
盗賊「なるほど…体のバネは一級品だな…これならオーガ相手でも良さそうだ」
剣士「ちょっとこの魚重いし握り難い…」
盗賊「そりゃ俺も同じ条件よ…お前の姉はもっと強いのか?」
剣士「うん…速さは僕と同じくらいだけど力が全然違う」
盗賊「…って事は俺でも敵わんか…」
ドタドタ
学者「あらら?又やってるんすね?」
盗賊「お前もやって見るか?」
学者「俺っちは接近戦はやらんっす…射撃一本なんで…」
盗賊「けっ!!そういう所がヘタレなんだ」
剣士「姉さんともやってみる?強いよぉ?」
盗賊「まぁ実力は大体分かった…魔物相手なら十分だってな?」
学者「戦場じゃ全然通用しないっすけどね…」
盗賊「おいおい…こいつらは傭兵じゃ無ぇんだから仕方無ぇ」
剣士「それってどういう事?姉さんでもダメ?」
盗賊「昔なら通用したかもしれんな?…でも今の戦場は剣を使うような戦い方にはならん…コレだ!銃器」チャキリ
剣士「そうなんだ…」
盗賊「魔物を追い払うのは剣でも良いだろう…機械相手の戦場は銃の撃ち合いなんだ…接近する前にやられる」
剣士「魔法は?」
盗賊「向こうの大陸じゃ魔法も使って居るとは聞くな…だが魔法も射程が短いからやっぱり銃器頼りだろう」
学者「ミライ君も戦場に出るつもりなら銃の使い方を勉強した方が良いっすね」
盗賊「そうはやし立てるな…折角戦場とは無縁の生活してんだから…」
剣士「銃か…なんか興味出て来たなぁ…それ僕に見せてくれないかな?」
盗賊「これか?…見る分には構わんが壊すなよ?」ポイ
学者「素人に渡して危なくないっすか?」
盗賊「火薬も弾も入っちゃ居無ぇ…形見だから持ち歩いてるだけだ」
学者「な〜んだそうだったんすね…俺っちのバヨネッタも弾は入って無いんで見ても良いっすよ」ポイ
剣士「おぉ!!ありがとう」パス
学者「それは銃剣って奴なんす…一応接近戦も想定された銃なんす」
剣士「へぇ…スゴイな」ジロジロ
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547 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:38:49.41 ID:ckhR7HQw0
『デッキ』
ユラ〜リ ギシ
盗賊「おう…どうした?黄昏てんのか?」
女オーク「違うの…ミライが楽しそうにしているから…」
盗賊「まぁそんな感じだな?」
女オーク「ミライを閉じ込めすぎていたかも知れないって反省してる…」
盗賊「お前…ミライの本当の姉では無いのだろう?」
女オーク「…」ウツムキ
盗賊「まぁ…それぞれ事情が有るだろうからあまり聞く気は無いんだが…俺にも血の繋がって居ない姉が居るんだ」
女オーク「そう…」
盗賊「お前と同じハーフオークな訳よ…その…なんだ…同じ様な境遇で少し気になっただけだ」
女オーク「私とミライの関係は少し違うと思う」
盗賊「そうか?まぁあまり詮索はしない方が良さそうだな?…そうそう思い出した…食って見ろ」スッ
女オーク「これは…」
盗賊「俺が持ってるレーションだ…食え」
女オーク「あ…ありがとう」パク
盗賊「うまいか?」
女オーク「美味しい…」モグ
盗賊「ミライがな?お前を心配して居たんだ…自分の為に食べ物をガマンしてるってな?」
女オーク「ミライが私を…」
盗賊「健気なこった…ミライを想うならお前ももう少し我を出した方が良い」
女オーク「…」ポロリ ツツー
盗賊「おいおい…俺ぁ泣かすつもりで言った訳じゃ無えぞ?」アタフタ
女オーク「ごめんなさい…何でも無いの」フキフキ
盗賊「レーション全部食えよ!?その後ちっと運動だ」スタ
---こりゃケアが必要なのは姉の方だな---
---何か抱えて居やがる---
548 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:39:20.29 ID:ckhR7HQw0
『地庄炉村_近海?』
ザブ〜ン ユラ〜リ
学者「陸の方は雪が無い場所が増えてきやしたね?」
盗賊「そら今は真夏だからな…しかし現在地が全然分からん」
学者「ちょいちょい小さな漁村があるんすが…」
盗賊「う〜む…寄って行っても良いんだが…漁村に寄って何する訳でも無いしなぁ…」
学者「この辺りはどこの領地なんすかね?」
盗賊「分からん…だが地庄炉村がフィン・イッシュ領なのは間違いない」
学者「地図だけでも入手しに行きやせんか?」
盗賊「お前…小さな漁港に地図が売ってると思うか?」
学者「確かにそうっすね…」
剣士「アランさ〜ん!!正面に島が見えて来たよ〜」
盗賊「そらマズイな…浅瀬に乗り上げちまうかもしれん」
学者「ちっと進路修正して来るっす」
盗賊「島か…急いでる訳でも無ぇから停船出来る場所が有るなら一晩寄って見ても良いな」
学者「いやいやそれなら漁村の方に…」
盗賊「馬鹿!変なトラブルに巻き込まれたくない…無人島なら貝とかカニとか他の食い物も探せるだろう」
学者「そういう事っすね?…確かに魚ばっかりは飽きやした」
盗賊「シカ肉が食いてぇな…」
学者「おぉぉぉ!!良いっすね!!」
盗賊「お前の銃もまだ試し撃ちして居ないんだろ?」
学者「島に行きやしょう!!」
---------------
549 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:39:50.77 ID:ckhR7HQw0
『無人島_崖』
ユラー ギシ
盗賊「よし!!ここなら向こうの崖に飛び移れそうだな?」
学者「碇を降ろしやす!!リッカさん手伝ってくだせぇ」ガラガラ
女オーク「これを回すのね?」ガラガラ
盗賊「ロープ持って先に飛び移る!!」ダダ ピョン
学者「もうちっと船を手繰り寄せられやせんか?」
盗賊「んむむ…やってるが…こりゃ無理だな…ふんがぁぁ!!」グイグイ
学者「これじゃロボが船から降りられんっすね…」
女オーク「私が背負って飛び移るわ」
盗賊「おぉ!!頼む!!」
--------------
『浜辺』
ザザー ザザー
盗賊「ここだな…崖を背にして丁度良い…今晩はここで休む」
剣士「火を焚かないとね」
盗賊「リッカと一緒に薪を集めて来てくれ…ついでに何か食い物も探してこい」
学者「俺っちは銃の試し撃ちついでに何か居たら狩って来やす」
盗賊「おう!!寝床作っといてやる」
学者「じゃぁ行って来るっす」
盗賊「日が落ちる前に戻って来いよ」
学者「分かって居やすとも」タッタッタ
剣士「あぁぁぁ!!木の芽だ!!姉さん!!一杯ある!!」
女オーク「じゃぁミライは芽を摘んでおいて?薪は私が切って来るから」
盗賊「日が暮れるぞ!!じゃんじゃん獲りまくれ」
--------------
550 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:40:59.95 ID:ckhR7HQw0
『焚火』
メラメラ パチ
盗賊「やっぱこんだけ火が強いと暖かいな…」ふぅぅぅ
女オーク「薪はこれぐらいで一晩持つ?」
盗賊「十分だ…こりゃ倒木でも有ったのか?」
女オーク「沈没船の残骸が崖の向こうに有ったのよ」
盗賊「なぬ!?他には何か無いのか?」
女オーク「残骸だけ…使えそうな物は何も無かった」
タッタッタ
剣士「大漁大漁!」ドサドサ
盗賊「おいおい…こんなに沢山食い切れんが…」
剣士「持って帰るに決まってるじゃない…もう一回獲って来るぅぅ!!」タッタッタ
盗賊「ヤレヤレ…これどうやって食うんだ?」
女オーク「大き目の葉に包んで焼くの…ミライの大好物」
盗賊「ほう?ってことはお前も大好物だな?」
女オーク「私は…」
盗賊「こんだけ沢山あるんだ…腹いっぱい食うぞ…ええと?どうやるんだ?どの葉に包むのよ?」ガサガサ
女オーク「私がやるわ…」テキパキ
盗賊「そういや姉御も同じ様な物作ってたな…葉に芋を包んで土の中に埋めるんだ」
女オーク「そういうやり方も有る…木の芽は直ぐに柔らかくなるから焚火の近くに置くだけ」
タタタターン!
551 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:41:29.64 ID:ckhR7HQw0
盗賊「お!?ゲスが何か狩ってんな…こりゃ肉に有り着けそうだ」
女オーク「肉はどうやって?」
盗賊「剣にぶっ刺して海水で洗うだろ?…その後直火でこんがりよ」
女オーク「あまり美味しそうに思えない…」
盗賊「ヌハハ…食い物はオークと喧嘩しないで済むな…まぁ俺は芋も好きだけどな?」
女オーク「木の芽…焼けたからどうぞ」スッ
盗賊「おぉ!!どれどれ」パク モグ
女オーク「どう?」
盗賊「ふむ…独特の苦みがあるな…こりゃ酒が欲しい」モグ
女オーク「苦み?」
盗賊「あぁそうか…オークは味覚が少し違うんだったな…まぁ中々美味い…お前も食え!」
女オーク「私は後で…」
盗賊「良いから食え!!ミライが沢山木の芽を摘んでるのはお前に食わせる為だ…その辺察してやれ」
女オーク「…じゃぁ…少し」パク モグ
盗賊「うまいか?」
女オーク「美味しい…」モグモグ
盗賊「おう…それで良いんだ…美味い物は美味い!欲しい物は欲しい!…な?」
---まいったな---
---どうも俺は貧しい奴に弱い---
---傷を負った奴に弱い---
552 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:42:00.52 ID:ckhR7HQw0
『バーベキュー』
ジュゥゥゥ
盗賊「ウサギ相手に銃を使うたぁ恐れ入る…」ガブ モグ
学者「兄貴ぃ…他に居なかったんすよ…俺っちにも肉をっすねぇ…」
盗賊「しかも4発撃ったな?オーバーキルだ」モグモグ
学者「試し撃ちだったんすよ…」
盗賊「カニ食うか?」
学者「お!?兄貴カニ捕まえたんすか?」
盗賊「軍隊ガニが居てな?蹴とばしたら泡拭いた…銃なんぞ使わんでもな?」
学者「兄貴ぃぃ勘弁して下せぇ…」
女オーク「木の芽の香葉焼きをどうぞ…」スッ
学者「リッカさんありっすー」パク モグ
剣士「姉さん!!根も少し掘って来たんだ…これ洗ってそのままの方が良いよね?」
女オーク「そうね…」
剣士「半分こしよう!はい…」ブチ
盗賊「おぉ食え食えぇ!!おーし!!次カニ焼くぞ!!」
学者「待っていやした!!」
盗賊「いやぁしかし…この島に来て正解だわ…なんつうか旅ってこういう感じなのよ」
剣士「すごく楽しい…焚火も暖かいし」
盗賊「お!!貝も焼けた様だ…ゲス!!先に食って良いぞ!!」
学者「うっしゃぁぁ!!あつつつ…」パク モグ
剣士「貝かぁ…僕も食べて見ようかな?」
盗賊「おぅ!!食え食え!!俺はもう腹いっぱいだ」
女オーク「ウフフ…」
学者「カニの頭は俺っちがもらいやすウヒヒ…」
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553 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:42:51.26 ID:ckhR7HQw0
『談話』
メラメラ パチ
ウサギの毛皮…そろそろ乾いたかな…
何か作るんすか?
軍隊ガニの甲羅と組み合わせてちょっとした肩当だよ
ほえ〜…上手い事作るんすね
こういうの作って売ればお金が手に入るのさ…今度は幾らで売れるかな〜?
盗賊「ミライは細工の才能が有りそうだ…アレでそこそこの稼ぎになるだろう?」
女オーク「そうね…いつも何か拾って来ては工夫して作ってる…」
盗賊「まぁ…辺境に居てはそれほど稼げるとは思えんが…良い才能だな」
女オーク「…」
盗賊「アレは俺が買い取ってやる…」ピーン
女オーク「え!?…金貨…こんなに?」パス
盗賊「船の掃除代も込みだ…地庄炉村に着いたら多少の買い物も出来るから足しにしろ」
女オーク「ありがとう…」
盗賊「しかし…酒でも無いと時間が潰せんな…」
女オーク「先に休んでもらって良いわ…多分ミライはまだ寝ないから」
盗賊「ヌハハその様だ…ほんじゃ先に横になる…薪はケチらんで全部使えよ?」
女オーク「ウフフ…分かった」
今度は何作るんすか?
貝殻を細かく砕いて粉にするんだ…これも食料だよ
えええ?そんなもん食えるなんて初耳っすね
他にも色々使い道が有るんだよ?顔料にしたり金属を磨いたりね?魔法の粉さ…
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554 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:43:20.10 ID:ckhR7HQw0
『数日後_キャラック船』
ザブ〜ン ユラ〜
学者「兄貴ぃぃ!!多分アレっすね!!」
盗賊「おぉぉやっと見つけたか…」
学者「良かったっす…やっと宿に泊まれそうっすね」
盗賊「やっぱ海図も羅針盤も無しじゃダメだな…地庄炉村に着いたら最優先で探すわ」
学者「これ勝手に入船出来るんすか?」
盗賊「知らん!!行ってみるしか無いだろ」
学者「そこらへん知ってる水夫も雇った方が良さそうっす」
盗賊「だな?お前金はどの位持ってる?」
学者「銀貨で400枚ぐらいと…金貨20枚って感じっす」
盗賊「結構持ってんな…俺は金貨15枚だ」
学者「もしかして俺っちの金をアテにして居やす?」
盗賊「帆が傷んでんだろ?張り替えにどんだけ掛かるか相場観が無いんだ…足りんかった場合はアテにする」
学者「盗賊ギルドの支援ってどんな感じか分からんのですか?」
盗賊「分からん…てか俺は姉御とあんま話せて居ないのよ」
学者「盗賊ギルドにどんな利が有るのか分からんすね…」
盗賊「ソレだソレ…どういう話になってるのかさっぱりな訳よ」
学者「もしかすると盛大に空ブルかも知れやせんね?」
盗賊「その場合は自力でフィン・イッシュまで行くだな」
学者「…この船で行けると思いやす?」
盗賊「まぁ海図と羅針盤がありゃ何とかなんだろ」
学者「雇う水夫次第になりそうっすね…」
盗賊「とりあえずだな…ここは布の産地で安く買える筈なんだ…ボロキレの帆を何とかすりゃ多分行ける」
学者「そんな簡単に思えんのですが…」
盗賊「おーし!!桟橋のど真ん中行くぞ!!降りる準備しとけ!!」
-------------
555 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:43:55.73 ID:ckhR7HQw0
『地庄炉村』
ザワザワ
ありゃ何処の商船かいな?
久しぶりに大きな船が入って来た思うたら荷を積んどらんらしいで?
学者「兄貴遅いっすねぇ…」
剣士「なにかトラブル有ったのかな?」
学者「船を調べられてるっすね…あ!!出て来やした」
剣士「なんか怒ってるね…大丈夫かな?」
タッタッタ
盗賊「クソがぁ!!要らん金取られちまった…」ブツブツ
学者「兄貴ぃ!何か有ったんすか?」
盗賊「商工会に入って居ない船は停泊するのに1日金貨2枚なんだとよ!!ほんなん知らんわ!!」
学者「うはぁ…高いっすね」
盗賊「おまけに空の荷室見て苦笑いしやがった…くそう!!」
学者「でも船を盗まれんで済みやすよね?」
盗賊「ううむ…傭兵雇ったと思えってか…にしちゃ1日金貨2枚は高い!」
学者「そうっすねぇ…長居出来んすねぇ」
盗賊「そうだ!!さっさと用を済ませて出て行くぞ」
学者「とりあえず今日は宿に入りやすよね?」
盗賊「悪いがお前の払いで頼む…俺はこの後海図と羅針盤買いに行かなきゃならん」
学者「宿は任せて下せぇ…そんで集合はどうしやす?」
盗賊「リコリコって言う酒場があるらしいんだが…そこで集合だな…適当に夕飯食っとけ」
学者「分かったっす…リッカさんとミライくんは俺っちと一緒で良いっすね?」
盗賊「おう!!ロボは俺と一緒だ」
学者「じゃぁ2人共一緒に行きやしょう…」スタ
---------------
556 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:44:41.25 ID:ckhR7HQw0
『宿屋』
ガチャリ ギーー
女将「あら?定期便が飛んで行ったばかりなのにお客さん?」
学者「どもども…部屋空いてるっすか?5人なんすけど…」
女将「丁度空いたばかりの部屋がありますよ…2人部屋が2つですがよろしい?」
学者「それで良いっす…一泊いくらっすか?」
女将「一部屋銀貨5枚なので合わせて10枚です…食事はどうされますか?」
学者「他で食べるんで要らんっす」
女将「ええと…少し片づけるので待って貰ってもよろしい?」
学者「分かりやした…銀貨10枚…ここに置きやすぜ?」ジャラリ
女将「水浴びは自由ですのでお待ちの間にどうぞ…湯がありますよ」
学者「おおぉぉ!!そら良いっすね」
剣士「姉さん!湯に入れるんだって!一緒に入ろう!」
学者「ええ!?良い年して一緒に入るんすか?」ジロ
剣士「なんで?ダメなの?」
学者「いやいや…別に良いんすが…」
剣士「先に入って来て良いかな?」
学者「まぁ好きにして良いっすよ…次俺っちも入るんで早くお願いしやす」
剣士「よし!行こう!」グイ
---------------
557 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:45:18.64 ID:ckhR7HQw0
『30分後』
ホクホク
剣士「はぁぁぁ…久しぶりに湯に浸かったよ」
学者「もどって来やしたね?部屋の準備が出来たみたいなんで休んでて良いっす」
剣士「何処かな?」
女将「ご案内します…こちらです」スタ
学者「後で呼びに行くんでゆっくりしてて下せぇ」
剣士「うん…姉さん!!宿屋なんて初めてだね…2人部屋だってさ」
女オーク「そうね…」
剣士「あぁぁワクワクするなぁ…」
女将「…こちらです…ではごゆっくり」スタ
ガチャリ バタン
剣士「へぇ?こんな風になってるんだ…ベッド…2つだね?」
女オーク「どっちが良いの?」
剣士「そんな…1つで良いに決まってるじゃない」ドサ
女オーク「ふぅぅぅ…気持ち良かった」ドサ
剣士「まだ時間が有るからあとで買い物に行こうよ…アランさんに金貨1枚貰ったんだよね?」
女オーク「無駄遣いはダメよ?」
剣士「分かってるさ…ここは布の産地だから姉さんの着替えを選んであげる」
女オーク「今ので十分よ」
剣士「ダメだよ…僕も姉さんを自慢したいのさ」
女オーク「人に見せられる姿では無いって自覚してる…」
剣士「そんな事無い…まぁ僕が選ぶから楽しみにしておいて」
女オーク「分かったわ…」
剣士「なんか落ち着かないなぁ…」ソワソワ
女オーク「抱っこして欲しいの?」
剣士「いつものして良い?」
女オーク「ダメよ直ぐにゲスさんが来るから…」
剣士「まだ来ないよ…」グイ
女オーク「もう…」
-------------
558 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:45:52.06 ID:ckhR7HQw0
『酒場リコリコ』
ワイワイ ガヤガヤ
金の鉱脈…そろそろ枯渇してるかも知れんなぁ…
硫黄がまだ少し掘れるだけ良いべ!!
錬金術師が居らんくなったで鉱石から金を抽出も出来んしなぁ…
盗賊「いよう!待ったか?」
ロボ「ピポポ…」ウィーン
学者「あ!!遅かったっすね…もう食事食い終わっちまいやしたよ」
盗賊「俺は酒が有れば文句無ぇ…お!?リッカどうしたその格好!!」
学者「なんかミライ君に買って貰ったらしいっす」
盗賊「良いじゃ無ぇか…ミライ!良い着替え選んだな?」
剣士「ここは布だけじゃ無くて染料も有名だったんだね…」ガブ モグモグ
盗賊「お…おぅ…それより何だ?ナッツ食ってんのか?」
剣士「ナッツはタダで食べられるんだってさ」ガブ モグモグ
女オーク「…」パクパク
盗賊「ヌハハハ!タダと聞いて食いまくってる訳か」
学者「タダっちゅうか…酒を注文したらの話なんすが…」
盗賊「何飲んでんのよ?」
学者「コブラ酒…頼んじまいやしたぜ?」
盗賊「何だ俺抜きで頼んだのか…ほんで?何かアクセス有ったか?」
学者「無いっすね…」キョロ
盗賊「まぁ良い!俺もそれ頼むわ」
学者「マスター!!コブラ酒追加っす」
マスター「あいにく3人分で終わりですね…珍しい酒なもんで」チラリ
盗賊「ぬぁぁぁ…じゃぁ他におすすめは何だ?」
マスター「芋酒…」
盗賊「まぁそれで良い!ボトルで頼む…いくらよ?」ジャラリ
マスター「これくらいで…」スッ
盗賊「ほぉ?割と安いな…ようし!やっと酒に有り着けた…早くクレ!」
マスター「どうぞ…」ゴトン
559 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:46:23.12 ID:ckhR7HQw0
学者「ところで海図は調達出来やしたかね?」
盗賊「こっちの大陸の分はな?フィン・イッシュまでの海図はここじゃ手に入らん様だ」グビ プハァ
学者「それじゃ行けんじゃ無いっすか…」
盗賊「まぁ金が無くなりそうだから一度船でバン・クーバーまで戻っても良いけどな」グビグビ
学者「それが手堅いっすね…姉御と合流出来やすしね?」
盗賊「となると…手ぶらで戻るのも勿体無ぇから商船もどきの買い付けをしなきゃいけない訳だが…」
学者「地庄炉村で安い物と言うと…布と金鉱石…あと何っすかね?」
盗賊「う〜む…ナッツか?…てか金鉱石を買ったら他に何も買えん気もするな」
マスター「お客さんは何処からこちらへお見えで?」チラ
盗賊「キ・カイから船で来たのよ…ちょっとした用事でな?」
マスター「ハハあの氷山を抜けて来たと?」
盗賊「まぁな?ここはキ・カイに比べりゃ天国よ…酒も飲めるしな?」グビ プハァ
マスター「今地庄炉村では大き目の商船がなかなか入って来ないので木材が掃けないで困ってるんですよ」
盗賊「おぉそういや切り揃えた木材が山積みになってたな?」
マスター「もしかして波戸場に停泊してる大き目の商船はお客さん達の船で?」
盗賊「そうだ…俺らに木材を運んで欲しいってか?」
マスター「いやいや…私は只の酒場のマスター…運んで欲しい人を知って居るだけですよ」
盗賊「そりゃ儲かる話なんか?」
マスター「なんとも言えませんねぇ…一応話を通してみましょうか?」
学者「兄貴ぃ…目的が逸れちまいやせんか?」
盗賊「まぁどうせバン・クーバーに戻るなら荷物満載で戻るのが良いだろう…話だけは聞いても良い気がするな」
マスター「宿泊している宿をお教え頂ければ使いを向かわせても良いですが?」
盗賊「ゲス!!説明しておけ!!ちっと俺はその辺の他の店で噂話でも聞いて来るわ…ロボ!行くぞ」スック
学者「分かりやした…俺っちはこの後どうしやす?」
盗賊「久しぶりに酒場に来てるんだ…自由にして良い!一応遊女も居る様だ」
学者「そうっすね!!リッカさんとミライ君も自由にしてて良いっすよ」
--------------
560 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:47:22.53 ID:ckhR7HQw0
『村道』
スタスタ…
盗賊「ふむ…今のが盗賊ギルドからの接触だな…」
ロボ「ピポ?」
盗賊「俺が来る前から監視されてんのよ…確かに他の客には気付かれん様にして居る」
盗賊「まぁ大体話は読めて来た…運びたいのは木材…ほんでどうせ監視役で商人に化けた誰かが同行する」
盗賊「だが…向こうにどんだけ利が有るのかイマイチ分からん」
盗賊「その辺の話は多分これからだな…さてどう来る?」
盗賊「宿屋で待って居た方が良いか…」
盗賊「ううむ…使いを夜間に寄越すとは考えにくい…もう一日待つのは金が勿体無いしなぁ…」
ロボ「ピピピ…」プシュー バタバタ
盗賊「んん?どうした?」
ロボ「ピピ…」ウィーン ユビサシ
盗賊「お?ヌハハなんだありゃ…仁王立ちしてんじゃ無ぇか…」
少女「おい!!お前!!」ズイ
盗賊「おっとぉ?…嬢ちゃん何か用か?」
少女「例の手紙は持って来ているか?」
盗賊「何の話よ?」
少女「とぼけるな!手紙を交換すると言ったのはお前達だろう?」
盗賊「ええと…悪りぃ!何の話か分からん」
少女「じゃぁ援助しないぞ」
盗賊「誰と援助交際する約束したが知らんが俺は人違いだ…」
少女「ニーナ…」
盗賊「何!?姉御と?って事はお前が…」
少女「手紙を渡せ!」
盗賊「ちっと待て…声がデカい…手紙の話は聞いて居ない…てか姉御は戦場で負傷してここに来れなかったんだ」
少女「ちっ…先にやられたか…」
盗賊「おいおいどういう話か分からんのだが…もう少し分かる様に教えてくれ」
少女「秘密の手紙だ…それを持って居たからやられたんだ」
盗賊「なんだと!?姉御は今ミネア・ポリスで療養している筈だ…直にバン・クーバに戻って来るだろう」
少女「それは本当か?」
盗賊「間違い無ぇ…姉御は必ず帰って来る」
少女「明日の朝もう一度ここに来い…帰って相談してくる」
盗賊「お…おう…」---まさかこんなガキが盗賊ギルドに居るのか?---
少女「約束は守れよ!!」ピョン クルクル シュタ
盗賊「うぉ!!飛んだ…マジか…」アゼン
ロボ「ピポポ…」アゼン
盗賊「…なんか気のせいか濡れた犬の匂いが…」クンクン
盗賊「しかし…秘密の手紙か…気になる話だ」
--------------
561 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:48:20.72 ID:ckhR7HQw0
『宿屋_2人部屋』
ガチャリ バタン
学者「あら?兄貴もう帰ってたんすね…何してるんすか?」
盗賊「姉御の作った計画書を読み直してんだ…くそう!日付が無ぇ…」
学者「どうしたんすか急に?」
盗賊「盗賊ギルドから接触が有ったのよ…どうや姉御が持ってる秘密の手紙というのが支援の条件らしい」
学者「手紙…」トーイメ
盗賊「お前何か知ってんのか?」
学者「あのっすねぇ…半年前の出来事なんすが…負傷した機動隊が持ってた白黒の書簡を姉御が持って行ったんす」
盗賊「なんだと!?詳しく話せ」
ニュー・ヤーク要衝攻略作戦の時っす…俺っちはかなり後方の衛生部隊に居たんすよ
すこし前方の砲兵部隊に居た姉御がっすね…負傷したその機動隊員を担いで俺っちの所に来たんす
左側頭部に銃創があって瀕死でした
俺っちは装着している兵装を全部脱がせて救急の処置をしてんすが
所持品の中に白黒の縞々が掛かれた書簡らしい物があったんすよ
姉御はそれを見てその書簡と機動隊員のドッグタグを持って行ったんす
学者「その後医療部隊の精鋭達が俺っちに変わってその機動隊員を何処かに連れて行きやした」
盗賊「…」
学者「兵装だけ残ったもんでこっそり頂いた訳なんす…」
盗賊「左側頭部というのは耳の後ろか?」
学者「そうっすね…多分アレっすよ…噂になってる電脳化した奴っす」
盗賊「ちぃぃぃ…機動隊の中に紛れ込んでる証拠を姉御が掴んだ訳だ…お前それが分かってて姉御をほったらかしにしたのか!」
学者「いやいや姉御はそれを上層に報告に行くのだとばっかり思って居やした」
盗賊「上層の何処に電脳化した奴が紛れてるか分からん!!だから組織と関係の無い盗賊ギルドに情報を渡そうとした…」
学者「そうも考えられやすね…今となってはなんすが…」
盗賊「くそう!今姉御が行った戦線は先月特別招集が掛かったやつだ…狙って招集掛けられたな」
学者「もしかしてとっくの昔にやられて…」
盗賊「まさか姉御が内ゲバに巻き込まれちまったとはよう!!」ドン!!
学者「まだ死んだと決まった訳じゃ無いっす…傭兵ギルド宿舎の叔母ちゃんは療養してるって…」
盗賊「そこに望みを掛けるしか無ぇ…くそ!!イライラすんぜ!!」
---頼む!!生きててくれ---
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562 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:49:32.31 ID:ckhR7HQw0
『翌朝_村道』
シュタタタ ドン!
盗賊「どわっ!!」ドテ
少女「お前!!スキが多い!!」
盗賊「なんだこのクソガキ!!背骨折れたらどうすんだ!!たたたた…」スリスリ
ウルフ「がうるるる…」
盗賊「おいおいなんだこのワンコ…そうかこのワンコの匂いか…」
少女「ワンコ言うな…超ウルフだ」
盗賊「ふん!!どっちでも良い!!…ほんで昨日の話はどうなったのよ?」
少女「お前!約束守れ…もう色々動き出してる…キャンセル出来ない」
盗賊「俺が約束を守れない場合は?」
少女「超ウルフの餌になる」
盗賊「ぶはははは…このワンコのか?」
少女「超・超ウルフも居る」
盗賊「あのな?こっちぁ真面目に話してんのよ…もうちっと大人と話がしたい」
少女「船に荷を積む…出発は明日の昼だ…遅れるな?」
盗賊「おい!!話聞いてんのか?」
少女「お前の船を見ろ…もう荷を積み始めてる」
盗賊「な…なんだとぅ!!うお!!何勝手な事やってんだ!!」キョロ
少女「お前いろいろ遅い…ノロマ!!」
盗賊「にゃろう!黙って聞いてりゃガキのクセに…」ダダ
少女「遅い!」ヒョイ クルクル シュタ
盗賊「分かった分かった…俺の負けだ…だから大人と話をさせてくれ」
少女「じゃぁ家の婆ちゃんと話せば良い」
盗賊「婆ちゃんだと?」
少女「婆ちゃん何でも知ってる」
盗賊「なるほど?ようし…その婆ちゃんの所まで連れて行け」
少女「お前追い付けるか?」シュタタ
盗賊「待てゴラ!!」ダダ
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563 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:50:19.84 ID:ckhR7HQw0
『宿屋』
ガチャリ バタン
学者「兄貴ぃ…何処行ってたんすか!!もう出発の準備整っていやすぜ?」
盗賊「悪い…モウロク婆ぁの長い話に付き合わされてだな…ったく無駄に時間使っちまった」
学者「どうするんすか?そろそろ宿屋出ないと迷惑かけちまいやす」
盗賊「ミライとリッカも居るな?…ちっと予定変更でもう一泊する」
学者「お?どういう事なんすかね…」
盗賊「どうやら盗賊ギルドの方は既に色々動き出しててな…もう船に荷入れしてんのよ」
学者「ええ!?急展開っすね…」
盗賊「なんか強引に動かれてて俺も訳分からん…成すがままって感じだ」
学者「そうすか…じゃぁもう一日ゆっくり出来るならガラクタ探しに行きやせんか?」
盗賊「俺はそういう訳にもイカンのだ…リッカとミライ!!」
剣士「え?僕?」
女オーク「!?」
盗賊「急ぎで船の横帆を張り替える…今日中に終わらせたいから手伝ってくれ」
剣士「うん…良いけど僕が役に立つかな?」
盗賊「お前は手先が器用だろ?布を縫い合わせて欲しいんだ」
剣士「あーーーおっけおっけ!!」
盗賊「…という訳でガラクタ探しはゲスだけで行ってくれ…俺よりお前の方が目利きだからな」
学者「分かりやした!!」
盗賊「ロボは俺と一緒な?」
ロボ「ピポポ…」クルリン
盗賊「じゃぁ夕方には宿に戻るつもりだからよろしく頼む!」
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564 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:50:53.02 ID:ckhR7HQw0
『キャラック船』
ガヤガヤ ドタドタ
木材は荷室に隙間なく積めぇ!!
残りの物資は船底だ!表示を忘れるな!?
剣士「これ…昨日の今日でどういう事かな?」タジ
盗賊「半ば強制的にこういう事になってんのよ…詳しい話は誰に聞いても分からんだとよ」
剣士「まぁ…荷室は空だったから良いんだけどさ…」
盗賊「兎に角責任持って荷を運ばにゃならんくなった…今までみたいにチンタラ出来なくなった訳よ」
剣士「チンタラって…」
盗賊「このメインマストの横帆が全然意味無くてな…速度が出なかったんだ」
剣士「そうだったんだね」
盗賊「後ろの三角帆と同じ様にしたい訳だ…帆下駄も吊り変える必要がある」
剣士「そっか!!でっかい三角帆にしたいんだね?」
盗賊「そういう事だ…ほんでリッカにはかなり重労働をしてもらう事になる…大丈夫だな?」
女オーク「丁度体を動かしたかった所…狭い部屋で縮こまって居たから…」
盗賊「ようし!!そうと決まったらやるぞ!!」
剣士「僕は布を縫い合わせて行けば良いね?」
盗賊「うむ…船尾楼の中に買い付けた布と糸を入れてある…沢山は無いから無駄の無い様にな?」
剣士「おっけ!!」
盗賊「ほんでな?外した横帆…ぼろ布なんだが手が空いたらハンモックでも作ってくれ」
剣士「おぉ!!工夫し甲斐があるなぁ…」
盗賊「任せた…じゃぁリッカ!!帆下駄に上がるぞ!来い!!」スルスル
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565 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:51:52.39 ID:ckhR7HQw0
『メインマスト』
グイ グイ ギリギリ
盗賊「ロープワークは俺がやるからリッカはしっかり帆下駄を支えて居てくれ」ギュッ
剣士「縫い合わせた布って帆下駄に取り付けて行って良い?」
盗賊「やり方分かるか?」
剣士「後ろの三角帆と同じでしょ?」
盗賊「まぁやってみろ」
剣士「大丈夫さ!ロープワークも得意なんだ」グイ グイ ギュゥ
女オーク「だんだん重たくなって来た…」グググ
盗賊「ちっと待ってくれ…反対側をロープで引っ張ってやる」ダダ
女オーク「船を作るのって中々大変なのね…むむむ!!」グググ
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566 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:52:22.93 ID:ckhR7HQw0
『夕方』
ぶはぁぁぁ ドタ
盗賊「やっと終わった…もうクタクタだわ」グター
女オーク「ふぅ…良い運動だった」
盗賊「さすがオークだ…豆しか食わんのになんでそんなに体力あんのよ…」
女オーク「イヤミ?」
盗賊「あぁ悪い…嫌味のつもりは無い…ミライは何処行った?」キョロ
女オーク「木材を持ってウロウロして居たから何か作ってると思う」
トンテンカン トントン
盗賊「その様だ…そろそろ宿屋へ戻るから呼んで来てくれ」
女オーク「分かったわ…」スタ
盗賊「ロボ!こっち来い…もうフラフラでよう…お前にもたれ掛からんと転びそうだ」
ロボ「ピポポ…」ウィーン ピタ
盗賊「どうよ?俺達の新しい家がどんどん出来上がっていくのは?」
ロボ「ピポポ…」クルクル
盗賊「そうか嬉しいか!!この船で向こう側に連れて行ってやる」ペチン
ロボ「ピピ…」ピタ
盗賊「…夕日が眩しいな?…」トーイメ
ロボ「…」ジー
盗賊「そういや孤児院からも夕日が良く見えたな?」
ロボ「…」
盗賊「俺はよう…あん時と同じ様な空気と同じ様な夕日を見るたび…もう一回まぶた閉じたら戻れる気がしてなぁ…」
盗賊「周りは色々変わっちまったが…頭ん中何も変わん無ぇ…なんだろうな?この虚しい感じ」
盗賊「お前はどう思うんだ?」
ロボ「ピポポ…」
盗賊「そうか…」トーイメ
---もっかいやり直せるなら…---
---いつもそう思うんだ---
567 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:53:16.20 ID:ckhR7HQw0
『酒場リコリコ』
ワイワイ ガヤガヤ
盗賊「いよーう!やっぱ此処に居たか…」
学者「兄貴ぃ!!待っていやしたぜ?」
盗賊「今日も席が一杯だな?」
マスター「ハハお陰様で…何を飲まれますか?」
盗賊「昨日と同じ奴で良い…」ジャラリ
マスター「どうぞ…」ゴトン
盗賊「ふぅぅ…働いた後はやっぱ酒だな…」キュポン グビ
学者「リッカさんとミライ君はどうしたんすか?」
盗賊「まだ船で木材加工やってる…終わったら此処に来る筈だ」
学者「何作ってるんすか?」
盗賊「椅子やらテーブルやら…まぁ…何も無かったから丁度良い」
学者「そら快適になりやすね」
盗賊「それよりガラクタ漁りはどうなった?」
学者「一杯有りやしたよ…ボロッボロの錆び錆びだったんすが使えそうな物は回収してきやした」
盗賊「…で?プラチナは?」
学者「ウヒヒヒ…どうも機械の基板の中にプラチナが使われてる事知らんかったみたいっすね…ウハハハ」
盗賊「よし!でかした!!…それでロボを温める装置作れる訳だ」
学者「今は油が無いんで船に戻ったら作りやす…楽しみにしてて下せぇ」
盗賊「良かったなぁ?」ペチン
ロボ「ピポポ…」クルクル
学者「それで…この村回ってて思ったんすが…この村かなり良い村っすね?」
盗賊「んん?何がだ?」
学者「何て言うんすかね…あんまり差別が無いんすよ…人間以外の種族が多いんす」
盗賊「ふむ…そういやそうだな…ギスギスして無ぇ」
学者「オークも居るしドワーフも居やすね…あと尻尾生えたエルフ?みたいのも居るんす」
盗賊「まぁフィン・イッシュ領だからな…」
学者「俺っち此処に住んでも良いかなと思いやした」
盗賊「お前はダメだ…手癖が悪くて折角の良い雰囲気を台無しにしちまう…内ゲバに巻き込まれる様な事をな」
学者「兄貴ぃ…俺っちも改心しやすよ…」
ガチャリ ゴトン
盗賊「んん?何だソレ?」
568 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:53:42.52 ID:ckhR7HQw0
学者「あぁコレ…ガラクタの中で発掘したクロスボウっすね…2つあるっす」
盗賊「錆びっ錆びじゃ無ぇか…」
学者「錆び落としたら使えやすぜ?…一世代前の武器なんで微妙なんすが無いよりマシっす」
盗賊「ボルトは?」
学者「探したんすが無かったっすね…使えそうな鋼材も少し拾って来たんで誰かに作って貰いやしょう」
盗賊「ほぅ?鋼材なんか落ちてたんか」
学者「いやいやキラーマシンの一部っす…宿屋に置いてあるんで明日船に運びやしょう」
盗賊「収穫上々か…」
学者「兄貴は何か物資調達して無いんすか?」
盗賊「俺はもう金が無ぇ…帆の材料を買って終わりよ」
学者「あららら…ちっと食料買っといた方が良いんすが…」
盗賊「お前金有るだろう…任せた」
学者「やっぱそうなりやすよねぇ…トホホ」
盗賊「バン・クーバに戻ったら返してやる」
学者「本当っすよ?」
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569 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:54:27.53 ID:ckhR7HQw0
『深夜_村道』
アオ〜〜〜ン アオ〜〜〜ン
盗賊「今晩はヤケにウルフが騒がしいな?」
学者「月のせいじゃ無いっすか?」
盗賊「満月か…なるほど…」
剣士「これさ…ウルフ同士何かお話してるんじゃないかな?」
盗賊「なんだお前?ウルフの言葉が分かるってか?」
剣士「分からないけど…なんかそんな気がするなぁ…てさ?」
盗賊「そんな事よりちっと俺は仕事に行って来る」
学者「マジすか…」
盗賊「盗賊ギルドからの接触がガキんちょだけだったもんだからよ…指示してるのが何処のどいつか知りたい訳よ」
剣士「あ!!もしかして小さな女の子?」
盗賊「お!?お前の所にも行ってたんか?」
剣士「お前ーーって言いながら追いかけて来るんだ」
盗賊「ソレだソレ!!そいつからの接触しか無いんだ」
剣士「すごいすばしっこい子でさ…ビックリだよ」
盗賊「何か言ってたか?」
剣士「背中を撫でろって…」
盗賊「なぬ!?」
学者「ウハハハハなんで急に撫でろって言うんすかね?」
剣士「分からないよ…撫でてあげたら喜んで返ったよ」
盗賊「まぁ…行動が意味不明なんだ…俺はそのガキんちょの家を知ってるから今からちっと偵察よ」
学者「そういう事っすね」
盗賊「俺一人で行って来るからロボの事を頼む」
学者「分かりやした」
盗賊「先に寝ててくれ…じゃぁな!」スタ
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570 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:55:17.83 ID:ckhR7HQw0
『民家』
ヌキアシ… サシアシ…
盗賊「…」コソーリ
盗賊「…」---しかし盗賊ギルドのアジトが何処なのかさっぱり分からんとはな---
盗賊「…」---連絡手段も何もかも分からん---
アオ〜〜〜ン ワンワン
盗賊「…」ビク
盗賊「…」---ちぃぃウルフが近いぞ?どこだ?---
少女「お前ーー!!」ダダ ユビサシ
盗賊「どわっ…」タジ
盗賊「…」---くっそあいつ何で起きてんのよ---
盗賊「…」---こりゃハイディングするしか無ぇ---
スゥ…
盗賊「…」---なんで俺の居場所が分かったんだ?---
盗賊「…」---アイツ…ウルフと通じてんな?---
盗賊「…」---ガキと思って舐めてたらダメな様だ---
盗賊「…」---今度は風下から行ってやる---
タッタッタ
盗賊「…」---ようし!この場所なら---
スゥ…
盗賊「…」キョロ
571 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:55:47.49 ID:ckhR7HQw0
少女「あれ?」キョロ
盗賊「…」ニマー
少女「あれあれあれ?」ウロウロ
少女「ちちーー匂い消えたぁ」
男の声「んぁぁ…もう遅いから早く寝ろぉ」
少女「多分どこかに隠れてる」
男の声「ほら撫でてやるから…寝るんだ」
盗賊「…」---父親が居たか---
盗賊「…」---声は覚えたぜ?---
ワンワン ガウルルル シュタタ
盗賊「…」---くっそウルフが邪魔過ぎる---
盗賊「…」---まぁ良い退散する---
スゥ…
盗賊「…」---こりゃ正体暴くの難義しそうだ---
盗賊「…」---もうちっと他当たって見るか---
--------------
--------------
--------------
572 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:56:25.95 ID:ckhR7HQw0
『翌朝_宿屋』
グゥゥ スピーー
学者「兄貴ぃ!!起きて下せぇ」ユサユサ
盗賊「んが?」パチ キョロ
学者「昨夜も遅かったんすね?買い出しに行きやすよ?」
盗賊「あぁ悪い…リッカとミライはどうした?」ゴシゴシ
学者「ガラクタを船に運んで貰いやした…そのまま船に乗ってる筈っす」
盗賊「そうか…ええと…何すんだっけな…」
学者「食料とか必要な物の買い出しっすよ…早く行かんと明るい内に出港出来やせんぜ?」
盗賊「そうだっけか…なんか夢見てて混乱しててよ…」スック
学者「なんか寝言を呟いていやしたね…聞き取れんかったんすが」
盗賊「ガキの頃の夢だ…」
学者「とりあえず食料調達っすね」
盗賊「運ぶのシンドイな…」
学者「宿屋で荷車借りられるっす」
盗賊「おぉ!そりゃ良い!」
学者「ええと酒と香辛料も必要になりやすよね…あと薬」
盗賊「そうだな…樽を多めに仕入れんとイカンな」
学者「そうっすね…水も汲む必要がありやすね」
盗賊「ヤバいな…急ぐか!」
学者「へい!!」
--------------
573 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:57:28.58 ID:ckhR7HQw0
『キャラック船』
ザブン ギシギシ
剣士「荷を積み終わって今日は誰も居ないね…」ポカーン
女オーク「そうね?どうなって居るのかしら…」
剣士「昨日の続きやろうか」
女オーク「まだ作るの?」
剣士「おが屑とボロキレが余ってて勿体無いじゃない」
女オーク「ボロキレの袋におが屑を詰めて行けば良いのね?」ガッサ
剣士「うん…あとは僕が縫って行く…今晩寝るのが楽しみだね…」ヌイヌイ
女オーク「このおが屑…良い匂いがする」クン
剣士「スプルースって言ったけ?柔らかい木で香りも良いし好きだよ」
シュタタタ スタ
剣士「あ!!あの子又来た…」
少女「おいお前!!この船どうやって動かす?」
剣士「ええと…帆を張って動かすんだけど…」
少女「帆?これか?」ピョン ピョン シュタ
剣士「危ないよ!!…それに君じゃ多分広げられない」
少女「ふぬぬぬぬ!!」グイ グイ
剣士「ええと…もしかして君もこの船に乗る…のかな?」
少女「当たり前だ」
剣士「まさか君一人って事は無いよね?」
少女「ちちが来る…それと超ウルフも来る」
剣士「そうか…安心したよ」
女オーク「超ウルフって?」
少女「名は他に有る…でも明かせない」
574 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:58:13.84 ID:ckhR7HQw0
剣士「ハハ…ええと君の名は何て言うのかな?」
少女「お前ー!!人に名を聞く時は先ず名乗れ」
剣士「あぁゴメン…僕はミライ…そして彼女がリッカ」
少女「ミライ…リッカ…覚えた」
剣士「君は?」
少女「明かせない…そういう決まり」
剣士「アハハハやられたなぁ…まぁ良いや…どうだい?こっちでちょっと手伝わないかい?」
少女「ミライ…お前何作る?」
剣士「う〜ん…これ何て言うんだ?おが屑のクッション?布団かなぁ…やわらかくて気持ち良いんだよ」
ピョン ボフッ
剣士「ちょちょ…まだ早い」アセ
少女「おぉぉ!!何だコレ」ゴロン ゴロン
剣士「今ね?これを沢山作ってるんだ…手伝ってくれたら君にもあげるよ」
少女「何する?」
剣士「おが屑を集めて欲しい…沢山必要なんだ」
少女「何処に有る?」
剣士「船の荷室に木材が一杯積んで有るんだけどおが屑も一緒に落ちてるのさ」
少女「分かった…でも一番大きいのを貰う…良いか?」
剣士「おけおけ!ちょっと大きいのも作るよ」
少女「待ってろ!」シュタタタ
女オーク「ウフフ…上手く言い包めたわね?」
剣士「そんなつもり無いけどね?早く仕上げたいだけだよ」
女オーク「じゃぁ急いで作りましょう…」ガッサ
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575 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:59:07.01 ID:ckhR7HQw0
『昼頃』
ザブン ギシ
盗賊「よっこらぁ!!」ドスン
剣士「樽?」
盗賊「水汲んで来たんだ…甲板の上で良いから適当に並べて置いてくれ」
剣士「あ…うん…よいしょ!!」ヨッコラ ヨッコラ
盗賊「リッカ!!まだ有るから運ぶの手伝ってくれぇ!!」ダダ
女オーク「分かったわ…」スタ
少女「お前ーーー!!」ヒョコ
盗賊「どわっ…なんでそこに居るのよ…」タジ
少女「お前!!昨日何した!?」
盗賊「な…何の事だ?」
少女「お前来た事知ってる…お前の匂い分かる」
盗賊「知ら無ぇなぁ…何の事だ?」
少女「とぼけるな!!どうやって消えた?」
盗賊「ガキに付き合ってる暇無ぇんだ!!俺は忙しいからサッサと其処を下りろ!!」
剣士「あ!!アランさん…この子も船に乗るんだってさ」
盗賊「何!?マジか…」
少女「当たり前だ!!さっさと秘密教えろ」
盗賊「いやぁ…どうもお前苦手だ…乗るなら乗るで大人しくしてろ!!」
少女「あ!!ちちーーー」ノシ
盗賊「ナヌ!?」キョロ
中年の男「これはどうも…」ペコリ
盗賊「あ…あぁ…どうも」---こいつが盗賊ギルドの奴か?---
576 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 12:59:51.45 ID:ckhR7HQw0
中年の男「娘が迷惑をかけて居ませんか?」
盗賊「大迷惑なんだがよう…」
少女「お前ーーー!!」バタバタ
中年の男「アッハッハ…騒々しい娘で済みません」ペコリ
少女「ちちーーー!!早く乗れ!!」
盗賊「ええと…話が俺にあんま伝わって来て居ないんだが…」
中年の男「どうかお察しを…因みに私はその手の者ではありません」
盗賊「んん?…と言うと?」---こいつもしらばっくれる気か?---
中年の男「私はこの村の自警団の者で名をリコルと言います…娘の護衛に雇われたと言えば通じますかね?」
盗賊「雇われ…つまり雇い主は明かせないと言いたいのか?」
中年の男「いえいえ娘に雇われた…」
盗賊「ヌハハハ…そらちびっ子一人船に乗せる訳にもイカンだろうな?そらそうだ」
中年の男「重ねて言いますが…私はその手の者では無いので事情は殆ど知りません…娘に雇われた傭兵だと思って下さい」
盗賊「ケッ!!まぁ良く分からんが船に乗るんだな?勝手にシロい!!」
中年の男「ご理解頂けた様で…あともう一匹乗りますのでよろしくお願いします」ペコリ
盗賊「一匹?」
シュタタ シュタタ
盗賊「くぁぁぁ…あのワンコか…」
ウルフ「ガウルルル…」フリフリ
盗賊「もう良い!!おいリッカ!!急いで荷を積んでくれ…俺はもう一回荷を運ばなきゃならん」
女オーク「分かったわ…」
盗賊「ミライ!!他に乗る奴が居たら話を聞いといてくれぇ」
剣士「おっけー!!」
盗賊「じゃぁ次で最後だから出港の準備も頼むな?行って来る」ダダ
---------------
577 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 13:00:45.80 ID:ckhR7HQw0
『出港』
ドタドタ
盗賊「何だ結局船に乗るのはちびっ子と旦那の2人だけか?」
少女「超ウルフも忘れるな?」ズイ
中年の男「私は他に誰が乗るとか聞かされて居ません」
盗賊「おいおいどうなってんのよ…ちったぁ俺にも情報欲しいもんだ…」
学者「兄貴ぃ!!これで全員揃ってるみたいっすね…見回した感じ隠れて乗ってる奴も居ない様っス」
盗賊「まぁ良いか…おい嬢ちゃんよ!出港させて良いんだな?」
少女「さっさと出ろ!お前色々遅い」
盗賊「行先はバン・クーバで良いんだな?」
少女「何度も言わせるな」
盗賊「くぁぁぁぁ生意気なクソガキだ…リッカとミライ!!帆を広げてくれぇ!ゲスは舵を頼む」
学者「へいへい!!」ダダダ
盗賊「碇上げるぞぉぉ!!」ガラガラ
ユラ〜 グググググ
少女「おぉぉぉ…出航!出港!行けぇぇ!!」ユビサシ
盗賊「こっちは重労働やってんのに気楽なもんだ…」エッホ エッホ
バッサーーー バサバサバサ
盗賊「おぉぉぉ…やっぱデカい縦帆有ると違うじゃ無ぇか…」
剣士「帆は全部開くよね?」ドタドタ
盗賊「勿論だ!!全速力試すぞ!!」ドタドタ
中年の男「ほぉ?帆装が変わりましたな?縦帆3枚…」
盗賊「小さいの合わせたら6枚だ…手隙なら手伝って貰って良いか?」
中年の男「いやぁ久しぶりですな…」
盗賊「んん?もしかして船乗りだったか?」
中年の男「まぁ少しだけ…」
盗賊「じゃぁ心強えぇ…航海中はどうせ暇になるから色々聞きたい事もある」
中年の男「ハハハ…知って居る事なら何なりと」
盗賊「俺の名はアランだ…職業は泥棒さんよ」
中年の男「私はリコル…自警団では戦士役を務めています」
盗賊「よろしくな?リコル!」スッ
戦士「こちらこそ!!」ガシ
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578 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 13:01:49.77 ID:ckhR7HQw0
『帆走』
ザブ〜ン バサバサ
盗賊「うほーーー倍ぐらいのスピード出る様になったじゃ無ぇか!!」
学者「船が重いせいか安定していやすね…操舵しやすいっす」
戦士「帆装が今流行のキャラベル船ですが荷の積載量が多いので遠洋航海向きの船ですね」
盗賊「あんま違いが分からんのだがよう…」
戦士「小型のキャラベル船は快速で小回りが利くので商船に良く使われています…浅瀬でも帆走出来るのが特徴」
戦士「この船は船底が深いので浅瀬には不向き…でも荷が多く積めるので補給無しで海を渡れる」
戦士「船が大きくなればなるほど横帆の重要性が増すのですが…これだけ速度が出るなら縦帆でも良いでしょう」
盗賊「なるほど…じゃぁ沖に出ても良い訳だ?」
戦士「その場合ちゃんと測量出来る航海士を雇った方が良いですな」
盗賊「もうちょっと楽に話して貰って良いぞ?」
戦士「ハッハッハ初対面だとどうしても…慣れれば地も出て来るでしょう」
少女「ちちーーー」シュタタ ピョン
盗賊「おっとぉ!!その手は食わんぞ」ササ
少女「この男!夜に隠れて家まで来てた!」
盗賊「おいおい何を言いだす」タジ
戦士「ハッハッハ勘が良くて驚いて居るでしょう…」
少女「消える技を持ってる!秘密をしゃべらせろ!」
戦士「まぁまぁ…アランさん…隠して居てもしょうがないので話して置きますが…」
盗賊「んん?何だ?」
戦士「この子達は特殊な感覚で意思伝達できる能力があるんですよ…匂いとか音とか…感覚が鋭いのです」
盗賊「ほう?」
戦士「因みに私にはその感覚が有りません…だからアランさんの思うその手の者とは関わって居ないのです」
盗賊「おいおい…それってもしかしてウルフの遠吠えか?」
戦士「ハッハッハ…お気付きで?…遠吠えだけでは無いのですがね」
盗賊「なるほど分かったぞ…情報伝達は俺らの知らない方法で共有されてる訳か…」
戦士「察しの通り…そして私にはそれを教えて貰えない」
少女「ちち秘密を話すな!ははに言うぞ!」
戦士「同じ船に乗って居るのだから互いの探り合いで関係を悪くしたくないだろう?」
579 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/11(日) 13:02:49.08 ID:ckhR7HQw0
盗賊「…」---盗賊ギルド…こりゃレベルクソ高けぇな---
少女「お前に言っておく…敵も違う方法で情報のやり取りする」
盗賊「敵?なんだ敵ってのは?」
少女「お前達の敵…機械だ…秘密の手紙がソレだ」
盗賊「マジか…白黒の模様が記された…そうか俺らには読めない…つまり密書だった訳か」
少女「お前いろいろ遅い!!トロイ!ノロマ!」
盗賊「おぉ悪りぃ…今全部理解したわ…」
少女「だったらもう口に出して喋るな!誰が聞いてるか分からないから!」
戦士「この船に機械の者は誰も乗って居ないのはもう確認しただろう?」
少女「普段からそうしろと言ってる」
盗賊「分かった分かった…背中撫でてやるから許せ」
少女「お!!?早く撫でろ」クルリ
盗賊「ほらよ…」ナデナデ
少女「もっと優しく撫でろ」
戦士「ハッハッハ娘の扱いもご存じで…」
盗賊「しかしまぁ…これで色々分かったわ」ナデナデ
戦士「快適な船旅になりそうですな?ハッハッハ…」
盗賊「そうだと良いな?」ナデナデ
---どうも俺は盗賊ギルドを舐めてた様だ---
---機械化兵団も…機動隊の連中も---
---相当レベルの高い情報戦をやってんだ---
---そこに姉御が首を突っ込んだ訳か---
---こりゃマジ本気でやらんと足引っ張っちまうな---
580 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:08:47.45 ID:X4eygvxo0
『甲板』
ザブ〜ン ユラ〜リ
盗賊「波で樽が転がって行かん様にしっかりロープで縛って置いてくれ」グイ ギュゥ
学者「食材は何処に置きやす?」
盗賊「船尾楼はもうパンパンだな…」
剣士「船首楼側の小部屋…あそこを作業場にしたいんだけどさ」
盗賊「作業場?」
剣士「ほら?作り物すると音が出るじゃない?」
盗賊「なるほど…構わんが…食材もそこに置けんか?」
剣士「作業用のテーブル置いたから…調理場としても使おうか」
盗賊「それが良い」
剣士「僕と姉さんも船首楼側に移動するよ…船尾楼の居室が広く使える様になる」
盗賊「良いのか?寒いんじゃ無いのか?」
剣士「大丈夫!寒さ対策はしてあるから」
盗賊「じゃぁそうするか」
剣士「姉さん!!部屋の引っ越しだよ!!」メパチ
女オーク「分かったわ…」メパチ
学者「そうそうミライ君!作業場作るなら俺っちの錆びたクロスボウも整備してくれやせんかね?」
剣士「んん?」
学者「ボルトが無いもんで作れたら作って欲しいんす」
剣士「あぁボルトかぁ…心材で木を使って先端にガラクタから切り出した鉄を使えば作れそうだな…」
学者「ソレソレ!そういうので良いんす」
剣士「おけおけ!!材料を運んどいて」
盗賊「ふむ…船尾楼からガラクタが無くなればちったぁマシな居室になる」
剣士「ハハ…船首楼は物置小屋になっちゃうけどね」
-------------
581 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:10:33.50 ID:X4eygvxo0
『船首楼』
ヨッコラ ドサ
学者「へぇ?結構良い作業台を作りやしたね?」
剣士「金床が無いのが残念だけどね?」ゴソゴソ
学者「ガラクタの鉄板は好きに使って良いですぜ?」
剣士「うん!そうさせて貰う…鉄板があるだけで大分違うから」
学者「これ資材入れたら寝るスペース無くなるんじゃ無いすかね…」
剣士「大丈夫!僕と姉さんはずっと小さな馬車の中で生活してたんだ…慣れてるよ」
女オーク「馬車よりも少し広いわ?」
学者「なら良いっすね!」
剣士「ここに調理場が有ると言う事は…調理担当は僕かな?」
学者「そうなりそうっすね…大丈夫っすか?」
剣士「味付けが薄いって良く言われるんだけど…大丈夫かな…」
学者「まぁ食えりゃ何でも良いんすが…」
剣士「後で作ってみる」
学者「楽しみにして居やす…じゃぁ資材運んで来るっす」タッタ
-------------
582 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:11:16.82 ID:X4eygvxo0
『船尾楼』
ボフッ ボフボフ
少女「このおが屑のクッション気に入ったぞ!!」ノビー
盗賊「ボロキレとおが屑で簡単なベッドを作った訳か…ミライの奴考えたな」ウムウム
戦士「寝床は此処で?」
盗賊「奥の方使ってくれ…手前側はテーブルに海図を広げておきたい」
戦士「中々味のある居室な様で…」キョロ
盗賊「古臭いってか?確かに…30年前の雰囲気はあるな?」
戦士「ほとんどの物が手作り…ほぅ?ランプまで工夫が見える…ここで湯を沸かすのですな?」
盗賊「そうだ…それが意外と暖かいのよ」
戦士「癒されますなぁ…静かな海に…ランプで沸かす湯の音…営みを感じますな」
盗賊「そうか?まぁ…海の静かさは格別だな…どうだ?一杯やるか?」クイ
戦士「私も少し持って来ているのです」
盗賊「ヌハハ話が分かるじゃ無ぇか…片づけは後にして先ずは景気付けだ…飲め」トクトク
戦士「では遠慮なく…」グビ プハァ
盗賊「ウハハハハ病みつきになりそうだ…船で飲むのはよぅ…」グビグビ
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583 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:13:28.11 ID:X4eygvxo0
『船首楼_作業台』
ゴシゴシ ガリガリ
剣士「よしよし大分溜まったな…集めておかないと」ゴソゴソ
学者「クロスボウの錆びなんか集めて何するんすか?」
剣士「これね…染料になるのさ…他にも色々使い道があるんだよ」
学者「いやぁぁぁ大したもんっすね…そんな物まで使うんすね」
剣士「大体これで錆は落ちた…後は貝殻の粉で擦ればピカピカさ」ゴシゴシ
学者「勉強になるっすわ…何処で覚えたんすか?」
剣士「キ・カイで拾った書物だよ…みんな引っ越した後に書物とか邪魔だから放置して行くんだ」
学者「そうだったんすね…キ・カイも意外と宝が落ちてるんすね」
剣士「ゲスさんは医術を学んだとか?」
学者「俺っちは半端に学んだんで戦場医くらいでしか活用出来んす…どっちかと言うと機械工学の方を勉強しやした」
剣士「機械工学も面白そうだなぁ…」
学者「結論を言うとですね…人殺しの兵器を作るって事なんすよ…人間はそういう風にしか知識を活用出来んのです」
剣士「なんか…深い事を言った?」
学者「まぁ俺っちの戯言なんで気にせんで良いっす」
剣士「まぁ何となく分かったよ…良かれと思って作っても結局戦いの道具に利用されるだけ…何作ってもそうなっちゃう」
学者「おろろ?理解早いっすね?」
剣士「僕は色んな物作るけどさ…例えばこのおが屑で作ったクッションも…便利だから戦いに使われちゃう」
学者「そうそう…そんな感じで何作っても人殺しの道具にされるのが機械工学なんす」
剣士「でも今の時代は戦う相手は機械なんでしょ?」
学者「今までは…と言った方が良いかもしれんす」
剣士「どうして?」
学者「人間の中に機械化…いえ電脳化した人間が入り込んでるんす…内ゲバを起こす為っすね」
剣士「じゃぁ味方同士で戦う事になる?」
学者「かもしれやせん…ほんで機械と戦うために作った兵器はそのうち人間に向けられるんす」
剣士「ハッ!!それってもしかして機械がそうさせてる?」
学者「恐ろしい話しっすよね…」
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:14:03.48 ID:X4eygvxo0
実はっすね…機械化兵団の奴らは人間の住む領地に攻め込んで来る事なんか無いんすよ
多分自分たちの守る場所から遠くまで離れられんのです
だからここ20年ぐらいは人間側が攻める一方だったんす
機械は自分たちが動ける為にエネルギーが必要なんすが
今の所人間に奪われっぱなしで勢力が小さくなってる様に見えやす
でもですね?
もし人間のお偉いさんに電脳化した人間が混ざるとどうなると思いやすか?
剣士「奪ったエネルギーをこっそり機械に渡す…かな?」
学者「正解!…多分そうなるっす…戦って獲得した意味が無くなるんすね…でも戦死した人は帰って来ない」
剣士「もしかしてそういう事がもう起こってる?」
学者「多分そうっすね…ミライ君達と出会ったのもその中の出来事だと思って居やす」
剣士「じゃぁ船を盗んでフィン・イッシュに行こうとしてるのもその一環なの?」
学者「兄貴はそういう流れにあまり首を突っ込みたがらないんでフィン・イッシュに行く目的はちょっと違いやすね」
学者「でも…多分電脳化した人間が入り込んでるのはフィン・イッシュも同じだと思いやす」
剣士「関わらなくても巻き込まれてしまうという事か…」
学者「俺っちの予想では直に大きな戦争になると思いやす…だから姉御は危険を承知で盗賊ギルドに接触した…」
剣士「知らなかったよ…世界がそんな事になってるなんて…」
学者「要らん話をしちまいやしたねぇ…知らんくて良かったんすよ」
ガチャリ バタン!!
少女「お前ーー!!その話を他でしゃべるな!!」
学者「おわっ…びっくりしやしたよ…」ドキドキ
少女「分かったか!!今の話を陸でするな!!」
学者「へいへい…なんなんすかねこの子は…」
少女「お前口軽い!!しゃべったら超ウルフの餌になる!!覚えておけ!!」
剣士「まぁまぁ…撫でてあげるからこっちにおいで」
少女「撫でる…許す」クルリ
剣士「君は僕と一緒で耳が良いんだね?」ナデナデ
少女「ふむ…お前は通ずる物があるな…ふにゃー」コテン
剣士「…」ナデナデ
---なんか進まなきゃいけない方向が見えて来た気がする---
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585 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:14:47.89 ID:X4eygvxo0
『数日後』
カン カン コン
盗賊「ふぅぅやるな?老体のクセに」ズザザ
戦士「まだまだ!!」ダダ ブン
学者「まだ立ち合いやるんすか?そろそろ甲板開けて欲しいんすが…」
盗賊「ちと休憩にするか…」
戦士「フフ良い汗をかいた…ふぅ」スタ
学者「俺っちはクロスボウの試し撃ちをっすね…」ゴソゴソ
タッタッタ
剣士「リコルさ〜ん!!出来たよぉ〜!!」
戦士「お!?」
剣士「装着して見て」ガサリ
戦士「ふむ…中々に…」ガチャガチャ
盗賊「おいおい…ガラクタから鉄の鎧を作ったってか?」
剣士「盾もあるよ…ホラ」ドサ
盗賊「今時そんな重装着てる奴なんか居ないんだがな…銃弾は良いが榴弾でポーンよ」
戦士「良いでは無いか…私は戦地では無く魔物から村を守るのが仕事だ」
盗賊「そんなもん来てバン・クーバを歩いてたら笑いの的だがな?ヌハハ」
剣士「まぁまぁ…ガラクタはどうせ邪魔だったし僕の趣味だよ」
バシュン ストン!
盗賊「おっと!危無ぇな馬鹿野郎!」
586 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:15:20.14 ID:X4eygvxo0
学者「ミライ君…やっぱり少し狙いが逸れやすね…クロスボウの調整じゃ限界っすかね?」
剣士「それ多分ボルトの側が問題なんだよ…心材に木材を使ってるから微妙に曲がってるのさ」
学者「ボルトが軽い分威力も微妙なんすよね…」
剣士「飛距離は相当出るから火矢みたいな使い方が良いかもね…ボロキレと油は一杯有るからさ」
学者「火矢…なんつーか使う想定が出来んっす」
戦士「そうでも無い…陸沿いの航海は海賊船に遭遇しやすいから対海賊船であれば使い道も…」
盗賊「海賊?」
戦士「この船では海賊達が乗るスクーナーからは逃げられない…だから火矢で対向するのは有効だと思う」
盗賊「なるほど!!帆を燃やしちまえば勝ちか」
学者「大砲の飛距離に勝てるとは思えんのですが…」
戦士「そのクロスボウの飛距離は?」
学者「目視で200〜300メートルっすね…大砲は1000メートル以上飛ぶっす」
戦士「それは戦場で使って居る大砲の話…海賊の持つ大砲は大きくて丸い砲弾」
学者「丸い砲弾?それ旧世代の大砲じゃないっすか…」
戦士「そもそも揺れる船で1000メートル向こうの標的には命中しないから近距離で威嚇目的で使うのだよ」
学者「あぁぁそれなら旧式で十分って事っすね…」
戦士「だから連射の聞く火矢が有効だと思う…200メートルでそこそこの命中があれば脅威な筈」
剣士「火矢を作るのは簡単だから作りためておくよ」
戦士「もしも一気に接弦されて乗り込まれる様な事があれば…この鎧と盾が役に立つ」バンバン
盗賊「立た無ぇよ!!そんなもん銃器で一掃だ」
剣士「相手が銃器を持って居た場合は?」
盗賊「そらお前…ドンパチになっちまう」
戦士「フンフン!!」バンバン
盗賊「その鎧と盾で耐えるってか?マジか…人間キラーマシンだな…」
戦士「戦士とはそういう役だ」
学者「なんか連携の取り方が分かってきやしたねぇ?」
--------------
587 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:15:57.79 ID:X4eygvxo0
『海賊船?』
ザブ〜ン ギシ
剣士「…やっぱり追いかけて来て居そうだよ」
盗賊「ちぃぃ…言った傍から遭遇しちまうとは…」
戦士「望遠鏡は持って居ないのか?」
盗賊「無い…」
戦士「4本マストのスクーナーか…只の商船の可能性もある」
盗賊「こりゃ望遠鏡も必須だったな…しゃぁ無ぇ…備えるか」
戦士「日暮れまで逃げきれば追っては来ない筈…」
学者「このままの感じだと2時間後くらいって感じっすか?」
盗賊「向こうが速度上げなけりゃな?」
剣士「ダメだやっぱり近づいてる!!僕火矢を船尾楼の上に準備する!!」ピョン シュタ
学者「木材しか積んで無いのを見せればなんとか見逃して貰えやせんかね?」
盗賊「いや…海賊ならむしろ木材が欲しいだろ」
学者「あらら…そういうもんなんすかね?」
戦士「ううむ…もしもドワーフ国の海賊船なら何もしてこない…望遠鏡が無いとどうにも確認が出来ん」
盗賊「向こうはこっちが見えてんだろ?こっちが何者か分かる様にすれば良いんじゃ無いか?」
学者「あ!!旗印っすね…そういやこの船は旗印が無いっす」
戦士「何も旗を掲げて居ないから只の商船だという認識になるのだよ…」
盗賊「それでも近づいて来るって事はやるしか無いか…」
戦士「仕方ない…備えよう」ダダ
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588 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:16:51.63 ID:X4eygvxo0
『1時間後』
ザブ〜ン ユラ〜
剣士「向こうの大砲は船尾の方に1台…後ろ向いてる!!」
戦士「どうやら海賊に間違いない…こちらに大砲が無いと知って追い越しを掛けて船首側から接弦してくる」
盗賊「真後ろに居てどうして大砲を持って居ないと分かる?」
戦士「乗っている人数だ…大砲を1門使うのに4〜5人必要なのだ」
剣士「向こうは10人以上居るよ!!」
盗賊「くそう!折角手に入れた俺の船に大砲なんぞ当てられたく無ぇ!!」
剣士「少し進路変えた!!右側から追い越して来そうだ」
盗賊「ようしやってやる…クロスボウ2台はゲスとリコルが使え!向こうが後方に居る内に俺らの方から寄せて行く」
戦士「先制するのか?」
盗賊「やらなきゃやられる!戦いはそういうもんだ…ミライ!!お前は監視台の上でしっかり観察しとけ!!」
剣士「分かったぁぁ!!」
盗賊「右に寄せて行くぞ?」グイ
グググググ ユラ〜
盗賊「射程に入ったらじゃんじゃん撃ってけ!!」
学者「ほっほっほっほ…炉と油を持って来やしたぜ?」ドタドタ
戦士「炉で火を点けてからから撃つのか…」
盗賊「リッカ!!乗り込まれたらお前が敵を引き付けろ!!戦闘の準備だ」
女オーク「え!!?私が人間と戦う…の?」
盗賊「戦わなきゃ皆やられるぞ…黙って準備しろ」
女オーク「そんな…」オロオロ
剣士「姉さん!!向こうの船の人はやる気みたいだ…もう武器を振り回してる」
女オーク「分かった…」ダダ
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589 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:17:23.86 ID:X4eygvxo0
『海賊船』
バサバサバサ グググググ
海賊1「ぐへへへへ…あいつらビビッて船尾楼の上で立ちんぼだ…船ごと奪っちまうぞ!!」
海賊2「女が走り回ってるな?こりゃ楽しみだ」
海賊1「おい!!あいつらクロスボウ準備していやがる…ちぃぃ何処ぞの傭兵が乗ってるな?」
海賊2「この距離じゃ当たりゃしねえよ…そんな事よりお前等ぁ!乗り込む準備だ!!」
海賊共「うおぉぉぉぉ!!」バンバン
シュン! ストン! ボゥ…
海賊1「何ぃ!!火矢だと?」
海賊2「弓だ!!撃ってる奴を撃ち落とせぇぇぇ!!」ドタドタ
海賊1「馬鹿野郎!!こっから弓で届く訳無いだろう!!」
シュン! ストン! ボゥ…
海賊1「ええい!!火を消せ!!ゴルァ舵は何やってる!!距離開けろタワケ!!」
舵取り「向こうの方から近づいて…」グルグル ググググ
海賊2「水だ水!!海水でも何でも良い!!火を消せぇ!!」ドタドタ
シュン! ストン! ボゥ…
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590 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:18:25.05 ID:X4eygvxo0
『キャラック船_デッキ上』
ガチャコン バシュン!
学者「でっかい的なら結構当たりやすね?」ガチャコン
戦士「こちらの作戦勝ちか…」バシュン!
盗賊「休まないで撃て!!距離を開けられ始めてるぞ!!」
剣士「やったぁぁ!!見て!!帆の一枚が燃え始めてる!!」
盗賊「ヌハハこりゃ火消しに必死だな…ようし!!進路戻して振り切るぞ」グイ ググググ
学者「いやぁぁぁ…火矢なんて古典的な方法で結構いけるもんすね…」バシュン!
盗賊「まさか射程の長い火矢を使って来るとは思って居なかっただろうな…」
戦士「待て!!まだだ…こっちの火矢が届かない距離で並走している!!」
盗賊「なぬ!?まだやるのか?」
学者「あ…あ…あぁぁ…マズいっすね…大砲を触り始めやした」
盗賊「クソがぁ!!帆を焼かれてまだ食いついて来るか!!」
ドーン!! ポチャ
戦士「大砲1門…アレは3分置きに撃って来るぞ!!」
剣士「あの船…大砲を撃つと横にすごく揺れてる…」
盗賊「船底が浅いからあんな風になるんだ…そのまま転覆しちまえば良いのに…」
学者「ゆっくり追い抜かれて行ってやすぜ?」
盗賊「うむむ…どうする?」
学者「こっちに火矢がある事がバレてるんで近付いては来んっすよね?」
盗賊「転進して距離開ける!!ミライ!降りて来い!!帆を張り替えるぞ!!」
剣士「ええ?」
盗賊「この船の回頭性を今発揮する時だ!!お前は前の帆を張り替えろ!!リッカはメインの帆だ!!ゲス!!操舵変われ!!」
学者「へい!!」ダダ
盗賊「もうすぐ凪で風向き変わる…上手く風に乗って逃げる!!」ダダ
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591 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:19:15.13 ID:X4eygvxo0
『凪時』
ユラ〜 ギシ
盗賊「ようし…この距離なら大砲も当てらんないだろう」
学者「風が無くなってお見合い…すか」
盗賊「陸から吹き下ろす風に変わる…それまで待ちだ」
少女「お前ーー!!腹減ったぞ!!」シュタタ
盗賊「ええい今忙しいんだ…スッ込んでろ」
戦士「アラン!!その子は風を読む…今来るぞ!!」
盗賊「なぬ!?」
ソヨ〜
盗賊「ミライ!!帆で風拾って上手く回頭させろ!!沖へ向かう!!」
剣士「今やってる!!…ぐぬぬ」バサバサ
盗賊「リッカ!!メインの帆を張ってくれぇ!!沖へ逃げろぉ!!」グイ バサバサ
女オーク「むむむ…」グイ グイ バッサー
学者「このまま沖っすね?」グイ グググググ ギシ
戦士「おぉ…海賊船は回頭しない…」
盗賊「どうやら向こうさんは回頭させる為の帆を無くしてんだ…その分差が出る」
戦士「フフこれは逃げられそうだ…」
盗賊「よしよしよし!どんどん離れて行ってんぞ!!」
学者「兄貴ぃ!!帆船に慣れて来やしたね?」
盗賊「まぁな?後で反省会すっぞ!!色々足りない物が分かったからな」
少女「お前ー!!話聞いてるのか!!飯ぃぃ!!」
盗賊「ぬぁぁうるせぇな…ミライ!!帆を張り終わったら魚でも食わしておけ!!」
--------------
592 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:19:53.71 ID:X4eygvxo0
『夜_バーベキュー』
ジュゥゥゥ モクモク
少女「はむ…」ガブ モグモグ
盗賊「まず足りない物が…クロスボウを設置するスタンド…これが有れば命中率が格段に上がる」
盗賊「それから篝火を焚く台…鉄板に余りあんだろ?どうにか工夫して作ってくれ」
盗賊「あとな?雨に備えて雨除けも必要だ」
剣士「あ!!雨だと火矢が使えないじゃない!!」
盗賊「雨で濡れている場合は油が有効になる…油でヒタヒタの矢を撃ち込むのもそれなりに効果が在る」
学者「濡れた所に油があるとツルッツルなんす…そこに上手く着火したら延焼も狙えやすね」
盗賊「まぁ兎に角…こっちの射程でどんだけ撃てるかがカギだ…もっとクロスボウが有れば良いんだが…」
学者「あの重クロスボウはガラクタを漁らんと中々手に入らんすね…骨董品すよ」
盗賊「無い物はしゃー無ぇ…今のでやりくりするだ…後何か気付いた事は無いか?」
戦士「帆角を調整する時に目印となる番号か何かを記してみたらどうだ?」
盗賊「おぉ確かに…どの角度で固定したいか…今の所それぞれの勘便りだな…」
盗賊「ようし!!それは俺がやるわ」
女オーク「こっちの船に火矢を撃たれた場合は?」
盗賊「ふむ…水の入った樽は消火用でバラけて配置したほうが良い訳か…」
剣士「マストの下にくくり着けたら?登りやすくもなるし」
盗賊「それで行くか…まぁ今晩はもう追っては来んだろうから明日明るくなったら準備しよう」
学者「いやぁ…よくよく考えたら良く凌ぎやしたねぇ…」
盗賊「決め手は帆が一枚燃えた事だな?」
戦士「その後こちらの小回りを活かして逃げ回る機転も良かった」
盗賊「帆の操作は体力使うのが難点だ…もう体がクタクタよ」
学者「さぁて!!夜の交代に備えて俺っちは先に寝るっす」スック
盗賊「おう!休んでおけ…しばらくは俺が見て置く」
--------------
593 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:20:43.62 ID:X4eygvxo0
『数日後』
ザブ〜ン ユラ〜リ
学者「海賊船の対策で色々作ったは良いんすが…あれっ切り出会わんすね…」
盗賊「そうそう出会わんってこった」
学者「もう陸地を見失ってるんすが…現在地も見失っていやすよね?」
盗賊「うむ…羅針盤頼りよ」
学者「やっぱ航海士居ないとこうなっちゃうんすね…」
盗賊「海賊に追いかけまわされるよりは良いと思うがな?」
学者「しっかし…随分暖かくなりやしたねぇ…折角ロボの筐体に白金カイロ仕込んだんすが…」
盗賊「おぉ!!いつの間に…」
学者「一日一回油を差してやって下せぇ」
盗賊「おぉ分かった」
学者「それにしても暇っす…な〜んもやる事無いっす…」グター
盗賊「ミライが何冊か書物持ってただろ?お前も読んでみろ」
学者「アレは魔術の本で俺っちには読めないんすよ」
トンテンカン トントン
盗賊「ミライは常に何か作ってんな?」
学者「面白そうなんでちっと見て来やす」スック
盗賊「おう!!ついでに後で酒を持って来てくれぇ」
学者「へいへい…」ダダ
--------------
594 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:21:35.59 ID:X4eygvxo0
『船首楼_作業場』
ガチャリ バタン
剣士「よし!出来たぁ!!…あれ?ゲスさん?」
学者「何作ってるのか見に来たんすよ…退屈なもんで」
剣士「そんな大した物じゃ無いよ…コレさ」ジャーン
学者「木槌…なんかやたらデカい木槌っすね…」
剣士「姉さんがさ…人間の血を見たく無いって言うから代わりの武器を作ったんだよ」
学者「なるほどーリッカさんが持つなら丁度良さそうっすね」
剣士「この木槌なら鉄の鎧だってへこませられる…結構強力な武器だね」
学者「そこで乾かしてる卵みたいな奴って…もしかして爆弾っすかね?」
剣士「あぁコレ?火薬があれば爆弾になるけど…これには油を入れるつもりなんだ」
学者「へぇ…上手く作りやしたね?」スッ
剣士「あああ!!まだ触ったらダメ!!」
学者「済まんっす…これ何で出来てるんすか?」ツンツン
剣士「貝殻の粉と骨粉を練った物だよ…乾いたら卵の殻みたいになる」
学者「手投げ用の火炎瓶みたいなもんすね…」
剣士「僕…思うのがさ?何もしないで船に接近させて確実に火を点けた方が良いと思うんだ…その為の備え」
学者「良く考えていやすねぇ…」
剣士「接近戦なら姉さんに勝てる人なんかそうそう居ないから木槌で暴れて貰う…その隙に向こうの船を燃やせば良い」
学者「いやぁ…そんな木槌でぶっ叩かれたく無いっすね…」タジ
剣士「積んでたソリを解体して材料にしちゃったからアランさんに謝らないと」
学者「どうせもう使わんので好きにして良いっすよ」
剣士「それ聞いて安心した」
--------------
595 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:22:32.47 ID:X4eygvxo0
『船尾楼』
アーデモナイ コーデモナイ
盗賊「そろそろ外海に出る海峡の筈なんだが…」
戦士「ふうむ…確かに羅針盤と進路は合って居る…」
盗賊「真っ直ぐ進んでる様に見えて少し横に流れ続けて居たのかもなぁ…」
戦士「海図を見る限り何処に流れていたとしても直に陸地が見える筈…」
少女「少し左に煙匂う…」クンクン
盗賊「煙?」
少女「火薬匂い違う…なにか燃える匂い」クンクン
盗賊「陸で何かやってるのかもな…ちっと進路修正するわ」グイ
戦士「海賊が何処かの漁村を焼き討ちしているのでは?」
盗賊「なぬ!?」
戦士「地庄炉村に商船が入って来なくなったのはそもそも海賊に襲われるリスク回避…この辺りに居てもおかしく無い」
盗賊「くぁぁぁ無法地帯だな」
少女「父…悪い海賊倒せ」
戦士「海の上では分が悪い…陸ならどうにか…」
盗賊「もしも襲われてるとしたら…なんか放って置けんな…」
戦士「海賊船が漁村の焼き討ちで手隙になっているとしたらどうする?」
盗賊「焼き討ち…誰かが襲われてるか…行くしか無えだろ…船さえ無けりゃ只のごろつきだ」
戦士「決まりだな?」ギラリ
盗賊「おぉぉ…その眼…好きだぜ?」
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596 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:23:43.87 ID:X4eygvxo0
『漁村_近海』
モクモクモク
盗賊「やっぱり焼き討ちに会ってんな…丁度日が落ちてこっちに気付いて居ない…チャンスだ!」
戦士「スクーナー2隻か…30人近く村に降りて行ってるな…」
盗賊「船を燃やせばもうこっちには近づいて来ん!!後は様子見ながらクロスボウ撃てば良い」
学者「兄貴ぃ!!見張りの一人が気付いて騒いでいやすぜ?」
盗賊「一気に接近して燃やすぞ!!ミライ!!油玉投げる準備は良いか?」
剣士「いつでも投げられる!!姉さんも一緒に投げるよ?」
女オーク「う…うん…」ドタドタ
学者「射程に入ったんで火矢を撃ちやすぜ?」
盗賊「撃て撃てぇ!!」
バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!
学者「うほーースタンド有るとやっぱ安定して狙えるっす!!」ガチャコン
盗賊「無駄口は良いから撃て!!」
バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!
剣士「もっと寄せて…もっともっと…」
盗賊「やってる!!慌てんな!!」グイ
少女「父ぃーー!!悪い海賊気付いた!!戻って来る」
戦士「そのまま見張り役を頼む…」バシュン! ガチャコン
剣士「届けぇ!!」ポイ
女オーク「フン!!」ポイ
ボゥ メラメラメラ
剣士「行ったぁ!!」ガッツ
盗賊「どんどん投げろ俺は帆を畳んで船を停める」ダダ
剣士「姉さん!!あっちの船も!!」ダダダ ポイ
女オーク「フン!」ダダダ ポイ
ボゥ メラメラメラ
学者「これはもう火消し出来んすね…」アゼン
戦士「奇襲成功だ…次はこの船に乗り込んで来るかもしれん…クロスボウで迎え撃つ」ダダ
学者「小さい的に当てる自信無いんすが…」ダダ
ドーン ドカーーーン パラパラ
盗賊「うぉ!!火薬に火が付いたか!!」タジ
剣士「うわっ…こっちにも火の粉が…」
盗賊「帆を畳んでセーフだ!!船に燃える物が乗っかって無いか確認しろぉ!!」
剣士「分かったぁ!!」シュタタ
---------------
597 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:25:07.44 ID:X4eygvxo0
『撃ち合い』
バシュン! バシュン!
戦士「高さの利が有ってこちらが有利…」ガチャコン バシュン!
学者「ボルト足りやすかね…」バシュン!
シュン ストン!
盗賊「やっぱ弓で応戦して来んな…」
戦士「向こうに火矢が無いのが救いだ」ガチャコン バシュン!
シュンシュン ストンストン!
戦士「ミライ君!!盾を持って来てくれ!!」
剣士「分かった!!姉さんも盾で矢から身を守って!!」ダダ
女オーク「盾ね…」ドスドス
盗賊「ええいクソ!!弓を作って置けば良かったな…」ウロウロ
学者「これで船体に刺さった矢を回収したら次から弓矢使えやすね」
ヒュルヒュルヒュル ドスン!バキバキ!
盗賊「どわっ!!危無ぇ!!投げ斧まで使って来るか…」
戦士「フフ必死だな向こうは…武器がタダで手に入ると思えば良い」
盗賊「俺の船が傷んじまうんだが…」
剣士「盾を持って来た!!」ドタドタ
盗賊「おぉ…俺はコレで投げ斧と矢を受けりゃ良いんだな?」スチャ
剣士「僕も盾を構えておくよ」スチャ
ヒュルヒュルヒュル カーン!
盗賊「うらぁ!!ゲッツだ!!」
学者「ええと…この船に矢を撃って何がしたいんすかね?アイツ等は…」
戦士「逆上しているのだよ…やらせて居れば良い」
学者「そろそろこっちもボルトが無くなるんすが…向こうも同じっすよね?」
盗賊「次は泳いで来るんじゃ無ぇか?」
学者「泳いで来ても船体丸いんで這い上がれんと思うんすが…」
ヒュルヒュルヒュル カーン!
剣士「おぉぉ!!剣も投げて来てる…やったぁ!!」
盗賊「アイツ等…もしかすると相当アホだぞ?接近武器無くしてその後どうすんだ?」
戦士「挑発とはな?こうやってやるんだ…見てろ」スタ
ジョロジョロジョロ
盗賊「だはははは…ションベンすんのか!!俺にもやらせろ!!」ダダ
598 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:25:38.81 ID:X4eygvxo0
学者「俺っちもやるっす!」ダダ
剣士「ええと…じゃぁ僕も?」シュタタ
女オーク「…」アゼン
ジョロジョロジョロ
盗賊「見ろ!!泳いで来る奴が居る!!だははははは!!」
学者「これ完全に怒ってるっすね…アハハハ」
ヒュルヒュルヒュル カラーン! カラン!カラーン!
剣士「あぁぁ武器が一杯手に入る…」シュタタ
盗賊「さて…馬鹿共は投げる物が無くなった訳だが…こりゃどうする?」
学者「高みの見物で良いんじゃないすか?船降りると一気に乗り込んで来そうっすよね?」
盗賊「ううむ…村の方が心配ではあるんだ…」
アオ〜〜〜ン アオ〜〜〜ン
少女「超ウルフが仲間呼ぶ…餌いっぱいある」
盗賊「おぉ…そんな手が使えるんか」
戦士「ミライ君…矢尻は無くて良いから簡単なボルトは作れないかい?」
剣士「ん?木材をちょっと切り出すだけなら直ぐ出来る…ただ真っ直ぐ飛ばないよ?」
戦士「良いんだ…海賊達を少し手負いにするだけで良い」
剣士「じゃぁ直ぐに切り出して来る…待ってて」シュタタ
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599 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:26:30.17 ID:X4eygvxo0
『10分後』
ジャブジャブ
ゴラお前等ぁ!!こんな事してタダで済むと思ってんのかぁゴラァ!!
船から降りて来やがれ!!どこのどいつだゴルァ!!
学者「何か言っていやすねぇ…撃っちゃって良いすか?」
戦士「真下は狙いにくいが…」バシュン! グサ
海賊1「ぐぁ!!この野郎!!」
学者「ズルいっすよ…俺っちにもやらせて下せぇ」バシュン! グサ
海賊2「うがぁ!!くっそまだ矢が有るのか…野郎共!!潜って回避だ!!」ジャブン
学者「あたたたた…そんな息継ぎに出て来た所狙われるだけでしょうに…」
盗賊「どうやらそこら辺考える脳みそが足りん様だ…」
戦士「泳ぐために装備も脱ぎ捨てたな…」
盗賊「おいミライ!!まだ油玉残ってるか?」
剣士「有るよ?」
盗賊「一部海賊船の消火に行ってる奴が居る…武器とか持ち出しそうだから追加で燃やしてくれ」
剣士「おけおけ…でもちょっと遠いな」
盗賊「帆一枚で少し寄せてやる…」ダダ
ユラ〜 ググググ
海賊1「ゴルァ!!何処行くんじゃい!!」ジャブ
海賊2「おい…陸で何か騒いでるぞ?」
海賊1「村の奴らが反撃して来てんのか?」
海賊2「一旦戻るか…」
学者「何言ってるんすか…逃がさんですよ」バシュン! グサ
戦士「ボルト全部撃ち尽くすぞ」バシュン! グサ
剣士「届けぇ…」ダダダ ポイ
ボゥ メラメラメラ
盗賊「こりゃ引き上げても良さそうだが…まぁ暗いから朝まで待つかぁ…」
戦士「うむ…浅瀬だから座礁しては元も子もない」
盗賊「少しづつ風で流れてんのよ…碇降ろすと多分登って来るよな?」
剣士「碇の鎖に油を塗ろうか?錆び防止にもなる」
盗賊「おぉ!!そりゃ面白い絵が見れそうだ」
剣士「碇降ろして良いよ…油塗って来る」スタタ
---------------
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600 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:27:08.26 ID:X4eygvxo0
『翌朝』
ザブン ザブン
盗賊「夜が明けたら燃えた海賊船をちっと見に行こうと思ってたんだが…」
学者「漁村の住人に先越された感じっすか?ふぁ〜ぁ…」ゴシゴシ
盗賊「こりゃ…行けそうに無ぇなぁ…」
学者「良いんすか?兄貴は漁りに行くの好きっスよね?」
盗賊「そうなんだが…見ろ」
学者「死んだ海賊の死体囲んでケリ入れて居やすね?」
盗賊「まぁ多分犠牲者が出てんだろ…そんな中俺が海賊船漁りにも行けない訳よ」
学者「他の海賊共はウルフに追われて散った感じっすね?」
盗賊「だろうな?…さて…帆を開いてくっから舵頼む」
学者「へい!!」
盗賊「寝てる奴はまだ起こすな?」ダダ
学者「分かって居やすとも…」
学者「なんちゅぅか…漁村にも営み有ったんすよねぇ…誰か死んだらそりゃ悲しい…」
学者「どうしてこんなんなっちゃうんだか…」
バサッ グググググ
盗賊「碇上げるぞ?陸沿いに進め」ダダ
学者「へ〜い!!」グイ
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601 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/12(月) 18:28:12.42 ID:X4eygvxo0
『外海に出る海峡』
ザブ〜ン ユラ〜リ ギシ
盗賊「この灯台を超えたら左手に陸を見ながら行けばバン・クーバだ」
学者「あとどんくらいっすか?」
盗賊「丁度折り返しだな…1週間は掛からん筈」
学者「まだ先が長いっすねぇ…」
盗賊「陸沿いは海賊が出るらしいからまだ気は抜けん」
ガチャリ ギー
剣士「船体に刺さった矢を全部回収してきたよ」ドサリ
盗賊「おぉ!!何本くらいある?」
剣士「う〜ん…50本くらい?」
盗賊「無いよりマシだな…お前弓は作れんか?」
剣士「材料が無いなぁ…今の木材で作ってもあまり飛ばない」
学者「堅い木が必要なんすね?」
剣士「それもあるけど弦にも問題がある…ロープじゃダメだよ」
盗賊「まぁ仕方無ぇ…昨夜手に入れた武器類はどうだ?」
剣士「普通の炭素鋼の武器だね…僕は斧が欲しかったから満足してる」
盗賊「斧なんぞ使うんか?」
剣士「金床が無かったからさ…鉄を打つのに丁度良かったんだ」
学者「なんちゃって鍛冶屋が出来るんすね?」
剣士「釘を作る専門の鍛冶屋だね」
盗賊「釘がありゃもっと色々作れそうだな?」
剣士「うん!!木組みだけで作るのは結構大変だったんだよ…釘が有れば船の補修も出来るね」
盗賊「そうだ斧がぶっ刺さった所に板を張っといてくれよ…割れちまってんだろ」
剣士「一回戦闘すると結構傷んじゃうね?矢が刺さった跡も穴が開いちゃってさ」
盗賊「もうやりたく無ぇ…まだフィン・イッシュまで行かなきゃなんねぇからな…」
剣士「上手く補修するなら…骨粉でノリを作ってピッタリハマる木材貼り付けるか…」
盗賊「板を貼るだけじゃダメってか?」
剣士「それだと只のぼろ隠しになる…しっかり補修してから板を貼らないといけない」
盗賊「うは…手間が掛るな…」
--------------
602 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:29:04.11 ID:X4eygvxo0
『外海』
ザッパ〜〜〜ン ユラ〜〜〜
盗賊「やっぱ外海は波が全然違うな…」
戦士「風が強いな…」キョロ
盗賊「嵐が来るってか?」
戦士「いや…嵐とまでは行かんが雨が降るだろう」
盗賊「てことは視界も悪くなる…海賊に見つからんで済むという見方もある」
戦士「この船…見た所かなり古そうだが浸水は大丈夫だろうな?」
盗賊「おっとぉ!!考えて無かったわ…」
学者「丁度今ミライ君が船の補修やってるんで言ってきやしょうか?」
盗賊「おう!!…てかお前もゴロゴロして無いで手伝ってやれい!!」
学者「あちゃーー分かりやしたよ…トホホ」スタ
盗賊「しかし全然考えて無かったな…そういや甲板の板は隙間だらけだ…」
戦士「水を汲みだす準備もしておいた方が良かろう」
--------------
『甲板』
カクカク シカジカ…
剣士「ええええ!!?穴の補修だけじゃ済まない!?」
学者「俺っちも手伝いやすよ?」
剣士「そんな…甲板もだけどそこら中隙間全部埋めるなんて材料が足りない…」
学者「板貼るだけじゃやっぱダメなんすかね?」
剣士「水漏れは簡単に止まんないさ…どうしよう…」
学者「何が足りんのですか?」
剣士「隙間を埋める練り物…ええと骨粉と貝殻の粉の奴」
学者「油玉作った奴っすね?」
剣士「どうするかな…今から骨砕いて作るのに…」
学者「手伝いやすよ?」
剣士「船底に骨と貝殻が捨ててあるんだ…それを拾ってハンマーで細かく砕いて欲しい」
学者「分かりやした…どの位必要で?」
剣士「釜一杯分あれば足りると思う」
学者「えええええ!?そんなに…」
剣士「姉さん!!釜で湯を沸かしておいて!!骨粉で接着剤作る」
女オーク「いつもの奴ね?」
剣士「うん!!…ええと練り物を量増ししたいな…ボロキレ崩して繊維にするか…」
学者「骨砕くのに作業台使わせてもらいやすぜ?」
剣士「急いでね!!」
-------------
603 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:30:07.85 ID:X4eygvxo0
『練り物』
グツグツ…ポコ
剣士「ゲスさん!釜の中混ぜるの代わって!」グルグル
学者「これ時間掛かりやすね?」
剣士「骨がしっかり溶けるまで茹でなきゃいけない…」
学者「貝殻の粉とボロキレの繊維はいつ入れるんすか?」
剣士「それ姉さんに聞いて?僕は板の切り出しに行って来る」スック
学者「わかりやした…これ混ぜるのも力が居るんすね…」グルグル
剣士「焦がしたらダメだから!!休まないで混ぜて!!」タッタ
学者「ひぃ…ひぃ…」グルグル
--------------
『デッキ』
ザブ〜ン ユラ〜
盗賊「雲が張って来始めたな…」
戦士「やはり雨が来るか…」
盗賊「おい!嬢ちゃんよ…お前風が読めるんだろ?天気はどの位持ちそうだ?」
少女「お前…馴れ馴れしい」プイ
盗賊「くぁぁぁ頼む嬢ちゃん!水浸しにゃなりたく無いだろ」
戦士「持って半日か…私も手伝って来るか」ボソ
少女「舵やらせろ…お前も手伝え」
盗賊「んぁ?嬢ちゃんに舵動かせるか?こりゃクソ重いんだぞ?」
少女「うるさい…サッサと行け」グイ
盗賊「ヌハハやれるもんならやってみろ…壊すなよ?」
少女「ふぬぬぬ…」グググ
--------------
604 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:30:50.09 ID:X4eygvxo0
『甲板』
ヌリヌリ…
剣士「そうそう…隙間に入れ込む感じで塗り込むんだ」
学者「こりゃ全部やるの大変っすね…」
剣士「木材が縮んでそこら中スッカスカだよ…大きい隙間見つけたら教えて?下から板を当てて来る」
学者「へい!!」
盗賊「よう!!手伝いに来たぜ?」
剣士「あぁぁ助かる…練り物を板の隙間に塗り込んで欲しいんだ」
盗賊「これだな?」
剣士「うん!まだ甲板しかやって無いから船首の方とか船尾も全部塗って欲しい」
盗賊「こりゃ練り物足りるんか?」
剣士「姉さんが作り増してくれてるさ…えーと!大きな隙間を見つけたらソコに何か目印置いといて…後で処置する」
盗賊「分かった!ほんじゃ俺は船尾側行くわ」
剣士「船尾楼のスキ埋めはもう住んでるからその後ろ側ね」
盗賊「分かってる分かってる!!リコルは船首側頼むな?」
戦士「承知…」スタ
--------------
『2時間後』
ゴシゴシ ゴシゴシ
剣士「骨粉と貝殻の粉を撒いて行った所からブラシでしっかり擦って!」
学者「へいへい…」ゴシゴシ
盗賊「うはぁ…俺がミライに掃除させられる事になるとはよう…」ゴシゴシ
女オーク「ウフフ…」ゴシゴシ
剣士「…これで水が流れて行く所に上手く溜まってくれれば良い」マキマキ
盗賊「これで仕上げか?」
剣士「まだ!!油をしみこませたボロキレで全部拭く」
盗賊「まだ在んのか…そろそろ腰が痛くなって来たんだが…」
剣士「今までほったらかしにしたツケだね…時間一杯有ったのにさ」マキマキ
戦士「磨き終わった所から油で拭けば良いのか?」
剣士「うん!!油を直接垂らすのはダメ!!ボロキレに染み込ませて薄く塗る…その後おが屑撒く」
戦士「ハハ中々にいろいろ工程がある…」
剣士「船の手入れという意味だと本当は船内も全部やった方が良いね」
学者「あぁぁぁ…なんかミライ君がいつも作り物してる理由が分かって来やしたよ…」ゴシゴシ
盗賊「何やるにしても手間が掛ってんだ…」ゴシゴシ
学者「一朝一夕じゃ何も出来んてこってすね…」
--------------
605 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:31:31.29 ID:X4eygvxo0
『雨』
ポツポツ ポツ…
盗賊「降って来やがったが…なんとか間に合ったか?」
剣士「雨漏りを受ける容器が沢山必要だよ!!食器を全部集めて!!」ドタドタ
盗賊「こりゃ休まらんな…」
剣士「積み荷の木材が水吸っちゃうと重くなりすぎて沈没するかもしれないよ」
盗賊「マジか…」
学者「容器持って荷室行きゃ良いっすかね?」ガサ
剣士「うん!漏れの多い所は補修しなきゃいけないから教えて欲しい」
盗賊「うっし!!久しぶりに体全部洗えると思って気合入れて行くか!!」ヌギヌギ
剣士「ええ?裸で?」
盗賊「おうよ!!溜まった雨水で体洗うんだ」
剣士「アハハ…良いね?」
盗賊「湯を沸かして樽に入れれば風呂にもなるぞ?」
剣士「おお!?それ採用!!よし…姉さんに湯を沸かして貰う」
盗賊「楽しみが増えたか?」
剣士「雨はそんな楽しみがあるかぁ…ワクワクしてきたぞぉ!」
--------------
606 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:32:21.58 ID:X4eygvxo0
『樽湯』
チャプン モクモク
剣士「姉さん!湯加減はどう?」
女オーク「すこし冷めて来たから足し湯が欲しいわ…」チャプ
剣士「これ…一緒には入れなさそうだね」チョロチョロ
女オーク「無理ね…湯が全部溢れてしまう」
剣士「この場所…船首楼で丁度隠れて良い水浴び場になりそうだ」
女オーク「良いの?雨漏りの処置に行かなくて?」
剣士「まだどこで雨漏りするか分からないからさ…もう少し雨が降ってからだね」
女オーク「雨に当たりながらの湯は気持ち良い…」
剣士「姉さん沢山働いたから体を温めてゆっくりしてて良いよ」
女オーク「ウフフ…」チャプン
シュタタ シュタタ
少女「ミライ!!何か来る!!休む暇無い!!」シュタ
剣士「え!!?」
少女「雨で匂い流れる…父…何処行った?」
剣士「荷室に降りてる筈…」
少女「急げ!!何か来る!!」シュタタ
剣士「ちょ…」キョロ
シュルシュル ガツン!
女オーク「え!!?」ザバァ
剣士「ロープが掛けられた音だ…マズい!!」
海賊1「うらぁぁぁ乗り込めぇぇ!!」
海賊2「ひゃっほーーーう!!」
女オーク「ミライ!!私が時間を稼ぐ!!皆呼んできて!!」ザブ ダダダ
剣士「姉さん…裸で戦うの?」
女オーク「気にならない…木槌で戦うから早く行って!!」ダダ
--------------
607 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:33:39.39 ID:X4eygvxo0
『乱戦』
ドヤドヤ
ロープもう一本引っかけろアホがぁ!!
おい止まるな!!早く乗り込めぇ!!
梯子はどうした!梯子は!!乗り遅れんぞ!!
海賊1「おやおや裸の女が飛び出して来るとはこりゃツイてる…ぐへへへへ」ブン ブン
海賊2「ウハハハ…デカい木槌で俺らをぶっ叩こうってのか?」ペロリ
海賊3「この女良く見たらオークだ…こりゃ毎晩楽しめるぞ?」ヘコヘコ
女オーク「…」---多い---
海賊3「さぁ大人しくしてりゃ殺しゃし無ぇ…武器を降ろ…」
女オーク「…」ダダ ブン
海賊3「ぶへぇぇ…」ポーン ボチャーン
海賊2「やりやがったなゴルァ!!」ブン スパ
女オーク「くぅ…これくらい!!」ダダ ブン
海賊2「げひぃぃ…」ポーン ボチャーン
海賊1「くそコイツ…」タジ
ヨジヨジ ヨジヨジ
女オーク「…」---ロープを伝ってどんどん登って来る---
女オーク「…」---時間を掛ければ不利になる---
女オーク「…」タジ
海賊1「お前等ぁ!!早く登って来い!!」
女オーク「…」---私の剣は船首楼の中---
女オーク「…」ダダ
海賊1「ウハハ逃げやがった…お前等ぁ!!早く乗り移れ!!船尾楼を占拠するぞ!」
海賊4「こりゃどうなってる?何で2人海に落ちたんだ?」スタ
海賊1「オークが乗ってたのよ…まぁ逃げたんだがな?…他に乗ってる奴探すぞ…女以外皆殺しで良い」
ガチャリ ダダダダ ブン!
海賊4「どわぁっ…」ポーン ボチャーン
海賊1「何だ?剣と木槌の二刀流か?」タジ
608 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:34:47.67 ID:X4eygvxo0
女オーク「…」ダダダ ピョン
海賊1「おい!!俺らの船に…飛び移る…だと?」
海賊5「何だ今の!?裸の女が飛んでったんだが…」
ガチャリ タタタターン!
海賊1「ぐはぁぁ…」ブシュー
学者「何勝手に乗り込んでるんすかねぇ…」タタタターン
海賊5「銃器…だと?」ガク ドクドク
学者「雑魚相手に使いたく無かったんすよね…」スタスタ
剣士「姉さんは!!?」キョロ
盗賊「おい!!ロープで乗り移って来る前に切っちまうぞ!!」
剣士「あああ!!姉さんが向こうの船に…」ダダ
盗賊「何ぃ!!」
コーン コーン コーン
盗賊「うぉ!!マスト切り倒そうってのか…」
剣士「ロープ切ったら姉さんが向こうの船に取り残される…」
盗賊「ちぃぃ…しゃぁ無ぇ!!乗り込む前に蹴り落とせ!!」ダダ ドカ
シュン! グサ
盗賊「ぐぁ!!くっそ下から弓撃って来やがる…」
学者「任せて下せぇ!!」タタタターン
海賊共「ぎゃぁぁ…」ボトボト ボチャーン
メキメキメキ ガッサー ザブーン
盗賊「うほーーメインマスト切り倒しやがった…」
剣士「姉さんが走ってロープに掴まった…他のロープを切っちゃおう!!」ダダ スパ
盗賊「リッカが掴まってるロープ引き上げるぞ!!」グイ
剣士「姉さん弓で撃たれてる…早く!!」グイ
学者「援護しやすぜ?」タタタターン
--------------
609 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:36:22.27 ID:X4eygvxo0
『甲板』
グイグイ ドタリ
盗賊「ふぅぅ…危機一髪だぜ…リッカ!!随分弓で撃たれた様だな?大丈夫か?」
女オーク「くぅぅ…背中の矢を抜いて」
盗賊「血だらけだな…ちっと痛むぜ?」ズボォ ドクドク
女オーク「ぅぅぅ…」
剣士「姉さん!!今治してあげる…」スッ
女オーク「ミライ駄目!目隠しを外しては駄目…その力は必要無い」グイ
剣士「でも血が…」
盗賊「ゲス!!治療出来るか?」
学者「へい!!ちっと見せて下せぇ…」ジロジロ
盗賊「他の矢も抜くぜ?」ズボォ ドピュー
学者「ポーションあるんで一口飲んで下せぇ…」クィ
女オーク「むぐっ…」ゴクン
学者「さすがオークっすね…筋肉の奥までは刺さって無さそうっす…ミライ君!!ボロキレ持って来て下せぇ」
剣士「直ぐに持ってくる!!」ダダ
学者「傷も縫わん方が良さそうっすね…圧迫止血だけで元通りっすよ」
盗賊「…だそうだ?まぁ…これぐらいでオークが死ぬとは思えんがなヌハハ」
女オーク「他の矢も抜いて欲しい…手が届かない」ググ ピュー ドクドク
学者「動かんで下せぇ!出血して勿体無いっす」
盗賊「抜くのは少し待て…ミライがボロキレ持って来てからだ」
剣士「持って来たぁ!!」ドサァ
学者「俺っちが矢を抜いた痕に圧迫止血していくんで順に矢を抜いて欲しいっす」グイグイ ギュゥ
剣士「姉さん痛く無い?」オロオロ
盗賊「…」---こいつ…何か力を隠し持ってる様だな---
---あの目隠しの下に秘密有りか---
---状況からみて治癒魔法の類---
---しかし何故隠す必要がある?---
610 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:37:17.41 ID:X4eygvxo0
『船尾』
ザザザザーーーー
盗賊「リコル!ここに居たか…何をしている?」
戦士「他の海賊船が居ないか見張って居るのだ…雨だと思って警戒を怠ってしまったからな」
盗賊「丁度ここは船尾楼の梁に隠れて雨に当たらんか…」
戦士「フフ…しかし何処から接近されたか分からなかったな?」
盗賊「船が並走していたから後ろから追い越して来たのだろう」
戦士「あの海賊船…帆を一枚焼いた船だ」
盗賊「そうだったのか…気付かなかった」
戦士「ここまでずっと追って来た事を思うと…仲間の海賊船が居るかもしれない」
盗賊「なるほど…」
戦士「娘の鼻は雨の日は役に立たない…私はここでしばらく監視を続ける」
盗賊「ふむ…ここは雨が当たらんから篝火を焚いても良さそうだ…」
戦士「それほど寒くは無いぞ?」
盗賊「老戦士へのいたわりだ…篝火で芋でも焼くと良い」
戦士「フフ…そうさせて貰う」
--------------
『船首楼』
ポタポタ ピチョン
剣士「姉さん…木の芽を蒸かしたよ…食べて?」
女オーク「私はもう大丈夫なのに…ミライが食べて?」
剣士「何言ってるんだ…血が足りないんだから…ほら」
女オーク「はむ…」モグモグ
剣士「なんだろう…姉さんの血を見ると落ち着かない…腹が立つ」イラ
女オーク「もうあの力を使っては駄目よ?約束して」
剣士「…分かってるさ…でも姉さんが死ぬくらいなら…使う」
女オーク「…」
剣士「危険な力なのは分かってる…魔術書で調べたから」
---そう---
---力を使うと僕が消える---
---でもその力は…僕の思い通り…世界を作る事が出来る---
---量子転移---
---究極の魔法---
611 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:38:12.22 ID:X4eygvxo0
『深夜』
ユラ〜 ギシ
剣士「すぅ…」zzz
女オーク「…」---またあの力を使ってしまうくらいなら---
女オーク「…」---旅になんか出ない方が良かったかも知れない---
あなたは力を使って
自分を犠牲にして…居なくなった
夢の中の出来事
でもそれは本当に有った出来事…暁の使徒の記憶
だからもう…失わせない
女オーク「生まれ変わって…幸せですか?」
剣士「むにゃ…ごにょごにょ…」zzz
女オーク「あなたを愛しても…良いのですか?」
剣士「すゃ…」zzz
女オーク「…」
--------------
--------------
--------------
612 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:38:48.35 ID:X4eygvxo0
『数日後』
ザブ〜ン ユラ〜
盗賊「また雨が降りそうだな…」
学者「降ったり止んだりっすねぇ…」
盗賊「しゃー無ぇ…ミライに言われる前に床磨くかぁ…」ノソ
学者「もう雨漏りは大分良くなったんすがね…」
盗賊「多分アレだ…雨が降る前に必ずやっとかなきゃイカン系のやつだ」
学者「じゃぁ俺っちも粉作って来るっす」スタ
スタタタ
剣士「アランさん!!大変だ!!前方に大きな船が見える」
盗賊「なぬ!?どこよ!?」キョロ
剣士「船首から見えた…まだ遠いけどね」
学者「見に行きやしょう!!」タッタッタ
--------------
613 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:39:52.91 ID:X4eygvxo0
『船首』
ユラ〜リ ギシ
盗賊「おぉ!!アレか…帆の陰になってたんか…」
剣士「大きいよね?」
盗賊「ありゃ軍船だな…くそデッカイキャラック船だ」
スタスタ
戦士「どれどれ?」ジー
盗賊「おぅリコル…船尾の監視は飽きたんか?」
戦士「声が聞こえたから見に来たのだ…ふむ…もう海賊は出ないな」
盗賊「やっぱ軍船だよな?」
戦士「海の治安を守っている船だ…他にも沢山小さな船が居る筈」
剣士「あぁぁ!!居る居る!!三角帆一枚の小さな船」
戦士「高速のスループ船…3〜4人が乗って巡回しているのだ…スクーナーよりも早い」
盗賊「ってことはバン・クーバに近いんだな」
戦士「どうやら無事に辿り着けそうだ…なかなか楽しい航海だったなハハハ」
剣士「うわぁ…あの船早いなぁ…」アゼン
盗賊「こっちに近付いて来てるのは様子見に来てんだな?」
戦士「恐らく…」
剣士「小さな船が沢山こっちに来るよ」
戦士「ところでミライ君…君の目隠しはどういう仕組みなんだい?」
剣士「え?只の目の粗い布さ…透けて見えてるだけだよ」
戦士「目を隠さなくてはならない理由でも?」
剣士「姉さんが隠せって…その理由は言えない」
戦士「そうか…まぁ気にしないでくれ」
剣士「目隠しをしてた方が良い事もあるんだよ?すごく遠くが見やすいんだ」
戦士「ほう?」
剣士「そして近くを見る時は音とか匂いを感じながら見る…だから戦いの時に良く動けるんだ」
戦士「なるほど…今度理由を聞かれた時はそう答えると良い…余計な誤解を生まないで済む」
剣士「ハハそうだね…」
--------------
614 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:41:04.51 ID:X4eygvxo0
『行き会い』
ザブ〜ン ユラ〜リ
剣士「大きいなぁ…」フリフリ
学者「こっちと比較にならんっすね…」
剣士「あ!!向こうも手を振った!!やった!!」ブンブン
盗賊「いやしかし間近に見ると圧巻だな…」タジ
戦士「主力はスループ船とスクーナーの方だ…このキャラック船は補給船だぞ」
盗賊「俺がガキの頃はよ…このでかいキャラック船よりも更にデカい船が有ったんだ…機械で出来た船な?」
剣士「そんな大きな船が…」ポカーン
盗賊「キ・カイの軍港に良く出入りしてたのよ…機械の反乱の後は何処行ったか分からん」
学者「噂じゃ外海に行ったっきりっすね」
盗賊「近くで見て見たくて何回も軍港に忍び入ったんだが…毎回捕まってお袋が謝りに来てた」
学者「最近だと機械じゃなくて蒸気船ってのが出て来たらしいっす」
盗賊「ほう?何だソレ?」
学者「帆に加えて蒸気でプロペラを回すとか…ミネア・ポリスで造船されたらしいっすよ?」
盗賊「なぬ!?海に接して無いだろう」
学者「湖に流れてる川を登るらしいすよ?」
盗賊「マジか…逆流でもスイスイってか?」
学者「地下列車も蒸気で動かす様になったんでこれからは蒸気機関の時代っすね」
盗賊「魔石が入手出来なくなったからなぁ…」
学者「メチャクチャ高くなりやしたよね…俺っちのバヨネッタも魔石必要なんでいつまで使えるか…」
盗賊「ロボの魔石もそろそろ交換時期だ…バン・クーバに戻ったら買わなきゃならん…」
学者「金有るんすか?」
盗賊「んむむ…又ドロって来ないと足りんな…」
学者「兄貴は良いっすねぇ…どうにか資金調達出来るんで…」
-------------
615 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:42:36.71 ID:X4eygvxo0
『船尾楼』
ユラ〜 ギシギシ
盗賊「さっき見えた灯台が…海図で言うココだから…ちょい進路右だな」グイ
学者「これこのまま行ったら夜中の内に着いちゃうんじゃないっすか?」
盗賊「他の船と結構行違う様になったから速度落とさにゃならん…まぁ明日の朝だ」
学者「朝になったら雨止むと良いっすね」
盗賊「うむ…」
戦士「アラン達は到着した後どうする?」
盗賊「とりあえず姉御の事が心配だから一度傭兵ギルドの方へ顔を出す…リコルはどうするんだ?」
戦士「宿屋だな…」
盗賊「積み荷をどうするとか聞いて居ないのか?」
戦士「あぁ…それは向こうがこちらを見つけてくれるのを待つんだが…」
盗賊「向こうって何ヨ?」
戦士「まぁ隠して居ても無駄だから言うが…私の妻が先にバン・クーバに移動しているのだ」
盗賊「なるほど?つまり宿屋で待ち合わせという事か…」
戦士「う〜ん…ハッキリ言うと何処に居るか分からん」
盗賊「くぁぁぁ何だソレ!!」
少女「母…父来たの匂いですぐわかる」
盗賊「…なるほどな?」---母親もそっち系か---
戦士「実を言うと今回の船旅は私からすると家族旅行なのだ」
盗賊「んん?」
戦士「この子の他にあと2人姉が居てな…フィン・イッシュの祖父の所で世話になっている…家族で会いに行くという事なのだ」
盗賊「娘が3人居たってか…」
少女「父…秘密はしゃべるな…母に言うぞ」
盗賊「ヌハハなんかお前ん所の家族が大体分かって来たぞ…能力持って居ないのはお前だけだな?」
戦士「まぁ言うな…」
盗賊「家族全員揃うってのは羨ましい限りだ…ほんで?嫁と合流するまではどうなるか分からんと」
戦士「その通り…荷の入れ替えは少なくとも3日は必要になるだろう…それまで自由だ」
盗賊「俺も色々やりたい事があるからその方が良い」
少女「お前ー!!母は怖いぞ?…覚悟しておけ?」
盗賊「俺は何もして無ぇだろ…怒られる理由が無ぇ!!」
少女「手紙…」
盗賊「う…」ギク
少女「忘れるな?」ジロ
盗賊「わ…分かってらい!!」
--------------
616 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:43:32.11 ID:X4eygvxo0
『翌日_バン・クーバ港』
ガコン ギシギシ
盗賊「うっしゃぁぁ!到着!!」
学者「兄貴ぃ…これ船泊めとくのやっぱタダじゃないっすよね?」
盗賊「悪りぃ…ちっと立て替えて置いてくれ…後で返す」
学者「やっぱそうなりやすよねぇ…トホホ」
盗賊「リコル!!荷物持って居りて良いぞ!!…連絡は追ってだな?」
戦士「ハハハそう慌てなくても良い…と思う」
盗賊「わーってるわーってる!!嫁によろしくな?」
少女「うぉーーーー!!都会ぃぃ!!」シュタタ
ウルフ「ワフワフ!!」シュタタ
戦士「ハハハやっと船から降りられて嬉しい様だ…では又」ノシ
盗賊「おう!!又な?」ノシ
学者「兄貴ぃ!!俺っち先に金払って傭兵ギルド行っときやすね?」
盗賊「分かった…俺は後からミライとリッカ連れて向かう…おっと待て!!」
学者「なんすか?」
盗賊「お前のバヨネッタ…ロボの筐体ん中入れとけ」
学者「うおっと忘れて居やしたね…」ガチャ ガチャ
ロボ「ピポポ…」クルクル
学者「じゃぁ行っときやす!」タッタ
盗賊「さぁて…俺の荷物と言っても何も無ぇな…さっさと2人連れて行くか?」
ロボ「ピポポ…」ウィーン
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617 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:45:08.83 ID:X4eygvxo0
『桟橋』
ギシギシ
盗賊「包帯はまだ取れ無いのか?」
女オーク「ゲスさんがまだ取るなって…もう痛く無いのに」
盗賊「アイツはまぁ腐っても医者だからな…何か理由あんだろうな」
剣士「姉さん!!剣忘れてるよ…」
女オーク「そうだったわね…」スチャ
盗賊「武器携帯か…禁止されちゃ居ないが…毛皮の中にしっかり隠しとけ」
女オーク「分かった…」ファサ
剣士「なんか…他の人はみんな薄着だね」キョロ
盗賊「割と温かいからな?まぁ…毛皮着こんだからと言っておかしい訳では無いぞ?」
盗賊「高級品だから洒落て着こむ奴も多い」
剣士「僕この港の方までは来た事無いんだ…遠くから見てるだけだった」
盗賊「軽く説明するか?」
ええと…こっち側の大陸じゃ珍しく殆どの建物が地上に建ってる
一応地下都市は有るんだが先の大戦で大部分が埋まっちまった
キ・カイよりかなり気候が良いもんだから皆こっちに移住した訳だ
ほんで今は建築ラッシュ…木材が必要な訳よ
剣士「へぇ…入り組んだ地形が港に適してるのかな?」キョロ
盗賊「それもあるんだろうが…古代でも港だった様で色々都合が良いらしい…防波堤とかな?」
剣士「今日は何処で寝るの?」
盗賊「宿屋でも良いんだが…傭兵ギルドに宿舎があってそこを自由に使えるんだ」
剣士「僕達ギルドに入って無いけど?」
盗賊「あぁ気にすんな…そんな奴他にいくらでも居る」
剣士「なんか人が多い所は姉さん怖がるんだ…」
盗賊「そうか…ほんじゃ俺らの隠れ家が良いな」
剣士「俺ら?」
盗賊「昔の連れが集まる場所だったんだがよう…今は誰も使って無い…まぁ物置だな」
剣士「物置の方が落ち着くかな…」
盗賊「とりあえず俺は傭兵ギルドに預けてる金を取りに行くんだ…まぁ観光だと思って付き合え」
剣士「分かった…姉さん行くよ」グイ
女オーク「手は繋がなくてもちゃんと付いて行くわ」スタ
--------------
618 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:45:59.63 ID:X4eygvxo0
『商店街』
ワイワイ ガヤガヤ
剣士「ああああああ!!松ぼっくりだ…マンドラの根もある…」アレモ コレモ
盗賊「ヌハハ買い物は後でたんまり買えるぞ?」
剣士「姉さん!!すごく安いよ…お金いくら持ってる?」
女オーク「銀貨70枚くらい…」
盗賊「おいおい…慌てなくても逃げんぞ?」
剣士「なんでこんなに安いの?」
盗賊「お前いつも何処で買い物してたのよ…」
剣士「地下の列車降りて直ぐの所…」
盗賊「そら向こうの大陸の物は港に近い方が安いわな…地下で安いのは硫黄とか鉱物系だ」
剣士「そうだったんだ…」
盗賊「まぁ傭兵ギルドまで行ったら船での働き分は俺が金を出してやる…そうだな…金貨10枚って所か」
剣士「うおおおおおおお!!姉さん!!3年は暮らせる!!」
盗賊「何言ってんだ!!サッサと行くぞ!!」スタ
---------------
619 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:47:45.20 ID:X4eygvxo0
『傭兵ギルド』
ザワザワ ヒソヒソ
ヒュー・ストンの大穴攻略失敗したんだってよ…
それでしばらく後退して再編成か…こりゃ又仕事が来そうだな
見ろ!ロストノーズの奴らが来た…目を合わすな
盗賊「いよう!!しばらくぶりだな?」
受付の叔母さん「あら?アラン君何処行ってたんだい?」
盗賊「ちっと野暮用でな?ほんで…預けた金を受け取りたいんだがよう…」
受付の叔母さん「はいはい…ええと…金貨40枚ね」パラパラ
盗賊「あれ?そんだけだったか?」
受付の叔母さん「嫌だねぇ…あんた酒場でツケ沢山有ったでしょう」
盗賊「ぬぁぁぁぁ忘れてた…」
受付の叔母さん「はい金貨40枚…袋に入れとくね」ジャラリ
盗賊「ちぃぃぃ…70枚のつもりだったんだが…」
受付の叔母さん「なんだい急にそんな大金が入用なのかい?」
盗賊「まぁちっと野暮用でな…ニーナ帰ってるよな?宿舎に居るか?」
受付の叔母さん「あらあら?あんたゲス君に聞いて居ないのかい?」
盗賊「なんだよ…」---まさか---
受付の叔母さん「ニーナちゃん気の毒だったねぇ…遺品の引き取り手が居なかったら部屋を片付ける所だったよ」
盗賊「お…おい!それってまさか…」
受付の叔母さん「部屋の方に遺骨が納めて有るから会いに行ってあげ…あら?ニーナちゃん?生きてるじゃないか」チラリ
女オーク「あ…いえ…」ハテ?
受付の叔母さん「じゃぁあの遺骨は一体誰の…」
盗賊「あぁぁ…違う…人違いだ」
受付の叔母さん「ええ?」ジロ
盗賊「悪りぃ…部屋見て来る…叔母さん騒がないでくれよ?」
受付の叔母さん「どうなって居るんだい?これは…」
盗賊「リッカ!ミライ!行くぞ!付いて来い…」グイ
女オーク「え…あ…」スタ
剣士「…」---なんだろう?視線が気になる---
--------------
620 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:48:49.93 ID:X4eygvxo0
『ニーナの部屋』
ガチャリ バタン
学者「うえっ…うええっ…姉御ぉ…なんでこんな…」ヨロ
盗賊「どけぇ!!」ドン ゴロゴロ
学者「姉御が…ぅぅぅぅ」
盗賊「こ…これが…」プルプル
学者「火葬して…骨だけに…ぅぅぅ」
盗賊「おいこりゃ夢だ…そうだ夢だ…こんな夢何回も見てる…」プルプル
女オーク「…」
盗賊「おかしいな何で冷め無ぇんだ」ゴン!
剣士「…」
盗賊「痛てぇな…おかしいな…」ポロポロ
学者「ぅぅぅ…」
盗賊「何でだよ…何でこんな事になってんだよ…何でこんなに小っちゃいんだよ…」ポロポロ
ロボ「ピ…」シュン
学者「俺っち達が…ヒック…地下列車に乗った時にはもう…死んでたらしいっす…」
盗賊「クッソ誰がやったんだ…」グググ
学者「味方の砲弾…2発直撃…うぇっ…そら死にやすよね…」プルプル
盗賊「だからこんなに小さく…」
女オーク「牙が残ってる…オークは死んだ仲間の牙を形見にする…」
盗賊「牙…そうだ…この牙をからかった事も有った」スッ
女オーク「その牙を持って居る限り…忘れない…ずっと心の中に生きる」
トントン
盗賊「誰だ!!」
621 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:50:50.71 ID:X4eygvxo0
受付の叔母さん「あんたにお客さんが来てんだよう…」
盗賊「取り込み中だと言ってくれ…そっとしといてくれ」
受付の叔母さん「そうかい?」スタスタ
盗賊「フー…フー…泣いてる場合じゃ無ぇ」ゴシゴシ
学者「兄貴ぃ…」
盗賊「書簡だ…姉御は書簡の秘密に気付いて殺されたんだ…探せ!!」
学者「ここは前に来た時に俺っちが見やした…」
盗賊「そうか…確かに誰でも入れる様な場所なら既に家探しされてるな…」ギラリ
盗賊「ロボ!姉御の遺骨は大事に預かっててくれ」パカ
ロボ「ピポポ…」ウィーン
盗賊「ここの遺品持ってズラかるぞ…どっかに電脳化した奴が紛れてる」
学者「ズラかるって何処にっすか…」
盗賊「ギャング達の隠れ家だ…俺についてくりゃ良い」
剣士「さっき受付の所でスゴイ視線を感じたんだ…もしかして姉さんの姿見て勘違いして無いかな?」
盗賊「その可能性が高い…悪いな…騒動に巻き込んじまって」
女オーク「もしかして…狙われて?」
盗賊「相手はプロの暗殺者だと思って間違いない…窓から外に出るから準備しろ」ゴソゴソ
学者「扉に鍵を掛けて置きやすね」カチャ
盗賊「ロボ!先に窓から出すぞ…」グイ ポイ
ロボ「ピピ…」ガチャン プシュー
盗賊「最後に窓にも鍵かって行くから先に出ろ…」
学者「へい…」グスン スタ
盗賊「音を立てるな?」カチャカチャ カチン
盗賊「こっちだ…」タッタッタ
-------------
622 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/12(月) 18:52:25.10 ID:X4eygvxo0
『隠れ家』
シーン…
学者「ここが…兄貴たちの隠れ家…」キョロ
盗賊「ちぃぃ!!ここも荒らされて居やがる…」ガサガサ
学者「ギャング達しか知らない場所なんすよね?」
盗賊「なんでこの場所を知ってんだ!!?」ドン ガラガラ
学者「誰かが話した以外に考えられないんじゃないすか?…もう誰も信じられんすね」
盗賊「くっ…だから姉御は俺から距離を置いた…俺も疑われてた訳だ」
剣士「今日はここで泊る?」
盗賊「いや変更だ…こりゃ早い所盗賊ギルドに保護して貰わんと危ない」
学者「リコルさん達と合流っすね」
盗賊「うむ…しかしどの宿屋なのか…」
学者「兄貴ぃ…ここに装備品が色々あるんすが…変装しやせんか?」
盗賊「おぉ名案だ…特にリッカだな」
剣士「これどれ選んでも良いの?」ゴソゴソ
盗賊「今羽織ってる毛皮のマントはここに置いて行け…その辺の適当なやつに着替えろ」
剣士「姉さん!これなんかどう?」ファサ
女オーク「私は何でも良い…」
盗賊「顔を隠す必要が有るからフードの深い奴にしろ」ファサ
剣士「よし!僕も!!」ファサ
盗賊「そうだリッカ…先に金を渡して置く…金貨10枚だ」ジャラリ
女オーク「…」
盗賊「お前達は今回の件とは無関係だから…俺達に何か有った場合はその金使って上手く逃げろ」
盗賊「ここから列車でキ・カイに戻って元の生活をしても良い…商船に乗ってフィン・イッシュにも行ける」
女オーク「分かったわ…自分の命は自分で守る」
盗賊「うむ…ちっと俺は本気モードに入る…暗殺者をぶっ殺してやる」ギラリ
学者「…で?どうしやす?」
盗賊「今の所この場所は安全そうだ…ちっと俺が宿屋探して来るから待っててくれ」
剣士「じゃぁ装備品をゆっくり選ぼうかな」ゴソゴソ
盗賊「確か火薬も少し何処かに置いてあった筈だ…適当に持ってけ」
剣士「おぉ!!探してみる」ガサゴソ
盗賊「じゃぁな!」スゥ
剣士「ええ!!?き…消えた!!」キョロ
女オーク「え!?え!!?」キョロ
-------------
-------------
-------------
623 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/19(月) 19:23:05.51 ID:dZY0AJtp0
『1時間後』
スゥ…
剣士「うわ!!びっくりするなぁ…急に目の前に現れないでよ」ドキドキ
盗賊「これを装着しろ…」ポイ カラン
剣士「ん?木製の仮面…何コレ?」
盗賊「顔を隠すんだ…特にリッカな?」
剣士「こんなの付けてたら逆に目立たない?」
盗賊「今バン・クーバで流行ってる…手足の無い奴が木製の義足付けてるのと同じで…鼻を削がれた奴が付けてるんだ」
剣士「鼻?…あーそう言えば傭兵ギルドの中にも木製の鼻を装着してた人居たなぁ…」
盗賊「そいつらはロストノーズっていう有名な傭兵団だ…そん中のラシャニクアっていう女がこの仮面を流行らせた」
剣士「へぇ?」
学者「この辺じゃ有名っすよ?木製の鼻はその女が最初に付けてたんす…凄腕のスナイパーっすね」
盗賊「因みに俺らは元々パイアボーンっていう傭兵団だ…もう2人しか残って居ないがな」
学者「俺っちはその一人っすよ」
盗賊「リッカ!仮面を付けろ…宿屋に行くぞ」
女オーク「…」スチャ
剣士「もうリコルさん見つけたんだ?」
盗賊「あぁ…話は付けてある…大部屋に変更してそこに泊る」
学者「それが安全そうっすね…」
盗賊「行くぞ!!」スタ
-------------
624 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/21(水) 20:03:27.09 ID:bVSMz8780
『宿屋_大部屋』
ガチャリ バタン
盗賊「悪いな?分かれて直ぐに合流する事になっちまってよ…」
戦士「ハハハ気にしなくて良い」
少女「お前ー!やっと事態を自覚したな!?」
盗賊「保護を頼む…」
少女「グラスは3つだと聞いて居るぞ?1…2…3…4…多いな」
盗賊「俺は抜きで構わん」
少女「母は気まぐれだ…背中を撫でたら頼んでやっても良い」
盗賊「分かった分かった…」ナデナデ
少女「父ぃー…母遅いな」
戦士「気まぐれだから…ゆっくり待つしかない」
盗賊「さて俺はちっと調べたい事が有って出かける」
少女「何処行く…勝手に騒ぎ起こすな」
盗賊「分かってる…姉御の行先で思い出した事が有るんだ」
学者「え!?マジすか…」
盗賊「孤児院だ…姉御は孤児院に通ってただろう」
学者「あぁぁそうっすね…」
盗賊「遺骨は孤児院にでも埋めて来る…そこにもきっと姉御の心が宿ってるだろうから…」
少女「許す…行って来い」
盗賊「ロボ…これで姉御とはおさらばだ…」パカ
ロボ「ピ…」シュン
盗賊「じゃぁ行って来るな?」ダダ
---------------
625 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/21(水) 20:03:55.48 ID:bVSMz8780
『談話』
…そのラシャニクアっていう女は
子供の頃不幸な事に奴隷として貴族に連れまわされてたんす
船での観測ってずっと見張りして無きゃいけないんで大変っすよね?
それをやらされてたんす…その甲斐が有ってか今じゃ凄腕スナイパーっすよ
ほんである時…海賊王の娘が乗る船に遭遇して捕らわれの身っすよ
海賊王の娘はその船に乗ってた人全員の鼻を削いじまった
女も子供も全員っすね
剣士「鼻って削いだらもう生えて来ないよね?」
学者「そうっすね…でも命に係わる事は無いもんで良かったっすね」
剣士「それで鼻が無いのかぁ…気の毒だなぁ…」
学者「子供の鼻も削いじまったんすからねぇ…その後の生活で苦労は有ったと思いやす…差別とか…」
剣士「差別か…」チラ
女オーク「気にしてない…」ボソ
学者「まぁ今ではラシャニクアを知らん傭兵は居らんですね…戦場の女神なんて呼ばれてた事もありやす」
剣士「傭兵ギルドにその人居たの?」
学者「俺っちは見てないっす…只ギルドにロストノーズの連中が集まってたんで居るかも知れんっす」
少女「むふ…」ニヤニヤ
学者「何すか?」
少女「何でも無い…思い出し笑いだ」
学者「ちょっと何かお腹に入れたくなって来たっす…」
剣士「僕もお腹空いて来たなぁ…」
少女「父ぃーー!!何か買って来い」
戦士「んん?構わんが…何が食べたい?」
少女「松の実を見た」
剣士「おおおおお!!僕も見た!!松ぼっくりが安かったんだ!!」
戦士「そりゃ良い…丁度酒のつまみが欲しかった」
学者「俺っち肉が食いたいんすけど…」
戦士「適当に調達してくる…ここで待ってろ」スック
--------------
626 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/21(水) 20:04:28.53 ID:bVSMz8780
『食事』
ガツガツ ムシャムシャ
学者「うんま!!うんま!!」ガブリ モグ
少女「死肉がそんなに美味いか?」
学者「死肉?…これ普通の肉っす」モグモグ
少女「ゾンビを食べてる様にしか見えん…」ウゲー
学者「生魚食べるのもどうかと思うっすよ?」ガツガツ
女オーク「ミライ?松の実だけ取り出したわ…食べて?」
剣士「半分こしよう…姉さんも食べてよ…血が足りないでしょ?」
学者「ああ!!忘れてた…リッカさん傷を見せて貰って良いっすか?」
女オーク「え…そろそろ包帯を外したいのだけれど…」
学者「実験中なんす…」スルスル
剣士「姉さんの体で実験!?」
学者「ふむふむ…やっぱりっすね…」
女オーク「何?」
学者「オークは薬草とかポーションの類に効果が無さそうっす…使う意味無いっすね」
剣士「え?」
学者「リッカさんにポーション飲ませたんすけど普通は反応が出るのに出ないんすよ…傷も薬草有り無しで差が無い」
剣士「傷はもう塞がってるけど?」
学者「元々治癒力が高いんで塞がってるんすね…皮膚の具合に差が無い…薬草塗るとそもそも変色するのにそれも無い」
女オーク「オークは傷付くと薬草を少し食べる…他には琥珀とか」
学者「回復のさせ方が人間と違うんすね…でもポーション飲んで反応出ないのはどうしてなんすかねぇ…」
女オーク「病気に掛からない…から?」
学者「あああ!!そういう事っすか…実はっすね…オークの血は人間への輸血にスゴイ適してるんすよ」
女オーク「え?そんな事初めて聞いた…」
学者「戦場では失血が命取りなんすけどオークが居るとスゴイ助かるんす…輸血要員として」
剣士「それってオークを道具にしてるという事だよ」
学者「分かって居やす…だからオークを癒すのはどうすれば良いのか考えてるんす」
剣士「姉さんを癒すのは温かい湯…それから食事」
学者「温度を上げる…湯に効果あり…うーむ」
戦士「そうそう…この宿屋には湯を張った水浴び場があるのだよ?」
剣士「お?姉さん!!」
女オーク「湯に浸かりたかった所」
少女「私も行く…お前危険ある」
女オーク「じゃぁ一緒に…」スック
--------------
627 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2022/12/21(水) 20:05:24.55 ID:bVSMz8780
『1時間後』
ホクホク
女オーク「ふぅぅぅ気持ち良かった…」ホクホク
学者「リッカさん戻ってきやしたね?」
女オーク「何か?」
学者「ちっと実験っす…これ食ってみて下せぇ」スッ
女オーク「これは…何?」
学者「オークは見た事無いっすよね?泳げないんで…これ海藻っすよ」
女オーク「食べられる…の?」
学者「良いからちっと食って見て下せぇ…ほんで感想が聞きたいっす」
女オーク「平気かしら…はむ」パク モグ
学者「どうっすか?」
女オーク「!!?お…美味しい」モグモグ
剣士「おお?ちょっと僕にも頂戴」パク モグ
学者「ウヒヒヒ…やっぱりそうっすね」ニヤー
剣士「あれ?何だこれ美味しい…」モグモグ
学者「次行きやすよ?…これ飲んで下せぇ」ゴトン
剣士「お酒…かな?」
学者「蒸留酒っすね…」
剣士「姉さんお酒は全然酔わないよ?」
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