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男「恋愛アンチなのに異世界でチートな魅了スキルを授かった件」 3スレ目
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338 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:00:49.74 ID:nvoI9WT40
女「それより……その、返事は? 私、男君に告白したんだけど」
男「……ああ、そうだな」
男(好きだと告白されて返事をする)
男(迷うべきはYESかNOであるべきだ)
男(なのに俺は……この期に及んで、女の言葉が本当なのか嘘なのか悩んでしまっている)
男(人を信じられるようになって俺の中から無くなったのだと思っていたが……告白されて、人の好意を意識したことで再び鎌首をもたげたのは、今や呪縛となった恋愛アンチだ)
男(女の話が全部もっともらしい作り話で、返事をした瞬間に嘘でしたーって言われて、俺なんかが好かれる訳なくて…………)
339 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:01:57.13 ID:nvoI9WT40
男「………………」
男(顔を上げていられない)
男(だんだんと俯いてしまう)
男(今度こそ傷を負わないように)
男(心の自己防衛が女の告白を否定していく)
男(別に女のことが嫌いなわけじゃないんだ)
男(想いを打ち明けられた今も、信頼できる人物だという評価に変わりはない)
男(……このまま聞こえなかったことに出来ないだろうか?)
男(たぶん女のことだから、俺が無かったことにしたら合わせてくれると思う)
男(そうだ、どうして告白に答えてシロクロはっきりさせないといけないんだ)
男(いいじゃねえか、今まで通り同じ目的を共にする仲間ってことで)
男(現状を維持すれば誰も傷つかないで済む)
340 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:02:28.82 ID:nvoI9WT40
男「そんなの嫌だ」
男(それが自分の口から漏れ出た言葉だと気づくのに時間がかかった)
男(……そうだ、トラウマに飲み込まれていてすっかり忘れていた)
男(伝説の傭兵によって引き出された俺の後悔、反転して願望)
男(それは――お互いが心の底から愛し合う関係を作ること)
男(女となら俺の理想の関係を作れるはず)
男(いや、女と作りたい)
男(だったら傷つくことを恐れて現状維持していちゃ駄目なんだ)
男(女の気持ちに応えないと)
男(俺の気持ちを示さないと)
男(覚悟を決めて俺は顔を上げたところで――)
341 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:02:58.98 ID:nvoI9WT40
女「男君……!!」
男(突然、女が抱きついてきた)
男「何を……!?」
女「『竜の翼(ドラゴンウィング)』!!」
男(驚く俺に対して、女は竜の翼を生やして俺を抱えたまま飛び上がる)
男(返事を待つことに我慢できなくなった女が行動に移したのかと、一体何をするつもりなのかと)
男(そんな思考は――)
342 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:03:31.93 ID:nvoI9WT40
男(先ほどまで俺たちの立っていた位置に着弾する衝撃波と地面から突き出した黒い槍を見て真っ白になった)
343 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:04:05.69 ID:nvoI9WT40
男「………………え?」
男(あれは……おそらく俺たちを狙った攻撃だろう)
男(女は間一髪で気づいて俺を抱え回避したのだ)
男(でも、一体誰が……)
女「どういうつもりですか?」
男(少し離れた場所に着地した女は臨戦モードに入りながら威嚇する)
男(その視線の先にいる襲撃者は)
344 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:05:02.48 ID:nvoI9WT40
男「伝説の傭兵……?」
男(ほんの数時間前に俺の悩みを打ち明けて、真摯に相談に乗ってくれたその人)
男(……そうだ、さっきの衝撃波は竜闘士のスキルによるものだ)
男(女以外の竜闘士となるとこの人しかいない)
男(でも何で俺たちに攻撃を…………いや)
傭兵「流石に戸惑っているか」
傭兵「まあ戦場でも同じ日の内に敵対するのは珍しいことだ、恥じることではない」
男(傭兵はあくまで仕方ないというニュアンスではあるが、依然として臨戦態勢を解く気配はない)
男(その様子を見て本当に敵に回ったのだと、俺は理解した)
345 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:05:31.58 ID:nvoI9WT40
男「………………」
男(元々帰還派と復活派で敵対する関係だ、いつかこうなることは分かっていた……)
男(でも、ここまで早いとは)
男(状況が動いたということだとしたら一体…………ヒントがあるとしたら…………先ほどの攻撃、衝撃波と同時にもう一つの攻撃が…………黒い槍、あれは、あの材質は、見覚えがある)
男(影で造られた槍だ)
346 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:06:02.96 ID:nvoI9WT40
イケメン「どうやら気づいたようだね」
男(傭兵の影から人が浮かび上がった。その姿は俺にとって因縁深い相手)
男「イケメン……っ!!」
イケメン「やあやあ、久しぶりだね。武闘大会以来か」
男(俺たちと袂を分かったクラスメイト、異世界で授かった力で好き勝手することを選んだ駐留派のリーダー、影使いのイケメン)
347 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:06:35.39 ID:nvoI9WT40
男「どうしておまえがここに……!?」
イケメン「おいおい、今さらそんな疑問がいるのか?」
イケメン「当然、君の魅了スキルを奪いに来たに決まっているだろう?」
男「ちっ……懲りないやつめ」
イケメン「それよりもっと気にすることがあると思うけど」
男(一々気に障る言動のイケメンだが……確かにそれ以上に気にしないといけないことがあった)
男(最初の攻撃、影に潜んでいたこと、そして今も隣に立っていること)
男(どうしてイケメンと傭兵が行動を共にしているのか)
男(駐留派と復活派はどちらも俺たちの敵だが、しかしその両者だって宝玉を奪い集める目的上、敵対関係にあるはずだ)
男(なのにこの事態は……)
348 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:07:04.73 ID:nvoI9WT40
男「まさか……おまえ、復活派と手を組んだのか!?」
イケメン「ああ、そうさ。全ては目的を達成するためにね」
349 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/03(木) 00:07:34.94 ID:nvoI9WT40
続く。
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/03(木) 00:29:45.22 ID:WvZ3lHQc0
乙
やはり邪魔が入るのね
頑張れ女
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/03(木) 16:04:30.02 ID:Tx33ldUs0
乙!
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/10/03(木) 17:41:00.31 ID:XqxtbhoAO
乙ー
353 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/06(日) 00:47:31.50 ID:pMzHR+FP0
乙、ありがとうございます。
>>350
このタイミングでくっつかれても困るので邪魔してもらいました。
投下します。
354 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/06(日) 00:49:26.06 ID:pMzHR+FP0
男(イケメンら召喚者を中心に犯罪結社『組織』のバックアップを受ける異世界駐留派)
男(伝説の傭兵と魔族からなる魔神復活派)
男(両者が手を組んだという事実は――)
女友「考え得る限り最悪の事態ですね」
男(いつの間にか俺たちの隣に姿を現した女友の言う通りだ)
男(……って、あれ? 本当いつの間に?)
女「女友……やっぱり覗いてたんだ」
女友「すみません、叱責は後からいくらでも聞きますから」
女「……まあ、探しに行く手間が省けたと見るべきかな」
男(女と女友のやりとりから、女友は女の告白をどこかに隠れて覗いていたということのようだが、そのことに構っている余裕も無い状況だ)
355 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/06(日) 00:50:05.13 ID:pMzHR+FP0
男「復活派と手を組んだことは分かった」
男「だけどどうしてどちらも宝玉を求めているはずのおまえたちが組めたんだ?」
イケメン「君の言うとおり、僕らも彼らも宝玉を求めている」
イケメン「君たち帰還派と違って必要な宝玉の数が多いことから、獲得した宝玉を分配する条件にしたとしても折り合いが付かないだろう」
イケメン「だが、僕はふと思い直したんだ。僕たちはそもそも何のために宝玉を求めているのか、とね」
男(イケメンはジェスチャーを交えながら話している。かなりの上機嫌のようだ)
イケメン「僕の目的は君を道具として魅了スキルを自由に使えるようにすることだ」
イケメン「そのために君の側を離れない邪魔な竜闘士、女を一時的にでも排除するために宝玉で悪魔を呼びだそうとしていた」
イケメン「つまり宝玉の収集はただの手段でしかないんだよ」
イケメン「別に竜闘士をどうにか出来るなら、悪魔を呼び出す必要も宝玉を集める必要も無い」
イケメン「そう考えると……おあつらえむきに女を圧倒した存在がいることに気づいたんだ」
男「まさか……!」
356 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/06(日) 00:50:44.32 ID:pMzHR+FP0
イケメン「それが伝説の傭兵と呼ばれる彼さ」
イケメン「試合形式とはいえ武闘大会では女に勝ったことから実力は十分」
イケメン「彼に協力してもらえるなら、僕らはもう宝玉も必要ない」
イケメン「だから僕らが現在持っていた宝玉四つ全てを差し出すという条件で、この場でだけ手を組んだというわけさ」
男(説明されてみると何とも簡単な発想の逆転だ)
男(一つ問題点があるとしたら)
男「復活派が宝玉を集めきり魔神が呼び出されこの世界を滅ぼされるのはおまえたちだって避けたいことのはずだろ」
男「なのにその復活派はおまえたちが宝玉を譲ったせいで今や7個所持している」
男「俺たちが持つ6個も奪われたら12個のラインを超えて魔神が復活するぞ」
イケメン「ああ、そうだけど……まあそのときはどうとでもするさ」
傭兵「…………」
男(一瞬イケメンと傭兵の間の空気がピリッとする)
男(完全な一枚岩では無さそうだが、突き崩すほどの隙では無さそうだ)
357 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/06(日) 00:51:11.55 ID:pMzHR+FP0
イケメン「そもそもその問題は君たちが宝玉を奪われた場合の話」
イケメン「僕のとりあえずこの場での目的は魅了スキルのみだ」
イケメン「どうだい女と女友。男一人置いていけばそれ以上は追わないと約束するよ」
イケメン「宝玉を持って逃げてもらえると面倒が無いんだけどさ」
女「そういえば私が男君を見捨てるとでも?」
女友「舐められたものですね」
男(イケメンの提案に女も女友も乗るつもりは毛頭も無さそうだ。何とも頼もしい)
358 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/06(日) 00:51:51.19 ID:pMzHR+FP0
イケメン「はぁ……これだから虜になった人たちは厄介だ」
傭兵「影使いの少年よ、ここは想定通り正面突破しかないだろう」
イケメン「そうだね、ちょうど二人の準備も終わったようだし」
男(イケメンと傭兵が視線を向けた先)
男(ダッ、ダッ、と何か打ち付けるような音……壁を走って登りこの屋上にやってきた二人が現れる)
ギャル「警備室の攪乱は終わったよ、イケメン」
魔族「これでしばらくは介入できないだろう」
男(ギャルと魔族)
男(それぞれイケメンと傭兵のパートナーとも言える二人が加わり、敵の人数が四人となった)
359 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/06(日) 00:52:19.69 ID:pMzHR+FP0
イケメン「ご苦労様、ギャル」
傭兵「全員揃ったか」
男(復活派は魔族と傭兵の二人のみだが、駐留派には他にも多くのクラスメイトと『組織』の構成員がいるはず)
男(しかし、この地に赴いているのはイケメンとギャルの二人のみのようだ)
男(それは助かる一方で、やつらの言葉が正しいとすれば、魔法学の権威であるこの学園に常駐する腕利きの警備員の助けも望めないようである)
女「戦力として私と傭兵さんが互角で、女友が魔族さんと互角……」
女友「そこにイケメンさんとギャルの二人も加わるわけですから……かなりきついですね」
女「戦いに付き合う必要もないし逃げの一択だけど……」
女友「それすらも許してもらえないでしょうね」
男(女と女友の戦力算用。聞けば聞くほどに絶望的だ)
男(さらに気を使っているのか、二人は俺の存在に触れないでいる)
男(戦闘中お荷物でしかない俺を庇いながらという条件も加わると…………これは、もう)
360 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/06(日) 00:53:00.54 ID:pMzHR+FP0
男「なあ二人とも……ここは俺が……」
女「駄目だよ、男君。自分を犠牲にするのは」
男(俺の提案は最後まで言う前に女が遮る)
女友「そうですよ、男さんを引き渡せばそれ以上は追わないと言いましたが所詮口約束です」
女友「守るとも思えません」
女「男君を危険な目に遭わせる訳にも行かないからね」
男「でも……」
男(それでも申し訳なさが振り切っている俺に)
女「大丈夫、私が男君のことを絶対に守るから」
男(女は宥めるように言って)
361 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/06(日) 00:53:40.84 ID:pMzHR+FP0
男(そして機は熟したようだ)
イケメン「さあ、やろうか」
ギャル「了解っと」
傭兵「少々心が痛むが……これも使命のために」
魔族「ちょうどいい、先ほどの借りも返させてもらおうか」
男(駐留派、復活派混成チームと)
女「男君しっかり掴まっていて!!」
男「あ、ああ!」
女友「サポート出来るときはしますが宛てにはしないでください!」
女友「私も自分のことでいっぱいいっぱいになるでしょうから!」
男(俺たち帰還派三人)
男(各勢力の中枢メンバーによる決戦……絶望の戦いが始まった)
362 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/06(日) 00:54:38.16 ID:pMzHR+FP0
続く。
短めですが、明日も投下するということで勘弁を。
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/10/06(日) 01:21:34.16 ID:WarFBzuQO
乙ー
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/06(日) 07:01:37.42 ID:yZMZjL6b0
毎度毎度話の展開がご都合主義出来レース感が拭えんな
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/06(日) 11:59:39.42 ID:rMWaMln90
乙!
王道モノにご都合主義なんて今更だわ
其を含めて面白く魅せるのが作者の腕の見せ所。
毎回、続き楽しみにしています。
366 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:29:50.11 ID:h+ooci3F0
乙、ありがとうございます。
>>364
はい。
>>365
ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります。
投下します。
367 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:30:36.72 ID:h+ooci3F0
傭兵「『竜の咆哮(ドラゴンシャウト)』」
女「くっ……!」
男(傭兵が発した衝撃波を空中にて紙一重で避ける女)
男(その背中にしがみつく俺もすぐ近くを通るゴウッ! という音にヒヤヒヤする)
女「こっちもお返しよ……!! 『竜の咆哮(ドラゴンシャウト)』!!」
男(女が衝撃波を放つが、既に距離を十分に取られていて攻撃が迫る前に余裕を持って避けられる)
368 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:31:08.14 ID:h+ooci3F0
女「っ……でも、この隙に……」
男(竜の翼で飛び続けるのもどうやら体力がいるらしい)
男(一旦、学園の建物の屋上に着地して少しでも女は休めようとして……)
男(床と近づくにつれ大きくなる自分の影が不自然に蠢いた)
男「女……! こっちに来ている!」
女「分かってる!」
イケメン「『影の束縛(シャドウバインド)』!!」
男(女は着地せずに急上昇。こちらの身体を絡め取ろうとする影からどうにか逃げる)
イケメン「ちっ……逃したか」
男(術者、影使いのイケメンは舌打ちすると、また影に潜んだ)
369 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:31:38.99 ID:h+ooci3F0
男(戦いが始まってすでに十数分)
男(先ほどから同じような応酬の繰り返しだった)
男(やつら駐留派、復活派混成チーム四人の役割は明確だった)
男(まず俺を抱える竜闘士の女には同じく竜闘士の傭兵をメインに当ててきている)
男(女友はどうやらギャルに追い回されているようだ)
男(魔族魔族は魔法を使ってその両者のサポートをして)
男(影使いのイケメンは影に潜みチャンスを伺いながら、遊撃や奇襲で女と女友どちらとの戦いにも絡んでくる)
男(立ち回り方はとても慎重で、まず第一に俺たちの逃走経路を封じ、協力されないように女と女友を分断してきて、絶対に深追いをしてこない)
男(遠巻きに削り続ければいずれは勝てるという算段だろう)
男(俺たちは学園の上空を広く使いながら、どうにか逃げられないかと試すが上手く行かないところだ)
男(離されているため女友が現状どうなっているかも分からないがあちらも手こずっているだろう)
男(当然地上の学園は騒ぎとなっていて、戦っている俺たちを何事かと見上げている生徒たちの姿が散見できる)
男(不用意に介入する者も巻き込まれた者もおらず、直接的な被害は出ていないようではあるが)
370 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:32:50.90 ID:h+ooci3F0
傭兵「『竜の震脚(ドラゴンスタンプ)』」
女「なっ!? ……ぐっ!」
男(飛行経路を読まれ上昇するタイミングで上から衝撃波が降ってくる)
男(回避が間に合わず女に攻撃がかする)
男「女!!」
女「大丈夫……だから!」
男(傭兵は攻撃の手を緩めない。続く追尾エネルギー弾を女はどうにか縦横無尽に飛行して回避する。俺はしがみつくだけで精一杯だ)
371 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:33:19.87 ID:h+ooci3F0
男「………………」
男(武闘大会での女と傭兵の力はほとんど同じだった)
男(なのに今回こうも攻防に差が出るのは、女が俺を背中に乗せているからだ)
男(丸々人一人分の重りを付けているのも同じで、そんなデバフを受ければ差が出て当然)
男(しかし、敵の目的が俺である以上安全地帯はどこにもなく、こうして女は俺を守りながら戦わないといけない)
女「男君が気にする必要は無いんだからね」
男(俺が自己嫌悪するのを感じ取ったのか、女は戦いの手を止めないまま言う)
女「大丈夫、私は男君から告白の返事を聞くまで絶対に倒れないから」
男(告白……あんなにドキドキした出来事も今はすごい昔のことのように感じられる)
女「それで……もしよければ、私の理想……お互いがお互いを思い合う関係を男君と築きたいんだ」
男(戦場に似合わない願望の吐露に……)
372 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:33:47.77 ID:h+ooci3F0
男「っ……」
男(俺は動揺していた)
男(その理想が俺と完全に一致していたからだ)
男(こんな偶然あるだろうか?)
男(いや、あるはずがない)
男(だとしたら……これは運命だ)
男(果て無き未来を同じ思いを持った二人で歩む……そんな姿を幻視する)
男(そのためにもこんなところで躓くわけには行かない)
373 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:34:15.63 ID:h+ooci3F0
男「俺だってこの学園で遊んでたんじゃねえぞ」
男(そうだ、授業で教わり放課後何度も練習したプロセス)
男(大気中の魔素を集めて、魔力に変換し、魔法として放つ――)
男「『火球(ファイアーボール)』」
男(成功した)
男(火の玉一つが傭兵に向けて飛んでいく)
男(衝撃波や多量のエネルギー弾が飛び交う戦場で何とも貧弱な攻撃だが、これで倒せるなんて当然思ってもいない)
男(だが防御なり回避なりして少しでも隙が出来れば――)
374 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:34:42.72 ID:h+ooci3F0
傭兵「『竜の息吹(ドラゴンブレス)』」
男(俺の思いも儚く)
男(傭兵は迫る火球を特に気にも止めずエネルギー弾を放った)
男(そのため直撃した火球は……特に影響は無さそうだ。竜闘士の魔法耐性が完全に打ち消したのだろう)
女「男君、しっかり掴まっていて!」
男(魔法を放つため片手を離していた俺に女が忠告する)
男(俺はその言葉に従い掴まったところで、女がエネルギー弾を避けるために飛び回って)
女「痛っ!」
男(今度は一発当たってしまった)
男(しかし女は避けきれないと悟った瞬間に背中ではなく正面から当たるように調整したようで俺は無傷だ)
375 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:35:25.67 ID:h+ooci3F0
男「………………」
男(俺はどうしようも無いほどに無力だった)
男(少しでも戦う力があれば女の負担を減らせるのに)
男(現実には全くの役に立たなくて……そんな俺を庇うせいで女が傷付いていく)
男(お互いがお互いを想い合う……愛さえあれば何とでもなると、そんな言葉がまやかしであることは今日日、子供でも知っていることだ)
男(俺の自惚れでなければ女は俺のことを思ってくれている)
男(俺だって女のことを思っている)
男(だがそれだけではどうにもならない現実が目の前に存在している)
男(……俺に女の隣にいる資格はあるのだろうか?)
男(俺に力さえあればこんなことにならなかったのに)
男(大それたことは望まない)
男(俺の手の届く範囲だけでいい)
男(女を守るための力が欲しい)
376 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:35:54.08 ID:h+ooci3F0
幼女『どうしたの、お兄さん?』
男(どこからか声が聞こえた)
男(幼女の、すっかり聞き慣れた声)
377 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:36:36.84 ID:h+ooci3F0
男「すまん、今忙しいんだ」
男(この幼女とはこの数日間幾度と無く話してきた)
男(話すことで俺の気が楽になることもあった)
男(だが、今がそんな場合でないことくらいは分かっている)
幼女『ええー、せっかく繋がったからお兄さんといっぱい話したいのに』
男「だからすまんって、また後でいっぱい話してやるから」
幼女『もう、今話したいのに』
男(声しか聞こえないが、幼女がぶうたれる姿が想像付いた)
378 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:37:15.08 ID:h+ooci3F0
男(そんなことより現状をどう打破するかだ)
男(俺の魔法が全く効かずに絶望仕掛けたが、女が頑張っているのに俺だけ諦めるわけには行かない)
男(俺に力があれば楽だったが、無いものねだりをしてもしょうがない)
男(どうにか糸口のようなものでもないか思考して――――)
幼女『ねえねえ、お兄さん』
男「ああもう、だから何だ!」
幼女『聞き間違いかと思ったけど……お兄さんちょっとおかしなこと言ったよね?』
男「…………」
男(話すことを止めない幼女に俺は無視をしようとして)
379 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:38:18.61 ID:h+ooci3F0
幼女『力が無いって言うけど…………お兄さんの中には、私を封印したあのお姉さんの力があるよね?』
男「……え?」
男(到底無視できない言葉が飛び込んできた)
幼女『だってそれを起点にリンク出来たはずだし』
男(俺の中の力……魅了スキル……女神と一緒の力…………女神が封印したのは………………だとしたら、この声の主は……)
男「おまえまさか……っ!」
幼女『私のことはいいから! お兄さん立て込んでるんでしょう?』
男(幼女の声が聞こえた瞬間、俺の心の中に不思議な感覚が起きて――――)
380 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:38:55.61 ID:h+ooci3F0
男(……アア、ソウダ)
男(コノコエノショウタイナンテドウデモイイ)
幼女『お兄さんには力がある。なのにどうして使わないの?』
男(俺の力は人を狂わせるから)
幼女『だから遠慮するの? 他にも同じような懐かしい力を感じるけど……みんな全然遠慮してないよ』
男(同じ力……そうだ。イケメンやギャルはもちろん、女と女友だって異世界に来て授かった力を存分に使っている)
男(なのにどうして俺だけ、魅了スキルだけは遠慮しないといけないのか)
男(……いや、違う。魅了スキルが本領を発揮すれば他とは桁外れの力で――)
381 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:39:26.75 ID:h+ooci3F0
幼女『お兄さんの大事な人を守るんでしょ! なら迷っている暇は無いって!』
男(………………)
男(………………)
男(………………)
382 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:39:56.45 ID:h+ooci3F0
男「アア、ソウダナ」
男(俺のやるべきことが明確になっていく)
男(迷うことはない)
男(女を守る)
男(これ以上傷つかせない)
男(そのためならば――――)
383 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:40:23.08 ID:h+ooci3F0
ガチャリ、と。
そのとき男の心のリミッターは外れた。
否、外された。
384 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:40:54.00 ID:h+ooci3F0
女「男君! さっきからどうしたの!!」
女は戦闘しながら、男に対して呼びかける。
先ほどから独り言が止まらない男に対して、流石に無視できなくなったのだ。
男「女。今から指定するポイントに向かってくれ」
しかし、男はその心配に応えず、女に指示する。
女「っ……」
その声を聞いて女に悪寒が走った。
いつもなら男の声を聞くと安心するはずなのに……どこか違うように感じられたからだ。
385 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:41:51.07 ID:h+ooci3F0
女「……分かったっ!」
その違和感が気になりながらも、女は男の指示に従う。
意図は全く掴めない。それでも男の指示を信じる。それが女という少女だ。
そうしてやってきたのは図書室から望める中庭の上空だった。
実戦科生徒A「あの人たち……」
実戦科生徒B「竜闘士……?」
実戦科生徒C「もう一方は……」
眼下にこちらを見上げる女子生徒たちの姿が女の目に入った。
女(この時間だと……確か実戦科コースの人たちが模擬戦をしているんだっけ)
女(私たちの戦いに気が付いて手を止めているみたいだけど)
女(実戦科というだけあって、生徒たちの実力はそれなりにあるはずだ)
女(この数の生徒たちが味方してくれたらこの戦いも五分かそれ以上に戻せるだろうけど……)
女(全く関係ない人たちを巻き込むわけにも行かない。あまり近づかないようにしないと)
386 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:42:18.69 ID:h+ooci3F0
男「ここだ」
女(背中の男君の呟きが耳に入った)
女(ここって……ちょうど女子生徒たちが真下に入ったけど……それが何の……)
女「まさか……ねえ、男君! 止め――」
387 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:42:55.95 ID:h+ooci3F0
その瞬間、男の意図を察して制止の声をかけることが出来たのは世界中を探し回っても女だけだっただろう。
急いでその場を離れようとしたが――もう遅かった。
魅了スキルの効果範囲は周囲五メートルしかない。
しかし、光の柱として現れる効果は上空にも……下空にも伸びる。
つまり眼下の女子生徒たちも圏内で。
男「魅了スキル、発動」
瞬間、ピンク色の光が戦いと無関係の少女たちを染め上げた。
388 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/07(月) 00:43:26.03 ID:h+ooci3F0
続く。
次が6章最終話となる予定です。
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/07(月) 02:59:14.33 ID:VKdew0sU0
乙
どうしても展開が読める時はあるだろうけどそれ含めても面白いからずっと読んでる
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/07(月) 09:54:14.05 ID:OQSOh6A+0
乙!
391 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/10/07(月) 13:14:33.47 ID:0rtjXMZKo
乙ー
392 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/08(火) 01:17:44.40 ID:2D9pl/2y0
乙!
393 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:24:44.46 ID:dtaQhtJG0
乙、ありがとうございます。
>>389
ありがとうございます。
6章最終話投下していきます。
394 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:25:17.57 ID:dtaQhtJG0
女「男君……どういうつもりなの?」
女(私には男君の真意が掴めなかった)
女(男君は今まで魅了スキルを使うことに消極的だった)
女(そのためかこれまでの長い旅路に反して、虜になっているのは女友、古参商会の秘書さん、独裁都市の姫、王国のスパイで近衛兵長の四人だけしかいない)
女(それも私たちの使命である宝玉を手に入れるために止むを得ずということがほとんどだし、その場合でもなるべく多くの人にかけないようにした結果が4人という少なさなのである)
女(なのに今の魅了スキルによって地上の戦術科の女子生徒数十人が一度に虜となった)
女(今までの男君とは全く違う行動)
395 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:26:25.97 ID:dtaQhtJG0
傭兵「これは……」
女(敵対する伝説の傭兵も驚きの表情だ)
女(意図を問われた男君はというと)
男「女、傭兵の相手を頼めるか? 俺は下のやつらを使って女友の状況を確かめてくる」
男「何人か支援に残すつもりだからイケメンの横槍も含めて対処してくれ」
女(そんな戦闘指示を飛ばしてきた)
女「今はそんな――っ」
女(反射的に怒鳴り返そうとして私は押し留めた)
女(先ほどまで驚いた様子だった傭兵さんが攻撃態勢に入っている)
女(今は戦闘中だ、下らない話よりも目先の脅威に対処しないといけない)
396 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:27:10.42 ID:dtaQhtJG0
女(……と、頭では分かっているのに)
女「どうして魅了スキルを発動したの!? どうしてあんなにたくさん虜にして巻き込んだの!?」
女(気づけば私は男君に対して叫んでいた)
女(その質問自体の答えは分かっている)
女(虜にした生徒たちの力を使って戦況を一転させるためだと)
女(あのままでは私たちは負けていただろうから)
女(私が本当に聞きたいことは男君の変化の理由だった)
女(先ほどまでと一変した男君の様子に私はとても距離を感じていた)
女(それだけではなく、このままでは男君がどこか遠くに行ってしまうような予感さえも)
女(しかし、そんな心配も今の男君には届かないようだった)
397 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:27:55.04 ID:dtaQhtJG0
男「女……戦えないのか?」
女「……え?」
男「なら仕方ない……下の生徒たち全員を傭兵に当てて時間稼ぎしている間に、新たに虜に出来るやつを探して戦力を補充する」
男「女はどこか狙われないように身を隠して――」
女「……大丈夫。戦えるから」
女(さらに他人を巻き込もうとする男君に私はそう言うしかなかった)
女(どういう訳かは分からないけど、今の男君にはこの窮地を乗り切ることしか頭にない)
女(それ以外は全てノイズでしかない、ゴチャゴチャ言い出した私を戦えない状態だと判断するくらいには)
398 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:28:24.81 ID:dtaQhtJG0
男「そうか。なら頼んだ」
女(男君は言って、私の背中から飛び降りた)
女(未だ竜の翼によって空中にいるのにそれは自殺行為だ)
女(いつもなら慌てる私なのに……なんかもう全てが麻痺していた)
女(飛び降りた男君はというと、下の生徒に命令して風の魔法を使わせ、難なく着地し無事なようだ)
女「………………」
女(風魔法による着地の補助……どうして生徒の中にそんなことを出来る人がいると男君は知っていたのか?)
女(不可視(インビジブル)で男君の行動を追っていた私には、放課後になって男君が図書室でぼーっと戦術科の生徒たちの模擬戦を見ていたことを知っている)
女(そのときのことを覚えていたのか……だとしても手際が良すぎる)
女(もしかしたら最初からこういう事態になった場合を想定していたのだろうか?)
女(こうして魅了スキルによって他人を巻き込む選択肢も常に考えていたのだろうか?)
399 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:28:51.80 ID:dtaQhtJG0
女「…………」
女(分からない)
女(でも、私がやるべきことは分かっている)
傭兵「『竜の息吹(ドラゴンブレス)』」
女(傭兵がエネルギー弾を放つ)
女(その標的には地上の男君や命令されて敵意を向ける生徒たちも含まれている)
女(操られているからといって容赦するつもりは無いようだ)
女(私が任された役割は彼を抑え込むこと。それを遂行しないと)
女(男君は窮地をどうにかしようとすることに囚われている)
女(逆に言えばこの状況を脱しさえすれば、話を聞いてくれるはずだから)
400 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:29:23.93 ID:dtaQhtJG0
女「『竜のはためき(ドラゴンウェーブ)』!!」
女(エネルギー波を放ち攻撃を相殺する)
女「うらぁぁぁぁっ!」
女(男君が降りて心とは裏腹に身体だけは軽くなった)
女(さっきまでと段違いの速度で私は特攻する)
401 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:30:04.96 ID:dtaQhtJG0
女(それから30分ほど経った)
女(エネルギー弾に衝撃波、ピンクの光や氷柱の雨が飛び交う)
女(そんな熾烈を極めた戦いにも終止符が付いた)
女(男君が虜とした生徒たちは、練度こそ劣るものの数十人という数は圧倒的で、おかげで余裕の出来た女友が私と合流。魔導士のバフを受けた竜闘士が戦場を蹂躙した)
女(追い詰められた駐留派・復活派チームは)
魔族「義理は果たした。頃合いだろう。失敗した場合の取り決めは無かったな、宝玉はそのままもらっていく」
傭兵「……そういうことだ。続けたいならそちらだけでやってくれ」
女(復活派の二人、魔族魔族と傭兵が先に離脱を宣言)
女(二人はそもそも協力しているだけで、私たちと積極的に戦う理由がない)
イケメン「こんなはずでは……っ!」
ギャル「イケメン、逃げようって! 流石にヤバいよ」
イケメン「ちっ……覚えていろよ」
女(駐留派の二人。悔しげなイケメン君にギャルが必死に逃げるように提案)
女(その後影に溶け込むように消えていった)
女(こうして私たちに訪れた危機は何とか回避することに成功した)
402 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:30:32.05 ID:dtaQhtJG0
女友「何とか無事にやり過ごせましたが……これは……」
女「…………」
女(ホッと一息を吐いたものの、女友も私も安堵まではしていない)
男「戦闘終了。傷ついた人員に回復魔法をかけてくれ」
女(回復魔法使いに指示する男君)
女(戦術科といっても未だ修学中の身。無理矢理高いレベルの戦場に連れ出され戦わされた生徒たちの消耗は大きかった)
女(幸いと言うべきか命を落とした者はいないみだいだけど)
女友「私と離れて戦っている間で男さんに何があったんですか、女?」
女「分かんない。突然独り言を言い始めたかと思ったら、あの生徒たちのところに向かうように指示して、そこで魅了スキルを使って……」
女友「……ふむ。ちょっと見てみましょう。『真実の眼(トゥルーアイ)』」
女(女友が看破の魔法を発動する)
403 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:31:34.94 ID:dtaQhtJG0
女「あ、そっか」
女(男君の様子が急におかしくなったのは何か内的要因があったのかとばかり考えていたけど、この異世界では外的要因もあり得る)
女(いつどこでかという疑問は残るけど、もし様子をおかしくするようなスキルを食らっていたとしたら、この事態も理解できるわけで――――)
女友「やっぱり……男さんには今スキルがかかっていて…………」
女友「『囁き』? この固有スキルは……まさか……!?」
女(どうやら女友の予想通りだったみたいだけど……何を驚いているんだろう?)
404 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:32:05.66 ID:dtaQhtJG0
女「ねえ、女友。『囁き』って何?」
女友「それは――」
男「手が足りんな。女友、命令だ。こっちに来てこいつらの回復を手伝え」
女友「っ……分かりました」
女(普段の様子のせいで忘れそうになるが、女友は男君の虜となっている)
女(魅了スキルの効果によりその命令は絶対だ)
女(私の側から離れ、負傷者のところに向かっていく)
女「………………」
女(今だって命令しなくても、言ってくれれば女友も手伝っただろう)
女(感じが悪い)
女(でもどうやらそれは『囁き』ってスキルのせいでおかしくなっているだけ)
女(だったらどうにかして呼び戻して……)
405 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:32:37.31 ID:dtaQhtJG0
女「ねえ、男君」
男「……何だ、女」
女「えっと……ほら、何か今の自分に違和感とか覚えない?」
男「…………」
女「女友が言うには『囁き』ってスキルが男君にかかっているみたいなの。そのせいでいつもの自分と違うって思うでしょ?」
男「別に」
女「……認識まで改竄するスキルなのかな? とにかくどうにか解除してみせるから」
男「その必要はない」
406 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:33:11.67 ID:dtaQhtJG0
女「男君……自分が言っていることちゃんと認識出来ている?」
男「ああ。『囁き』ってスキルは初耳だが……そうかあいつのものか」
男「そのおかげで頭がスッキリして……やるべきことが明確になった」
男「今の俺はいつも以上に俺だ」
男「まあ、女が戸惑うことも想像が付くけどな」
女(自嘲気味に呟く男君にこれは本心なのだと直感で理解した)
女(理由はない……いや、いらない。好きな人のことが分からないはずがない)
女(スキルによって操られているわけではない……あくまでスキルはきっかけで、これが本来の男君なんだ)
女(こんなときでなければ、好きな人の新たな一面を知って嬉しく思えたんだけど)
407 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:33:58.28 ID:dtaQhtJG0
女「うん、分かったよ。今の男君が男君だって。でもだったらどうして無関係な人たちをこんなに巻き込んだの?」
男「巻き込んだらいけないのか?」
女「少なくとも私が知る男君はそんなことをしない」
男「じゃあ、知らなかっただけだな」
女「勉強不足だったね、ごめん」
男「俺は他人なんてどうでもいいんだ。ああ、そうでもなければボッチなんて出来るはずがない。俺は俺さえ良ければいい――」
女「……」
男「そのはずだったのに……女。俺はおまえが傷つくことに耐えられない。もう見たくないんだ。女が危険な目に会う姿を」
408 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:34:33.54 ID:dtaQhtJG0
女「でも宝玉を集める以上それは仕方ないことでしょ?」
男「これまではそうだった。ここからは違う」
男「俺が宝玉を集めるから。全て集めてみせるから」
男「だから女……おまえはもう全部終わるまでどこか安全な場所でゆっくりしていてくれないか?」
女「私の代わりに男君が危険な目に遭うってこと? その言葉に私が頷くと思う?」
男「思わない。だからこうする」
女(男君の言葉と同時に、背後から何か掴みかかる感触があった)
女(見ると女子生徒たちが私の行動を封じるように両手両足にしがみついている)
409 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:35:01.65 ID:dtaQhtJG0
女「いつの間に……っ!?」
男「戦いの最中にだ。新たに魅了スキルで虜にした普通の生徒たち。そいつらには死んでも女を離すなと既に命令してある」
男「竜闘士の力を使えば振りほどくのは簡単だろうが……そんな剛力使えば生徒たちも無事ではないだろう。女はそんな酷いことをしないって俺は信じている」
女「くっ……」
女(男君の言うとおりだ。私を拘束する戦術科ですらない生徒たち)
女(吹けば飛ぶような力しかない者たちが、必死に私の行動を制限しようとしている)
女(無理矢理に引き剥がせば傷ついてしまうだろう)
女(一人一人時間をかければどうにかなるかもしれないけど…………男君はその間に――)
410 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:35:55.64 ID:dtaQhtJG0
男「回復は終わったようだな」
女(男君は私に背を向けて、虜とした者たちの様子を確認する)
女友「男さん!! 一体どういうつもりですかっ!!」
男「話を聞いていなかったのか、女友?」
男「全ての宝玉を集める」
男「おまえは……そうだな、その力は役に立つ。俺に付いてこい」
女友「『森の鳥(フォレストケー)』――」
女(女友の判断は迅速だった。反射的に魔法を使って、男君を拘束しようとするが)
男「俺に反抗的な行動を禁じる、命令だ」
女友「……っ!?」
女(男君は女友の自由を無慈悲に奪う)
女(相手が熟練の魔導士だろうと関係ない。これが本来の魅了スキルの力)
男「命令だ、行くぞ」
女(男君は戦術科の生徒たち、そして親友の女友を連れて去ろうとする)
女(私は未だに力なき者にしがみつかれて追うことが出来ない)
女(声を上げることしかできない)
411 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:36:47.81 ID:dtaQhtJG0
女「ねえ、男君。私……こんなの嫌だよ。ずっと、ずっと隣にいたかったのに……どうして?」
男「今までの俺にも、今からの俺にも……俺にはおまえの隣にいる資格がないんだ」
女「資格って……」
男「だから……すまんな。気持ちは嬉しいけど、さっきの告白は無かったことにしてくれ。俺なんかが答える立場にあるはずが無い」
女「……」
男「女、おまえの気持ちは……俺以外のもっと大事だと思える人のためにとっておけ。……大丈夫、女ならきっとすぐにそんな人に出会えるだろうから」
412 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:37:23.62 ID:dtaQhtJG0
女(別れを切り出した男君の姿は遠く、私の声はもう届かない)
女(しばらくして私は自由を取り戻したが、そのときには学園の職員たちに取り囲まれていた)
女(事情を知らない者に善悪が分かるはずがない)
女(イケメン君たちから仕掛けてきた戦いだが、第三者から見れば私だって学園に騒動を巻き起こしたものだ)
女(事情の説明、潔白の証明には時間がかかった)
女(それから空を飛び周辺を探したが、男君たちの姿を見つけることは叶わなかった)
女(途方に暮れた私は帰還派のみんなに事情を知らせる手紙を送った)
女(男君だけではない。私の隣には女友もいなかった)
女(いつもなら女友がこなす連絡も私がやらねばならず、かなり手間取ったことでいつも助けられていたことに今さら気づいた)
女(そうして空虚さを覚えながらも、徐々に状況が落ち着いてきたのは騒動から一週間後のこと)
413 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:38:07.00 ID:dtaQhtJG0
女(ちょうどその日、大陸全土を震撼させるニュースが触れ回った)
女(先の大戦の覇者)
女(王国)
女(大陸一の武力を持ち、この大陸の盟主ともいえる)
女(その王国が陥落した)
414 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:38:41.87 ID:dtaQhtJG0
女(この革命の首謀者――男君は体制の崩れた王国を乗っ取り、新たに自身が王になると宣言した)
女(王国を陥落させた新たな王)
女(男君は強大な王国を崩壊させた畏怖の念により、いつしか民からこう呼ばれるようになる)
女(魔王と)
415 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/10/13(日) 22:41:40.35 ID:dtaQhtJG0
6章学術都市編完結です。
6章は当初の予定では魔族が変身で忍び込んだ中、誰が宝玉を盗んだのかというミステリー的な展開にする予定だったのですが、思ったより男と女の関係の亀裂が深かったのとミステリー展開がいくら練っても面白くならなさそうだったことから急遽変更してバッサリカット。女友にダイジェストで語らせました。
どうにか二人の関係が復活して告白した矢先に、やつらが急襲してきて……急転直下な展開になりましたね。
さて、物語の続きは最終章・王国編へと移っていきます。最終章です。
風呂敷を畳みつつ、魔王となった男と一人になった女の行く末を描いていくつもりなのでよければ見てやってください。
最終章ですがたぶん今までより長くなるのでまだすぐには終わりません。
最終章の構想も既に出来ているので、そんなに間を開けずに投下できるよ思います。
乙や感想などもらえると作者のモチベアップするので、どうか協力してもらえると助かります。
416 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/13(日) 23:37:32.76 ID:wBaJI5Sm0
乙
女神の祝福受けた魔王…
417 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/13(日) 23:52:25.18 ID:nzsrLU1DO
乙です
418 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/14(月) 05:24:18.94 ID:e4TbdvEn0
乙!
とうとう、最終章か……最終章も楽しみにしている!!
419 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/10/14(月) 10:36:27.14 ID:J/9nWpS9o
乙ー
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/14(月) 13:48:28.77 ID:1LYXY2AI0
乙ー
魔王でもありヒロインでもある男さんマジぱねえっす
421 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/15(火) 23:55:06.33 ID:uKWzyW9R0
乙です。
6章の最後で怒涛の展開ですね!
魅了スキルが効かないのは女しかいないように思えるけど、
男性陣との共闘もありえるのかな?
ワクワクしながら待ってます。
422 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:50:03.58 ID:4SYDSyxP0
祝連載開始一周年&最終章開始!!
応援レスの数々ありがとうございます。
皆さんのおかげでここまで走ることができました。
このまま最後まで向かっていこうと思います。
というわけで『終章 王国』編を開始です。
423 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:51:33.62 ID:4SYDSyxP0
女(独裁都市)
女(支配から開放された姫姫により復興が急ピッチで進むこの都市の中心、神殿最上階の執務室に)
女(私はいた)
女「ありがとう、姫さん。こんな場を用意してもらって」
姫「いえ、こちらも詳しい状況を窺っておきたかったですから。対岸の火事でもありませんし」
女(この場の主催者、姫さんに礼を言うとお気になさらずと返される)
女「秘書さんも参加ありがとうございます」
秘書「会長からは古参商会の持つ全ての情報の提供、ならびに必要ならば物資の準備もするように言われています。遠慮なさらずに」
女(私たち帰還派をバックアップしてきた古参商会からは会長秘書の秘書さんが参加している)
女(元はスパイであったが男君の魅了スキルにより暴かれた結果今は改心している)
女「他のメンバーが集まるまでは時間がかかりそうだけど……近くに気弱君と姉御だけでもいて助かったよ」
気弱「え、えっと……期待に応えられるように頑張ります!」
姉御「正直アタイはまだ状況も掴めて無くてねえ……まあ足を引っ張らないよう頑張るよ」
女(気弱君と姉御……武闘大会で共に戦い、その途中でカップルとなった二人がこの独裁都市の近くにいるということで集まってもらった)
女(他の帰還派メンバーが集まるまで待ちたかったが、その時間ももったいない事態だ)
女(私、姫さん、秘書さん、姉御、気弱君で五人)
女(それぞれが帰還派、独裁都市、古参商会の代表者で、今の私に集めることが出来る最大の勢力)
女(これでどうにかして男君を止める方法を考えないと)
424 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:52:39.01 ID:4SYDSyxP0
姫「それではこれから現在大陸中を騒がせている世紀の事件、俗に魔王君臨と呼ばれる事件への対策会議を始めます」
女(司会進行は主催者ということもあり姫さんが取るようだ)
姫「まず時系列から確認しましょうか」
姫「この事件の首謀者……男さんが学術都市にて敵対する駐留派、復活派に襲われたのが八日前でしたよね?」
女「うん」
姫「その後女さんを置いて行方をくらまし、次に表舞台に現れたのが一週間後の昨日」
姫「王国を乗っ取り、自身が王になると大陸全土に対して宣言しました」
女(未曾有の宣言からは一日開けているが、それでも騒動による混乱は収まっていない)
姫「宣言と同時に女神教の教会があった場所に対して宝玉を引き渡すように要求がありました」
姫「要求に応じない場合いかなる手段を取ることも辞さないとも同時に記されています」
女(姫さんから大筋の説明が終わる)
425 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:53:14.94 ID:4SYDSyxP0
姉御「順を追って確認したいねえ」
姉御「まず学術都市での襲撃ってやつだけど……駐留派の目的、魅了スキルを手に入れたいってのは分かっている」
姉御「襲撃をどうにか凌いで、なのにどうして女が置いてかれたのかい?」
女「男君自身の発言が根拠だから確証は無いけど、自分自身に素直になるスキルってのをかけられたみたいで」
女「宝玉を集めようとすることで傷つく私が見ていられなくて、自分一人で宝玉を集めるから私は追いていくって」
姉御「……はぁ? 意味分かんないねえ。そんなに大事なら隣で守ってやればいいじゃないかい」
気弱「まあまあ抑えてください」
426 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:54:14.99 ID:4SYDSyxP0
姉御「で、それから一週間後の昨日に王国の乗っ取りを宣言したと」
姉御「でもそんなこと有り得るかい?」
姉御「王国の強大さは異世界の情勢に疎いアタイでさえ知っていることだ」
姉御「女友とその戦術科の生徒たちってのを連れて行ったとはいえ、一週間で攻略できるはずないだろ」
姉御「何かの間違いじゃないかい?」
女「そうかな? 私は男君なら可能だと思うよ」
女「さっき言ったスキルの影響のせいで、今の男君は魅了スキルを使うことに躊躇しないから」
女「全ての女性、世界の半分を支配できる上に、男君の指揮があれば簡単なことだよ」
女(今まで宝玉を手に入れるため率先と私たちを導いてきた男君の力について今さら疑うところはない)
姫「加えて近衛兵長……元この独裁都市の近衛兵長にして王国のスパイに、魅了スキルを使って逆スパイをさせて王国の情報を探らせていました」
姫「女さんと別れた後コンタクトを取り、その情報も使って攻略したのでしょう」
女(姫さんが補足する)
姉御「……二人とも男への評価が高いんだな。まあやるときはやるやつだったか」
女(姉御も納得したようだ)
427 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:55:14.62 ID:4SYDSyxP0
姉御「で、男は王国を支配した……けど、なんでそんなことをしたんだい?」
姉御「王様になりたいなんて願望を持つやつじゃなかったと記憶しているけど」
女「男君の目的は簡単だよ。宝玉を集めること」
女「でもこれまで通りわざわざ教会の跡地を訪れて探すなんて面倒だと思った」
女「だから王国を乗っ取り強大な武力を嵩にして各地に宝玉を差し出すように言った」
姉御「ああ、そうかい。それが宣言と一緒に為された要求ってやつか」
姉御「…………ってことはなんだい? 宝玉を集めるためにわざわざ王国を支配したと」
姉御「何か目的と手段の大きさの違いがえらく歪だねえ」
女(言われてみればそうだけど……そんな手段もやすやす取れるくらい今の男君には力がある)
女(王国を、支配派を乗っ取った男君は今や帰還派、駐留派、復活派に一人で肩を並べる存在になったのだから)
428 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:55:43.46 ID:4SYDSyxP0
姉御「まあ概要は分かったよ。アタイからの質問は以上だ」
姫「では、次は私から」
女(納得した様子の姉御に代わって、今度は姫さんが手を挙げる)
姫「先ほど女さんは男さんに何らかのスキルがかかっていたと話しましたが、実際いつどこで誰にどんなスキルをかけられたんですか?」
女「えっと……言われてみると私も疑問ばかりで。いつなのかって言うと駐留派と復活派との戦闘中だと思う」
女「でも男君を守るために背負いながら空中で戦っていたから、簡単にかけることは出来ないはずなのに……いつの間にかって感じで」
姫「戦闘中で警戒度MAXの竜闘士にも気付かれずですか。俄には考えにくい事態ですね」
女「その直前に男君は独り言を呟いていたんだけど、何か関係あるのかな?」
姫「独り言ですか。分かりませんが…………あ、ちなみにそのスキルの名前は何ですか?」
女「言ってなかったね。『囁き』ってスキルなんだけど――」
429 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:56:09.53 ID:4SYDSyxP0
姫「『囁き』ですか……!?」
女(ガタン!! と、姫さんはイスを弾き飛ばしながら立ち上がった)
女(スキルの名前を聞いただけでこの反応。どうやら何か知っているみたいだけど…………でもそんなに驚くほどのことなのか?)
女「知っているの、姫さん?」
姫「当然です! だってそれは――魔神が持っている固有スキルなんですよ!?」
四人「「「「っ…………!?」」」」
女(姫さん以外の四人が息を呑む)
430 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:56:44.18 ID:4SYDSyxP0
女(魔神)
女(太古の昔にこの異世界を滅ぼしかけた存在)
女(女神様によって別の世界に飛ばされ封印されたはずの存在が……どうして男君にスキルを……?)
女(同時に姫さんが知っていた理由も納得する)
女(彼女は女神教の大巫女。女神様にまつわる情報についてはこの世界で一番知る存在だ)
姫「私も自由を取り戻してようやく訪れることが出来た神殿の地下に秘蔵されていた書物から得た知識なんです」
姫「だから男さんにも話していなくて……」
女「今後のためにも魔神について知っていることを教えて欲しいんだけど」
姫「いいですよ。しかしちょっと待ってくださいね、私も整理してから話さないといけませんから」
女(姫さんは言うと思案顔になって、少し経って口を開く)
431 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:57:26.01 ID:4SYDSyxP0
姫「魔神と呼ばれる存在。その始まりはこの大陸の小さな農村の平凡な夫婦、その間に生まれた一人の女の子だったそうです」
女(語り出したその内容は、最初から私の前提を破壊した)
女「女の子……え、でも? 魔神って……あれ、もしかして……」
女(この世界には魔獣と呼ばれる存在がいる。知性を持たない獣で、度々人間に被害を及ぼす存在だ)
女(商業都市近郊で戦ったドラゴンもその一種と言える)
女(だから魔神とはその親玉、得体が知れず破壊を振りまくモンスターだと思っていた)
女(復活派が世界を滅亡させると言っていたこともそのイメージを補強した)
女(しかし……考えてみればそうだ。神と呼ばれる存在……女神様だって元は人間)
女(だったら魔神も――)
432 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:57:58.88 ID:4SYDSyxP0
姫「はい。魔神も元は偶然固有スキル『囁き』を授かった人間の女の子なんです」
433 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/11/02(土) 01:58:41.18 ID:4SYDSyxP0
続く。
状況説明のためスローペースなスタート。
書き溜め尽きるまでは隔日更新で進行します。
434 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/11/02(土) 02:52:42.79 ID:uVJ2FHST0
乙
435 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/11/02(土) 04:36:08.87 ID:QuCGoejZO
乙!
待ってました!!
436 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/11/02(土) 06:54:22.67 ID:gtWKCaYqo
乙ー
437 :
◆YySYGxxFkU
[saga sage]:2019/11/03(日) 23:12:21.85 ID:BIBN/nXW0
乙、ありがとうございます。
投下します。
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