男「恋愛アンチなのに異世界でチートな魅了スキルを授かった件」 3スレ目

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876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/14(木) 03:20:27.96 ID:wJbCM6EBo
乙ー
877 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/20(水) 23:57:40.41 ID:NK1w9k6Z0
乙、ありがとうございます。

投下します。
878 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/20(水) 23:58:35.51 ID:NK1w9k6Z0

『竜の狂化(ドラゴンブースト)』

男(在りし日に、そのスキルの存在は聞いたことがあった)

男(十分間、ただでさえ強い竜闘士の全能力を強化する代わりに、その反動として効果時間が終わると戦闘不能になる)





男『ありがちな暴走技だな』

男(俺は一言で評した)





女『まあそもそもそうやって強化しないといけないレベルの敵がいるとも思えないし』

女『反動で戦えない間男君を守ることも出来ないし、使うことは無いと思うよ』

男(女もそのように言った)





男(それが今はどうだ)

男(その暴走スキルが使われただけでなく、その矛先は守ると言った俺に向けられている)

879 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/20(水) 23:59:53.76 ID:NK1w9k6Z0



女「『竜の息吹雨(ドラゴンブレスレイン)』!!」



男(いつもの数倍の量の追尾エネルギー弾が文字通り雨のように降り注ぐ)



男「『磁力球(マグネットボール)』!!」

男(戦いの中で急成長していく俺は、原始的な属性ではない魔法も使えるようになった)

男(打ち出した黒い球にエネルギー弾は吸われていくが……いかんせん数が多すぎる)



男「『重力場(グラビティフィールド)』!!」

男(周囲に重力の濃い力場を展開することでエネルギー弾を叩き落とす)

男(直撃は避けれられたが、その余波までは防げない)



男「くそっ……!」

男(『竜の狂化(ドラゴンブースト)』終わりまでまだ五分もある)

男(残り半分もやり過ごせるか……?)



女「ちょこまかと逃げおって……」



男(女の視線がこちらを向く)

男(込められた憎悪の感情によって反射的に身が竦む)



男(精神的に来るものがある……だけどそれが俺の選択した結果だ)

880 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:00:22.23 ID:nSQbQfde0



女「『竜の幻惑軍隊(ドラゴンミラージュアーミー)』!!」



男(武闘大会、決勝戦。傭兵さんとの戦いで一度だけ見せた幻惑スキル)

男(狂化されたことによって、女の分身が十数人と現れる)

男(それぞれが迫ってくる中どれが本物なのか、見抜けさせずに倒すという考えなのだろうが)



男「おまえだ」

男(殴りかかってきた八人目の拳を俺は受け止める。予想通り実体があった)



女「っ、何故……!?」

男「さあな、『音撃(サウンドブラスト)』!!」



男(指向性の音波を放つ。普通に攻撃しても竜闘士には効果が薄い、なら警戒されていないだろう音)

男(三半規管を狂わせてバランスが取れないようにしようとの考えだったが)



女「うるさい……!!」

男(特に効果はなかったようで振り払われる。逆らわずに俺は距離を取った)

881 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:00:48.49 ID:nSQbQfde0

男(狂化されているとはいえ、根底の考え方というものはそう安々と変えられるものではない)

男(女ならどうするか、その読みだけでどうにかこれまで凌いできた)

男(とはいえそろそろ限界か)



男(防ぎきれず掠ってきた攻撃の数々によりダメージが蓄積している)

男(さっきだって拳を避けきれずに受け止めた手のひらが未だに痺れている)



男(残り三分ほど)

男(もちろん暴走技を使っている相手を倒そうだなんて端から思っていない)

男(俺の狙いは時間切れによる戦闘不能のみ)



男(逃げ回るだけでいいのだが……果たして逃げきれるだろうか)

882 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:01:16.32 ID:nSQbQfde0



女「最初から……逃げ切るつもりか」

男(攻め気の無さに女も勘付いたようだ)



男「残りちょっとだろ。簡単に逃げられそうだな」

男(弱っているところを見せるつもりはない。俺は強がる)



女「『竜の翼(ドラゴンウィング)』」



男(女は翼を生やして飛び上がる)

男(謁見の間の天井まであがり、最初突入してきた突き破った天窓も通って、さらにさらに上へ)



男(逃げたわけではない)

男(女の狙いは読める。次の一撃で決めるつもりなのだと)

男(そのためには高度が必要なのだろう)



男(『竜の潜行(ドラゴンダイブ)』)

男(高所から急降下して攻撃するスキル)

男(それが狂化された今は――)

883 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:01:43.10 ID:nSQbQfde0





女「『竜の隕石(ドラゴンメテオ)』!!!!」





男(高高度から一点、俺をめがけて落ちてくる)

男(避けることはおそらく不可能だろう)

男(余波だけでこの謁見の間を吹き飛ばせる)

男(だったら受け止めるしかない)



男「『筋力強化(マッスルブースト)』」

男「『腕力強化(アームブースト)』」

男「『脚力強化(キックブースト)』!!」



男(エンチャントされた魔力で、ありとあらゆる強化魔法をかける)


884 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:02:31.96 ID:nSQbQfde0



男(そして次の瞬間、女が降ってきた)



女「アアアアアアアアッ!!!!」

男「うおおおおおおおっ!!!!」



男(拳を先頭にしたそれを受け止めた瞬間、俺の足が謁見の間の石張りの床を砕きめり込む)

男(それだけの衝撃があった)



男(初動は成功。だが、まだ女のスキルは終わっていない)

男(俺を押し潰さんと勢いを弛めない攻撃に、どうにか踏ん張ってみせる)



885 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:03:34.82 ID:nSQbQfde0



女「許せない、許せない、許せない……!!」

男「そうだ、許すな! 俺はおまえの親友の命を奪った男だ!!」



女「おまえなんか、×君なんか…………!!」

男「そうだ……俺なんか好かれる価値もない男だ!!」



男(お互いに意地を通そうと精一杯だ)

男(言葉を考える余裕もない、感情の爆発がそのまま叫びとなる)







男(至近距離でお互いの全てをぶつけ合うが……徐々に差が明確になってきた)

男(女の方が優勢だ)



男(そもそも単純な力勝負だ)

男(強化したとはいえ、狂化された竜闘士に敵うわけがない)



男(『竜の狂化(ドラゴンブースト)』終わりまで粘れればと思ったが……まだ少し時間があるはず)

男(それよりも先に俺の防御は打ち破られてぺっしゃんこだろう)

886 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:04:33.32 ID:nSQbQfde0



男(まあ……そういう結末も仕方がない)

男(俺は諦めて力を抜こうとした……そのとき)





男(女の力が先に弛んだ)





男「え……?」

男(どうして?)

男(効果時間終わりまではまだあったはず)

男(なのに……いや、夢中になり過ぎてカウントを間違えたのか?)



男(疑問が頭を埋め尽くす中、女は反動で戦闘不能となり)

男(その場に倒れ伏した)

887 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:06:35.33 ID:nSQbQfde0



男「締まらない決着だが……勝ちは勝ちか」



男(埋まっていた足をどうにか引っ張り出す)

男(そして俺は女を見下ろした)





女「………………」





男(息はある……だが立ち上がる力は無いようだ)

男(竜闘士といえどここまで消耗してはどうしようもない、殺そうと思えば簡単に殺せるだろう)



男(まあ、俺の目的はそんなところにはないのだが)







男「今のうちに全てを終わらせておくか」



男(俺自身に宿った唯一のスキル)

男(今度は暴発ではなく、自分の意志で発動する)

888 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:07:10.72 ID:nSQbQfde0







男「魅了、発動」







男(ピンク色の光柱の顕現)

男(時刻はもう夕方)

男(最後の攻防のせいで壁がボロボロになった謁見の間には直接夕日が差し込む)



男(光のコントラストが見事だ)

男(異世界冒険譚の終わりにふさわしい光景だった)

889 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:07:38.04 ID:nSQbQfde0





男「さて、と。ああ、忘れないうちに……命令を解除する、女友」

男「うーん、ようやく終わったかー……」





男(身を翻し晴れ晴れしい気持ちそのままに大きく伸びをしながら、俺はエピローグという名の余韻に浸って――――)





890 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:08:05.19 ID:nSQbQfde0





女「そういうこと……だったんだ」



男(背後で誰かが立ち上がろうとする音がした)





891 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:09:14.92 ID:nSQbQfde0





男「……命令だ、口を閉じろ」

男(付き合うつもりはない、俺は早速命令を下して)





女「黙らないよ。残念だったね、私は虜になってないから」

男(それでも口を開く少女に)





男「なっ……!?」

男(俺は心の底から動揺して振り返った)





892 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:09:48.91 ID:nSQbQfde0



女「許せない……許せなかった。女友の命を奪った人を――それでも嫌いになれない自分が」



男(ボロボロになった身体に鞭を打って)



女「×君なんか――男君なんか……思っても、想いは消えなかった」



男(立ち上がろうとしながら)



女「中途半端な自分が嫌になる……でもそれは男君も同じだったんだ」



男(言葉を紡ぐ少女)



女「おかげで全部分かった。男君はあの日……私と別れてからずっと――」



男(ヨロヨロと腕を上げ、俺を指さしながら)

男(核心を、真実を、想いを、言い当てる)



893 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:10:28.93 ID:nSQbQfde0







女「私に嫌われようと……していたんだね」







894 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:11:07.55 ID:nSQbQfde0
続く。

次が最終章、最終話です。
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/21(木) 05:05:09.32 ID:fpuEIDNro
乙ー
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/25(月) 02:41:27.43 ID:sGpD2UUk0
乙!
897 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:37:17.29 ID:6xsigKqM0
乙、ありがとうございます。

投下します。
898 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:37:51.60 ID:6xsigKqM0

女(私には今全てが分かっていた)



女(全ての発端は魅了スキル)

女(最初から最後まで私と男君の関係にこのスキルは付きまとってくるのだ)

女(その詳細を私は思い出す)





 スキル『魅了』

 効果範囲:術者から周囲5m
 効果対象:術者が魅力的だと思う異性のみ

・発動すると範囲内の対象を虜にする。
・虜になった対象は術者に対して好意を持つ。
・虜になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う。
・元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない。
・一度かけたスキルの解除は不可能。





899 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:38:36.40 ID:6xsigKqM0

女「男君の真なる目的……永遠の孤独」

女「それって文字通り誰からも干渉されないことを目指したんでしょ」



女「何でそう思うようになったのかは分からないけど……その場合邪魔な存在がいる」

女「それが私」



女「魅了スキルにかかっていないから命令することも出来ないし、男君のことを好きだからどれだけ突き放そうが構ってくる」

女「おまけに竜闘士というとてつもない力を持っているからタチが悪い」



女「どうにかする方法が無いかと思案して……魅了スキルを使うことを考えたんだよね」



女「『効果対象:術者が魅力的だと思う異性のみ』に私は当てはまる」

女「でも、もちろん私は魅了スキルにかからない」

女「『元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない』から」

900 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:39:06.86 ID:6xsigKqM0



女「だけど裏を返せば……私が男君への好意を無くせば魅了スキルをかけることが出来る」



女「だから男君は私に嫌われようとした」



女「宝玉を手に入れるだけなら過剰とも言えるのに、わざわざ王国を支配したのも」



女「王国の無辜の民を虐殺したって嘘情報を私たちだけに流したのも」



女「そして今の戦い。わざと私の憎悪を煽ったのも」



女「『俺はこれだけ悪いことをした。どうだ嫌いになったか?』ってことだったんだよね?」



女「全部、私に魅了スキルをかけるためだったんだ」



901 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:39:58.44 ID:6xsigKqM0





男「いや……違う。そうじゃないんだ」





男(女の言葉に俺は反対する)



女「何が違うっていうの?」

女「倒れた私相手に魅了スキルをかけようとしたこと、さっき私に命令したこと……」

女「全部そうじゃないと辻褄が合わない」



男(女の反論はもっともだ)



男(女の意見は全部当たっている)

男(別に俺も全てが暴かれて抵抗するつもりはなかった)

男(ただ一つだけ、訂正する箇所があった)

902 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:40:53.43 ID:6xsigKqM0





男「魅了スキルをかけるために嫌われようとしたんじゃないんだ」

男「嫌われたら魅了スキルをかけることが出来るってことなんだ」





女「……続けて」





男「始まりは……ああ、そうだ。学術都市で女に告白されたことだった」



男「嬉しかったよ。俺も女となら一緒に歩いていける。告白を受けるつもりだったんだ」



男「だけど直後に襲撃があって……俺を守るために傷つく女を見て思ったんだ」



903 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:41:42.15 ID:6xsigKqM0



男「俺なんかが女に釣り合うだろうかって」



男「確かに今俺と女は想い合っている。でもそれがずっと続くだろうかって」

男「俺の不甲斐なさは俺自身が一番知っている」

男「付き合うことになって、俺のどうしようも無さを間近で見るようになれば、きっと近い将来女は俺を嫌いになる」



男「いつか必ず訪れるだろうそのときが……俺は怖かったんだ」



男「だから……そんなことになる前に、先に嫌われようと思ったんだ」



男「今の内に嫌われれば受けるダメージは少なくて済む」



男「魅了スキルをかけることが出来れば、嫌われたという証明になる」



男「そうなって俺は『ははっ、やっぱりそうだよな』と思いながら、今度こそ誰にも関わらずに生きていく」



男「『永遠の孤独』……何も得られることが無い代わりに、何も失わないで済む世界で……ただただ生きて、そのまま朽ち果てるつもりだった」



904 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:42:17.86 ID:6xsigKqM0

男(骨の髄から陰湿してジメジメとした生き方)

男(自分から嫌われようとしたのに、やっぱり嫌いになったのかと見返そうという考え方)

男(どうしようもなく嫌になる俺なんかを――)





女「それでも私は男君のことを好きなままだった」

男「…………」





男(女は太陽のように照らす)

905 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:42:43.59 ID:6xsigKqM0



男「………………」

女「………………」



男(お互いがお互いを見つめ合う)

男(無言でともすれば切迫しているとも取られるかもしれないが、不思議と居心地は悪くない)



男(いつまでもこうでもいいと思い始めたところで――)



906 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:43:28.69 ID:6xsigKqM0



女友「だぁっもう、じれったいですね」



男(そんな雰囲気を壊すように、第三者の声が上がった)



女「女友……って、ええっ!? どうして!? 死んだんじゃなかったの!?」

女友「勝手に殺さないでください……って言いたいところですが、実際死んでましたよ。仮ですけどね」

女「仮?」





男(そう、俺は女友を殺していない)

男(即死魔法を打った闇の奔流の中で女友に仮死状態になるように命令して、さっきその命令を解除したから起きたというわけだった)



男(そもそも魔導士は魔法抵抗力が高いため無防備なところに即死魔法を受けても効果が発揮することはない)

男(女に嫌われるための策として咄嗟に思いついた方法だった)



女「よく分かんないけど……生きてて本当に良かったよ!!」

女友「ああもう、抱きつかないでください!!」

男(抱きつく女に揉みくちゃにされる女友)

907 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:44:00.59 ID:6xsigKqM0



男「女友、おまえにかけられた全ての命令を解除する」

男「……今まで、そして最後まで済まなかったな」



女友「男さん……謝れば許されると思ってますか?」



男「思っていない。どんな罰でも受ける覚悟だ」



男(俺は女友に、いや魅了スキルで支配して強制してきた全ての人に対して償いをしなければならないだろう)

908 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:44:44.94 ID:6xsigKqM0

女友「はぁ……とりあえずそれは置いておきます」

女友「さっさとやらないといけないことがありますから」



女友「私は今から軍の方に出向いて戦闘行為の停止を申告してきますね」

女友「男さんももう戦う理由が無くなったでしょうし、いいですよね」

男「ああ、頼む」



女友「了解しました。では私がまた帰ってくるまでにお二人も決着を付けておいてくださいね」



男「け、決着って……な、何を」



男(女友は人を食ったような笑みを浮かべている)

男(久しぶりに見る表情だ)

909 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:45:24.20 ID:6xsigKqM0



女友「分かってるでしょうに」

女友「今回の騒動は結局のところ異世界をまたに掛けた痴話喧嘩だったってことじゃないですか」

女友「ちゃんとケリを付けないとオチが付かないですよ」



男「だ、だが……」



女友「言い訳は聞きたくありません」

女友「帰ってきたときに何も進んでなかったら、この魔王城を吹き飛ばしますからね」



男(女友は物騒な発破をかけるとボロボロになった謁見の間を出て行った)

男(これで正真正銘女と二人きりになったわけだ)

910 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:45:55.54 ID:6xsigKqM0



女「男君」

男「……」



女「私からはもう何も言わないからね。だってもう伝えているから」

男「ああ、そうだな」 



男(俺は既に女から告白されている)

男(その返事をさっさとしろ、というのが女友も言いたかったことだろう)

男(どのように返事をするか考える)





女「………………」

男(待ちきれなくなった女はボロボロになった謁見の間を手持ちぶさたに歩き回る)

男(俺はその後ろを付いていきながら口を開いた)

911 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:46:38.55 ID:6xsigKqM0

男「なあ、女。その何言ってるんだって思われるかもしれないんだけど……」

女「うん」



男「あのときの告白……無かったことに出来ないかな」

女「……どういう意味?」



男「ああいや断るとかそういうんじゃなくて…………その、な」

男「こういうのって本当は男の方からびしっと言うべきだろ」

男「でも俺が不甲斐ないから女に言わせてしまって」

男「いや、やり直したってその何かが変わるわけじゃないかもしれないけど……」



女「もう……男君はズルいな」

男「いや、本当におっしゃる通りで」



女「違うよ。男君は私のツボをしっかり押さえていて……本当にズルいってこと」

男「……?」

912 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:47:04.89 ID:6xsigKqM0





女「うん、分かった。私はあの日何も言っていない」

女「それで男君は何を伝えたいの?」





男(女が振り返る)

男(話している間も俺たちの足は動いていて、ちょうどベランダに出たところだった)

男(眼下に王都を一望出来る絶好のロケーション)

男(正面にはあの日と同じく夕日が沈みゆく最中だ)



男(いざとなると決心も思考も必要なかった)

男(驚くほど自然に、するりと俺の想いを伝えるための言葉が紡がれる)

913 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:47:30.05 ID:6xsigKqM0





男「好きだ、女。これからもずっと俺の隣を一緒に歩いて欲しい」





914 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:48:03.19 ID:6xsigKqM0




女(ずっとずっと夢に描いていたものと一致していた)

女(お互いに落ち着いていて)

女(男性の方から言い出したのもプラス)

女(ちゃんと等身大の言葉で伝えてくれたのもプラスだ)

女(場所も完璧。沈みゆく夕日はどうしてこうも心の原点を浮き彫りにしてくれるのだろうか)





女(男君は頭を下げ、私に手を差し出して返事を待っている)

女(ここまで待たされたのだ)

女(少しイジワルでもしようかと思ったけど)



女(……駄目だ、もう私の心を抑えきれない)



915 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:48:29.80 ID:6xsigKqM0





女「男君、私も好きだよ。これからもずっとずっとよろしくね!」





916 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:48:56.57 ID:6xsigKqM0



女(その手を握ると感極まったように男君も顔を上げた)

女(ニコりと微笑んでみせると男君にぐいっと引っ張られて強く抱きしめられる)





男「ああ! ずっと、ずっと大切にするからな……!!」





917 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:49:24.79 ID:6xsigKqM0





こうして魔王君臨を発端に大戦とまで至った一連の騒動は決着を迎えたのだった。





918 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:50:23.26 ID:6xsigKqM0

終章完結です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

投稿間隔が大幅に広がり、内容もグダったところが散見されましたが、思い描いていた結末までどうにか辿り着きました。



物語はこれで終わりではなく、エピローグへと続きます。
色々と取りこぼした要素を拾うのとその後を短く描いて今度こそ終わる予定です。



919 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/28(木) 00:55:13.14 ID:GOqfjXSDo
乙ー
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/28(木) 15:47:29.47 ID:wqS4McZg0
乙!
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/01(月) 00:29:09.59 ID:/zNaQyia0
乙!
922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/08(水) 15:10:36.91 ID:IFbAdbapo
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/02(金) 04:32:42.05 ID:AISitEXSo
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/14(水) 13:12:38.02 ID:ph++uam/o
エピローグとは一体
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/15(日) 21:31:28.60 ID:EBjy4b8ro
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