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貴虎「何? 再びISの世界へだと?」
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102 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 22:00:18.65 ID:zLdtmU2Z0
楯無「……ところで、これなーんだ?」
つ『王冠』
貴虎「あぁ、そんなものもあったな……」
楯無「そう! これをゲットした人が、貴虎くんと同じ部屋に暮らせるっていう、素敵アイテム」
貴虎「……何?」
楯無「うふふっ」
貴虎「……そんな話は聞いていない」
貴虎(というか、篠ノ之たちはそんなものを血相変えて取りに来ていたのか?)
楯無「うん。だって女の子にしか言ってないし〜」
貴虎「ふざけるな」
楯無「なんにしても、ゲットしたのは……わ・た・し」
貴虎「知らん、そんなものは無効だ」
楯無「これからもよろしくね、貴虎くん」
貴虎「無効だと言っているだろう!」
ギャーギャー
貴虎(まったく、面倒な女と知り合ったものだ)
貴虎(依然、葛葉紘汰との連絡も取れないまま。それに加え、謎の秘密結社まで……考えることが増えていく)
貴虎(だが、俺のやることは変わらない。決して諦めず、自分のすべきことをしていくだけだ)
貴虎(元の世界へ戻る、そのときまで!)
103 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 22:01:20.32 ID:zLdtmU2Z0
今回はここまで
次回は『第三話 タッグマッチトーナメント』
新年度始まって忙しいから、少し間が空くと思う
あと、アニメの茶番回は飛ばすかも
それはそれとして、貴虎とお似合いのヒロインって誰だろう
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/01(月) 22:50:19.03 ID:XlGXS5Ex0
貴虎兄さん本編でさっぱり浮いた話無かったからなあ…
女の子とイチャイチャ出来そうにない、というのは偏見だろうか?
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/02(火) 00:33:35.44 ID:CAzOebmFO
乙
イチャイチャしたらどこぞのレモンが女の子に襲いかかりそう
高校生っぽいデートとか似合わなそう
夜景の見えるホテルのレストランでもミッチと食事してそう
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/04(木) 21:09:14.68 ID:99c7sDBao
貴虎兄さん某レモンのように我が強くて個性的なのに好かれるけど、そばにいて癒やしてくれそうな女性がお似合いなんじゃない?
映画では結構一途な一面もあったし、恋人ができたらかなり大事にしそう
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/06(土) 05:20:17.26 ID:NtbydqfNO
むしろ恋人を大事に思いすぎてもっと平和のために頑張ろう!って仕事ばかりして恋人ほったらかしにしそう
108 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 19:59:13.16 ID:Jo4N+vyq0
それじゃ、続き投下していく
思ったより早く書き上がった
109 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 20:00:10.51 ID:Jo4N+vyq0
『第三話 タッグマッチトーナメント』
貴虎(いかん。調査に熱中しすぎて、つい遅くなってしまった) テクテク
貴虎(だが結局、亡国機業[ファントム・タスク]に関する情報は一切得られなかった)
貴虎(なるほど、だてに『秘密結社』ではないということか)
貴虎(こう思っては不謹慎だが、また相対する機会が訪れれば、何か情報が……っ!) ピタッ
貴虎「……誰だ?」 クルッ
???「……」 コツコツ
貴虎「……織斑?」
貴虎(あの顔は確かに……いや、よく見ると少し幼いか?)
???「あぁ、確かに私は織斑だ」
貴虎(……本物の織斑が、そんなことを言うものか)
貴虎「……何者だ?」
???「この間は、オータムが世話になったな」
貴虎「オータムだと……!」
貴虎(そうか……こいつは、あのとき乱入してきたISの……)
貴虎(それにしても……まさか本当に、再び向こうからやって来るとはな)
???「私の名前は、織斑マドカだ」
貴虎「……あいつの妹か?」
マドカ「あぁ。確かに、織斑千冬は私の姉だとも」
貴虎(この言い方……信用できん)
貴虎「私に何の用だ?」
110 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 20:10:14.45 ID:Jo4N+vyq0
マドカ「特に用はない」
貴虎「……何?」
マドカ「ただ……今後、お前の存在が私の邪魔にならないよう……」 スッ
貴虎(っ、銃だと……!)
マドカ「お前の命をもらう」 バンッ!
貴虎(無双セイバー!) ガシッ
ブンッ
ガキン!
マドカ「ほう、本当に刀で弾くとは……だが、いつまで保つかな?」 バンッ! バンッ!
貴虎「試してみろ。弾が切れるまで」 ガキン! ガキン!
貴虎「だが、私も黙っていると思うな……」 ガチャッ
キュィィン……
バキュン!
マドカ「フッ……」 ピカーン
ガチャン
ヒュゥゥ……!
貴虎(っ、ビットか)
バシュン!
ドカーン!
貴虎(さすがに、もう無双セイバーのみで相手をするのは難しいか)
貴虎「いいだろう。お前がその気なら、相手になってやる……変身」 ピカーン
マドカ「……」 ドウッ
111 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 20:20:03.78 ID:Jo4N+vyq0
貴虎(見たところ、こいつのISはオルコットのものと同じタイプ……)
貴虎(遠隔操作によるビットから砲撃を行い、それを軸に戦う機体か) ピッ
貴虎(ならば、自ずと戦術も決まる……) カチャ
ガチャッ
キュイン
『メロン』
ジジジジ……
ヒュゥゥ……
マドカ「来たか……」
ガチャッ
キュイーン
『ロックオン』
プォォォ……
ザシュッ
『ソイヤッ!』
ヒューン
ズボッ
『メロンアームズ!』
ガシャッ
キュイィィィン……
『天・下・御・免!!』
ガシャン!
テレレン
貴虎「いくぞ……!」 ドウッ
112 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 20:30:02.82 ID:Jo4N+vyq0
マドカ「……」 バシュン! バシュン!
貴虎(メロンディフェンダー!) サッ
ガキン! ガキン!
貴虎(鬱陶しいな……こいつを投げて、すべてのビットを落としてやる) グッ
ザシュッ
ジャキン
『ソイヤッ!』
ギュオギュオギュオギュオ……
キィィィン……!
『メロンスカッシュ!!』
貴虎「ハァッ!」 ブンッ!
ヒュォォ……!
キンッ!
ボンッ!
ドガーン!
マドカ「何っ!?」
マドカ(6機のビットが、全滅だと……!)
貴虎「これで、お前を守るビットはなくなった」 パシッ
貴虎「覚悟しろ……」 ジャキッ
貴虎「ハァッ……っ!?」 ビクッ
貴虎(なんだ……今、一瞬だが、斬月の動きが止まったような……)
マドカ「面倒だ……!」 ドウッ
113 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 20:40:06.75 ID:Jo4N+vyq0
貴虎「っ……逃すか!」 バキュン!
マドカ「フッ……」 サッ
バシィン!
貴虎「バリアだと……!?」
マドカ「……」 ゴォォォ……
貴虎「待て!! ……くっ」 ピカーン
貴虎「逃げ足の速いやつだ……!」 スタッ
貴虎(さらなる情報を手に入れる、千載一遇のチャンスだったというのに……)
貴虎(……終わったことを嘆いても仕方ない。今は、新たに手に入った情報を整理しよう)
貴虎(織斑マドカ。あいつが何者かを知るには……やはり、他ならぬ織斑に聞くのが一番か)
貴虎(……さっきの不調は、俺の気のせいか……?)
114 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 20:40:50.14 ID:Jo4N+vyq0
そのころ、ところ変わって
簪「……」ピッ ピッ
ウィーン ウィーン
簪(各駆動部の反応が悪い……どうして……)
簪(コアの適正値も上がらない……タイプが向いてないの……?)
簪「……はぁ……」 ピッ
簪「帰って、ライダーでも見よ……」 スクッ
スタスタ
楯無「……」 コソッ
楯無(簪ちゃん……)
115 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 20:50:14.72 ID:Jo4N+vyq0
次の日、教室
貴虎(昨夜の襲撃から、特に斬月に変化はない)
貴虎(だがそれは、俺が斬月を展開していないため、わからないというだけだ)
貴虎(あれは気のせいだったのか……それとも、また何か面倒な問題が発生し始めたのか……)
箒「……貴虎?」
貴虎「っ、篠ノ之か」
箒「どうした、難しい顔をして」
貴虎「……いや、何でもない」
箒「そうか……その、もし何かあれば、なんだ……私に相談してくれても、構わないから……な?」
貴虎「……あぁ、ありがとう」
貴虎(そう簡単に相談できることではないが……まぁ、悩み過ぎるのも良くないか)
貴虎(できれば、杞憂であってくれればいいが……)
ガラッ
タタタッ
薫子「やっほー! 呉島くん、篠ノ之さん」
貴虎(こいつは、確か……)
貴虎(……誰だったか。会ったことがある気はするが)
貴虎(新聞部の腕章をつけているということは、何かの折にインタビューでも受けたか?)
116 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 21:00:02.69 ID:Jo4N+vyq0
次の日、教室
貴虎(昨夜の襲撃から、特に斬月に変化はない)
貴虎(だがそれは、俺が斬月を展開していないため、わからないというだけだ)
貴虎(あれは気のせいだったのか……それとも、また何か面倒な問題が発生し始めたのか……)
箒「……貴虎?」
貴虎「っ、篠ノ之か」
箒「どうした、難しい顔をして」
貴虎「……いや、何でもない」
箒「そうか……その、もし何かあれば、なんだ……私に相談してくれても、構わないから……な?」
貴虎「……あぁ、ありがとう」
貴虎(そう簡単に相談できることではないが……まぁ、悩み過ぎるのも良くないか)
貴虎(できれば、杞憂であってくれればいいが……)
ガラッ
タタタッ
薫子「やっほー! 呉島くん、篠ノ之さん」
貴虎(こいつは、確か……)
貴虎(……誰だったか。会ったことがある気はするが)
貴虎(新聞部の腕章をつけているということは、何かの折にインタビューでも受けたか?)
117 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 21:04:11.60 ID:Jo4N+vyq0
ごめん間違えた
118 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 21:04:42.34 ID:Jo4N+vyq0
箒「あぁ、黛先輩……お久しぶりです」
貴虎(黛? ……あぁ、思い出した。確か、新聞部の部長だったか)
貴虎(そうだ……だいぶ前だが、取材を受けた覚えがある。もう5年も前の……)
貴虎(……いや、この世界では、まだ1年も経っていないのだったな)
箒「どうかされましたか?」
薫子「いやー、ちょっとふたりに頼みがあって」
箒「頼み? 私と貴虎にですか?」
薫子「うん、そう。あのね、私の姉って出版社で働いてるんだけど……」
薫子「専用機持ちとして、ふたりに独占インタビューさせてくれないかな?」 ガサガサ
薫子「あっ、ちなみにこれが雑誌ね」 パサッ
箒「どうも……」 ペラッ
貴虎「篠ノ之。すまないが、私はあまり雑誌を読まなくてな……良し悪しの判別ができない」
貴虎「どういう内容のものか、確認してくれ」
箒「あぁ、これは……んん?」 ペラッ ペラッ
箒「えっと、あの……この雑誌、ISと関係なくないですか?」
貴虎「そうなのか?」
箒「見ろ、こんな感じの……」 ペラッ
貴虎「……ジャンルが異なる、ということか?」
薫子「んん? あれ? もしかして、ふたりはこういう仕事、初めて?」
薫子「えっとね、専用機持ちって、タレント的なこともするのよ。アイドルっていうか、主にモデルだけど」
貴虎「……スポーツ選手が、ファッション誌のグラビアを飾るようなものか?」
薫子「そうそう、それよ」
119 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 21:13:12.33 ID:Jo4N+vyq0
鈴「なになに、何の話?」 ヒョコッ
箒「いや、雑誌の取材を依頼されてな……」
貴虎「凰、お前は経験あるか?」
鈴「もちろん! モデルなら、あたしの写真、見せてあげるわよ」 ピッ
鈴「ほらこれ!」 バッ
貴虎「……なるほど、なかなかよく撮れている」
鈴「ふふん! そうでしょう、そうでしょう! 」
貴虎(こうして見ると、普段は気にならないが……確かに、凰は可愛らしい顔立ちをしている)
鈴「あっ、こっちのは、去年の夏のイベントのときのやつでね……」 ピッ ピッ
キーンコーンカーンコーン
薫子「あっ……じゃあ、放課後また来るから!」
鈴「でねでね、こっちが……イタッ!」 ガンッ
千冬「とっとと2組に帰れ」
鈴「うぅ、はい……」 スタスタ
千冬「さて……今日は近接格闘戦における効果的な回避方法と、距離の取り方についての理論講習を始める」
貴虎(……まぁ、また後で考えればいい。今は授業に集中しよう……)
120 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 21:13:44.88 ID:Jo4N+vyq0
そのころ、4組の教室
簪「……」 ピッ ピッ
「ねぇねぇ聞いた? 今度、専用機持ちだけのイベントがあるらしいよ。でね……」 ヒソヒソ
「ウチのクラスの簪さん、出るらしいよ」 ヒソヒソ
簪「……」 ピタッ
「簪さんの専用機、まだ完成してないんじゃない?」 ヒソヒソ
「間に合えばいいけど……」 ヒソヒソ
簪「……」 ピッ ピッ
121 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 21:24:52.14 ID:Jo4N+vyq0
それから、剣道場
箒「はっ! はっ!」 ブンッ ブンッ
貴虎「ここにいたか」
箒「貴虎……どうかしたか?」
貴虎「あの新聞部の言っていた話だ。まだ答えていないだろう?」
箒「断る。見世物など、私の主義に反する」
貴虎「やはり、お前もそうか」
箒「お前もその口だろう?」
貴虎「あぁ」
タタタッ
薫子「やっほー、お待たせ!」
薫子「それでね、取材の件なんだけど……」
貴虎「そのことだが、悪いが今回は……」
薫子「ジャン!」 ピッ
貴虎「……それは?」
薫子「三ツ星レストランのディナー招待券! これが報酬よ」
薫子「もちろんペアで!」
箒「っ!!」
貴虎「いらん、その程度の報酬……」
箒「受けましょう!」 パシッ
貴虎「篠ノ之!?」
122 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 21:33:02.91 ID:Jo4N+vyq0
薫子「やったー! ありがとうー!」
貴虎「篠ノ之、お前……」
薫子「じゃあ、決まりね。日曜日に取材だから、よろしく」
貴虎「待て、まだ話は……!」
薫子「そいじゃねー!」 ピューッ
貴虎「……篠ノ之、さっきと言っていることが違うぞ」
箒「……私は、柔軟な物事の考え方をしているのだ」
貴虎(報酬に釣られただけだろう……物は言いようだな)
箒「それより、貴虎。お前、今これを『その程度の報酬』と言わなかったか?」
貴虎「……」
箒「まさか、お前の家は大層な……」
貴虎「お前には関係のないことだ」
箒「……そうだな」
貴虎「……」
箒「……んんっ……あー、コホン。ところで、だな……このディナーだが……」
箒「もちろん、一緒に行くのだろうな……?」
貴虎「……報酬は受け取ってしまった。なら、それを無駄にすることもない」
箒「っ、そうか! そうだな!」 ニコッ
貴虎(……まぁ、篠ノ之がいいなら、別に構わない……かもしれんな)
123 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 21:41:01.89 ID:Jo4N+vyq0
その夜、簪の部屋
簪「……」 ジー
敵『この女がどうなってもいいのか!?』
ヒロイン『っ……』
主人公『たとえ変身できなくても……俺は刑事で、仮面ライダーだ!』 チャキッ
敵『お前、何しやがる……!?』
主人公『俺を信じろ』
ヒロイン『……もちろんです。バディですから!』
簪「……ふふっ……」
簪(いつか、私のところにも、来てくれるって思って……)
簪(私を見てくれる……私を助けてくれる、ヒーローが……)
簪「……」
124 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 21:42:03.16 ID:Jo4N+vyq0
後日、インタビュー当日
渚子「どうも。インフィニット・ストライプスの副編集長、黛渚子よ。今日はよろしく!」
貴虎「呉島貴虎だ」
箒「篠ノ之箒です」
渚子「えーっと……それじゃあ、先にインタビューから始めましょうか」 ピッ
渚子「最初の質問いいかしら? 呉島くん、女子校に入学した感想は?」
貴虎(いきなりそこか……まぁ、回りくどくなくていい)
貴虎「特に思うことはない。何処だろうと、私は自分の成すべきことをするだけだ」
渚子「成すべきこと……具体的には?」
貴虎「私自身の成長、また背負うべき責務など……だ」
渚子「……ぷっ、あははっ! 妹の言ってたこと、本当なのね!」
貴虎(一体どういうことを言ったんだ、あいつは……)
125 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 21:50:02.03 ID:Jo4N+vyq0
渚子「さて、それじゃあ……篠ノ之さんには、お姉さんの話を」
箒「っ……」
渚子「お姉さんから専用機をもらった感想は? どこかの国家代表候補生になる気はないの?」
箒「……紅椿は、感謝しています」
箒「ですが……今のところ、代表候補生に興味はありません。勧誘は多いですが」
渚子「オーケーオーケー! それじゃあ、呉島くんと篠ノ之さんって、どっちが強いのかしら?」
貴虎「私だ」
渚子「そうなの?」
箒「はい。というより、貴虎に勝った人を、私は見たことがありません」
渚子「あら、すごいわね! さすがヒーロー」
貴虎「ヒーローになるつもりはない。私はあくまで、自分の成長の結果として、強くなっただけだ」
渚子「面白い! じゃあそんな呉島くんに、戦場での心得を聞こうかしら」
貴虎「常に相手を見て、基礎に立ち返ることだ。相手の実力も、己の実力も、どちらも見誤ってはならない」
貴虎「あとは、そうだな……重要なのは、決して諦めないことだ」
渚子「あら、意外。なんていうか、もっと現実主義的なのかと思ってた」
貴虎「現実を見ることは大事だ。だが、それと同じように……希望を捨てないことも、また重要だ」
貴虎「この世界には、理由のない悪意などいくらでも転がっている。私もかつて、それに屈したことがあった」
貴虎「戦いに意味など求めても無駄だと……現実を見たつもりで、絶望を受け入れたことがな」
126 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 22:00:15.86 ID:Jo4N+vyq0
箒「……」
貴虎「だが、ある男に出会い、考えを改めた」
貴虎「どんな悪意にも、諦めずに戦い続ければ……必ず、そこに活路は拓けると」
貴虎「どんな苦難にも、絶望せず立ち向かえ。そうすれば、いつか必ず、そこに希望は生まれる」
貴虎「それが私の、戦場での心得だ」
渚子「イエース! カッコいいわよ!」
箒「貴虎……」
渚子「それじゃ、撮影に移りましょ!」
127 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 22:01:05.35 ID:Jo4N+vyq0
それから、スタジオ
貴虎「……」
渚子「ワーオ! 呉島くん、スーツめちゃくちゃ似合ってる!」
貴虎「……そうか」
渚子「すごいわ……なんか、すごく着慣れてるって感じ! 自然な雰囲気がステキよ」
貴虎(着慣れている……そうだろうな)
貴虎(はっきり言って、俺としても……IS学園の制服より、こちらの方がスタンダードだ)
「お待たせしましたー。篠ノ之さん、入りまーす」
箒「た、貴虎……待たせた……」
貴虎「ドレスか。よく似合っている」
箒「っ!? そ、そうか……!」
箒(貴虎が褒めてくれた……!!) ニヤニヤ
128 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 22:10:02.80 ID:Jo4N+vyq0
箒「貴虎も……似合ってるな」
箒「その、なんだ……悪くない、ぞ……」
貴虎「……ありがとう」
箒「いや……悪くない、というか……似合い過ぎる、というか……」
箒(……冷静に見ると、本当にすごいな。まったく違和感がない……)
箒(言わない方がいいが、貴虎は少し老け顔だし……知らない人が見たら、30代だと思われても、不思議ではないな……)
貴虎(……何となく、篠ノ之の考えていることが予想できるぞ……)
パンパンッ
渚子「はーい、それじゃあ撮影始めるわよ!」
貴虎(このソファーに座ればいいのか?) スッ
箒「……」 スッ
渚子「ふたりともー、もっとくっついて」
貴虎「……こうか?」 スッ
渚子「うーん、ダメダメ! もっともっと!」
貴虎「……篠ノ之、少し我慢しろ」 スッ
ピタッ
箒(っ!? 貴虎が、くっついて……!)
貴虎(少し近すぎたか……?)
貴虎(まずいな……パーティーなどに出席したときも、ここまで女とくっついたことはなかった……)
貴虎(そのせいか、適切な距離がわからない……!)
129 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 22:19:33.24 ID:Jo4N+vyq0
パシャッ
渚子「そうそう、オトナな感じでいくわよ」
渚子「じゃ次! 呉島くん、篠ノ之さんの腰を抱いて!」
貴虎「……何!?」
渚子「だから、腰を抱いて!」
貴虎「……本気で言っているのか?」
渚子「早く!」
貴虎「……」 スクッ
箒「……」 スクッ
貴虎「……篠ノ之?」 チラッ
箒「……」 ソッ
貴虎「っ……」 ギュッ
箒「あっ……」
パシャッ パシャッ
渚子「いいねいいねー!」 パシャッ
渚子「はい次! 篠ノ之さん、呉島くんの首に腕を絡めて!」
貴虎(まだ続くのか……まずい、緊張して汗が……)
渚子「さぁ、やって!」 パチンッ
130 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 22:29:10.82 ID:Jo4N+vyq0
箒「……」 ギュッ
貴虎(っ……必然的に、篠ノ之と見つめ合う形に……)
箒「貴虎……」
貴虎「っ、篠ノ之……」
貴虎(なぜ、そんな潤んだ瞳をしている……どうして、そんな顔で俺を見る……!?)
パシャッ パシャッ
渚子「んー! いい画が撮れたわ!」
箒「終わった、のか……?」
貴虎「っ!」 バッ
箒「っ、貴虎……」
貴虎「すまない、篠ノ之」
箒「いや……」
箒(そんな、飛び退くように離れなくても……)
渚子「お疲れ様! その服はあげるから」
渚子「本当、今日はありがとね!」
「お疲れ様でーす」
貴虎「……帰るか」
箒「……あぁ、そうだな……」
131 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/07(日) 22:30:02.93 ID:Jo4N+vyq0
今日はここまで
続きはまた明日
132 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 19:58:21.49 ID:0inOOLUQ0
それじゃ、投下していく
133 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 19:59:31.88 ID:0inOOLUQ0
テクテク
貴虎「……」
箒「……」
貴虎(静かだ……いや、確かに俺と篠ノ之は、普段からあまりうるさく会話はしないが……)
貴虎(だが、この沈黙は……明らかに、いつものそれとは違う……)
貴虎「……」
箒「……」
箒(あんなに至近距離で見つめ合って……もし、ふたりきりだったら……)
箒(キ……ス……とか……っ!?)
ガツン!
箒「痛っ!」 グラッ
貴虎「っ、篠ノ之!」 ガシッ
箒「うっ……大丈夫だ」
貴虎「どうした? 足を挫いたか?」
箒「大したことない。つまづいただけだ」
貴虎「……ヒールが取れているぞ」
箒「なーに、ならもう片方のヒールも……」 バッ
貴虎「横着するな」 パシッ
箒「あっ……」
貴虎「タクシーを呼んでやる」
134 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 20:09:14.98 ID:0inOOLUQ0
箒「いや、わざわざそんな……必要ない」
貴虎「その足で歩けば、さらに痛めるぞ」
箒「でも……」
貴虎「……仕方ない」 スッ
箒「貴虎……?」
貴虎「おぶってやる。背中にのれ」
箒「……」 スッ
貴虎「……いくぞ」 スクッ
テクテク
箒「貴虎……ありがとう」
貴虎「気にするな。私も、別に気にしていない」
貴虎(そうだ、気にするな……背中の感触とか……)
貴虎(昔、光実にもやってやっただろう……それと何も変わらない……)
貴虎(気にするな……気にするな……!)
135 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 20:10:06.46 ID:0inOOLUQ0
その夜、IS学園
貴虎「……」 テクテク
貴虎「……ん?」
千冬「……」 テクテク
貴虎(織斑……そうだ、あの事を聞かねば……)
136 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 20:20:02.63 ID:0inOOLUQ0
貴虎「織斑」 ピタッ
千冬「何度言わせる、織斑先生だ」 ピタッ
貴虎「聞きたいことがある。妹はいるか?」
千冬「……それを聞いてどうする?」
貴虎「お前の妹を名乗る者に会った。その真偽を確かめたい」
千冬「……お前は、私のことを昔から知っているだろう」
貴虎「……あぁ」
貴虎(そうか……そういえば、この世界では、俺と織斑は幼馴染だったか)
千冬「その上で、その質問を私に投げかけると言うのだな?」
貴虎「……覚悟の上だ」
貴虎(この反応……何か事情があるのは、間違いない)
貴虎(ならば……ここで引き下がるわけにはいかん)
千冬「そうか……なら、はっきり言っておこう」
千冬「私に家族はいない」
貴虎「……そうか」
貴虎(事情はわからんが、話す気はなさそうだ……まぁ、いい)
貴虎(あの織斑マドカという女は、まともな存在ではない……それが分かれば十分だ)
千冬「……」
137 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 20:29:15.04 ID:0inOOLUQ0
次の日、1組の教室
真耶「この度、各専用機持ちのレベルアップを図るために、全学年合同のタッグマッチを行うことになりました」
千冬「各国でISの強奪が相次ぎ、先の文化祭でも、専用機が狙われる事件が発生した」
貴虎「……」
千冬「そこで専用機持ちは、より練度を上げる必要がある。以上」
貴虎(タッグマッチか……技術を上げる良い機会だ。だが……) チラッ
貴虎(あのとき感じた斬月の不調が、また起きないとも限らない……注意を怠らないでおこう)
138 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 20:30:02.08 ID:0inOOLUQ0
それから、昼休み
シャル「た、貴虎! お弁当作り過ぎちゃったんだけど……よかったら、どうかな?」
貴虎「弁当を……? ありがたいが、いいのか?」
シャル「うん、もちろんだよ」
貴虎「では、是非いただこう」
シャル「じゃあ、屋上に行こうか」
貴虎「構わん、行こう」
139 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 20:40:01.84 ID:0inOOLUQ0
屋上
シャル「はい、貴虎」 パカッ
貴虎「礼を言う……いただきます」 パクッ
貴虎「……ん、なかなかいい。デュノアは料理ができるようだな」
シャル「本当? ありがとう、貴虎」
鈴「いたいた、貴虎!」
シャル「あっ……」
鈴「さぁ、あたしの青椒肉絲も食べなさいよ」
貴虎「いや、今日はデュノアの弁当が……」
鈴「いいじゃない。ほら、美味しそうでしょ?」
貴虎(……まぁ、好意を無下にするのも良くないか)
貴虎「わかった。では、少しもらおう」 パクッ
貴虎「んっ……うまいな」
鈴「でしょー?」
貴虎「いや、正直驚いた……予想以上だ」
鈴「えへへ……」 チラッ
シャル「……」
鈴「……ふん」
バチバチッ
シャル「貴虎、卵焼きも食べてみて!」 ズイッ
鈴「はい、お茶もどうぞ!」 ズイッ
貴虎「……近い。というより、一体どうした? 様子がおかしいぞ」
140 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 20:50:15.73 ID:0inOOLUQ0
シャル「そ、それは……その……」
鈴「い、いつものことじゃない……?」
貴虎「そんなわけがあるか」
シャル「……あ、あのさぁ、貴虎」
貴虎「ん?」
シャル「えっと、その……一緒に戦いやすい相手って、どういうタイプなのかな?」
貴虎「一緒に……? あぁ、なるほど」
貴虎「つまり……タッグマッチに向けて、自己分析をしておこうということか」
シャル「う、うん。まぁ、そんな感じかな……」
貴虎「私は近接が得意だ。ならば逆に、パートナーは射撃が得意な者が良いだろう」
鈴「うんうん」
貴虎「凰はどうだ?」
鈴「あ、あたしは……いざってときに、助けてくれるっていうか……」 チラッ
鈴「必死で戦ってくれる、っていうか……」 モジモジ
貴虎「曖昧だな……デュノアは?」
シャル「ぼ、僕もやっぱり……鈴と同じだけど……」 チラッ
シャル「あっ! あと、機転が利くっていうか……」 モジモジ
貴虎「……」
貴虎(いや、さすがの俺でもわかる。凰とデュノアは多分、俺と組みたいのだろう)
貴虎(強い者を味方につけておけば、それだけ勝率が期待できるからな)
貴虎(だが……それでは成長に繋がらない。ここはふたりのためにも、躱させてもらおう……)
141 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 21:00:01.14 ID:0inOOLUQ0
それから、しばらく経って
貴虎の自室前
貴虎(あれから少し起動してみたが、斬月に不調は見られない) テクテク
貴虎(やはり、気のせいだったのか……?) ガチャ
貴虎「……ん?」
楯無「貴虎くん……」
貴虎「またお前か……勝手に私の部屋に入るな」
楯無「その……」
貴虎「……どうした? 何の用だ?」
楯無「……妹を、お願いします!」 パンッ
貴虎「……説明してくれ」
……
…………
楯無「えーっと、このコなんだけど……名前は、更識簪」 ピッ
楯無「あのね……ちょっと、その……暗いコなのよ」
貴虎「……それで?」
楯無「でもね、実力はあるのよ? 日本の代表候補生なんだから」
楯無「けど……」
貴虎「……けど、何だ?」
楯無「……専用機がないのよ」
貴虎「何……?」
楯無「それも……貴虎くんのせいで」
貴虎「……どういうことだ?」
楯無「簪ちゃんの専用機は、もうとっくに開発されてるはずだったの。けど……」
楯無「貴虎くんが来てから、斬月に人員を回されちゃったみたいで……」
142 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 21:10:35.27 ID:0inOOLUQ0
貴虎「……みたい?」
楯無「さすがの私も、そっちの事情はそれほど詳しくないの。こんな例、聞いたこともないし……」
貴虎(サガラ……あの男、一体どうやって斬月を用意したんだ……)
貴虎「……すまない、それは私の責任だ」
楯無「……で、今度のタッグマッチで、ぜひ簪ちゃんとペアを組んであげてほしいの」
楯無「このとーり!」 パンッ
貴虎「……待て、どうしてそうなる」
貴虎「私のせいで専用機が完成していないなら、そいつの私に対する印象は最悪だろう」
貴虎「というより、完成していないにもかかわらず、タッグマッチには出場が決定しているのか?」
貴虎「そもそも、なぜ私だ? 本人が望んだのか?」
楯無「言いたいことは分かるけど……こっちにも事情があるの」
貴虎「説明できないのか?」
楯無「……」
貴虎「……はぁ……」
貴虎「……いいだろう、わかった」
楯無「え!? それじゃあ、いいの?」
貴虎「私のせいで、そうなったと言うのなら、強くは言えん。それに、一応とはいえ、この間は世話になった」
貴虎「その借りを返そう」
楯無「ありがとう、貴虎くん!」
貴虎「では……私から誘えばいいのか?」
楯無「うん。でも……極力、私の名前は出さないでね」
貴虎「……わかった」
楯無「お願いね」
143 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 21:20:08.48 ID:0inOOLUQ0
次の日、1組の教室
貴虎(確か、あいつの妹がいるのは4組だったか。誘うのは、昼休みの方がいいだろう……) ガラッ
ラウラ「待っていたぞ、貴虎」
貴虎「ボーデヴィッヒ……朝からどうした?」
ラウラ「タッグマッチは当然、私と組むのだろうな?」
貴虎「……お前は私と決着をつけたいのではなかったのか?」
ラウラ「当然だ。私にとって、お前は唯一無二の宿敵[とも]……」
ラウラ「つまり、お前こそが私と組むに相応しい!」 ビシッ
貴虎「……」
ラウラ「これが申込書だ。さっさとサインをしろ」 ピラッ
貴虎「断る。悪いが、組む相手はもう決めている」
ラウラ「何!?」
箒「!?」
セシリア「!?」
箒(組む相手は、もう決めている……!)
セシリア(それは、つまり……!)
144 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 21:30:01.45 ID:0inOOLUQ0
ラウラ「私の宿敵[とも]でありながら、他のやつと組むだと……!」 ヴォン
貴虎(無双セイバー……) スッ
貴虎「……何!?」
貴虎(現れない……なぜ……!?)
ラウラ「ハァッ!」 ブンッ
貴虎(っ! まずい……!!)
ガシッ
千冬「……」ググッ
ラウラ「なっ!?」
千冬「肉の焦げる匂いは、焼肉屋だけで十分だ!」 ブンッ
クルッ
スタッ
ラウラ「教官……!」
千冬「席につけ。呉島もだ」
貴虎「……」
千冬「……聞こえなかったか、呉島」 ギロッ
貴虎「っ、あぁ……」
貴虎(やはりおかしい……確かに今、念じたはず……)
貴虎(斬月……お前に一体、何が起こっている……!?)
145 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 21:40:04.03 ID:0inOOLUQ0
それから、女子更衣室
箒「ふんふんふーん」 ニヤニヤ
箒(貴虎のやつ、タッグマッチの相手は決めていると言ったな)
箒(確かに、あいつの相方が務まるのは、私しかいないだろう!)
箒(まったく、貴虎め……そこまで言うなら、組んでやらないこともないぞ!) ニヤニヤ
セシリア「ふんふんふーん」 ニコニコ
セシリア(貴虎さんったら、既に相手は決めてあるですって)
セシリア(それはつまり、わたくしのことで違いありませんわ!)
セシリア(ついに貴虎さんと……!) ニコニコ
箒「やけにご機嫌だな、セシリア」
セシリア「あら、箒さん」
箒「調子はどうだ?」
セシリア「まぁまぁですわね。箒さんは?」
箒「まずまずかな」
箒(ふっ、セシリアのやつめ……私が貴虎と組むと知ったら、どんな顔をするやら)
セシリア「それは、よろしいですわね」
セシリア(ふふっ、箒さんったら……わたくしが貴虎さんに選ばれるとも知らずに)
箒「ではな、セシリア」
セシリア「えぇ、ご機嫌よう」
箒(勝った!)
セシリア(勝ちましたわ!)
146 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 21:50:01.46 ID:0inOOLUQ0
そのころ、4組の教室
貴虎「失礼する」 ガラッ
「あっ、1組の呉島くんだ!」
「4組にご用でしょうか?」
貴虎「更識簪と話がしたい。いるか?」
「えっと……」 チラッ
簪「……」 ピッ ピッ
貴虎(あいつか……) テクテク
貴虎(さて、姉の話が本当なら、あいつはきっと俺を恨んでいるだろう)
貴虎(果たして、どう切り出したものか……)
貴虎「……少しいいか?」
簪「……」 ピッ ピッ
貴虎「……私は呉島貴虎だ」
簪「……知ってる」 ピタッ
簪「用件は?」
貴虎「それは……」
貴虎(まぁ、正面からぶつかるのが、一番早いか)
貴虎「……タッグマッチトーナメントのことで、話がある」
貴虎「単刀直入に言おう。私と組んでほしい」
簪「イヤ」
貴虎(だろうな。だが、引き受けた以上、ここで引き下がるわけにはいかん)
147 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 22:00:07.23 ID:0inOOLUQ0
貴虎「……私とお前の間に、何があったかは聞いた。私に言いたいことは、多くあると思う」
簪「……」 ギロッ
貴虎「だが、それを踏まえた上で……私はお前と組みたい」
簪「……私には、あなたを殴る権利がある」
貴虎「……」
簪「けど、疲れるから……やらない」
貴虎(取りつく島もない、とはこのことか……今さらだが、厄介な依頼を引き受けたものだ)
貴虎「……わかった。邪魔をしたな」 スタスタ
貴虎(交渉において重要なのは、誠実な対応と……引き際)
貴虎(そして、相手の心を開くために必要なのは……自分を偽らず、信頼を得ること)
貴虎(更識の心は頑なだ。打ち解けるには、それ相応の時間をかけなければ……)
貴虎「……」 ピタッ
「どうしたの? 呉島くん」
貴虎「……いや、何でもない」
貴虎(待て……『誰かと仲良くなろう』と最後に思ったのは、一体いつだ?)
貴虎(仕事の繋がりで、凌馬や雅仁とは仲を深めたが……今回はそうはいかない)
貴虎(『友人』とは、どうやって作ればいい……?)
貴虎(……まずい、まったくやり方が思い浮かばない。理論はわかっても、具体的な行動が……)
貴虎(……とりあえず、積極的に話しかけてみるか)
148 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 22:10:01.50 ID:0inOOLUQ0
それから、整備室
簪「……」ピッ ピッ
簪(まだダメ……まだ、こんなものじゃ……)
簪(姉さんなら、もっと……!)
ピーッ
簪「……っ」
『エラー』
簪「……はぁ……」
簪「……斬月さえなければ、追いつけたのに……!」
簪「っ!」 ハッ
簪「……」 フルフル
簪「はぁ……」 スクッ
簪「……」 スタスタ
ウィン
貴虎「あっ」
簪「っ……」
貴虎「……奇遇だな」
簪「……」 プイッ
貴虎「……タッグマッチの話だが、もう一度、考え直してくれないか?」
簪「……」 スタスタ
149 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 22:20:00.70 ID:0inOOLUQ0
貴虎「待ってくれ、更識」 テクテク
簪「話しかけないで」 スタスタ
貴虎「お前の気持ちはわかっているつもりだ。だが、それを押してでも、私に協力してほしい」
簪「……何のつもり?」
貴虎「話している通りだ。私は……」
簪「どういう思惑があって?」
貴虎「……思惑などない。ただ、純粋に……共にタッグマッチに出ようと、誘っているだけだ」
簪「……大体、どうして私と組みたいの?」
貴虎「それは……」
貴虎(なんと答えればいい……姉の名前を出すわけにはいかないが……)
貴虎(……いや、偽る必要はないな。信頼を得るためには、まず俺が素直にならなければ)
貴虎「……友人になりたいからだ」
簪「っ、友人……?」
貴虎「そうだ。私は……」
簪「私は、あなたと友達になんて……」
簪「……友達に、なんて……」
簪「……なりたくない……」
貴虎「……そうか」
貴虎(……地味に傷つくな、今の一言は)
150 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 22:29:32.75 ID:0inOOLUQ0
それから、貴虎の自室
楯無「まさか、貴虎くんの方から呼んでくれるなんて」
貴虎「聞きたいことがある。あいつ……更識簪の専用機についてだ」
貴虎「完成していないと言っていたが、間に合いそうなのか?」
楯無「……正直、わからないわ」
貴虎「では……私が協力を申し出ることで、仲を深めることは可能だと思うか?」
楯無「それは……ちょっと難しいんじゃないかしら」
楯無「簪ちゃん……多分、独りで機体を組み上げるつもりなのよ」
楯無「私がそうしてたから、意識しちゃってるのね……気にしなくていいのに……」
貴虎「……確執があるようだな」
楯無「……ごめんね、私たち姉妹の問題に」
貴虎「兄弟姉妹とは、そういうものだ。私も以前、弟とぶつかり合ったことがあった」
楯無「……弟さん、いるんだ」
貴虎「あぁ、自慢の弟だ」
楯無「そっか……ありがとね、貴虎くん」
貴虎「……」
楯無「ところで、どう? 簪ちゃんの様子」
貴虎「難しいな。私と組む気はないと、はっきり言われてしまった」
楯無「あちゃー……ちなみに、どんな風に誘ったの?」
貴虎「友人になりたいと言った」
楯無「うわぁ、思った以上に直球」
貴虎「これに関しては、嘘偽りない私の気持ちを示したつもりだ」
楯無「……貴虎くんって、もしかして友達作るの、あんまり上手じゃない?」
貴虎「……うるさい」
151 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/08(月) 22:30:02.01 ID:0inOOLUQ0
今日はここまで
続きはまた明日
152 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 19:59:06.08 ID:McfG52Sw0
それじゃ、投下していく
153 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 20:00:02.13 ID:McfG52Sw0
そのころ、簪の部屋
簪「……」
『友人になりたいからだ』
簪(どうして私、答えに詰まっちゃったんだろう……)
簪(あの人と友達なんて……なりたくないに、決まってるのに……)
154 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 20:01:05.93 ID:McfG52Sw0
そして、開催日が迫る
「ねぇねぇ、聞いた?」
「なになに?」
「呉島くんの今度の専用機持ちタッグマッチのパートナー、4組の更識さんに毎日迫ってるらしいよ!」
「えー!? 嘘っ、なんでなんで!?」
……
…………
貴虎「待ってくれ、更識! 少しでいい、話を聞いてくれ!」 タッタッ
簪「ついてこないで……!」 タタタッ
……
…………
セシリア「貴虎さん……わたくしと組まなかったことを、後悔させてあげますわ……!」
セシリア「震えなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる鎮魂歌[レクイエム]で!!」
155 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 20:10:01.77 ID:McfG52Sw0
……
…………
鈴「だーかーらー! 右肩部ユニットを拡散衝撃砲に変更した換装装備[パッケージ]データを今すぐちょうだい!!」
鈴「3日で仕上げてよね!」
「ーーーー」
鈴「ハァッ!? できないじゃないわよ、やるのよ!!」 ピッ
鈴「見てなさいよ、貴虎……絶対に許さないんだから!」
……
…………
シャル「いくよ、リヴァイヴ……!」
シャル「今度の僕は、少し強敵だよ……貴虎!」
……
…………
ラウラ「……フッ」
ラウラ「私が見せてやろう、真の恐怖を……」
ラウラ「その全身に刻みつけてやるぞ、貴虎!」
……
…………
箒「……」 スクッ
箒「貴虎……!」 チャキッ
楯無「箒ちゃん、ゲットだぜぃ!」 ガシッ
箒「うわぁ!?」
楯無「へぇ、真剣で稽古かー」
箒「楯無先輩……えぇ、まぁ……」
楯無「でね、箒ちゃん。ちょっと話があって」
楯無「タッグマッチ、私と組みましょう!」
箒「……はぁ?」
156 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 20:20:44.31 ID:McfG52Sw0
それから、ところ変わって
楯無「まずは、箒ちゃんのフィジカルデータを調べるからね」
箒「……まぁ、それは構いませんが……」
楯無「よし、準備完了。じゃ、いくわよ」 ピッ
ゴォォォ……
楯無「……っ!? これは……」
箒「どうかしましたか?」
楯無「……おっぱい大きいのね。私、もしかしたらちょっと負けてるかも……」
箒「どこ見てるんですか!? 真面目にやってください!」
楯無「あははっ、ごめんごめん!」
楯無(どういうことかしら……この、箒ちゃんのIS適正……)
楯無(こんな短期間で、CからSなんて聞いたことがない)
楯無(鍵はやはり、篠ノ之束……)
157 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 20:21:31.31 ID:McfG52Sw0
そのころ、アリーナ
簪「……」
簪(同じ『更識』であることを、苦痛に感じたのは、いつからだろう……)
簪(顔も見つめられなくなったのは……)
簪「……」
簪(この飛行テストがうまくいけば、姉さんに……!)
簪「……よし」
簪「来て、打鉄弐式……!」 ピカーン
簪「今日こそは、絶対に成功させる……!」 ピッ ピッ
158 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 20:30:03.55 ID:McfG52Sw0
簪「……っ!」 ドウッ
ゴォォォ……!
簪「機体制御は大丈夫。あとは、ハイパーセンサーの接続、連動……」 ピッ ピッ
簪「姿勢保持スラスター、問題なし。展開時のポイントを調整」
簪「PIC干渉領域からズラして、グラビティヘッドを機体前方6センチ調整」
簪「それから、脚部ブースターバランスを、4マイナスで再転換……」
ボンッ!
簪「っ!?」
ビーッ! ビーッ!
簪「反動制御が利かない……どうして……!?」
簪「っ、あぁっ……!!」
ヒュゥゥ……
簪(お姉ちゃん……)
簪(イヤ……イヤだ……!)
簪(まだ……追いつけないの……?)
簪「……私、やっぱりダメだ……」
「それはどうだろうな」
ガシッ
簪「……え?」
貴虎「大丈夫か?」 ゴォォォ……
簪「どうして……?」
貴虎「あぁ……とりあえず、降りてから話そう」
159 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 20:40:02.42 ID:RVUDBfvaO
整備室
貴虎(今回、斬月に不調は見られなかった……あそこで、また何か起きていたら、俺も更識も落ちていたな)
貴虎(更識のことだけでなく、こちらも気にかけておかなければ……)
簪「あ、あの……」
貴虎「ん?」
簪「ありがとう……さっき、助けてくれて」
貴虎「あぁ……気にするな」
簪「ところで、どうしてあそこに?」
貴虎「……偶然だ」
簪「偶然?」
貴虎「そうだ、偶然だ」
貴虎(本当は、ずっと話しかけるタイミングをうかがって、最初から見ていたが……)
貴虎(これを言うと、ストーカーだと思われて、ますます距離が開きそうだ)
簪「……まぁ、いいけど」
貴虎「……あぁ、なんだ……少し話がしたい。時間をくれないか?」
貴虎「そうだな……こんな時間だし、食事でもしながら、とか……」
簪「……いいよ」
貴虎「っ、いいのか?」
簪「そっちから誘ってきたんでしょ」
貴虎「いや……まぁ、そうだが……」
貴虎「……なら、行こう」
簪「……うん」
160 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 20:50:48.17 ID:RVUDBfvaO
食堂
簪「いただきます」
貴虎「……いただきます」
簪「……」 パクパク
貴虎「……」 モグモグ
貴虎(……打ち解けるために食事に誘ったが、会話が浮かばない……失敗だったか?)
貴虎(だが、この誘いに乗ってきたということは、心を開き始めていると考えていいはず……)
貴虎(……今が攻め時か)
貴虎「更識、話がある」
簪「……」 チラッ
貴虎「もう何度も話したことだが……私とタッグマッチで組んでほしい」
貴虎「お前の事情は知っている。私との因縁も」
貴虎「そのことについて、私はどう詫びればいいかわからない」
簪「……」
貴虎「だが……勝手な話だが、私はお前といがみ合っていたくない」
貴虎「私たちの関係を、先へと進めたい」
貴虎「だから……」
簪「……いいよ」
貴虎「っ、本当か!?」
簪「タッグマッチで、あなたと組んであげる」
161 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 21:00:04.04 ID:RVUDBfvaO
貴虎「……礼を言う」
簪「うん……えっと、その……」
簪「……よろしく」 スッ
貴虎「……あぁ、よろしく頼む」 ギュッ
貴虎(ひとまず、目的は達成というところか)
貴虎(ここから当日までに、タッグとして満足のいく形まで持っていければいいが……)
貴虎(……いや、とりあえず今は、俺たちの関係が一歩前に進んだことを喜ぼう)
162 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 21:00:59.43 ID:RVUDBfvaO
それから、再び整備室
貴虎「さて……この問題を私が問うのは、私自身としても複雑だが……タッグを組んだ以上、問わざるを得ない」
貴虎「単刀直入に聞こう。専用機について、現在の状況を教えてくれ」
簪「……武装が、まだ未完成。それに稼働データも取れていないから、今のままじゃ実戦は無理」
貴虎「武装?」
簪「マルチロックオンシステムによる、高性能誘導ミサイル。それと、荷電粒子砲」
貴虎「そうか……」
貴虎「……はっきり言おう。私にできることはなさそうだ」
貴虎「私は、ISの扱いには、それなりに慣れているつもりだ」
貴虎「だが……ことシステムの面に関しては、素人もいいところだ」
貴虎「すまない……」
簪「……いいよ。そんな気はしてた」
163 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 21:10:25.17 ID:McfG52Sw0
貴虎「だが、私以外の人間なら……たとえば、整備課の生徒たちなら、何か打開策を見つけ出すかもしれん」
貴虎「見る限り、お前が他人を頼らずに、その専用機を完成させようとしていることは察するが……」
貴虎(本当は姉から聞いた話だが、それを言うわけにはいかん)
貴虎「……だが、タッグマッチまで時間もない。我々以外の人間の力を借りるのも、ひとつの手だと私は思う」
簪「……うん、そうしてみる」
貴虎「……いいのか?」
簪「あなたの言ってることは、正しいから」
貴虎「……ありがとう」
簪「ううん、こちらこそ」
簪(知らなかった。今まで、話そうと思ったこともなかったから)
簪(こんなにも真面目で、まっすぐな人だったんだ)
貴虎「それにしても……打鉄か」
簪「うん、打鉄弐式。打鉄を発展させた後継機で……」
貴虎「やはり良いな、打鉄は」
簪「……え?」
貴虎「このシンプルかつ和風の感触が、他のISに比べて特にいい」
貴虎「この学園には、量産型は打鉄とリヴァイヴの2種が配備されているが……普段の授業でも、私は打鉄ばかり使っている」
簪「そ、そうなんだ……」
簪(でも、ちょっと変わってるよね……)
164 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 21:20:02.24 ID:McfG52Sw0
そのころ、ところ変わって
箒「今日は、特訓に付き合っていただき、ありがとうございました」 ペコッ
楯無「いいのいいの。じゃあ、シャワー行きましょうか」 ニヤニヤ
箒「えっ!? いや……」
楯無「さぁさぁ。よいではないかー、よいではないかー」 グイッ
箒「引っ張らないでください! 自分で歩けますよ!」
箒「……」
箒(昔、こんな風に手を引いてもらっていた……)
箒(私があの人を、傷つけた……)
楯無「……何か考えごと?」
箒「っ! ……えぇ、ちょっと……」
箒「……姉のことを」
楯無「箒ちゃんって、お姉さん……束博士のこと、敬遠してる?」
箒「……嫌いではないです。専用機をくれたことも、感謝しています」
楯無「そう。だったら良かった」
楯無「やっぱり、家族は仲良くしないとね」
楯無(……他人のことは言えないけど)
165 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 21:30:04.98 ID:McfG52Sw0
箒「……でも、わからないんです。姉が何を考えているのか」
楯無「……わからないのは、恐い?」
箒「っ……」
楯無「……そうよね。そんなの、私もそうよ」
箒「えっ……?」
楯無「大丈夫。心配しなくても、きっとお姉さんは、あなたを大切に想ってくれてるから」
箒「……」
166 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 21:30:58.48 ID:McfG52Sw0
次の日、整備室
薫子「はーい!」
本音「えへへー、手伝いに来たよー」
貴虎「……」
本音「あれー? どうしたの、くれしー」
貴虎「私は整備課に協力を依頼したはずだが」
薫子「だから、こうして来たじゃない」
貴虎「……百歩譲って、黛はいい。問題は……」
貴虎「布仏、本当に整備できるのだろうな?」
本音「えー!? くれしー、ひどーい!」
貴虎「すまないが、普段のイメージからは全く想像できん」
薫子「安心して、呉島くん。こう見えて、結構やるんだから」
貴虎「……そうか。では、ありがたく力を借りよう」
167 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 21:40:03.99 ID:McfG52Sw0
簪「今日は、よろしくお願いします。本音も、急にごめんね」
本音「なんで謝るのさー? 今日はかんちゃんのために、いーっぱい頑張るからねー」
簪「ありがとう」
薫子「よーし! じゃあ時間もないし、いっちょやりますか」
貴虎(少し不安だが……俺と更識だけでやるより、こうして整備課の手を借りた方が、素早く確実に終わるだろう)
貴虎(あと必要なのは……あの女から借りた、この機体データか) チラッ
……
…………
薫子「貴虎くーん、こっちに特大レンチと高周波カッター持ってきて!」
貴虎「あぁ、受け取れ」 パシッ
「データスキャナーと、超音波検査装置をー」
貴虎「これだ」 パシッ
「呉島、ジュース飲ませろ」
貴虎「どさくさ紛れに、何を言っている」
本音「くれしー、お菓子とってー」
貴虎「勝手に取れ!」
薫子「購買でシャンプー買っといてー」
貴虎「いい加減にしろ!!」
168 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 21:49:35.17 ID:McfG52Sw0
……
…………
薫子「ふぃー……まぁ、こんなもんかな」
本音「いぇーい」
簪「あ……ありがとうございました」 ペコッ
簪「私ひとりじゃ、できなくて……本当に、ありがとうございました!」
薫子「気にしないでよ。同じ学園の仲間じゃない」
簪「っ……はい!」
貴虎「……」
薫子「さーて……それじゃあ、私たちは先に上がらせてもらおうかしら」
本音「くれしー、片付けよろしくねー」
貴虎「あぁ、任せておけ」
貴虎「……ひとまずは、これで大丈夫だな」
簪「うん、みんなのおかげ」
貴虎「あとは、我々のコンビネーション次第といったところか」
簪「っ、コンビネーション……」
簪(私と、貴虎の……ふたりの相性……)
簪「……貴虎」
貴虎「ん?」
簪「私、頑張るから」
貴虎「……あぁ、期待している」
貴虎(もう、更識との関係を憂える必要はなさそうだ)
貴虎(残る問題は、斬月のみか……)
169 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 22:00:05.46 ID:McfG52Sw0
その夜、貴虎の自室
貴虎(斬月の不調は、起こるときと起こらないときがある。その違いがわかれば、少しはマシだが……) ガチャ
楯無「チャオ」
貴虎「……前にも言ったが、それは私のシャツだ」
貴虎「もう、勝手に入るのは構わん……だから、せめてまともな服を着てくれ……」
楯無「貴虎くーん、マッサージしてー」 ゴロン
貴虎(この女には、何を言っても無駄なのか……)
楯無「……ねぇ、貴虎くんって、兄弟仲いい?」
貴虎「兄弟仲……?」
貴虎「……悪くはない、と思っている」
楯無「この前は、ぶつかり合ったとか言ってなかった?」
貴虎「以前はな。過去に一度、私のせいで、弟と袂を分かつことになってしまった」
楯無「貴虎くん、何かしたの?」
貴虎「……理想を押しつけた」
貴虎「ずっと海外にいた両親に代わって、私が弟の教育を受け持ってきた。弟の手本になりたいと、日頃から努めていた」
貴虎「正しさと、責任と、誇りのある生き方を学んでほしいと」
貴虎「だが……私は、弟を理解してやれなかった」
170 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 22:09:57.11 ID:McfG52Sw0
楯無「……」
貴虎「ノブレス・オブリージュ。優れた者ほど、真っ先に犠牲を払わなければならない」
貴虎「それこそが、本当の名誉だと……私は、弟に理屈ばかり押し付け、私の影を背負わせた」
……無駄なものを切り捨てることで、お前の人生は完成されるんだ……
貴虎「そのために、弟は道を誤った……私が弟を、追い詰めてしまった」
楯無「……辛かったね」
貴虎「……いや、本当に辛かったのは……私ではなく、弟だ」
楯無「……わかるよ、貴虎くんの気持ち」
楯無「大事だから、特別だから、厳しく接してしまう」
楯無「愛してるからこそ、そのコのためを思って『正しさ』を示してしまう」
楯無「そのコにとっての『正しさ』は、もっと別にあるかもしれないのにね……」
貴虎「……お互い、苦労するな」
楯無「……本当に、ね」
171 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 22:10:40.01 ID:McfG52Sw0
そのころ、ところ変わって
簪「……」 テクテク
簪(どうしちゃったんだろう、私……どうして、カップケーキなんて……)
簪(……貴虎、食べてくれるかな)
『1025』
簪(確か、あそこが貴虎の……)
ガチャ
簪(っ、誰か出てくる……!) サッ
172 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 22:19:59.42 ID:McfG52Sw0
貴虎「さっさと出ていけ」
楯無「いいじゃない、マッサージくらいしてくれたって」
貴虎「本当にしてほしいなら、次からはもっとまともな格好をしてこい」
簪(えっ、姉さん……?)
楯無「もう……ところで、どう? 簪ちゃんの機体、何とかなった?」
貴虎「あぁ、おかげで間に合った」
楯無「私の機体データ、役に立ったでしょ?」
簪(っ!? どういう、こと……!?)
簪(今までの……全部、姉さんが……!?)
簪「っ……」 ポロっ
簪「うっ……うぅ……!」 ポロポロ
簪「……」 ダッ
タタタッ
貴虎「……ん?」
楯無「どうかした?」
貴虎「いや……」
貴虎(今、誰かいたような……気のせいか?)
173 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 22:29:24.52 ID:McfG52Sw0
次の日、トーナメント開会式
楯無「どうも、皆さん。今日は、専用機持ちのタッグマッチトーナメントでーす!」
ワーッ!
楯無「出場生徒の皆さんは、日々の訓練の成果を存分に発揮し、全力で挑みましょう」
楯無「専用機を持っていない生徒の皆さんにとっては、試合内容はとても勉強になると思います」
楯無「しっかりと観ていてください」
楯無「それでは、実りのある時間となるよう期待を込めて、開会の挨拶とさせていただきます」
楯無「とまぁ、堅苦しいのはこの辺にして……」
楯無「お待ちかね、対戦表を発表しまーす!」
ピッ
箒「おぉっ!」
箒(1戦目から貴虎と当たるとは……!)
箒(ふっ……覚悟しておけ、貴虎!)
貴虎「……」 キョロキョロ
貴虎(更識がいない……どこへ行った?)
174 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/09(火) 22:30:01.65 ID:McfG52Sw0
今日はここまで
続きはまた明日
175 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 20:09:09.14 ID:GZZTtReK0
それじゃ、投下していく
176 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 20:10:03.08 ID:GZZTtReK0
そのころ、整備室
簪「……」
『私の機体データ、役に立ったでしょ?』
『あぁ、おかげで間に合った』
簪(貴虎も、最初から姉さんの指示で……)
簪(……私は、あの人に勝てない。勝てっこない……)
簪(とにかく、行かなきゃ……今日だけは……)
ドーン!!
ビーッ! ビーッ!
簪「っ!? 何、今の衝撃……」
177 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 20:11:00.50 ID:GZZTtReK0
ところ変わって
真耶「織斑先生、襲撃です!」
千冬「こいつは……」
真耶「以前に現れた無人機と同じもの……いえ、発展機だと思われます」
千冬「数は?」
真耶「5機です。各アリーナのピットに出現」
真耶「待機中だった、専用機持ちの生徒が襲われています!」
千冬「くそっ……早すぎる」 ボソッ
真耶「えっ……?」
千冬「教師は生徒の避難を優先。戦闘教員は全員、突入用意!」
真耶「っ、了解!!」
千冬(やってくれるな……だが、甘く見るなよ)
178 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 20:20:04.12 ID:GZZTtReK0
アリーナ
ゴーレムA「……」 バシュン!
鈴「っ!」 サッ
鈴「はっ!」 バシュン!
ドカーン!
ゴーレムA「……」 ドウッ
鈴「っ、確かに当たったのに……」
セシリア「鈴さん、下がって!!」 ドウッ
セシリア「はぁっ!」 バンッ!
ガチャンッ
ヒュゥゥ……!
ゴーレムA「……」 バシュン! バシュン!
ドカーン!
セシリア「っ! ビットが……!!」
鈴「何なのよ、コイツ……!?」
179 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 20:20:33.05 ID:GZZTtReK0
別のアリーナ
ゴーレムB「……」 ブンッ
ラウラ「ハッ!」 ヴォン!
ガキィィ……!
ゴーレムB「……」 ググッ
ラウラ「くっ……!」
ゴーレムB「……!」 ガキン!
ラウラ「何っ!?」
ゴーレムB「……」 キィィ……!
シャル「ラウラ、下がって!」 ドウッ
ゴーレムB「……」 バシュン!
シャル「くぅっ……!」
180 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 20:30:08.14 ID:GZZTtReK0
整備室
簪「一体、何が起きて……」
ヒュゥゥ……
ドーン!!
簪「ひゃっ!」
ゴーレムD「……」
簪「なに……なんなの……!?」
ゴーレムD「……」 ギロッ
ズシン ズシン
簪(イヤ……助けて、誰か……!)
ゴーレムD「……」 グワッ
簪「っ、貴虎!!」
「呼んだか?」
ゴーレムD「!?」 クルッ
貴虎「ハァッ!」 ズバッ
ゴーレムD「……!」 グラッ
簪「あっ……貴虎……!!」
181 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 20:46:01.27 ID:GZZTtReK0
ゴーレムD「……」 ドウッ
貴虎「逃すか」 ドウッ
ゴォォォ……!
貴虎「随分と空高く逃げるな。だが……」
ゴーレムD「……」 クイッ
貴虎「……ん?」
バチッ
貴虎「っ、何!?」
バチッ
バチバチッ
貴虎「斬月……!」
ゴーレムD「……」 ニヤッ
貴虎「っ! お前は、なぜ……!!」
シュゥゥ……
貴虎(斬月が、消えていく……!)
貴虎(ダメだ……落ちる!!)
貴虎「うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」
ヒュゥゥ……
貴虎(終わるのか……俺は、ここで……)
貴虎(また、何も守れずに……!)
182 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 20:54:01.24 ID:GZZTtReK0
簪「貴虎!!」 ゴォォォ……!
貴虎「っ、更識!!」
ガシッ
簪「貴虎、大丈夫!?」
貴虎「……あぁ、何とか……」
貴虎「……今度は、お前に助けられたな」
簪「貴虎……私も、一緒に戦う!」
貴虎「あぁ……礼を言う」
貴虎「それと、すまないが、一旦地上に降ろしてくれ」
ゴーレムD「……」 ドウッ
簪「っ、来る!!」
貴虎「ある程度の高さなら、受け身が取れる! ギリギリまで引きつけたら、俺を落とせ!!」
簪「でも……!」
貴虎「心配するな。俺も、お前も……」
貴虎「更識、お前ならできる!!」
簪「っ! ……わかった、やってみる!!」 ドウッ
183 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 20:55:01.48 ID:GZZTtReK0
別のアリーナ
ゴーレムC「……」 ブンッ ブンッ
箒「はっ!」 ガキン! ガキン!
楯無「もらったわ!」 ドウッ
グサァッ!
ゴーレムC「……!」 ググッ
楯無「っ、なんて硬い……!」
楯無「箒ちゃん、背部展開装甲オン! 私を押して!!」
箒「は、はい!」 ドウッ
184 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 21:03:02.95 ID:GZZTtReK0
箒「楯無さん!」 ガシッ
楯無「今よ!!」 ゴォォォ……!
ゴーレムC「!」
楯無「このまま無人機の装甲を突き破るの!」
箒「ですが……!」
楯無「いいから、やりなさい!!」
ゴーレムC「……!!」 ガシッ
楯無「くっ……これでも、喰らいなさい!!」 バババババッ
ゴーレムC「!!」
楯無「まだまだ……お姉さんの奥の手は、これからよ!」 ガチャン
バシャッ!
ゴゴゴゴ……!
箒(っ、装甲が……!)
ゴーレムC「……」 ブンッ
ザクッ
楯無「っ……箒ちゃん、全て防御に回しなさい!」
楯無「巻き込まれるわよ!!」
箒「でも……!」
楯無「大丈夫。お姉さんは、不死身なのよ……!」 ガチャン
楯無「ミステリアス・レイディの最大火力、受けてみなさい!!」 ゴゴゴゴ……!
箒「っ! ダメ!!」
楯無「ミストルテインの槍、発動っ!!」 ブンッ
キン……ッ
ドガーン!!
185 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 21:11:02.63 ID:GZZTtReK0
……
…………
貴虎「っ、今の爆発は……」
ゴーレムD「……」 ブンッ
簪「危ない!」 ガキン!
簪「ここは私が!」
貴虎「……すまない、任せる!」
簪「うん、任せて」 ドウッ
ゴーレムD「……」 ドウッ
簪「貴虎は、傷つけさせない……!」
貴虎「更識……」
貴虎「くっ……来い、斬月!」
シーン……
貴虎(やはり無理か……よりによって、こんなときに……!)
貴虎(何か、他に使える装備は……) ピッ ピッ
貴虎「っ!? 何だと……!!」
貴虎(消えている……一部のロックシードが……)
貴虎(メロン、ブドウ、イチゴ、マンゴー……どれも、この世界に来てから、俺が使ったアームズばかりだ……)
貴虎(一体、何が起きている……!?)
186 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 21:12:08.17 ID:GZZTtReK0
ところ変わって
真耶「敵ISの腕部から、未知のエネルギー放出を確認!」
真耶「シールドバリア展開に障害が……っ、絶対防御が無効化されています!!」
千冬「対IS用IS、というわけか……!」
187 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 21:21:01.89 ID:GZZTtReK0
アリーナ
ゴーレムD「……」 バババババッ
簪「っ……」 サッ
簪(さっきの爆発は……)
簪(望遠システム、作動)ピッ
楯無『……』 グタッ
簪「っ! あっ……!!」
簪(そんな……姉さん……!?)
簪「うそっ……イヤッ!!」
ゴーレムD「……」 バシュン! バシュン!
簪「よくも……よくも!!」 ドウッ
簪「うわぁぁああああ!!」 ブンッ ブンッ
ゴーレムD「……」 ガキン! ガキン!
簪「あぁぁぁああああああ!!!」 ブンッ!
ゴーレムD「……」 スッ
ガキィィ……!
キンッ!
簪(っ! 薙刀が……!!)
簪「まだ!!」 ガシッ
ゴーレムD「!」
簪「荷電粒子砲、展開!」 ガチャン
188 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 21:30:13.37 ID:GZZTtReK0
簪「許さない……許さない!!」 キィィィ……!
バシュン! バシュン!
ゴーレムD「……」
ヒュゥゥ……
ドーン!
ゴーレムD「……」 ギギギギ……
簪「コア! あれを吹き飛ばせば……!」 カチッ
シーン……
簪「っ、どうして!?」
打鉄弐式『ウェポンパワー:0%』
簪「そんな……」
ヒュゥゥ……
ドンッ!
ゴーレムE「……」
貴虎「っ! 更識、後ろだ!!」
簪「っ!?」
ゴーレムE「……」 バシュン!
簪「あぁぁ!!」 バタッ
貴虎「更識!! くっ……!」
ゴーレムD「……」 ギロッ
貴虎「っ、今度は俺か……」
ゴーレムD「……」 ズンズン
貴虎「斬月……!」
シーン……
189 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 21:40:02.37 ID:GZZTtReK0
貴虎「くっ……」
貴虎(やはり、駄目なのか……!?)
貴虎(……いや、ここで折れるわけにはいかない!)
貴虎「斬月、お前が必要だ!!」
貴虎「二度と諦めない! 悪意に屈しない! その誓いを果たすために!!」
貴虎「頼む! 俺の声に……応えてくれ!!」
シーン……
……キラッ
貴虎(っ、この光は……!)
ウィィィン……
カチャン
貴虎(っ! 戦極ドライバー……!!)
貴虎「そうか……これがお前の意地か、斬月」
貴虎「……あぁ、十分だ。これさえあれば……!」
ゴーレムD「……」 ガシッ
貴虎「ぐうっ……!!」
ゴーレムD「……」 ブンッ
貴虎「うわぁぁああああ!!」 バンッ!
簪「貴虎!!」
簪(もうダメ……やっぱり、無理だったんだ……)
簪(私、なんて……)
簪(貴虎……ごめんなさい……)
簪(助けられなくて……役立たずで……)
簪(ごめん、なさい……)
190 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 21:50:07.40 ID:GZZTtReK0
ゴーレムE「……」 ズンッ ズンッ
簪「……」
簪(ヒーローなんて……この世に、いない……)
ゴーレムE「……」 ブンッ
簪「っ!!」 ギュッ
グサァ……
簪「……え?」
楯無「くうっ……」 ボロッ
簪「お姉、ちゃん……!」
楯無「……」 バタッ
簪「っ、お姉ちゃん!!」
簪「お姉ちゃん……お姉ちゃん!!」
楯無「……そう呼ばれるの、何年ぶりかしら……」
簪「どうして、こんな……」
簪「……もう、無理なんだよ……」
楯無「無理じゃないわ……」
簪「無理だよ……この世にヒーローなんか、いないんだよ……!!」
191 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 22:00:04.04 ID:GZZTtReK0
「いや、それは違う!!」
簪「えっ……?」 クルッ
貴虎「俺は知っている! 本当のヒーローを!!」
貴虎「どんな絶望にも屈しず、希望を追い続けた男を!」
貴虎「どんな悪意にも屈しず、全てを救った英雄を!!」
簪「貴虎……」
貴虎「更識、ヒーローはいる」
貴虎「それは力を持つ者ではない。都合のいい神でもない」
貴虎「最後まで諦めず、足掻き続ける者……それがヒーローだ!!」
簪「っ!!」
簪(あぁ、私は……)
簪(自分はダメだって決めつけて……誰かの助けを待ってるばかりで……!)
簪「私は、卑怯者だ……!!」
楯無「……いいじゃない。弱くても、汚くても」
楯無「卑怯でも、みっともなくても……だって、人間なんだもの」
簪「っ、お姉ちゃん……」
楯無「だからね、簪ちゃん……弱さも、小ささも、受け入れなさい」
楯無「受け入れたら、立ち上がれるわ」
192 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 22:10:02.31 ID:GZZTtReK0
簪「弱さを……受け入れる……」
貴虎「そうだ、更識……変身しろ!!」
簪「っ! 変、身……?」
貴虎「俺もかつて弱かった……いや、弱さを受け入れることが、できていなかった」
貴虎「ノブレス・オブリージュ。高貴なる者には、背負うべき義務がある」
貴虎「かつて俺は、自分の弱さのために、その責務を果たせなかった」
貴虎「だが……ある男が、俺に言った」
貴虎「人は変わることができる。それを諦めるなと」
貴虎「どんな過去を背負っていようと、新しい道を探し、先へ進むことができると!」
簪「新しい、道……」
貴虎「更識、今の自分が許せないなら、新しい自分に変われ」
貴虎「変身しろ、更識!!」
簪「っ!! 私は……私は……!」
楯無「……大丈夫よ、簪ちゃん。絶対にできるわ」
楯無「だって……私の自慢の妹だもの」 ニコッ
簪「……うん」
簪「ありがとう……お姉ちゃん、貴虎」
193 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 22:20:19.22 ID:GZZTtReK0
ゴーレムE「……」 ドウッ
簪「っ……いってくるね」 スクッ
楯無「簪ちゃん……これ、お守り……」 スッ
簪「アクアクリスタル……?」
楯無「とっておきのときに、使いなさい」
楯無「頑張れ……1年生!」 ニコッ
簪「……うん!」
貴虎「更識、もう一機は任せろ!」
簪「お願い、貴虎!」 ドウッ
ゴォォォ……!
貴虎「フッ……さて」 チラッ
ゴーレムD「……」
貴虎「待たせたな。これから、思う存分相手をしてやる」
楯無「カッコつけちゃって……見たところ、斬月が不調みたいだけど?」
貴虎「戦う手段は、ひとつだけではない」
貴虎「よく見ておけ。私の、アーマードライダーとしての姿を」
楯無「アーマード、ライダー……?」
貴虎「変身」 カチャ
ガチャッ
キュイン
『スイカ』
ジジジジ……
ヒュゥゥ……
194 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 22:30:36.61 ID:GZZTtReK0
楯無「今度はスイカ? 随分と大きいじゃない」
貴虎「そうでなければ、こいつには対処できまい」
ガチャッ
キュイーン
『ロックオン』
プォォォ……
ザシュッ
『ソイヤッ!』
ヒューン
ズドン!
楯無「っ!? 貴虎くん!」
貴虎「慌てるな、私はこの中だ」
ガシャッ
ウィィィン……
『スイカアームズ!』
ガチャン!
ガコーン!
『大玉・ビッグバン!!』
楯無「っ、スイカが変形して……ISに?」
貴虎「あぁ、似たようなものだ」
『ヨロイモード!』
貴虎(久しぶりだな……まさか、この世界でアーマードライダーに変身する日が来るとは)
貴虎(本来なら、使ったロックシードが全て消失しているという現状、新たなアームズの使用は控えるべきなのだろう)
貴虎(だが、ISとしての斬月が使えない今、この状況を打破するには……これにかけるしかない!)
貴虎「いくぞ……!」 グッ
195 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/11(木) 22:31:15.16 ID:GZZTtReK0
今日はここまで
続きはまた明日
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/11(木) 22:36:59.89 ID:S+p5J+Mu0
わかっていたが、アツい流れだな 乙。
197 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/12(金) 20:00:08.12 ID:vDg07YwJ0
それじゃ、投下していく
198 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/12(金) 20:01:04.18 ID:vDg07YwJ0
ゴーレムD「……」 バシュン!
貴虎(スイカ双刃刀!) ブンッ
ガキン!
ゴーレムD「……」 ブンッ
貴虎「ハッ!」 ブンッ
ガキィィ……!
ゴーレムD「……」 ググッ
貴虎「っ……舐めるな!」 ドンッ
ゴーレムD「ッ……」 グラッ
貴虎「ハァッ!」 ズバッ
ゴーレムD「!」
貴虎「フンッ!」 ザシュッ
ゴーレムD「!!」
貴虎「まだだ!」 ズバァッ!
ゴーレムD「……」 ヨロヨロ
貴虎「……っ!」 ジャキッ
ゴーレムD「……」 ドウッ
貴虎「甘い!」 ピッ
『ジャイロモード!』
ウィィィン……
ガチャン!
貴虎「逃げられると思うな……!」 ドウッ
199 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/12(金) 20:10:01.76 ID:vDg07YwJ0
ゴォォォ……!
ゴーレムD「……」 バシュン! バシュン!
貴虎「……」 サッ サッ
貴虎「その厄介なブースターは、破壊させてもらおう」 カチッ
バババババッ
ドカーン!
ゴーレムD「!」 ヒュゥゥ……
貴虎(このまま、重力に任せて押しつぶす!) ピッ
『大玉モード!』
ウィィィン……
ガチャン!
貴虎「ハァァアアアアッ!!」
ヒュゥゥ……
ズドーン!!
ゴーレムD「……」 ビクッビクッ
貴虎「……」 ピッ
『ヨロイモード!』
ウィィィン……
ガチャン!
貴虎「終わりだ」 スッ
ザシュッ
ジャキン
『ソイヤッ!』
ドンッ!
ヒュンヒュン……!
『スイカスカッシュ!!』
200 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/12(金) 20:20:10.13 ID:vDg07YwJ0
貴虎「……っ!」 ドウッ
貴虎「ハァッ!!」 ズバァッ!
ゴーレムD「……」
ギギギギ……
ドガーン!!
貴虎「ふん……」 カチッ
シュワァァ……
楯無「さすがね、貴虎くん」
貴虎「……まぁ、こんなものだ」
貴虎「それよりも……」 チラッ
貴虎(更識、そっちは大丈夫か……?)
201 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/12(金) 20:21:06.49 ID:vDg07YwJ0
上空
ゴーレムE「……」 バババババッ
簪「くっ……」 サッ
簪「打鉄弐式、マニュアル誘導システム、起動!」 ピッ
簪「『山嵐』の弾道ミサイル数48! 全ての軌道、マニュアル制御開始!」
ガチャン!
簪「力を貸して、打鉄弐式!!」 カチッ
ドドドドド……!
バシュゥゥ……
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