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貴虎「何? 再びISの世界へだと?」
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2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/26(火) 20:12:36.76 ID:yLw3vi4+O
懐かしい
期待
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 20:59:12.42 ID:rpk+8QQG0
『プロローグ』
貴虎(森の脅威が去って早5年……沢芽市も順調に復興してきている)
貴虎(あれから、メガへクスの襲来、供界の企み、雅仁との決着……多くの困難があった)
貴虎(だが、その度に乗り越えてきた。世界を蝕む悪意には二度と屈しない、その誓いを胸に……)
貴虎(アイム……あいつらも、トルキア共和国での自由を掴んでいるだろうか)
貴虎(そういえば……あのときも、お前に助けられたな)
貴虎(葛葉紘汰……お前のおかげで、俺は変わることができた。絶望に屈しない心を、諦めない心を……お前から学んだ)
貴虎(お前のおかげで、俺は『変身』できたんだ)
『貴虎……』
貴虎(こうして、お前のことを思い出すと……今もお前の声が聞こえてくるようだ)
『貴虎……貴虎……!』
貴虎(それにしても、今日はやけにハッキリ聞こえるな。もしかして、私も少し疲れているのか……)
『貴虎っ!』
貴虎(……ん?)
紘汰(神)『貴虎ぁっ!!』
貴虎「うわぁっ!?」
紘汰(神)『何度も呼びかけたのに、無視するなよ……』
貴虎「葛葉紘汰……っ!? お前、どうしてここに……」
紘汰(神)『実は、貴虎に聞きたいことがあってな。急を要するから、こうして直接戻ってきたんだ』
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 21:10:12.65 ID:rpk+8QQG0
貴虎「何かあったのか……っ! まさか、また何か侵略者が……」
紘汰(神)『違う。というより、そもそもオレのことでも、この地球に関することでもない。貴虎自身に関することなんだ』
貴虎「何? 私自身に……?」
紘汰(神)『こことは別の宇宙、そこに存在する別の地球の話だ』
貴虎「別の……?」
紘汰(神)『その星が異様に歪んでいて……関係ないとはいえ、気になるから調べてみた』
紘汰(神)『そうしたら……見つけたんだ。その星に隠された、いびつな過去が』
貴虎「どういうことだ? まるで要領を得ないぞ」
紘汰(神)『……その地球には存在しないはずの貴虎が、確かに「存在していた」としか思えない痕跡があった』
貴虎「っ……」
紘汰(神)『ある一定の期間だけ、貴虎の存在が捻じ込まれ、そして隠された……そうとしか思えない、時空の歪みを見つけたんだ』
貴虎「まさか、その地球とは……」
紘汰(神)『貴虎……「IS」って言葉に、聞き覚えはあるか?』
貴虎「っ!」
貴虎(IS……あぁ、ISだと……!)
貴虎(篠ノ之箒、セシリア・オルコット、凰鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ、織斑千冬……!)
貴虎(忘れるはずがない! あれは……)
貴虎「……あぁ、覚えている。はっきりと」
紘汰(神)『そうか。なら、話が早いな』
貴虎「どうした? まさか、あいつらに何かあったのか!?」
紘汰(神)『誰のことかわからないけど、まずいのは人じゃなくて世界の方なんだ』
貴虎「世界?」
紘汰(神)『貴虎、向こうで何があったのか……話してもらえるか?』
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 21:20:07.73 ID:rpk+8QQG0
……
…………
貴虎「……というわけだ」
紘汰(神)『サガラ……間違いなくそのせいだな』
貴虎「何かわかったのか?」
紘汰(神)『多分、貴虎は長く居過ぎたんだ。あっちの世界に』
紘汰(神)『そのせいで、貴虎の存在は、あの世界に深く刻み込まれてしまった。それをサガラが、無理矢理いなかった状態に戻そうとして……』
貴虎「……歪みが生じた、のか」
紘汰(神)『地震と同じ、って例えるとわかりやすいか。歪んだプレートが力を溜め込んで、それが一定のラインを超えると……』
貴虎「爆発的なエネルギーを放出する……っ! まさか、あの世界も!?」
紘汰(神)『可能性は捨てきれない』
貴虎「どうすればいい!?」
紘汰(神)『手はある。もう一度、あの世界にいくんだ』
貴虎「だが……そんなことをすれば、さらに歪みが……」
紘汰(神)『そして、今度は修正しない』
貴虎「……何?」
紘汰(神)『貴虎の存在を否定せず、正しいものとして組み込むんだ。そうすれば、歪みにはならない』
貴虎「だが、それは……あの世界そのものを、変えるということではないのか?」
紘汰(神)『そうだ。けど、これ以外に手はない』
貴虎「……」
紘汰(神)『貴虎、決断は委ねるよ』
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 21:29:31.44 ID:rpk+8QQG0
貴虎「……やろう」
紘汰(神)『……』
貴虎「もう二度と、俺は世界を見捨てない」
紘汰(神)『貴虎……』
貴虎「今度こそ、諦めず……絶望せず、世界を救う!」
紘汰(神)『……わかった。それじゃあ、準備ができたら教えてくれ』
貴虎「準備?」
紘汰(神)『ミッチに挨拶とか、いろいろ済ませておいた方がいいだろ?』
貴虎「……そうだな、礼を言う」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 21:30:09.05 ID:rpk+8QQG0
……
…………
貴虎「光実」
光実「どうしたの兄さん、改まって」
貴虎「また……しばらくの間、ここを離れることになった」
光実「また、トルキア共和国に?」
貴虎「いや、もっと遠いところだ……」
光実「……兄さん?」
貴虎「連絡も取れないし、いつ帰れるかもわからない。だが……」
光実「……うん、わかった」
貴虎「光実?」
光実「大丈夫だよ、兄さん。ここには僕だけじゃない、ザックや凰蓮さんたちもいる」
光実「だから……安心して。こっちのことは、僕たちに任せて」
貴虎「そうだな……ありがとう、光実」
光実「頑張ってね、兄さん」
貴虎「あぁ、行ってくる」
光実「いってらっしゃい」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 21:40:18.72 ID:rpk+8QQG0
……
…………
紘汰(神)『もういいのか?』
貴虎「あぁ、やってくれ」
紘汰(神)『よし……!』バッ
貴虎(あのときと同じだ……体が、光の粒子に溶けていく……)
紘汰(神)『貴虎。お前の存在を、あっちの世界に刻みつけるために……しばらくの間、向こうの世界にいてもらうことになる』
貴虎「問題ない」
紘汰(神)『歪みが広がらないよう、貴虎が消えた時間の近くに転移させる。こっちとは経過した時間が違うから、注意した方がいい』
貴虎「わかった」
紘汰(神)『あと、何かあっても、オレがサポートするから安心してくれ』
貴虎「心強いな」
紘汰(神)『ただ……ひとつ心配なのは、貴虎が言ってた娘たちの「記憶」だ』
紘汰(神)『貴虎が向こうの世界に現れたとき、彼女たちの記憶が戻るか……それとも、消えたままなのか。それはオレにもわからない』
貴虎「……いいさ。消えたままなら、また1から新たな関係を築けばいい」
紘汰(神)『……あぁ、貴虎ならできるよ』
貴虎「ありがとう……行ってくる」スー……
パッ
紘汰(神)『頼んだぞ、貴虎……』
……
…………
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 21:52:17.39 ID:rpk+8QQG0
『第一話 再会とアクシデント』
パッ
貴虎(久しぶりの異世界か……随分と広大だな)
貴虎(辺り一面、何もない……まるで空の彼方にいるようだ)
貴虎(それに、やけに下から風を感じる……って!?)
貴虎「……なぜ俺は落ちているんだ!?」
貴虎「うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」 ヒューン
紘汰(神)『悪い、貴虎! 少し座標がズレたみたいだ』
貴虎「葛葉!? なぜ声が……」
紘汰(神)『声だけそっちに飛ばしてるんだ。大丈夫か、貴虎?』
貴虎「大丈夫なわけがあるか!! このままでは……!」
紘汰(神)『思い出せ、貴虎! そっちの世界なら、お前は自由に飛べるんだろ?』
貴虎「何っ!? ……そうか」
貴虎(ポケットの中に……あった!) カチャ
貴虎(この錠前こそ、この世界での俺の翼……!)
貴虎「斬月!」 ピカーン
ドウッ
ビューン!
貴虎(飛んだ……そうだ、この感覚だ……)
貴虎(懐かしい……この白い機体、金の装飾、黒の和風模様……)
貴虎(そして……戦極ドライバー)
貴虎(サガラによって仕組まれた力だが……これは確かに、この世界における俺の象徴……)
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/26(火) 21:54:10.16 ID:K8yl469H0
おぉ〜〜!5年ぶり!お懐かしいです!
舞台に出てきてたって言うカチドキ斬月最高にカッコよかった!
前スレでは出なかった楯無先輩や簪ちゃんは出たりするのかな(wktk
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 21:59:24.60 ID:rpk+8QQG0
紘汰(神)『貴虎。その機体だが、お前の記憶をもとに、いくつか装備を追加しておいた』
貴虎「装備を?」
紘汰(神)『後で確認しておいてくれ』
貴虎「わかった。感謝する」
紘汰(神)『いいって。それより、まずは座標の修正をしよう。どこへ向かうのがいいか……』
貴虎「なら、IS学園がいいだろう。場所はわかるか?」
紘汰(神)『あぁ、そのまま東にまっすぐだ。細かいところは、そいつのマップを参照してくれ』
紘汰(神)『そうだ、貴虎。それとーー』 ザザッ
貴虎「……どうした? よく聞こえない』
紘汰(神)『たかーー、なにかーーーー』 ザザッ
貴虎「葛葉? おい!」
紘汰(神)『ーーーーーー』 ザザッ
プツッ
貴虎「っ! 切れた……」
貴虎(一体、何がどうなって……)
ピピッ
貴虎「っ、どうした斬月?」
斬月『所属不明のISが急速接近中』
斬月『ロックされています』
???「……」 ゴォォォ……!
貴虎(何だ、あの漆黒のISは……)
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:09:55.03 ID:rpk+8QQG0
???「……」 バシュ!
貴虎(遠距離攻撃か!) サッ
???「……」 バシュ! バシュ!
貴虎(っ! 避け切れない!!)
ドカーン!
貴虎「くっ……!」 ヒューン
貴虎(ダメだ……感覚を取り戻していない今、空中戦は俺に不利……)
貴虎(ならば……!) ピッ
貴虎「斬月、全速力でIS学園のグラウンドを目指せ!」 パッ
ピカーン
ガシッ
斬月『装備展開:無双セイバー』
貴虎(ガンモード……) カシャッ
キュィィン……
バキュン!
???「……」 サッ
貴虎「ついて来い!」 ドウッ
???「……」 ゴォォォ……!
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:19:20.12 ID:rpk+8QQG0
そのころ、IS学園のグラウンド
箒「はっ! はっ!」 ブンッ ブンッ
鈴「あーあ! 夏休み明け初日から実技テストとか、やってらんないわ」
セシリア「全くですわ。このわたくしの実力が、少し休んだくらいで落ちるわけありませんのに」
シャル「ふたりとも、そんなこと言ってないでやろうよ」
ラウラ「その通りだ。それとも、このテストで底が知れてしまうのが怖いのか?」
鈴「はぁ〜? 言ってくれるじゃない!」 ジャキッ
セシリア「イギリス代表候補生の実力、とくと味わいたいようですわね?」 ガチャッ
ラウラ「やってみろ。それとも、やはり口だけなのか?」 ヴォン!
シャル「ラウラも、あんまり煽らないで!」
箒「楽しそうだな、みんな……ん?」
シャル「どうしたの、箒?」
箒「なぁ……何だ、あれは?」
ゴォォォ……
鈴「なになに〜……って、何アレ!?」
セシリア「もしかして、ISでしょうか……」
ラウラ「……こちらに落ちてきている」
鈴「えっ!? 嘘でしょ!?」
シャル「本当だ……確かに落ちてきてる!」
セシリア「まぁでも、このグラウンドはシールドに守られてますし、心配はいりませんわね」
箒「だといいが……」
箒(なんだ……この胸の高鳴りは……) ドクッドクッ
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:30:43.97 ID:rpk+8QQG0
グラウンド上空
貴虎(そういえば、IS学園のグラウンドにはシールドが張られているのだったか……)
貴虎「面倒な……」 ジャキッ
貴虎(斬月に残ったエネルギーを全て込め……振り下ろす!)
貴虎「はぁっ!!」ブンッ
バリーン!
鈴「うわぁっ!? あいつ、シールド割った!!」
セシリア「そんな!?」
ヒュゥゥ……
ゴォォォ……!
ドンッ
ドカーン!!
シャル「っ! うわぁぁああああ!!」
ラウラ「何という衝撃だ……!」
箒「あれは……っ!」
箒(あぁ、そうだ……間違いない……)
箒(あの白い機体、無茶な行動……間違えるはずがない……)
箒(どうして……どうして、今まで忘れていたんだ……)
箒(あいつは……!)
貴虎「さて……まんまとおびき出されたな」
???「……」 ゴゴゴ……
貴虎「誰に送り込まれたか知らないが、覚悟してもらおう」 カチャ
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:41:33.89 ID:rpk+8QQG0
ガチャッ
キュイン
『メロン』
ジジジジ……
ヒュゥゥ……
鈴「何あれ……メロン?」
シャル「待って……僕、これ知ってる……!」
ガコン
ギュオォォン……
ラウラ「……いや、きっと……ここにいる、私たち全員が知っている」
セシリア「えぇ……どうして、今まで忘れていたのでしょう……」
ガチャッ
キュイーン
『ロックオン』
プォォォ……
鈴「あいつは……」
ザシュッ
ジャキン
『ソイヤッ!』
セシリア「あの方は……」
ヒューン
ズボッ
シャル「彼は……」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:49:45.81 ID:rpk+8QQG0
ガシャッ
キュイィィィン……
『メロンアームズ!』
ラウラ「アイツは……」
ガシャン!
テレレン
『天・下・御・免!!』
箒「……貴虎ぁっ!!」
貴虎「……いくぞ」 チャキッ
???「……」 バシュ! バシュ!
貴虎(メロンディフェンダー!) サッ
ガンッ!
ガンッ!
貴虎「悪いが、もうその攻撃は通用しない」
貴虎(無人機なら、手加減はいるまい) ドウッ
???「……」 ブンッ
貴虎「フッ……」ザンッ
ガキィィン……!
貴虎「甘い!」 ズバッ!
???「!」
貴虎「ふんっ!」キンッ!
???「!!」
貴虎「はっ!」ズバァッ!
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:59:25.16 ID:rpk+8QQG0
???「……」
シュゥゥゥ……
貴虎「終わりだ」
ザシュッ
ジャキン
『ソイヤッ!』
『メロンスカッシュ!!』
ギュオギュオギュオギュオ……
キィィィン……!
貴虎「はぁっ!!」 ズバァッ!
???「……」
ギギギギギ……
ドガーン!!
貴虎「他愛もない……」 ピカーン
スタッ
貴虎(さてと……ん?)
箒「……」
貴虎「……あっ」
貴虎(いつの間に……まさか、はじめからここにいたのか……)
箒「……たか、とら……」
貴虎「っ! 篠ノ之、お前は……」
箒「貴虎……」
貴虎「お前は、憶えて……」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 23:09:45.43 ID:rpk+8QQG0
箒「貴虎ぁ!!」 ダッ
貴虎「っ!」
ギュウーッ
貴虎「ぐぁ!?」
貴虎(急に抱きつかれて、思わず変な声が……!)
貴虎(というか、なぜ急に抱きついて……!?)
箒「貴虎……貴虎っ!」
貴虎「篠ノ之、少し落ち着け……」
箒「今まで……今まで、どこへ行っていたんだ!?」
貴虎「っ、それは……」
箒「急に消えて、また急に現れて!! 私は……私は、どうして今まで……!」
貴虎「篠ノ之……」
箒「……貴虎、お前は……」
貴虎「……心配をかけたな」
箒「……」
貴虎「聞いてくれ。私は……」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 23:20:23.79 ID:rpk+8QQG0
鈴「貴虎ぁっ!!」 ギュウッ
貴虎「っ!? 凰!?」
セシリア「貴虎さーん!!」 ギュウッ
貴虎「オルコットもだと!?」
シャル「貴虎ぁ!!」ギュウッ
貴虎「デュノア……ということは」
ラウラ「貴虎っ!!」 ギュウッ
貴虎「やはりボーデヴィッヒも……お前たち、全員いたのか!?」
ギュウーッ
貴虎「というか、さすがに苦しいから離れろ!!」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 23:20:58.95 ID:rpk+8QQG0
それから、しばらく経って
千冬「さて……呉島貴虎」
貴虎「……何だ」
千冬「洗いざらい吐いてもらおう」
千冬「今までどこにいたのか。なぜ急に消えたのか。なぜ再び戻ってきたのか。そして……」
千冬「……なぜ、我々は今まで、お前のことを忘れていたのか」
貴虎「……あぁ、全て話そう」
……貴虎、全てを説明する……
貴虎「……というわけだ」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 23:29:55.18 ID:rpk+8QQG0
千冬「……」
貴虎「……織斑?」
千冬「……つまり、お前は元々別の世界の人間で……その超存在によって、我々の記憶は今まで書き換えられていたと?」
貴虎「あぁ」
千冬「……貴虎」 ガシッ
貴虎「ん?」
千冬「お前、疲れているのか」
貴虎「……は?」
千冬「確かに、今日はいろいろあった。お前が戻ってきたこともそうだが、正体不明のISの襲撃も……」
千冬「そんな日に問いただした、私が間違っていたのかもしれんな」
貴虎「……織斑、私は一言も嘘などついていない」
千冬「何も言うな。疲れのあまり妄想が口をついて出るのは、別におかしなことじゃない」
貴虎「……」
千冬「部屋に戻って休め。この続きは、また後日……精神が良好なときに話そう」
貴虎「……わかった」
貴虎(全く信じていないな……確かに、我ながら突飛な話だとは思うが)
貴虎(しかし、これ以外には説明のしようもない……一体、どうすればいいと言うのだ……)
貴虎(……いや、それ以上に気になることがある)
貴虎(あのときを境に、葛葉紘汰から連絡はない。向こうで何かあったのか、それとも……こちらから、何らかの原因で遮断されたのか)
貴虎(そして、時を同じくして現れた謎のIS……間違いなく、無関係であるはずがない)
貴虎(どうやら、それらの謎を解き明かすまで、帰ることはできなさそうだな……)
貴虎(まぁ、構わない。初めにこの世界に来たときも、俺は最後まで諦めず、向こうの世界に帰ることができた)
貴虎(今回も同じことだ。こちらの世界の歪みを直し、必ず向こうの世界へ戻ってみせる!)
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 23:31:00.53 ID:rpk+8QQG0
今回はここまで
次回は『第二話 学園祭』
前作からだいぶ時期が経ってしまった
今回も最後まで付き合ってくれると嬉しい
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/26(火) 23:34:13.00 ID:3nsEXW630
続編見れて嬉しいです!乙
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/26(火) 23:37:36.65 ID:K8yl469H0
おつー。
あの変身プロセスを忘れる人は、はたして居るだろうか?
またこれからよろしく勇気です!
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/27(水) 03:31:33.57 ID:y4jMUVlbO
乙
忘れてたのはジオウとタイムジャッカーのせいだな!
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/27(水) 15:43:33.26 ID:+ufWuUHh0
懐かしすぎて涙出てきた
当時リアタイで読んでたわ
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 19:57:29.31 ID:2OibMYGo0
それじゃ、続き投下していく
覚えていてくれる人がいて、主任の人気の根強さを感じる
小説や舞台を問わず、お兄ちゃんが使ったアームズは積極的に登場させるつもり
ハイパーバトルDVDもね
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 19:59:22.33 ID:2OibMYGo0
『第二話 学園祭』
ピピピピ
カチッ
貴虎(久しぶりだな、IS学園の寮で迎える朝は)
貴虎(織斑の話によれば、こちらの世界では、昨日が夏休み明け初日の授業日だった)
貴虎(なるほど、葛葉紘汰の言っていた通り……俺がこの世界を去ってから、2ヶ月ほど経った時期に送られたということか)
貴虎(だが……結局、当の葛葉紘汰との連絡はつかないままだ)
貴虎(やはり、この世界の方に何かあるのかもしれない。少し調べてみるか……)
ピンポーン
貴虎(……誰だ、こんな朝から)
ガチャ
箒「おはよう、貴虎」
貴虎「篠ノ之……?」
箒「起きていたか」
貴虎「あぁ。何か用か?」
箒「朝食でも一緒にどうかと思ってな」
貴虎「構わん」
箒「そう答えると思った」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 20:09:43.50 ID:2OibMYGo0
貴虎「しかし、珍しいな。確か部屋が分かれてからは、あまり一緒に摂ることもなかったような気がするが」
箒「……」
貴虎「……篠ノ之?」
箒「……いこう、貴虎」
テクテク
貴虎「……篠ノ之」
箒「何だ?」
貴虎「……近くないか?」
箒「何がだ?」
貴虎「その……距離が」
箒「わざわざ離れて歩く意味もないだろう」
貴虎「いや、それはそうだが……」
箒「……」
貴虎(何かおかしい……どうしたんだ……?)
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 20:20:03.19 ID:2OibMYGo0
食堂
貴虎「……篠ノ之」
箒「何だ?」
貴虎「……なぜ隣で食べる?」
箒「一緒に朝食を摂ることの何がおかしい」
貴虎「テーブル席に、ふたりが横並びというのはおかしいだろう。普通は対面で……」
箒「私はそうは思わない」
貴虎「……一体どうした?」
箒「何がだ?」
貴虎「とぼけるな。今日のお前は、どこかおかしいぞ」
箒「……」
貴虎「……篠ノ之?」
箒「……あのとき、急にお前が消えてから……私は、お前のことを忘れてしまった」
箒「どうして、そんなことになったのか……わからないし、わかりたくないと思っている自分もいる」
貴虎「……」
箒「だが、お前を忘れた後も……私の中に、ずっと何かがこびりついていた」
箒「あのときの、お前からの信頼が……私の中の、お前への想いが……」
貴虎「っ……」
箒「私はそれを、二度と失いたくない……! もう二度と、貴虎のことを忘れたくない!!」
箒「だから……だから、私は……!」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 20:29:11.01 ID:lCcFViUZO
貴虎「……そうか」
箒「……貴虎、私は……」
貴虎「……すまなかった、篠ノ之。知らないうちに、そこまでお前を追い詰めていたとは」
箒「……」
貴虎「そして……感謝する。私のことを、そこまで想ってくれて」
箒「っ!」
貴虎「安心しろ。これから先、お前が再び私を忘れることはない」
箒「……どうして言い切れる?」
貴虎「それは……」
貴虎(なんと答えればいい……馬鹿正直に『俺の存在をこの世界から消さないからだ』などと説明したところで、理解できるはずもない)
貴虎「……根拠はない。だが……だからこそ、私の言葉を信じてほしい」
箒「貴虎……」
貴虎「もう二度と、お前たちが私を忘れることはない。そうならないよう、私は全力を尽くす」
箒「……まったく、お前というやつは……」
貴虎「これでは、納得できないか?」
箒「できるわけがあるか。だが……信じよう。あのときと、同じように」
貴虎「感謝する、篠ノ之。なら、対面に座り直して……」
箒「それとこれとは話が別だ」
貴虎「……」
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 20:39:40.16 ID:lCcFViUZO
それから、少し経って
貴虎(昨日から今日にかけて、IS学園では実技テストが行われている。俺がグラウンドに飛来したとき、篠ノ之たちがいたのも、その関係だろう)
貴虎(俺も一応、この学園の生徒だ。となれば、当然このようになる)
鈴「いくわよ、貴虎!」 ピカーン
貴虎(生徒同士の対戦による実技テスト。俺は1組のクラス代表として、2組代表の凰と行うことになった)
鈴「アンタには、聞きたいことが山ほどあるんだから。覚悟しときなさい!」 ジャキッ
貴虎「……変身」 ピカーン
貴虎(そういえば、葛葉紘汰が『装備を追加しておいた』と言っていたな。確認しておくか) ピッ ピッ
貴虎(……ほう、これは。随分と豊富に用意してくれたものだ)
貴虎(だが……ひとつだけ、ロックされている装備がある。まさか、銀の福音[シルバリオ・ゴスペル]のときの『アレ』か……?)
鈴「なーに黙ってんのよ。もしかして、久しぶりの対戦に怖気づいた?」
貴虎「凰」
鈴「……何よ、改まって」
貴虎「お前には悪いが、新しい装備の試用相手になってもらう」
鈴「はぁ?」
貴虎「加減を間違えるかもしれん。注意しておけ」
鈴「加減? ……アンタ、手加減するつもりだったの?」
貴虎「そうでなければ、お前はテストになるまい」
鈴「っ……アッタマきた。その言葉、後悔させてあげる!!」
『それでは両者、試合を開始してください』
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 20:49:33.60 ID:lCcFViUZO
鈴「ハァッ!」 ドウッ
貴虎(やはりそうだ。あいつは、俺が近接が得意なことを理解している)
貴虎(だからこそ、開幕直後に空中へ飛び上がり、俺と距離を取る。そうして遠距離から、得意の龍咆で攻撃を仕掛けてくる)
貴虎(そうくると思ったいた。だからこそ……) ピッ
貴虎(この隙に、俺は準備ができる) カチャ
ガチャッ
キュイン
『ブドウ』
ジジジジ……
ヒュゥゥ……
鈴「来たわね……って、アレ? メロンじゃない!?」
ガチャッ
キュイーン
『ロックオン』
プォォォ……
貴虎(どうやら、あいつも気がついたようだな)
ザシュッ
ジャキン
『ソイヤッ!』
ヒューン
ズボッ
鈴「もしかして……それが『新しい装備』ってこと?」
ガシャッ
キュイィィィン……
『ブドウアームズ!』
ガシャン!
カンカンカァン!
『龍ッ砲! ハッハッハッ!!』
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 21:00:02.91 ID:lCcFViUZO
貴虎(光実の着けている、ブドウの鎧……以前にも、一度だけ試したことがあった)
貴虎(もっとも、そのときは採用を見送ったが……銃より刀の方が扱いやすいからな)
貴虎(だが、新たな問題が発生している以上、今はあらゆる状況に対応できるよう準備しておかなければならない)
貴虎(そして、俺が埋めるべき穴は……!) ドウッ
鈴「っ、飛んだ!」
貴虎(飛行だ!) カチャ
斬月『装備展開:ブドウ龍砲』
貴虎「……」 バキュン!
鈴「しかも銃撃!?」 サッ
貴虎「ハッ!」 バキュバキュバキュン!
鈴「っ、ハァッ!」 バシュン! バシュン!
ドカーン!
鈴「面白いじゃない……アタシに空中で、それも銃撃戦を仕掛けてくるなんて」
鈴「この甲龍(シェンロン)の装備と特徴、忘れたわけじゃないんでしょ?」
貴虎「……」
鈴「いいわ。だったら、お望みどおり……」
鈴「アタシの龍咆、嫌ってほど味あわせてあげる!!」
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 21:00:49.28 ID:lCcFViUZO
ところ変わって
真耶「2学期初の実戦……気合い入ってますね、ふたりとも」
千冬「……あぁ」
真耶「この試合も、いつも通り、呉島くんが優勢ですね」
千冬「いや、どうだろうな」
真耶「え?」
千冬「これまであいつが圧倒的な強さを発揮してきたのは、地上での接近戦。だが今、あいつは空中で銃撃戦を仕掛けている」
真耶「えっと……つまり、実力が発揮できていないということですか?」
千冬「あいつ自身も、その『実力』とやらを知ろうとしているのだろう」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 21:09:45.10 ID:lCcFViUZO
アリーナ
鈴「ハッ!」 バシュン! バシュン!
貴虎「……」 サッ サッ
貴虎「……っ!」 バキュバキュン!
鈴「っ、ハァッ!」 バシュン!
ドガーン!
貴虎(甘い弾は避け、避けきれない弾は龍咆で相殺する。そして、こちらが隙を見せれば、すかさず龍咆の追撃……)
貴虎(やはり俺が勝つには、懐に飛び込む必要がある。そのためには……) ドウッ
貴虎(銃撃を加えつつ、一気に飛んで距離を詰める!) バキュバキュバキュン!
鈴「っ……ふーん、そういうこと……」 バシュン! バシュン!
鈴「けど……甘いわ!」 ピカーン
ガシッ
貴虎(来たか、凰の近接武器……)
鈴「いくわよ!」 ドウッ
貴虎(あの2本の青龍刀を、無双セイバーのみで凌ぐのは難しい。だが、他のアームズに変更する暇もない)
貴虎(ならば……) ピカーン
ガシッ
斬月『装備展開:無双セイバー』
貴虎(凰の『実力』にかけてみるか)
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 21:20:24.87 ID:2OibMYGo0
鈴「そんな刀一本じゃ、この双天牙月は防げないわよ!」
貴虎「誰が防ぐと言った」
鈴「えっ?」
貴虎「この距離なら、避けれまい!」 ガチャ
貴虎(ウェポンの撃鉄を引き、エネルギーをチャージ……!)
貴虎(そして……至近距離で、放つ!!)
キィィィ……!
鈴(刀を装備したのは、フェイントってこと!?)
貴虎「ハァッ!!」 バキュゥウウ!!
鈴「っ! 舐めんなぁ!!」 バシュン!
ドガーン!!
鈴「ハァ、ハァ……どうよ、当たらなかったわね!」
「あぁ、期待通りだ」
鈴(っ! 後ろ!?) グルッ
貴虎「……」 チャキッ
『イチ……ジュウ……ヒャク!』
鈴「なんで、いつの間に……!?」
『ブドウ・チャージ!!』
貴虎「ハァッ!!」 ズバァッ!
鈴「きゃぁぁああああ!!」ドーン!
ブーッ
『試合終了。勝者、呉島貴虎』
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 21:29:43.36 ID:2OibMYGo0
貴虎「大丈夫か、凰」 ピカーン
鈴「ねぇ……最後のアレ、何?」
貴虎「お前の実力を利用させてもらった。あの一撃は確かに本気だったが、お前なら防いで見せるだろうと信じていた」
鈴「……最初っから、アタシに龍咆で相殺させて、その爆煙と爆風を利用するつもりだったのね。そうやって目隠しして、その隙にアタシの背後へ回り込んだ」
貴虎「その通りだ。銃撃戦では、お前に勝つのは難しい……そう判断せざるを得ないほど、お前は強かった」
鈴「……勝者のアンタに言われても、何か複雑だわ」
貴虎「悔しいのなら、また挑んでこい。いつでも相手になってやる」 スタスタ
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 21:30:29.47 ID:2OibMYGo0
それから、アリーナ控え室
貴虎(今回の実戦で分かったが、やはり俺にも隙は多い)
貴虎(遠距離はまだしも、飛行は早急に物にせねば……)
バッ
貴虎(っ、目隠し?)
「だーれだ?」
貴虎(……聞き覚えのない声だ。私と面識のない人間か?)
「はい、時間切れ」 パッ
楯無「ふふふっ」
貴虎「……すまないが、どこかで会ったことがあったか?」
楯無「……」
貴虎「……?」
楯無「それじゃあね」 スタスタ
貴虎(いや、本当に誰だ?)
貴虎(制服ということは、少なくとも、この学園の生徒であることは確かなはず……後で調べておくか)
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 21:40:18.99 ID:lCcFViUZO
それから、しばらく経って
貴虎(全校集会か……そういえば、この学園では、あまりしていた覚えがないな)
貴虎(さっきの女も、この中にいるのか……?) キョロキョロ
「それでは、生徒会長から説明をさせていただきます」
楯無「……」 コツコツ
貴虎(あの女、さっきの……まさか)
楯無「さてさて、今年はいろいろと立て込んでいて、ちゃんとした挨拶がまだだったね」
楯無「私の名前は更識楯無、君たち生徒の長よ」
貴虎(っ! あの女、この学園の生徒会長だったのか)
楯無「以後よろしく」 チラッ
貴虎「……?」
楯無「……ふふっ」 パチッ
貴虎(なぜ今ウィンクを……? あの女、よくわからん……)
楯無「では、今月の学園祭だけど……クラスの出し物を、みんなで頑張って決めるように」 バッ
扇子『締切間近』
貴虎(……まさか、わざわざ用意したのか? あの扇子……)
貴虎(一体何なんだ、あの女は……)
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 21:50:14.26 ID:2OibMYGo0
それから、教室
貴虎「……それで、このクラスの出し物の案だが……」
『呉島貴虎のホストクラブ』
『呉島貴虎とツイスター』
『呉島貴虎とポッキー遊び』
『呉島貴虎と王様ゲーム』
貴虎「全て却下だ!」
エーッ!
貴虎「内容も内容だが……まず、私ひとりに負担を強いるような出し物では、学園祭の意味がない」
「私はいいと思うけどなー。断言する!」
貴虎「そもそも、良し悪しを判断するレベルですらない」
「女子を悦ばせる義務を全うせよ!」
貴虎「そんな義務はない!」
「呉島貴虎は共有財産である!」
「「そうだそうだー!!」」
貴虎(何を言っているんだ、こいつらは……いかん、久しぶりに腹痛が……)
貴虎「……山田先生、この場を収めるのを手伝ってくれませんか」
真耶「えっ……? えーっと……」
真耶「わ、私は……ポッキーなんか良いと思いますよ……?」
貴虎(こいつに訊いた俺が馬鹿だった……)
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 21:59:28.35 ID:2OibMYGo0
貴虎「とにかく、何か別の意見を出せ。本気で学園祭をしたいのならな」
ラウラ「……メイド喫茶はどうだ?」
オォ……
ザワッ
貴虎「……何?」
ラウラ「客受けは良いだろう。それに、飲食店は経費の回収も行える」
シャル「……うん、いいんじゃないかな。貴虎には、執事か厨房を担当してもらえばOKだよね?」
「呉島くん……執事……イイ!」
「メイド服どうする?」
「あたし縫えるよ!」
「では、ご奉仕喫茶に決まりですね!」
「「賛成ー!!」」
貴虎(……まぁ、さっきまでのイカれた案に比べればマシか)
貴虎(……本当に、これでいいのか?)
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 22:10:03.57 ID:2OibMYGo0
それから、しばらく経って
貴虎(16時か……そういえば、ボーデヴィッヒが昼休みに『放課後、第4アリーナで待つ』と言っていたな)
貴虎(あいつの執着も懐かしい……それに、俺としても、ISの技術は上げておきたい。久しぶりに一戦交えるか……)
トントン
貴虎「ん?」 クルッ
楯無「やぁ!」
貴虎「……生徒会長か」
楯無「水臭いなぁ、楯無でいいよ」
貴虎「……私に何か用か?」
楯無「当面、君のISコーチをしてあげる」
貴虎「……コーチだと?」
楯無「そう。今日の君の実技テスト、見せてもらった……君、一見強そうだけど、意外と隙が多いよね」
貴虎「……よく見抜いているな」
楯無「そして君は、それを積極的に埋めようとしてる。頑張る男のコって素敵よ」
貴虎「……」
楯無「だから、それがちょっとでもマシになるように、私が鍛えてあげよう……という、お話」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 22:19:57.41 ID:2OibMYGo0
貴虎「……なるほど」
楯無「どう?」
貴虎「確かに、悪い話ではないな」
楯無「でしょ?」
貴虎「だが、遠慮しておく」
楯無「……どうして?」
貴虎「わからないからだ。果たして、本当に私を鍛えられるだけの力量があるのか……」
楯無「IS学園において、生徒会長の肩書きは……あるひとつの事実を証明してるんだよね」
貴虎「……何?」
楯無「生徒会長……即ち、全ての生徒の長たる存在は……」 ビシッ
楯無「『最強』であれ……とね」
貴虎「……つまり、お前がこの学園において最強だと?」
楯無「試してみる?」
貴虎「……いや、やめておく」
楯無「そう? てっきり、勝負でも仕掛けてくると思ったけど」
貴虎「私としても、自分の欠点を克服しなければと考えていたところだ。そこで、最強を自称するほどの実力者がコーチをしてくれるというのなら、断る理由はない」
楯無「なーんか言い方に棘があるけど……まぁ、いいか。それじゃあ、この話に乗ってくれるのね?」
貴虎「あぁ、よろしく頼もう」
貴虎(この女、実力も目的も計り知れない。まずは近づいて、何者なのかを把握すべきか……)
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 22:30:03.24 ID:lCcFViUZO
ところ変わって
ラウラ「あいつはどこに行ったんだ……宿敵[とも]失格だぞ」 テクテク
ラウラ「……もしや、避けられているのではないだろうな」 ピタッ
ラウラ「……まさかな」
アハハッ
ラウラ「ん?」 チラッ
「あっ、リコ。後ろにすっごい寝癖ついてるよ」
「えーっ!? どこどこ!? あーっ! 今日寝坊して、髪の毛セットして来れなかったんだよぉ……」
「ダメだよ、身だしなみはキチッとしないと。呉島くんに嫌われちゃうぞー?」
ラウラ「っ、身だしなみ……」
ラウラ(まさか、私も寝癖が……) サワサワ
ピョコッ
ラウラ(っー!) サッ サッ
ラウラ「……よし」
「ほう、お前もそんなことを気にするようになったか」
ラウラ「ひっ!?」 クルッ
千冬「フッ……年頃だな」 ニヤッ
ラウラ「ちっ、違うのです教官! 決して、そういう浮ついた気持ち……うっ!」 パコンッ
千冬「織斑先生と呼べ」
ラウラ「はい……」
千冬「そういえば、呉島だったら、部活棟の保健室の前で見たぞ」
ラウラ「……保健室?」
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 22:30:44.32 ID:lCcFViUZO
今日はここまで
続きはまた明日
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/29(金) 22:36:27.62 ID:Ju+Anj4rO
乙
この貴虎にーさんが高校生くらいの体なの忘れてだーれだ?できる生徒会長デカイなって思ってしまった
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/29(金) 23:01:47.87 ID:Nt1+LsK50
楯無さんは身長164pで主任は180p。
つまり、こそこそっと主任の背後へ接近してから、つま先立ちで背伸びして少しピーンとした状態になりつつ目隠しした訳だ
楯無「(そ、そろそろ限界・・・)」
と、つま先立ちが限界になって時間切れと言うのも中々に可愛い(確信
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 20:01:04.09 ID:Cx16M7PWO
それじゃ、投下していく
カチドキ斬月のフィギュアーツ、みんなも予約しよう
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 20:01:34.53 ID:Cx16M7PWO
そのころ、 保健室
楯無「それじゃあ、ここに横になって」 ポンポン
貴虎「……何?」
楯無「ほらほら。お姉さんの膝枕、堪能させてあげるから」
貴虎「……それに何の意味がある?」
楯無「君、私が『最強』だってこと、疑ってるみたいだし……私の実力、知りたいでしょ?」
貴虎「それが、どう実力を知ることに繋がると言うんだ……」
楯無「いいからほら、やってみればわかるって」 グイッ
貴虎「っ!? よせ、やめろ!」
貴虎(というか、見た目以上に力が強いぞ、この女!)
楯無「いいからいいから〜」 ギュウーッ
貴虎「よくない!」 ジタバタ
ガーッ
ラウラ「貴虎、ここにいたの……かっ!?」
貴虎「ボーデヴィッヒ……!?」
ラウラ「……貴様、私の宿敵[とも]に何をしている?」
楯無「何って……見ての通り、膝枕」
ラウラ「……目標を撃破する」 ヴォン!
ラウラ「ハァッ!」 ダッ!
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 20:09:31.45 ID:Cx16M7PWO
楯無「……ふっ」 サッ
ガキン!
ラウラ「何っ!?」
貴虎(防いだ……ISの攻撃を、扇子一本で)
扇子『最強』
貴虎(しかも、文字が変わっている……一体、何本持っているんだ……)
ラウラ「……くっ」 ピカーン
楯無「うん、素直でよろしい。じゃあ貴虎くん、そろそろ始めようか」
貴虎(この女、実力は本物か……掴み所がないのが、逆に恐ろしいな)
貴虎(だが、確かにこれなら……俺の弱点を補強できるかもしれん)
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 20:19:37.91 ID:Cx16M7PWO
それから、グラウンド
シャル「あれ、貴虎?」
セシリア「今日は第4アリーナで、ラウラさんと決闘と聞いていましたけど……」
楯無「そのことだけど……私がこれから、貴虎くんの専属コーチをするから、よろしくね」
シャル「えっ……生徒会長が、コーチ?」
セシリア「貴虎さん、どういうことですの!?」
貴虎「お前たちと同じだ。自分の欠点を埋めるため、より技術の高い人間に教えを請う」
楯無「まぁまぁ、これも貴虎くんのためと思って」
楯無「そう、みんなにも協力してほしいことがあるの」
シャル「協力……ですか?」
楯無「時間もないし、早速始めましょうか」
楯無「シャルロットちゃん、セシリアちゃん。シューターフローで円状制御飛翔[サークル・ロンド]、やって見せてよ」
セシリア「射撃型のバトルスタンスは、貴虎さんの役に立ちますの?」
貴虎「むしろ、それこそが私の隙だ。そこを補うことで、より強くなれる」
シャル「……これ以上、貴虎が強くなる必要はあるの?」
貴虎「誰にでも、成長は必要だ」
セシリア「……わかりましたわ。貴虎さんが、そこまでおっしゃるなら……」 ピカーン
シャル「……うん、やろう」 ピカーン
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 20:30:40.05 ID:Cx16M7PWO
シャル「じゃあ、始めます」 フワッ
セシリア「貴虎さん。どうぞ、しっかりとご覧になってくださいな」 フワッ
グルッグルッ……
シャル「いくよ、セシリア!」 チャキッ
セシリア「構わなくてよ!」 ガチャッ
シャル「えいっ!」 ダン! ダン!
セシリア「はっ!」 サッ
セシリア「はぁっ!」 バシュン!
ダン! ダン!
バシュン! バシュン!
貴虎「円状制御飛翔[サークル・ロンド]……複数のISが輪を描いて飛び回り、射撃と機体の制御を学ぶ訓練か」
楯無「射撃と高度なマニュアル機体制御を同時に行っているんだよ。しかも、回避と照準の両方に意識を割きながら」
楯無「だからね……」 サッ
貴虎(っ、なぜ近くに寄って……)
楯無「わ・か・る?」 フゥー
貴虎「っ!? 耳に息を吹きかけるな!」
楯無「弱いの?」
貴虎「そういう問題ではない!」
ギャーギャー
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 20:40:04.31 ID:Cx16M7PWO
シャル「はぁっ! ……って、貴虎!?」
セシリア「何してますの!?」
シャル「もう! ……ととっ」 グラッ
セシリア「なんてことを……あっ」 グラッ
セシリア「ああっ、きゃあ!」 グイッ
シャル「ちょっと!? うわぁっ!」 グイッ
ヒューン……
セシリア「きゃぁぁああああ!!」 ドーン!
シャル「うわぁぁああああ!!」 ドーン!
貴虎「何をやっているんだ、あいつらは……」
楯無「次は貴虎くんの番よ」
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 20:40:39.44 ID:Cx16M7PWO
セシリア「まったくもう……参りますわよ」 ピカーン
貴虎「……変身」 ピカーン
セシリア「貴虎さん、その……アレは着けませんの? 何というか、あのメロンのような……」
貴虎「今回は不要だ。始めよう」
セシリア「それでは……」 フワッ
貴虎「……」 フワッ
グルッグルッ……
楯無「よし、じゃあ射撃開始!」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 20:50:32.91 ID:Cx16M7PWO
貴虎(無双セイバー、ガンモード……) ピカーン
ガシッ
カチッ
貴虎「……」 バキュン!
セシリア「はっ!」 サッ
バシュン!
貴虎「っ……」 サッ
貴虎(なるほど、これは……はたで見るほど、容易ではないな)
バキュン!
バシュン!
シャル「これって、貴虎が射撃の隙を埋めたいって言ったからですか?」
楯無「うん、そうだね。でも……それだけじゃあないんだな〜」
楯無「射撃能力で重要なのは、面制圧力だよね? けれど、貴虎くんの装備……あの刀は、弾数がたった4発しかない上に、威力もそれほど高くない」
楯無「つまり、必要なのは……一撃で突破する力。あるいは、一点に集中して撃ち込む力」
楯無「貴虎くんも筋はいいけど、まだ扱い切れてない点が目立つ。だから、あえて……」
シャル「……近距離で叩き込む」
楯無「鋭いね」 バッ
扇子『見事』
シャル「……貴虎も、もどかしそうですね。実戦なら、あの間合いは近接で取りに行ってるでしょうから」
楯無「そのための訓練だよ」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 21:00:04.97 ID:Cx16M7PWO
それから、しばらく経って
貴虎の自室前
テクテク
貴虎(少し疲れたな……だが、良い訓練だった。あの女、コーチとしてはレベルが高い)
貴虎(俺の弱点を正確に見抜き、的確なメニューを与える……なるほど、確かに『最強』を自称するだけの実力はありそうだ)
貴虎(これなら、短期間でも成長が期待できる。明日に疲れを残さないよう、今日は早めに休むか……) ガチャ
楯無「おかえりなさ〜い!」
貴虎「……うわぁぁああああ!?」
貴虎(どうやって俺の部屋に……そもそも、なんだその格好は!?)
貴虎(裸にエプロン1枚……!! いや……見えないだけで、下着は着けているはず!)
楯無「ご飯にします? お風呂にします? それとも……」
楯無「わ・た・し?」
貴虎「……部屋を間違えたようだ」 バタン
『1025』
貴虎(……あぁ、わかっていたとも。本当は、間違えてなどいないと……)
ガチャ
楯無「おかえり! 私にします? それとも……」
楯無「わ・た・し?」
貴虎(せめて選択肢をくれ)
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 21:10:03.63 ID:Cx16M7PWO
貴虎「……ここで何をしている? どうやって入った? まず服を着ろ!」
楯無「えっ……?」 ウルウル
貴虎「……?」
楯無「特別コーチだから……寝食を共にして……波長を合わせていくの……」 シュルッ
貴虎「必要ない。そして脱ごうとするな!」
楯無「……ふふっ、じゃーん! 水着でしたー!」
貴虎「……」
楯無「貴虎くんは反応かわいいねー! もしかして、あんまりこういうの慣れてない?」
貴虎「今すぐ出て行け!」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 21:20:04.12 ID:Cx16M7PWO
ところ変わって
箒「……」 テクテク
『感謝する。私のことを、そこまで想ってくれて』
箒「……ふふっ」
箒「っ、いかんいかん」
箒(貴虎はああ言っていたが、いつまた忘れてしまうかもわからない……目を離していると心配だ)
箒(聞くところによると、あいつは今日から特訓を始めたらしい。疲れているだろうし、部屋から出ないかもしれないな)
箒(そうだ。だからこうして、私が夕食の弁当を持っていく。何もおかしいことはない)
箒「……ふふっ」
箒(貴虎……喜んでくれるだろうか)
『1025』
コンコン
貴虎『っ、誰だ?』
箒「わ、私だ。差し入れを持ってきたのだが、入ってもいいか?」
貴虎『篠ノ之……!? 少し待ってくれ!』
箒(……どうかしたのか?)
楯無『もぉー、何するの貴虎くーん?』
箒(っ、女の声?)
楯無『あっ、わかった! 浮気がバレるから必死なんだー!』
貴虎『少し黙っていろ!』
箒「っ……!」 イラッ
バンッ
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 21:29:35.49 ID:Cx16M7PWO
貴虎「あっ」
楯無「いやんっ」
箒「……何をしているんだ、貴虎?」
貴虎「……見ての通りだ」
箒「私には、そいつの服を無理やり脱がしているようにしか見えないが?」
貴虎「違う、逆だ! 服を着せようとしているんだ」
箒「何がどうなれば、女子の服をお前が着せることになると言うのだ!」
貴虎(もっともすぎて反論できん)
箒「まさか、お前がそんなやつだったとは……女子を連れ込み、あろうことか、ハレンチ極まりない行為をしおって!」 ピカーン
貴虎「誤解だ! 俺はそんなことはしていない!!」
箒「恥を知れぇ!!」 ブンッ
貴虎(っ、無双セイバー!) ピカーン
ガキンッ!
楯無「ひゅー、貴虎くんやるぅ!」
箒「くっ……まだまだ!」 ブンッ
楯無「それと、ごめんね。今、貴虎くんに危害を加えられると……お姉さん、ちょっとだけ困っちゃうなー」 ピカーン
ブンッ
ガキィィ……!
箒「なっ……!?」
箒(刀が……天井に、弾かれた!)
楯無「勝負あり、ね」
貴虎(また面倒事が増えた……この女に近づいたのは失敗だったか?)
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 21:40:20.77 ID:Cx16M7PWO
翌日、放課後
貴虎「……」 グルッグルッ
貴虎(昨日、絶対に解かなければならない誤解は解いた。だが……)
箒『貴虎……お前、そいつには随分と甘いな?』
貴虎(あいつとの関係にヒビが入ったのは、俺の思い違いではないだろうな……)
楯無「重心の座標、速度も安定……オッケー、基礎は完璧だね。それじゃあ、そこで瞬時加速[イグニッション・ブースト]してみようか」
楯無「シューターフローの円軌道から、直線軌道にシフト。相手の弾幕を一気に突破して、零距離で銃撃!」
貴虎「……」 ドウッ
カチャッ
バキュン!
貴虎「……」 スタッ
楯無「オッケー、中々いいね。貴虎くん、飲み込みが早くて教えやすい」
貴虎(……今は訓練に集中しよう。篠ノ之ことは、また後で考えればいい……)
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 21:40:50.17 ID:Cx16M7PWO
それから、しばらく経って
貴虎(もうこんな時間か……今日は部屋へ戻る前に、食堂で食べていくとしよう)
鈴「……あっ、貴虎! こっちこっち!」
貴虎「凰? ……あぁ」
貴虎(全員集まっているな……あいつも) チラッ
箒「……」
貴虎「……」
ラウラ「お前も、これから夕食か?」
貴虎「あぁ、まぁな」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 21:50:08.44 ID:Cx16M7PWO
シャル「……貴虎、なんか疲れてる?」
貴虎「……そう見えるか?」
鈴「そんなに特訓って厳しいの?」
貴虎「……いや、体はそこまで疲れていない」
貴虎(むしろ、精神的には振り回されてばかりだ……どうも俺は、あの女のようなタイプは苦手かもしれん)
シャル「その……頑張ってる男子って、僕はカッコいいと思うな」 チラッ
貴虎「……そうか」
セシリア「コ、コホン……貴虎さん? もし、あの部屋にいるのが辛いなら……仕方なく、人助けということで、わたくしの部屋にいらしても構いませんわよ?」
鈴「はぁ!? ちょっとセシリア、待ちなさいよ!」
鈴「貴虎、アンタあたしの部屋に来なさいよ。トランプあるわよ」
ラウラ「待て、トランプなら私の部屋にもあるぞ」
セシリア「わたくしの部屋にはタロットカードだってありますわ!」
貴虎「断る。部屋を移動する気は毛頭ない」
貴虎(そもそも、お前たちの部屋の売りはカードゲームしかないのか)
箒「……」 チラッ
貴虎「……ん?」
箒「……花札はどうだ、貴虎?」
貴虎「っ……あぁ、悪くない……」
箒「っ……そうか……」
シャル(……あれ? なんで箒だけ反応が違うんだろう?)
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 22:00:21.66 ID:Cx16M7PWO
その夜、貴虎の部屋
貴虎(結局、篠ノ之とこいこいに興じてしまった……) シャコシャコ
貴虎(あまり会話はなかったが、少しは打ち解けたか……) ブクブク
ペッ
貴虎「……フッ」
楯無『貴虎くーん』
貴虎(っ、この声は……なぜ俺のベッドルームから……) ガチャ
楯無「ふふっ……って、あれ〜? どうして目隠ししてるの、貴虎くん?」
貴虎「どうせ、またおかしな格好をしているのだろう? 何度も同じ手は食わん」
楯無「え? ちゃんと着てるわよ?」
貴虎「……何?」 パッ
貴虎「着てないじゃないか!」 バッ
楯無「着てるじゃない、シャツ」
貴虎「裸にシャツしか羽織らないやつがいるか! しかも、それは私のシャツだ!!」
楯無「ほら、観念して目を開けなさい!」
貴虎「断る!」
楯無「これ以上抵抗するなら、無理にでも開けるわよ?」 グイッ
貴虎「やめろ!」 ググッ
ギャーギャー
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 22:10:07.45 ID:Cx16M7PWO
そんなこんなで、数日後
貴虎(学園祭か……懐かしいな。昔は実行委員長など務めたものだ)
貴虎(もっとも、執事服を着るのは初めてだが……)
シャル「いらっしゃいませ」
貴虎「こちらへどうぞ、お嬢様」
「うっそ、あの呉島くんの接客が受けられるの?」
「しかも執事の燕尾服!」
「写真も撮ってくれるんだって。ツーショットよ、ツーショット!」
「さすが呉島くんだ!」
貴虎(しかし……なぜ、そんなに俺と写真を撮りたがる? それも、みんな……)
鈴「ちょっと、そこの執事。テーブルに案内しなさいよ」
貴虎「凰か……珍しい格好をしているな」
鈴「2組は中華喫茶やってるのよ」
貴虎「それでチャイナドレスか。なかなか似合っている」
鈴「っ、そ……それは、まぁ……嗜みっていうか……」
鈴「とにかく、案内しなさいよ!」
貴虎「あぁ。それでは、お嬢様……こちらへどうぞ」
鈴「お、お嬢様……」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 22:20:24.94 ID:Cx16M7PWO
貴虎「ご注文は、何にいたしましょう?」
鈴「うーん、そうね……んん?」
鈴「この『執事にご褒美セット』って何よ?」
貴虎「……内容がわからないものは、頼まない方がいい」
鈴「いや、だから聞いたんでしょうが」
貴虎「私のオススメは、ケーキセットだ」
鈴「ん……? コラ、なんか誤魔化そうとしてるでしょ?」
貴虎「……まさか、あり得ん」
鈴「……じゃあ、この『執事にご褒美セット』ひとつね」
貴虎「……かしこまりました」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 22:29:36.29 ID:T/v12n7v0
貴虎「……お待たせいたしました、お嬢様」 コトッ
鈴「う、うん……」
貴虎「……」
鈴「……って、なんで一緒に座ってるのよ?」
貴虎「……」
鈴「いや……まぁ、別にいいけど……」
貴虎「……」
鈴「で、これはどういうセットなの?」
貴虎「……食べさせ合う」
鈴「……はい?」
貴虎「……執事と食べさせ合う、セットだ」
鈴「な、何よそのセット!? 客が、執事にお菓子を食べさせるって……」
貴虎「あぁ……企画したやつを見つけ出し、必ず説教してやる」
鈴「い、いや……でも、まぁ折角だし……ついでだし……」 モジモジ
鈴「ご褒美、あげようかしらね」 ヒョイ
鈴「はい、あーんしなさいよ」
貴虎「……」 パクッ
貴虎「はぁ……」 ポリポリ
鈴「それで……食べさせてあげたんだから、あたしも……」
貴虎「……口を開けろ」 ヒョイ
鈴「あーん」 パクッ
鈴「うん……なんか、いいかも……」 ポリポリ
貴虎(……物好きな客というのは、案外多いものだな)
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 22:30:20.88 ID:T/v12n7v0
今日はここまで
続きはまた明日
けど、明日は舞台斬月のライブビューイングに行くから、あんまり投下できないかも
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 20:31:32.47 ID:+g2kNPHkO
それじゃ、投下していく
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 20:32:12.81 ID:+g2kNPHkO
それから少し経って
貴虎(客足が絶えないのはいいが、休めないのは考え物だな)
トントン
貴虎「ん?」
礼子「ちょっといいですか?」
つ『名刺』
貴虎(巻紙礼子……? スーツということは、外部の人間か)
貴虎「私に何か用か?」
礼子「はい。呉島さんの斬月に、ぜひ我が社の装備を使っていただけないかなぁと思いまして」
貴虎「必要ない。斬月は完成している」
礼子「まぁ、そう言わずに」 ガシッ
礼子「こちらの追加装甲や、補助スラスターなどいかがでしょう? さらに今なら、もうひとつ、脚部ブレードも付いてきます」
貴虎「いらん。私も、まだ仕事が残っている。失礼する」
礼子「……ちっ」
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 20:40:27.34 ID:+g2kNPHkO
貴虎(さて、次の客は……)
楯無「ジャジャーン!」 バッ
扇子『神出鬼没』
貴虎(……いつか来るだろうとは思っていたが、まさかメイド服とはな……)
楯無「うふふふ……ときに貴虎くん、生徒会の出し物『観客参加型演劇』に協力しなさい!」
貴虎「断る。そんな暇はない」
楯無「とにかく、お姉さんと来る!」 ガシッ
貴虎「断ると言っただろう!」
楯無「はい、決定〜!」
貴虎「っ、相変わらずの馬鹿力め!」 ズルズル
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 20:41:18.19 ID:+g2kNPHkO
それから、更衣室
楯無「じゃあ、これに着替えたらステージに来てね。それと、大事なのは……」 ゴソゴソ
楯無「はい、王冠」 ゴトッ
貴虎「まず内容を説明してくれ」
楯無「大丈夫、大丈夫! 基本アドリブのお芝居だし、必要な指示はこっちからも出すから」
貴虎(何が大丈夫なんだ……)
楯無「それじゃあ、よろしくね。貴虎くん」
貴虎「……」
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 20:50:07.07 ID:+g2kNPHkO
そして、ステージ
「さぁ、幕開けよ!」
ガー
「むかーしむかし……あるところに、シンデレラという少女がいました」
パッ
貴虎(その説明で、なぜ俺にスポットライトが当たる? 本当に意味がわからん、あの女は……)
「否……それはもはや名前ではない」
貴虎「……何?」
「幾多の武闘会を抜け、群がる敵兵をなぎ倒し、灰塵を纏うことさえ厭わない、地上最強の兵士たち……」
貴虎「……」
「彼女らを呼ぶに相応しい称号……それが灰被姫[シンデレラ]!」
貴虎(……もう、ついていけん)
「王子の冠に隠された軍事機密を狙い、少女たちが舞い踊る!!」
キャー!
バンッ!
貴虎(っ、ステージに灯りが……)
「今宵もまた、血に飢えたシンデレラたちの夜が始まる……」
鈴「ふっ、もらったぁ!」 ブンッ
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 21:00:13.11 ID:+g2kNPHkO
貴虎(後ろか) サッ
ダンッ
鈴「ちっ、外した……その王冠、よこしなさいよ!」
貴虎(よくわからんが……とにかく、やってくる相手を倒せばいい、ということか)
貴虎(それならば、話が早い)
貴虎「いいだろう、かかってこい」 グッ
鈴「はぁっ!」 ブンッ
貴虎「……」 サッ
ガシッ
鈴「あっ」
貴虎「ハッ!」 グイッ
鈴「きゃっ!」 ドテン
貴虎(まずはひとり……ん?)
ピッ
貴虎(っ、レーザーポインター!?) サッ
パンッ!
貴虎(この射撃精度……オルコットに違いない)
貴虎(上手[かみて]の塔の上か) ダッ
鈴「待ちなさい!」
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 21:10:05.65 ID:k0zBGhHkO
少し前
楯無「今回、貴虎くんが被っている王冠を獲った人には……」
楯無「貴虎くんと同居する権利をプレゼントしようと思うの」
箒「!」
セシリア「!」
鈴「!」
シャル「!」
ラウラ「!」
シャル「で、でも……そんなことって……」
楯無「大丈夫……生徒会長権限で、可能にするわ」
シャル(そもそも、僕たちが貴虎に勝てるの……?)
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 21:11:01.47 ID:k0zBGhHkO
戻って、ステージ
セシリア「貴虎さんが、こちらに……一旦、隠れましょう」 サッ
セシリア(今日は何がなんでも、勝たせていただきますわ……!)
貴虎「ここにいたか」
セシリア「っ!? 貴虎さん、どうしてここが!?」
ガシッ
貴虎「ハッ!」 グルッ
セシリア「きゃあっ!」 ドテッ
貴虎(これでふたり……襲撃を待つより、こちらから探しに行くのも手か)
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 21:20:06.27 ID:cidF2URE0
貴虎(さて、どこにいる……)
シャル「貴虎、こっちこっち!」 ササッ
貴虎「デュノア?」
シャル「こっちから抜けて、逃げられるよ」
貴虎「……お前は、敵ではないのか?」
シャル「え? えっと……あはは」
貴虎「……まぁいい、感謝する。また後で会おう」
シャル「あっ……ちょっと待って!」
貴虎「どうした?」
シャル「その……できれば、王冠を置いていってくれると嬉しいな」
貴虎「……それが狙いか」
シャル「え!? いや、そういうわけじゃ……」
貴虎「冒頭のナレーションは『冠を狙い』……そして、凰も『王冠をよこせ』と言っていた」
貴虎「思えば、オルコットもこれに照準を合わせていた……つまりこれは、私の王冠の争奪戦というわけだ」
「ピンポーン! その通り!」
貴虎(あの女……どこから見ている?)
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 21:30:11.55 ID:cidF2URE0
「王子様にとって、国とは全て。その重要機密が隠された王冠を失うと……」
ビリッ!
貴虎「何っ!?」
「自責の念によって、電流が流れます!」
貴虎(あの女……っ!)
「あぁ、なんということでしょう! 王子様の国を想う心は、そうまでも重いのか!」
「しかし、私たちには見守ることしかできません……あぁ、なんということでしょう!!」
貴虎(決めたぞ。このゲームの最終目標は、あの女を倒すことだ)
セシリア「そこまでですわ。神妙になさって!」
鈴「諦めなさいよ!」
貴虎(あいつら……もう少し強めに投げておくべきだったか)
貴虎「いいだろう、3人まとめて相手をしてやる……!」
シャル「えぇ!? ちょっと、僕は……」
貴虎「ハッ!」 グイッ
鈴「ひゃあっ!」 バンッ
貴虎「フッ!」 グルッ
セシリア「きゃあっ!」 ドテッ
貴虎「ハァッ!」 グルン!
シャル「なんで僕までぇ!?」 ドテン!
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 21:40:16.07 ID:cidF2URE0
貴虎(さて、次は誰だ……っ!) ピクッ
貴虎(気配を感じる……今度は下手[しもて]の塔か) ダッ
タタタッ
貴虎「……」 スタッ
ラウラ「待っていたぞ」
貴虎(ボーデヴィッヒか……さっきの3人より手こずりそうだな)
ラウラ「王冠は私がいただく……!」 チャキッ
貴虎「かかってこい」 グッ
ラウラ「ハッ!」 ブンッ
貴虎「……」 サッ
ラウラ「ハァッ!」 ブンッブンッ
貴虎「お前だけ、ナイフを2本も使うのは……」 サッ
ドンッ
ラウラ「何っ!?」
貴虎「ずるいな」 パシッ
貴虎「これで対等な勝負だ」 チャキッ
ラウラ「小癪な……ハァッ!」 ブンッ
貴虎「……」 ブンッ
ガキィィ……!
ガキン!
貴虎「ボーデヴィッヒ」 ガキンッ
ラウラ「なんだ!」 ガキンッ
貴虎「足元が留守だぞ」
ラウラ「っ!?」
貴虎「ハッ!」 ガッ!
ラウラ「足が……!!」
ガシッ
グイッ
貴虎「ハァッ!」 グルッ
ラウラ「ぐぅっ……!」 ダンッ
貴虎「そこでしばらく休んでいろ」
ラウラ「フッ……さすが宿敵[とも]だ……」
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 21:50:02.38 ID:cidF2URE0
貴虎(残るはひとり……どこにいる……)
箒「貴虎!」
貴虎「……お前もデュノアと同じか」
箒「何?」
貴虎「戦わずに、この王冠を手に入れようと、そういう魂胆だろう?」
箒「……」
貴虎「単刀直入に聞きたい。なぜ、お前たちはこの王冠を狙う?」
箒「っ、それは……それはだな……」
箒「あの……その……」
貴虎「……?」
ラウラ「王冠は私がいただく!」 バッ
貴虎(っ! もう復活したか……!)
箒「そうはさせん!」 チャキッ
ガキン!
ラウラ「どういうつもりだ……!」
箒「邪魔をするな、ラウラ!」
ラウラ「こっちのセリフだ!」
ジリッ……
ラウラ「まずはお前から排除してやろう」
箒「やれるものならな……!」
キンッ!
ガキィッ!
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 22:00:10.19 ID:cidF2URE0
貴虎(狙う相手を間違えているぞ……まぁいい、このまま同士討ちをしてくれれば……)
「さぁ! ただいまから、フリーエントリー組の参加です!」
「王子様の王冠を目指して、頑張ってくださーい!!」
貴虎(……あの女ぁっ!)
「呉島くん、大人しくしなさーい!」
「私と幸せになりましょう、王子様!」
「王冠をちょうだい!」
「くれしー、待ってよー」
貴虎「……いいだろう。だが、覚悟しておけ」 スッ
貴虎「今の私は、少々頭にきている……手加減はできんぞ!」 グッ
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 22:00:52.70 ID:cidF2URE0
貴虎「ハァッ!」 ブンッ
「キャー!」 ドテッ
貴虎「はぁ……はぁ……」
「すごーい! 呉島くん、もう100人斬り達成!」
「呉島くん、はやーい!」
「呉島くん、ゼツリーン!」
「さすが呉島くんだ!」
貴虎「誤解を招く言い方をするな!」
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 22:10:06.23 ID:cidF2URE0
「呉島くん、ちょっと疲れてる!」
「今がチャンス!」
「私も投げてー!」
貴虎(多勢に無勢か……というより、生身の女子相手に本気が出せん……!)
貴虎(一旦どこかに隠れて、体力を回復するか……) ダッ
礼子「呉島さん、こっちへ」 サッ
貴虎「お前は……」
礼子「早く!」
貴虎「……」
タタタッ
スタッ
貴虎(ここは……ステージ地下の更衣室か)
礼子「ここなら、見つかりませんよ」
貴虎「……礼を言う前に、ひとつ聞きたい。外部の人間であるお前が、なぜここに入れた?」
礼子「はい。この機会に斬月をいただきたい、と思いまして」
貴虎「……何?」
礼子「いいから、とっとと寄越しやがれよぉ!」 ブンッ
貴虎「っ、お前は何者だ?」 サッ
礼子「私かぁ? 企業の人間になりすました……」 グシャッ
礼子「謎の美女だよぉ!」 ガシン!
礼子「ほら、嬉しいかぁ?」
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 22:20:05.68 ID:cidF2URE0
貴虎「……変身」 ピカーン
礼子「待ってたぜぇ……そいつを使うのをよぉ!」
礼子「喰らえ!!」 バシュン!
貴虎「……」 サッ
ドカーン!
礼子「ほう? やるじゃねぇか」
貴虎(無双セイバー……) ピカーン
貴虎「喋っている暇があるなら、さっさとかかってこい」 チャキッ
礼子「言うじゃねぇか……これ見てビビんなガキがぁ!」 ピカーン
貴虎「それがお前のISか」
礼子「そうさ、アラクネだよ。コイツの毒はキツいぜぇ?」
礼子「そらよ!」 バシュバシュバシュン!
貴虎「……」 ドウッ
ドカーン!
礼子「ハッハッハッハッ!」バシュバシュバシュン!
貴虎「誰だか知らんが、中々やるな」 サッ サッ
礼子「あぁ? 知らねぇのかよ」
礼子「秘密結社『亡国機業[ファントム・タスク]』がひとり、オータム様って言えば……わかるかぁ?」 ブンッ
貴虎「秘密なら、堂々と口にするな」 ガキン!
オータム「何も知らずに死んでくのは可愛そうだからなぁ? 冥土の土産に教えてやるよ!」
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 22:30:19.72 ID:cidF2URE0
貴虎(面倒な……だが、ちょうどいい機会だ) ピッ
貴虎「新しい力を試してやる……」 カチャ
ガチャッ
キュイン
『イチゴ』
ジジジジ……
ヒュゥゥ……
オータム「あ? なんだぁ?」
ガチャッ
キュイーン
『ロックオン』
プォォォ……
ザシュッ
『ソイヤッ!』
ヒューン
ズボッ
『イチゴアームズ!』
ガシャッ
キュイィィィン……
『シュシュッと! スパーク!!』
ガシャン!
キンキン!
オータム「おうおう、随分と可愛らしい姿になったじゃねぇか!」
貴虎(そうだ。私にしては可愛すぎる……そんな理由で、一度は採用を見送ったアームズ)
貴虎(だが……これなら身軽に、こいつの懐に入り込めるかもしれん)
貴虎「いくぞ……!」 チャキッ
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/31(日) 22:30:45.62 ID:cidF2URE0
今日はここまで
続きはまた明日
87 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 19:59:12.83 ID:zLdtmU2Z0
それじゃ、投下していく
それと、名前を思い出したんで今回からつけていく
88 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 19:59:52.87 ID:zLdtmU2Z0
ところ変わって
真耶「ロッカールームに、未確認のIS反応です!」
千冬「やはり、学園祭を狙ってきたか。しかし、単騎とは……」
千冬「山田先生、敵の増援に警戒。一般生徒には、避難命令を」
真耶「了解しました」
千冬(貴虎……)
89 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 20:00:36.00 ID:zLdtmU2Z0
ステージ
鈴「ったく、貴虎はどこに行ったのよ……」
箒「引き際を心得ているやつだ」
ラウラ「ふん、貴様たちが私と宿敵[とも]の邪魔をするから……」
セシリア「だいたいシャルロットさん、あなたはどうして戦わないんですの?」
シャル「そんなこと言ったって、貴虎に勝てる気しないし……」
ブーッ ブーッ
シャル「ん?」
真耶『ロッカールームに、未確認のIS出現。斬月と交戦中』
箒「っ!」
真耶『専用機持ちは、ただちにISを展開、状況に備えてください』
ラウラ「了解!」
ピカーン
千冬『オルコットと凰は哨戒につけ!』
鈴「はい!」 ドウッ
オルコット「はっ!」 ドウッ
千冬『篠ノ之、デュノア、ボーデヴィッヒは、呉島の援護。ロッカールームへ向かえ!』
箒「わかりました」
デュノア「よし、行こう!」
90 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 20:10:05.83 ID:zLdtmU2Z0
そのころ、上空
鈴「右舷前方、クリア」
セシリア「こちらも異常ありません」
真耶『高速で移動中のISを捕捉』
千冬『ふたりとも、油断するな』
セシリア「わかりました」
鈴「食い止めるわよ」
ゴォォォ……!
鈴「っ、IS反応確認! 急行します!」
セシリア「……っ!? そんな、まさか……」
セシリア(あれはBT2号機、サイレント・ゼフィルス……!)
鈴「どうしたの、セシリア!? 撃って!」 バシュン! バシュン!
セシリア「……あっ、はい!」 ダンッ! ダンッ!
???「……」 ガキン! ガキン!
鈴「っ!? 何よ、アイツ!」
セシリア「ならば、こちらも……!」 ドンッ! ドンッ!
???「……」 キィィィ……!
ドガーン!
鈴「そんな……!」
91 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 20:20:06.40 ID:zLdtmU2Z0
セシリア「今のは、BT兵器のフレキシブル……! そんなこと……」
セシリア「現在の操縦者では、わたくしがBT適正の最高値のはず……それが、どうして……」
???「……」 ガチャン! ガチャン!
鈴「ビットが!」
シュゥゥ……
ゴォォォ……
鈴「セシリア、危ない! 逃げて!!」
セシリア「くぅ……っ!」 ビューン
バキュン! バキュン!
???「……」 ドウッ
92 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 20:30:10.30 ID:zLdtmU2Z0
そのころ、更衣室
オータム「オラァッ!」 ブンッ
貴虎「……」 サッ
貴虎「ハッ!」 ザンッ
オータム「ちっ……」
貴虎「フッ!」 ザシュッ
オータム「っ!」
貴虎「ハァ!」 ズバッ
オータム「このガキ……っ!」
貴虎「ハァッ!」 ズバァ!
オータム「ぬぁああ!!」 バタッ
オータム(こいつ、こっちの手を全部弾いた上に追撃してきやがる……!)
貴虎「どうした? 秘密結社とやらの実力は、この程度か?」
オータム「っ! 調子に乗るなよガキィ!!」 バシュッ
バッ
貴虎(っ! 蜘蛛の糸が、ネット状に広がって……) ギリッ
貴虎(身動きが……!) ギリッ
オータム「やっぱガキだなぁ……蜘蛛の糸を甘く見るからそうなるんだぜぇ」
オータム「ハッ! 楽勝だぜ、まったくよう!!」
貴虎「……」 ザクッ
93 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 20:40:12.54 ID:8xQUvu8VO
オータム「さぁて、斬月をいただくかねぇ。テメェには用がねぇから、殺してやるよ!」
「あら、そういうのは困るわ」
オータム「何っ!?」 バッ
楯無「貴虎くん、私のお気に入りだから」
貴虎「……来たのか」
オータム「……テメェ、どこから入った? 今、ここは全システムをロックしてんだぞ……」
楯無「私はこの学園の生徒会長……故に、そのように振る舞うのよ」
オータム「ハァ? 何言ってんだテメェ……喰らいやがれ!」 ザンッ
グサァ……
オータム「っ!? 手応えがない、だと……?」
楯無?「うふふ……」 ドロォ……
バシャッ
オータム「コイツは……水か……!?」
「ご名答。水で作った偽物よ」
オータム「っ!」 バッ
楯無「はっ!」 ズバッ
オータム「ちっ……」
楯無「あら、浅かったわ。そのIS、なかなかの機動性を持ってるのね」
オータム「何なんだよ、テメェはよぉ!?」
楯無「更識楯無、そしてIS『ミステリアス・レイディ』よ。覚えておいてね」
貴虎(これが、この女のIS……ちょうどいい、性能を見せてもらおう)
94 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 20:50:35.01 ID:zLdtmU2Z0
オータム「今ここで殺してやらぁ!」 バババババッ!
バシャッ
ポチャッ
楯無「ふふっ、なんていう小物発言かしら」
貴虎(水の盾か。随分と高い防御力だが、どういうカラクリだ?)
オータム「くそっ、ガキが……調子づくな!」 ドウッ
バシャッ
楯無「そんな攻撃じゃあ、この水は破れないわ」
オータム「ただの水じゃない……何なんだ!?」
楯無「あら、鋭い。この水はISのエネルギーを伝達するナノマシンによって制御されてるのよ……すごいでしょ?」
楯無「ところで知ってる? この学園の生徒会長というのは『最強』の称号だということを」
オータム「知るか!」 ガシッ
楯無「……」
オータム「ハハハッ! 最強だと? 笑わせんなよ!」 バババババッ!
ドカーン!
楯無「っ……」
貴虎「……」
楯無「……貴虎くん、ここはお姉さんにお任せ」
オータム「ハッ、余裕ぶるんじゃねぇよ」 ガシッ
楯無「っ……動けなくなっちゃった」
オータム「今度こそ、もらったぜ……!」 キィィィ……!
95 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 21:00:21.23 ID:zLdtmU2Z0
楯無「……ねぇ? この部屋、暑くない?」
オータム「ハァ?」
楯無「気温じゃなくて、人間の体感温度が」
オータム「何言ってやがる?」
楯無「不快指数っていうのは、湿度に依存するのよ……湿度、高くない?」
オータム「えっ……?」
楯無「霧は隙間から、装甲の中まで入り込む」
オータム「っ!?」
楯無「そう、その顔が見たかったの。己の失策を知った、その顔をね……ふふっ」 パチンッ
ボン! ボン!
ドガーン!
オータム「ぐぁぁああああ!!」
楯無「ミステリアス・レイディ……霧纏の淑女を意味するこの機体は、水を自在に操るのよ。エネルギーを伝達する、ナノマシンによってね」
貴虎(この女……やり方はスマートだが、性格が良いとは言えないな……)
楯無「ところで貴虎くん、そろそろ起きたら? 君、とっくに動けるようになってるでしょ?」
貴虎「……気づいていたのか」
斬月『装備展開:イチゴクナイ』
貴虎(あいつの『アラクネ』という発言から、糸による攻撃は予測できた。このアームズを選んだのは、正解だったな)
貴虎(もっとも、狙った不意打ちは、この女が来たせいで決まらなかったが)
楯無「お姉さんのこと知りたそうだったから、見せてあげたのよ。だから……今度は貴虎くんのいいところ、見せて欲しいな」
貴虎「……いいだろう。そろそろ、新しい装備を試そうと考えていたところだ」 カチャッ
96 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 21:10:11.77 ID:zLdtmU2Z0
ガチャッ
キュイン
『マンゴー』
ジジジジ……
ヒュゥゥ……
楯無「前から思ってたけど、君の装備って面白いよね」
ガチャッ
キュイーン
『ロックオン』
プォォォ……
ザシュッ
『ソイヤッ!』
ヒューン
ズボッ
楯無「特にそこが」
貴虎「……よく言われる」
ガシャッ
キュイィィィン……
『マンゴーアームズ!』
ガシャン!
ガァン!
『ファイト・オブ・ハンマー!!』
貴虎(以前使ったときは、葛葉紘汰に土をつけられたが……あの戦いから、このアームズのコツは掴んでいる)
斬月『装備展開:マンゴパニッシャー』
97 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 21:20:12.21 ID:zLdtmU2Z0
オータム「まだ……まだだ!!」
貴虎「その意気だ。ハッ!」 ブンッ
オータム「ぐっ……!」
貴虎「フンッ!」 ガンッ
オータム「がぁっ!」
貴虎「ハァッ!」 ガァン!
オータム「ぐぁああ!!」 バタッ
オータム「チクショウ……!」 ダッ
楯無「貴虎くん、追いかけて!」
貴虎「……」 ダッ
バァン!
貴虎(っ、何者かが天井を……)
???「迎えに来たぞ、オータム」 ニヤッ
オータム「テメェ、私を呼び捨てにするんじゃねぇ!」
貴虎(新手か。なんだ、あのISは……?)
98 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 21:30:06.02 ID:zLdtmU2Z0
オータム「くそっ……っ!?」 ピタッ
ラウラ「貴様、逃がさん」 サッ
シャル「往生際が悪いよ」 ガチャッ
箒「これまでだな」 チャキッ
バシュン! バシュン!
ラウラ「っ!? ビットか!」
???「……」 ズバッ
パンッ
オータム「くっ……!」
ラウラ「AICを無効化しただと……!?」
???「この程度か、ドイツのアドバンスド」
ラウラ「っ! 貴様、なぜそれを知っている!?」
???「言う必要はない」 ピピッ
???「っ、スコールか……わかった」
???「迎撃態勢が整い過ぎた。帰投するぞ、オータム」 ドウッ
バシュン! バシュン!
ラウラ「くっ……!」
オータム「ちっ……!」 ダッ
ガチャッ
ピッ……ピッ……ピッ……
ダダダダダッ
シャル「っ、ISが自立して!」
箒「まさか、爆弾か!?」
貴虎「っ、離れろ!」 ダッ
シャル「貴虎!?」
99 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 21:40:07.22 ID:zLdtmU2Z0
貴虎(このアームズの必殺技は、パワーを利用してエネルギーを『投げる』もの。それを応用すれば……)
ザシュッ
ジャキン
『ソイヤッ!』
貴虎(一か八かだ……!) ガシッ
『マンゴーオーレ!!』
キンッ!
ゴォォォ……!
貴虎「はぁぁ……ハァッ!!」 ブンッ
ヒュゥゥ……
ピッ、ピッ、ピピピピ……
オータム「はっ……? 嘘だろ……」
ドガーン!!
モクモク……
箒「爆煙でよく見えん……!」
ラウラ「仕留めたか……?」
貴虎「……いや、逃げられた」
シャル「そんな……」
貴虎(亡国機業[ファントム・タスク]……またいつか、相見えるかもしれんな……)
100 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 21:40:38.38 ID:zLdtmU2Z0
それから、ところ変わって
真耶「ISアラクネは、コアを抜き出して破壊。もう一機は、イギリスで強奪されたブルー・ティアーズ2号機『サイレント・ゼフィルス』のようです」
千冬「亡国機業[ファントム・タスク]という輩か」
真耶「はい。他にも幾つかのISを強奪しているらしく、次のターゲットが斬月だったようです」
千冬「狙う相手を間違えたな」
真耶「そんなこと言って、念のため、更識さんに警護をお願いしてたじゃないですか。先生、心配じゃなかったですか?」
真耶「本当は、ご自分でしたかったとか……」
千冬「馬鹿を言うな。それが更識の役割だ」
101 :
◆QNL99VWo9I
[saga]:2019/04/01(月) 21:50:06.53 ID:zLdtmU2Z0
それから、貴虎の部屋
楯無「というわけで、お姉さんは貴虎くんの警護のため、近くにいたってわけ」
貴虎「それならそうと最初から言え」
楯無「それじゃ意味ないじゃない」
貴虎「それに、警護というわりには、必要のない行動も多かったように思えるが?」
楯無「んー、例えば?」
貴虎「……言わずともわかるだろう」
楯無「えー? お姉さん、わかんなーい。貴虎くん、教えて?」
貴虎「だから、その……扇情的な格好のことだ!」
楯無「やーん、貴虎くんのエッチ!」
貴虎(この女……っ!)
楯無「ふふっ」
貴虎「……」
楯無「……更識家は昔から、この手の裏工作……暗部に強いのよ」
貴虎「……そうか」
楯無「でも、当面の危機は去ったようだし、私も少しは気が休まるわ……まとわりついて、ごめんね」
貴虎「……やり方はどうあれ、私のための行動だったのだろう? なら、それはもう構わん」
楯無「……私が近くにいなくなると、寂しい?」
貴虎「いや、まったく」
楯無「……」
貴虎「……」
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