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エリカ「姉さん」
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222 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/24(金) 22:10:22.30 ID:N46VW/iU0
ダージリン『そうですわね。さすがにおイタが過ぎましたの』
まほ「頼むぞダージリン。お前がトチ狂ったら話が進まなくなる」
アンチョビ『それで西住。先程言った通り、黒森峰、プラウダ、大洗女子 vs それ以外というチーム分けの件だが』
まほ「ああ。随分とざっくりした編成だとは思った」
カチューシャ「良いじゃないの。優勝校vsそれ以外って分かりやすいでしょう?」
まほ「それはそうだが…」
ケイ『私たちとしては相手は強い方がHEAT UPするわ!』
ミカ『向かい風に逆らうのも悪くはないさ』
西『腕がなりますよ!』
223 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/24(金) 22:12:22.41 ID:N46VW/iU0
まほ「うむ。…だが、聖グロ、サンダース、継続、そして知波単に島田流までいるとなれば戦力に偏りが出ないか?」
アンチョビ『ほう…アンツィオは戦力外と?』
まほ「そんなことはない。安斎の偵察は大学選抜戦にて大いに脅威と判断した」
まほ「重装甲・高火力だけが取り柄のチームには無い、小回りの聞く戦車による煽動、撹乱、そして偵察は決して馬鹿には出来ん」
エリカ「…」
みほ「…」
アンチョビ『その通りだ。アンツィオ高校だってやればできる。我々は決して弱く…じゃなくて』
みほ「でもお姉ちゃんの言うとおり、戦力差出そうだよね」
まほ「恐らくはな。だがそれは同時に我々にとっても良い訓練となる。それにどうしても差がありすぎるならその都度修正すれば良い」
エリカ「そうね。最も修正が必要かどうかは怪しいけれど」フフン
まほ「油断するなと言っているだろう」
ダージリン『楽しみですわね…"実現するのが"』
まほ「そうだな。だが"期待し過ぎる"のも良くないぞ」
ダージリン『?』
224 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/24(金) 22:13:37.55 ID:N46VW/iU0
〜〜〜〜
ダージリン『…さて、大方お話は決まりましたし、そろそろお開きと致しましょう』
まほ「そうだな。長々と付き合わせて済まなかった」
ダージリン『構いませんの。こうやって他校を交え和気藹々とするのも良いものですから』
まほ「ああ。その通りだ。和気藹々しすぎて通常の5倍ほど時間が掛かった点を除けばな。それでは、よろしく頼むぞ」
ダージリン『ええ。御機嫌よう』
ツーツーツー
225 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/24(金) 22:14:41.03 ID:N46VW/iU0
まほ「…というわけだ」
カチューシャ「面白いことになってきたわね」
まほ「全くだ。きっと誰かが演習について詳しくレポートしてくれる者が現れるだろう」
みほ「レポート?」
まほ「うむ。この演習について書いてくれる人だ。少なくとも私は現状で手一杯だからな」
エリカ「そう…」
カチューシャ「…どういうこと? ノンナ?」
ノンナ「カチューシャ、触れるべきでない情報もあります」
まほ「全くだ。いらん事を言い過ぎたせいで話がどんどん脱線している」
今の心境を語るなら、夏休みの最後の日に、宿題を1つもやっていなかった事に気が付いた時に似ている。
素直に『練習試合は中止だ』とでも言っておけば丸く収まったものを、いらん話をしたせいでどんどん拡大してしまった。
戦線を拡大しすぎて物資も人員も足りないジリ貧のドイツそのものだ…。
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/25(土) 11:53:23.92 ID:hfgtkpRo0
話を広げ過ぎてエリカが西住家の一員と化してることに誰も突っ込まなくなってるw
227 :
訂正です
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/27(月) 04:08:45.58 ID:LdRMzVtw0
>>221
誤) カチューシャ「はしゃいじゃって。まるで子供ねぇミホーシャ」
正) カチューシャ「はしゃいじゃって。まるで子供ねぇマホーシャ」
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/27(月) 12:29:18.54 ID:c+5xXZNKO
しえんしえん
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/29(水) 11:07:40.49 ID:QWBGpTGW0
乙
いやいや、
>>1
の試合(演習)描写は好きだぞ
ちなみにこれは対空戦車シリーズの続編かな?
ダージリンに対する西の描写が気になった
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/29(水) 19:07:06.52 ID:jypLknCQo
待ってますよ
231 :
訂正です
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 19:58:14.84 ID:iWsjbRHN0
【まほの部屋】
エリカ「…あれ? ちっちゃいのとブリブリの人は?」
まほ「…カチューシャとノンナのことか。二人ならもう帰ったぞ。何でも"ほっとくと部下のロシア人が餓死する"らしい」
エリカ「ロシア人ねぇ…」
まほ「プラウダ高校はソビエトを模倣した学校だ。ロシアやウクライナから留学する生徒もいるだろう」
エリカ「ふーん。そう考えるとウチには留学生は一人しかいないわね」
まほ「そういえばツェスカの事を忘れていたな」
エリカ「ツェスカで思い出したけど、別のヤンキー学校にも日独混血の生徒がいわね。…ツェスカとは仲が悪いらしいけど」
まほ「そうか」
念の為補足すると、『ツェスカ』というのは黒森峰に留学しているドイツ人生徒だ。簡単に言えば今のエリカを更に喧しくしたようなやつである。
以前はドイツの名門校にいたとのことだが、同じ学校のエースだった生徒と一悶着あったらしく、来日してから偶然再開したそうだ。
しかし、ドイツでの出来事が原因で、日本でもギクシャクした関係にあるという。
その生徒と私は面識がある。何しろ彼女はみほの幼馴染だ。何年も前の話だが(大洗にいる角谷の妹かと思うほど欲にているが、どうやら無関係のようだ)。
そして、彼女もまた私と同じティーガーIに乗る女。もしかしたら…いつか、何処かで彼女とは手合わせをする時が来るかもしれない。
232 :
↑「訂正です」ってあるけどミスです…
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 19:59:50.72 ID:iWsjbRHN0
まほ「そろそろ寝るか」
エリカ「もう寝るの? 明日は日曜日なのに」
まほ「日曜日だとしても夜更かしは健康に悪い。早寝早起きを心がけろ」
エリカ「ふーん」
まほ「…何だ?」
エリカ「いや、姉さんって年寄り臭いな…って」
まほ「…」
エリカ「…」
まほ「…」
エリカ「…」
まほ「…寝る」ゴロン
エリカ「あ! ちょっと! 私の布団無くなるじゃない!」
まほ「知るか。お前などダンボールと新聞紙で上等だ」
エリカ「それじゃホームレスじゃない!!」
まほ「犬みたいにキャンキャンはしゃぐな」
233 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:07:50.18 ID:iWsjbRHN0
今日もまた色々あった。…いや、昨日以上に色々あったかもしれない。
エリカに枕にされて叩き起こされ、みほが家に帰ってきて、お母様とみほが和解した。
デパートへ買い物に行ったら赤星と直下と遭遇し、二人を副隊長補佐に任命した。
帰ってからはみほによって部屋の外をボコまみれにされた。エリカがまた発狂してた。
昼食のラーメンがやたらニンニクがキツく風呂に入り、エリカのしょーもない一発芸を見せらた。
風呂で気絶して目が覚めてからは、カチューシャやノンナが家にやってきた。
そして皆で鍋を囲いながら談笑に花を咲かせ、練習試合のことをすっかり忘れる。
色々ありすぎた。良い意味でも悪い意味でも。
いずれにせよ、ここまで充実した一日は本当に久し振りだ。
何しろ、つい先日まで私はひたすら戦車道に没頭していた。高みを目指すことだけを目標に過酷な訓練を繰り返す日々だった。
それだけに、これほど和気藹々とした温もりある生活を肌で感じたのが遠い昔のことに思える。
戦車道で心身を鍛える日々も良いが、その一方で、心身をリラックさせられる居場所を築くのも大事だろう。
…そんな風に、一日の出来事を振り返りながら私は寝床に就いた。
就いたのだが…
234 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:10:09.85 ID:iWsjbRHN0
エリカ「」スヤァ
まほ「…」グゥゥ
エリカ「」スヤァ..
まほ「…」グゥゥ
エリカ「」スヤァ...
まほ「…」グゥゥゥゥゥ....
寝れん。
…いや、寝れないことは無いとは思うが、こんな時間に腹が減ってしまった。
夕食はみんなで鍋を囲ったのだが、ダージリンから電話が掛かってきたせいで禄に手を付けなかった。
そして彼女の相手が終わり、さあ飯だと思ったら鍋の中身はすっからかんだったという。
おかげで食事の席に着いていたにも関わらず、満足に食事を摂っておらず、今この時間になって猛烈な空腹感に襲われている。
ああ…腹減った…。
235 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:11:20.74 ID:iWsjbRHN0
まほ「…」パサッ
エリカ「」スピー
まほ「…」
エリカ「」スピー
さすがに我慢ならんので、食卓で何か軽くつまもう。
確か買い置きのレトルトカレーがあったはず。
ボンカレーはどう作ってもうまいのだ。
236 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:14:46.88 ID:iWsjbRHN0
エリカ「姉さん………」
まほ「っ…」
エリカ「……プラウダの……シャが………」
まほ「"シャ"って誰だ?」
エリカ「…プラウダ……たいちょう………?」クカー
まほ「…。プラウダの隊長はカチューシャだ」
エリカ「……あいえすつー……」スヤァ
まほ「IS-2に乗ってるのはノンナだろう。お前がさっきブリブリと呼んでた女だ」
急にエリカが喋りだすので驚いたが、どうやら寝言のようだ。
その内容から察するに、プラウダ高校との練習試合の夢でも見ているのだろう。
それはそれで結構。睡眠学習は大いに歓迎しよう。
かくいう私もプラウダと戦う夢をよく見る。昨晩は川に転落した。
237 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:17:01.65 ID:iWsjbRHN0
エリカ「………あぁ……小梅……落ちた……えだめ…」モガ....
まほ「なんだ? 赤星のやつ今度は肥溜めに落ちたのか?」
エリカ「………」クカー
まほ「…」グゥゥゥゥゥゥ
そこでエリカの寝言は終わった。
部下を肥溜めに叩き落とすとはなかなかの邪道である。どんな夢を見ているのだろうか。
夢の内容も些か気にはなるが、それよりも腹が鳴り出してやかましい。
早くカレーを食べよう。
238 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:18:16.40 ID:iWsjbRHN0
【台所】
まほ「確かこのあたりに…」ガサゴソ
まほ「うむ? おかしいな」ゴソゴソ
まほ「参ったな。残しておいたはずだが…」
エリカ「探してるのってコレのこと?」つ[Von Calais]
まほ「ああそれだ。悪いなエリカ」
エリカ「どういたしまして」
まほ「………ん」
エリカ「?」
まほ「うっ!?」
エリカ「」ビクッ
まほ「どうしてお前がここにいる。背後から現れるから驚いただろうが」
239 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:19:14.90 ID:iWsjbRHN0
エリカ「どうしてって…私の家なんだから私がいても別におかしくないでしょう?」
まほ「そういう意味ではない。つい先程までお前は私の部屋で寝ていただろう」
エリカ「ええ寝てたわよ。寝てたけど、急に姉さんの匂いがしなくなったから目が覚めたのよ」
まほ「お前は犬か」
ああ犬だな。
キャンキャン吠え、クンクン甘えて、ゴロゴロくつろぐ。紛うことなき犬だ。
オマケにそこら中に糞尿まで垂れ流す
エリカ「だぁから糞尿は
まほ「静かにしろ。今何時だと思っている」
エリカ「ぐ…」
240 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:21:43.23 ID:iWsjbRHN0
まほ「そもそもここへ何しに来た?」
エリカ「お腹がすいたから何か食べようかなと思って」
まほ「ならば良いものがある」
エリカ「良いもの?」
まほ「庭に沢山草が生えている。今年は菊代さんが帰省の関係で草刈りが遅れたからまだ残っている。マヨネーズをつけて食べるといい」
エリカ「ヤギじゃないんだから食べれるわけ無いでしょう!!」
まほ「静かにしろと言ったはずだ。何度も言わせるな」
エリカ「…姉さん、いい根性してるわね……」
まほ「根性なくして黒森峰の隊長は務まらん」
241 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:23:23.72 ID:iWsjbRHN0
まほ「さて」
エリカ「…」ジー
まほ「…」
エリカ「…」ジー
まほ「…なんだ」
エリカ「姉さん、作れるの? ソレ?」
まほ「なに?」
エリカ「レトルトカレー。作れるの?」
まほ「は?」
エリカ「作れるの?」
…こいつは何を宣っているのだ?
レトルトカレーが作れるか、だと?
馬鹿にするな。レトルトカレーの一つや二つ作れないようで西住流が名乗れるか。
242 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:26:00.78 ID:iWsjbRHN0
エリカ「…いや、西住流以前に、作れないと人としてどうかと思うわよ…」
まほ「案ずるな。レトルトカレーなど作り方を誤る方が難しい」
エリカ「そうよね…?」
まほ「うむ。まずは箱からパウチを出す」
エリカ「ええ」
まほ「そしてパウチを開け口から開封する」
エリカ「そうね」
まほ「そして、鍋に中身をあける」
エリカ「うん」
エリカ「………ん?」
まほ「…どうした?」
エリカ「こっちがどうしたって聞きたいわよ! 姉さん頭打っておかしくなったんじゃないの?!」
頭を打っておかしくなったのはお前だろうが。
…まったく。今のエリカは人に対するモノの言い方を知らんから困る。
良いかエリカ。戦車道というのはな、『乙女の嗜み』として古くから伝わる武芸だ。
そこには礼節あり淑やかで慎ましく凛々しい婦女子の育成を目指すという目的がある。
故に女子高生のように下品にギャーギャー騒ぐような女でいては戦車道をやる者として不適格だ。
243 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:29:37.87 ID:iWsjbRHN0
エリカ「いや、だって…」
まほ「だってもラーテも無い。戦車道を嗜む者ならば品行方正を心がけよ」
エリカ「姉さん、一つ良い?」
まほ「なんだ?」
エリカ「あのね、戦車道は大事よ?」
まほ「うむ」
エリカ「けれども」
エリカ「レトルトカレーひとつ満足に作れないと、婦女子どころか人として失格レベルよ?」
まほ「私がレトルトカレーを作れないとでも?」
エリカ「」コクリ
まほ「…」
エリカ「…」
まほ「…なに?」
244 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:30:59.77 ID:iWsjbRHN0
エリカ「レトルトカレーって、中身を鍋に放り込んだりしないわよ?」
まほ「は? ならばどう作れと言う」
エリカ「お鍋に水を入れて、火にかける」
まほ「…」
エリカ「そこにレトルトカレーのパウチを入れて温める」
エリカ「そして温まったら封を切って、お皿に盛り付ける」
エリカ「…以上」
まほ「…」
エリカ「…」
まほ「…」
エリカ「…」
まほ「…ちょっと待ってろ」ピポパ
エリカ「?」
真相を確かめるために、私はこの手の情報に詳しい人物と連絡を取った。
245 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:33:56.48 ID:iWsjbRHN0
『…も、もしもし……?』
まほ「私だ」
『……わたしさん……? …こ、こんな時間に何よ……』
まほ「………まず私の名前は私さんじゃない……」
『おお…?』
まほ『西 住 ま ほ だ』
『A゛hhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!』バタン ゴン!!
電話の先でケイが絶叫している。
どうせあいつのことだ。ポップコーンでも貪りながらホラー映画でも見ていたのだろう。
こちらが緊急事態だというのに呑気なやつだ。
そして名乗っただけで絶叫するとは失礼なやつだ。
246 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:36:02.05 ID:iWsjbRHN0
ケイ『ま…マホっ! "Orgy of the Dead"観てる時に脅かさないでよっ! ビックリしたじゃない!』ヒリヒリ
まほ「それは悪かった。しかし"死霊の盆踊り"とはまた渋いチョイスだな」
ケイ『…そんなことより、こんな時間に電話して何かあったの? 他の学校の皆はもう寝ちゃってるよ?』
まほ「実はだな、ケイ。お前に頼みたいことがある」
ケイ『へ? 頼みたいこと?』
まほ「ああ。お前にしか聞けないことだ」
ケイ『!! …私に…だけ…?』
まほ「ああ。ケイにだけ」
ケイ『…そ、そう……内緒話…?』
まほ「私とケイだけの"秘密"だ」
ケイ『う、うん…なんでも聞いて…まほ……』ドキドキ
まほ「済まないな」
ケイ『い、良いのよ! 他でもないまほの頼みだもん…!』ドキドキ
247 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:36:54.92 ID:iWsjbRHN0
まほ「レトルトカレーの作り方を教えてくれ」
ケイ『……………………は?』
248 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:40:54.89 ID:iWsjbRHN0
まほ「その、なんだ…」
まほ「私は今までレトルトカレーは、パウチの中身を鍋に入れて加熱するものだと思っていた」
ケイ『…』
まほ「しかし、うちの副隊長が言うには、パウチは開封せず、そのまま水の張った鍋に入れて加熱するのだと言う」
ケイ『…』
まほ「もしかしたら、私は今の今まで重大な過ちを見過ごしていたのかもしれない…」
エリカはレトルトカレーひとつ満足に作れぬ者など人間失格だと言う。
しかし私としては、そのような輩は人間どころかミジンコ以下であり。
そして、その"ミジンコ以下"に私は今まさになろうとしている。
このままでは西住ジンコ流などと罵られてしまう。
だから今ここで名誉を挽回するのだ…!
ちなみに、何故ケイなのかというと、こいつはハンバーガーやフライドチキンといったジャンクフードばかり食べている。
なのでレトルトカレーにも詳しいだろうと思っての選定だ。髪の毛もカレーみたいな色してるしな。
249 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 20:43:09.89 ID:iWsjbRHN0
まほ「…というわけだ」
ケイ『………』
まほ「…おい、ケイ? 聞いているのか?」
ケイ『ファァァァキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!』
まほ「え」
ケイ『なぁにがカレーだ!! 私の純情返しやがれバーーーーーカ!!!!!!』
まほ「お、おい…?」
よくわからんが、ケイが煮込まれたカレーのように沸騰している。
『ポジティブ』という単語を擬人化したかのように開放的で明るいやつだけに珍しい事もあるものだ。
…もしやケイ、お前も腹を空かせているのか?
250 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 21:48:03.40 ID:iWsjbRHN0
ケイ『うっさいうっさい!! 私はお腹なんか空いてないよっ!!』
まほ「そ、そうか。とりあえず落ち着け…」
ケイ『ビークワイエッ!! ちょっとでもドキッとした私がバカだったぁぁぁぁぁぁぁ!!』ウワーン
まほ「そ、それは悪かった…すまん」
ケイ『ダージリンのヤツがドヤ顔でカレシ自慢するからアッタマ来てた矢先にコレよジーザス!!』
まほ「いや、カレシじゃなくカレーを…ん?」
ケイ『何よ…?』
まほ「ダージリンのやつ、男がいるのか?」
ケイ『ええ!いるわよっ! あんにゃろう私の前でイチャコラしやがってぇぇぇぇぇ!!』
まほ「それは知らなかった」
ケイ『なぁにが、"キヌヨさんは私だけの白馬の王子様ですの♥"だ!! ふざけやがってぇぇぇぇ!!!』ウガー
話を要約すると、ケイはカレーではなく"カレ"がいないことに憤慨しておられるようだ。
その憤慨ぶりたるや元の性格が思い出せなくなる程である。女の嫉妬というものは恐ろしい。
だが恋人がいないのは何もケイに限った話ではない。むしろ恋人がいる人の方が少数ではないだろうか。
私もそうだし、ダージリンを除く他の隊長も恐らく恋人などいたことがないはず。少なくとも安斎は確定だ。
ティーガーが鹵獲されたというなら腹が立つのもわかるが、惚気話如きに何をそんなに腹を立てることがあるというのだ。
………ん?
251 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 21:51:41.63 ID:iWsjbRHN0
まほ「キ"ク"ヨさん…?」
ケイ『そうよ キ"ヌ"ヨ! まぁ私はキヌって呼んでるんだけどさ! ダージリンのヤツ年下の子捕まえやがってぇぇぇぇ!!』グギギギ
まほ「なに?! 彼女はダージリンと付き合っているのか?!」
ケイ『そうよ! ダージリンのヤツ、私の前で "普段は騒がしいけれど、二人きりになると…ふふっ♥" ってノロけやがって!!』ガァァァァ!!
まほ「………」
とんでもないことを知ってしまった…。
菊代さんは我が西住家の家政婦だが、まさかダージリンと関係を持っていたとは…。
…いや、驚くべき事実ではあるが、考えてみればそれほど突飛な話でもない。
菊代さんには私やみほが幼い頃から身の回りの世話をしてもらっていた。
その他にも西住流の門下生や来客の応対、家事全般をこなしている。
そんな多忙極まりない家政婦という境遇に息苦しさ、そして虚無を感じていたのかもしれない。
だから、ダンケルクよろしく西住家を飛び出して、思い切って羽根を伸ばしたかったのだろう。
そんな矢先に聖グロのダージリンと出会い、恋に落てしまったのだ。
…菊代さんのことだ。どうせ玉の輿でも狙っていたのだろう。
252 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 21:58:16.80 ID:iWsjbRHN0
まほ「ケイ」
ケイ『な、何よぉ…?』
まほ『彼女は私たちの家で暮らしている』
ケイ『What's!!?』
まほ「それも何年も前からだ」
ケイ『ちょ、ちょっとマホ! それ本当なの!? Really!?』
まほ「ああ。朝は起こしてくれるし、美味しいご飯を作ってくれる』
ケイ『うそ!?』
まほ「嘘なんかじゃない。私たちにとって生活の一部だ」
ケイ『…oh…そうだったんだ………』
まほ「こんな事になっていたなんて、知らなかった…」
ケイ『………』
さすがのケイも黙り込んでしまった。
何しろダージリンの交際相手は菊代さん、つまり"西住流の使者"だ。
このまま両者の関係が深まれば、ダージリンは西住流の女としてその敷居を跨ぐことになる。
そしてそれは、西住流の次期家元は私ではなく、ダージリンが選ばれる可能性があるということを意味する。
家元の座を誰にも渡すつもりはないが、ここに来て新たなライバルが現れたこととなる。
私か、あるいはダージリン、どちらが西住の名を受け継ぐに相応しいか………!
西住流の今後を決める話だ。
今電話をしているケイはともかく、菊代さん交際相手であり私の宿敵となったダージリンにも話しておくべきだろう。
253 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 22:01:31.03 ID:iWsjbRHN0
まほ「…どうやら、泥沼の争いになりそうだな」
ケイ『わ、私…知らなかったよ…あの子がそんな事してるなんて………』
まほ「私も明日、ダージリンに改めて宣告するとしよう」
ケイ『ま、マホ…?』
まほ「なんだ?」
ケイ『その、さっき…私"たち"って言ったよね?』
まほ「ああ、そうだが?」
ケイ『じゃ、じゃぁ他にも?!』
まほ「うむ。私だけでなく、みほもお世話になっている」
ケイ『ミホも!?』
まほ「みほだけじゃない。最近では副隊長のエリカも世話になっている」
ケイ『え゛っ!!?』
まほ「実際に昨夜は一緒に風呂に入っていた。エリカ曰く」
まほ「"気持ちよかった"とのこと」
ケイ『〜〜〜〜〜〜〜〜!!////////////』ポシュッ!
エリカは腕を骨折しているため、一人で体を洗うことができず、菊代さんに手伝ってもらった。
かくいう私やみほも幼い頃は菊代さんに体を洗ってもらうことが何度もあった。
家事をそつなくこなす菊代さんだけに人の体を洗うのもまた上手いのだ。あの絶妙な力加減は病み付きになる。
…ところで、電話の向こうから撃破判定装置が作動する音がしたのだが、ケイは一体何をしているのだろうか?
254 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 22:03:16.65 ID:iWsjbRHN0
ケイ『マホのおバカ〜〜〜〜〜ッ!!/////』
まほ「なっ、何故私が馬鹿なんだ!」
ケイ『そそそそんなの言っちゃダメでしょーがぁ!!//////』
まほ「何をだ?」
ケイ『ききき、気持ちいいいだなんて、はは破廉恥だよっ!/////』プシュゥゥゥゥゥゥゥ
まほ『む…』
確かに。人様の風呂事情を赤裸々にしたのは不味かった。
さすがの私も入浴中に何処をどう洗うかなど暴露されて良い気はしない。
私としたことが軽口を叩きすぎたようだ。気をつけなければ…。
…ところで、電話の向こうから蒸気が噴き出すような音が聞こえるが、ケイは一体何をしているのだろうか?
255 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 22:05:12.11 ID:iWsjbRHN0
ケイ『わ、私…あの子に会ったらどう接すれば良いか分かんなくなっちゃったよ…』
まほ「実を言うと私もだ。明日どんな顔をして接すれば良いか迷う」
ケイ『…ダージリンにちょっぴり嫉妬してたけど、こんな事になってたなんて…ダージリンが可哀想だわ…』
まほ「それでも変えられない事実だ。だから私は明日ダージリンに改めて宣告する」
ケイ『だ、ダメよマホ! ダージリンあんなに幸せそうにしてたんだから!』
まほ「だが言わなければ何時までたっても解決しないだろう?」
ケイ『ダメだって! 絶対ダメっ!!』
まほ「しかし…」
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/30(木) 22:08:14.80 ID:Qv730hDSO
>>229
死ね特定厨
西ダジくらい普通だろ
257 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 22:10:11.83 ID:iWsjbRHN0
ケイ『考えてもみなさいマホ! 恋人ができて幸せ絶頂なあなた自身を!』
まほ「出来たことが無いから考えようがないが、まま幸せなのだろうな」
ケイ『そんな毎日超ハッピーなタイミングで、その恋人が色んなヒトと浮気してたって知らされたらマホはどんな気持ちになるの!』
まま「そうだな。履帯の染みにする程度では恐らく気が済まないだろう」
ケイ『でしょう? ダージリンにとってもそれくらいショッキングな出来事なんだから簡単に言っちゃダメよ!』
まほ「…しかし、ダージリンとは西住流家元の看板を懸けたライバルだ。宣言無しで戦うのはフェアじゃない」
ケイ『浮気にフェアもアンフェアも無いわよっ!!』
まほ「まぁそうだが………うん? 浮気?」
ケイ『まずは私がキヌに"女の子を悲しませるような事しちゃダメ"って話すよ!』
ケイ『それでキヌに謝罪させるの!』
まほ『そうか。…ところでケイ』
ケイ『なに?』
まほ「キヌって誰だ?」
258 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/11/30(木) 22:10:53.89 ID:iWsjbRHN0
ケイ『へ?』
まほ「急に知らぬ人物の名が出てきて困惑しているのだが」
ケイ『なに言ってんのよ。今までずーっとキヌのことでお話してたじゃない』
まほ「えっ」
ケイ『あ、私がキヌって呼ぶからいけなかったわね。キヌヨよキヌヨ』
まほ「キヌヨ? 知波単学園の西絹代か?」
ケイ『そうよ?』
まほ「…」
ケイ『…』
まほ「…」
ケイ『…?』
…どうやら、盛大な勘違いをしていたようだ。
〜〜〜
259 :
誤字訂正
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 05:17:22.05 ID:euFb9Y1k0
>>231-258
まで、いくつか誤字がありました(´・ω・)
>>248
誤: しかし私としては、そのような輩は人間どころかミジンコ以下であり。
正: しかし私としては、そのような輩は人間どころかミジンコ以下である。
>>251
誤: そんな矢先に聖グロのダージリンと出会い、恋に落てしまったのだ。
正: そんな矢先に聖グロのダージリンと出会い、恋に落ちてしまったのだ。
その他、ケイとの電話の会話でまほのカギ括弧が『』になってますが、正しくは「」です。
脳内補完・訂正お願いします。
260 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/01(金) 12:55:02.52 ID:UCJaQ7w9O
おもしろい
261 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 22:47:37.73 ID:VmvplbzM0
ケイ『…なーんだ、ビックリしたぁ』
まほ「全くだ。あのダージリンが私のライバルだと思うと恐ろしくて夜も眠れん」
ケイ『Ahahaha! もし西住流の跡継ぎがダージリンになったらどうなるんだろうねー』
まほ「ティーカップ片手に戦車に乗ってしたり顔で格言を自慢する西住流など全く想像出来ん」
ケイ『あっはははは面白そうじゃないソレ!』
まほ「やらされる側としてはたまったもんじゃない」
ケイ『ダージリンもだけど、聖グロの子たちはどーやって戦車の中でこぼさないでカップ持ってるのかしらね〜?』
まほ「それはわからん。…ひとまずうちの"菊代"さんがダージリンと関係を持っていなくて安心した」
ケイ『me too. 私もよ。キヌが浮気しまくりのク●ビ●チじゃなくて安心したわ』
まほ「西はそんな玉じゃないだろう」
ケイ『そうかもしんないけどさー。ホントにビックリしたんだからねー? マホが勘違いするからさっ』
まほ「私が悪いんじゃない。一文字違いの名前を授かった二人が悪い」
262 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 22:51:00.33 ID:VmvplbzM0
ケイ『もしもマホが気付かなかったら危うくキヌんとこに怒鳴り込むところだったわよ。このクソビ●チがぁぁぁ! ってね』
まほ「事情を知らないダージリンからしたらケイが浮気相手と勘違いしそうだなそれは」
ケイ『あはは。私がキヌ貰っちゃおうかな〜?』
まほ「ダージリンが悲しむからやめとけ」
ケイ『じゃあ逆にダージリンを貰うとか?』ahaha!
まほ「もっとやめとけ。地球の反対側まで追いかけて八つ裂きにされるぞ」
ケイ『Oops…物騒なこと言わないでよ…』
まほ「流石にしないと信じたいが…どういうわけか、最近あいつが怖い」
ケイ『そりゃそうよ。恋人を奪おうとすれば誰だって怒るわよ』
263 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 22:54:36.09 ID:VmvplbzM0
まほ「ケイも怒るのか?」
ケイ『当ったり前じゃない。私だって怒ったらコワいよぉー?』
まほ「どのように?」
ケイ『CVSGで殴り込む』
まほ「しーぶい? よくわからん。………っと、もう深夜じゃないか」
ケイ『そうね。随分と話し込んじゃってたね』
まほ「ここまで話が盛り上がることなんてそうない。なかなか有意義だった」
ケイ『私もよ。やっぱりガールズトークってGoodね〜!』
まほ「ああ。間違いない。それでは夜分遅くに済まなかった」
ケイ『いーえ。こちらこそよ。それじゃね〜See you again☆』
ずいぶん長いこと話し込んでいた。ケイは某ハンバーガーショップの道化師よろしくお喋りが大好きなのだろう。
…それに便乗していた私も同じ穴の狢ではあるが、よほど楽しかったのだろう、時間が経つのを忘れるほど話し込んでいた。
こういうのもたまには悪くないな。
…しかし、知波単の西は"二人きり"になると何かあるのか。全く想像できないが。
実は狙撃の名手で、10キロ先のティーガーを撃ち抜けるとか、
実はダージリンの借金の連帯保証人だったとか、
実はカツラだったとか………。
わからん…。
いつか練習試合を申し込み、意図的に西と一騎打ちする戦況を作るか。
264 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 23:00:13.19 ID:VmvplbzM0
グゥゥゥゥゥゥ....
まほ「ん…」
長電話のせいですっかり忘れていたが、そもそも私は空腹だったのだ。それ故カレーを作りに台所まで来た。
しかしケイと電話に夢中になり、気が付いたら草木も眠る丑三つ時になっていた。
夜更かしにも程があるな。さっさと食べてさっさと寝よう。
…何かを忘れている気がするが、今はそれよりもカレーが大事だ。
265 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 23:01:31.23 ID:VmvplbzM0
まほ「まずは鍋に水を入れ」ジャー
「………さん」
まほ「次に、鍋に火をかける」カチャン ボッ...
「………えさん」
まほ「あとはパウチを入れて加熱すれば良かったな」
「………ねえさん………」
まほ「ああ。出来上がるのが楽しみだ」
エリカ「姉さんッ!!!!」
まほ「ぬぉッ!?」
そうだ。コイツを忘れていた。
266 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 23:03:06.96 ID:VmvplbzM0
エリカ「いつまで電話してんのよ! 待ちくたびれたじゃない!」
まほ「仕方がないだろう。同じ隊長として戦場を駆け巡った者同士語り合うこともある」
エリカ「恋人がどうたらというのが同じ戦場を駆け回った者同士の語り合いなのかしら?」
まほ「そういうこともある」
エリカ「…」
まほ「…」
エリカ「…で?」
まほ「で?」
エリカ「…レトルトカレーの作り方、わかった?」
まほ「…」
エリカ「…」
まほ「…」
エリカ「…」
まほ「作り方は色々あるということがわかった」
エリカ「嘘おっしゃい! 作り方そっちのけで聖グロと知波単の話で盛り上がってたでしょーが!!」
まほ「…うるさいな。私だって人間だ。忘れることだってある」
267 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 23:07:49.12 ID:VmvplbzM0
エリカ「フン。何が知波単よ」
まほ「知波単を甘く見るな。酷い目にあう」
エリカ「戦車はポンコツで戦術なんてあったもんじゃない。あんな弱小校なんて私一人で十分よ」
まほ「相手の戦車や戦力が低いからといえ油断はするな」
エリカ「…やけに知波単の肩を持つじゃない?」
まほ「そんなことはない。…ただ、我々は戦車の質も数も圧倒的に劣る大洗に敗れた経験があるだろう」
エリカ「…そうね」
まほ「戦車の数や質だけが必ずしも有利な要素であるというわけではない。指揮し、動く人間の質が重要だ」
まほ「素人がティーガーに乗ったところで最大限の性能を引き出せはしないだろう?」
エリカ「それは言えてるわね」
まほ「実際にみほは戦車の数も質も他校より劣っている。にも関わらず大洗を一つにまとめ、強豪校を尽く蹴落としてきた」
エリカ「…確かにみほは凄いわ。昨年の黒森峰での大失態を無名校で汚名返上したのだから」
まほ「その通りだ」
268 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 23:10:27.20 ID:VmvplbzM0
エリカ「…で」
まほ「で?」
エリカ「それと知波単とどう関係があるのよ?」
まほ「なに?」
エリカ「みほの名誉挽回と知波単の関係」
まほ「…」
エリカ「…」
まほ「…」
エリカ「…」
まほ「カレーが温まったから食べるとしよう」
エリカ「あっコラ! 話逸らすなッ!」
まほ「食べないのか? じゃあ私が全て頂こう」
エリカ「たっ、食べるわよ!」
269 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 23:24:11.80 ID:VmvplbzM0
その答えは来年、みほや他の同級生が最上級生となった時にわかるだろう。
各校は少しずつ世代交代への準備を進めている。私もエリカにティーガーIを託す時が必ず訪れる。
だが、エリカはみほや知波単の西と違って"後発"だ。それは私が長く隊長の座に居座りすぎていたせいでもある。
みほは大洗の隊長として元から持っていた才能を更に昇華させ、その上大学選抜チーム戦ではかつて戦った強豪校たちを率いて勝利した実績もある。
知波単学園の西も二年生でありながら既存の戦術に疑惑を抱き、戦術の改革を試みていると聞いた。
この両名はどこの学校の同級生よりも早い段階から「隊長」を経験している。
指示を出すだけが隊長の責務ではない。隊長はその学校の顔であり全てと言って良い。
試合の戦績、部下の育成、不祥事の引責…。それらは全て隊長が一人で背負っていく。
たとえ仲間の支援があったとして、最終的にすべてを抱え、興廃を懸けた決断をしなければならない。
全員が明後日の方向を向く中、自分ひとりだけが真逆に進めと言わなければならないこともある。
卒業生や在校生との板挟みとなり、二進も三進もいかなくなることだってある。
それら隊長としての宿命を何処よりも早く引き受けてきたのがこの二名だ。
隊長とそれ以外の一般生徒とでは得られる経験値が全く違う。そしてその隊長としての経験の差が試合において如実に反映される。
270 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 23:28:36.75 ID:VmvplbzM0
しかし、エリカは未だに"副"隊長止まりである。
先述の通り、私が長らく隊長の座に居続けたことが原因である。言うまでもなく私の失態ではあるが、そうなったのにはいくつか理由がある。
全国トップクラスの実力を持つ黒森峰の、更に頂点という隊長に就いた私の自己保身的なもの。
その隊長を誰かに譲渡したことによる黒森峰の弱体化・衰退の可能性を恐れていること。
そして何より、優勝常連校の隊長という並々ならぬ重圧で誰かが潰れることを防がなければならないこと。
だから私はじっくり時間をかけて次世代の王者を担う者を探していた。
そしてそのニーズに答えたのが、今私の横でカレー皿にご飯をよそうエリカだった。
つい最近までは虎の目をしていたエリカだったが、事故による負傷で戦力外となったことで、黒森峰には実質次期隊長が不在となってしまった。
…確かに赤星や直下を臨時の"副隊長補佐"として任命した。だが、あの二人もエリカと比較するとまだまだ不十分だ。
エリカの戦線離脱はチームの弱体化どころか、黒森峰の存続に関わるほど致命的なものと言える。
271 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 23:30:42.49 ID:VmvplbzM0
ここ最近は色々あったせいで忘れかけていたが、エリカは記憶の一部に障害をきたしている。
それは自分を"逸見エリカ"ではなく、"西住エリカ"として、西住家の人間であるという錯誤。
しかし、どういうわけか、私やお母様のことはしっかり覚えていたのに、何故かみほのことだけが記憶から抜けているという不可解な状態だ。
何故、西住家の人間だと思いこんでいるのに、何故、みほの記憶だけ抜けてしまっていたのか…
そんなもの、一つしか無いだろう。
272 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 23:32:58.44 ID:VmvplbzM0
まほ「さて。出来たぞ」ホカホカ
エリカ「あ、ちょっと! 姉さんだけルー多いじゃない!」
まほ「…しょうがないな。ホラ」
エリカ「こらっ! ニンジンばかり入れるなっ!」
まほ「人参だってカレーの具だ。文句言わず食べろ」
エリカ「むう…」
まほ「…」
273 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/01(金) 23:37:40.82 ID:VmvplbzM0
〜
エリカ「最近のレトルトはなかなか凝った味付けをするのね」モグモグ
まほ「当然だ。ボンカレーはどう作っても美味い」
エリカ「鍋に注ぎ込んで加熱する方法は絶対間違ってると思うけど」
まほ「普通のカレーとて鍋で煮込む。同じことだ」
エリカ「カップ麺と袋麺を同じ方法で調理するのと同じくらい違うわよ」
まほ「相変わらずややこしい言い回しだ」
エリカ「全然よ」
まほ「…」
まほ「そういえば、冷蔵庫にマカロンがあったが、お前食べるか?」
エリカ「マカロン?」
まほ「ああ。ちょうど2つある」
エリカ「みほが買ったんでしょう?」
まほ「そうだったか?」
エリカ「他に誰がいるってのよ。あの子昔っからマカロン大好物じゃない」
まほ「そうだな」
そうだな。
みほは昔からマカロンが大好物だ。
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/02(土) 02:32:47.34 ID:LGNMmwxK0
雲行きがあやしい…
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/02(土) 04:54:01.28 ID:gJEjjhHd0
不穏だ・・・
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/04(月) 12:56:31.51 ID:9hTO1YLrO
西住エリカ
277 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/12/22(金) 23:43:35.53 ID:2K0ZXy8E0
年末忙しいせいでなかなか更新できなくてすまないんだな(´・ω・`)
ちゃんと完結するから待っててほしいんだな(´・ω・`)
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/22(金) 23:46:08.70 ID:mAABIh99o
生きててよかった
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/25(月) 01:50:33.56 ID:T9dLH7Az0
待ってるぞ
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/25(月) 12:35:36.36 ID:Fphf0dEBO
お年玉はよ
281 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 07:34:37.72 ID:CJE4bdvW0
〜〜〜
エリカ「ごちそうさま」
まほ「おい、食器をちゃんと洗わないか」
エリカ「明日やる。食べたら眠たくなってきたもの…」ファァ...
まほ「カレーを食べたことがお母様にバレてしまうぞ?」
エリカ「…今やる」カチャカチャ
まほ「全く。最初から素直にやれば良いものを」サッサッ
エリカ「ちょっと! 何で姉さんの分まで私が洗わんなきゃいけないのよ!」
まほ「私のカレーを分け与えたのだから当然だろう」
エリカ「むぅ…」
まほ「…」
エリカは先の事故によって記憶に一時的な障害が発生し、自分を"西住家の人間"だと思い込んでいる。
また、西住家の人間と思い込む一方で、同じ西住の人間である"みほの記憶"だけ欠落している。
何故、そのような"都合のいい"記憶障害が起きるのか。
282 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 07:36:17.52 ID:CJE4bdvW0
まほ「…さて。今度こそ寝るぞ」
エリカ「その前に歯磨き。忘れないでよね」
まほ「わかってるさ。ニンニクだけでなくカレー臭までしたらたまらん」
エリカ「カレー臭なのかカレイ臭なのかね…」
まほ「魚は食べていない」
エリカ「鰈じゃなく加齢」
まほ「…」
― 隊長って大変ね。あんな横着な部下をまとめないといけないのだから…
― お前が一番横着だ
― そんなことないわよ。…そういえばみほも隊長だったわね。忘れてたわ
何故、みほの記憶が消えていたエリカが、"みほが隊長である"ことを知っていたのか。
283 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 07:37:05.43 ID:CJE4bdvW0
エリカ「姉さん、もっとそっち行って」
まほ「仕方ないな…」ゴロン
エリカ「あっ! また布団持っていった!」グイグイ
まほ「引っ張るな。これは私の布団だ。お前は藁でも敷いて寝てろ」
エリカ「家畜じゃないって言ってるでしょーが!」
まほ「モーモーうるさいお前は立派な家畜だ。エリ家畜と名乗って干し草でも食べていろ」
エリカ「何ですって?!」
まほ「静かにしろ。今何時だと思っているんだ」
エリカ「………3時半よ」ムスッ
まほ「こんな時間に騒いでいたら、例のクマのぬいぐるみがお前を黙らせに来るだろうな」
エリカ「!?」ビクッ
まほ「こ、こら潜り込んで来るな! そしてしがみ付くな!」
エリカ「」ガタガタガタ
― …まあ。確かにみほは凄いわ。昨年の黒森峰での大失態を無名校で汚名返上したのだから
何故、みほの記憶を喪失したエリカが、"黒森峰での失態"や"無名校で汚名返上"を知っているのか。
284 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 07:40:39.20 ID:CJE4bdvW0
その場その場では気付かなかったが、改めてエリカの発言を思い返すとそこには不可解な点がいくつかあった。
しかし、その不可解な点…『みほの記憶を失ったエリカが、みほのことを知っている』が何を意味するか分からなかった。
記憶が無いと言えど多少の差異はあるのだろう…と、別段気に留めることもなかった。
しかし、それこそが私が見落とした重大な過ちだった。何故なら、これら不可解はある一つの"前提"が成り立てば全て合点がいく。
その前提とは
"エリカは最初から記憶障害ではなかった"
285 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 07:45:13.71 ID:CJE4bdvW0
まほ「そろそろ離れろ。腕が痺れてきた」
エリカ「む、無理よ…! 離れたらまた奴らに食われる…」オロオロ
まほ「"また"って何だ。食われたことなど一度も無いだろ」
エリカ「な、無いけどいつか絶対に食われるわ…!」ガタガタ
まほ「なら食われた時に心配しろ」
エリカ「姉さんの危機管理能力どーなってんのよ!」
そして、その前提は先程のやり取りで成立した。
エリカは『みほは昔からマカロンが好き』と確かに言った。本当にみほの記憶を失った者なら出ることのない発言だ。
そして、それがエリカは記憶喪失ではなく、記憶喪失の"ふり"をしていることを裏付ける証拠となった。
隙間だらけだったパズルが埋まり、謎が解けた瞬間、世界がぐるりと反転したような錯覚に陥った。
だが、そんな私を待つことなく、完成したパズルには次の謎が描かれていた。
"なぜエリカは記憶喪失のフリをした?"
286 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 07:47:37.96 ID:CJE4bdvW0
わからない。
記憶喪失の"ふり"をするということは、言い方を変えると"本来の自分を捨てる"ということになる。
逸見エリカを捨てる? なぜ?
逸見エリカは、黒森峰女学園の2年生で戦車道の副隊長をしている。
先日の訓練で事故を起こした。
事故の件、あるいは"次期隊長"からの逃避!?
…いや、それは違うだろうな。
もし仮にそうだとすれば、全ての記憶を喪失したことにすれば良い。わざわざ"西住家の女"という回りくどい設定にする必要はない。
なぜなら"西住"はあまりに距離が近すぎるし、現にエリカは私のすぐ近くにいる。逃避を目的とした者のとる選択ではない。
もっと言えばそこから"みほの記憶"だけを消す理由もない。
なら何故だ!
何故こうも回りくどい偽装をする!?
そしてエリカ、お前の目的は何だ…!?
287 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 07:51:05.50 ID:CJE4bdvW0
まほ「………エリカ」
エリカ「…なによ…私眠たいんだけど…」
まほ「私だって眠い。だから寝言だと思って適当に聞き流せ」
エリカ「意味がわからないわよ…」
まほ「…みほと会って、どう思った?」
エリカ「…は?」
まほ「今朝、偶然みほがやってきて、お前たちは初めて顔を合わせただろう?」
エリカ「…ええ」
まほ「初めて会った姉妹はどうだった?」
エリカ「そうね…。大人しいって印象だったけれど、実際に一緒にいるとなかなか横着い子よね」
まほ「横着いか…。確かにそうかもしれん」
エリカ「姉さんにソックリよ。そういうところ」
まほ「私が横着というのは解せんが、姉妹なのだから似るのは当然だろう」
エリカ「何にせよ。変なぬいぐるみを部屋中に置くのだけはやめてほしいわね…」
まほ「あれほど大量のぬいぐるみをどこに収納していたんだろうな」
エリカ「暗黒世界に繋がってて、そこからゾロゾロと出て来るのよ…」
まほ「そんなわけあるか」
288 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 07:55:46.44 ID:CJE4bdvW0
エリカ「…でも、帰ってきて良かったと思うわよ」
まほ「ん?」
エリカ「ほら、みほってお母さんと仲悪かったじゃない?」
まほ「…。確かに。あんな一瞬で、不仲が解決するとは思わなかった」
エリカ「お母さんも娘が出て行ったくらいであんなピリピリしなくても良いのにね」
まほ「…」
エリカ「融通がきかないところは姉さんとソックリよ。さすが親子」
まほ「いらんお世話だ」
エリカ「みほもみほで、大洗じゃなくこっちに戻って来れば良いのに」
まほ「みほにはみほの学校生活がある。そう簡単にはいかん」
エリカ「残念な話よね。実家に帰るのにそう時間もかからないだろうし」
エリカ「大洗なんかに行かず黒森峰にいたら良かったのにねぇ」
まほ「…」
もう、良いだろう…。
289 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:02:16.51 ID:CJE4bdvW0
まほ「エリカ、もう一つ良いか?」
エリカ「…私眠いんだけど?」イライラ
まほ「それは悪かったな。…だが安心しろ。目の覚める話だ」
エリカ「目の覚める話…?」
まほ「ああ」
まほ「いつまで、これを続けるつもりだ?」
エリカ「えっ?」
まほ「いつまで、お前は記憶喪失のフリを続けるんだ?」
エリカ「えっ? どういうこと…?」
まほ「お前はみほのことを知らないはずだ」
エリカ「は…? 何言ってんの姉さん? 今朝みほに会ったでしょう???」キョトン
まほ「そうだ。お前は昨日の朝、初めてみほと対面した」
エリカ「そうよ? 何急に言い出すのよ。記憶喪失にでもなったの…?」
まほ「昨日がみほと初対面だったお前がなぜ、みほが"黒森峰から去った"ことを知っている?」
290 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:29:02.38 ID:CJE4bdvW0
エリカ「え…」
まほ「先ほど、"大洗なんかに行かず黒森峰にいたら良かったのに"と言ったな?」
エリカ「え、ええ…そうよ…?」
まほ「何故、昨日初めて会ったみほが、過去に黒森峰にいて、今は大洗にいるとわかった?」
エリカ「そ、それは…」
まほ「…お前はこうも言ったな」
まほ「"昨年の黒森峰での大失態を無名校で汚名返上した"」
エリカ「!!」
まほ「不思議だな。昨日会うまでみほのことを一切知らなかったお前が、どうして"みほが無名校で汚名返上した"ということを知っているのだろう?」
エリカ「…っ……!」
エリカの表情からサーッと血の気が引いていくのが伺える。
残念ながら私の予想は的中した………
291 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:30:29.33 ID:CJE4bdvW0
エリカ「あ…あははははは。何言ってんの姉さん? やっぱり頭おかしくなったんじゃない?」
まほ「…」
エリカ「い、一度医者に診てもら
まほ「最後に」
エリカ「っ…!」
まほ「よく、知ってたな。…エリカ」
エリカ「え…な、何がよ…?!」
まほ「みほが"昔から"マカロンが好きだと」
エリカ「ッ!!!!」
これでおしまいだ………。
292 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:33:59.26 ID:CJE4bdvW0
エリカ「あ…あゎ……あ………」
まほ「何故、このような真似をした?」
エリカ「わ……わたし……………」
まほ「さぁ、話せエリカ。全て…」
エリカ「………い…」
エリカ「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
絶叫響く廊下をバタバタと走るエリカの後を追うこともなく、私はただただ呆然とするだけだった………
私に従順だったはずのエリカが…私を欺いた………
そして…その欺瞞を見破った瞬間、エリカは逃走した
私は…エリカに裏切られた………
293 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:36:10.58 ID:CJE4bdvW0
みほ「………もういいよ。お姉ちゃん………」
294 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:40:37.48 ID:CJE4bdvW0
まほ「みほ!?」
みほ「ごめんなさい…私がいけなかったんだ………」
まほ「ど、どういうことだ?!」
みほ「エリカさんと…私の利害が一致したからあんなことを…」
まほ「利害の一致だと!? お前はエリカと共謀して私を陥れたのかッ!!?」
みほ「ちゃんと最後まで聞いてっ!!」
まほ「っ…」
みほ「エリカさんは…」
みほ「お姉ちゃんがいなくなることを何よりも恐れていたの…」
295 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:42:02.34 ID:CJE4bdvW0
まほ「…!」
みほ「そして、私も…」
まほ「みほも…?」
みほ「この家にもう戻れなくなるのがすごく怖かった…」
まほ「!」
みほ「…だから、エリカさんに協力してもらったんだ」
まほ「どういうことだ…説明しろ!」
みほ「うん…」
296 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:45:07.82 ID:CJE4bdvW0
みほ「私のせいで黒森峰が10連覇出来なかった」
みほ「そして、その責任から逃げたせいで、一時はお母さんに勘当されそうになったよね…」
まほ「…確かにお母様は言っていたな。だがそれは過去の話だ」
みほ「うん…。だけど、私はいつかは必ず、家に帰らないといけない日が来るから、お母さんと仲直りしなきゃダメって思ったんだ……」
まほ「…」
みほ「前に大洗が廃校になりかけた時に家に帰ってきたけど、あの時はお姉ちゃんがいたから家に入れた」
みほ「…でも、もしあの時お姉ちゃんがいなかったらって思うと………」
まほ「…」
みほ「この先も廃校騒ぎが起きたり、何かあって家に戻る事があるかもしれないし」
みほ「仮に起きなかったとしても、卒業したあとの進路によってはお金がいるから…」
まほ「………」
297 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:49:35.17 ID:CJE4bdvW0
みほ「そしたらある日、エリカさんから連絡が来て『家元と仲直りしたいなら私に協力しなさい』…って」
まほ「エリカが…?」
みほ「うん。…『私が記憶喪失のフリしてアナタたち親子の仲裁をしてやる』って…」
まほ「エリカのやつ、そんなことを…」
みほ「エリカさんのおかげで私はお母さんと仲直りが出来て、家にも帰れるようになった」
まほ「…確かに。驚くほど早く和解できた。それについてエリカには感謝している」
まほ「…ただ、わからないことがある」
みほ「わからないこと?」
まほ「ああ…」
まほ「何故、エリカはわざわざ記憶喪失を装う上で、更にそこから"みほの記憶"だけを切り取ったのか」
みほ「…」
298 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:52:45.58 ID:CJE4bdvW0
まほ「今の話が事実だとして、"みほの記憶"だけを削る必要はあるのか?」
みほ「…」
まほ「そんな回りくどいことをせず、単に"西住家のふり"だけすれば良いだろう? わざわざ"みほは知らない"とする理由はない」
みほ「そうだよね…」
まほ「なら…!」
みほ「私にもわからない」
まほ「…わからない?」
みほ「私は『記憶喪失のフリをする』としか言われなかったから、エリカさんがそこから私の記憶を消した理由まではわからないよ…」
299 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 08:54:26.46 ID:CJE4bdvW0
― そう…アナタがみほなのね
― へ?
まほ「…ならば、あの会話は…」
みほ「一瞬、"えっ?"ってなったかな…」
まほ「…」
みほ「あのあと、お姉ちゃんからエリカさんのことを教えてもらって、そこで初めてエリカさんは"私の記憶"まで消しちゃったことを知ったの…」
まほ「"みほの記憶"を消した理由は、もはやエリカ本人だけしか知らないということか…」
みほ「うん…」
300 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 09:02:21.44 ID:CJE4bdvW0
まほ「…では、エリカの言う"私がいなくなることを何よりも恐れてた"というのは?」
みほ「エリカさんはね、中等部に入る前からずっとお姉ちゃんに憧れてたんだ」
まほ「…」
みほ「もちろん、エリカさん以外の人だってお姉ちゃんに憧れている人は多かったと思うよ?」
みほ「何しろ、黒森峰だけでなく高校生でNo.1の実力者だからね。お姉ちゃん」
まほ「…」
みほ「多くの人がお姉ちゃんに憧れると同時に、多くの人が黒森峰の厳しい練習に耐えられずリタイアしちゃったよね…」
まほ「…それは仕方ない。黒森峰は常に王者で在り続けなければならない。生半可な練習では駄目だ」
みほ「そんな厳しい練習で生き残ったのがエリカさんだった…」
まほ「エリカは他のどのメンバーよりも優秀だった」
まほ「だからこそ私の後継者としてエリカを選び、手塩にかけて育てたつもりだ」
301 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 09:06:37.59 ID:CJE4bdvW0
みほ「それについてはエリカさんもきっと喜んだと思う。努力が実ったからね」
みほ「…でも、同時に」
まほ「ん?」
みほ「ものすごく不安だったと思うんだ」
まほ「!」
みほ「全国トップのお姉ちゃんと、自分自身を重ねて、そのギャップに悩んで、プレッシャーに押し潰されそうになって…」
まほ「ば、馬鹿なッ! エリカに限ってそんなこと!」
みほ「私だって大洗の隊長やって不安やプレッシャーで押しつぶされそうになること、よくあるよ…」
まほ「そうなのか…!?」
みほ「うん。…でも私はまだ黒森峰じゃないからそこまで厳しくないし、困った時はみんなが助けてくれるから大丈夫だった」
みほ「でも、エリカさんは」
まほ「エリカは…?」
みほ「今も、そしてこれからもずっと一人ぼっち…」
302 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 09:09:56.60 ID:CJE4bdvW0
まほ「!!」
みほ「…だからエリカさんもきっと」
まほ「馬鹿も休み休み言え! エリカは私が………っ!!」
― 最強の学校の隊長という並々ならぬ重圧で誰かが潰れることを防ぎたいということ。
みほ「うん…。黒森峰は大洗とは全然違うんだ…」
まほ「…嘘だろ…エリカが………」
みほ「お姉ちゃんなら、わかるよね…?」
まほ「それじゃ…エリカは…!?」
みほ「何かしらの形でプレッシャーから逃れたかったのかな…?」
まほ「ふ、ふざけるな!! 何のために今まで育ててやったと思っているッ!!!」
みほ「…」
まほ「責任から逃れたいから記憶喪失だと!? そんなもの黒森峰の副隊長がとる選択ではないッ!!!」
まほ「副隊長どころか普通の黒森峰生としてもあるまじき行為だッ!!!」
303 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 09:10:42.71 ID:CJE4bdvW0
みほ「…というのが一つ」
まほ「なに!?」
みほ「もう一つの方が大事…かな……」
まほ「もう一つだと…?」
みほ「うん。さっきも言ったけど…エリカさんのおかげで私は家に帰ることができた…」
まほ「…?」
みほ「…それどころか、本当に久しぶりに"家族"に恵まれた」
まほ「!」
304 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 09:52:35.46 ID:CJE4bdvW0
みほ「あはは……え、エリカさんには…もう…頭が上がら…ない…かも………」
まほ「みほ…?」
みほ「…だっ…て………」
みほ「……私のせいで……もう……二度と戻らないっ…て思ってたもん………」ツー...
まほ「!!」
みほ「……それにお姉ちゃん…もうすぐ…"お別れ"だから……」
まほ「………」
みほ「……次の大会……お姉ちゃん出ないもんね…………」
みほ「そうしたら……私も…お姉ちゃんもひとりぼっちになる………って…………」
まほ「……っ………」
みほ「………だから…そうなる前に…って…………」
まほ「………エリカ………っ…………」
みほ「………あはは…え…えりかさん…らしい…よね………」
まほ「…私が馬鹿だった……すまん…エリカ………!」
305 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:00:12.31 ID:CJE4bdvW0
みほ「……家族ってすごくいいね…って思った………」
まほ「…ああ……この2日間…本当に楽しかった………」
みほ「…でも……当分……会えないからね………寂しいよ……やっぱり……」
まほ「…はは……バカを言うな…永遠の別れじゃあるまい…」
みほ「………」
まほ「…行こう」
みほ「えっ……?」
まほ「…手のかかる"妹"を、探しに」
みほ「…うん……お姉ちゃん、そんな顔じゃ探せないよ……ほら、ティッシュ…」
まほ「…みほこそ私の服に鼻水べっとりつけて…ほら、鼻をかめ」
みほ「うん……!」
306 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/02(火) 10:10:11.23 ID:OPIKcW+SO
西住殿が鼻をかんだティッシュ
307 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:10:24.30 ID:CJE4bdvW0
エリカは自身に課せられた責務から逃れるため記憶喪失を装ったと思っていた。…だが、それは私の大きな間違いだった。
それどころかエリカはずっと、私やみほのことを案じていた。
偶然起きた事故を利用して、記憶喪失を装って西住の人間となり、西住の人間をひとつ屋根の下に集めた。みほには家に戻れと指示したのだろう。
そしてお母様とみほの関係を修復するべくじっと待ち構え、ついにその時が来てエリカは動いた。
その結果、みほとお母様は和解し、いつぶりか分からないほど懐かしいあの時の"家族"が戻ってきた。
エリカが家に来てから、私たちは家族という"憩い"を取り戻すことができた。
お母様やみほ、そしてエリカと食卓を囲って食事を取り
姉妹そろって温かい風呂に入り
今日も色々な事があったと、一日の出来事を振り返りながら床に就く…。
客人を招いて鍋をつついたり友人と長電話に洒落込むこともあったな。そういえば。
いずれも戦車道に明け暮れるだけの日々だった以前の私には考えられないようなことばかりだ。
そして、そんな日常を、エリカは私やみほに与えてくれた…。
308 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:14:18.79 ID:CJE4bdvW0
【とある場所】
まほ「ここにいたか」
エリカ「っ! …ね…あっ……たい…ちょう………」
まほ「…」
エリカ「…わ………」
まほ「帰るぞ。ほら」
エリカ「え………?」
まほ「家に帰るぞ。エリカ」
エリカ「……はい…」
まほ「…全く。出て行くにしても裸足で出歩くやつがあるか」
まほ「それに私の浴衣をまた泥だらけにしてくれたものだ…」
エリカ「……もうしわ
まほ「本当に手のかかる妹だよ。エリカは」
エリカ「!」
エリカ「た……た……」
エリカ「隊長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
309 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:21:12.70 ID:CJE4bdvW0
まほ「こらっ! 泥まみれで抱きつくやつがあるか! 私まで汚れるだろうが!」
エリカ「ずびばぜんだいぢょぉ………!」
まほ「…やれやれだな」
エリカ「わ、わだじはぁ…X@〒※334♂…ゲホォッ!!!」
まほ「わかった。わかったからまずは落ち着け。そして鼻水を拭け」
エリカのやつ、号泣しながら喋るのものだから何を言っているのかさっぱりわからん。
だが、無事に見つけることができて、丸く収まりそうだからひとまず安心した。
そうとわかれば速やかに家に戻り、泥まみれの虎ならぬ、泥だらけのエリカを風呂に放り込んでやらねばならん。
泥だらけなのに抱きつくものだから、私まで泥まみれになってしまった。
310 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:22:23.45 ID:CJE4bdvW0
【西住家の風呂】
まほ「それにしても随分と汚れたものだな…」
エリカ「…だ、大丈夫です隊長! わ、私一人で洗えますからっ!」
まほ「馬鹿を言うな。折れた腕でどう洗えと言う」ワシャワシャ
エリカ「ぅ…」
まほ「………楽しかったぞ」モシャモシャ
エリカ「えっ…?」
まほ「楽しかった。この二日間」
エリカ「そ、そうですか…?」
まほ「ああ。エリカが取り戻してくれた"家族"のおかげでな」
エリカ「!」
311 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:25:46.55 ID:CJE4bdvW0
まほ「戦車道だけだった私には、どれもこれも久々過ぎてむしろ新鮮に思えてしまう日々だった」
エリカ「そ、それは良かった…です…!」
まほ「ああ…それとエリカ、お前にはもう一つ大事な話をしよう」
エリカ「大事な話…?」
まほ「あの事故は偶然かもしれない」
エリカ「!」
まほ「…だが、そこから先のお前の行動は黒森峰の者としては不適格だ」
エリカ「………」
まほ「だから、エリカ」
まほ「ティーガーIIと同じ71口径8.8cm砲を搭載した車輌を3つ答えよ」
312 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:26:55.58 ID:CJE4bdvW0
エリカ「………はい?」
まほ「ティーガーIIと同等の主砲をもつ車輌の名前、3つ答えろ」
エリカ「え…えーと…? ヤークトパンター、エレファント…あとは…………………?」
まほ「まだまだだな。残り1つはヤークトティーガーだ」
エリカ「えっ? や、ヤークトティーガーは『12.8cm PaK44』では!?」
まほ「甘い。ヤークトティーガーの中でも『Sd.Kfz.185』という、ごく少数の車輌にはPaK44ではなく『8.8cm PaK43』を搭載している」
エリカ「そ、そんなマニアックなものは知りません…!」
まほ「それでは困る。お前は来週から私の代わりに頑張ってもらわないといけないからな」
エリカ「だからといってそんな知識は急には………えっ?」
313 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:30:33.31 ID:CJE4bdvW0
まほ「どうした?」
エリカ「今…"私の代わりに"って言いました…?」
まほ「ああ。言ったな」
エリカ「あの…それはどういう…?」
まほ「…」
エリカ「…まさか?!」
まほ「そういうことだ」
まほ「逸見エリカを黒森峰の隊長に任命する」
ようやく決心がついた。
314 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:55:40.49 ID:CJE4bdvW0
エリカ「!!!」
まほ「今思うと、私はもっと早くに退いて、隊長を受け渡すべきだった」
エリカ「そ、そんなことは…!」
まほ「…だが、私も不安だったのだろう。自分が去った後の黒森峰がどうなるかと…」
エリカ「…」
まほ「それでも時間はまだ残っている。私自身が納得するまで徹底的にお前を指導してやる。任命者としての責任だからな」
エリカ「ほ、本当ですか!?」
まほ「ああ。そうと決まれば明日から特訓だ」
エリカ「えっ? 今日は?」
まほ「寝る。どこかの誰かさんのせいで明け方まで起きていたからな」
エリカ「…すみません」
記憶喪失を装い、私を欺いたエリカの行為は称賛できるものではない。
…だが、その行為のおかげで私やみほは失ったものを取り戻すことができた。
私やみほがどれほど望んでも手に入れられず、諦めかけていたものをエリカは瞬時に取り戻した。その優れた作戦は見事というほか無い。
そしてその作戦を生み出した、エリカが持つ計画性・行動力・判断力は、隊長になる者として相応しいと判断した。
エリカの作戦は私の不安を吹き飛ばし、重大な決断を後押しするものとなった。
315 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:57:17.68 ID:CJE4bdvW0
エリカ「あの…隊長…」
まほ「なんだ?」
エリカ「何故、私があそこにいるとわかったんですか?」
まほ「簡単なことだ」
エリカ「えっ?」
まほ「今朝通ったばかりだからな」
エリカ「…」
まほ「エリカのことだ。逃走する一方で、自分を探して見つけてくれることを望んでいたのだろう?」
エリカ「うっ…」
まほ「そして、道中で足でも滑らせたのだろう。そのままドブ川に真っ逆さま」
まほ「こんなところだろう?」
エリカ「…全部、当たりです」
316 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 10:58:54.78 ID:CJE4bdvW0
まほ「それにしても、エリカがあのようなことをしたとはな。未だに信じられん」
エリカ「も、申し訳ありません…」
まほ「私の横で堂々とあくびをして、フニャフニャになってくつろいで」
エリカ「…え」
まほ「事あるごとに私の目を見て"バカなの?"と抜かすこともあったな」
エリカ「そ、それは……」
まほ「そのほか戦車の中で砲弾をぶつけてくるわ、ニンジンを押し付けるわ…」
エリカ「うっ…」
まほ「股ぐらに戦車の玩具を当てて何と宣ったものか」
エリカ「なぁっ?!」
まほ「…目と耳を疑いたくなる光景は多々あったが、その中でも頭一つ置いて驚かされたな。ははは」
エリカ「あ、あれはっ!」
まほ「そして極めつけに糞尿の始末をさせられたしな」
エリカ「ですからフンはしてませんッ!!!!」
まほ「洗わされる側からしたら一緒だと言っているだろう」
エリカ「ぐ…」
317 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 11:05:48.78 ID:CJE4bdvW0
本当に信じがたい。エリカがここまで変わるとは。
最初は記憶喪失によってあそこまで変わったことに驚いたが、後にその記憶喪失が嘘っぱちだと知り、それらが全部"演技"だったというのだからなお驚く。
今でもここにいるエリカは実はエリカではなく、エリカそっくりの別人なのではないかと疑いたくなるほどだ。
しかし残念だな。
私の知らないエリカの意外な一面を垣間見ることができたと思いきや、それが私達を欺くための演技だったのだから。
…いや、もしかすると演技とは別に、エリカはプライベートでは本当にあのようにフニャフニャになっているのかもしれない。
なにせ四六時中シャキッとしている人などいないからな。私も風呂や自室でくつろいでいる時はフニャフニャとまではいかないが、気が弛む。
だが、どうであるにせよ、クマのぬいぐるみに怯えて糞尿を垂れ流すのだけは今回限りの"演技"であってほしい…。
318 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 11:06:48.80 ID:CJE4bdvW0
エリカ「そ、そんなこと言ったら私だって隊長の意外な一面を見ましたからっ…!」
まほ「ほう。どんなだ?」
エリカ「ピーマンが嫌いなところとか」
まほ「嫌いではない。積極的に食べようと思わないだけだ」
エリカ「機械音痴なところとか」
まほ「電源のオンオフができれば十分だ」
エリカ「えぇ…」
まほ「…」
エリカ「あ、あとはレトルトカレーひとつ満足に作れませんしね?!」
まほ「作り方が違うだけで作れないわけではない。道は一つだけとは限らない」
エリカ「ぐぶぶ…」ブクブクブク......
まほ「フッ。まだまだだな」
〜〜〜〜
319 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 11:10:23.10 ID:CJE4bdvW0
エリカ「…ところで、みほはどうしたんです?」
まほ「なに?」
エリカ「みほです」
まほ「みほなら寝て………あっ!」
エリカ「…」ジトー
まほ「何だ? 文句があるなら堂々と言ったらどうだ?」
エリカ「…いえ。隊長も粗忽なところがあるのだな…と」
まほ「…」
エリカ「…」
…エリカのやつ、以前より生意気になってないか?
だが今はそんなことはどうでもいい。それよりもみほのことを完全に忘れてた。
みほは今もなおエリカの捜索に出たままだ。このまま放置したらあの子は地球の裏側までエリカを探しに行きかねん。
急いで風呂から出て、みほを電話で呼び戻した。
320 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 11:16:33.54 ID:CJE4bdvW0
〜〜〜〜
みほ「」ブスッ
まほ「その、すまなかった」
みほ「私のこと、完全に記憶から消えてたんだよね」ツーン
まほ「すまん…」
みほ「どーせ私なんかエリカさんにもお姉ちゃんにも忘れられる存在だよ…」ムスッ
エリカ「みほ。隊長も反省してるんだから許してあげたら?」
みほ「…元を言えばエリカさんが悪いんだよね?」
エリカ「だからゴメンって謝ってるでしょう?」
みほ「ふん…」プイッ
エリカにかまけていたら実の妹の方を完全に忘れるという大失態をした。
皮肉にも"みほの記憶"というのは、色んな人の頭から消えてしまう運命のようだ。
…いや、消えてもらっては困る。何しろ私の妹なのだからな。
しかし、みほは私にもエリカにも忘れられたせいでヘソを曲げてしまった。
先程の『エリカさんにはもう頭が上がらないかも』という言葉がウソのようにヘソを思い切りひん曲げている。
一度スネたら簡単に機嫌が直らないのがみほだ。
エリカ「冷蔵庫にマカロンあったけど、食べる?」
みほ「食べる!」
エリカ「そ、そう…」
まほ「…」
みほ「えへへ〜 マカロン最高〜♪」
…と思ったら、エリカのやつ、またみほの機嫌を取り戻した。
やるじゃないか。
321 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2018/01/02(火) 11:20:19.48 ID:CJE4bdvW0
【黒森峰女学園 演習場】
エリカ「全車、エンジン始動!」
エリカ「第一中隊、前進!」
エリカ「第二中隊、所定の位置に展開!」
エリカ「第三中隊、全車全速にて突貫せよ。Panzer vor!!」
エリカ「砲撃用意………撃てッ!!」
その後、記憶が元に戻った(説明すると面倒なのでそういうことにする)エリカは無事黒森峰に戻った。
そして改めて皆に、エリカに隊長を引き継がせたことを伝え、副隊長には赤星・直下2名を指名した。今後はこの3人に黒森峰を引っ張ってもらう。
私は現役を引退し、一歩離れた場所から彼女たちの活躍を見守っている。
新しく隊長となったエリカは、私の意思を引き継いでくれたようで、隊長としての役割を卒なくこなしている。
それどころか、自分が実際に指揮しているのでないかと錯誤してしまうほど、かつて私が構築したものをエリカは忠実に再現している。
もうエリカは大丈夫だろう。
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