エリカ「姉さん」

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231 :訂正です ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 19:58:14.84 ID:iWsjbRHN0


【まほの部屋】


エリカ「…あれ? ちっちゃいのとブリブリの人は?」

まほ「…カチューシャとノンナのことか。二人ならもう帰ったぞ。何でも"ほっとくと部下のロシア人が餓死する"らしい」

エリカ「ロシア人ねぇ…」

まほ「プラウダ高校はソビエトを模倣した学校だ。ロシアやウクライナから留学する生徒もいるだろう」

エリカ「ふーん。そう考えるとウチには留学生は一人しかいないわね」

まほ「そういえばツェスカの事を忘れていたな」

エリカ「ツェスカで思い出したけど、別のヤンキー学校にも日独混血の生徒がいわね。…ツェスカとは仲が悪いらしいけど」

まほ「そうか」



念の為補足すると、『ツェスカ』というのは黒森峰に留学しているドイツ人生徒だ。簡単に言えば今のエリカを更に喧しくしたようなやつである。

以前はドイツの名門校にいたとのことだが、同じ学校のエースだった生徒と一悶着あったらしく、来日してから偶然再開したそうだ。

しかし、ドイツでの出来事が原因で、日本でもギクシャクした関係にあるという。


その生徒と私は面識がある。何しろ彼女はみほの幼馴染だ。何年も前の話だが(大洗にいる角谷の妹かと思うほど欲にているが、どうやら無関係のようだ)。

そして、彼女もまた私と同じティーガーIに乗る女。もしかしたら…いつか、何処かで彼女とは手合わせをする時が来るかもしれない。

232 :↑「訂正です」ってあるけどミスです…  ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 19:59:50.72 ID:iWsjbRHN0


まほ「そろそろ寝るか」

エリカ「もう寝るの? 明日は日曜日なのに」

まほ「日曜日だとしても夜更かしは健康に悪い。早寝早起きを心がけろ」

エリカ「ふーん」

まほ「…何だ?」

エリカ「いや、姉さんって年寄り臭いな…って」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…寝る」ゴロン

エリカ「あ! ちょっと! 私の布団無くなるじゃない!」

まほ「知るか。お前などダンボールと新聞紙で上等だ」

エリカ「それじゃホームレスじゃない!!」

まほ「犬みたいにキャンキャンはしゃぐな」


233 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:07:50.18 ID:iWsjbRHN0


今日もまた色々あった。…いや、昨日以上に色々あったかもしれない。


エリカに枕にされて叩き起こされ、みほが家に帰ってきて、お母様とみほが和解した。

デパートへ買い物に行ったら赤星と直下と遭遇し、二人を副隊長補佐に任命した。

帰ってからはみほによって部屋の外をボコまみれにされた。エリカがまた発狂してた。

昼食のラーメンがやたらニンニクがキツく風呂に入り、エリカのしょーもない一発芸を見せらた。

風呂で気絶して目が覚めてからは、カチューシャやノンナが家にやってきた。

そして皆で鍋を囲いながら談笑に花を咲かせ、練習試合のことをすっかり忘れる。


色々ありすぎた。良い意味でも悪い意味でも。

いずれにせよ、ここまで充実した一日は本当に久し振りだ。

何しろ、つい先日まで私はひたすら戦車道に没頭していた。高みを目指すことだけを目標に過酷な訓練を繰り返す日々だった。

それだけに、これほど和気藹々とした温もりある生活を肌で感じたのが遠い昔のことに思える。

戦車道で心身を鍛える日々も良いが、その一方で、心身をリラックさせられる居場所を築くのも大事だろう。

…そんな風に、一日の出来事を振り返りながら私は寝床に就いた。



就いたのだが…

234 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:10:09.85 ID:iWsjbRHN0


エリカ「」スヤァ

まほ「…」グゥゥ

エリカ「」スヤァ..

まほ「…」グゥゥ

エリカ「」スヤァ...


まほ「…」グゥゥゥゥゥ....



寝れん。

…いや、寝れないことは無いとは思うが、こんな時間に腹が減ってしまった。

夕食はみんなで鍋を囲ったのだが、ダージリンから電話が掛かってきたせいで禄に手を付けなかった。

そして彼女の相手が終わり、さあ飯だと思ったら鍋の中身はすっからかんだったという。

おかげで食事の席に着いていたにも関わらず、満足に食事を摂っておらず、今この時間になって猛烈な空腹感に襲われている。

ああ…腹減った…。

235 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:11:20.74 ID:iWsjbRHN0


まほ「…」パサッ

エリカ「」スピー

まほ「…」

エリカ「」スピー



さすがに我慢ならんので、食卓で何か軽くつまもう。

確か買い置きのレトルトカレーがあったはず。

ボンカレーはどう作ってもうまいのだ。

236 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:14:46.88 ID:iWsjbRHN0


エリカ「姉さん………」

まほ「っ…」

エリカ「……プラウダの……シャが………」

まほ「"シャ"って誰だ?」

エリカ「…プラウダ……たいちょう………?」クカー

まほ「…。プラウダの隊長はカチューシャだ」

エリカ「……あいえすつー……」スヤァ

まほ「IS-2に乗ってるのはノンナだろう。お前がさっきブリブリと呼んでた女だ」



急にエリカが喋りだすので驚いたが、どうやら寝言のようだ。

その内容から察するに、プラウダ高校との練習試合の夢でも見ているのだろう。

それはそれで結構。睡眠学習は大いに歓迎しよう。

かくいう私もプラウダと戦う夢をよく見る。昨晩は川に転落した。

237 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:17:01.65 ID:iWsjbRHN0


エリカ「………あぁ……小梅……落ちた……えだめ…」モガ....

まほ「なんだ? 赤星のやつ今度は肥溜めに落ちたのか?」

エリカ「………」クカー

まほ「…」グゥゥゥゥゥゥ



そこでエリカの寝言は終わった。

部下を肥溜めに叩き落とすとはなかなかの邪道である。どんな夢を見ているのだろうか。

夢の内容も些か気にはなるが、それよりも腹が鳴り出してやかましい。

早くカレーを食べよう。

238 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:18:16.40 ID:iWsjbRHN0

【台所】



まほ「確かこのあたりに…」ガサゴソ

まほ「うむ? おかしいな」ゴソゴソ

まほ「参ったな。残しておいたはずだが…」


エリカ「探してるのってコレのこと?」つ[Von Calais]


まほ「ああそれだ。悪いなエリカ」

エリカ「どういたしまして」

まほ「………ん」

エリカ「?」


まほ「うっ!?」


エリカ「」ビクッ

まほ「どうしてお前がここにいる。背後から現れるから驚いただろうが」

239 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:19:14.90 ID:iWsjbRHN0



エリカ「どうしてって…私の家なんだから私がいても別におかしくないでしょう?」

まほ「そういう意味ではない。つい先程までお前は私の部屋で寝ていただろう」

エリカ「ええ寝てたわよ。寝てたけど、急に姉さんの匂いがしなくなったから目が覚めたのよ」

まほ「お前は犬か」



ああ犬だな。

キャンキャン吠え、クンクン甘えて、ゴロゴロくつろぐ。紛うことなき犬だ。

オマケにそこら中に糞尿まで垂れ流す



エリカ「だぁから糞尿は

まほ「静かにしろ。今何時だと思っている」

エリカ「ぐ…」


240 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:21:43.23 ID:iWsjbRHN0


まほ「そもそもここへ何しに来た?」

エリカ「お腹がすいたから何か食べようかなと思って」

まほ「ならば良いものがある」

エリカ「良いもの?」

まほ「庭に沢山草が生えている。今年は菊代さんが帰省の関係で草刈りが遅れたからまだ残っている。マヨネーズをつけて食べるといい」

エリカ「ヤギじゃないんだから食べれるわけ無いでしょう!!」

まほ「静かにしろと言ったはずだ。何度も言わせるな」

エリカ「…姉さん、いい根性してるわね……」

まほ「根性なくして黒森峰の隊長は務まらん」


241 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:23:23.72 ID:iWsjbRHN0


まほ「さて」

エリカ「…」ジー

まほ「…」

エリカ「…」ジー

まほ「…なんだ」

エリカ「姉さん、作れるの? ソレ?」

まほ「なに?」

エリカ「レトルトカレー。作れるの?」

まほ「は?」

エリカ「作れるの?」



…こいつは何を宣っているのだ?

レトルトカレーが作れるか、だと?

馬鹿にするな。レトルトカレーの一つや二つ作れないようで西住流が名乗れるか。


242 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:26:00.78 ID:iWsjbRHN0


エリカ「…いや、西住流以前に、作れないと人としてどうかと思うわよ…」

まほ「案ずるな。レトルトカレーなど作り方を誤る方が難しい」

エリカ「そうよね…?」

まほ「うむ。まずは箱からパウチを出す」

エリカ「ええ」

まほ「そしてパウチを開け口から開封する」

エリカ「そうね」

まほ「そして、鍋に中身をあける」

エリカ「うん」



エリカ「………ん?」



まほ「…どうした?」

エリカ「こっちがどうしたって聞きたいわよ! 姉さん頭打っておかしくなったんじゃないの?!」



頭を打っておかしくなったのはお前だろうが。

…まったく。今のエリカは人に対するモノの言い方を知らんから困る。

良いかエリカ。戦車道というのはな、『乙女の嗜み』として古くから伝わる武芸だ。

そこには礼節あり淑やかで慎ましく凛々しい婦女子の育成を目指すという目的がある。

故に女子高生のように下品にギャーギャー騒ぐような女でいては戦車道をやる者として不適格だ。

243 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:29:37.87 ID:iWsjbRHN0


エリカ「いや、だって…」

まほ「だってもラーテも無い。戦車道を嗜む者ならば品行方正を心がけよ」

エリカ「姉さん、一つ良い?」

まほ「なんだ?」

エリカ「あのね、戦車道は大事よ?」

まほ「うむ」

エリカ「けれども」


エリカ「レトルトカレーひとつ満足に作れないと、婦女子どころか人として失格レベルよ?」


まほ「私がレトルトカレーを作れないとでも?」

エリカ「」コクリ

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…なに?」

244 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:30:59.77 ID:iWsjbRHN0

エリカ「レトルトカレーって、中身を鍋に放り込んだりしないわよ?」

まほ「は? ならばどう作れと言う」

エリカ「お鍋に水を入れて、火にかける」

まほ「…」

エリカ「そこにレトルトカレーのパウチを入れて温める」

エリカ「そして温まったら封を切って、お皿に盛り付ける」

エリカ「…以上」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…ちょっと待ってろ」ピポパ

エリカ「?」



真相を確かめるために、私はこの手の情報に詳しい人物と連絡を取った。


245 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:33:56.48 ID:iWsjbRHN0


『…も、もしもし……?』

まほ「私だ」

『……わたしさん……? …こ、こんな時間に何よ……』

まほ「………まず私の名前は私さんじゃない……」

『おお…?』


まほ『西 住 ま ほ だ』


『A゛hhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!』バタン ゴン!!



電話の先でケイが絶叫している。

どうせあいつのことだ。ポップコーンでも貪りながらホラー映画でも見ていたのだろう。

こちらが緊急事態だというのに呑気なやつだ。

そして名乗っただけで絶叫するとは失礼なやつだ。

246 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:36:02.05 ID:iWsjbRHN0


ケイ『ま…マホっ! "Orgy of the Dead"観てる時に脅かさないでよっ! ビックリしたじゃない!』ヒリヒリ

まほ「それは悪かった。しかし"死霊の盆踊り"とはまた渋いチョイスだな」

ケイ『…そんなことより、こんな時間に電話して何かあったの? 他の学校の皆はもう寝ちゃってるよ?』

まほ「実はだな、ケイ。お前に頼みたいことがある」

ケイ『へ? 頼みたいこと?』


まほ「ああ。お前にしか聞けないことだ」


ケイ『!! …私に…だけ…?』

まほ「ああ。ケイにだけ」

ケイ『…そ、そう……内緒話…?』


まほ「私とケイだけの"秘密"だ」


ケイ『う、うん…なんでも聞いて…まほ……』ドキドキ

まほ「済まないな」

ケイ『い、良いのよ! 他でもないまほの頼みだもん…!』ドキドキ


247 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:36:54.92 ID:iWsjbRHN0





まほ「レトルトカレーの作り方を教えてくれ」






ケイ『……………………は?』




248 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:40:54.89 ID:iWsjbRHN0

まほ「その、なんだ…」

まほ「私は今までレトルトカレーは、パウチの中身を鍋に入れて加熱するものだと思っていた」

ケイ『…』

まほ「しかし、うちの副隊長が言うには、パウチは開封せず、そのまま水の張った鍋に入れて加熱するのだと言う」

ケイ『…』

まほ「もしかしたら、私は今の今まで重大な過ちを見過ごしていたのかもしれない…」



エリカはレトルトカレーひとつ満足に作れぬ者など人間失格だと言う。

しかし私としては、そのような輩は人間どころかミジンコ以下であり。

そして、その"ミジンコ以下"に私は今まさになろうとしている。

このままでは西住ジンコ流などと罵られてしまう。

だから今ここで名誉を挽回するのだ…!

ちなみに、何故ケイなのかというと、こいつはハンバーガーやフライドチキンといったジャンクフードばかり食べている。

なのでレトルトカレーにも詳しいだろうと思っての選定だ。髪の毛もカレーみたいな色してるしな。

249 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:43:09.89 ID:iWsjbRHN0


まほ「…というわけだ」

ケイ『………』

まほ「…おい、ケイ? 聞いているのか?」







ケイ『ファァァァキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!』







まほ「え」

ケイ『なぁにがカレーだ!! 私の純情返しやがれバーーーーーカ!!!!!!』

まほ「お、おい…?」



よくわからんが、ケイが煮込まれたカレーのように沸騰している。

『ポジティブ』という単語を擬人化したかのように開放的で明るいやつだけに珍しい事もあるものだ。


…もしやケイ、お前も腹を空かせているのか?

250 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 21:48:03.40 ID:iWsjbRHN0


ケイ『うっさいうっさい!! 私はお腹なんか空いてないよっ!!』

まほ「そ、そうか。とりあえず落ち着け…」

ケイ『ビークワイエッ!! ちょっとでもドキッとした私がバカだったぁぁぁぁぁぁぁ!!』ウワーン

まほ「そ、それは悪かった…すまん」

ケイ『ダージリンのヤツがドヤ顔でカレシ自慢するからアッタマ来てた矢先にコレよジーザス!!』

まほ「いや、カレシじゃなくカレーを…ん?」

ケイ『何よ…?』

まほ「ダージリンのやつ、男がいるのか?」

ケイ『ええ!いるわよっ! あんにゃろう私の前でイチャコラしやがってぇぇぇぇぇ!!』

まほ「それは知らなかった」

ケイ『なぁにが、"キヌヨさんは私だけの白馬の王子様ですの♥"だ!! ふざけやがってぇぇぇぇ!!!』ウガー



話を要約すると、ケイはカレーではなく"カレ"がいないことに憤慨しておられるようだ。

その憤慨ぶりたるや元の性格が思い出せなくなる程である。女の嫉妬というものは恐ろしい。

だが恋人がいないのは何もケイに限った話ではない。むしろ恋人がいる人の方が少数ではないだろうか。

私もそうだし、ダージリンを除く他の隊長も恐らく恋人などいたことがないはず。少なくとも安斎は確定だ。

ティーガーが鹵獲されたというなら腹が立つのもわかるが、惚気話如きに何をそんなに腹を立てることがあるというのだ。



………ん?
251 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 21:51:41.63 ID:iWsjbRHN0


まほ「キ"ク"ヨさん…?」


ケイ『そうよ キ"ヌ"ヨ! まぁ私はキヌって呼んでるんだけどさ! ダージリンのヤツ年下の子捕まえやがってぇぇぇぇ!!』グギギギ

まほ「なに?! 彼女はダージリンと付き合っているのか?!」

ケイ『そうよ! ダージリンのヤツ、私の前で "普段は騒がしいけれど、二人きりになると…ふふっ♥" ってノロけやがって!!』ガァァァァ!!

まほ「………」



とんでもないことを知ってしまった…。

菊代さんは我が西住家の家政婦だが、まさかダージリンと関係を持っていたとは…。

…いや、驚くべき事実ではあるが、考えてみればそれほど突飛な話でもない。


菊代さんには私やみほが幼い頃から身の回りの世話をしてもらっていた。

その他にも西住流の門下生や来客の応対、家事全般をこなしている。

そんな多忙極まりない家政婦という境遇に息苦しさ、そして虚無を感じていたのかもしれない。


だから、ダンケルクよろしく西住家を飛び出して、思い切って羽根を伸ばしたかったのだろう。

そんな矢先に聖グロのダージリンと出会い、恋に落てしまったのだ。


…菊代さんのことだ。どうせ玉の輿でも狙っていたのだろう。


252 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 21:58:16.80 ID:iWsjbRHN0


まほ「ケイ」

ケイ『な、何よぉ…?』


まほ『彼女は私たちの家で暮らしている』


ケイ『What's!!?』

まほ「それも何年も前からだ」

ケイ『ちょ、ちょっとマホ! それ本当なの!? Really!?』

まほ「ああ。朝は起こしてくれるし、美味しいご飯を作ってくれる』

ケイ『うそ!?』

まほ「嘘なんかじゃない。私たちにとって生活の一部だ」

ケイ『…oh…そうだったんだ………』

まほ「こんな事になっていたなんて、知らなかった…」

ケイ『………』



さすがのケイも黙り込んでしまった。

何しろダージリンの交際相手は菊代さん、つまり"西住流の使者"だ。

このまま両者の関係が深まれば、ダージリンは西住流の女としてその敷居を跨ぐことになる。

そしてそれは、西住流の次期家元は私ではなく、ダージリンが選ばれる可能性があるということを意味する。

家元の座を誰にも渡すつもりはないが、ここに来て新たなライバルが現れたこととなる。

私か、あるいはダージリン、どちらが西住の名を受け継ぐに相応しいか………!


西住流の今後を決める話だ。

今電話をしているケイはともかく、菊代さん交際相手であり私の宿敵となったダージリンにも話しておくべきだろう。

253 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 22:01:31.03 ID:iWsjbRHN0


まほ「…どうやら、泥沼の争いになりそうだな」

ケイ『わ、私…知らなかったよ…あの子がそんな事してるなんて………』

まほ「私も明日、ダージリンに改めて宣告するとしよう」

ケイ『ま、マホ…?』

まほ「なんだ?」

ケイ『その、さっき…私"たち"って言ったよね?』

まほ「ああ、そうだが?」

ケイ『じゃ、じゃぁ他にも?!』

まほ「うむ。私だけでなく、みほもお世話になっている」

ケイ『ミホも!?』

まほ「みほだけじゃない。最近では副隊長のエリカも世話になっている」

ケイ『え゛っ!!?』

まほ「実際に昨夜は一緒に風呂に入っていた。エリカ曰く」




まほ「"気持ちよかった"とのこと」



ケイ『〜〜〜〜〜〜〜〜!!////////////』ポシュッ!



エリカは腕を骨折しているため、一人で体を洗うことができず、菊代さんに手伝ってもらった。

かくいう私やみほも幼い頃は菊代さんに体を洗ってもらうことが何度もあった。

家事をそつなくこなす菊代さんだけに人の体を洗うのもまた上手いのだ。あの絶妙な力加減は病み付きになる。


…ところで、電話の向こうから撃破判定装置が作動する音がしたのだが、ケイは一体何をしているのだろうか?

254 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 22:03:16.65 ID:iWsjbRHN0


ケイ『マホのおバカ〜〜〜〜〜ッ!!/////』


まほ「なっ、何故私が馬鹿なんだ!」

ケイ『そそそそんなの言っちゃダメでしょーがぁ!!//////』

まほ「何をだ?」

ケイ『ききき、気持ちいいいだなんて、はは破廉恥だよっ!/////』プシュゥゥゥゥゥゥゥ

まほ『む…』



確かに。人様の風呂事情を赤裸々にしたのは不味かった。

さすがの私も入浴中に何処をどう洗うかなど暴露されて良い気はしない。

私としたことが軽口を叩きすぎたようだ。気をつけなければ…。


…ところで、電話の向こうから蒸気が噴き出すような音が聞こえるが、ケイは一体何をしているのだろうか?

255 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 22:05:12.11 ID:iWsjbRHN0


ケイ『わ、私…あの子に会ったらどう接すれば良いか分かんなくなっちゃったよ…』

まほ「実を言うと私もだ。明日どんな顔をして接すれば良いか迷う」

ケイ『…ダージリンにちょっぴり嫉妬してたけど、こんな事になってたなんて…ダージリンが可哀想だわ…』

まほ「それでも変えられない事実だ。だから私は明日ダージリンに改めて宣告する」

ケイ『だ、ダメよマホ! ダージリンあんなに幸せそうにしてたんだから!』

まほ「だが言わなければ何時までたっても解決しないだろう?」

ケイ『ダメだって! 絶対ダメっ!!』

まほ「しかし…」


256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/11/30(木) 22:08:14.80 ID:Qv730hDSO
>>229
死ね特定厨
西ダジくらい普通だろ
257 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 22:10:11.83 ID:iWsjbRHN0


ケイ『考えてもみなさいマホ! 恋人ができて幸せ絶頂なあなた自身を!』

まほ「出来たことが無いから考えようがないが、まま幸せなのだろうな」

ケイ『そんな毎日超ハッピーなタイミングで、その恋人が色んなヒトと浮気してたって知らされたらマホはどんな気持ちになるの!』

まま「そうだな。履帯の染みにする程度では恐らく気が済まないだろう」

ケイ『でしょう? ダージリンにとってもそれくらいショッキングな出来事なんだから簡単に言っちゃダメよ!』

まほ「…しかし、ダージリンとは西住流家元の看板を懸けたライバルだ。宣言無しで戦うのはフェアじゃない」

ケイ『浮気にフェアもアンフェアも無いわよっ!!』

まほ「まぁそうだが………うん? 浮気?」

ケイ『まずは私がキヌに"女の子を悲しませるような事しちゃダメ"って話すよ!』

ケイ『それでキヌに謝罪させるの!』

まほ『そうか。…ところでケイ』

ケイ『なに?』











まほ「キヌって誰だ?」




258 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 22:10:53.89 ID:iWsjbRHN0




ケイ『へ?』

まほ「急に知らぬ人物の名が出てきて困惑しているのだが」

ケイ『なに言ってんのよ。今までずーっとキヌのことでお話してたじゃない』

まほ「えっ」

ケイ『あ、私がキヌって呼ぶからいけなかったわね。キヌヨよキヌヨ』

まほ「キヌヨ? 知波単学園の西絹代か?」

ケイ『そうよ?』

まほ「…」

ケイ『…』

まほ「…」

ケイ『…?』



…どうやら、盛大な勘違いをしていたようだ。



〜〜〜

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