エリカ「姉さん」

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122 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:36:46.63 ID:WQUJgq7Y0


まほ「良い機会だ。二人に話しておきたい事がある」

赤星「話しておきたいことですか?」

直下「何でしょう?」

まほ「ああ。実はだな…」


みほ「お姉ちゃん」

エリカ「姉さん」


まほ「あ」


直下「ありゃ。副隊長と副隊長もいる」

赤星「違うよ。みほさんと副隊長」



その通りだ赤星。副隊長は一人だけだ。

これからお前たちに代役を務めてもらうので2人になるけどな。

123 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:38:19.77 ID:WQUJgq7Y0


みほ「あっ、赤星さんと直下さん。お久しぶりです」

エリカ「あなた達こんな所で何油売ってんのよ」

まほ「エリカ」

エリカ「うっ…」


赤星「副隊長、意識戻られたのですね!」

エリカ「えぇ。腕はこんなだけど問題ないわ。心配かけたわね」

直下「良かった。てっきりもう戻らないかと……」

エリカ「縁起でもないこと言わないでくれるかしら」ハァ...


ああ。この部下に対するツンツンした態度はまさにエリカだ。

家でのゴロゴロフニャ〜なエリカが別人のように思える。

124 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:38:59.05 ID:WQUJgq7Y0

赤星「それで隊長、お話というのは?」

直下「あ、そうですよ」

まほ「うむ」


エリカがこの場にいるタイミングで話すべきか否か迷ったが、エリカがこんな状態である以上、有耶無耶ではまずいだろう。

だから思い切って話すことにした。

125 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:41:40.64 ID:WQUJgq7Y0


まほ「エリカは意識は戻ったが、まだ病み上がりだ。そして何より片腕が使えない状態だ」

エリカ「…」

まほ「そのため、お前たち2人に副隊長代理として、エリカが復帰するまでのサポートを任せたい」

赤星・直下「!」

まほ「構わないな? エリカ」

エリカ「まぁ…仕方ないわね。腕がこんなだし」

まほ「…」

エリカ「不本意だけれども、あなた達2人に手伝ってもらうわ」

エリカ「副隊長代理としてその大役、しっかり果たしてもらうわよ?」

赤星・直下「はい!」ビシッ

エリカ「でも、姉さんはああ言うけれど。腕以外は何とも無いから安心して頂戴」

まほ「エリカ、無理はするな」

エリカ「わかってるわよ。ホントに心配性ね」


赤星・直下「姉さん?」


まほ「あ゛っ!」

エリカ「…何かしら?」



"何かしら"じゃない!

事情を知らない2人の前で「姉さん」は不味いだろうが!

それに何が"腕以外は何とも無い"だ。お前の頭は今まさに異常事態なんだぞ!!

126 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:42:56.60 ID:WQUJgq7Y0


赤星「いえ…、今たしかに"姉さん"って…」

エリカ「そうだけど、それが何か?」

直下「しかも敬語じゃないですし、一体どうしちゃったんです?」

エリカ「当たり前じゃないしま…

みほ「ほ、ほら! アンチョビ高校のアンツィオさんだって後輩たちに"姐さん"って呼ばれているじゃないですか?! あんな感じですよ!!」

赤星「そうなんですか…?」

直下「へぇ…」



見事なフォローだみほ。

だが惜しい。アンチョビ高校のアンツィオではなく、アンツィオ高校のアンチョビだ。

…安斎が聞いたら泣くから注意だぞ。


127 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:44:11.59 ID:WQUJgq7Y0



直下「じゃぁ私達も隊長のこと"姐さん"って呼んでも良いですか?」


赤星「あっ、なんか良さそうかも!」

みほ「ええっ!?」



良いわけないだろ。何てことをしてくれたんだみほ。

黒森峰がノリと勢いだけのポンコツ極貧チームになってしまうじゃないか。

…安斎が聞いたら泣くから内緒だぞ。
128 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:45:35.27 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「本気で言ってるのあなたたち?」ギロッ

赤星・直下「うっ…」



よくぞ言ってくれた。褒美としてオペルブリッツを買う権利をやろう。

そうだそうだ。黒森峰は規律を重んじるから強豪校である。上下関係はしっかりしておかないとチームの質が低下する。

節度や上下関係は何よりも大事なんだぞ。




エリカ「姉さんと呼んで良いのは身内だけよ」



赤星「えっ?」

直下「身内…?」

みほ「」←レ●プ目



お前もう喋るな! どんどん面倒くさい方向に話を進めおって!!

こうなったら逃げ…いや、逃げるのではなく後退的前進だ。

129 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:46:12.51 ID:WQUJgq7Y0


まほ「…さて我々はそろそろ行くとする。赤星、そして直下、先程の件忘れずに頼んだぞ?」

直下「え、あの身内ってどういう?」

まほ「聞 こ え た か ?」ギロッ

赤星・直下「はいぃっ!了解しましたぁ!!」

まほ「では週明けに会おう」



ああ。生きた心地がしない。

こんな調子ではエリカを学校に行かせられないな…。


130 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:49:15.76 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「隊長って大変ね。あんな横着な部下をまとめないといけないのだから…」

まほ「お前が一番横着だ」

エリカ「そんなことないわよ。…そういえばみほも隊長だったわね。忘れてたわ」

まほ「…」

みほ「うん。でもみんな優秀な人たちだからお姉ちゃんほど苦労はしてないかな」

エリカ「そう。…姉さんそのうちストレスでハゲるかもね」

まほ「そんなことあってたまるか」

みほ「隊長がハゲじゃちょっと格好つかないかも…」

まほ「そんなことない。ハゲても格好いい人はいくらでもいる。ステイサムとかヴィン・ディーゼルとか」

エリカ「でもハゲ森峰と言われそうね」

まほ「やかましい」

みほ「はげもりみね……」

131 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:50:26.42 ID:WQUJgq7Y0

エリカ「…で、次はどこへ行くのかしら?」

まほ「そうだな……というかお前たち服は買ったのか?」

エリカ「当たり前じゃない」

みほ「うん。いっぱい買ったよ」

まほ「そうか。それは良かった」

エリカ「ちゃんと姉さんの分も買ったから安心して良いわよ」

まほ「え」


みほ「はい」つ[ボコの着ぐるみ]

エリカ「はい」つ[ネグリジェ]


まほ「」

みほ「えー…そんなスッケスケの着たらお姉ちゃん痴女さんチームになるよぉ…」

エリカ「あんたのその着ぐるみ着せたら姉さん生気吸われるわよ!」


ワイワイ ガヤガヤ


まほ「」つ[ネグリジェ] つ[ボコの着ぐるみ]



お前たちの服選びのセンスには異論を唱えたい。

何故私の服を選び、何故普段着ではなく寝間着なのだ…。

132 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:52:17.75 ID:WQUJgq7Y0


【下着売り場】


みほ「次は下着売り場?」

まほ「あぁ。エリカの下着が無いからな。買わねばならん」

みほ「…ということはエリちゃん今ノーパン?!」

エリカ「そんなわけ無いでしょ! ちゃんと履いてるわよ姉さんのを!」

みほ「お姉ちゃんのを?」

エリカ「えぇ。無地の白いモコモコしたやつ」

みほ「それはちょっとかわいそう…」



当たり前だ。

中学の頃から履き続けてたが故にボロボロで雑巾候補のやつなのだからな。

それよりエリカ、人の下着事情を公にするんじゃない。

133 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:53:14.93 ID:WQUJgq7Y0

みほ「エリちゃんこういうの似合うんじゃない?」

エリカ「どれよ」

みほ「じゃーん」


[ボコプリント]


エリカ「…あんたボコ以外の選択肢ないの?」

みほ「えー」

エリカ「もっと大人なヤツを探しなさい」

みほ「大人なヤツって?」

エリカ「例えばこういうの」


[黒のレースの下着]


みほ「えぇ…」

エリカ「これだったら何処へ行っても恥ずかしくないわ」

みほ「でもお姉ちゃんこういうの履かなさそう…」

エリカ「確かに…」



ちょっと待てお前たち。何故私の下着を選んでいるのだ。

エリカの下着を選べと言ったはずだ。私は十分間に合っている。



それから2人はあれよこれよと言いながら幾つか下着類を買った。…私の分まで。



〜〜〜


134 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:55:02.49 ID:WQUJgq7Y0


【再びII号戦車内】


みほ「それにしてもいっぱい買ったね!」

エリカ「こんなに買い物したの久しぶりよ」

みほ「でもボコは…」

エリカ「だめ」

みほ「ぶぅ!」



みほの言う通りやたら買いまくった。II号の車内が狭いくらいに。

…だが、ここまでたくさん買う必要はあったのだろうか。

エリカの生活用品のほとんどは黒森峰の学生寮にあるので、本当に必要ならばそちらから引っ張って来れば良い。

もっとも、私もエリカもいずれ学園艦には戻らないといけないので、そうなったらエリカは再び寮生活となるわけだ。

そう考えるとこんなに買い込んでも意味が無いような気もするが。


寮生活といえばエリカは一人暮らしは大丈夫なのだろうか?

片腕が使えないので不便なのは勿論、怖いからと私の布団に潜り込むような状態だ。とてもじゃないが一人暮らしなど出来る状態ではない。

実家にせよ寮生活にせよ、エリカが元に戻るまでは私が面倒を見てやるしかないか。…みほ、もう一度黒森峰に戻ってこないか?



〜〜〜〜

135 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:56:58.81 ID:WQUJgq7Y0

【まほの部屋】


まほ「ふむ…」ペラッ

まほ「なるほど」ペラッ

まほ「これは使えそうだな…」ペラッ



みほやエリカが服や雑貨を買い漁っている間、私は本屋で戦車道に関する本を何冊か買っていた。

西住流だとか隊長という立場的なものもあるが、やはり純粋に戦車が好きなので、こういった本は定期的に買って読んでいる。

そして今読んでいるこの本では『ツィメリット・コーティング』という、ドイツ戦車特有の仕様についての解説が書かれている。

ティーガーやパンター、IV号といった主力戦車やそこから派生する駆逐戦車や突撃砲の装甲には、磁石によって吸着する地雷を引っ付かなくするための特殊コーティングが施されており、その表面は波打ったような模様をしている。

戦車道にて吸着地雷を使う者はいないので実装しても重量が増すだけだが、ドイツ戦車のみに見られるユニークな特徴だけに見掛け倒しで終わってしまうのが惜しい。


136 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:59:13.04 ID:WQUJgq7Y0


まほ「ふむ…」ペラッ

エリカ「」ジー

まほ「…そういうことか」ペラッ

エリカ「」ジー

まほ「これも使えそうだな」

エリカ「」ジーーー



まほ「…で、どうしてお前は私の横にいる」



どういうわけかエリカは私の横にピッタリ引っ付いてじーっと本を目で追っている。


  私
  ↓

( ゚д゚)(゚д゚ ) ←エリカ
 ヽ_っ⌒/⌒c


こやつも黒森峰の副隊長なので、戦車の知識・理解を深めようとする姿勢は大いに歓迎する。だが、いかんせん横にピッタリ貼り付かれては読書に集中できん。

買った本は他にも何冊かあるのだからそれを読めば良いのに、『コレがいい』と言うから不思議なやつである。

私の体にドイツ戦車のようなコーティングを施せばエリカも引っ付かなくなるだろか?

137 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:00:15.73 ID:WQUJgq7Y0

エリカ「だって退屈ですもの」

まほ「知らん。自分の部屋でコサックダンスでもしていろ」

エリカ「やだ。あの部屋怖い」

まほ「今ならみほがいる。一人ならまだしも二人いれば怖くない」



ちなみに、みほは帰宅すると同時に自分の部屋…ではなく、例のボコランド西住店へ閉じこもってDVDを観ている。相当気に入っているようだ。

楽しそうな表情で『お姉ちゃんも一緒に観よう♪』と誘うので参加したが、3分で飽きたので今はこうして自室で本を読んでいる。

みほによるボコランド侵攻によって居場所を失った難民エリカは、また私の部屋でくつろいでいる。尿瓶でも用意して仲良く観ていれば良かったものを。


138 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:01:03.64 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「イヤよ。みほのやつ私の隣で念仏唱えだすもん」

まほ「念仏?」

エリカ「ヤーッテヤルヤーッテヤルって取り憑かれたみたいに変な歌うたうのよ」

まほ「良いじゃないか。念仏ならオバケは寄って来なくなるぞ」

エリカ「とにかく嫌なものは嫌なの。姉さんの本読んでる方がまだマシよ」



随分言ってくれるなこいつは。

余談だが昨晩からエリカは私にぴったり引っ付くようになった。

腕が使えないとか部屋が怖いとか色々事情はあるだろうが、姉妹とはここまで行動を共にするものなのだろうか?

今この部屋にいないみほくらいが姉妹としての距離感なのだと私は思っていたのだが。

139 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:04:36.50 ID:WQUJgq7Y0

エリカ「次のページ」

まほ「ん」ペラッ

エリカ「」ジーッ

まほ「…」ペラッ

エリカ「あ! 今のページまだ読み終わってない!」

まほ「知らん」

エリカ「戻るわよ」ペラッ

まほ「おい」


エリカ「ティーガーIIと同じ71口径8.8cm砲を搭載した戦車を3つ答えよ」


まほ「は?」

エリカ「ティーガーIIと同じ71口径8.8cm砲を搭載した戦車を3つ答えよ」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「ヤークトパンター、エレファント、あと一つは…」

エリカ「はい残念。答えはナースホルン。やっぱりちゃんと読んでないじゃない!」



急に何をのたまうのかと思えば、先程のページに記載されていた"主砲"についてだった。

"71口径 8.8cm砲"はエリカが乗るティーガーIIをはじめ、ヤークトパンター、エレファントといった我が校の駆逐戦車にも搭載されている。

そしてその砲は、マウスやヤークトティーガーの12.8cm砲に次ぐ最強クラスの砲であり、他校の戦車をアウトレンジから撃破可能な威力をもつ。

黒森峰で戦車道を受講する者ならば"知ってて当然"の知識といっても過言ではない。

それをコイツはしたり顔で私に問うてきたのだ。だが…


140 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:05:54.38 ID:WQUJgq7Y0


まほ「は?」ギロッ

エリカ「な、なによ…」

まほ「ナースホルンは戦車じゃない。(対戦車)自走砲だ」

エリカ「…似たようなものじゃない」

まほ「いいや全然違う! 自走砲は旋回式砲塔がない。それに装甲も薄い。前線で殴り合う戦車や駆逐戦車とは運用思想が異なる」

エリカ「ふ、ふーん…」

まほ「バズーカと迫撃砲くらい違うと言っても過言ではない」

エリカ「じゃあ」

まほ「なんだ?」


エリカ「自走砲と突撃砲と駆逐戦車ってどう違うの?」


まほ「…」

エリカ「…」
141 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:07:14.88 ID:WQUJgq7Y0


まほ「自走砲のうち、砲兵科に行ったのが突撃砲で、戦車部隊に行けば駆逐戦車となる」

まほ「もっとも、突撃砲や駆逐戦車は管轄部隊間の縄張り争い的な背景もあり、定義は曖昧なものだ」

エリカ「ほう…」

まほ「だから大雑把に、歩兵の支援が突撃砲、戦車の支援が駆逐戦車と覚えておけばいい」


エリカ「でも大洗のIII号突撃砲は普通に対戦車戦闘しているじゃない?」


まほ「…」

エリカ「…」

142 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:10:10.29 ID:WQUJgq7Y0

まほ「それは戦況の変化につれて、歩兵の脅威がトーチカや塹壕から戦車へ変わり、突撃砲にも対戦車戦闘能力を求められた背景にある」

まほ「その他、戦線の拡大や戦況の悪化による戦車の不足を補うために対戦車車両が必要になったのも理由の一つだ」

エリカ「ふーん」


エリカ「じゃぁ対戦車自走砲と駆逐戦車は?」


まほ「…」

エリカ「…」


まほ「駆逐戦車は対戦車自走砲の一種という見方もあるが、駆逐戦車は対戦車自走砲と違い、敵戦車の砲撃にもある程度対抗可能な装甲を持っている点が大きな違いだ」

まほ「例えばお前が例に挙げたナースホルンはオープントップで装甲も薄い」

まほ「対してヤークトパンターやエレファントは密閉型の戦闘室を持ち、装甲も戦車と同等クラスだ」

エリカ「へぇ…」


143 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:11:38.41 ID:WQUJgq7Y0



まほ「おいエリカ」ギロッ


エリカ「な、なによ…」

まほ「今の内容は初年度のうちに座学で学ぶはずだが?」

エリカ「え。そうだったかしら?」

まほ「ああそうだ」

エリカ「…記憶違いじゃないの?」

まほ「それはない」

エリカ「ど、どうかしら…」

まほ「何故なら」


まほ「私が教官として指導したのだからな」


エリカ「」



こいつめ、真面目に受講していたと思いきや完全に頭から抜けているではないか。

今の内容は初期にやった基礎的なものだというのに。

ん? もしや私の教え方がいけなかったのか?

…念のため週が明けたら全員にテストしてみるか。結果を見るのが怖いが。

144 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:13:09.90 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「そ、そりゃ人間だから忘れることだってあるわよ!」

まほ「そうだな。人間だから忘れる」

エリカ「でしょ?」

まほ「だがお前は腐っても副隊長だ」

エリカ「腐ってもって失礼ね!」

まほ「そんな腐ったエリカも私が卒業したら隊長になる」

エリカ「そ、そうよ? 腐ってないけど」

まほ「その時、部下に戦車のことを尋ねられ、『わかりません』と答える隊長をどう思う?」


エリカ「………(想像中)」

      。
       O
        ○
*************************************


145 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:14:29.27 ID:WQUJgq7Y0


部下「西住隊長! 質問があります!!」

まほ「言ってみろ」

部下「ティーガーIよりティーガーIIの方が火力も装甲も上なのに、どうして隊長はティーガーIに乗ってるのですか?!」

まほ「え」

部下「どうしてですか?」

まほ「そ、それはだな…」

部下「わかりました! 根性ですねっ!!」

まほ「おっ、そうだな」

部下「みんな! 気合と根性さえあれば黒森峰は最強だ! 黒森峰ファイトぉぉぉぉぉ!!!」

「えー…かったるいっスよー」

「根性より今はケーキが食べたい。そして眠い」zzz

まほ「…」


まほ「お前らの練習態度はなんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 本当に強くなろうって気があんのかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

146 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:15:42.27 ID:WQUJgq7Y0


*************************************
      ○
     o
    。


エリカ「馬鹿なの?」

まほ「…」



私の目を見て真顔で言い放ちやがった。

数秒の沈黙の間に何を想像したのか知らんが、謂れのない侮辱を受けた気がして頭に来た。

この軽口叩きの鼻っ面をへし折ってやろうかとも思ったが、既のところで理性が勝った。

147 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:16:37.07 ID:WQUJgq7Y0


まほ「そうだな。エリカの言う通り、そんな隊長は馬鹿だ」

エリカ「でしょう?」

まほ「あぁ。次期隊長となるお前がそんな馬鹿では困る」

エリカ「私は馬鹿じゃ


まほ「だからテストしてやる」


エリカ「え」

まほ「今から幾つか問題を出す。お前はそれに 完 璧 に 答えろ」

エリカ「ちょっと待ちなさい! 誰がやるって言ったのよ!?」

まほ「私がやれと言った」

エリカ「私はやらないわよ! 勝手に決めないでちょうだい!」

まほ「そうか」

エリカ「そうよ」


ピポパ

プルルルル

プルルルル

148 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:17:19.20 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「?」

まほ「もしもし。お楽しみ中のところ済まないな、みほ」

エリカ「何で家にいるのに電話かけるのよ…」

まほ「はは。何の事はない。みほに頼みたいことががあってだな」


まほ「ボコの魅力に目覚めた。部屋中をボコまみれにしたい」


エリカ「え゛っ!?」

まほ「ん? DVD見終わってから? はは、構わない。それではよろしく頼むよ」

ピッ


エリカ「」


149 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:18:49.40 ID:WQUJgq7Y0


まほ「さて、エリカはテストをしないと言うから、私は ボ コ の ぬいぐるみで遊ぶとしよう」

エリカ「」ガタガタ

まほ「エリカがテストを受けないのは実に残念だが、ボ コ の ぬいぐるみで遊べばきっと楽しいに違いない」

エリカ「」ガクガク

まほ「嗚呼、楽しみだな」

エリカ「わかったわよ!! やれば良いんでしょぉ!!!」

まほ「最初からそう言え」



ポンコツにはポンコツなりの法則があるようで、エリカが言う事を聞かなくなったら「ボコ」を出して従わせることにした。我ながら良い案だと思っている。


さて、予告通りエリカにはいくつかテストを実施したが、やはり散々な結果だった。

エリカですらこのザマならば他の隊員たちはどうなるのだろうか。

考えるだけでも恐ろしいが放置するわけにもいかん。やはり週が開けたらテストを実施しよう…。

150 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:19:51.62 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「ふ、フン…。基礎は知らなくても後から覚えれば良いだけのこと」

エリカ「それより他校に関する情報を入手することの方が試合で勝つ上では重要よ!」

まほ「そんなことあるか。基礎を軽んじては一流の戦車乗りにはなれん」

エリカ「じゃあ姉さん、転校先でみほが何て呼ばれてるか知ってる?」

まほ「は?」

エリカ「みほのアダ名」

まほ「そんなものは知らん。第一それのどこが"他校に関する情報"なんだ」

エリカ「私知ってるわよ」

まほ「…なに?」

エリカ「みほのアダ名」

まほ「…」

エリカ「…」


まほ「…言ってみろ」


151 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:20:41.73 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「"みぽりん"」

まほ「"みぽりん"…?」

エリカ「こんなの常識よ? アンツィオ高校だって知ってるレベル」

まほ「私は知らんぞ。そんなこと」

エリカ「姉さんが情弱なだけよ」

まほ「失礼な。そういうお前はどこで情報を得ている?」

エリカ「戦車道まとめサイトよ」

まほ「まとめさいと?」

エリカ「…コレよ」スッ



そう言うとエリカは得意気に携帯電話を私に見せつけた。

152 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:22:20.59 ID:WQUJgq7Y0

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 1.【大洗が悪い】今日のみぽりん【軍神
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 7.にるぎりワッショイだけで1000目指す
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 8.…………(2)
 9.黒森峰の戦車全部チハにしたら強豪校
  じゃなくなるんじゃね?(682)
 10.蝶野だけど質問ある?(1)
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     更新日 2017/09/24

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153 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:23:24.41 ID:WQUJgq7Y0

まほ「…何だこれは」

エリカ「言ったでしょ。戦車道まとめサイト。…本当に知らないの?」

まほ「言ったはずだ。そのような俗物は知らん」

エリカ「だから姉さん情弱なのよ…」

まほ「いらんお世話だ。大体この"黒森峰の戦車全部チハにしたら"というのは何だ。冗談も休み休み言え」

エリカ「"火力も装甲も低いチハを使っても黒森峰は優勝出来るか"って話でしょう?」

まほ「当然だ。厳しい訓練を耐え、心身を限界まで鍛え抜いた強者集団が黒森峰だ。戦車の性能如きで試合を左右される軟弱ではない」


154 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:24:04.78 ID:WQUJgq7Y0



エリカ「なら次の試合はチハだけで挑む?」


まほ「…なに?」

エリカ「次の試合。全員チハで参戦するのよ」

まほ「…」

エリカ「…」


まほ「それは不可能だ。予算が下りん」

エリカ「どうかしら


グゥゥゥゥ.....


エリカ「」

まほ「…」

エリカ「な、何よ…?////」

まほ「そろそろ昼食の時間だな」

エリカ「今日のお昼は何かしら?」

まほ「もちろんカレーだ」



〜〜〜


155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:37:54.02 ID:iriIUEfw0
いつの間にかみほの方が妹が出来て喜んでるように見えるな
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 10:48:07.98 ID:OdZrxhV5O
いいですねぇ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 13:37:54.89 ID:/uQTKKexO
尊敬する隊長に糞尿の始末をさせるエリカさん
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 07:10:21.60 ID:Vg2h8xamO
続きはよはよ
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 12:50:28.98 ID:29Xyto/RO
支援
160 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:39:11.18 ID:3c2e7IRd0


エリカ「姉さぁぁぁん!!」

まほ「うるさいな。今度は何だ」



部屋を出たエリカが血相変えて引き返してきた。

昼食に人肉でも出たのかと冗談を言ってみたら『その方がずっとマシよ…』と震えながら言う。

食卓に人肉が並ぶことほど怖い事などそう無いと思うが、どうやらエリカは人肉以上に怖いものを見たようだ。



エリカ「廊下が…廊下がぁぁ………」

まほ「そんなこと気にする歳でもないだろ」

エリカ「老化じゃなくて廊下よ!!」

まほ「…うるさいやつだな全く」

161 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:47:35.94 ID:3c2e7IRd0


【廊下】


まほ「なんと…」

エリカ「」ガタガタガタガタ



そうだ、忘れていた。

先ほどエリカがテストをサボろうとするので、制裁としてみほに『部屋中をボコまみれにしたい』とお願いをしたのだった。

私の部屋がボコまみれになることはなかったが、代わりに廊下がボコまみれになっていた。

いつの間にこんな設営作業をしたのかわからないが、ボコは廊下の両脇に向かい合うように設置されている。なんだか神秘的な光景だ。

そしてそれはみほにとっては花道だがエリカにとってはグリーンマイルのようで、私にしがみついてガタガタと震えている。デジャブ。


162 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:50:57.55 ID:3c2e7IRd0


まほ「こら離れろ」

エリカ「い、嫌よ! 離れたら私殺される!!」ガタガタ

まほ「誰に殺されると言うんだ」

エリカ「コイツらによ!!」

まほ「動かないから心配するな。そしてさっさと歩け。私は腹が減った」

エリカ「う、嘘よ! 絶対動くから!!」

まほ「なら動いた時に考えろ」

エリカ「な、なんで姉さん平気なのよ!? ちゃんと脳ミソ入ってんの!?」

まほ「当然だ。お前のより高性能なやつがギッシリ詰まっている」

エリカ「嘘おっしゃい!!」



兎にも角にもピーピーやかましいやつだ。ぬいぐるみが並んでいるだけだというのに。

これが17ポンド砲ならば話はわかるが、モコモコのぬいぐるみ相手に何を怯えろというのだ。

163 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:52:30.70 ID:3c2e7IRd0


カチッ...


まほ「ん?」



オイラボコダゾォォォォォォォォォォォォ!!!!!

ヤーッテヤルヤーッテヤルヤーーーッテヤルゾ!!

パンパカパンパンパーン!!

カーモン!カーモン!カーモン!ユーキャンデス!!

ジャラジャラジャラ



まほ「お」


エリカ「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」



歩いた振動でセンサーが反応したのだろうか。

ボコロードを半分ほど渡ったところで、急にぬいぐるみに内蔵されていた機械が作動して音が鳴り出した。

音声だけでなくブルブルと振動したり、ライトがピカピカ光ったりするようだ。近頃のぬいぐるみはなかなか多機能である。子供にプレゼントしたらきっと喜ぶだろう。

ただ、ぬいぐるみが賑やかであるかどうかより、エリカが相当まずいことになっている。

腹の底から悲鳴をあげたと思ったら泣き出して、私にしがみついて万力のようにギチギチと締め上げてくる。痛い。腕が痛い。


164 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:55:41.49 ID:3c2e7IRd0


まほ「…というわけです」

まほ「ええ、みほが…いえ、私も悪いんです。いえ全て私の責任です」

まほ「はい…。今以上に厳しく取り締まろうと思っています」

まほ「…では、失礼します」


まほ「………」



エリカのただならぬ悲鳴にお母様がかけつけた。

そして結論を言うと、諸悪の根源であるみほはお母様に叱られた。私まで一緒に怒られた。


"長女としての自覚を持て"

"いい年して妹を泣かすな"

"早くご飯食べなさい"

"ぬいぐるみは後でちゃんと片付けろ"


私が気を抜くことなど無いと思っていたが、このような大失態を犯すのだから、何処かに気の緩みがあったのだろう…。

私としたことが………


エリカはというと、接着剤で貼り付けたかのように私にベッタリと引っ付いたまま離れようとしない。

「怖い」、「食われる」、「おヘソ取られる」といったうわ言をボヤきながらガタガタ震えている。

そんなにくっつくな。ご飯が食べれないだろう。


ちなみに昼食はキャベツとモヤシが山のように入ったラーメンだった。

菊代さん曰く、お母様が作したとのことで。修行をしていた学生時代によく食べたラーメンとのこと。

大蒜の匂いがすごい。

165 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:56:59.82 ID:3c2e7IRd0


みほ「…」ズルズル

まほ「みほも手伝ってくれ。このままではラーメンが食べれない」

みほ「しぃらない」シャキシャキモグモグ

まほ「おい…」

みほ「…」ズズ...

まほ「お前もだエリカ。いつまでもしがみついてないで離れろ。ラーメンが伸びてしまう」

エリカ「…む、無理に決まってるでしょ…!」

みほ「…」ズゾゾー



自分が撒いた種とはいえ、こういう形で返ってくるとは思わなかった。

エリカの記憶がおかしくなってからというもの、私の作戦はことごとく裏目に出てしまう。

166 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:23:26.76 ID:3c2e7IRd0


みほ「早く食べないとラーメンのびちゃうよ?」

まほ「私だって早く食べたい。しかし動けんのだ」

エリカ「」ガタガタブルブル

まほ「こいつのせいでな」

みほ「そう」ツーン



みほは機嫌が悪い。

何故なら『部屋中をボコまみれにしたい』と頼まれ、いざ注文通りにしたらお母様に叱られたわけだ。

それは"カレーだと思って要塞を構築させたらノルマンディーに上陸した"というくらい予想外で頭に来ることだ。みほの気持ちも理解できる。

しかし、空腹時にラーメンが目の前に置かれ、それを食べることが出来ないこの状況は、それらよりも理不尽だと私は思う。

167 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:25:41.54 ID:3c2e7IRd0


まほ「エリカ、いい加減離れろ」

エリカ「い、嫌よ…だってクマが…!」ガタガタ

まほ「…」


まほ「クマのぬいぐるみに襲われない方法、知りたいか?」


エリカ「なんですって!?」

まほ「クマのぬいぐるみに襲われない方法だ。それを会得すればお前も安全だろう?」

エリカ「そんなモンあったら苦労しないわよ! バカじゃないの!?」

まほ「私は長年この家に住み着いてるが、今の今まで一度も襲われたことなんて無い」

エリカ「!!!」

まほ「それは何故だかわかるか?」

エリカ「………姉さんに魅力が無いから?」

まほ「もう知らん。お前なんかボコに襲われて爪先から頭蓋骨まで残さず食われてしまえばいい」



なにが"魅力が無い"だ。失礼にも程がある。

自惚れではないが戦車道に関しては他の追随を許さぬ実力を持っている。

そしてそれはお母様も高く評価して下さっている。

私に魅力がないわけ無いだろう。

168 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:26:58.89 ID:3c2e7IRd0


エリカ「嫌よ!! そんなの絶対イヤ!!」ギチギチ

まほ「んごがっがあがごげっんががっ…ぐ、ぐるじ……はな…れろ…」パンパン

エリカ「で!! どーして姉さんは襲われないのよっ!!?」

まほ「…それは…だな………」ゼェゼェ...



まほ「ごはんを食べることだ」



エリカ「…」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…」

みほ「ごちそうさまでした」

まほ「…」

エリカ「…馬鹿なの?」

まほ「…」


169 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:30:45.59 ID:3c2e7IRd0


まほ「…エリカ、お前はニンニクくさい奴は好きか?」

エリカ「は?」

まほ「ニンニクくさい奴は好きか?」

エリカ「…そんなの嫌に決まってるでしょ」


まほ「それはボコも同じだ」


エリカ「え」

みほ「大丈夫だよ。ボコはニンニクのニオイなんk

まほ「幸いにして今日の昼食はニンニクがたっぷり入ったラーメンだ!」

エリカ「そうね…?」

まほ「これ食べればお前は瞬く間にニンニク臭くなれる」

エリカ「はぁ」


まほ「つまり、ボコがお前を避けるようになる」


エリカ「!」

まほ「さぁ、食べよう」

エリカ「」パッ



ようやくエリカは私から離れた。

そして自分の席に戻り、ニンニクがふんだんに入ったラーメンを黙々と食べ始める。

モグモグ作戦いや、モクモク(黙々)作戦の成功だ。

170 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:34:30.04 ID:3c2e7IRd0


みほ「む…」

まほ「どうしたみほ?」

みほ「モクモク作戦はこんなのじゃないよ」

まほ「黙々と食べるから黙々作戦なのだ」

みほ「違うもん!」



モクモク作戦。

それはかつてみほが我々黒森峰と戦った時に敢行した作戦の一つ。

我々の攻撃を回避し距離を取るため、一斉にスモークを焚いて視界を遮るというものだ。

シンプルな内容ではあるが、チームの連帯が取れてなければ失敗する極めて高度な作戦であり、その効果は凄まじい。

結果としてみほたち大洗の戦車は、我々の戦車部隊が繰り広げる猛攻撃をいとも容易く回避し、次の作戦である山頂の要塞構築に成功した。

あの作戦は敵ながら見事と言わざるをえない。さすが私の妹だ。素晴らしいの一言に尽きる。

171 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:37:13.75 ID:3c2e7IRd0


みほ「いい? モクモク作戦というのはね」

みほ「ただ単に姿を隠すだけじゃなくて」

みほ「時間稼ぎからの反撃につなげるための作戦なんだ」

プゥーン

まほ「う…うむ……」



話をするみほから強烈なニンニク臭が漂ってくる。

前回の戦訓により、モクモク作戦を打ち破るために徹夜で対抗策を考えたにもかかわらず、私はまたしてもみほのモクモク作戦を前に悪戦苦闘する。

さすがだよ…みほ…。


だが清楚で純粋無垢な我が愛すべき妹が中年オヤジよろしく悪臭をモクモク放出するのは如何なものかと思う。

切実に対処法を考えねば…。



〜〜〜〜
172 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:39:17.61 ID:3c2e7IRd0


エリカ「ふぅ。満腹満腹」

まほ「それ以上近寄るな」

エリカ「…わかった」サッ

まほ「? やけに素直だな?」

エリカ「だって姉さん臭いんだもん」

まほ「…」



腹が膨れてボコの事などすっかり忘れたエリカが満足そうに腹をさする。まったく現金なやつだ。

お前のせいで私はのびたラーメンを食わねばならんかったというのに。

そしてみほに続いてエリカまでニンニク臭い。これではボコどころか鬼も悪魔も近寄らん。

…と思っていたが、居場所がないエリカは私の部屋に居座り、先ほどと同じようにくつろいで本を読んでいる。

部屋と本がニンニク臭くなるから勘弁してほしいのだが。

173 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:41:24.74 ID:3c2e7IRd0


エリカ「姉さん…」

まほ「なんだ。トイレならさっさと行ってこい」

エリカ「違うわよ!」

まほ「じゃぁ何だ」

エリカ「…ちゃんとお風呂、入ってるよね?」

まほ「お前、昨日一緒に入ったの忘れたのか?」

エリカ「そう言えばそうだったわね」

まほ「まったく」


エリカ「お風呂入ってるのにクサいって相当だと思うけど…?」ヒキッ


まほ「…お前も同等あるいはそれ以上に臭いのだが?」

エリカ「そんなことないわよ。姉さん鼻までおかしくなったの?」

まほ「その言葉、そっくりそのまま返そう」



それにしてもこいつは減らず口を叩く。かつて私の右腕として従順だった頃の面影など無かったかのように。

隊長・副隊長の関係から姉妹に変わった(と思いこんでる)今のエリカが"素"の姿なのかもしれないが、こうも距離感を詰められると対応(扱い)に困る。

174 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:42:34.13 ID:3c2e7IRd0


エリカ「姉さんくさい…」ゲッソリ

まほ「何度も言わせるな。私がくさいのではない。ニンニクがくさいのだ」

エリカ「でもニオイは姉さんの方から来てるわよ…」

まほ「私も先程からお前の悪臭を嗅がされ続けているのだが?」

エリカ「…」クンクン

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…」

エリカ「お風呂、入りましょう?」

まほ「………仕方あるまい」





175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/16(木) 12:49:23.89 ID:OLtvaGL6O
一緒に入るんですよね分からります
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/16(木) 13:17:07.75 ID:bGfZWH8eo
菊代→他人なのでイヤ
しほ→精神的、物理的(直視)に怖い
みほ→ボコグッズで洗われるのが怖い
まほ→消去法
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 14:25:27.22 ID:JXPaKLMy0
はよ
178 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:16:59.27 ID:LGEFd4u10


【脱衣所】


みほ「あ、お姉ちゃんとエリちゃん」

エリカ「みほもお風呂に入るの?」

みほ「うん。さすがにニンニクのニオイを落としたいからね」

まほ「全くだ。臭くてかなわん」

エリカ「そうね。さっさと入りましょう」


みほ「えっ?」

エリカ「ほら、入るわよ」

みほ「え、あ、ちょっと…! エリちゃん平気なの…?」

まほ「エリカは腕が使えない。だから昨晩も私がエリカの髪やら何やらを洗ってやった」

みほ「そうなんだ」

エリカ「お風呂広いから3人くらい平気よ」



どうやらみほも我々と同じことを考えていたようで、体中に染み渡るニンニクのニオイを落とすために風呂に入るところだったようだ。

そんなわけで姉妹(とエリカ)水入らずの裸の付き合いをする。

みほのやつ。また大きくなったな。



179 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:26:08.39 ID:LGEFd4u10


【風呂】


エリカ「悪いわね、みほ」

みほ「ううん、仕方ないよ。エリちゃん片腕使えないんだから」シャカシャカ

エリカ「」ホヘー

まほ「みほのシャンプーは気持ちが良い。私も昔はよくやってもらった」

みほ「あはは懐かしいね。気持ち良いってお姉ちゃん気絶しちゃったもんね」モショモショ

まほ「はは。マッサージの途中に寝るようなものだろう」

みほ「風呂場で全裸のまま朝を迎えたもんねー」モチャモチャ

まほ「…そこは起こしてくれよ」


エリカ「腕の方はまだまだ時間かかるから、暫くはお世話になりそうね…」

みほ「カルシウム摂ると早く治るかもしれないよ?」ワシャワシャ

エリカ「カルシウムねぇ…」

みほ「私が頼んでるボコ印ミルク飲む?」ワシャワシャ

エリカ「絶対イヤ。そんなもん飲んだら死ぬわよ」

みほ「むっ! 私毎日飲んでるけどピンピンしてるよっ!」ゴショゴショ

エリカ「姉さんは"鯛の天ぷらを食べすぎて死んだ"って言ってたけれど?」

みほ「お姉ちゃん…徳川家康じゃないんだから、もっとまともな死因にしてよ…」モシャモシャ

まほ「すまん…」

エリカ「肥溜めにハマって死ぬとか?」

みほ「もっと嫌だよ!!」クシャクシャ

まほ「そうだぞエリカ。みほを何だと思っている」



〜〜


180 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:38:51.03 ID:LGEFd4u10


みほ「痒いところはありませんか〜?」ワシャワシャ

エリカ「はぁ?」

みほ「えへへ。一度言ってみたかったんだ」

エリカ「…そう。今は無いわ」

みほ「えー」



それは勿体無い。みほが痒いところを掻いてくれるんだぞ?

戦車で例えるならティーガーIIがもう1輌貰えるくらい喜ばしいことなのに。

心なしか体中が痒くなってきた。みほ、掻いてくれないか?



エリカ「強いて言えばギプスの中が痒いわね」

みほ「あー、ずっと付けてないとダメだもんね…」

エリカ「ええ。外したら即・掻き毟ってやるわ」

みほ「あはは。ほどほどにね」



私は骨折などしたことがないので詳しいことは分からないが、ギプスを装着すると不具合でもない限り、基本的に装着したままとのこと。

そうなるとエリカのようにギプスをはめている部分が"痒い"といったことも起きうる。

『そんなことか』と思うかもしれないが、痒いところを掻けないというのは意外に辛いものだ。

あとは濡らすのも良くないので、エリカはギプスの上にタオルを巻いて、更にビニル袋をかぶせている。

動かせない以外にもギプス生活はいろいろ不便なので、そうならないようケガには十分気をつけたい。

181 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:46:36.48 ID:LGEFd4u10


ザパーン


エリカ「…ふぅ」

みほ「こっちのお風呂は大きいから良いね」ノビー

まほ「そうだろう。風呂が恋しくなったらいつでも帰って来ると良い」

みほ「でも帰宅するってメールしたらお姉ちゃん気付かなかったじゃない」ジトー

まほ「あれはだな…」


エリカ「姉さんもお母さんもどういうわけか機械オンチなのよね…」

まほ「うるさいな」

みほ「あはは。パソコンは難しいから」

まほ「それが普通だ。心配しなくていい」

エリカ「姉さんもそろそろパソコン使えるようにした方が良いと思うわよ?」

まほ「パソコンなら使える。この間電源の入れ方および切り方を覚えた」

エリカ「…そう。ところでみほ」

みほ「なーに?」


エリカ「もしインターネット使えるのなら良いサイト教えてあげる」

みほ「なになに?」

エリカ「"フューリーを探さないで"って検索してみると出て来るページ。なかなか面白いわよ」

みほ「…なにそれ?」

エリカ「見てのお楽しみ」

182 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:49:34.19 ID:LGEFd4u10

〜〜〜


みほ「この入浴剤いい匂いがするね。どこのだろう?」

まほ「ああ。いい香りだ。ニンニクのニオイも消してくれる」

みほ「そうだね。あとで菊代さんに聞いてみるよ」

まほ「それがいい」

エリカ「」プニプニ

みほ「あっ、それ私のII号!」

エリカ「この子触り心地良くて気に入ってるのよ」

みほ「む。あげないからねー」

エリカ「…ねぇみほ」

みほ「ん?」

まほ「!!! エリカやm


エリカ「チ●ポ」ボロン


みほ「!!?」

まほ「よさんか!!!」バコッ!!

エリカ「いだぁっ!?」



コイツまたやりやがった!

II号をプニプニ弄ってる時から嫌な予感がしたが、妹にまで卑劣な真似を!

私に向けてやるなたまだいい。だが、みほはまだウブで清純な乙女なんだぞっ!!!


183 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:00:10.65 ID:LGEFd4u10


みほ「…前にね、そういうのネットで見たことがあるよ」

まほ「え」

エリカ「そうなの?」ヒリヒリ

みほ「うん。5%の確率でボロンするっていうので、普段はごく普通の投稿なんだけど、たまにね」

まほ「」

エリカ「なんだ。みほも知てるんじゃない」

みほ「他にもサオリスクタイムとかネットには色々面白いのが色々あるよね!」

エリカ「そうね。しょーもないと思いつつもクスッってなるわ」

まほ「」



お、おい…みほ…お前なんてものを見てるんだ…


184 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:01:07.59 ID:LGEFd4u10


みほ「それでね? ボロンするとゲームでレアキャラゲット出来たり色々ご利益があるんだって」

まほ「」

エリカ「ある種のパワースポット的なものかしら?」

みほ「そうかもしれないね。…でも」

エリカ「ん?」

みほ「お股にII号あてるのはどうかと思うんだ…」

エリカ「そうかしら?」

まほ「み、みほの言う通りだ…下品にも程があるぞエリカ…!」


みほ「そんなにおっきくないから」


まほ「なぁっ!?」

エリカ「へぇー」



お、おい…みほ…おまえは一体何を言っているんだ………?!

どうして全てを知っているかのように語るんだ……?!

おまえ…まさか………!!!

185 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:02:16.13 ID:LGEFd4u10


みほ「だって昔、お父さんと一緒に入ったときに見ちゃったもん」

みほ「大人のお父さんでもあんなだから、きっと皆それくらいなのかなぁ…って」

エリカ「あ、姉さん沈んだ」

まほ「」

みほ「え?! ど、どうしたのお姉ちゃん?!」

まほ「」ブクブクブクブク



良かった…みほはまだ純潔だった…。お父様のは残念だと思うが、今はそれで良いんだ…。

世の中には知らなくて良いことだってたくさんある。別に知らなくたって死にはしないんだ。だから知らなくて良い。

…私も知らないが、みほは特に知らないでいて欲しい。


186 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:06:19.69 ID:LGEFd4u10


【再び脱衣所】


みほ「お、お姉ちゃん、大丈夫…?」オロオロ

まほ「……大丈夫…だ…クルスクに…比べたら………」

エリカ「行ったことないクセに…」

まほ「…だま…れ……」

みほ「とりあえずお水飲んで?」

まほ「…すまん…みほ………」ゴクゴク



私はいつの間にかみほの作戦に完膚なきまでに打ちのめされるようになっていた。

それは私が弱くなったからではない。みほが私を上回るほどの実力者になったという動かぬ証拠だ。

西住流だの黒森峰隊長だと驕り高ぶっているせいで、いつのまにか妹に追い抜かれてしまっている。

やはり週明けからは気を引き締めて今まで以上に厳しく鍛えなければなるまい…。

意識が遠のく中で私は誓った。


〜〜〜〜

187 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 18:51:13.47 ID:ei8K93cA0


まほ「…う…ん…?」パチッ

まほ「ここは…私の部屋…か…」

シーン

まほ「…みほと…エリカは…?」



どうやら私はその後気を失ったようで、目が覚めたら自室の布団の中にいた。

…黒森峰の隊長が風呂で逆上せて気を失う事などあってはならないが、今はそんなことはどうでもいい。

それよりも、妙に部屋が静かだと思ったらあいつ(エリカ)がいない。

一体どこへ行ったというのだ。


188 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 18:53:32.02 ID:ei8K93cA0


菊代「あら、まほお嬢さま。お体の方はもう良いのですか?」

まほ「ああ、もう大丈夫。それより菊代さん、みほとエリカは?」

菊代「つい先程みほお嬢様と一緒に出られましたよ」

まほ「なに?」

菊代「え? みほお嬢様とお出かけに…」

まほ「…」


まずい。

今のエリカが、外部の人間と接触して余計なことを喋ったりしたら大変なことになる。

早く探しに行かなければ明日の朝刊の一面記事に"西住流家元 隠し子疑惑"と横向きの見出しがついてしまう。

そんな流派の危機的状況にあるというのに、お母様もみほも随分悠長なことをしている。

菊代さんも菊代さんでどうして止めてくれなかったんだ。

189 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 18:54:58.19 ID:ei8K93cA0


「ただいま」

菊代「お帰りなさいませ奥様」

しほ「ええ。ただいま」

まほ「お帰りなさいお母様…?」

しほ「どうしたのですか。鳩に豆鉄砲食らったような顔をして」

まほ「いえ…あの…」

しほ「言いたいことがあるのなら、ハッキリと言いなさい」

まほ「…その、」



カチューシャ「」ガタガタガタガタ



まほ「何故、プラウダ高校の隊長を肩に乗せておられるのですか…?」



ありのまま今、起こったことを話そう。

『エリカを探そうとしたら、肩にプラウダの隊長を乗せたお母様が帰宅した』

何を言っているのか分からないかもしれないが、私も何が起きたか分からなかった。

頭がどうにかなりそうだった。

副隊長のノンナだとか、大学選抜戦のエリカだとか、そんなちゃちなものでは断じてない

もっと恐ろしいものの片鱗を味わった…。

190 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 18:55:53.55 ID:ei8K93cA0


しほ「帰宅途中のドブ川で見つけたので拾ったのです」

まほ「どうしてプラウダ高校の隊長が、ドブ川などに落ちているのでしょう…」

しほ「私にもわかりません」

まほ「私はこの光景の一切がわかりません」

菊代「プラウダ高校といえば東北の方の学校ですが、何故こちらへいらしたのでしょう?」

カチューシャ「く、黒森峰に行ったらあなたがいないから、お家の住所教えてもらったの!」

カチューシャ「そして行ったてみたら途中でノンナが迷子になるしカチューシャは川に落ちるしでもう最悪よっ!!」

まほ「それはご足労かけたな…」


191 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:00:08.89 ID:ei8K93cA0


頭の処理が追いつかないが、一つ一つ整理していこう。


まず、プラウダ高校の隊長であるカチューシャは、何かしら私に用があって黒森峰を訪れた。

しかし、黒森峰には私がいなかったので、わざわざこちらへ来たという(幸い学園艦は熊本港に停泊しているので遠くはない)。


ところがカチューシャ曰く、プラウダの副隊長であるノンナが道中で迷子になり(お前が迷子になったのでは?)、更には自身もドブ川に落ちてしまったという。

それも"片足がハマった"というような生易しいものではなく、ドボンと"体単位"で沈んだようで、某探偵アニメの犯人よろしく全身灰色になっている。

その他ヘドロや堆肥などが混ざった形容し難い悪臭が彼女から漂っていて近寄りがたい。お母様もよくこんな汚いものを担ごうと思ったものである。


…と言った具合に、本来なら見知らぬ田舎で全身ヘドロまみれという絶望的な状況だが、幸いにも(不幸にも)お母様が偶然通りかかり、捨て猫よろしく拾ってきたという。肩に担いで。


余談だが、母というものは子に対し「お前はうちの子じゃない。ドブ川から拾ってきた」と言うが、あれは何故だろう。

私も幼少期にお母様に訪ねたところ、『ドブ川ではなくライン川から拾ってきました』などと意味不明なことを宣う。

そのような得体の知れん場所から発掘されるくらいならドブ川のほうがまだマシである。

192 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:03:30.76 ID:ei8K93cA0


まほ「…それで、彼女をどうするのですか?」

しほ「くさいので風呂に入れます」

まほ「妥当かと思います。くさくてかないません」

カチューシャ「レディに向かってくさいくさい失礼ねっ!!」


しほ「菊代。風呂の用意はしてありますか?」

菊代「はい。ご用意出来ております」

しほ「ご苦労様。行くわよ、かほ」

まほ「…」

カチューシャ「私はカホじゃなくカチューシャよ!!」

しほ「何か?」ギロッ

カチューシャ「な…ナンデモアリマセン……」オロオロ



そう言い残すとカチューシャは風呂場へ連れて行かれた。

…かほ? カチューシャの「カ」をとって"かほ"なのだろうか。よくわからないが下手をすると西住家にまた一人、娘が出来そうだ。

エリカの件で隠し子云々と危機感を抱いているのに、カチューシャまで認知しては隠し子どころの騒ぎではない。

しかし、カチューシャを肩に乗せるお母様は、まるで幼かった頃のみほを散歩に連れて行く時のようにも見える。思えば私も幼い頃はお母様によく肩車をしてもらったものだ。

だが、肝心の搭乗者ならぬカチューシャは尋常でないほど怯えており、元来チビである彼女がますます小さくなってしまっている。

193 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:09:24.14 ID:ei8K93cA0


「ただいまー」

「ただいま」

「お邪魔します………」



カチューシャが浴室送りにされて数分後に入れ替わりでエリカとみほが帰ってきた。

しかし声は3人分なので二人の他に誰か客人を招いたようだ。



まほ「戻ってきたか…!」

菊代「お帰りなさいませ。みほお嬢様。エリカお嬢様。…そちらの方は?」

みほ「うん。戦車道でお世話になってる方なんだ」

まほ「おいエリカ、お前どこをほっつき歩いてい……た?」


ノンナ「………こんにちは……」


まほ「」

みほ「ノンナさん、カチューシャさんを探してたみたい…」アハハ...

ノンナ「…恐縮です………」



そんな予感はしていた。

先ほど浴室送りにされたカチューシャは、本来なら今私の目の前にいるノンナという女の肩の上に収まるものだ。

肩の重みを失った彼女は、"乗せるもの"を探すべく彷徨っていたのだろう。

失ったのは"乗せるもの"だが、彼女の生気のない顔を見ると、このまま魂まで失ってしまわないか心配になる。

194 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:10:45.17 ID:ei8K93cA0


まほ「それで、お前で一体どこをほっつき歩いていた」

エリカ「みほが久しぶりに実家に帰ってきたのだから近所を散歩してたのよ」

まほ「何故私に言わずに勝手に出ていった」

エリカ「だって寝てたじゃない」

まほ「…」

エリカ「それで、帰る途中に、この…ブリのノンナ? って人が探し物をしていたから、家まで案内したのよ」

まほ「私の記憶が正しければ彼女は"ブリザードのノンナ"だ。ブリは魚だ」

エリカ「そのブリブリノンナがカチューシャを探してたけれど、見つけられなかったそうよ」

ノンナ「…あの、ブリブリではなく、ブリザードです………」

195 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:12:17.75 ID:ei8K93cA0


まほ「まあ、その…ノンナ」

ノンナ「…はい……」

まほ「そう気を落とすことはない。必ず見つかるだろう」

ノンナ「はい…命に代えてでも…」

まほ「そう気を張るな。きっと腹が減ったらお前のところに戻ってくる」

ノンナ「そうだと良いのですが……」

まほ「彼女だって伊達にプラウダ高校の隊長をやっているわけではない。きっと無事だ」


196 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:13:37.41 ID:ei8K93cA0


ノンナ「ああ…カチューシャ…一体どこへ………」ズーン

まほ「心配するな。彼女はいつだってお前のそばにいるさ」

ノンナ「変な人に誘拐されていないか心配です………」



厳密に言うと半径10m以内にいる。

そして変な人よりも数倍厄介なお母様に連れて行かれた。



エリカ「…姉さん、実は居場所知ってるでしょ」ボソッ

まほ「知ってるどころかお母様が先ほど持って行った」ヒソッ

エリカ「じゃぁどうして教えてあげないのよ…」ボソッ

まほ「これ以上面倒事が増えるのは勘弁願いたい」ヒソッ

エリカ「これ以上何か面倒なことあったかしら?」モソッ



私の目の前にいるお前が最大の"面倒事"だ。



〜〜〜


197 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:15:16.02 ID:ei8K93cA0


「あら。またお客かしら?」トコトコ


まほ「お母様…?」

エリカ「お母さん家にいたのね?」

しほ「ええ。かほをお風呂に入れていました」

エリカ・みほ「かほ?」



ノンナ「カチューシャッ!!」ガタッ



カチューシャ「」カタカタカタカタ


そう。"かほ"というのはカチューシャの頭文字"カ"と、西住家の女の"ほ"を合わせたものだ。…西住かほ。無駄にしっくり来るのが腹立たしい。

そんな"西住かほ"ことカチューシャは、相変わらずお母様の肩に乗っている。替えの服が無いので彼女はタオル一枚だ。

お母様もそこそこ背が高いので、カチューシャにとっては良い眺めだとは思うが、当の本人はそんなことを思う余裕など恐らく無いだろう。

心なしか更に萎縮しており、そろそろ2桁台に突入しそうだ。風呂場で一体何があったのだろう?


198 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:16:22.21 ID:ei8K93cA0


しほ「まほ、こちらの客人は?」

まほ「プラウダ高校の副隊長です。お母様の肩に乗っているカチューシャを探しておりました」

エリカ「え? カチューシャってあのチビなの?」

カチューシャ「誰がチビよっ! このカチューシャ様を侮辱するなら許さないわよ!!」

まほ「カチューシャはカチューシャでも頭にはめるアレではない。プラウダ高校の隊長のコレだ」

カチューシャ「コレって言うなぁぁ!!」ガーッ



人様の肩の上でお構い無しに叫びながら、ぐわんぐわん体を揺らすのがプラウダ高校のカチューシャである。ロデオマシーンにでも跨っているかのようだ。

しかし、本来の持ち主であるノンナはともかく、お母様もあれほど激しく動き回るカチューシャを搭載しているのに平然としておられる。

その安定感たるや、ティーガーの車体にII号戦車の砲塔を載せたようである。

199 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:17:33.57 ID:ei8K93cA0



しほ「プラウダ高校…?」チラッ

ノンナ「っ…!」

しほ「…」

ノンナ「…」

カチューシャ「」ブルブル



ノンナとお母様…。

ものすごい組み合わせだ。

一方は肩に少女を乗せ、もう片方はその少女を『私のものだ。返せ』と言わんばかりに対峙する。

もう何が何だか分からなくなるほど無茶苦茶な構図だ。


200 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:21:53.50 ID:ei8K93cA0


みほ「…お姉ちゃん、なんだか胃のあたりが痛くなってきたよ」

まほ「ああ…。私も同じだ」

みほ「どうしよう…」



色んなことが起こり過ぎたせいで感覚が麻痺してきているが、ノンナとお母様という組み合わせは実は相当洒落にならない。例えるならメントスとコーラである。

何しろみほが黒森峰を去る原因となった"あの決勝戦"の相手がプラウダ高校だ。ノンナ(及びカチューシャ)が直接関与していないとは言え、プラウダ高校の代表が目の前にいる。

まさに因縁の相手なわけで、西住家の一角は冷戦期のように緊迫した空気へと一瞬で変わる。



しほ「この子の服がありませんが、娘が昔使っていた着ぐるみを代わりに着せようと思います」

ノンナ「…それは、どういうものでしょう」

しほ「クマの着ぐるみです」スッ

ノンナ「!!」

しほ「ジャストフィットでモコモコがなかなか暖かそうです」

ノンナ「Это замечательно」



…と思っていたら独ソ不可侵条約が成立した。これで両国は未来永劫良好な関係を築き続けるだろう。

些細な争いごとなど話し合い一つで幾らでも解決できるのだ。エリカがみほとお母様の軋轢を修正したように。

201 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:22:30.72 ID:ei8K93cA0


カチューシャ「そ、そんなことより早くおろしなさいシホーシャ!!」

まほ「シホーシャ?」

カチューシャ「そうよ! 西住しほだからシホーシャ。何か文句ある?」

まほ「お母様はその件について何と言った?」

カチューシャ「"シホーシャ…悪くありません"だって」



ネジが数万本外れた今のお母様なら言いかねん。

202 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:24:31.50 ID:ei8K93cA0



エリカ「ところでお母さん、その肩の上に乗ってる子、どうするの?」

しほ「それを今から考えようと思います。まずは役所に出向いて出産育児一時金の申請を」

まほ「お母様。その肩の上に乗ってる子は腐っても高3です。確実に役場で笑われます」

カチューシャ「腐ってもってどういうことよ!!!」

しほ「そうですか。困りましたね」


エリカ「そのまま軒下に吊るしておけば良いんじゃないかしら?」

まほ「そうだな。渋みが無くなって丁度いい塩梅になるだろう」

ノンナ「カチューシャは渋柿ではありません」

カチューシャ「そうよノンナ! もっと言ってやりなさい!!」

ノンナ「同志はそのままでも甘くてジューシーです」

カチューシャ「ノンナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


しほ「家族とは良いものです」

エリカ「ええ」

みほ「賑やかで楽しいわね」

まほ「その通りだな。みほ」


ワッハッハッハッハ!



何か重要なことを幾つか忘れている気もするが、思い出したところでこのメンツで解決するとは到底思えないので今は忘れよう。



〜〜〜〜〜
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/22(水) 20:29:10.48 ID:/4izVAV/0
事態がますますカオスなことに…
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 05:16:46.48 ID:gySZZ/VNO
エリカのお母さん呼びはスルーですか(笑
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 08:37:19.32 ID:wFw+LQYbO
カチューシャが隊長になったのは、カチューシャ車が黒森峰のフラッグ車を撃ったからってのは公式だっけ
206 :なんか最終章の公式サイト誤字多くない?  ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:33:24.74 ID:N46VW/iU0

【居間】


グツグツ グツグツ....


まほ「ところでカチューシャ」

カチューシャ「なーにー?」フーフー

まほ「こちらまで用があって来たとのことだが…?」

カチューシャ「そうよ! 思い出したわ!」モグモグ

ノンナ「カチューシャ。口に食べ物を入れたまま喋ってはいけません」

しほ「かほ。頬に付いてます」フキフキ

カチューシャ「モガガガ...」


みほ「あむっ」パクッ

エリカ「あっ、それ私が育ててた鶏肉よ!」

みほ「はひゃいほほはひはひょへひひゃん」ホフホフ

エリカ「何言ってんのかわかんないわよ…」

菊代「エリカお嬢様、お肉はまだ沢山ありますよ」

エリカ「…じゃぁ次はハンバーグをお願いね」

まほ「鍋にハンバーグ放り込むやつがどこにいる」モグモグ



新たに増えた客人を招いて鍋を囲んでいる。西住流は戦車道だけでなく鍋もまた豪快である。

炊き出しで使うような巨大な鍋に味噌ベースのスープを満たし、そこにぶつ切りにした肉だの野菜だの魚といった具材を投入して煮込む。

また、肉や野菜だけでなく、小麦粉を練って千切って平らに丸めた団子も入っている。いわゆる"だご汁"風だ。

それにしてもあまりにダイナミックな鍋なので、相撲部屋にでもいるような気分になる。

207 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:34:55.49 ID:N46VW/iU0


エリカ「このお鍋大きいからカチューシャならスッポリ入りそうよね」

みほ「あはは、カチューシャさん専用のお風呂に出来そう」

エリカ「光熱費が節約できそうね。あとで試してみようかしら?」

カチューシャ「ちょっと! カチューシャを何だと思ってんの?! それにお風呂はさっき入ったばっかりよ!!」

エリカ「良いじゃない。再入浴なんて旅館じゃ普通よ?」

菊代「温泉も良いですけど、久々にサウナに入りたいですね」

ノンナ「私は薬風呂というのが好きです。ここ最近肩こりが酷いもので」

しほ「近くに健康ランドが出来たそうです。一度行ってみようかと思います」



こんな調子で、鍋をつつきながら三者三様談笑に花を咲かす。

カチューシャを鍋のシメにするだの健康ランドがどうのこうの。こういうのもたまには悪くない。

208 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:38:41.96 ID:N46VW/iU0


まほ「…カチューシャ、話を戻そう。黒森峰に来た用とは?」

カチューシャ「モグモグゴックン。…用件も用件よ。今日練習試合するっての忘れてるじゃない!」

まほ「ふむ。練習試合」

エリカ「悪かったわね。ここ最近姉さん物忘れが激しいみたいで」

しほ「その年で物忘れでは困ります。しっかり食べて栄養つけなさい」ヒョイヒョイ

まほ「はい…肝に銘じます…」モグモグ

みほ「お母さんとお姉ちゃんの会話なのに、妙にほんわかしてるね」

エリカ「堅苦しい会話してるのに小鉢に次々と野菜放り込むのがなかなかシュールよね」

まほ「あの…お母様、できれば肉も…」

しほ「好き嫌いは許しません」ヒョイ

まほ「はい…」



お母様はやたら野菜ばかりよそうので、椎茸だの葱だのに舌鼓を打ちつつ、行われるはずだった練習試合のことを振り返る。

確か…、カチューシャが『久々にドンパチやりたい』などと言い出したので、私が『他校も誘ってはどうか』と提案してみた。

実際のところ、黒森峰が他校と練習試合をするのは久し振りで、サンダースや聖グロ、知波単学園、アンツィオ、継続高校、そして大洗女子といった面々も招いた。

今までにない規模の練習試合を兼ねた合同演習なので、(頭がおかしくなる前の)エリカも張り切っていたな。

209 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:41:08.37 ID:N46VW/iU0


カチューシャ「しっかし、港に学園艦が勢揃いってのも凄いことよねぇ?」

ノンナ「これほどの大規模な集まりは先の大学選抜チーム戦以来でしょうか」

エリカ「学園艦だけで街一つくらいの面積があるし、船というより埋め立て地とでも呼んだ方が良いくらいね」

みほ「うん。そんな大きな学園艦を一つの港に大集合だから凄いことになるよね」

まほ「全くだ。見物客も相当…」


まほ・みほ・カチューシャ「あ゛っ!!」


エリカ・ノンナ「?」

カチューシャ「何ノンn…ノンキなこと言ってんのよ!! 他校の子たちそっちのけじゃない!!」

まほ「のんびり鍋など突いている場合ではない。ダージリンや安斎に小突かれてしまう」

みほ「も、もしもし会長?! え? 今ですか? じ、自宅ですっ!!」アセアセ



エリカにかまけていたせいで今日が練習試合、それも複数校参戦型の大規模演習の日だということをすっかり忘れていた。

きっと今頃各校の隊長たちは各々の学園艦でカンカンになっているに違いない…。

210 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:44:13.03 ID:N46VW/iU0


みほ「どうしよう…会長が物凄く怒ってたよ…」オロオロ

まほ「会長というのは角谷か?」

みほ「うん…」

カチューシャ「あの小さいヤツも怒るときは怒るのね。カチューシャくらい寛大な心を持てば良いのに」


みほ「74アイスクリーム食べ放題券を没収するぞーって言ってた…。明日から節約しなきゃ…」ズーン

ノンナ「何という横暴なのでしょう…!」

エリカ「ハッ! 生徒会って何様のつもりかしら!」

カチューシャ「まずは大洗の生徒会をボッコボコにするべきよ!!」

ノンナ「同意です。悪政がまかり通る学校など教育機関としての価値はありません」

しほ「邪道は跡形も残らず叩き潰すべきです」

エリカ「いっそ文科省に頼んで廃校にしたらどうかしら?」

みほ「ま、待ってよ! 廃校になったら私中卒になっちゃう!!」



皆好き放題言ってくれるが、その学校の廃校を阻止する為にみほは奮闘したんだぞ?

その結果、みほは二度に渡る廃校の危機から見事大洗を守り抜いた。

それら輝かしい功績を知る私(ここにいる全員が知ってるはずだが…?)は、軽々しく大洗を廃校しろなど口が裂けても言えない。



エリカ「廃校になったら黒森峰に戻って来れば良いじゃない」

まほ「おっ、そうだな」

カチューシャ「黒森峰は一度追い出したでしょ! ミホーシャはプラウダに来るの!」

ノンナ「次期隊長の席を用意してお待ちします」

みほ「」


ギャーギャー ワーワー

211 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:47:58.20 ID:N46VW/iU0

♪ オープスシュテュルムオーダーシュナイトオプディゾーンネーウンスラハト...


まほ「ん」ピッ


まほ「…私だ」

『御機嫌よう"私"さん』

まほ「…私は"私"という名前ではない。西住まほだ」

『そうですわね。ご機嫌よう西住まほさん。聖グロリアーナのダージリンですの』

まほ「その気持ち悪い声とお嬢様言葉を聞けば名乗らずともわかるさ」

ダージリン『…私があなたに電話をする理由、ご存知ですわよね?』イラッ

まほ「あ、ああ。すまない…」


ダージリン『すまんで済んだら戦争は起こりませんのことよ?』

まほ「そうだな…。嫌な予感しかしないが、そっちはどうなってる?」

ダージリン『まほさんやカチューシャが来ないから演習が出来ないと、』

まほ「重ねておわびs


ダージリン『黒森峰の学園艦を的に砲撃演習をしておりますの』


まほ「やめんか!」


212 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:52:04.56 ID:N46VW/iU0


『お! 私の砲撃が黒森峰の校舎に命中しましたぞ!』


ダージリン『おやりになるわね絹代さん。でもあなたの戦車では校舎を破壊するには火力不足ですの』

『じゃ、今度はナオミのファイアフライ使ってみる?』

ダージリン『17ポンド砲さんに"一番いい場所を頼む"とお伝え願いますの』

『な、なぁダージリン…流石にカモ撃ちはどうかと思うぞ…?』



安斎の言う通りだ。。

学園艦を的に砲撃練習という発想が理解できん。お前たち聖グロは日頃どんな練習をしているんだ。

その頓珍漢っぷりたるや、例えるなら空母同士の戦いで艦載機ではなく艦載砲で叩き合うようなもの。そんな指揮をする馬鹿提督がいるなら即刻クビにすべきだ。

それに学園艦には多くの人が住んでいるのだから直ちにやめさせろ。

213 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:54:10.47 ID:N46VW/iU0


ダージリン『そうですわね。アンツィオさんの仰る通りですわ』

アンチョビ『アンツィオじゃなくてアンチョビだー!』

まほ「分かったならさっさと」

ダージリン『今なら黒森峰の重戦車を鹵獲できますわよ』

まほ「おい」

アンチョビ『そ、そうか?! …P40のパーツとか置いてあれば…』

まほ「おい」

ダージリン『そんなケチ臭い事仰らずに、ティーガーあたりを拝借しては如何ですの?』

まほ「おい!!」

アンチョビ『ティーガーかぁ。後輩が乗りたがっていたなぁ…』



待て。ティーガーを持って行かれては私の乗る戦車が無くなってしまう。

ティーガーは黒森峰を象徴する戦車なんだぞ。そうやすやすと誰かに託せるものではない。

ましてや安斎の部下、特にマカロニとかいう奴に乗せようものなら車内がチーズまみれになってしまう。

あいつは戦車とオーブンの区別がつかんのだからな。

214 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:56:02.56 ID:N46VW/iU0


ダージリン『あなたの学校には強力な戦車が目白押しですもの。一つくらい無くなったって問題ありませんわ。かくいう私もエレファントを』

まほ「エレファントはやめとけ。色んな意味で地雷だ」

西『でしたら私もタイガー戦車を一輌頂きたいのですが…』

まほ「お前の学校は大日本帝国の戦車で編成されているはずだ。そこにティーガーを混ぜてはおかしなことになるだろう」

西『"盟友都々逸国から賜った"ということで手を売って頂けないでしょうか? …"福"が逆さまになったやつが…』

まほ「まず都々逸は落語だ。それに倒福は中華民国だ」

西『む…』


まほ「埒が明かん。ダージリン、取り急ぎで済まないが、ひとまず日程を…」

ダージリン『それまでに黒森峰の学園艦が耐えられるかどうかですわね』

まほ「だから人の学園艦を的にするのはよせと言ってるだろう!」


『黒森峰には、人生の大切なすべての事がつまってるんだよ』モグモグ

まほ「その声は継続高校のミカ隊長だな? お前何を食べている?」

ミカ『ヴァイスヴルストが私を呼んでいたからね』



ふむ。ヴァイスヴルストを選ぶとはなかなかお目が高い。さすが継続の隊長だけある。

ヴァイスブルストとはその名の通り白いソーセージで、主に茹でて食すのだが、この時沸騰する直前のお湯あるいは白ワインに10分ほど温め、色がねずみ色になるのが丁度良い茹で加減なのだ。

私も好きでプレッツェルやノンアルコールビールと一緒に囓っている。

ただ、しっかり茹でないと食あたりを起こすから気をつけろ。


…ではなくて。

215 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:57:36.07 ID:N46VW/iU0


まほ「貴様どうして人の学校の食料庫を漁っているんだ!!」

ミカ『さぁ。彼女に聞いておくれ』

まほ「彼女? アホのダージリンのことか?」

ダージリン『まぁ、随分な言われようですわね』

まほ「カチューシャがそう言ってた」

ダージリン『ほう…?』

カチューシャ「そっ、そんなこと言ってないわよバカーっ!!」

西『あはははは。…彼女を侮辱するなら、流石の私も黙ってはいませんよ?』

カチューシャ「ひぃっ?!!」ビクッ

ダージリン『絹代さん、落ち着いて! 今回はそういうのじゃないのよ…!?』

ケイ『ま、マホ! キヌは一度火がつくと手がつけられないから刺激したらダメだよー!』

まほ「ぐ…それは悪かった。謝罪する」

安斎「に、西! 西住だって悪気があっていってるわけじゃないんだ! 落ち着け! な?」


ワーワーガヤガヤ

216 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:59:26.62 ID:N46VW/iU0


まほ「…良くわからんが、とにかく学園艦を的にするのと倉庫内を漁るのをすぐに辞めさせてくれダージリン」

ダージリン『仕方ありませんわね』

アンチョビ『…何というか…凄いことになってるぞ…?』

まほ「凄いこと…?」

アンチョビ『ノリと勢いのウチらですら不安になるレベルで各校自由気ままに動いてて…』

まほ「は?」

アンチョビ『もう食べたい放題』

ダージリン『やりたい放題』

まほ「何してくれとんねん」


217 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:00:16.30 ID:N46VW/iU0


みほ「お姉ちゃん、ダージリンさんと話してるの?」

まほ「ん。そうだが?」

みほ「じゃあちょっと代わって」ハイ

まほ「わかった」ホイ


みほ「もしもし…ダージリンさん?」

ダージリン『その声はみほさんね?』

みほ「その、ごめんなさい。私も久々の帰省だったので…」

ダージリン『そうでしたの。お母様とはよろしくされているのかしら?』

みほ「ええ。おかげで無事に和解しました」

218 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:02:27.98 ID:N46VW/iU0

ダージリン『まぁ、それは良かったですわ』

みほ「ダージリンさん達に色々助けて頂いたおかげです。本当にありがとうございます」

ダージリン『あらあら、お上手ですわね。それで演習のことですが、日程を変更することにしますわ」

みほ「良いんですか?」

ダージリン『良いんですのよ。他でもないみほさんのことすもの。ご家族と団欒なさってくださいな』フフッ

みほ「あ、ありがとうございます!」

ダージリン『その代わり次の日程では』


ダージリン『黒森峰・プラウダ・大洗 vs それ以外 にしますので』ウフッ


みほ「え」

ケイ『おー、ミホが相手か! 楽しみだなぁ〜。今のうちにカール導入しちゃおうかな!』

みほ「え。え」

西『今日まで積み重ねてきた努力の成果を試せるなんて光栄の極みでございます!』

みほ「え。え。え」

『また、みほさんと戦える…』

みほ「その声って…愛里寿さん!!?」


219 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:04:55.81 ID:N46VW/iU0


ダージリン『お聞きの通り、"被害者の会"の皆さんがみほさんと戦いたがっておりますの』フフッ

ケイ『ミッホー! 今度は負けないからねーあははっ☆』アハハッ

西『またご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致しますっ!』

ミカ『みほとミカは一文字違いだね』

アンチョビ『黒森峰とプラウダもいると手強いけど、こっちだって全力でやるからな!』

愛里寿『あれからいっぱい頑張ったから、今度こそ…』

220 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:06:56.71 ID:N46VW/iU0


みほ「…一言、良いでしょうか?」


ケイ『おおっ! ミホの"アレ"が聞けるのかー!』

ダージリン『ふふっ。久しぶりですわね。みほさんの"アレ"』

西『なんだか私、胸が躍り高ぶって参りました!』

愛里寿『私は初めてだから…ちょっと緊張する…!』

ミカ『西住さんの"アレ"には大事なものが詰まっているんだ』

アンチョビ『全くだ。"アレ"を聞くために戦車道をやってるようなものだからな!』

みほ「あはは。…では、お言葉に甘えて」スゥー
























     みほ「異議ありっ!!」




















              逆転ガル判

      おしまい

221 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:08:53.17 ID:N46VW/iU0




まほ「待ったぁー!!」




エリカ「…うるさいわね」

しほ「食事中は静かにしなさい」

カチューシャ「はしゃいじゃって。まるで子供ねぇミホーシャ」

ノンナ「日頃の鬱憤を晴らしたかったのです。カチューシャ」

みほ「お姉ちゃん、さすがにはしたないよ…」

まほ「…」



流石に大声を出したことについては反省しよう。

だが、お前たちがあまりにわけの分からん話ばかりをして、挙句の果てに何も解決しないまま終わろうとするから、こちらとして異議申し立てをしたくなった。

茶番はその辺にして、いい加減演習ついて真剣に話し合うべきだ。

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