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国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編
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406 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 21:49:24.03 ID:tpR/STzE0
赤毛『…先生。行かせて、下さい』ペコ…
魔法使い『っ………どうして、どうしてそこまでして…』
神父『先生。生徒は、あんたの所有物じゃない。自分で決めたことだ。…そうなんだろう?』
赤毛『はい。パパやママを、守りたいんです』
魔法使い『………』
赤毛『あたしには、それが出来るかもしれないから、他の人にはそれが出来ないから』
赤毛『だから、あたしが行くんです』
魔法使い『………………』
魔王(彼の心の中心に近づいてきた)
魔王(より生々しい感情が伝わってくる…!)
魔王(――もう少し)
魔王(もう少しで、魔法使いの狙いが………!!)
魔法使い「転移ッ!!」
――ギュウン!
407 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 21:50:11.27 ID:tpR/STzE0
魔王「消えたっ!?」
魔王(まさか、まだ転移を使うだけの力を残していたなんてっ!)
魔王「一体どこに――」
魔法使い「魔王」
魔王「!!」ゾクッ
魔王(真後ろッ!?)
ザ ク ッ
408 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 21:53:38.52 ID:tpR/STzE0
魔王「――………」
魔法使い「………は」
魔法使い「はは」
ズブッ…
魔法使い「やり、ましたね」グラッ…
魔法使い「魔王…」
魔王「あ…」
魔王「あなたは」
魔王「もはやほんのひと欠片しか、力を残していなかった」
魔王「そしてそのひと欠片を」
魔王「私の背後に回り込むためだけに、使った」
魔王「――私に」
409 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 21:54:20.05 ID:tpR/STzE0
魔王「私自身に、とどめを刺させるために………!!」
410 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 21:55:13.24 ID:tpR/STzE0
魔法使い「グハっ、げほッ」ドバッ
ビチャビチャ…
魔法使い「…ふ」
魔法使い「ふふふ」
魔法使い「あははははははははは!!」
魔法使い「魔王!! あなたは、これ以上、僕の記憶を奪うこと、は、出来ない!!」
魔法使い「僕は、死ぬ!! この何百年の想い、に、終わりを告げ、る!!」
魔法使い「これ以上、生命を奪わないと、宣った、あなたの!!」
魔法使い「あなた自身の、手を汚し、そして!!」
魔法使い「その、下僕たる邪神の加護は、最後の一手を打てず、に!!」
魔法使い「僕の死を、見送ることとなる!!」
魔法使い「最後の記憶は、僕だけのもののままだ!!」
魔法使い「この、最後の、瞬間まで!!」
フラ…
…フラフラ
411 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 21:58:45.41 ID:tpR/STzE0
魔王(覚束なく機械城の庭をさまよい)
魔王(何も見えていないような目)
魔王(あなたは、もう――)
魔法使い「あははは、は、ははは!!」
魔法使い「全てのことが、懐かしくすら、ある!!」
魔法使い「僕の全生涯、を、煮詰めたこの数年の研究、が、花開い、た!!」
魔法使い「魔王!!」
魔法使い「その血染めの、姿で、最後の地へ足を、踏み入れるといい!!」
魔法使い「それこそ、魔王らしい!!」
魔法使い「魔王を魂とした、この、物語を、終わらせるの、です!!」
魔王「………っ!」
魔王「魔法使い。あなたは、もしかして…」
魔王「最初からこうするつもりで――………」
魔法使い「ははははははははははッ!!」
魔法使い「予言、しましょうッ………魔王!!」
魔法使い「――この物語の終わりは、あなたの、死だ!!」
412 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 21:59:43.11 ID:tpR/STzE0
魔法使い「もう、あなたが死ぬことでしか!!」
魔法使い「この可笑しな惨劇、は、終わりようも、ないのだ!!」
魔法使い「魔王!! あなたは!!」
魔法使い「戦いの終わる最後の瞬間に、命を落とすだろう!!」
魔法使い「あはははは――!!」
魔法使い「 あ は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は ! ! ! ! 」
ヨロ…
魔王「ま、魔法使い…!」
魔王(そっちは機械城のへりっ!)
魔王「待って…!!」
413 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 22:00:31.48 ID:tpR/STzE0
魔法使い「さらば、世界」
魔法使い「僕の夢見たもの」
魔法使い「どうか、素敵な朝を――」
414 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 22:03:52.01 ID:tpR/STzE0
魔王「魔法使いっ!!」
ヒュォオ…
415 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 22:04:47.04 ID:tpR/STzE0
冥王「………側近」
魔法使い「………………」
冥王「何を驚いているのでせう。このあたくしが…お前様の死に際なんていう面白い見世物を、見逃すと思ったのかしら?」
魔法使い「………………」
冥王「安心なさいな。こんな人間の国までえっちらこっちら来たのは、単なる野次馬根性」
冥王「ただの見物ですのよ。………お前様が成し遂げようとしたことと、あたくしのお弟子さんが選んだことを見届けてみよう、なんて洒落てみただけここと」
冥王「歴史の生き証人ってやつは必要だと、そうは思いませんこと?」
魔法使い「………………」
冥王「あらあらまあまあ、お前様、本当に死んじまうのね」
冥王「もう既に"鍵"はお前様から離れ、新たな主を求めて何処へやら。まったく、尻の軽い乙女のような代物ですわね」
冥王「あの絶対的な力が、この辺りの馬の骨の手に渡っちまうなんてこんな結末、本当によろしいんですの?」
魔法使い「………………」
冥王「…ふふ」
冥王「最後まで不気味に笑うんですのね。お前様らしいこと」
冥王「"鍵"を手にする幸運の持ち主は何処へやら…」
冥王「それはそうと、お前様の生はここで幕引きですわ。大悪党の最期って、思いの外あっさりしたものですのね」
冥王「最後くらい安らかに眠りなさいな」
冥王「おのが魔の血に挑み続けた、愚かな魂」
冥王「我が友。側近よ………――」
416 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 22:05:20.66 ID:tpR/STzE0
魔王「………」
魔王「この高さでは助かりようもない」
魔王「そもそも最後の言葉を紡いだあの時間………彼は生きているとはいえない状態だった」
魔王「――魔法使いは死んだ」
魔王「もう彼の代わりになる者は居ない」
魔王「………」
魔王(ではお前はどうするつもりだ?)
魔王「っ…」ゾッ
魔王(勇者のもとを目指す必要はなくなった)
魔王(神々を打倒せんとした魔法使いはお前が殺した)
魔王(――もう道標となるものはひとつもない)
魔王(お前は、なにを選ぼうと言うのだ?)
417 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 22:08:54.66 ID:tpR/STzE0
炎獣「 ヒュゥ ヒュゥ … 」
魔王「! 炎獣…っ!」
魔王(それはもう炎獣などではない。邪神の加護の化身)
魔王「…ううん、違う。まだ、炎獣の温もりを残している」
魔王「立てる? 炎獣」
炎獣「 グ ォ オ … 」ヨロ…
魔王「………行こう。炎獣」
魔王(――どこへ?)
魔王「………私達が進んできたところはひとつだけ」
魔王「前へ」
魔王「ただ前へ進む」
少年「そっか。行くんだね、魔王」
418 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 22:09:49.90 ID:tpR/STzE0
魔王「!?」
少年「最後は僕が案内するよ」
魔王「い、いつの間に…」
少年「機械城は、炎獣と魔法使いの戦いでボロボロになってしまったけど、最後の部屋は守られていたみたい」
少年「一緒に行こうか。勇者がその務めを言い渡された場所」
少年「あらゆる勇者物語が生まれてきた場所」
少年「謁見の間へ」
魔王「………あなたは」
少年「ほら、あそこの大きな門の前に立って」
魔王「…」
炎獣「 グ ル ル … 」
魔王「…彼に従ってみましょう」
炎獣「 ウ ゥ … 」
419 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 22:13:32.53 ID:tpR/STzE0
門『認証、確認』
門『3名の人間と認められました。中へどうぞ』
魔王「!? …人間? 私達が?」
少年「あはは。混乱するのも無理はないよね。君は魔王だし、炎獣なんかとても人間って風体じゃない」
少年「とにかく招かれた訳だし、入ってみようよ」
魔王「………」
魔王「謁見の、間。王城の中心部。かつて私達が目指していた場所」
魔王(ここに勇者が………)
魔王(勇者に会って、それでどうしようというのだ。無益に戦うのか…?)
魔王(その戦いに意味はないとしても、勇者は宿命のもとに剣を取るのかもしれない)
魔王(そもそも人間の彼に、私は許されはしないだろう)
炎獣「 グ ォ オ … 」
魔王「…炎獣」
魔王「ありがとう、平気だよ」
魔王「………行こう」
420 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 22:14:19.03 ID:tpR/STzE0
機械城
謁見の間
少年「ようこそ、魔王」
少年「ここが、君達の旅の終着点だ」
421 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 22:15:11.82 ID:tpR/STzE0
魔王「………」
魔王「誰もいないわ」
少年「うーん、そうだね。本来王国の王城だった場所を魔法使いが歪ませて機械城にしたわけだけど」
少年「城内にいた人間がどうなってしまったかは誰にも分からない」
少年「国王も、妃も、無事だといいんだけど」
魔王「でも、あなたは私たちの前に現れたわ」
魔王「ここ…謁見の間は私達が目指した旅の終着点だとあなたは言った」
少年「………」
魔王「そしてそこにいるのはあなたと私達だけ」
魔王「役者がこれで全てだと言うのなら、私はひとつの答えにしか行き当たらない」
魔王「教えて」
魔王「――あなたが、勇者なの?」
422 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/06/09(土) 22:18:39.83 ID:tpR/STzE0
今日はここまでです
423 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/10(日) 22:06:11.82 ID:FM3OArSKo
乙です
424 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/11(月) 00:48:19.53 ID:Cr2lawnDO
乙
425 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/10(火) 13:28:50.81 ID:TScOCr2I0
ほ
426 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/11(水) 01:18:20.67 ID:KMWzrbPA0
しゅ
427 :
◆EonfQcY3VgIs
[sage]:2018/07/29(日) 06:24:44.40 ID:B+4BpQ8m0
今週末5日(土)に続きを投下します
428 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 12:33:57.24 ID:+njJv4Yc0
少年「あはは」
少年「僕が勇者、か。そう思ってしまうのも無理はない」
少年「ここ、謁見の間で待っていたのは僕なんだからね」
少年「でもね、魔王。君はもう知っているはずだよね」
魔王「………」
少年「圧倒的な力を持つ宿敵。それが人智の及ばぬ大いなる力を示して迫り来る」
少年「味方は次々に倒れて、勝ち目なんてこれっぽっちもないのに、戦えと急き立てられ、拒むことは許されない」
少年「その恐怖。残酷さ」
魔王「…ええ」
魔王「魔法使いの幻術の中だったけれど…私は逃げ惑う他なかったわ」
少年「そうでしょう。だから」
少年「だから、誰も彼を責める資格なんてないと思うんだ」
少年「ねえ、魔王」
少年「僕は勇者じゃない。勇者はここに居ない」
少年「――逃げたんだよ、勇者は」
少年「迫る君の恐怖に負けて。使命をなげうってね」
429 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 12:34:56.12 ID:+njJv4Yc0
魔王「逃げ、た?」
魔王「………勇者が、逃げた?」
少年「うん。誰にも知られぬうちに王城を抜け出した」
少年「君達が城下町に辿り着いた頃には、もぬけの殻だったそうだよ」
魔王「………」
少年「彼が何を思い、何を考えていたのか、僕らは想像することしか出来ない」
少年「望んだわけでもなく勇者なんて祭り上げられ、絶望的な戦いに放り込まれる運命の人間…なんてさ」
少年「どんな気持ちだったんだろうね?」
少年「少し前の君達であれば、勇者を探しだして抹殺しようとしたかもね。…君はそれを望まなくても、雷帝あたりは危険の芽を摘むため事に当たっただろう」
少年「ふむ。そんな物語の展開もまた、面白いのかもしれない」
魔王「………」
少年「酷い肩透かしって顔だね。まあまがりなりにも勇者討伐を目指してきた君にとっては、ショックが大きかったかな」
魔王「………勇者でないなら、あなたは」
魔王「一体、何?」
430 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 12:35:51.69 ID:+njJv4Yc0
炎獣「 グ ル ル … ! 」
少年「おっと、もう臨戦態勢かい?」
少年「へえ、そう。流石というかなんというか」
少年「僕を敵と認めたのは、魔王としての勘ってやつかい? それとも論理的推測?」
少年「もう、魔法使いから情報は引き出せないものね。そうして己を信じ剣を取る他ないんだよね」
魔王「…あなたが何者かによっては、私は剣を取らずに済む」
少年「強気だね! そうかそうか」
少年「けれどまあ、僕が自分で名乗るよりもより信憑性の高いやり方をしよう」
魔王「なんですって?」
少年「君達の前に立ち塞がってきた人間の研究機関。この戦乱を巻き起こした者達。――教皇と、魔法使い」
少年「彼らを、君と四天王は討ち果たした。でもね」
少年「もう一人重要な存在を忘れてないかな?」
少年「………出ておいでよ。女神」
魔王「!!」
431 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 12:36:46.22 ID:+njJv4Yc0
――フワァ…
女神『………魔王』
女神『ようこそ謁見の間へ』
魔王「女、神…!」
魔王(――いや違う。これは"女神と名付けられたもの"であって、本当の女神ではない)
魔王(教皇と魔法使いが造り出した偽りの女神)
魔王(彼らの思い通りの物語になるよう啓示を与えてきた存在…!)
女神『数えきれぬ戦いを乗り越え、よくぞ辿り着きました』
女神『よくぞ、人類を絶望に陥れ、英雄達を討ち果たし、文化に破壊をもたらしました』
女神『…勇者など倒さずとも、あなたは既にその役目を果たしたのです』
432 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/04(土) 15:25:00.35 ID:hsUyCHrfO
悲報
クソまとめサイトあやめ速報、あやめ2nd
創作活動への冒涜続行
・SSちゃおラジシリーズの盗作が発覚
作者も自白済み
・各まとめサイトにちゃおラジの盗作が伝えられる
真っ当なまとめサイトはちゃおラジシリーズを削除
・まとめサイトあやめ2ndはちゃおラジの削除を拒否
独自の調査により盗作に当たらないと表明
・あやめ2ndが荒れる
あやめ管理人は盗作だというちゃんとした証拠をもってこいと言う
・かと思いきやあやめ管理人、盗作に当たらない発言も証拠を求めた発言も寄せられたコメントもなにもかも削除
全部もみ消してなかったことにする気かとあやめ2ndもっと荒れる
・あやめ2nd、ちゃおラジシリーズは盗作ではないがこのままではサイト運営に不都合なためと削除
・後日あやめ2nd、ちゃおラジが盗作ではない独自の理論を公開
ちゃおラジシリーズ再掲載
・あやめ2nd、多数のバッシングにあい数時間後ちゃおラジシリーズ全削除
自らの非を全て認める謝罪記事を掲載
・謝罪記事掲載から5日後、あやめ2nd謝罪記事削除
サイトは謝罪時から通常通りの運行だった
またもみ消して逃げるのかと荒れる
・あやめ2ndに迷惑だから釈明するなり謝罪するなりしろとの訴えが出される
・あやめ管理人釈明なし
責任を逃れ私欲に走る
この間、あれだけちゃおラジへのコメントを削除したにも関わらず以下のようなコメントの掲載を承認
ダブルスタンダードは健在
http://ayamevip.com/archives/52295361.html#comments
ご意見はこちらまで
ayamevip@gmail.com
あやめ管理人は謝罪記事の再掲載を行え
433 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 17:20:38.93 ID:+njJv4Yc0
魔王「役目を果たした…? 私が? ………馬鹿な」
魔王「あなたは、神々の意思を裏切るために創られた偽りの生命だ」
魔王「私の撃破。もしくは魔法使いがしたように、私を操り神を殺そうという魂胆だったはず」
魔王「私がここにこうして立っていることは、あなたの描いた道筋から大きく外れている」
魔王「それは、虚勢? それとも偽りの存在にも関わらず、神々の代弁者を気取ろうとでも言うつもり?」
女神『…魔王。あなたは我々の目的をよく理解していますね』
女神『ただし検討違いがあります』
女神『あなたは今以て、私の望み通りの魔王であり続けており』
女神『魔法使い個人の敷いたレールの上を歩み』
女神『かつ、天上の神々の与えた役目さえ果たしているのです』
魔王「…私が未だに、私ではないものの思惑通り動いていると」
魔王「そう言うの?」
女神『…哀れな魔王。全てを自分で選んでいるつもりでいたのですね』
434 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 17:21:25.50 ID:+njJv4Yc0
女神『この物語の始まりはいつであったのでしょう』
女神『あなたたち魔王四天王が、港町に攻め入ったあの時?』
女神『それとも、魔法使いが先代魔王を己の身ひとつで討ち果たした時?』
魔王「………その、どちらでもないと?」
女神『――自分の立っている所をご覧なさい。その機械城を。…古代王朝の叡智の結晶を』
女神『これだけの力を持ってすれば、世界の全ては人々の手にあった。全てを知り、全てを能うた………それが、かつての古代王朝』
女神『生命を技術により産み出し、死した種を甦らせ』
女神『気の遠くなるほどの距離を翔び、時空を越え』
女神『山を野に変えてしまうほどの兵器があった』
女神『まさに神のごとき所業。教皇と魔法使いが私を創ったように、テクノロジーの進歩は天神すら産み出しました』
女神『――全ての始まりは、その古代王朝の滅びに遡ります』
魔王「………」
女神『魔王。あなたに何故この万能の王朝が滅びたか、それが分かりますか』
435 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 17:22:16.52 ID:+njJv4Yc0
魔王「………神のようであったとしても」
魔王「所詮は血の通う生命よ。間違いはおこる」
女神『その通り…古代王朝は、その高い技術ゆえに狂いだすことになります』
女神『生と死に関する倫理観が次第に失われた。ビジネスとしての命の奪い合いや、交換が行われた』
女神『繰り返される時空間転移に、無数に生まれた平行世界。膨張した世界は破滅を迎えようとした』
女神『終末は、あっけなく訪れた。星は、宇宙は、消滅の危機に瀕した』
女神『森羅万象の崩壊。ありとあらゆる事象の終わり』
女神『………けれど"鍵"を握った古代人がいた』
女神『それが限りない終わりの中で、たったひとつの始まりとなった』
魔王「………」
436 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 17:23:08.29 ID:+njJv4Yc0
女神『そう。古代にも"鍵"は創られていたのです。そしてかつての"鍵"は魔法使いが創ったそれよりもさらに偉大なものだった』
女神『古代における"鍵"。それはあらゆるものを超越する可能性の塊』
女神『滅びの世界を、新たに受胎させることすら許すもの』
女神『"鍵"によって、世界は生まれ変わった。小さな小さな世界だったけれど、そこには確かに生命が息づいた』
女神『無数の闇の中に、一筋の光明となったその世界では、あるひとつのシステムが組まれた』
女神『勢力を二分し、互いに互いの文明を破壊しあい、ある一定以上の力を持つことが出来ぬように』
女神『それは、滅亡の歴史を踏まえた苦肉の策』
女神『生命の発展の果ては、自壊でしかない。自壊を防ぐために、そもそもの発展をある一定の範囲に縛り付け続ける』
女神『古代人はその小さな世界を管理する者となり、神からの啓示という形をとってその世界の維持をあるプログラムに託した』
女神『敵対勢力に破壊をもたらすプログラムは…それぞれ』
437 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 17:23:47.38 ID:+njJv4Yc0
女神『魔王と、勇者』
女神『そう名付けられた』
魔王「――!!」
438 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:46:09.51 ID:+njJv4Yc0
女神『もう理解できましたか? 魔王』
女神『この魔王と勇者に依存した世界の、必要性が』
女神『勇者が勝利すれば魔族は絶滅の危機に瀕した。魔王が勝利すれば、人類は搾取され絶望の淵へ立たされた』
女神『そうすることによってこの小さな世界は、守られ続けてきたのです』
女神『進化という、生命の業から』
魔王「………」
少年「…魔王」
少年「君達の生は………人と魔は、最初からお互いの生命を奪い合うために生まれたんだ」
少年「どうやらそれは、間違えようのない真実だ」
少年「君の探し求めていたもの。魔王勇者大戦の答え。生命の在り方」
少年「その結論が、これなんだよ」
439 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:46:45.60 ID:+njJv4Yc0
魔王「………これが………意味?」
魔王「これだけの死を生み出し続けた、長い戦乱の理由………?」
魔王「私達の生の………――」
女神『ええ。あなたは、だから今この時点で人類に大きな傷を与え、管理者の領域にその手を伸ばす魔法使いらを撃沈せしめた』
女神『勇者は逃げ出しその打倒の機会は失われてしまいましたが、此度の力のない勇者のことなど些細なこと』
女神『あなたはすでに、立派に魔王としての役目を果たしたのですよ』
魔王「――――ふざけるな!」
440 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:47:21.80 ID:+njJv4Yc0
魔王「このおびただしい数の死は………決して癒えぬ傷の連鎖は」
魔王「そんな身勝手のために積み上げられてきたの!?」
魔王「そんなものに、一体どれだけの意味があるっ!!」
魔王「何が神々だ! 女神も邪神も存在などしていない!!」
魔王「神を気取る古代の呪いに…世界は永遠に翻弄され続ける運命だと…!」
魔王「魔王も勇者も、無益な争いの呼び水として産み出され続けるというの…!!」
女神『勇者と魔王には常に使命が与えられ、歴代伝説の英傑達はその使命を全うしてきました』
女神『"対となる種族の衰退をもたらすこと"。…行き過ぎた文明の誕生の阻止』
魔王「それはただの災厄だっ!!」
魔王「生命の生きる権利を奪っていい理由にはならない!!」
441 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:48:20.15 ID:+njJv4Yc0
女神『なぜ、そう言えるのです?』
女神『生命の発展の先には、滅びしかないのですよ。それは歴史が証明しているのです』
魔王「生命には、ただそこに在るだけで無限の可能性を秘めている!」
魔王「私達は、ただ死ぬために生きているわけではない!」
魔王「生けるものが、戦乱のない豊かな暮らしを営もうというのを、奪っていい理由なんてひとつとしてない!!」
魔王「あなたのいう管理とは、傲慢な支配だ!」
魔王「喜びを奪い、悲しみを生むためだけに勇者と魔王があるなら………そんなもの消え去ってしまえ!!」
女神『………それは、魔法使いの言葉と同じものです』
女神『彼も今のあなたと同じ思いから、魔王勇者大戦の仕組みを壊そうと立ち上がりました』
女神『だから彼は、そのシステムの根幹となる女神と邪神の加護を――』
女神『システム管理者である"神"を、あなたを使って倒そうとした』
女神『あなたは結局、彼の思い通りになるのですか?』
442 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:49:24.47 ID:+njJv4Yc0
魔王「私は………っ!!」
魔王「私達は、多くの戦いの果てにここに至った!!」
魔王「最後の真実に、私の意思で足を踏み入れたっ!!」
魔王「私達の生命の起源が………古代の終わりに開かれた小さな世界なのだとしても…!!」
魔王「最初の理由が、争うのための生だったとしても…!!」
魔王「私達は…その生を精一杯生きた!!」
魔王「愛の喜びを知って、それ故の悲しみに耐えて、もがき苦しみながら」
魔王「――私達は、確かに生きている!!」
魔王「その命の輝きは、どんなものよりも尊い………!! 死するその瞬間まで、どうしようもなく目映い光を放つ!!」
魔王「私はその光を、この戦いで幾度も目に焼きつけてきた!!」
魔王「――多くの英雄達との戦いで、それは私の胸に刻まれ続けてきた!!」
443 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:50:23.43 ID:+njJv4Yc0
魔王「この世界には、正義も悪も、聖も邪もない!!」
魔王「ただ生ける生命がそこにあるだけだっ!!」
魔王「それを独善的な価値観で、殺戮の渦に陥れるのなら――」
魔王「私達に、神はいらない!!!」
444 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:51:17.97 ID:+njJv4Yc0
炎獣「 ―― グ ォ オ ォ オ ン ! ! 」
魔王「いこう………炎獣!」
魔王「最後の戦いに――!!」
女神『やはりこうなるのですね…』
女神『神を倒そうというその意思………確かに聞き届けました』
女神『けれど魔王、辿り着けますか。管理者の元へ。本当の女神であり、邪神であるその存在の元へ』
女神『そこへゆくには、大いなる力が必要です。その扉は、"鍵"によってのみ開かれます』
女神『地上で創られた"鍵"は、魔法使いが持っていましたが………彼の死と共に何処へと去りました』
女神『誰の手に渡ったのか。その強運の持ち主が偶然この場に現れるのを待つしか』
女神『あなたに方法はありません――』
国王「それならここにあるぜ」
445 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:52:09.61 ID:+njJv4Yc0
魔王「!」
少年「君は………」
女神『――国王!』
国王「ったく」
国王「城は滅茶苦茶…国はぼろぼろ」
国王「この勘定をどこにつけたろーかと、流石の余も検討がつかなかったが」
国王「そういうことなら、話は早い」
国王「怪しげな宗教を余の国にばら蒔いた、神様直々にあがなってもらうとしよう」
魔王「………あ、あなたは」
国王「おう、魔王。噂通りなかなかの美人だな」
「――陛下」
女王「お戯れはそこまでに」
国王「わ、分かってるっちゅーの」
446 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:53:38.60 ID:+njJv4Yc0
少年「国王、女王………」
少年「機械城の出現と共に行方を眩ませていたと思えば………あなた達は」
少年「――この時を、待ち構えていたのかい?」
国王「余を誰だと思っとんのじゃ、たわけ」
国王「そこの美人が魔界の王者なら、余は人間のトップだぞ」
国王「教皇にしてやられて、そのまま退場っていうんじゃ………お粗末が過ぎるだろうよ」ニヤ
少年「…君が、次の"鍵"の持ち主に?」
女王「まさか。この人の運の値は歴代国王最低ランク」
女王「"鍵"などという、霊験あらたかなものに選ばれるはずもありません」
国王「お、おい。ちょっとは格好をつけさせろよ」
女王「いいから、早く彼を。"鍵"の持ち主をここへ」
国王「へいへい」
447 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:54:48.38 ID:+njJv4Yc0
国王「"鍵"………この世の理すら歪ませる反則級の代物。それを手にするほどの幸運の持ち主は誰だと思う?」
国王「それは、ある意味運だけでここまでやってきたような者ではないか?」
国王「ある所では怠け者と呼ばれる類いですらあるかもしれん」
国王「余のこれは賭けだった。けれどどうやらこの推測は正しかった」
国王「それ、こっちに来い。――出番じゃ」
「ひ、ひい………」
「な、なんだよここは………」
遊び人「………どうして俺が、こんな目にっ!」
448 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 20:56:04.48 ID:+njJv4Yc0
【遊び人】
449 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:04:30.95 ID:+njJv4Yc0
遊び人(うまく、逃げおおせたはずだった…っ! どこをどう間違ったってんだ…!)
遊び人(こいつらは俺を捕らえに来た…エラソーな格好してやがると思ったら、国王だとか名乗りやがる)
遊び人(イカれてやがるのかと思ったが、こんな所まで連れてくるってことは、本物ってことか!?)
遊び人(城下町に逃げ込んだのが不味かったのか…!? 港町から戦場になった平野を越えられたまではツイてたはずだ…っ)
遊び人(港町が氷づけになったの時には肝を冷やしたっ、だがそれからもうまく逃れてきたんだ…!)
遊び人(そもそもあの時、港町であの女に………)
――商人「お前、うちのカジノに入り浸っていた遊び人だな?」
――遊び人「うへっ!?」
――商人「大事な顧客の顔は覚えるさ。これでも商人の端くれだからねぇ」
――遊び人「こ、こりゃあ光栄な事で…」
――商人「しかし、お前は客というだけでは留まらなかった人物でもある」
――遊び人(な…なななな何で、あのことが、バレて)
――商人「知らないとでも思ったのかい? まあ、その小さな脳ミソじゃそこまで考えも回らんだろうなぁ」
――商人「貴様は今まで、我々の監視下で生かされていたに過ぎないのだ。そして、今日この日でさえそれは変わらない」
――商人「その事を、よく肝に命じておけ」
遊び人(………あの時、商人に殺されずに逃げのびた時から)
遊び人(――こうなる運命だったってのか………!?)
450 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:05:34.56 ID:+njJv4Yc0
炎獣「 グ オ ゥ ! ! 」
遊び人「ひ、ひぃぃっ!」
遊び人(じょ、冗談じゃねえぞっ…! なんだあのバケモンは!!)
遊び人(畜生っ、見るからにやべえ奴らばかりだ…っ!)
女神『そのような非力な人間に………本当に鍵が宿ったというのですか』
少年「鍵とは、そういうものだよ。女神。僕はそれをよく知ってる」
魔王「………」ツカツカツカ
遊び人(ひっ! なんだ、こっちに来…)
魔王「あなたが鍵の持ち主なら」
魔王「お願い。鍵を開けて。………神々を名乗る者の元へ、私を導いて」
遊び人「…な、な」
遊び人「何を言ってやがるんだ…っ!?」
451 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:07:23.96 ID:+njJv4Yc0
国王「魔王」
魔王「…はい」
国王「余も、この争いを終わらせたいと望むものの一人だ」
国王「だがここから先、古代人に対抗出来るのはおそらく、そなたとその力の化身だけだ」
魔王「………炎獣は」
魔王「私の友達です」
国王「む。…すまん。口が悪いのは王座についても治らなくてな」
魔王「いえ。あなた方の思い、受け止めました」
魔王「勇者と魔王の戦いを…その根元を断つ。そして」
国王「ああ」
魔王 国王「――そこから、新しい世界を探す」
魔王「人間と魔族がお互いを支えあう国を」
国王「争いを必要としない世の中を」
魔王「………もっと早くに」
魔王「あなたと話をしたかった」
国王「…本当にな。えらく遠回りをしたようだ」
国王「気の遠くなるような、遠回りを、な」
452 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:08:27.45 ID:+njJv4Yc0
遊び人(おい。おいおいおいおい)
遊び人(ふざけんなよ。俺に一体、こんなしかめっ面だらけの連中の中で、何をどうしろって…)
国王「遊び人よ」
遊び人「っ」ビクッ
国王「………その手に持ったダイスを振るえ。お前がするのはそれだけでいい」
遊び人「あ、あんだとぉ…!?」
国王「鍵はお前の手にあるのだ。扉を開くのは、きっかけさえあればいいはずだ。後は坂道を転げ落ちるように、事は動き出す」
国王「何のことはない。いつものように、掌に握った三つの賽を投げろ」
魔王「お願い」
遊び人「………っ」
453 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:09:16.42 ID:+njJv4Yc0
遊び人「へ、へへ…」
遊び人「もう、知らねぇや…っ、何がどうなろうと、俺の知ったことかっ!」
遊び人「振ればいいんだろ、振れば!!」
女神『………させません』ォオ…!
少年「女神」ス
女神『! しかし…』
少年「いいんだ。これもまた、面白いじゃないか」
少年「僕はこのシナリオを、最後まで楽しむことにするよ」
女神『………』
遊び人(どうとでも、なりやがれぇ!)
遊び人「うおらっ…!!」 バッ
コロン コロン………
454 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:10:20.69 ID:+njJv4Yc0
遊び人(………い)
遊び人(1が、三つ…!)
――カチッ
455 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:11:02.11 ID:+njJv4Yc0
456 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:11:47.48 ID:+njJv4Yc0
魔王「!!」
炎獣「ッ!!」
遊び人(な)
遊び人(なんだ、こりゃあ………)
遊び人(あたりが、ま、真っ白になっちまった)
457 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:12:39.57 ID:+njJv4Yc0
魔王「………これが、扉を潜るということ」
魔王「どうやらそれを許されたのは、加護の名残をもつ者………私と、炎獣」
魔王「それに鍵を持つ彼だけ」
遊び人「い、いい、一体何がどうなって………」
魔王「神々…いや、それを名乗る古代人の居場所にきた。この白い無の世界こそが管理者たる者の居所なんだ」
魔王「そして私達と一緒にこの場に立っているということは――」
魔王「あなたが………その古代人だったのね?」
少年「はは」
少年「そういうことだよ」
458 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:18:04.99 ID:+njJv4Yc0
少年「"鍵"」
少年「あれはそれ自体が気紛れな代物で、ひとたび持ち主が手放すようなことがあれば、誰の手に渡るか分からないんだよ」
少年「古代王朝の終わりに創られた"鍵"もやはりそうだった」
少年「本来の"鍵"の持ち主は醜い争いの憂き目にあって命を落とした…。その後誰の手に"鍵"が渡るか、世界は緊張に包まれた」
少年「狂ってしまった世の中を正そうと希望を持ち続ける人徳者もいたな。彼の手に"鍵"が渡れば、古代王朝にも先があったのかもしれない」
少年「選民思想のもと、ノアの方舟のようなものを作ってある一定の人々を生き残らせようとした人もいた」
少年「いずれの手に渡っていたとしても、こんな小さな、魔王と勇者の世界は創らなかっただろうね」
少年「でも、"鍵"は僕の手に渡った」
少年「僕が幸運だった。理由はそれだけだ」
459 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:18:49.56 ID:+njJv4Yc0
少年「僕はね。ウンザリしていた」
少年「先の見えない争いの世界も。何もかも科学の力で証明された夢のない世の中にも」
少年「――僕は永遠に、ファンタジーを見ていたいと思ったんだ」
少年「だから世界をリセットして、勇者と魔王の冒険譚だけがある、閉じた場所を作った」
少年「友情と愛と、危険に満ちた戦いがあって」
少年「ひとかけらの希望を胸に、剣と魔法のワクワクするような戦いが繰り返される」
少年「科学の力なんて持ち出す不粋な輩は永劫現れない。そこまで進化する必要がない」
少年「ある時は勇者が勝って、ある時は魔王が勝つ。その綱引きが行われるたび、胸を踊らせる夢物語が紡がれる」
少年「どうだい? 飽きないだろ?」
少年「だから僕はこうして、今まで邪神の役と女神の役をこなし、魔王と勇者をつくりながら――」
少年「この美しい世界を………悠久とも言える時間眺め続けてきたんだよ」
少年「たった一人でね」
460 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:19:47.55 ID:+njJv4Yc0
遊び人(おい…なんだってんだ?)
遊び人(こいつらは何の話をしている…!?)
魔王「………………」
少年「怖い顔をしないでよ、魔王。君の物語も僕はずうっと見ていたさ」
少年「今回のお話は本当に刺激的だった!」
少年「本来は魔王城で鎮座しているはずの魔王が、自ら人間の王国へ攻めてくるんだ…! 凄いよねっ」
少年「本来、一人一人撃破されるはずの四天王が、一致団結して勇者一行を各個撃破するんだ!」
少年「倒される勇者一行にも、様々な想いが胸にあって、美しかった…!」
少年「僕が一番気に入ったのは赤髪の少女が僧侶となってしまったお話だなあ………」
魔王「………あなたは」
魔王「子供でいられたその一瞬に"鍵"を身に宿らせて」
魔王「――そのまま時を止めてしまったのね」
461 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:20:38.86 ID:+njJv4Yc0
魔王「絶対的な力に溺れて、玩具のように生命の希望を生んでは壊し」
魔王「そうしていつの間にか」
魔王「そんな風に、狂気に満ちた醜い存在になってしまった」
少年「…酷いな。傷つくよ」
少年「僕は何も間違ってない。このまま勇者と魔王に世界が依存し続ければ、みんな本当の地獄を見ることはないんだよ」
少年「あの、幻想を欠片も抱けないような、おぞましい終焉をね」
少年「そして希望と絶望が流転する今の世の在り方こそが、永遠のロマンであり…健全な状態なのさ」
遊び人「お、おい」
遊び人「おいおいおいおいおい」
遊び人「ちょ、ちょっと待てよ、おいっ。黙って聞いてりゃよ、好き勝手に言いやがって」
462 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:21:23.11 ID:+njJv4Yc0
遊び人「それじゃあ、なにか? こ…この気の遠くなるほど馬鹿げたドンパチは全部、てめぇのでっちあげた台本だったってのかよ!?」
少年「…僕はあくまで結末を見越したきっかけを与えるだけさ。動き出した魔王と勇者がどんな道程を経るかは、分からない」
少年「白紙のページにドラマが描かれてゆく様を見るのが、僕の楽しみだからね」
少年「僕の作った世界を、僕が選んだ英雄たちが駆け巡る………ふふ!」
少年「でも、それを邪魔しようって奴らもいた」
少年「魔法使いはこの摂理を壊し、あまつさえ僕を倒そうとしてたみたいだけど、残念だったよね。…それに今回はもっと重要なこともあった」
少年「あの"女神"は、魔王勇者大戦の筋書きを書いてくれたんだ…! それは熱中してしまうような面白さで…はは!」
少年「誰かが意図してドラマチックな魔王勇者大戦を作ってくれるなんてさ! 刺激的な体験だったなぁ!」
遊び人「………じょ…っ」
遊び人「冗談じゃねぇぞおい…!」
463 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:22:20.83 ID:+njJv4Yc0
遊び人「ガキの戯言にどいつもこいつも振り回されてたってかぁ!? どっ、どうりでおかしいと思ったんだよ、魔王だの勇者だの………」
遊び人「俺の生きてきたしみったれた街角じゃあ、そ、そんなもんはクソの役にも立たない絵空事だったからなぁ!」
遊び人「おっ、俺に言わせりゃあな…! てめぇのおままごとなんか、ちゃんちゃら可笑しい三文芝居――」
少年「ねえ、遊び人」
遊び人「!」ビクッ
少年「大声でわめきたてるのは、認めて欲しいから?」
遊び人「………な、何を…」
少年「君にだって勇者に憧れた子供時代はあった」
少年「英雄のきらめきの虜になっていた瞬間が確かにあった…けれど」
少年「君は知ってしまった。自分はその器ではない。誰からも選ばれない。能力も心の強さもない」
少年「"自分は惨めな端役でしかない"。そう認めるしかなかった。そうでしょ?」
遊び人「………っ」
464 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:23:09.98 ID:+njJv4Yc0
少年「でも、今君が一歩前に出たのは、どうして? そう。もしかしたら認めてもらえるかもって思ってしまったんだよね?」
少年「この大詰めに居合わせて、その他大勢に甘んじるためにひた隠しにしていた感情が顔を出した」
少年「………君、諦め切れていないんだよね?」
少年「どんなに大人の顔をしてみせたってさ、遊び人。君の心の奥にまだ燻っているんだ」
少年「あは! ………残酷なまでの、勇者への憧れが…!」
遊び人「や、やめろ…」
少年「君は運命のイタズラでここに居合わせただけ! もうここで君にできることなんてひとつもないんだよ!」
少年「でもそれでいい。思い出してごらん」
少年「本来は通行人みたいな役どころだったろう? 元々、勇者なんてものには届きようがないんだ」
少年「それが、本当の君なんだ。だから、何もできなくていいんだよ」
少年「何もできない君で、いいんだよ…」クスクス
遊び人「だ…っ」
遊び人「だまれっ!!」
――バリバリッ!
遊び人「ひっ!?」
465 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:24:51.56 ID:+njJv4Yc0
少年「おやおや。逃げ出してしまいたい気持ちになるのも分かるけど、あんまり興奮すると危険だよ?」
少年「気をつけてね。ここは現世から遥かな距離を持つところ。僕が神として管理を行ってきた席なんだから」
少年「俗にいう天国みたいな場所とも言い表せる。死した亡者の魂も君のすぐ側にいる」
少年「そういう場所だよ」
遊び人「ふ、ふ、ふざけんじゃねぇっ…!」
遊び人「お、俺には関わるつもりなんてこれっぽっちもねぇ! 俺を巻き込むな…っ!」
遊び人「世界だの、生命がどうだの、知ったこっちゃあねぇんだよ!」
少年「ふふふ。今度は必死で知らんぷりかい?」
少年「うん。でも君はそれでいい。それでいい…」
遊び人「俺は、俺は………」
遊び人「俺はただ逃げのびて………酒にさえありつければそれで………!」
――バリッ
遊び人「うひぃっ!?」
商人『たく、使えない男だね。これくらいで悲鳴を上げるんじゃないよ』
466 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:25:31.79 ID:+njJv4Yc0
遊び人「しょ、商人…っ!?」
遊び人「………? だ、誰もいない。今の声は一体どこから聞こえてきやがった………」
――バリバリッ
魔王「!?」
魔王(頭のなかに映像が浮かんでくる…っ!)
魔王(どこかの…平野…?)
魔王(数人の男女がそこに………これは…っ!)
商人『フラフラ動くな、軟弱者』
盗賊『無茶言うんじゃねーよ、アネゴ!』
盗賊『新型の鉄砲の試し撃ちに、なんで俺が的を持っていなきゃならねーんだよ!』
戦士『盗賊。貴様少し静かにしろ。こちらは食事中なんだぞ』
盗賊『っざっけんな猪野郎! じゃあテメェが的になってみやがれコルァ!』
商人『ショット』パンッ!!
盗賊『うひょおおおっ!!』
武闘家『はっはっはっ。なかなか面白い見せモンだのぉ』
467 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:26:06.62 ID:+njJv4Yc0
魔王「………今のは」
少年「ふふ。君達が倒してきた勇者一行だよ」
少年「彼らがもし、力を合わせることに成功したら………想像すると、ちょっとドキドキしないかい?」
少年「それが、あれさ。あの変わり者だらけの英雄達が、足並みを揃えて魔王城を目指すところだ」
魔王「…」
少年「あはは。彼らが同じ食卓を囲んでいるなんて、なんだか可笑しいよね」
少年「魔法使い達には採用されなかった未来だ。けれどそんなことが現実に起こりうれば何かが変えられたもかもしれない………今でもそんなことを夢見る哀れな魂がいるんだよ」
少年「死してなお、彼女はその呪縛のごとき夢から逃れられずにいる。………おいで」
僧侶《………ああ》
僧侶《もし、世界が優しかったなら………》
僧侶《…私は…………私がこんなに、苦しまずに済んだのよ》
僧侶《………どうして………どうして…》
468 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:27:02.14 ID:+njJv4Yc0
魔王「………彼女は…」
少年「元々、今回の勇者一行だったひとだよ。君に相対する前に死ぬことになってしまったけどね」
少年「死した生命は、死後の国に迎えられることなどなく、この"無の空間"で果てのない放浪を味わう。聖女と呼ばれた彼女であっても例外ではない」
少年「…死は、楽になんてなれない」
少年「極楽浄土みたいなものは存在しない。許される余地も、転生なんて都合のいいものもない」
少年「ただ、この場所………限りない無を漠然と漂うだけ。それが"死"の正体さ」
少年「僧侶も生前は高潔で気高い女性だった。でもね、死という事実の前では生きている間に得たものなんかこれっぽっちも役に立たない」
少年「死は、あらゆる生命のメッキを剥がす――」
少年「見果てぬ無の空間。そいつを前にした時、あらゆる魂は等しく絶望するのさ」
少年「ねえ、魔王。あそこを見てごらん」
魔王「………っ」
木竜《………助けて》
木竜《助けてくれんか………》
469 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:28:11.90 ID:+njJv4Yc0
魔王「………」ギリッ
少年「どんなに穏やかに死を迎えた者だって」
少年「いざここにやってきたら………誰一人、この孤独には耐えようがないんだよ」
木竜《………誰か、楽にしてくれ………》
木竜《………こんなに苦しいのならば》
木竜《――儂は、この世に生まれ落ちるべきではなかった》
魔王(爺)
470 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:28:52.23 ID:+njJv4Yc0
少年「死別した相手に安らかであって欲しいっていうのは、生者の勝手な願望でしかない」
少年「君達のために死んだ木竜は、未来永劫こうして苦しみ続ける運命だ」
魔王「………」
少年「――震えてるね?」
魔王「っ…」
少年「魔王四天王…ここまで辿り着いた君達の力は称賛に値する。けど」
少年「その英傑を包み込んできた木竜でさえ、よるべなく慈悲のない無の前に、苦しむことしか出来ない」
少年「…君の足はすくんでいる。君にとって大切な存在である木竜が、見たこともない悲痛さで屈服しているのを目の当たりにしたからだね」
魔王「…」
少年「命すら投げ出して僕を討つつもりでいたんだろう?」
少年「仮にも神を名乗る僕を相手取って、生きて帰るつもりは最早なかった…その生涯を終わらせてしまうことすら厭わないつもりでいた」
少年「しかし、君は知ってしまった」
少年「死は終わりではなく、救いのない永遠の始まりだと」
少年「ねえ、魔王」
少年「僕を倒そうとすれば君はただでは済まない。例え成功したとしても、引き換えに君は死ぬだろう」
少年「その時君の身に降りかかるのは、想像を絶する事象だ」
少年「希望が最初からない無限の世界。そこに君は飛び込めるの?」
少年「命を、投げ捨てられるかい?」
471 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:30:04.35 ID:+njJv4Yc0
魔王「………」
魔王「私は――」
魔王「私は、それでもあなたを倒す」
少年「ふふ。揺るがない決意というやつ?」
少年「そんなことはないよね。ここでは心は隠せないよ」
少年「君………怯えきってるじゃない」
魔王「………」
472 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:31:06.18 ID:+njJv4Yc0
魔王「ええ」
魔王「ここにきて、私」
魔王「恐怖にすくんでる。それに、迷ってる」
魔王「あまりも矮小な生命よ…私は。情けないし………とても愚か」
魔王「………」
魔王「それでもね」
魔王「言葉では説明できないものが、私を前に向かせるの」
魔王「――私は、あなたを倒すわ」
少年「………」
473 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:32:00.37 ID:+njJv4Yc0
少年「へえ。これは驚いた。どうやら本気だね」
少年「心にこわばりが見られない。静かだけど、かといって折れてしまったわけでもなく…」
少年「それは使命感とか自らの希求の念とか………そういう思考の外の感覚…」
少年「今までの歩みの全て――…純度の高い魂の発露。そういうものが、ぎりぎりの所で君の意思を形作っている。そして…」
少年「………長らくこの世界の命の物語を眺めてきたつもりだったんだけどね。なんだろう、この違和感は」
少年「君はこの世の果てを目にしたはずなのに、その感情は、まるで」
少年「そう、言ってしまえば………まるで今日の畑仕事をこなしにかかる農夫のような」
少年「魔法もなく…特別でもなく…ある意味退屈な…」
少年「………その感情は、なんだ?」
魔王「不思議なことなんてひとつもない」
魔王「私のこれは、きっと誰にでもある気持ちだから。…為さなきゃならないことを為そうとする気持ち」
魔王「心踊る冒険も、幻想的な世界も、命懸けの闘いも、関係なく」
魔王「ありふれた勇気よ」
少年「………」
474 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:37:15.53 ID:+njJv4Yc0
少年「へえ。これは驚いた。どうやら本気だね」
少年「心にこわばりが見られない。静かだけど、かといって折れてしまったわけでもなく…」
少年「それは使命感とか自らの希求の念とか………そういう思考の外の感覚…」
少年「今までの歩みの全て――…純度の高い魂の発露。そういうものが、ぎりぎりの所で君の意思を形作っている。そして…」
少年「………長らくこの世界の命の物語を眺めてきたつもりだったんだけどね。なんだろう、この違和感は」
少年「君はこの世の果てを目にしたはずなのに、その感情は、まるで」
少年「そう、言ってしまえば………まるで今日の畑仕事をこなしにかかる農夫のような」
少年「魔法もなく…特別でもなく…ある意味退屈な…」
少年「………その感情は、なんだ?」
魔王「不思議なことなんてひとつもない」
魔王「私のこれは、きっと誰にでもある気持ちだから。…為さなきゃならないことを為そうとする気持ち」
魔王「心踊る冒険も、幻想的な世界も、命懸けの闘いも、関係なく」
魔王「ありふれた勇気よ」
少年「………」
475 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:38:16.39 ID:+njJv4Yc0
少年「ふっ…ふふふ」
少年「本当に君は、楽しませてくれるなあ…!」
少年「"ありふれた勇気"? はは! そんなものが、本当に僕を倒せると思うのかい!?」
少年「絶対的な管理者である神を相手にして、そんなものが通用するか…試してみるがいいよ!」
少年「いずれにせよ、僕の見たことのない展開さ…わくわくするね!」
少年「君がそれを否定したとても、君の冒険は例えようもなくとびっきりだった!」
少年「そのクライマックスが、ついに紐解かれる!!」
少年「ああ………こんな興奮は久しぶりだ!!」
少年「僕は今、見たこともないステージを体験してる!!」
少年「おいでよ!! 魔王! 決戦の時だ!!」
少年「君は僕に創られた世界の中で終わるのか!?」
少年「それとも定めを打ち破り、神を倒すのか!?」
少年「今こそ見せてくれ!!!」
少年「――君の辿り着く、結末を!!!」
476 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:39:12.96 ID:+njJv4Yc0
魔王(絶対的な存在だ)
魔王(直感がそう告げる。例え相手が子供のような見かけであったとしても)
魔王(敵うはずのない相手だと知らしめるような分厚い壁を、感じる)
魔王(この世界の制作者………。根本的な存在の差を魂で感じる)
魔王(それでも私は)
魔王「やらなくては」
炎獣『魔王』
炎獣『魔弓を使え。――俺が、その矢になる』
477 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:40:30.00 ID:+njJv4Yc0
炎獣『奴がお前に与えた強大な邪神の加護………その化身である俺が、刃となってもろとも奴にぶち当たる』
炎獣『そうすれば、可能性はある。奴自身から生み出た力なら…奴を傷つけられるかもしれない』
魔王「………っ」
炎獣『これしか方法はねぇ。多分な。それに』
炎獣『神を倒せても、その力の化身になっちまった今の俺が残れば後の世では脅威になっちまう』
炎獣『どのみち俺の体は』
炎獣『ここで消えるのが一番良い』
478 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:41:30.45 ID:+njJv4Yc0
炎獣『………長いこと続いてきた魔人との因縁も、これでようやく終わりだな』
炎獣『俺の旅も、これで終わり』
炎獣『でもさ。――こうして別れを告げられただけマシな最期だよな』
炎獣『………』
炎獣『無になるってのは』
炎獣『どんな気分なんだろうな?』
炎獣『あの爺さんが参っちまうくらいだし…俺にも到底耐えられそうにないや』
炎獣『きっと、情けなく泣きわめくのかもしれねぇな………』
炎獣『はは。なあ魔王。頼むからさ』
炎獣『死んだ後の俺の姿は見ないでくれよな』
炎獣『ちょっとくらい、格好つけたいんだよ。頼むよ』
炎獣『…』
炎獣『魔弓で俺を放つ…。そんな大技、こんな不安定な場所で使ったら一体どうなっちまうのか…』
炎獣『もしかしたらとんでもないことになって、お前だって無事じゃ済まないかもしれない』
炎獣『でもさ。何とか生き延びれるよ、お前は』
炎獣『なんとなくそんな気がする』
479 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:42:25.35 ID:+njJv4Yc0
炎獣『そうなったら、お前を一人で残すようなことになっちまうな』
炎獣『俺には、お前を………もう守ることが出来なくなる』
炎獣『ごめんな。守るって言ったのに』
炎獣『でもさ』
炎獣『お前はもう、大丈夫だよ』
炎獣『俺がいなくても』
炎獣『きっと』
炎獣『…』
炎獣『ぐだぐだ言ってても仕方ないよな』
炎獣『終わりにしよう、もう』
炎獣『…』
炎獣『…』
炎獣『あ、あはは! なんかさー、俺さ!』
炎獣『畜生、格好つけて終わろうと思ったのにさ!』
炎獣『はは!』
炎獣『――………き』
炎獣『消えるのが、怖いみたいだ…っ』
480 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:43:24.93 ID:+njJv4Yc0
炎獣『…あれだけ沢山殺したくせに………っ』
炎獣『何度も何度も死にかけてきたってのに…!』
炎獣『いざ、本当のおしまいを前にしたら、俺………!』
炎獣『はは…マジかよ………』
炎獣『い、いまさら』
炎獣『消えてなくなるのが………怖い………』
炎獣『怖い』
481 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:44:10.00 ID:+njJv4Yc0
炎獣『俺が殺した連中も、きっと…嫌、だったろうな』
炎獣『怖かった、ろうな』
炎獣『そして、今も、ここで苦しん、で』
炎獣『俺を、恨んでるんだろうなぁ』
炎獣『――生きてぇよ…っ!』
炎獣『一人になりたく、ねぇよ!』
炎獣『本当は俺、まだ、生きて…!!』
炎獣『………お前と一緒に――』
炎獣『………』
炎獣『なあ』
炎獣『魔王』
炎獣『ちょっとでいい。ほんの少しでいいんだ』
炎獣『俺に』
炎獣『………………勇気を、くれ』
482 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:45:03.40 ID:+njJv4Yc0
魔王「――炎獣っ!!!」
ギュウッ…!
483 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:45:55.57 ID:+njJv4Yc0
炎獣『…っ』
魔王「炎獣、炎獣、炎獣!!!」
魔王「ううううう…っ!」
魔王「炎獣ぅっ!!!」
炎獣『………』
炎獣『あたたかい』
炎獣『燃えさかる、俺の身体よりも』
炎獣『魔王の、涙が――…』
炎獣『………………』
炎獣『ありがとう』
炎獣『魔王』
484 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:46:42.86 ID:+njJv4Yc0
炎獣『勇気が沸いた、気がするぜ』
炎獣『はは』
炎獣『………』
炎獣『そいじゃ、いっちょ』
炎獣『行くとするか』
485 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:47:22.92 ID:+njJv4Yc0
【勇者】
486 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/08/04(土) 22:48:37.18 ID:+njJv4Yc0
今日はここまでです。
次回の投下で最後となる予定です
487 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/05(日) 08:03:35.06 ID:gQ2LaVpBO
いつも見てます
488 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/06(月) 01:53:15.26 ID:z8OcslRDO
乙
489 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/10(金) 18:40:47.23 ID:v+/G+lEso
つチェーンソー
490 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/10/15(月) 12:17:17.81 ID:WMvbdsn6O
最終回投下前にサーバー落ちて大変キツい思いをしてましたが良かった
11月中には終わらせられると思います
491 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/15(月) 14:53:08.30 ID:LZnclbMlO
まっていた‼
492 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/15(月) 20:40:04.19 ID:UwfhnuhA0
災難だったな
493 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/19(月) 21:27:01.85 ID:BnuV2ujA0
ほ
494 :
◆EonfQcY3VgIs
[sage]:2018/11/20(火) 19:00:14.33 ID:xe81Ada50
ようやく時間が取れたので、今週末11月24日(土)に最終回を更新します
495 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/21(水) 23:29:41.19 ID:5xrxCmrtO
待ってる
496 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/11/24(土) 09:03:44.87 ID:ma21ZHtA0
遊び人(………魔族の女が、ゆっくりと構える)
遊び人(泣きじゃくるような顔のまま、まるで弓を引き絞るような動作で、腕を引く)
遊び人(とんでもない衝動が、あいつらの回りに集まり始める…。恐ろしいほどの力が弾け飛ぶ予感だけを、感じることができる)
遊び人(………俺はこんなところで、何をやってんだ…?)
遊び人(つまりは、なんだ。こんなもん、神話の世界の出来事だろうが)
遊び人(どう考えたって場違いだ。全部夢だって言われた方がまだ、現実的だ)
遊び人(………)
遊び人(そうだ…そうだよな)
遊び人(俺には関係のないことだ。俺はただひたすら、夢が醒めるのを待っていれば、そうすればきっと)
遊び人(あのロクでもなくて、クソみたいにつまらない現実に戻れるはずだ)
遊び人(きっとそうなんだ)
遊び人(ああ………いよいよ矢が放たれる)
遊び人(でも………俺には………)
遊び人(なんら関係のないことだ)
魔王「これが」
魔王「私の最後の」
497 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/11/24(土) 09:12:07.77 ID:ma21ZHtA0
魔王「――魔弓だッ!!」
炎獣「 グ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ! ! ! 」
ピ シ ッ …
498 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/11/24(土) 09:13:14.08 ID:ma21ZHtA0
遊び人(っ!?)
遊び人(な、なんだ!? 体が動かねぇ!!)
遊び人(化け物が矢のように放たれたその爆発的な反動で)
遊び人(時間が止まったようになっちまって…)
遊び人(………な)
遊び人(何かが)
遊び人(来る――!!)
魔k王「…帝「魔…間ypもな雷
帝「海人間7uの王の炎uo獣「大し俺9.たち敵戦力gの大部666分氷姫「いよp0uい6よ…ってワ炎il獣「でも、そ王国9o軍の本体をru壊…。だその....甲.前だ」ぉしっの4ジ木竜「やってiお持yちま
すかii竜「hdjfほdほっから氷姫「無理すうとt言う儂kらおるとい兵士「qし、王「…今は何兵士陛、ちらの状…。町のら、急の報のこと」「町…いう、器商会か」上げてみよ」はっ」゚サ?い、倉モンは部せ!い!おい、こっちねぇ!めェらしがれ!!」…」員「社。大配完てやす」人「ああ、ご苦「る」 うのじゃ…そうねd」「姫う少魔王「…魔王「無理をこれしビュオ獣「おっ!gえ2た帝t「…fさ「そうったもんじ」「そろそyp0ろていて獣「ドンと来――み王「こうとう人魔王「fあ…と少して…!城 謁国…!?3 それ者「…!」゙ワザワ 獣「港て伝「はっ!王fが…鹿な…! 勇うgことだ…っ」?しく申せd」?令「はっ!令「8我らわずました…!王「な、…!?令「新うやら、魔ですら…!」伝の後直ましまnじく…刻…!!にっ!ガタ」?う…嘘だ…港港町うこの王城お、? って…の半分最送ら滅…町以降を類の戦は…!!」「そん…そん王「……でば子供のきー!れが、港町氷姫「随雷帝「今まっきたもなり明をじてまが…こまで王「え…)?炎獣「え事? 魔王」王「ん、かせてく」魔王…」私たちはまでh類をすめに必ってきた「の作能力特高私鋭による点突肝」氷「かってるわよ。したちで、すhe3d
499 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/11/24(土) 09:14:39.35 ID:ma21ZHtA0
遊び人「ッ!!?」
遊び人(がっ?! な、なんだ………!!)
遊び人(頭に………っ、流れ込んでくる………!!)
獣「勇者を倒さtyえすれ間側y6魔倒すて8て、伏せる4をいっよなi!」雷帝はま神6ti得て…。″いう組q織成化のにる、す」魔王「う。のうり。ま、族軍の方は、今、べてちにねれる人」員「王はどうやkラゴンってiちらtyjましていちらうtyいっか、詳ない。…王国y8士連解析待全れたからなh」」「「「へうなっ員「倉のありっ岸に並べりhjやす砲yuの扱中員こにつ00ぎんでがyた瞬砲弾雨をせkられまぜ?
遊び人(頭が、破裂する………!!)
遊び人( わけの分からない言葉の洪水…っ! 圧倒的な密度の、何か…!!)
遊び人(これ、は…っ、まさか魔王の………!?)
遊び人(――………魔王と炎獣の…)
王「で01ののtを6の化水高驚かされuiけた…生活を実現出」魔王「は、の化を収す必があわ」炎獣…??」うですjかに。争に勝文p0化に術を魔族の職m65人7i層がにられれ…」姫「魔界はますypますてわn?」魔王「うんだiらにもそつもでしの」炎獣「まり…どっbbばよ?氷姫アンぇ…――――――――――――――――――――――――――――俺には難しいことは分からねえけどさ、でも、魔王!!
――炎獣《俺、きっとお前の理想の世界を実現してみせるからな!》
――炎獣《その為に、一番に突っ込んでいくのは俺だっ! 絶体!》
――炎獣《約束する!》
――魔王《……ふふ。ありがとう、炎獣》
500 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/11/24(土) 09:16:15.05 ID:ma21ZHtA0
遊び人(い、今、僅かに聞き取れた)
遊び人(こいつらの声が…。やっぱり、そうだ…!)
遊び人(こいつらの感情が溢れかえって…っ、この空間を伝播してきやがるんだ…!!)
遊び人(あまりにも濃密なエネルギーの暴走に………まるで時間が止まってしまったかのようになっちまって)
遊び人(思い出が、押し寄せる――!)
炎獣^:6さjくそれでj戦?」魔王「、ご帝おyuい、氷!?―――――――――炎獣、珍しいね。そんな顔。
獣「…゙ュッ?獣「i邪れhるら8oい―――――――――…何だかさ、変な気分なんだ。どうしたらいいか、分かんないんだよ。
501 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/11/24(土) 09:17:56.38 ID:ma21ZHtA0
――炎獣《………なあ、魔王。俺は、どうしたらいいと思う? 俺、悩むの苦手だ》
――魔王《身体動かしてみる、とか?》
――炎獣《お! それいいかもな!》
――魔王《あ、でも。あまり遠くにいかないでね?》
――炎獣《…ああ、うん。…俺の戦いを…しなくちゃ、だもんな》
遊び人(なんだよ、これ)
遊び人(なんだってんだよ…!)
遊び人(魔王と炎獣の絆………。多くの葛藤を乗り越えてきた思いの濁流)
遊び人(やめてくれよ…! 俺に、そんなもんを見せつけないでくれ)
遊び人(俺には関係ないんだ…)
遊び人(手の届かない世界の話なんだ…そうだ)
遊び人(俺には関係ない…っ)
――炎獣《魔王もさ。魔王も不安なのにさ。俺たちを勇気づけてくれて》
――炎獣《ありがとな》
――魔王《っ…》
――炎獣《必ず勝とうな!》
――魔王《………うん。そうだね。一緒に、勝とう!》
502 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/11/24(土) 09:19:00.65 ID:ma21ZHtA0
遊び人(やめてくれって言ってるじゃねえか…っ!)
遊び人(どうあっても、俺の頭のなかに入ってくるつもりかよ!?)
遊び人(俺にどうしろってんだ…放っておいてくれよっ)
遊び人(過酷な運命を切り開いてきた英雄がいるってんなら、そっちで話をつけてくれ!)
遊び人(もう、俺に………見せつけないでくれ)
――炎獣《さあ、行こうぜ。悲しくても、進まなきゃ》
――魔王《炎獣…。…うん! 行きましょう!》
遊び人(炎獣があのガキに近づくにつれて想いの圧が増してきやがる…っ!)
遊び人(こんなもん見せられて、どうしたらいいんだよ!?)
遊び人(分からないんだよ…っ、俺はとっくに諦めちまったんだっ!)
遊び人(俺はそんな風には出来ねぇんだ!! やろうと思ったって出来なかったんだよ!!)
遊び人(負け犬だって居ていいだろうっ!! 俺に求めるなッ!!)
――炎獣《魔王。俺と友達でいてくれて………ありがとう》
――魔王《私をずっと守ってくれて》
――魔王《ありがとう、炎獣》
503 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/11/24(土) 09:20:05.34 ID:ma21ZHtA0
遊び人(怖い…っ)
遊び人(分かってるんだ………俺はこんなところにいるような役どころの人間じゃねぇ…)
遊び人(結局、何もかも誰かの支配の下だったってことだろう。俺はそこで燻り続けて、最後に死ぬ…)
遊び人(その支配を打ち砕くなんて大それたこと、恐ろしくてできやしない。飼い慣らされながら、惨めに生きていて、それでもいいんだ)
遊び人(俺は、俺は…っ、ただの遊び人なんだ! どこにでもいるクソ下らない人生の敗北者なんだよ!)
遊び人(放っておいてくれよ………!!)
――炎獣《俺、きっと守るからっ!》
――炎獣《魔王のこと、守るから………!!》
――魔王《炎獣…! 炎獣っ! 死なないで、お願い…っ!》
504 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/11/24(土) 09:25:19.77 ID:ma21ZHtA0
遊び人(ああ)
遊び人(炎獣と、神が、ぶつかる)
遊び人(途方もない感情が弾ける――)
――魔王《ね、ちょうちょつかまえるあそび、しよっ!》
――炎獣《ちょうちょ?》
――魔王《うん! あ、ほら、とんできた!》
――炎獣《…つかまえ王「こ、いでi…
万がo0一と、わ風jうてましととき54ま王(こ魔王わい!)?(だか、!!)―…』?王()?――ッ
鬼「ッ!y6?ん!?は――」ス!!mw「」王(…、に?が、てる風p1「ッ…ぁ、はぁ」ェ…」?゙ォオォ…魔『……(、イツのは!?ったいらん)(…か、れも王の品ケな! こ加護の正っ魔人『…イそのの尋3b常やい。てもい刀打ちるルやないば、)?とく、ラけて"分!」ュゥウ…
505 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/11/24(土) 09:26:21.47 ID:ma21ZHtA0
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