佐藤は辺りを見渡し予約した座席を探す。すこしして席を見つけそこに向かって通路を進むと、微かに音楽が鳴っているのを耳にする。うたた寝している女性の耳から外れたイヤホンから漏れ聞こえてくるその曲には聞き覚えがあった。ジョニー・キャッシュの「The Man Comes Around」。黒服の男は「叫び声に嘆きの声/生まれくる者もいれば死にゆく者もいる/アルファにしてオメガの王国が到来する」と歌っていた。
《And I heard a voice in the midst of the four beasts And I looked and behold, a pale horse And his name that sat on him was Death And Hell followed with him.