勇者「救いたければ手を汚せ」 

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411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/27(金) 23:47:40.82 ID:guLrcQbjO

魔導師「本題はここからだ」

魔導師「奴には幾つもの顔がある。その全てが奴であり、その全てが奴ではない」

魔導師「それは何故だ?」

魔女「え〜っと…囚われた魔核が沢山あるからです」

魔導師「そうだ」

魔導師「奴は現在、勇者の父の姿をとっているようだが本体は絶望そのもの」

魔導師「だが、奴の中には大量の魔核がある。奴を引き摺りだすには、それを消さねばならない」

魔女「消すって言っても、中にはーー」

魔導師「分かっている。おそらく、勇者も同じことを考えているだろう」

魔導師「そこで、お前の炎が役に立つわけだ」ウム
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/27(金) 23:50:44.74 ID:guLrcQbjO

魔女「へっ?」

魔導師「絶望に囚われているの者達は王の死を嘆いた者、希望を失った者」

魔導師「そこから生まれ出たのが絶望なのだが、今は逆だ。生み出した者達が囚われている」

魔導師「人間に裏切られた悲しみと失望、王を失った喪失感、そのような念が支配しているのだ」

魔導師「……少しばかりではあるが、私も奴の中に囚われていたから分かる」

魔女「あのっ、それと私の炎に何の関係があるんです? 治癒しか出来ないって……」

魔導師「厳密に言えば治癒ではない。性質が違うと言っただろう?」

魔女「消えた蝋燭……!!!」

魔導師「フフッ、そうだ」

魔導師「魔王が合流したのを見計らい、囚われの者達に長らく失っていたものを灯してやれ」

魔導師「それさえ出来れば彼等の方から勝手に出てくる。そうなれば、奴は丸裸だ」

魔導師「千年だ、千年もの間、喪に服したのだ。そろそろ悲しみから解放されてもよい頃だろう」
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/28(土) 00:00:03.52 ID:3hl5eRsgO

魔女「……あの、そんなこと出来ますかね?」

魔導師「大丈夫だ。お前の炎ならば『傷を癒せる』。彼等の為に涙を流した、お前にならな」

魔導師「だから、今は待つのだ。耐えて待て。その時が来るま……ん?」

魔女「……あれは、魔導鎧? 南都の方向へ向かってる。でも何で……」

魔導師「弟子よ、魔導鎧は大尉の指示無しでは行動は出来ない…だったな」

魔女「隊長の専用機ならわかりませんけど、その後に造られた機体は指示がなければ動かないはずです」

魔女「でも、こんな時に国境を越える指示を出すなんて一体何が……」

魔導師「そうせざるを得ない『何かが』あったと見て間違いはないだろう」

魔導師「我等が見えている舞台の裏側で、何かが動いているようだな」

魔女「舞台の、裏側……」

魔女「何だか凄く嫌な予感がします。上手く言えないですけど……」

魔導師「……ああ、私もそう感じるよ」

魔導師「どうやら止まっているわけにもいかないようだ。弟子よ、南都へ向かうぞ」

魔導師「魔王が勇者と合流するまで、もう少し時間が掛かりそうだからな……」
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/28(土) 00:09:24.58 ID:3hl5eRsgO
今日はここまでにします
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/28(土) 00:10:30.59 ID:3hl5eRsgO
今日はここまでにします寝ます
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/28(土) 10:23:15.25 ID:gNbTbSrlo
乙乙
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/28(土) 13:40:15.43 ID:hjfwRvLDO
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:27:17.61 ID:JycQbLx1O

>>>>>>

盗賊「…ハァッ…ハァッ…」

剣士「凄いな、あれだけ斬ったのに死なないのか。腕も脚も十数回は切り落としたのに……」

剣士「やはり再生力は魔神族の方が優れているのか? いや、仮にそうだとしてもその再生力は異常だ」

剣士「取り込んだ魔核に比例して治癒再生力が向上しているのか……」

剣士「それとも王の力を自覚したからなのか。或いは守りたいものがあるからなのか」ウーン

盗賊「(クソッ、めちゃくちゃ強え。手も足も出ねえ、奪った奴等の力も通用しねえ)」

盗賊「(いや、俺が使い馴れてねえだけか)」

盗賊「(こんなことなら黒鷹の言うこと聞いて、真面目に力の使い方を練習しとくんだったな)」

剣士「……雪か。あぁ、そう言えば勇者と一緒に雪だるま作ったりしたなぁ」ポケー
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:28:23.44 ID:JycQbLx1O

盗賊「(隙だらけだ。今ならやれる)」タンッ

剣士「あの時は確か……」ズッ

ヒュッ!!

盗賊「(……と思ってもコレだ。何処から何をしようが確実に合わせてきやがる)」ザッ

剣士「……君は何の為に命を張る。その身に魔を宿してまで戦うのは何故だ?」

剣士「地下の彼等だって見捨てようと思えば見捨てられたはずだ」

剣士「そうしていれば、こんなことに巻き込まれずに済んだというのに」

盗賊「そんな小難しいことは考えてねえし後悔もしてねえ。つーか、さっさとそこを退いてくれ」
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:29:20.24 ID:JycQbLx1O

剣士「なら倒せ。僕を殺して先へ行け」

剣士「君は目の前の敵を殺し、奪いながら、一日一日をどうにかして生きてきたはずだ」

剣士「今だって、『それ』と同じだよ。今更になって何を躊躇う必要があるんだい?」

盗賊「……俺にも、あんたに聞きてえことがある」

剣士「ん、なに?」

盗賊「あんたの腕なら、今すぐにでも俺を殺せるはずだ。なのに何で殺さねえ?」

盗賊「殺す殺すと言いながら首を狙わねえのは何でだ? そうすりゃ楽に殺せんのによ」

剣士「初めはそのつもりだったさ」

剣士「君をあの場に行かせるのは、絶望にとっては何が何でも避けたいことだからね」

剣士「だけどね、君を見ていたら少しだけ期待してしまったんだよ」
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:30:48.73 ID:JycQbLx1O

盗賊「期待?何をだよ?」

剣士「君達になら、運命の喉笛を噛み千切ることが出来るんじゃないかってね」

盗賊「……あのさ、さっきから運命には意志があるだとか何とか言ってるけど、いまいち分かんねえんだよ」

盗賊「教える気があんならはっきり言ってくれねえか。あんまり勿体振ると飽きられちまうぜ?」

剣士「はははっ!君は本当に面白い子だなぁ」

盗賊「(笑い方、勇者に似てんな)」

盗賊「(それだけじゃねえ、喋り方から太刀筋までそっくりだ……いや、勇者が似てんのか?)」

盗賊「(あ〜、そういや爺さんが言ってたな)」

盗賊「(俺達の知ってる勇者とは、勇者が己を守るべく生み出した人格だとか何とか……)」

盗賊「(統合だ何だ言ってたけど、今の勇者はどうなってんだ?)」

盗賊「(どう変わろうが友達だってことは変わんねえけど、あれから会ってねえからなぁ…)」
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:32:55.04 ID:JycQbLx1O

剣士「人も魔も、全てが囚われている」

盗賊「なにそれ」

剣士「話の続きさ。全ては運命によって作り出されたものなんだよ」

剣士「今起きている世界を巻き込んだ希望と絶望の戦いさえも、その一部に過ぎない」

剣士「絶望はそれを知った。だからこそ、再び希望を取り込もうとしたんだ」

剣士「これまでの全てを破壊して、運命が紡いできたものを無に帰す為に」

剣士「方法はともかく、奴は奴なりの考えで世界に真の自由を与えようとしているんだろう」

盗賊「……は?」

剣士「まあ、そうなるだろうね。急にこんな話を聞かされれば無理もない」
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:34:23.80 ID:JycQbLx1O

剣士「でも、これを逃せば次はない」

剣士「全ては運命に囚われたまま、誰もそれに気付くことなく生きていくことだろう」

剣士「救世主の再臨、人と魔の戦争、魔神族の滅び。そして、人の世に千年の平和が訪れる」

剣士「これが、これから起きるであろう出来事。運命によって仕組まれた歴史」

剣士「絶望はそれを防ぐ為に戦っている。いや、滅ぶわけだから防ぐとは言えないか……」

剣士「きっと、自分が倒される為にある存在だなんて認めたくないんだろうね」

盗賊「……襤褸の野郎じゃななけりゃ、その運命ってのに抗えねえのか?」

剣士「君は頭の切り替えが早いね。今の話を信じるのかい?」

盗賊「信じるかどうかは問題じゃねえ」

盗賊「ただ、あんたは意味のねえことを口にするような男じゃねえ。違うか?」

剣士「…………」

盗賊「なあ、さっき言ってた『君達になら』ってのはその話と関係あんだろ? 話してくれよ」
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:36:27.19 ID:JycQbLx1O

剣士「話す前に一つ訊きたい」

盗賊「何だよ」

剣士「君は友の為に死ねるか」

剣士「君は今や一人ではない。背負っているものだってある。それでも友を救いたいのか?」

盗賊「死ぬ気はねえけど、死ぬ気で助けるだろうな」

盗賊「どうにかしてどっちも生き延びられるように、思いっ切り見苦しく足掻いてみせるさ」

盗賊「つーか、その時になってみねえとどうなるかなんて分かんねえだろ?」

剣士「っ、あははっ!! 君は欲張りだなぁ」

盗賊「んだよ、悪りぃのか」

剣士「いや、実に君らしくていい答えだよ」

剣士「『勇者の為なら死ねる』と言われるよりはずっと良い答えだ」

剣士「でも、そうか。どっちも助かるように思い切り見苦しく足掻くか。僕は……」
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:38:05.59 ID:JycQbLx1O

剣士「僕は、どっちも救えなかった」

盗賊「…………」

剣士「……盗賊、一度しか言わないからよく聞くんだよ」

剣士「多くの死と悲しみを乗り越えた先。その遥か彼方に真の自由はある」

剣士「『其処へ』辿り着くには長い長い時間が掛かるだろう。君自身も深い傷を負うだろう」

剣士「知らない方が良かったと、目を塞がれたまま生きていた方が良かったと思うかもしれない……」

剣士「それでも君が、本当の意味で勇者を助けたいと願うなら、それを覚悟しなければならない」

盗賊「…………」

剣士「君が行けば、運命は大きく動き出す」

剣士「本来であれば終わりであったはずのこの夜も、新たな歴史の始まりになるだろう」
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:39:56.19 ID:JycQbLx1O

剣士「ただ、これだけは言っておく」

剣士「苦難の先に手にした自由が、誰にとっても幸福なものになるとは限らない」

剣士「盗賊。勇者の友であり赤髪の魔王。君はそれでも、勇者の下へ行くのかい?」

盗賊「……半分も理解出来ねえけど、行かなきゃ始まらねえってことだろ? なら行くさ」

盗賊「誰が不幸になろうと、俺は俺のやりたいようにやる。これまでもそうして生きてきた」

盗賊「運命だとか、そんなもんは別にいいんだ。俺が勇者を助けたいだけだからな」

盗賊「それに……」

剣士「?」

盗賊「……死んだ人間を引っ張り出すのはあんまり好きじゃねえけどさ…」

盗賊「あいつの父ちゃん母ちゃんも王女様も、勇者に生きて欲しいと願ってるはずだ」

盗賊「普通なんてもんからは程遠い人生、理不尽な苦しみから解放されて欲しいってな」
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:41:08.00 ID:JycQbLx1O

剣士「君自身が救われないとしても?」

盗賊「もう救われてるさ」

盗賊「勇者、娼婦、店主、魔女、隊長、地下の奴等、他にも沢山いる…それから、あんたにもな」

剣士「……そうか、既に救われているか」

剣士「今すぐ勇者の所へ行け。と言いたいところだけど、僕は奴に囚われている」

剣士「君があの場に向かおうとすれば、何が何でも止めようとするだろう」

剣士「僕を止められるのはーー」

ザウッ…

盗賊「!!?」クルッ

剣聖「危うい場面に颯爽と駆け付けるつもりが、お前の所為で台無しだ」

剣聖「お前がぺらぺらと喋ってくれたお陰で、俺の喋ることがなくなってしまったではないか」
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/31(火) 22:42:47.39 ID:JycQbLx1O

剣士「申し訳ありません」

剣士「でも、どうしても僕の口から伝えたかったんです」

剣士「それにほら、師が話すと胡散臭いでしょう? 僕から話した方が良かったと思いますよ?」ニッコリ

剣聖「相も変わらず可愛げのない奴だ。変わらんなぁ、ちっとも変わっておらん……」ヂャキ

盗賊「(何だ、剣から魔翌力が溢れてやがる。あれは勇者の持ってるもんと同ーーー)」

ズッッッ…

盗賊「がッ…くっ…痛……くねえ?」

剣聖「意味は分からんと思うが取り敢えず受け取れ。『それ』は元々お前のものだ」
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:45:15.79 ID:JycQbLx1O

盗賊「……これは、魔核…か?」

剣聖「其奴等は千年前の魔王が宿していた者達。魔王の命尽きるまで共にいた者達だ」

剣聖「諦めもせず絶望もせず、千年もの長き間、ただひたすらにお前を待っていた」

剣聖「俺も千年待った。あの時とは姿形も違うが、魔王に借りを返すこの時をな……」

盗賊「……そうか、あんた…あんたがそうだったのか…」

剣聖「まあ、そういうことだ。俺から言うべきことはない、弟子が語った通りだ」

剣聖「今の俺に出来るのはそれくらいだ」

剣聖「所詮、俺は過去の遺物。あの時、千年前に終わるはずだった存在」

剣聖「この先はお前達が作れ。この夜を乗り越え、運命を変えてみせろ」

盗賊「……ああ、やるだけやってやるよ」ザッ

ザッ…ザッ…バサッ…バサッバサッ……
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:47:26.05 ID:JycQbLx1O

剣聖「……行ったか」

剣士「あの、師よ」

剣聖「何だ?」

剣士「早速で申し訳ありませんが、僕の足止め、お願い出来ますか?」ダッ

剣聖「死して尚も師に迷惑を掛けるとは本当に仕方のない奴だな」タンッ

ガギャッッ! ギャリッ…ギリリリ…

剣士「そう言わないで下さい。僕にはどうにも出来ないんですから」

剣聖「身体はともかく、奴に囚われていながら自我を失わずにいるとはな」

剣聖「お前には本当に驚かされる。まあ、何だ……強くなったな」

剣士「長いこと弟子やってましたけど、褒められたのはこれが初めてですね」

剣聖「餞別だ。師の有り難い言葉を胸に抱き、心置きなく天に昇って逝け」グッ

ギャリッ…ザンッッ!!

剣士「…ッ、やっぱり強いな……」
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:51:07.00 ID:JycQbLx1O

剣聖「千年もあれば嫌が応にも強くなる」

剣士「……心の何処かで『もしかしたら』と思ってたんですけどね。まだまだみたいです」

剣聖「馬鹿たれ、そう簡単に弟子に超えられて堪るかよ」

剣士「……師よ、一つ訊いても」

剣聖「言ってみろ。今夜は気分が良い、特別に答えてやらんでもない」

剣士「……救世主は何故、姿を消したのですか?」

剣聖「救世主などではない。人形だ」

剣聖「誰彼構わず斬りまくるだけの、人の形をした何かだ……」

剣聖「だがあの日、人形は心を得た。心を得た人形は弱くなった」

剣士「……………」

剣聖「自我…心が生まれ、疑問が生まれ、葛藤し、人形は人形でないられなくなったのだ」
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:53:54.61 ID:JycQbLx1O

剣聖「手に掛けた数多の命」

剣聖「その重みに堪えきれなくなり、救世主と呼ばれた人形は、逃げるように姿を消した」

剣聖「それから長い間、人の世を歩き、人の世を見てきた。美しいものも、醜いものも……」

剣聖「あっという間に時は過ぎ、世界は見る間に変わっていった……」

剣聖「人々の記憶から魔神族という存在は消え失せ、偽りの歴史が真実を覆っていた」

剣聖「俺という存在はその為に生まれた命なのだと思うと、正気ではいられなかったよ」

剣聖「……まあ、救世主と呼ばれた存在も所詮はそんなものだ」

剣聖「あれから人として生きてきたつもりだが、人として何かを残せたかは分からん」

剣士「……初めて、師と話せた気がします」

剣聖「まあ、最初で最後だからな。特別だ」

剣士「勇者は、どうなるでしょうか」

剣聖「分からん。分からんが、俺のようにはならんだろう」

剣士「何故、言い切れるのです?」

剣聖「理由も根拠もない、そんな気がするだけだ。それに、弟子を失うのは一度だけで充分だ」
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/31(火) 22:55:27.20 ID:JycQbLx1O
今日はここまで寝ます
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/01(水) 00:29:52.03 ID:SkucvEPDO
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/01(水) 19:20:40.47 ID:L0rgPyq6O
圧倒的描写不足
剣聖が救世主?まるで意味わからん
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/01(水) 22:03:36.53 ID:IfF/uWpNO
1000年前の勇者って事でしょ?
なんとなくわかるけどな
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/02(木) 09:25:23.24 ID:cs6cXhmDO
前勇者であることを臭わせる描写もなにもないから唐突な気はする
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:42:11.07 ID:06iealdTO

>>>>>>>>

勇者『(そろそろ、来るか)』

戦士『面構えが変わったな。魔王の、友の気配を感じ取ったか』

勇者『……茶番は、もう止めだ』

戦士「何?」

勇者『亡き父との再会を果たし、物心付いた時から憧れていた気高き戦士とも剣を交えられた』

勇者『もう充分だ……』

勇者『過去に、父に思いを馳せるのはこれが最後。子供として振る舞う必要もない』

勇者『貴様には父と母を、愛する者さえも奪われた。そして、無関係の者達まで……』

勇者『絶望、俺の片割れ。いよいよ、俺の望みを果たす時が来た』

勇者『これより先は復讐だ。誰が為でもない、俺が俺自身の為に闘う。俺の戦だ』
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:43:00.07 ID:06iealdTO

戦士『ヌフッ…ヌハッ!ヌハハハッッ!!!』

戦士『成る程、それがお前の手にした本当の顔というわけか』

戦士『どうにも大人しすぎると思った。だが、これで合点がいった。そうか、そうであったか』

戦士『或いは、それすらも自己を守るべく生まれた新たな仮面か……』

勇者『否定も肯定もしない』

勇者『勇者は一人。戦士と聖女を親に持つ、一人の人間にして貴様を打ち倒す者』

戦士『ヌフッ…その眼付き、戦士を思い出す。勇者よ、お前は父に似てよき男になった』

戦士『内に秘めた激情は『あの時』の戦士以上やもしれん。身を焦がす程に煮え滾る魂の熱を感じる』

戦士『血は受け継がれた。やはり息子を希望の器にしておいて正解だったようだ」

戦士『勇者、囚われの子よ、よくぞ成長した。それでこそ希望、我と我等を脅かす唯一だ』

戦士「しかし、その顔付き、迸る闘志。大凡、これから世界を救おうとする人間のものとは思えぬな』
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:44:59.87 ID:06iealdTO

勇者『……救うか。結果、そうなるだけの話だ』

勇者『俺にとっての復讐が、世界を救うことになってしまうだけのこと』

勇者『復讐する相手が絶望の名を冠する異形であるというだけで『そうなってしまう』んだ』

戦士『先程とは打って変わって敵意を剥き出しにしているな。今の今まで感情を抑え込んでいたのは何故だ?』

戦士『母と王女の命より世界を選び取り、父との再会に喜び涙していた息子……』

戦士『ヌフッ…あれらは演技か?』

戦士『演技だとするならば、お前には幾つの顔がある?』

勇者『あれも自分だ。偽りない勇者の想いだ』

勇者『言ったはすだ。勇者の望みは、貴様の存在しない希望に満ち溢れた世界にすることだとな』

勇者『動機が復讐だろうと、その先に希望があるのならそれでいい……』

勇者『恨まれようと憎まれようと、それらを受け入れる覚悟はとうに出来ている』

勇者『この闘いの始まりがどうであろうと、理由がどうであろうと、貴様が迎える結末は変わらない』
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:45:56.47 ID:06iealdTO

勇者『俺が勝ち、貴様は滅びる』

勇者『それを以て戦は終わり、この夜が明ける。皆は明日へと歩き始める』

戦士『其処に勇者の姿がなくとも、か?』

戦士『目的を果たしたのちに己が消えようと、世界が救われるのであらばそれでもよいと?』

勇者『……どうだろうな』

勇者『絶望を打ち倒す力があろうと、そう簡単に勝てるとは思っていない』

勇者『この戦いの果てに俺が何をどうするのか。それは貴様を倒してから考える』

勇者『……何がどうあろうと、何が起きようと、俺は為すべきを為すまでだ』

時計屋「(……小僧)」

花屋息子「あの、お爺さん」

時計屋「……何だ、起きたのか。横になっていろと言っただろう」
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:48:22.07 ID:06iealdTO

花屋息子「お礼、言い忘れてたからさ」

時計屋「……礼など要らん。花屋とは知らぬ仲でもなし、当たり前のことをしたまでだ」

花屋息子「当たり前…なのかな……」

時計屋「……何?」

花屋息子「俺達から部屋を奪おうとした大人達の方が、『此処』じゃ当たり前な気がするよ」

花屋息子「居場所を得るために奪い合って争って、そうやって自分の居場所を手に入れる……」

花屋息子「こんな時だから『そうなる』のが当たり前なのかもって、そう思ったんだ」

時計屋「……奴等は兵士に連れて行かれた。当たり前ならば兵士になど連れて行かれはしない」

花屋息子「……そっか、そうだよね」

時計屋「……酷く疲れているな。横になって目を閉じていろ。それだけでも少しは楽になる」
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:49:50.27 ID:06iealdTO

花屋息子「俺は、眠れないそうにない」

時計屋「……そうか。妹はどうだ?」

花屋息子「よっぽど疲れたのか、怖かったのか……今はぐっすり寝てる」

戦士『フヌ…フヌ……』

戦士『そうであるなら、我と我等を救おうなどという考えは早々に捨てることじゃな』

戦士『我と我等、そしてお主にも、残された時間はそう長くはないのだからな』

勇者『分かっているとも』

戦士『ほう、ほお…顔色一つ変わらぬか、面白い。どうじゃ?どんな心地じゃ?』

戦士『心蝕み、今にも食い破らんとするものを宿した痛みは? それが如何程のものか申してみよ』
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:50:32.27 ID:06iealdTO

勇者『…………』

戦士『フヌ…ヌフフッ…まあ、よいわ』

戦士『どれだけ保つか、いつまで勇者のままでいられるのか見物じゃわえ』

勇者『俺は、最期まで勇者だ』

勇者『少なくとも、貴様を葬り、その最期を見届けるまではな……』

花屋息子「ねえ、お爺さん」

時計屋「……どうした」

花屋息子「勇者さんは、何で俺達を助けてくれたんだろ。何で、あんなに酷い目に遭っても戦えるのかな……」
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:53:45.27 ID:06iealdTO

時計屋「……儂にも分からんよ」

時計屋「化け物共が現れてから今日まで、人は自分の身を守るだけで精一杯だった」

時計屋「他人。まして世界を背負うなど、とてもじゃないが儂には想像出来ん」

時計屋「助けられた意味など考えるな。あるのは、助けられたという事実だけだ」

花屋息子「事実?」

時計屋「……そうだ」

時計屋「気紛れか、関わりがあったからなのか。それとも何らかの目的があったからなのか……」

時計屋「理由など、考えるだけ無駄だ」

時計屋「ただ、如何なる理由があったとしても助けられたということに変わりはない」
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:55:40.86 ID:06iealdTO

花屋息子「……うん、そうだね」トスン

戦士『我と我等が滅びようと、お前が滅びをもたらすであろう』

戦士『勇者よ、断言しよう。お前は決して自由になどなれん』

勇者『貴様が思うようにはならない。俺には友がいる』

戦士『『そうならぬ為』に、友の手を汚させるか。己が救われる為に、友の手を』

勇者『……可変二刀、一刀型』

戦士『……いいだろう。ならば、王が来る前に終わらせてくれよう』

花屋息子「……勇者さん」ギュッ

時計屋「……もう見るな。これ以上は、見ていても辛くなるだけだ」
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:57:18.53 ID:06iealdTO

花屋息子「辛くなんかない……」

花屋息子「だって約束したんだ。応援するって、勇者さんと約束したんだ」

花屋息子「頑張ってとか、そういうんじゃない。生きて欲しいから応援するんだ」

花屋息子「勇者さんは、また会おうって言ったんだ。優しい顔で笑いながら……」

花屋息子「でもね、あれが嘘だってことは分かってるんだ。あれは…さよならの笑顔だったから」

時計屋「…………」

花屋息子「俺は嫌だ。さよならなんてしたくない。だから、最後まで見る」

花屋息子「勇者さんは勝つ。必ず帰って来る。妹と一緒にありがとうって言うんだ」

花屋息子「目を逸らしたら胸を張って会えない。俺だって男なんだ。逃げるもんかよ……」グシグシ
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:58:55.27 ID:06iealdTO

時計屋「……男、か」

時計屋「そうだな、お前は立派な男だ。儂も男だ。共に行く末を見届けよう」

花屋息子「お爺さん…ありがとう……おっかない人だと思ってたけど、優しいんだね」

時計屋「……優しくなどない。時計にしか興味のない、変わり者の偏屈爺だ」

花屋息子「皆そう言ってたし、俺もそう思ってた。でも、違うよ。お爺さんは、優しい人だ」

時計屋「……そうか」

花屋息子「ねえ、勇者さんは帰って来るよね?」

時計屋「……ああ、今度は来る時は自分の金で買いに来ると言っていたからな」

花屋息子「約束?」

時計屋「……約束か。まあ、そんなものだ」

時計屋「あの時はかなりまけてやったんだ。来てもらわなければ困る」
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 01:59:58.86 ID:06iealdTO
短いけどここまで
次から進むと思います
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/04(土) 07:32:07.73 ID:RJ98c47DO

451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/04(土) 12:42:05.58 ID:GZHtbw4KO
乙。
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 20:54:04.99 ID:1U4qo7RyO

>>>>>>

東部第三地下施設

勇者『もう充分だ……』

勇者『過去に、父に思いを馳せるのはこれが最後。子供として振る舞う必要もない』

勇者『貴様には父と母を、愛する者さえも奪われた。無関係の者達まで……』

勇者『絶望、俺の片割れ。いよいよ、俺の望みを果たす時が来た』

勇者『これより先は復讐だ』

勇者『誰が為でもない、俺が俺自身の為だけに闘う。俺の戦だ』

狩人「(……何だろ。凄く悲しいはずなのに、奇妙な寂しさを感じる)」

狩人「(あんなに背が伸びて、身体も逞しくなって、顔付きも男らしくなった)」

狩人「(あっという間に私を追い越して、勇者は大きくなった。身体も、心も……)」

狩人「(……まだ、12歳。私より四つ年下なのに、生きている場所がまるで違う)」
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 20:55:02.69 ID:1U4qo7RyO

狩人「(もう、あの頃には戻れない)」

狩人「(一緒に泥遊びしたり山を登ったり、雪だるま作ったりして遊んでた、あの頃には……)」

狩人『ていやっ!』

勇者『うわっ! ぺっ…ぺっ…うあぁ、口の中に入っちゃったよ。顔は狙わないって言ったのに』

狩人『うっ…ごめんね勇者』

狩人『あんまり避けるから、意地でも当ててやりたくなっちゃって……目に入ってない?大丈夫?』

勇者『ちょっと入ったかも…と見せかけて、えいっ!』

狩人『わぷっ!ぺっぺっ…』

勇者『はははっ!やったぁ!!』

狩人『このぉ、だましたなぁ!うりゃあああ!!』
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 20:57:25.60 ID:1U4qo7RyO

勇者『あはははっ!まっ黒おばけだ!!』

狩人『このぉ、これでも喰らーー』

猟師『何処へ行ったかと捜してみれば、こんな所にいたのか!!』

狩人『げっ…』

猟師『勇者!狩人!! 田んぼで遊ぶなとあれ程言うたのに、またやっとんのか!!』

勇者『あっ、猟師のおじさんだ』

狩人『見つかっちゃったもんはしょうがない。勇者、逃げよう』

勇者『え〜、逃げたらもっと叱られるよ?』

狩人『怒られるのは夜でいい。今怒られたら遊べなくなっちゃうんだよ?』

勇者『あ、そっか。夜になったら怒られればいいのか。じゃあ逃げよう』
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 20:58:52.09 ID:1U4qo7RyO

猟師『こ、こら…待たんか!!』

狩人『ていっ!』

猟師『ぶはっ!』

狩人『あ、当たっちゃった』

勇者『……えいっ』

猟師『ぬはっ!』

勇者『あははっ!おじさんも真っ黒おばけだ!!』

狩人「(あれから、8年か……)」

狩人「(流れている同じ時間のはずなのに、こんなにも違うのは何でだろう)」

狩人「(背負ったものが違うから?運命、宿命?生まれた時から決まっていた?)」

狩人「(選ばし者と呼ぶ奴がいる。救世主だと呼ぶ奴がいる。悪魔の子だと叫んでいた奴もいた)」

狩人「(想像や理想を勇者に叩き付けるみたいに、皆は自分の想い描く勇者を口にする)」

狩人「(何も知らず、知ろうとすらせず濁った想いをぶつける奴等)」

狩人「(……なら、私は? 私はどうなんだろう)」
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 21:01:01.02 ID:1U4qo7RyO

勇者『否定も肯定もしない』

勇者『勇者は一人。戦士と聖女を親に持つ一人の人間、貴様を打ち倒す者』

戦士『ヌフッ…その眼付き、戦士を思い出す。勇者よ、お前は父に似てよき男になった』

戦士『内に秘めた激情は『あの時』の戦士以上やもしれん。身を焦がす程に煮え滾る魂の熱を感じる』

戦士『血は受け継がれた。やはり息子を希望の器にしておいて正解だったようだ」

戦士『勇者、囚われの子よ、よくぞ成長した。それでこそ希望、我と我等を脅かす唯一だ』

戦士『しかし、その顔付き、迸る闘志。大凡、これから世界を救おうとする人間のものとは思えぬな』

狩人「(私も、奴等と何も変わらないのかもな)」

狩人「(勇者が抱えたもの、背負ったもの、痛みや悲しみ……私は何も知らなかった)」

狩人「(幼馴染みだってだけで、勇者を知っていた気になって……っ!!)」ガンッ
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 21:02:12.89 ID:1U4qo7RyO

狩人「私は…」

ザッ…ザッ…ザッ…

狩人「?」クルッ

特部隊長「君が狩人だな。さあ、戻ろう」

狩人「……何で、隊長さんが…」

特部隊長「君の両親に捜すように頼まれてな。あまり動き回ると迷うぞ?」

狩人「……ゴメンなさい。歩いてないと、動いてないと、どうにかなりそうなんだ」

特部隊長「君は、勇者の幼馴染みだそうだな」

狩人「うん、そうだよ。でも、『それだけ』」

特部隊長「…………」

狩人「幼馴染みってだけ。何も知らない奴等と変わらない、その他大勢の一人だよ」

狩人「勇者を知らない自分が嫌で、置いて行かれた気がして、勝手に苛ついてるだけ……」
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 21:04:02.29 ID:1U4qo7RyO

特部隊長「奇遇だな、俺もそんな気分だよ」

狩人「えっ…」

特部隊長「……俺は、彼女のことを何も知らなかった」

特部隊長「だというのに、時間を共に過ごす内に知ってる気になっていたんだ」

特部隊長「彼女を理解していると、彼女の隣に立っていると錯覚していたのもしれないな」

特部隊長「そんな自分に腹が立つ……」

特部隊長「勝手に知っていた気でいた自分に、分かった気でいた自分に、どうしようもなく腹が立つ」

狩人「……彼女って、精霊さんのこと?」

特部隊長「……ああ、そうだ」

狩人「大人でも、そういうのあるんだ」

特部隊長「大人も子供も関係ないさ」

特部隊長「何も出来ないというのは、見ているだけというのは…とても歯痒く、苦しいものだ」
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 21:05:02.75 ID:1U4qo7RyO

狩人「……そんな人だと思わなかったな」ポツリ

特部隊長「?」

狩人「あ、いやその…悪口じゃないんだ」

狩人「こんな村娘に対して、そんな風に…普通に話してくれる軍人なんていなかったからさ」

特部隊長「……俺も意外だ」

特部隊長「さっさと連れ帰るつもりが、聞かれてもいないことまで話してしまった。済まないな」

狩人「謝らないでよ。話してくれて助かった。一人で考えてたら潰れてたかもしれない」

特部隊長「………」

狩人「どうかしたの?」

特部隊長「……いや、初対面の少女に何故こんなことを話してしまったのかと思ってな」
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 21:06:11.25 ID:1U4qo7RyO

狩人「そっか、そう言えばそうだね」

特部隊長「?」

狩人「私は、前に魔女や精霊さんから話は聞いてたからさ。隊長さんのことは知ってるんだ」

狩人「この地下施設を守ってる魔導鎧は隊長さんが指揮してるんだろ?」

特部隊長「……………」

狩人「何だよ、その顔。大丈夫だって、さっきのことは誰にも話したりしないから安心しなよ」

特部隊長「違う、そうじゃない……何というか、君とは初めて会った気がしないんだ」

狩人「へ〜。あ、そういや魔女にも似たようなこと言われたっけ。何でだろ?」
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 21:07:42.84 ID:1U4qo7RyO

特部隊長「……君に兄姉はいるか?」

狩人「いや、一人っ子だけど。何で?」

特部隊長「そうか…ならいいんだ」

狩人「なに、どしたの?」

特部隊長「……いや、友人に雰囲気が似ていたものだから、つい訊いてしまった」

特部隊長「俺の思い違い、勘違いだったようだ。さあ、戻ろう」

狩人「あのさ、友人ってーー」

戦士『フヌ…ヌフフッ…まあ、よいわ』

戦士『どれだけ保つか、いつまで勇者のままでいられるのか見物じゃわえ』

勇者『俺は、最期まで勇者だ』

勇者『少なくとも、貴様を葬り、その最期を見届けるまではな……』
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 21:08:37.49 ID:1U4qo7RyO

狩人「……………」

特部隊長「…………」

ガシュッ…ガシュッ……

魔導鎧「大尉、偵察機より報告が入りました」

特部隊長「来たか……」

狩人「(魔導鎧、精霊さんの声だ……)」

特部隊長「狩人、済まないが他の機体を迎えに来させる。それまで待っていてくれないか」
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 21:10:04.93 ID:1U4qo7RyO

狩人「あ、うん。分かったよ」

特部隊長「それから……」

狩人「?」

特部隊長「君はその他大勢などではない」

特部隊長「何も出来ない自分に苛立つのは、何かをしようと思う人間だけだ」

特部隊長「対等な立場で隣に立ちたいと、支えたいと思っているからだ」

特部隊長「彼の一部分を見て全てを知った気になり、好き勝手に言う連中とは断じて違う」

狩人「……ありがとう」

魔導鎧「大尉」

特部隊長「分かっている。行こう」

ガシュッ…ガシュッ……

狩人「隣に立ちたいのは、支えたいと思うから……隊長さんも、そう思ってるのかな……」
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/04(土) 21:11:20.17 ID:1U4qo7RyO
休憩また後で
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 22:07:43.45 ID:1U4qo7RyO

>>>>>>>

同時刻 北都城

魔女「先生、これは…」

魔導師「ああ、オークの仕業に見せかけた人間の犯行に違いない」

魔導師「武器はオークが所持していたものを使用したようだが、それにしては遺体が綺麗すぎる」

魔女「……確かに」

魔女「魔神族出現によって更に権力を増した教皇と、それを快く思わない南王」

魔女「それに加えて、偵察機体が言っていた『意に添わない者』の排除という言葉……」

魔女「オーク出現による大混乱、都には『救援に駆け付けた』魔狩りの大隊、か……」
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 22:15:18.56 ID:1U4qo7RyO

魔導師「十中八九、託神教の仕業だろう」

魔導師「動機は十分だが証明は出来ん。何しろ、この大混乱の最中に起きたことだ」

魔導師「託神教による謀殺だと主張しても、見向きもされず鼻で笑われるだろう」

魔女「……最終目的は何なんだろ」

魔女「偵察機から聞いた話から推測すると、勇者の身体と救世主再臨が目的なのかな」

魔女「……何が魔狩りの大隊だ、狩られるべきはお前等だ。神を語る穢れ共が」

魔導師「(凄まじい怒りが流れ込んでくる。先程より更に歪みが酷くなっているな)」

魔導師「(連続する感情の爆発。私は勿論、魔女自身も抑えてこれか……)」

魔女「ふ〜っ。精霊は何者かと交戦中か。相手は託神教なんだろうけど…再臨、再臨か……」ウーン
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 22:18:02.69 ID:1U4qo7RyO

ガシュッ…ガシュッ……

魔女「あ、来た。報告終わったのかな」

『お二方、申し訳ありません。我々の不手際で厄介なことになりました』

魔導師「……何だ、何があった」

『南王の安否を確かめるべく派遣された兵士に目撃されてしまいました』

『どうやら、我々とオークが共謀した。ということになっているようです』

『魔狩りの大隊もそれに便乗。南都城の襲撃は『魔鎧の王』による仕業だと吹聴しております』

魔女「ッ、ふざけてる…現状は?」

『精霊は現在、託神教信徒の僧侶という魔術師及び魔狩りの大隊と交戦している模様』

『魔狩りの大隊の兵士は、今も続々と精霊の下へ向かっているようです』

『我々魔導鎧隊は、精霊と共に魔狩りの大隊の足止めを行うことになりました』

『勇者さんをどうするつもりか不明ですが、奴等を捨て置けばよからぬことが起きると』
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 22:20:53.68 ID:1U4qo7RyO

魔導師「その指示は誰が出した」

『東王陛下、元帥による御指示です』
『託神教の企みを阻止せよ。とのことです』

魔女「……分かった。色々ありがと、あんた達は先に行って」

『その前に、大尉から伝言があります』
『守るべきものの為、互いに最善を尽くそう。だそうです』

魔女「……そっか。隊長さんにさ、終わったら会おうって言っといてよ」

『はい。了解しました』
『では、我々は行きます。お二方、お気を付けて』

ガシュッ…ガシュッ…ヒュオン…

魔女「守るべき者の為か。私も頑張ろ」

魔導師「……ふむ。大尉とは中々に面白い男だな」
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 22:22:52.89 ID:1U4qo7RyO

魔女「え、何がですか?」

魔導師「弟子よ、大尉の言う守るべきもの。それは何を差していると思う?」

魔女「それはもう、話の流れからして精霊のことじゃないんですか?」

魔導師「フフッ、そうだな。お前ならばそう受け取るだろうな」

魔女「他にも意味が?」

魔導師「そう難しい話ではないよ。分かる人間には分かるように出来ているだけだ」

魔導師「勇者の為に戦うお前なら、守るべきものは精霊を差すと思うだろう」

魔導師「軍に属する者ならば、国家国民を守るべきものとして認識するだろう」

魔導師「聞き手によって受け取り方が異なる言葉になっているというわけだ」
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 22:24:09.08 ID:1U4qo7RyO

魔女「あ〜、なるほど」

魔女「隊長さんは軍人だし、立場上下手なこと言えないから『ああいう言い方』したんですね」

魔女「そりゃ、俺は精霊を守る!なんて言えないか。何言われるか分かんないし」

魔女「あ〜あ。やっぱり、大人って大変なんだなぁ……」

戦士『勇者よ、断言しよう。お前は決して自由になどなれん』

勇者『貴様が思うようにはならない。俺には友がいる』

戦士『フヌ…『そうならぬ為』に友の手を汚させるか。己が救われる為に、友の手を』

勇者『……可変二刀、一刀型』

戦士『……いいだろう。ならば、王が来る前に終わらせてくれよう』
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 22:25:41.68 ID:1U4qo7RyO

魔女「…………」ギュッ

魔導師「……魔女、そろそろだ。魔王の合流に備え、我々も平原へ向かうぞ」

魔女「あの、先生。精霊はーー」

魔導師「お前は己のやるべきことにのみ集中しろ。でなければ、勇者は救えん」

魔女「ッ、申し訳ありません」

魔導師「託神教の企み。その全貌は分からぬが、精霊も勇者の為に戦っている」

魔導師「我々は我々で、勇者の為に戦う。戦う場所が違えど想いは同じだ」

魔導師「誰もが様々な想いを抱いて戦っている。魔女、お前は何の為に来た。何の為に戦う」

魔女「……友人との約束、自分の我が儘を通すため。勇者に生きて欲しいからです」

魔導師「ならば、それのみを考えろ。何があろうとも目的を果たせ。抱いた想いを胸に、戦え」
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 22:35:19.48 ID:1U4qo7RyO

魔女「ッ、はいっ!!!」

魔導師「フフッ…うむ、晴れ晴れとしたよい顔になった。それでよい」

魔導師「それならば勇者に会っても問題はないだろう。笑顔を忘れるな?」

魔女「うっ…からかわないで下さいよ」

魔導師「……魔女よ」

魔女「はい、何です?」

魔導師「このような、偉ぶったことしか言えずに済まぬな。こんな言い方しか出来んのだ」

魔女「そのままでいいです」

魔導師「?」

魔女「だって先生は先生で…その、ほら…お母さんみたいな人だから……」
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 22:39:27.68 ID:1U4qo7RyO

魔導師「…………」

魔女「だから、そうやって偉そうにしてるくらいが私には丁度いいんです」ウン

魔導師「フフッ、生意気な弟子だ。しかし、私の娘か。私の娘にしては優秀すぎるな」

魔女「魔導師の娘なんだから優秀で当たり前ですよ。まあ、まだまだ半人前ですけどね……」

魔導師「(成長したのだな……)」

魔導師「(心を支配していた憎しみは消え、純粋な魔術師の顔になった)」

魔導師「(人だけでなく、生けるもの全てを癒す魔術師か)」

魔導師「(そんなものは、理想夢想だと思っていたんだがな……)」

魔女「先生?」

魔導師「……弟子であり愛しき娘よ、この夜を明けるぞ。覚悟はよいな」

魔女「は、はいっ、覚悟は出来ています。私は友との約束を果たして、皆で夜明けを見たい……」

魔女「……行きましょう、師であり優しき母よ。私と共に、この夜を明けましょう」
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/04(土) 22:48:06.42 ID:1U4qo7RyO
今日はここまで寝ます
随分と長くなりましたけど、ようやく終わりに近付いてきました
読んでる方、レスしてくれた方、ありがとうございます。
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 01:43:45.15 ID:E7AOKf8DO
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 09:20:01.18 ID:Y758JA7JO
乙。
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/06(月) 20:54:40.27 ID:D/eUbSP7O

>>>>>>

勇者『俺は、最期まで勇者だ』

勇者『少なくとも、貴様を葬り、その最期を見届けるまでは……』

僧侶「(決着は近い。早く、一刻も早く勇者様の下へ行かなければ……)」

精霊「私は『全て』と言ったはずだぞ」スッ

僧侶「法術隊!防壁展開!!!」

ゴゥッッッッ!!! ビシッ…ビシビシ…

僧侶「くっ!!!」ズザザッ

精霊「さあ、全てを寄越せ」

精霊「私を滅ぼさなければ勇者の下へは行けはしない。避けて通ることなど出来はしない」

精霊「望むものを手にしたいのなら力を示せ。私も力で応えよう。尽きるまで応えよう」
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/06(月) 20:55:46.83 ID:D/eUbSP7O

僧侶「異物、悪魔め……」ギリッ

精霊「さあ、列をなし向かって来い。魔狩りの大隊、神の僕、憐れな盲目者」

僧侶「黙れっ!!!」

精霊「……怒りで脆弱な精神を繋ぎ止めたか」

精霊「先程まで私の力を見て心底震えていたというのに大したものだな」

精霊「ありもしない何かに縋る弱者よ、神はお前に何を与えた。お前は神から何を得た」

僧侶「うるさい!!」

精霊「神の為に魔を行使するのは何故だ、神は何故にお前に魔を行使させる」

精霊「それは神の力か?それとも神の為の力か? お前の力は何の為にある?」
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/06(月) 20:57:36.20 ID:D/eUbSP7O

僧侶「うるさいっ!」

僧侶「うるさいうるさいうるさいっ!!!」カッ

ゴシャッ…ボタッ…ボタボタッ…

精霊「まるで赤子のようだな」シュゥゥ

僧侶「…ゲホッ…ハァッ…ハァッ…人を惑わす悪魔、人心掻き乱す化け物め……」フラッ

精霊「酷い汗だ。どうした、何を怖れる? 信仰が揺らいだか?」

僧侶「黙れぁああああっ!!!」ダッ

ガギャッッ!!

精霊「縋るのは弱者だからだ」

僧侶「違うっ、これは信仰だ!!」

精霊「いいや、何も違わない」

精霊「神とは、己の力を信じられぬ者が寄り掛かる為にある存在でしかない」
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/06(月) 20:59:52.60 ID:D/eUbSP7O

僧侶「ふざけたことを言うなっ!!」

精霊「ならば、神とは何だ?」

精霊「弱者を救済する為に神があるのか?神が存在を得る為に弱者があるのか?」

精霊「お前が信じている神は何を告げた? 神に委ねる弱者よ、委ねなければ生きられぬ者よ」

僧侶「っ、うああああああああっ!!!!」

ザンッッッ!!

精霊「ふふっ…」フワッ

僧侶「…っ…悪魔め…」

精霊「どうした、何を怖れる」

精霊「神が見守っているのだろう? 何を怖れる必要がある?」

僧侶「私は怖れてなどーー」

精霊「悪魔への怖れは神への裏切り。神の加護を疑っている証。お前は神を否定した」
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/06(月) 21:03:14.69 ID:D/eUbSP7O

僧侶「うぁ…ち…ちがう…私は……」

精霊「神の否定は自己の否定」

精霊「拠り所をなくした弱者は、己が脚で地に立つことすら出来はしない」

精霊「神はお前に失望した。お前の裏切りによって神の加護は失われたのだ」

僧侶「やめーー」

精霊「神を疑い、魔を怖れたお前を、神は許さないだろう。疑いとは、許されざる罪だ」

僧侶「ちがう、おそれてなんかない。わたしは、悪魔など怖れ…な…い」ドサッ

精霊「似合いの姿だ。地に伏し神に祈れ。それが、神がお前に望んだ姿だ」

精霊「神の許しを得るまで這いつくばっていろ。お前の中の神が許すまでな」
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/06(月) 21:07:40.69 ID:D/eUbSP7O

僧侶「待て、待…て……」ガクンッ

僧侶「(……私は疑ってなどいない。神の告を、神の存在を信じている)」

僧侶「(あれは悪魔の惑わし、魔を孕んだ巧言偽言。私の弱さがそれを許しただけにすぎない)」

僧侶「(早く起たなくてはならないのに、身体に力が入らない)」

僧侶「(なんて、なんて情けない……)」

僧侶「(一時だろうと魔に怯み、打ち負けてしまった自分が情けない)」

僧侶「(……癪だけれど、あの者の言う通り認識を改めなければならないようですね)」

僧侶「(あの者にはそれだけの力がある。その事実だけは、受け止めなければならない)

僧侶「(我々が戦っている者は人でありながら人ではない。あれは邪教の徒、魔の使いなのだから)」
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/06(月) 21:11:27.99 ID:D/eUbSP7O

僧侶「(きっと、どこかで油断していたのでしょうね……)」

僧侶「(神への甘え、それが付け込む隙を与えてしまった。けれど、もうそれはない)」

僧侶「(神を冒涜し存在を貶めた罪は重い。あれこそ許されざる罪。罰しなければならない)」

僧侶「(私は、あの者を滅ぼさなければならない。何としてでも……)」

僧侶「(あの者を在るべき場所へ、煉獄へと送り返さなければ……)」

『……侶様!僧侶様!! 僧侶様!しっかりして下さい!!』

僧侶「うっ…あ、ありがとうございます」

『お身体は、どこかーー』

僧侶「いえ、私なら平気です……それより皆は?皆は無事なのですか?」
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/06(月) 21:13:41.47 ID:D/eUbSP7O

『既に二百名以上が……』

僧侶「そんなっ!!」

『僧侶様、悲しむお気持ちは分かりますが、どうか気を静めて下さい』

『魔狩りの大隊の要である僧侶様が崩れれば、勝ち目はなくなってしまいます』

僧侶「でもっ!!」

『僧侶様、彼等は殉教したのです』

『目を閉じる最後まで信仰を貫き、悪しき者に立ち向かい、身を賭して戦ったのです』

僧侶「……………」

『僧侶様、貴女は優しすぎます。我々は魔狩りの大隊、神の告げに従う兵士です』

『この命は、とうに神の下へ捧げているのです。ですから、悲しむことはありません』
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/06(月) 21:22:32.69 ID:D/eUbSP7O

僧侶「…っ、お願いが、あります……」

『はい。何なりと』

僧侶「私はこれから魔術を封じ、あの者の背後に回り込みます」

僧侶「一瞬。瞬きの間の隙を作って下さい。私が、この剣であの者を滅ぼします」

『了解しました。全力を尽くしましょう』

『僧侶様、そんな顔をならさずとも大丈夫ですよ。貴女ならば必ず成し遂げられます』

僧侶「あのっ、皆さーー」

『僧侶様、後のことはお任せします』

『我々の為に涙して頂いたこと、決して忘れはしません』

『出来ることなら勇者様と並び立つお姿を見たかったですが悔いはない』

『悪しき者を滅ぼせるのであれば本望。僧侶様、お元気で……では、行って参ります』


…ザッ…ザッ…ザッ…


僧侶「安らぎと祝福、安寧と平和を築く為、我等は戦うのです」

僧侶「勝利の上に勝利を築き、人の世の安息と千年の……」ザッ
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/06(月) 21:28:12.65 ID:D/eUbSP7O
また後で書くと思います
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/02/06(月) 23:42:00.90 ID:pmpgKhMTO

僧侶「…っ、お願いが、あります……」

『はい。何なりと』

僧侶「私はこれから魔力を封じて、あの者の背後に回り込みます」

僧侶「一瞬。瞬きの間の隙を作って下さい。私が、この剣であの者を滅ぼします」

『了解しました。全力を尽くます』

『僧侶様、そんな顔をならさずとも大丈夫です。貴女ならば必ず成し遂げられますよ』

僧侶「あ、あのっ、皆さーー」

『皆、行こう。僧侶様、後のことはお願い致します』

『貴女が我々の為に涙を流したことは決して忘れません。では…』

『信徒として、悪しき者を滅ぼせるのであれば本望。僧侶様、どうかお元気で……』


…ザッ…ザッ…ザッ…


僧侶「……安らぎと祝福、安寧と平和を築く為、我等は戦うのです」

僧侶「勝利の上に勝利を築き、人の世に安息の千年を……」ザッ
488 : ◆4RMqv2eks3Tg [saga]:2017/02/06(月) 23:45:17.47 ID:pmpgKhMTO
>>485はミス
凄まじく眠いので寝ます。申し訳ない。
近日中に完結させたいと思います。
また明日。
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/07(火) 21:28:27.95 ID:tf4rbj+qO

精霊「(完全種6、魔術師4)」

精霊「(完全種は防御を考えない捨て身の攻撃。魔術師は主に治癒や魔術防壁)」

精霊「(攻撃的な魔術を使う者はいないようね。使ったのは、僧侶とかいう魔術師のみ)」

精霊「(潜在魔力、使用元素量共にずば抜けて高い。そこだけを見れば魔導師を凌ぐ)」

精霊「(あれは生まれ持ったものなのか、後天的に得た、もしくは与えられたのか……)」

『っ、狙いが定まらない』

『風術による加速を維持しながら他属性の魔術を行使しているのか……』

『認めたくはないが、あの者は違いすぎる。防壁展開だけでも精一杯だ』

『来るぞッ!!!前衛部隊に防壁展開!!』

精霊「(……魔狩りの大隊と称しているものの、見た限り連隊と言っても差し支えはない)」

精霊「(完全種の多さも、個々の質も、赤髪狩り時代の魔狩りの大隊とはまるで違う)」
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/07(火) 21:30:31.45 ID:tf4rbj+qO

精霊「(彼等にとって、死は死を意味しない)」

精霊「(物質界、肉体からの解放。あるべき場所へ帰ることを意味する)」

精霊「(勝敗や生死ではなく、あくまで信仰を貫くことが基盤となっている)」

精霊「(死にながら生きているのか、生きながら死んでいるのか。まあ、どちらでもいいわ……)」

精霊「(私が言えたことではないけれど、『まともな人間』なんて一人もいないのね)」

精霊「(それにしても、よくもまあ、ここまでの信徒を作り上げたものだわ)」

精霊「(赤髪狩りの失敗から学んだのか、それ以前から存在していたのか……)」

『くっ…魔力防御してこれか。想像していたより凄まじい魔力だ』

『魔力だけじゃない。使用している元素量も桁外れだ。魔術防壁の再調整が必要だな』
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/07(火) 21:31:18.37 ID:tf4rbj+qO

『奴の魔術は攻撃と言うより分解に近い』

『ああ、完全種のことは熟知しているようだ。でなければ外傷無しで殺すのは無理だ』

『体内に含まれた僅かな元素に干渉しているんだろう。悔しいが、我等が敵う相手ではない』

『僧侶様なら対応出来るのだろうが、僧侶様は……』

『何とか持ち堪えたな』

『油断するな。正直、まだ奴の底が見えない』

『何か思惑があると言うのか?』

『もしかすると、大隊が終結するのを待っているのかもしれんな』

『そんな馬鹿なことがあるか。大隊相手に手加減しながら戦うなど、どうかしている』

『奴にはそれだけの力がある。あの力は、本当にどうかしているんだ』
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/07(火) 21:33:27.10 ID:tf4rbj+qO

精霊「(……ハァ…この類の人間は満足して死ぬから嫌なのよね)」

精霊「(まあ、この場に縫い止めるのは成功しているからいいのだけれどーーー)」

戦士『我と我等が滅びようと、お前が滅びをもたらすであろう』

戦士『勇者よ、断言しよう。お前は決して自由になどなれん』

勇者『貴様の思うようにはならない。俺には友がいる』

戦士『『そうならぬ為』に、友の手を汚させるか。己が救われる為に、友の手を』

勇者『……可変二刀、一刀型』

戦士『……いいだろう。ならば、王が来る前に終わらせてくれよう』

精霊「(魔王が動いた……)」

精霊「(ということは、剣聖は私用を済ませたのね。後は勇者と魔王、そして魔女……)」

精霊「(あの二人が勇者と合流すれば、これまでの流れは変わる。後の千年を覆せる)」
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/07(火) 21:37:18.97 ID:tf4rbj+qO

精霊「(勇者の意志は固い)」

精霊「(今、勇者を動かせる『人間』はあの二人しかいない……)」

精霊「(あの子は生きてくれるかしら? あの子にとって生が苦痛でしかないのなら、私はーー)」

ズッッッ…

精霊「神が、背後から刺せと命じたのか?」クルッ

僧侶「いいえ、これは私の意志です」

僧侶「貴方はあってはならない存在、故に手段は問わない。貴方に対し、卑怯ということはない」

精霊「背後から忍び寄り刺し貫く。これを卑怯と言わず何と言うのだ」

精霊「お前が遂行したのは正義ではない。お前は堕ちた。穢れた存在となった」

僧侶「そうであるなら、そうなのでしょうね。私自身は、穢れたなどとは思いませんが」

精霊「血に塗れたその手で何を救う。その矛盾を抱え、更に世を惑わすか」

僧侶「貴方の言葉には惑わされない」

精霊「(治癒しない。魔力が抜け……違う、これは崩壊ね。あの剣かしら……)」

精霊「(あの剣…刀身の赤。あれは私の血ではない、あれは……)」
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/07(火) 21:42:05.80 ID:tf4rbj+qO

僧侶「千霊の剣」

僧侶「これは貴方のような悪魔にのみ、救われぬ存在にのみ行使することが出来る」ヂャキッ

精霊「(なんて趣味の悪い)」

精霊「(刀身は血液。おそらく、完全種の血液を練成して造り出したもの)」

精霊「(名の通り、千の完全種から生み出したのかしら。あれに刺されたかと思うと気分が悪いわ)」

精霊「(外傷は大したことはないけれど、内側から破壊されていくのが分かる)」

精霊「(魔力分解、肉体構成への干渉…人間を無理矢理完全種に作り替ーー)」

僧侶「貴方に、神の赦しは得られない」

精霊「ふ、ふふっ…赦しなど求めたことはないわ。それより、あなたは自分を許せる?」

精霊「人殺し。法衣をまとった殺人者、神を信じながら魔を行使する者」

精霊「幾多数多の矛盾に満ちた歪みの塊。それでも尚、自分を肯定出来る強さがあるのならーー」

ザンッッッ!! ドサッ…

僧侶「………………」

精霊「……貴方に…神など必要ないでしょう……」
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/07(火) 23:19:32.68 ID:aJyh5GsBO
精霊さん...
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/07(火) 23:57:57.79 ID:tf4rbj+qO

僧侶「もう、話すことはありません」

精霊「あら…そう…それは…残念ね……」

僧侶「個人的に、あくまで個人的にですが……」

精霊「?」

僧侶「何故、貴方がそうなったのか。何故、そうならざるを得なかったのか知りたかったです」

僧侶「異常なまでの力への執着。それは、力に縋るしかなかったからですか?」

精霊「…………」

僧侶「…………」

『僧侶様、御無事ですか?』

僧侶「……ええ、もう終わりました。何もせずとも、この者は滅びるでしょう」
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/07(火) 23:58:25.39 ID:tf4rbj+qO

『では、勇者様の下へ?』

僧侶「いえ、その前に負傷者の治療を行って下さい。お迎えに行くのはその後でも間に合います」

『はい、了解しーーー』

ズォッッッ!!! ゴゴゴッッ…

僧侶「転移陣!!? 今更何を!!」

精霊「…煩いわね…何もしてないわよ……」

僧侶「(……嘘、ではないようですね。確かに、この者から魔力を感じない)」

僧侶「(けれど、転移陣から発せられる魔力は酷似している。一体何が……)」

精霊「……知識への欲求は、私譲りみたいね。どこで、こんなこと覚えたのかしら」

僧侶「(対象を中心として転移陣を起動して転移。この方法は、高位の魔術師にしか出来ない)」

僧侶「(弟子…ではない。子でもない。何者かは分からないけど、何かがやってくる)」

僧侶「(この者の魔力を辿って膨大な数の何かが……!!)」
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/08(水) 00:00:46.41 ID:ZMOITYU0O

僧侶「皆さん!戦列を整えて下さい!!」

ズンッッッ!!!

僧侶「こ…れは……」

ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!

特部隊長「……………」

精霊「(……まったく…本当に…)」

特部隊長「我々の任務は大隊の進軍阻止」

特部隊長「何があっても南部平原…勇者の下へは行かせるな。誰一人だ、誰一人通すな」

特部隊長「……これより任務を遂行する。魔導鎧隊全機、了解か」

『はい。魔導鎧隊全機、了解しました』ガシュッ

特部隊長「精霊、遅れて済まない」

精霊「……呼んでないわよ、馬鹿」

特部隊長「何とでも言ってくれ」

特部隊長「俺はもう嫌なんだ。何も出来ず、何もしないまま誰かを喪うのは……」
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/08(水) 00:08:57.21 ID:ZMOITYU0O

精霊「……昔の女と重ねるなんて最低ね」

特部隊長「減らず口を叩けるなら大丈夫だな」

特部隊長「今、医療機体を寄越す。辛いだろうが、それまで耐えてくれ。というか、死ぬな」

精霊「…あなた、この私に命令する気? 随分と偉くなったものね……」

特部隊長「事実、偉いからな」

精霊「そうね…そうだったわ…西部司令官様だものね……」

特部隊長「……俺は、あなたのことを何も知らなかった。いや、知ろうとしていなかった」

特部隊長「これが終わったら、あなたに聞きたいこと話がしたいことが山ほどある」
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/08(水) 00:12:42.00 ID:ZMOITYU0O

精霊「何故?」

特部隊長「俺はあなたを知りたい。理解したいと思う。あなたが良ければ、だが」

精霊「……私のことなんて、そんなに面白くないと思うわよ」

特部隊長「それでも構わない」

精霊「……………」

特部隊長「……では、行ってくる」

特部隊長「後は任せて休んでいてくれ。頼むから、大人しくしていてくれよ?」

ガシュッ…ガシュッ…ダッ…

精霊「ふふっ…まったく本当に…本当に馬鹿な人……でも、そう悪くないわね」

精霊「……死ぬなと、そう言ってくれたのは…ほんの少し…嬉しかったわ……」

ガシュッ…

精霊「………………」

『精霊を発見、これより治療を…治、療…を……』

サァァァァァ……

精霊「………………」

『……精霊…私は、大尉に何と報告すればよいのですか…』
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/08(水) 00:14:45.99 ID:ZMOITYU0O
ここまで寝ます
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/08(水) 07:32:31.73 ID:gAlZzJqGO
精霊あっさり死んだなぁ
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 00:13:03.82 ID:4rgWuNMGO

>>>>>>

戦士「勇者よ、お前も気付いているのだろう?」

勇者「…………」

戦士「この戦いの果てに得られるものなど何もない。待っているのは既に決定された結末」

戦士「全ては触れられざる運命に仕組まれたもの。それを理解した上で戦うのか」

勇者「ああ、それでも戦う」

勇者「俺は復讐を果たし、運命を変える。俺が終わるのは、その後だ」

勇者「貴様になど終わらせはしない。終わりの夜になどさせはしない」
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 00:14:02.43 ID:4rgWuNMGO

戦士「フヌ、ヌフフッ……」

戦士「そうか、そうであった。お前はそうでなくてはならぬ存在だ」

戦士「そうあるべく生まれ、そうなるべく生きた存在。この夜の為に生まれた命」

勇者「貴様がどう言おうと、これは俺の命、俺の身体だ。俺の行く先は、俺自身が決める」

勇者「俺が歩いてきた道は俺が決めてきた。どんな要因があろうと、決断したのは俺だ」

戦士「ヌハッ!ヌハハハハッ!!」

戦士「定められた道を歩くだけの人形が!!繰り糸が見えぬだけのヒトカタが言いよるわ!!」

勇者「俺がそうであるとなら貴様も同じだ。運命の束縛から逃れようと藻掻く人形にすぎない」

勇者「そうではないと否定する為、自己を肯定する為、貴様は世界の破壊を選択した」
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 00:15:37.23 ID:4rgWuNMGO

戦士「……………」

勇者「俺は、貴様とは違う」

勇者「俺は運命を変えられると信じている。一人では不可能だろうが、友がいれば変えられる」

戦士「ならば、変えてみせるがいい」メギッ

ズオォォォォォッッ…

魔狼「ハッ…ハッ…ハアァァァァァ……」

勇者「(巨体の黒き獣。身体を埋め尽くす幾千の赤い眼。これが、母さんの言っていたーー)」

魔狼「我は、此処に示す」

魔狼「決して変えられぬ結末が、あることを…」

勇者「……貴様は、何だ」

魔狼「ヌハッ…懐かしいやり取りだ」

魔狼「我等と我等は、救われぬ、奪われぬ、潰えぬ、何者も抗えぬ事柄」

魔狼「我と我等は望みを絶つ存在。望みを絶つことを胸に抱き、滅び去った者」

魔狼「我と我等は、闇に沈んだ古き者共より産まれ出た。故に、示さねばならぬ」

魔狼「希望と別たれ、在るべき姿を得た比類無き絶望として、世に示さねばならぬ」
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 00:17:07.63 ID:4rgWuNMGO

勇者「何を示す」

魔狼「現世に遍く全てのものを喰らい尽くし、輪廻を絶つ。終末だ」

勇者「今の貴様にそんな力はない。俺を、希望を喰わなければ『元には』戻れない」

魔狼「ヌフッ…ああ、ああ、それは重々承知しておるとも。我と我等には成し得ぬことだ」

魔狼「だがな、希望と一つにならずとも術はある。我と我等には、その術があるのだ」

魔狼「全てを破壊することは叶わぬが、世界を原初に…在るべき姿に戻すことは出来る」

魔狼「天があり、地があり、海がある。希望よ、不思議に思うたことはないか?」
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 00:25:59.53 ID:4rgWuNMGO

勇者「迂遠な会話は不要だ。何が言いたい」

魔狼「お前の知っている翠緑の王。あれは魔が産まれ出る以前からある原初の王、旧き神」

魔狼「言わば大地そのもの。ならば、起源を同じくする海の神もいるだろう」

勇者「それが事実だとして、何の関係がある」

魔狼「我と我等は、破壊だけを目的としてオークを放ったわけではない」

魔狼「お前と一つにならずとも、既定、因果から外れる方法はあるのだ……」

勇者「一体何を言っーー」

ゴゴッ…ゴゴゴゴッッ……

勇者「この揺れは……」

魔狼「ヌフッ…聞け、これこそが旧き神の目覚めよ」

魔狼「オークを放ったのは、世界各地に点在する楔を破壊させ、彼の者を目覚めさせる為だ」
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 00:35:23.18 ID:4rgWuNMGO

魔狼「これが我と我等の導き出した答え」

魔狼「お主が我と我等の要求を拒むことなど初めから分かっておったわ。全てはこの為よ」

魔狼「全てとまではいかぬだろうが、より多くが死に、より多くが滅ぶのであらばそれでよい」

魔狼「絶望と希望が一つで在ったのに対し、この大陸は元々別たれていた」

魔狼「楔が消えた今、世界は多大なる犠牲を伴いながら在るべき姿に戻るであろう」

魔狼「ヌフッ…これより、大地は裂ける」

勇者「…………」ヂャキッ

魔狼「無駄じゃ無駄じゃ、我と我等を倒したとて止まることではない」

魔狼「ヌフッ…我と我等は、彼の者を目覚めさせただけにすぎぬのだからな」

魔狼「ヌフッ…大人しく一つになっておれば、このようなことにならなかったものを…ヌハハハッッ!!」
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 01:06:34.97 ID:4rgWuNMGO

魔狼「一つになっておれば、世界は楽に逝けた。これはお主の所為じゃ、違うか?」

魔狼「母と思い人の死も!この夜の悲劇も!!全てはお主が引き起こしたのだ!!」

勇者「……………」ギリッ

魔狼「ヌフッ!ヌハハハッッッッ!!」

魔狼「ヌフッ…さあ、我と我等、魔と絶望の呼び声に応え、今こそ目を覚ますのだ」

魔狼「在るべき大地を在るべき場所へと運び、太古、原初の姿へ回帰せよ」

魔狼「歪な世界を在るべき姿へ。さあ、目覚めよ。海を統べる旧き神、深縹の王よ」

盗賊「ごちゃごちゃうるせぇんだよ」タッ

魔狼「ッッ!!?」

盗賊「気分良く語ってるとこ悪りぃけど嫁を返して貰うぜ」

ぞぶっ…ゴシャッッ!!

盗賊「(鬼王、遅くなかって悪かったな。これで約束は果たしたぜ)」ザゥッ
510 :水雷魂 ◆k9WSufkcbI [sage]:2017/02/12(日) 01:10:01.91 ID:MnDqY4qa0
あ、すいません、PCのバグで変なとこにかきこんでしまいました
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