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勇者「救いたければ手を汚せ」
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511 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 01:17:12.10 ID:4rgWuNMGO
勇者「……盗賊」
盗賊「勇者、済まねえな。随分と遅くなっちまった」
勇者「そんなことはないよ。世界が裂ける前に、さっさと終わらせよう」
盗賊「ああ、そうだな。こんな酷え夜は、さっさと終わらせちまおうぜ」ニコッ
勇者「(盗賊、いつも通りでいてくれてありがとう。やっぱり君は凄いよ)」
盗賊「(勇者の奴、中身はあんま変わってねえんだな。なんにせよ、こっからだな……)」
魔狼「ヌフッ…まあよい、まあよい。事は成った。我と我等が捻曲げてみせたのだ」
盗賊「満足してんじゃねえよハゲ」
魔狼「ヌフッ…勇者よ、魔王よ、我は世に示したぞ。お主等は世に何を示す」ズンッ
勇者「希望。お前の居ない世界だ」ヂャキッ
盗賊「自由。てめえの居ねえ世界だ」ヂャキッ
512 :
◆4RMqv2eks3Tg
:2017/02/12(日) 01:19:23.39 ID:rxNf4DDrO
短いけどここまで
513 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/02/12(日) 01:50:36.89 ID:KpSV1Y+gO
魔狼「一つになっておれば、世界は楽に逝けた。これはお主の所為じゃ、違うか?」
魔狼「母の死!思い人の死!この夜の悲劇!!全てはお主が引き起こしたのだ!!」
勇者「……………」ギリッ
魔狼「ヌフッ!ヌハハハッッッッ!!」
魔狼「ヌフッ…さあ、我と我等、魔の呼び声に応え、今こそ目を覚ますのだ」
魔狼「在るべき大地を在るべき場所へと運び、太古、原初の姿へ回帰せよ」
魔狼「歪な世界を在るべき姿へ。さあ、目覚めよ。海を統べる旧き神、深縹の王よ」
盗賊「ごちゃごちゃうるせぇんだよ」タッ
魔狼「ッッ!!?」
盗賊「気分良く語ってるとこ悪りぃけど、嫁を返して貰うぜ」
ぞぶっ…ゴシャッッ!!
盗賊「(鬼王、遅くなって悪かったな。これで約束は果たしたぜ)」ザゥッ
514 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/02/12(日) 01:53:27.66 ID:KpSV1Y+gO
勇者「……盗賊」
盗賊「勇者、済まねえな。随分と遅くなっちまった」
勇者「そんなことはないよ。世界が裂ける前に、さっさと終わらせよう」
盗賊「ああ、そうだな。こんな酷え夜は、さっさと終わらせちまおうぜ」ニコッ
勇者「(盗賊、いつも通りでいてくれてありがとう。やっぱり、君は凄いよ)」
盗賊「(勇者の奴、中身はあんま変わってねえんだな。なんにせよ、こっからだ……)」
魔狼「ヌフッ…まあよい、まあよい。事は成った。我と我等が捻曲げてみせたのだ」
盗賊「満足してんじゃねえよハゲ」
魔狼「ヌフッ…勇者よ、魔王よ、我は世に示したぞ。お主等は世に何を示す」ズンッ
勇者「希望。お前の居ない世界だ」ヂャキッ
盗賊「自由。てめえの居ねえ世界だ」ヂャキッ
515 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/02/12(日) 01:55:07.57 ID:KpSV1Y+gO
>>509
と
>>511
はミス
誤字脱字申し訳ない寝ます
516 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/12(日) 05:20:31.81 ID:mjJIppvDO
乙
誤字脱字はネットの世の常よ
517 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/13(月) 21:22:34.49 ID:ITiMDueNO
>>>>>>
西部大峡谷
魔狼『ヌフッ!ヌハハハッッッッ!!』
魔狼『ヌフッ…さあ、我と我等、魔の呼び声に応え、今こそ目を覚ますのだ』
魔狼『在るべき大地を在るべき場所へと運び、太古、原初の姿へ回帰せよ』
魔狼『歪な世界を在るべき姿へ。さあ、目覚めよ。海を統べる旧き神、深縹の王よ』
翠緑王「(神に縋るか……)」
翠緑王「(絶望の獣よ、お主は自己が抱える矛盾に気付いておるのか)」
翠緑王「(運命からの解放を『求めている』ことに気付いておるのか)」
翠緑王「(お主は今、己が『望み』を叶えるべく神に縋っておるのだ。それにさえ気付かぬか)」
翠緑王「(望みなくして生きられはせん。望みを絶たれた者に、あのような真似は出来ん)」
翠緑王「(そもそも、絶望が形を得て存在していること自体おかしな話)」
翠緑王「(これは絶望による存在証明。生きた証……)」
翠緑王「(足掻き、藻掻き、模索し、遂には神にさえ縋り付くか。何とも、皮肉な話じゃ……)」
518 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/13(月) 21:27:36.60 ID:ITiMDueNO
翠緑王「(しかし、何故じゃ……)
翠緑王「(彼奴、絶望は、如何にして楔の存在を知り得た。あれは儂とーー)」
ゴゴッ…ゴゴゴゴッッ…
翠緑王「(これは、怒り…ではない。困惑か、混乱か……)」
翠緑王「(深縹の王よ、まさか目覚めの日が来ようとは夢にも思うとらんかったじゃろう)」
翠緑王「(儂もじゃよ。儂も、お主が目を覚ます時が来ようとは思うとらんかった……)」
ズシッッ!! ゴゴゴゴッッ!!!
翠緑王「(考えとる時間も懐かしむ時間もなさそうじゃな)」
翠緑王「……皆、よく聞いておくれ」
翠緑王「今、地に立つ全てが危機に瀕しておる。これは最早、人や魔だけの問題ではない」
翠緑王「魔にも人にも、木々や草花にも支えが必要じゃ。勿論、儂等にも……」
翠緑王「根付くにも芽吹くにも、座すにも立つにも、大地なくして有り得ない」
519 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/13(月) 21:29:40.92 ID:ITiMDueNO
翠緑王「皆が魔に何を思うとるのか」
翠緑王「皆が人に何を思うとるのか。それはよう分かる」
翠緑王「千年に渡り、果てのない戦を続けた魔神族に失望した者もいるじゃろう」
翠緑王「後の千年に渡り、偽りの歴史を生きた人間に失望した者もいるじゃろう」
翠緑王「だが、己を守るには、存続させるには、時に不要なものさえ背負わねばならん」
魔狼『ヌフッ…勇者よ、魔王よ、我は示した。世に示したぞ。お主等は、世に何を示す』
勇者『希望。お前の居ない世界だ』
盗賊『自由。てめえの居ねえ世界だ』
520 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/13(月) 21:32:03.31 ID:ITiMDueNO
翠緑王「見なさい」
翠緑王「長い時を経て、こうして『目覚めた者』が現れた。新たな世代、真実を知る者達じゃ」
翠緑王「あの二人…いや、三人か……」
翠緑王「あの者達は運命に抗う力と、世界を変える可能性を秘めておる」
翠緑王「『今後も』あの者達に惹かれ、新たに目覚める者が続々と現れるじゃろう」
翠緑王「失望するには、まだ早い」
翠緑王「この滅びは何としても防がねばならん。これは、儂等にしか出来んことじゃからの……」
翠緑王「……この大峡谷に身を寄せ合うのも、今日が最後。皆、頼むぞ」ザッ
『……長よ、我々はーー』
翠緑王「案ずるな、儂等は一つじゃよ」
翠緑王「大地が裂け、大波に曝されようと、必ずや種は芽吹き、気高き花を咲かす」
ミシッ…ズズンッッッ!!
翠緑王「もう少し話したかったが、残された時間はないようじゃ」
翠緑王「儂はこれより大地に根を張り国を繋ぐ。皆、達者でな……」
521 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/14(火) 01:37:12.66 ID:4c8F4gQDO
>>>>>>>
南部上空
魔女「あれは…木の、根?」
魔導師「何とも凄まじい光景だ。あれが旧き神、自然そのものを司る原初の力か……」
魔導師「水の流動する力。地、木々の繋ぐ力」
魔導師「幾本もの巨木、その根が、引き裂かれる大地を懸命に繋ぎ止めようとしている」
魔女「でも、少しずつ引き裂かれて……先生、このままじゃ本当に世界が滅茶苦茶に……」
魔導師「魔女よ、気持ちは分かるが我々には何も出来ん。我々の力など通用しないだろう……」
魔導師「『あれ』は人間…いや、如何に優れた魔術師だろうと立ち入れる領域ではない」
魔女「……北部は、仲間達は無事でしょうか」
魔導師「何とも言えん。この有り様だ…無事であることを願う他ない……」
522 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/14(火) 01:37:55.30 ID:4c8F4gQDO
魔狼『さあ、来るがいい』
勇者『…………』ザッ
盗賊『勇者』
勇者『?』
盗賊『いや、何でもねえ。終わったら話す』
勇者『分かった(終わったら、か……)』
盗賊『(勇者は腹を括ってる。どうする?どうやって繋ぎ止めりゃいい?)』
盗賊『(死んで欲しくねえ。俺に何が出来る? くそっ、分かんねえ……)』
魔女「(盗賊……)」
魔導師「そろそろ頃合か……」
魔導師「旧き神の力が渦巻く今ならば、奴に気取られることなく近付けるだろう」
魔導師「魔女よ、灯す火は百や二百ではない。今の内に力を練っておけ」
523 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/14(火) 01:40:02.50 ID:4c8F4gQDO
魔女「…………」ギュッ
魔導師「不安か?」
魔女「……想定していないことが立て続けに起きて、次に何が起きるか全く予想出来ないんです」
魔女「厳しい戦いになるとは思ってましたけど、まさか『こんなこと』が起きるなんて……」
魔女「……きっと、盗賊もそんな感じなんだと思います。この戦いの先が全く想像出来ない」
魔導師「それは私もだ」
魔女「えっ…」
魔導師「私にも、こんな経験はない。この混沌とした状況下では予想予測など役に立たん」
魔導師「だが、先を見据えるのなら今を乗り越えるしかない。この先へ進むには、それしかないのだ」
魔女「……私、やります。私がやれることをやります。だから、見ていて下さい」
魔導師「ああ、勿論だ。全て見届ける。さあ、準備が整ったのなら行くぞ」
魔女「はい」
魔女「(先は見えないけど、どうなるかなんて分からないけど、やれることを全部やろう)」
魔女「(王女様だって聖女さんだって、私なら何とか出来るかもしれないんだ)」ギュッ
524 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/14(火) 01:45:42.94 ID:4c8F4gQDO
ここまで
525 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/14(火) 01:55:06.16 ID:dHOnEz9DO
乙
526 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 00:16:20.47 ID:1uW2r996O
>>>>>>>
魔狼「まだ、まだ淡い」ズッ
ズシンッッッ!! ミシッ…ビキビキッッ……
勇者「(一撃で地面が捲れ上がった。地割れによって大地が不安定になっているのか)」
勇者「(大師匠様が繋ぎ止めているようだけど、大地裂き溢れ出る水の力の方が強い)」
勇者「(このままだと平原どころか立っていられる場所さえ無くなーーー)」ズギッ
盗賊「勇者、脚から落とすぞ。勇者?」
勇者「(そうだ、俺は勇者だ。俺は俺だ、誰かに渡して堪るか)」ガクンッ
盗賊「勇者!!」ダッ
ガシッ…
勇者「……盗賊、ありがとう。助かった」
盗賊「(っ、酷え汗だ。痩せこけて見える。何だ、勇者に何が起きてやがる)」
勇者「もう大丈夫だ。盗賊、奴は俺が引き付ける。その先は頼む」ザッ
527 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 00:17:59.27 ID:1uW2r996O
盗賊「勇者、お前ーーー」
魔狼「フヌ、まだ耐えるか」
魔狼「だが、まだ増すぞ。より色濃く、より鮮明に蝕む。さて、どれだけ保つか……ヌフッ…」
勇者「…ッ…ぐっ…あああッッッ!!!」ダッ
魔狼「ヌハッ!向かって来るか!面白い!!!」ダンッ
ドギャッッ!!!
勇者「ぐッッ…」
魔狼「どうした、何をしておる? 爪を受け止めるだけで手一杯か?」
勇者「ッ、おおおおおッッ!!」ググッ
ギッ…ギジジ…バギンッッ!!!
魔狼「ヌフッ、流石は希望。意志で押し切り力で斬り折ったか。面白い……」
528 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 00:20:02.66 ID:1uW2r996O
勇者「盗賊!!!」
盗賊「大河の如く現れ出でよ、樽ごと呑み込め大蛇姫」
どずんッ!!! ぐわっ……
魔狼「何が出るかと思えば、図体だけの使い魔か。失せろ、戦の邪魔をするな」
ザギャッッ!!!
盗賊「(野郎、一撃で切り刻みやがった)」
盗賊「(蛇姫の力が弱いんじゃねえ、俺が扱い慣れてねえからだ)」
魔狼「どうした魔王、それで終いか?」
盗賊「今はこんだけ出来りゃあ上等さ。それより、やっと目が合ったな」
魔王「何?」
盗賊「本能的なのかどうか分かんねえが、てめえは勇者ばっか見てた。俺を見ようともしなかった」
529 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 00:21:52.27 ID:1uW2r996O
盗賊「俺に興味がない、わけがねえよな」
盗賊「てめえの内側には魔王を好いてた奴等が山程いるんだ。あれか?俺の見るのが怖いのか?」
盗賊「それとも、俺に前の王サマを重ねて恋しくなるのを避けてんのか?」
魔狼「戯れるな」
盗賊「まあ、そう言うなよ」
盗賊「こんな台詞は野郎相手に言いたくねえが、もう少し見つめ合おうぜ?」
盗賊「互いに一目惚れした、雷に打たれた男と女みてえによ」
魔狼「瞳じゅーー」
盗賊「てめえは勇者にしか倒せねえ。なら、俺が『倒せる間』を作るだけだ」
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 00:32:24.83 ID:1uW2r996O
魔狼「ぬっ、ぐッッ……」ギギッ
ザグッッッ!!! ブシュッ…
魔狼「ぐぬッッ…」ガグンッ
勇者「目が覚めるような痛みだろう。頭蓋を砕かれ、脳髄を刺し貫かれるのは」
魔狼「ヌフッ…ああ、確かに痛む。焼かれるようだ。だがな、この程度で終わりはしない」
勇者「いや、もう終わりだ」
勇者「全てはこの時の為、彼女が此処へ来るまでの繋ぎに過ぎない」
魔狼「(この感覚は……魔女か!!?)」バッ
魔女「彼等に、新たなる火を……」スッ
ドッッッ…ゴゥッッッッ!!
魔狼「炎の粒、火種……そうか、この炎はーー」
魔女「闇に囚われ、闇を産んだ者達よ、目の前にある光を見よ。新たな光、新たな王を見よ」
魔女「千年の間に流し続けた涙を止め、悲しみから解き放たれた眼で彼の者を見よ」
531 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 00:38:34.48 ID:1uW2r996O
魔狼「(我が内にある魔核に炎を灯すか……)」
魔狼「(成る程、全ては勇者の描いた通りというわけか。だが、『これ』だけは離さん)」
魔女「……背負った悲しみの重さ、その痛みは私には分からない」
魔女「前を向けなんて言わない。無かったことにしろなんて言わない」
魔女「ただ、過去じゃなくて今を見て……」
魔女「私にその傷は癒やせないかもしれない。だけど、変わることは出来る。きっと変えられる」
魔狼「(……そうか、まあよい)」
魔狼「(そうであるなら、我の中から去れ。今に行きたければ行くがいい)」
魔狼「(だが、覚悟しろ)」
魔狼「(今更希望を灯すなど許さん。我を産み出しながら希望を灯すなど……)」
魔狼「(絶望は、絶望を全うする)」ズズッ
532 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 00:46:08.69 ID:1uW2r996O
盗賊「おっ、出やがった」
『あれが、新たな王。姿形は違うが、確かに似ている』
『転生。本当にそんなことが……』
『思えば、決して諦めぬ御方だった。やはり、王は諦めてはいなかったのだ』
『そうであったな。諦めていたのは我等の方だったと言うわけか……』
『こんな時が来ようとは未だ信じられぬ。あれは誠に王か?夢か?幻か?』
魔女「盗賊、抜け出た魔核は頼んだよ」
盗賊「……いや、なんか多くねえ?」
魔女「……まあ、うん。確かに予想より多いけども……」
盗賊「だろ? あれは流石にキツいって」
魔女「承知の上だったんでしょ……ていうか身体まで復活するとマズいから早くしてよ」
533 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 00:48:53.76 ID:1uW2r996O
盗賊「何もせず逃がすっていう手もーー」
魔女「ないから!さっさとやれバカ!!」
勇者「(全く、こんな時なのにまたやってるよ……でも、ちょっと安心した)」
勇者「(魔女の内側から魔導師さんを感じる。あれなら、きっと魔女も大丈夫だ……)」
盗賊「……さて、やるか」
『王であるなら、力を示せ』
『王であるなら、我等を喰らえ。喰らい、示せ』
『それがよい。力無き者であるなら、内から食い破ってくれる』
『我等は従うのではない。我等は共にあった。王と共にいたのだ』
『偽りなき王であるならーー』
盗賊「いいから来いよ」
盗賊「お前らの一切合切、絶望の千年は俺が引き受けてやる。だから、来い」
534 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 02:47:30.62 ID:Vvfk6fYNO
『うむ、勇ましい。が、これからだ』
『宿せるか否か』
『王は求めた。生まれついての空白。それ故に更なる力を求めた』
『奪うとは、自己の存在証明。自らを有とすべく、王は欲したのだ』
『王の転生が運命ではなく、王の意志による力ならば或いは……』
『行かなければ始まらぬ。行かなければ見えぬ。あの小娘の言葉が誠ならば、見えるはず』
ズォォォォォ…ズズズ…
魔女「(……凄い)」
魔女「(数多の魔核が次々と盗賊に向かって奔っていく。まるで、巨大な魔力の渦……!!?)」
535 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 02:49:46.59 ID:Vvfk6fYNO
戦士「……我は、化身」
戦士「あの冬の夜に希望と別たれ、この身体を得た時から絶望は形を成した」
戦士「汝、我となりて希望を喰らうのだ。そう、喰い尽くす為に、喰らい尽くす為に」
魔女「(なんて、禍々しい……)」
魔女「(むせ返る程の憎悪に満ちている。あれが、戦士さんの肉体を依り代に顕現した姿……)」
勇者「魔女、盗賊を頼む」ザッ
魔女「うん、分かった。だけど、あの人はーー」
勇者「君が火を灯してくれた」
勇者「残すは奴だけだ。あれさえ消し去れば、この夜は明ける」
勇者「あれは俺がやる。俺にしかやれない。大丈夫、すぐに終わらせる」
536 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 02:51:25.58 ID:Vvfk6fYNO
魔女「待って」
勇者「ん?」
魔女「聖女さんと王女様のこと……私なら、何とか出来るかもしれない」
勇者「……そっか。でも、もしそれが可能だとしても王女様だけでいい」
魔女「………えっ?」
勇者「こんなこと勝手に決めたくないけど、母さんは戻らない方が幸せだと思う」
勇者「……いや、幸せとか不幸とかじゃない。きっと、母さんは『それを』望まない」
勇者「例え君が母さんを呼び戻してくれても、僕の家族は元には戻れないから……」
537 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 03:05:14.00 ID:Vvfk6fYNO
魔女「………」ギュッ
勇者「ッ、ごめん。君を責めてるわけじゃないんだ。嬉しいんだけど、無理なんだよ……」
勇者「絶望の化身となった父さんは、もう戻ることはない。父さんは、もういないから……」
勇者「……父さんが自分を捧げた時、共に未来を生きることすら奪われた」
勇者「だから、もういい。疲れているだろうから、ゆっくり眠らせてあげたいんだ」
……ザゥッ…
戦士「希望よ、最期だ。遂に、時が来た」
勇者「出来ることなら、父さんと一緒に眠らせてあげたい」ヂャキッ
魔女「……っ、そっか。うん、分かったよ」
勇者「……ありがとう。じゃあ、行ってくるよ」
魔女「(勇者の背中が遠離る。何か言わなきゃ、何か言わなきゃダメなのに……)」
魔女「(あの背中には何も言えない。きっと、何を言っても……)」
王女『貴方は勇者と共に戦える。正直なところ、わたくしは嫉妬しています』
王女『魔女さんが苦悩していることは存じていますが、それでも羨ましいのです』
王女『共に戦い、互いに支え合う……それは、わたくしには出来ないことですから』
王女『……わたくしにはどうやっても出来ないことも、貴方になら出来る』
魔女「(無理だよ王女様。私じゃダメなんだ。私の声は、勇者に届かない……)」
538 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2017/02/19(日) 03:12:11.61 ID:Vvfk6fYNO
次くらいで終わると思います
また明日
539 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 16:04:37.34 ID:I+YIA33OO
魔女「(……私は、どうしたら)」
魔導師「魔女、気をしっかり持て」
魔導師「考えるなとは言わん。あの背を追いたい気持ちは痛いほど分かる」
魔導師「お前は自分と王女を比較しているようだが、『どちらだろうと』無理だ」
魔女「えっ…それはどういう……」
魔導師「此処に立っているのがお前ではなく王女だとしても、勇者を繋ぎ止めることは叶わんだろう」
魔導師「あれは決意の背」
魔導師「有無を言わさぬ、如何なる介入も許さぬ、そんな意志を宿した背だ」
魔女「…………」ギュッ
魔導師「……信じること、想うこと、願うこと。待つ者には、それしかない」
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 16:05:53.76 ID:I+YIA33OO
魔女「信じる……」
魔導師「魔女よ、悲観するな」
魔導師「必ず帰ってくるものと信じ、やるべきをやれ」
魔導師「お前は魔王を任された」
魔導師「あの者は勇者にとって無二の友。そして、お前にとっての友でもある。そうであろう?」
魔女「友だち……!!?」ゾクッ
ゾゾゾゾゾ…ズォォォォォ…
魔女「何…あれ…あれが魔力だっていうの?」
魔女「魔の…渦…濁流…あんなの、受け入れられるわけが……ッ、盗賊!!!」タッ
541 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 16:09:38.44 ID:I+YIA33OO
盗賊「(意識、記憶が流れ込んできやがる)」
盗賊「(戦、戦、戦、血の流れ、赤い川、屍の上の屍……これが、魔神族の歩みってわけか)」
盗賊「(何処だ。俺は何処に立ってる? 彼処にいるのは王と救世主…か…?)」
『終わりだ、魔王』
『無垢な面しやがって……』
『全く、何も知らないってのは罪だな。いや、疑う心すら与えられなかったか』
『なら、俺がくれてやる』
『お前に心を与え…お前の罪を教えてやる。俺がお前を、人にしてやる』
盗賊「(ッ、なんだ…頭が痛え。今のは、王の思念……!?)」
盗賊「(くそっ、凄え数だ。渦に呑まれる。あの野郎、こんだけ溜め込んでたのかよ……)」
542 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 16:12:39.19 ID:I+YIA33OO
魔女「盗賊!!!」
盗賊「(……声……誰だ? 俺は…何処だ?)」
ゾゾゾゾゾッッ…ズォォォォォ!!!
魔女「ッ、渦に遮られて届かない」
魔女「(あの渦をどうにかしないと盗賊に近付くことも出来ない……)」
魔女「(でも、あんな激流をどうやって突破すればいい?)」
魔女「(魔神族、混じり気のない純粋魔力。なら元素で中和…いや、無理だ……)」
魔女「(膨大な純粋魔力に匹敵する元素なんて使えない。あれはもう、魔力と言えるかどうかも分からない……)」
魔女「(あんなのに身を任せてたら、あれに耐えきれなかったら盗賊は……)」
『世界の危機だとか、滅びだとか言われてもピンとこねえけどよ……』
『世話になった奴とか、一緒に戦った奴とかが死ぬのは嫌だろ?』
『他の奴等がどうなろうが知ったこっちゃねえけどさ、それだけは嫌なんだよ……』
543 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 16:15:27.85 ID:I+YIA33OO
魔女「……私だって、そんなの嫌だよ」
『俺の大事な奴、勇者の大事な奴、お前の大事な奴、隊長の大事な奴……』
『巫女や鬼姫、こっち側の奴等…地下街に住む奴等の大事な奴とかさ……』
『そういうもんを繋げて拡げてったのが、世界ってやつなんだろ?』
魔女「……私の世界には、あんたが…」
魔導師「魔女?」
魔女「……先生、補助お願いします」
魔導師「……飛び込む気か」
魔女「はい。それしか、方法はないですから」
魔女「あの渦は一つであって一つじゃない。膨大な数の魔が生み出したもの……」
魔女「私には、あの渦の流れを読む力はありません。でも、先生になら出来る」
544 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 16:16:38.46 ID:I+YIA33OO
魔女「私と先生の魂は繋がってる」
魔女「先生が炎の主導権を握って、盗賊の場所を私に示して下さい」
魔女「そうなれば、後は渦の中を走るだけ。必ずや辿り着いてみせます」
魔導師「……危険は承知の上か。分かった、私が流れを読む。お前は指示に従え」
魔女「はい」
魔導師「いいか、決して気を緩めるな。あの渦、思念に取り込まれれば終わりだ」
魔導師「お前がそうなれば、私も渦に呑み込まれる。どう足掻こうと戻ることは出来んだろう」
545 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 16:18:36.86 ID:I+YIA33OO
魔女「……分かっています」
魔導師「それと、もう一つ」
魔導師「以前の王は多数の魔を宿していたようだが、一度に全てを宿したわけではない」
魔導師「戦い、奪い、喰らう。一つ一つ、その身に宿していったのだ。それを続けた結果が……」
ゾゾゾゾゾッッ…ズォォォォッッ…
魔導師「……お前の言う通り、これは一つであって一つではない。魔が群れ集った『何か』だ」
魔導師「もう少し穏便に済むかと思ったが、どうやら魔神族の本質を侮っていたようだ……」
魔導師「正直に言うが、これは一度で宿せるものではない。最悪の場合、魔王はーー」
魔女「消えませんよ」
魔女「盗賊は、こんなことで世界から消えるような奴じゃない」
546 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 16:21:38.51 ID:I+YIA33OO
魔導師「……魔女」
魔女「それに、『これは』私が呼び起こしたモノ。あいつに任せて見てるだけなんて嫌です」
魔女「先生、準備は出来ています。私はあいつを……友達を、助けたいんです」
魔導師「……ッ、来い」ザッ
魔女「(炎の主導権が先生に移った。今から、私が先生の炎……)」
魔導師「渦に僅かな裂け目を作る」
魔導師「迷わず飛び込め。躊躇えば掻き消える。見えた瞬間に跳ぶのだ」
魔女「はい、分かりました」
魔導師「案内は任せておけ。魔の流れも読み切ってみせよう」
魔導師「但し、私が出来るのはそれだけだ。渦の中で気を保ち、走り、維持するのはお前だ」
魔導師「私の役目は導いてやること。お前の役目は、連れ帰ってくることだ。よいな?」
547 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 16:28:00.07 ID:I+YIA33OO
魔女「必ず帰ってきます。友達を連れて、必ず」
魔導師「……うむ、ならばよい。では、道を開くぞ」スッ
ゴゥッッッッッ!!! ビシッ…
魔女「……見えた」タンッ
ゴゥッ…ズズ…オォォォォォッッ……
魔導師「……出逢いは変化の兆し、一人の男への想いが憎しみを拭い去り、女は過去を乗り越えた」
魔導師「戦の果てに友を得て、友に支えられ、今や魔術師達の標となりつつある」
魔導師「……我が弟子が、魔術の導き手となるか。何とも、不思議なものだ…」
ゴゴッッ…オォォォォォォ……
魔導師「……咎人と忌み嫌っていた盗賊も、今では魔女の世界に欠かせぬ存在となった」
魔導師「魔女よ、お前が自分自身が得たもの……それは、私では与えられなかったものだ」
魔導師「……盗賊よ、許されぬ咎人であり王である者よ、死んでくれるなよ」
魔導師「己の為、勇者の為、世界の為、そして何より、私の娘の為に……」
548 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 22:32:30.05 ID:ESmxwZ9aO
魔女「これは…」フワッ
ゴゴゴッッ…ズォォォォォ……
魔女「思念、歴史が渦を巻いて…あれは……」
『人間が何の役に立つ。精々が家畜、でなければ奴隷にすべきだ』
『俺は守ると決めた。そうしたいのなら俺と戦え。俺に勝ったら自由にしろ』
『てめえのような、甘ったれにやられるなんて…畜生…人間なんぞに守る価値など…』
『お前の言う通り人間は弱い。弱く、儚く、それでいて温かい種族だ』
『俺は、その温もりに救われた。弱者だと蔑んできた人間に……』
『その心変わり、甘さが、いずれ仇となる…』
『……それでも構わない。もう決めたことだ』
549 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 22:35:17.45 ID:ESmxwZ9aO
『ありがとうございます』
『礼など要らん。俺がそうしたかっただけだ』
『私もそうしたいからお礼を言っただけです。本当にありがとうございます』
魔女「……疑ってたわけじゃないけど、人と魔は本当に共存してたんだ」
魔女「あっちは戦か、こっちも戦か。さっきの魔神族みたいに、争わずにいられたら……」
ボゥッ…
魔女「先生の炎…っ、そうだ、見入ってる場合じゃない。早く盗賊の所に行かなきゃ」
ユラユラ…スーッ…
魔女「炎は下に向かってる。盗賊は下か、暗いな。それに嫌な気配がする」
魔女「渦巻く思念の質も段々重苦しくなってるし。持って行かれないように気を付けないと……」フワッ
550 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 22:37:00.29 ID:ESmxwZ9aO
盗賊「(……此処は、城?)」
盗賊「(ああ、そうだ。此処は俺の城、これは俺の玉座。魔神族は統一、残るは……)」
盗賊「(そう、残るは奴だけ……いや、奴って誰だよ? 俺は何を言ってんだ?)」
『考え直してはくれないのか』
『俺はお前の駒じゃない。俺は俺の意志で魔神族を統一した』
『それは違うよ。運命がそうさせた。そうなるように定められていたんだ』
『それは既に聞いた』
『俺の歩いた道も、全ては運命に従った結果、因と果の結び……』
『俺はその為に生まれ、その為に与えられた力で魔神族を統一した。だったな』
551 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 22:38:14.50 ID:ESmxwZ9aO
『そうだ。その通りだ』
『そこまで分かっているなら、何故分かってくれないんだ?』
『君はこの手を離れ、定められていた場所より更に高い場所へと登り詰めた。それも自力でだ』
『君なら此方側に来ても問題ない。さあ、道を歩む側から、道を創る側へ来るんだ』
『殻を破れ、偽りで築き上げたものなど捨てて共にーー』
『断る。創るだの創られるだの、そんなのはもう御免なんだよ』
『以前も言ったはずだ。必ずや喉笛に噛みつき、運命を噛み千切ってやるとな』
552 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 22:38:49.26 ID:ESmxwZ9aO
『……以前も言ったはずだ』
『そうあるべく創造された者が、そうあるべく創造した者に挑むなど不可能だと』
『ならば、俺はそうあるべく創造されたんだろうよ。運命に牙を剥き、運命に楯突く為にな』
『減らず口を…これは君の為に書き上げた物語だ。しかし、君がそうなら仕方ない』
『面倒だが、新たな物語を描かなければならない。夢を、希望を見せなければならない……』
『勇者…いや、此処では魔王か。君の物語は、跡形もなく消え失せる』
盗賊「(やってみるがいい。てめえは俺がぶちのめす。この手で、必ず……)」
553 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/19(日) 22:41:05.85 ID:ESmxwZ9aO
『憐れな。それが君の望んだ最期か』
『君は同胞を己の戦に巻き込み、運命に抗い、築き上げた全てを失った』
『そして遂に、君自身も消え失せる。大乱を制した勇敢なる英雄は、歴史に残ることはない』
『……構わない。綻びは作った』
『あの程度の綻びなど、取るに足らんよ』
『だろうな、今はほんの小さな綻びだ。だが、それが俺の意志を継ぐ鍵となる』
『何百年何千年掛かろうと俺は決して諦めない。必ず、自由を手にしてみせる』
『自由などまやかしだ。決して手の届かない、手にすることの出来ないものだ』
『それを希望という者もいる。手が届かないからこそ、誰もが求めてやまない』
『求めるのこと、それ自体が自由であり救いなんだよ。自由とは、その為にある幻にすぎない』
『貴様等からすれば、そうなのだろう。だが、今の俺は自由だ。支配も束縛もされない』
554 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 00:25:01.48 ID:4qTeTbufO
『死が解放? 笑わせてくれるな』
『今のうちに笑っていろ。俺は必ず甦る。俺の意志で甦り、世に自由を与える』
『誰の為でもなく、俺自身の為でもなく、真の自由の為に、俺は戦い続ける』
『そんな予定はないが期待しておこう』
『出来ることならーー』
盗賊「出来ることなら、奪うだけでなく与えたかった……この力では、真の自由は掴めない」
盗賊「奪うのではなく、与える力を…まやかしではない、本物の希望に……」
盗賊「俺の戦はまだ終わらない。必ずや鎖を断ち切り、紡がれた運命をーー」
『あのさ……あんた、さっきから何をブツブツ言ってんのさ』
555 :
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[saga]:2017/02/20(月) 00:27:00.62 ID:4qTeTbufO
盗賊「お前は…?…」
『さっき結婚したばっかりなのに嫁の顔を忘れるとか……まあ、仕方ないか』
『あんたは盗賊、私の旦那。ほら、手首の腕輪を見てみなよ』
盗賊「腕輪? 俺はこんなものをしていたか…俺は……」
『いつまでも呆けてんじゃないよ。友達を待たせてんでしょ?』
盗賊「……友…」
『そう、友達。勇者と魔女』
『あんた、隊長さんに言ってたじゃないか。勇者は親友だってさ』
556 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 00:27:59.90 ID:4qTeTbufO
盗賊「勇者…」
勇者『悩んでるなら悩んでるって正直に言ってくれ。僕が出来る範囲で手を貸す』
勇者『僕等は友達だ。僕の前で悪人の振りをする必要はない』
勇者『魔王になっても友達だよ。優しい王様になってくれるならね』
盗賊「ッ、そうか…そうだった。あいつは俺の…勇者は俺のーー」
『ちょっと…ねえ、聞いてんの?』
盗賊「あ、ああ…悪りぃな。お陰で目ぇ覚めた。危ねえとこだった」
557 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 00:29:50.46 ID:4qTeTbufO
魔女「はぁ?」
盗賊「……は? 何でお前がいんだ?娼婦は?」
魔女「えっ、娼婦さん? いや、知らんけど……ていうか大丈夫?」
盗賊「(さっきのは何だったんだ。確かに娼婦がいたはずだ。それにあの記憶……)」
魔女「おい」
盗賊「悪りぃ悪りぃ、ちょっと変なもんを見ちまってな」
魔女「……まあ、あちこちに思念が渦巻いてるし、霊体でも見えたんじゃないの?」
盗賊「……霊体…そうかもな。それより、どうやって来たんだ?」
魔女「先生に助けて貰ったんだ。それで何とかかんとか此処まで来られたんだけど……」
558 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 00:31:35.62 ID:4qTeTbufO
魔女「問題は……」
ゴゴゴッッ…オオォォォォォ…
盗賊「これをどうすっか、だよな……」
魔女「……まだ、行ける?」
盗賊「ああ。よく分かんねえけど、さっきより楽になった。今なら行ける」
盗賊「この渦の流れさえ読めりゃあ、何とか出来るかもしれねえ」
魔女「流れ…それなら……」スッ
ボゥッ…ユラユラ……
盗賊「これは?」
魔女「道標の炎。私が此処に来られたのも、先生の炎が流れを示してくれたからなんだ」
559 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 00:33:33.65 ID:4qTeTbufO
魔女「辿ってきた道は、この炎が記憶してるはず……」
ボゥッ…ボッ…ボッ…ボッ……
魔女「ほら、あれが炎が辿ってきた道。足跡みたいになってるでしょ?」
盗賊「ああ、これなら流れを掴めるな。うっし、やるか」
魔女「どうする気? やっといて何だけど、これ全部は流石に……」
盗賊「大丈夫だ。見た目は派手だし魔力も凄えが、流れが掴めりゃ大したことはねえ」
盗賊「魔核が魔力を放ってやがるんだ。なら、元ある魔核に魔力を詰め込めば何とかなる」スッ
ズズ…ズォォォォォ……
魔女「(凄い。吹き荒れる魔核に魔力を…)」
魔女「(流れが見えているにしても、これはかなり繊細な作業のはず。いつの間にこんな……)」
盗賊「後は引き寄せるだけだな」
魔女「引き寄せるって…あんなに暴れ回ってるのをどうやって……」
盗賊「まあ見てろって、何とかするからよ」
魔女「(何だろ、この感じ…盗賊の何かが変わった気がする。何かあったのかな……)」
盗賊「……絶世の鬼女、鬼妃よ。十二単の山の姫よ。微笑み引き寄せ生き血吸え」
560 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 01:08:15.65 ID:4qTeTbufO
>>>>>>>>
戦士「消えろ」ズッ
勇者「(鈍い、さっきとはまるで違う。これなら簡単に避けられる)」
戦士「何故逃げる。さあ、斬り合え」
勇者「(焦り、怒り。何より、自分から離れていった魔神族への憎悪を感じる)」
勇者「(この機を逃せば次はない。ここで決める。これで終わらせる)」ダッ
ザンッッッ!!
戦士「ぐぬっ…」
勇者「(ッ、浅い。身を捩ったか)」
勇者「(回復は早い、反撃する間を与えるな。可変一刀、二刀型)」ガヂッ
561 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 01:14:12.04 ID:4qTeTbufO
勇者「(絶やすな、緩めるな)」
ザシュッッ!!ザンッ…ドズッッ…ゴシャッ……
戦士「がっ…まだだ…希望は…喰……」ドサッ
勇者「(手応えはあった。刺し貫き叩き斬った。どうだ? まだなのか?)」
戦士「ぬぅぅ…」
勇者「(まだだ、まだ息はある。体勢が整ってない今ならーー)」
戦士「がッ…アアアアアアッ!!」ダンッ
勇者「(焦るな、大丈夫だ。勢いだけで荒い。これなら避けらーー)」ズギンッ
ドズッッッ!!
勇者「ぁぐッッ…」
戦士「ヌフッ…やっとか、やっと毒が効いてきたか。待った甲斐があったな……」ザッ
勇者「(ッ、やめろ…来るな、そんなものは求めてない。俺は違う、俺はーー)」ズギンッ
562 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 01:15:55.84 ID:4qTeTbufO
【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】
【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主
【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】
563 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 01:17:03.43 ID:4qTeTbufO
【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】
564 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 01:17:42.04 ID:4qTeTbufO
【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】【救世主】
565 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 01:41:17.26 ID:4qTeTbufO
勇者「がッっ…アアアアアアアッッッ!!」
戦士「ヌフッ…ヌハッ!ヌハハハッッ!!」
戦士「苦しいか?だが、それは希望であるが故の痛み、お前も覚悟していたはずだ」
戦士「縋るしか出来ぬ弱者共の想いが支配していく感覚はどうだ?塗り潰されていく感覚は?」
勇者「……………」ドサッ
戦士「ヌフッ…聞け!愚か者共!!」
戦士「貴様等は身に降りかかる危機に怯え!己の命さえ他者に預ける愚図だ!!」
戦士「勇者を苦しめているのは貴様等だ!!戦うこともせず!救われることだけを願う!!」
戦士「見よ、この様を!たった一人の人間に全てを託した結果がこれだ!!」
戦士「貴様等の歪み狂った願い想い!それが寄って集って勇者を殺したのだ!!」
戦士「救いを求めるあまり!救いそのものを殺したのだ!!」
戦士「この夜は明けぬ!世界に夜明けは訪れぬ!!さあ、死に滅べ!死に絶えよ!!」
戦士「最早救いなど訪れようもない!!今夜で全てが終わるのだ!!!」
566 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2017/02/20(月) 01:43:37.03 ID:4qTeTbufO
駄目だ寝ますまた明日
567 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/20(月) 02:22:25.34 ID:W3Nvgcfuo
乙
終わり間近か
568 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/20(月) 03:45:24.99 ID:epLEgU/DO
乙
やはり眠気こそが最強か…
569 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 20:52:52.74 ID:lVJJ/gEqO
>>>>>>
勇者「ただいま〜」
聖女「お帰りなさい。どう?今日は釣れた?」
勇者「……ううん、全然駄目だった」
勇者「見向きもしないんだ。場所を変えたり餌を変えたり、色々してるんだけど……」
聖女「きっと、向こうには分かるのね」
勇者「分かるって何が?」
聖女「よ〜し、釣ってやるぞ!っていう気持ち」
勇者「魚なのに?」
聖女「そう。勇者は魚を見てるでしょ? 魚は何処にいるのかな〜って」
570 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 20:54:19.42 ID:lVJJ/gEqO
勇者「うん、そうしないと釣れないから」
聖女「きっと、魚達も勇者を見てるのよ。だから、勇者の気持ちが分かるの」
聖女「あっ、あいつは俺達を釣る気だ。気を付けないと食べられちゃう…ってね」
勇者「……僕を、見てる…」
聖女「ふふっ、釣れないなら、いっそ飛び込んでみたらいいんじゃない?」
勇者「えっ?」
聖女「釣れない釣れないって悩みながら水面を見てるだけじゃ埒が明かないでしょ?」
聖女「だから飛び込むの。同じ場所に身を置いて、同じものを感じるのよ」
聖女「そうすれば、きっと違ったものが見えてくる。本当に大切なもの、もっと綺麗なものが」
勇者「……大切なもの」
聖女「さ、そろそろお昼にしましょ。お父さんを呼んできて?庭で薪割りをしてるから」
571 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 20:56:01.94 ID:lVJJ/gEqO
勇者「あ、うん。分かった」
トコトコ……
勇者「お父さ〜ん、そろそろお昼ご飯だよ〜」
戦士「ん、もう昼か。昼飯は何だった?」
勇者「山菜のお味噌汁と干物。熊の肉は今日の朝で終わりだったんだって」
戦士「何?あれで最後だったのか? 無いものは仕方ないな、昼から狩りにでも行くか」
勇者「狩り!?僕も一緒に行く!!」
戦士「あのなぁ、狩りは遊びじゃないんだぞ?」
勇者「大丈夫。山に入ったら騒がない、遊ばない、お父さんから離れない」ハイ
572 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 20:57:26.84 ID:lVJJ/gEqO
戦士「……本当かぁ?」
勇者「本当だよ!嘘吐かないもん!!」
戦士「……そうか、そうだった。勇者は嘘吐きが嫌いだったな……」
戦士「さぁて、あいつも待っているだろう。飯も冷める。そろそろ行くか」
勇者「うんっ!」
トコトコ…
戦士「……なあ、勇者」
勇者「な〜に?」
戦士「お前から見て俺は、父は強いか?」
勇者「うん!とっても強いよ!! 僕も、いつかお父さんみたいになりたいんだ!!」
勇者「あんなにでっかい剣はまだ振れないけど……大っきくなったら、あの剣を振ってみせる」
573 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 21:00:21.43 ID:lVJJ/gEqO
戦士「何だ、振るだけでいいのか?」
勇者「ううん。僕はお父さんに勝って、あの剣を貰うんだ。お父さんより強くなる」ウン
戦士「……俺より強くなるか。そうだな、男ならそうでなくては駄目だ。待っているぞ」
勇者「ねえねえ、お父さんは何で強くなりたいと思ったの?」
戦士「理由か。そうだな、見たいものがあったからだろうな」
勇者「見たいものってなに?」
戦士「この世界に一つしかない場所、一人しか立つことの出来ない場所」
戦士「そこから見えるのは一体どんな景色なのか、俺はそれを知りたかった」
574 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 21:02:56.03 ID:lVJJ/gEqO
勇者「見えたの?」
戦士「ああ、見えた。今でも見える。俺が追い掛けていた景色は目の前にある」
勇者「ここが、お父さんの見たかった景色?山と川しかないよ?」
戦士「はははっ!そうだな。だが、それだけじゃない。答えは目の前にある」
勇者「何にもないよ?」
戦士「勇者、お前だよ。嫁と息子がいる景色。そして、三人で暮らす家……」
戦士「強さだけでは手にすることが出来ないもの、かけがえのないものだ」
戦士「求めていたものとは違うが、これも俺にしか見ることの出来ない唯一の景色だ」
サァァァァァ…
戦士「……勇者、お前にもあるはずだ。お前だけが立つ場所、お前だけの景色が」
575 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 21:04:53.96 ID:lVJJ/gEqO
勇者「父さん?」
戦士「息子よ、目を閉じ耳を澄ませ」
戦士「そして見つけろ。お前を求める声ではなく、お前を救う者達の声を……」ザッ
勇者「父さん? 待って!」タッ
戦士「……息子よ、愛しているぞ。生まれた時から今に至るまで…そして、これからも……」
…ザッ…ザッ…ザッ
勇者「お父さん?お父さん!? 待って!置いていかないで!!一人にしないで!!」
戦士「お前は一人ではない。父は、お前の中にある。この景色の中に在る」
勇者「父さん!待って!!もっと話したいことがあるんだ!!もっと一緒にいたいんだ!!!」
戦士「声を聞け、勇者。お前を待つ者達の声を、お前が出逢った者達の声を」
576 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 21:10:45.46 ID:lVJJ/gEqO
勇者「……だけど、僕にはもう…」
ギュッ…
聖女「ほら、泣かないの」
勇者「っ、母…さん…母さんっ……」
勇者「母さん、ごめんなさいっ……僕の所為だ、僕が母さんを…僕がいなかったら……」
聖女「はぁ…まったく…なに言ってるの。あなたがいなかったら私はいないのよ?」
聖女「あなたが生まれてくれたから、私は母親になれたの。あの人だってそうよ」
聖女「あなたがいなかったら、父親にはなれなかった。だから、そんなこと言わないの。ね?」
勇者「母さん……」
聖女「……勇者、やり遂げなさい。一度決めたのなら、どんなことがあっても諦めては駄目よ」
聖女「どんな結末が待ち受けていようと、いつか必ず、あなたは幸せになれる」
577 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 22:05:29.45 ID:lVJJ/gEqO
勇者「…でも、僕は……」
聖女「あっ、一つ言い忘れてたわ」
勇者「?」
聖女「勇者、愛してるわ」
聖女「世界中の誰よりも、あなたのことを想ってる。だって、母さんだもの」ニコ
勇者「……僕もだよ。僕も、父さんと母さんを愛してる」
聖女「……さあ、耳を澄まして声を聞きなさい」
聖女「ほんの少し、僅かな間かもしれないけれど、あなたを必ず救ってくれる」
勇者「……うん、分かった」
サァァァァァ……
勇者「……耳を澄まして…声を、聞け……」
578 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 22:08:57.37 ID:lVJJ/gEqO
『っ、陛下!大丈夫ですか!?』
『……妻も、いつしか私も、あの子を我が子のように思っていたんだよ』
『この夜に二人だ…私は、二人の子を喪った……光を、希望を、未来を……』
勇者「東王様……」
『知ってるかい?あの子はね、野菜嫌いだったんだよ。もう、会えないのかね……』
勇者「給仕長のおばさんだ。もう、随分会ってないや……」
『そんなっ…勇者君まで…こんなこと……』
『王妃様、泣かないで下さい。勇者様は絶対に生きています。そうでなくては…私は……』
勇者「…騎士さんも泣いてる……でも、何処へ行けば……」
579 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 22:10:15.90 ID:lVJJ/gEqO
『オイ、クソ猫。何処へ行くつもりだ』
『離せ。聞かずとも分かるだろう』
『テメエが行って何になる?』
『黙れッ!!彼のいない世界など私には耐えられない!!離せ!!』
勇者「神聖術師……」
『ドワーフの肩を持つ訳ではないが、お前が行ってもどうにもならん』
『それに、この揺れだ。まともに転移出来るかも怪しいところだ』
『そんなことはどうでもいい!!私は彼の所へ行くんーー』
580 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/20(月) 22:16:09.84 ID:lVJJ/gEqO
『ぎゃあぎゃあと…喧しい女じゃわえ」
「妾とて気を抑えておるというのに、まったく、まったく情けない奴よ』
『して、武闘家。土術に秀でた者は集めたのかえ?』
『ええ、準備は出来ております。今すぐに起動しますか?』
『……いや、もう少し待つ。せめて、王と勇者の安否が分かるまでは…』
勇者「地下街の皆だ…無事でよかった……」
『勇者、死ぬな。私はまだ何も返していない。あの時の借りを、何も……』
『陛下、御心配なさらずとも勇者様は必ずやり遂げます。あの時もそうでした』
『不可能と思えたことを、あの方は実現して見せたのです』
『……そうだったな。初めは口先だけの小僧かと思っていたが…国を変え、私を変えた…』
『生きろ、勇者』
『咎人の俺がおめおめと生き延び、お前が死ぬなどあってはならん……』
勇者「北王、目が優しくなってる。監視さんは、あの時と変わらない。相変わらず、頑固そうだ……」
581 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 01:01:33.28 ID:nSr793NGO
『勇者、立て…立ってくれ…』
『助けに往けぬ囚われの魂。絶望でありながら希望を想うか、弟子よ』
『……あの子は僕の希望であり、戦士と聖女の…戦友の息子です』
『この身、魂が絶望に囚われていようと、それは決して変わらない』
『……案ずるな、勇者は終わらん。あれは俺の弟子だ』
『そう言いながら心配そうな顔してますね。初めて見ました、お師匠様のそんな顔……』
勇者「お師匠様、お兄ちゃん……僕は…何処へ行けば……」
582 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 01:02:50.06 ID:nSr793NGO
『これが貴様等の望みか!託神教!!』
『……望みなどではありませんよ。これは神の告げ、あるべき運命です』
『ふざけるなッ!!』
『こんな運命があって堪るか!!神だと!?笑わせるな!!』
『この様を見ろ!魔が溢れ大地は裂けた!!地獄以外のなにものでもない!!』
『貴様等が信仰しているのは神などではないッ!!貴様等は悪魔だ!!』
勇者『…託神教…戦ってる? この声は…誰だろう……』
『悪魔なら既に滅ぼしましたよ。名前は確か、精霊さん…でしたか』
勇者「…精霊が? でも、存在を感じる。生きてるはずだ……」
583 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 01:07:17.65 ID:nSr793NGO
『勇者さんは負けない。負けないんだ……』
『ぅ…ん…お兄ちゃん、それなぁに?』
『っ、起きちゃったのか。寝てなきゃ駄目だろ?』
『ねえ、なんで?』
『なんで、ゆうしゃがたおれてるの? あの人は、なんでわらってるの? お父さんは?お母さんは?』
『いかん、様子がおかしい。儂は魔術師を呼んでくる。お前は傍にいろ、いいな?』
『わ、分かった』
『お兄ちゃん、こわいよ…そとに、かいぶつがいたの、はいいろの、おっきな…かいぶつ……』
ギュッ…
『ッ、大丈夫、大丈夫だ』
『もう怖くない、俺が傍にいる。勇者さんだって頑張ってる。だから、大丈夫だ』
勇者「ッ、出口は何処なんだ。早く、早く行かないと……」
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 01:10:07.32 ID:nSr793NGO
『終わりだ。喰らってやる』
『ぐっ…勇者、大丈夫か?』
勇者「盗賊? くそっ!何処だ!何処へ行けばいい!!」
『魔王…フヌ、あの渦から生還するとは大したものだ。だが、もう終わりだ』
『勇者は潰えた。希望は想いによって塗り潰された。今更庇ったところで何も変わらん』
『黙れ』
『現実を受け入れろ、友は死んだのだ』
『例え起ち上がったとしても、それは最早勇者とは呼べぬ存在だ。守る価値などない』
『うるせえって言ってんだろうが!!!』
『魔女!王女と勇者の母ちゃんを連れて此処から離れろ!!このままじゃ落ちちまう!!』
585 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 01:33:42.46 ID:nSr793NGO
『で、でもっ…』
『いいから行け!早くしねえと崩れちまう!!二人が落ちたら勇者に何て言うつもりだ!!』
『っ、分かった……盗賊、後はお願い…』
『おう!またな!!』
『う、うんっ!また後で!!』
『……行ったか』
『下らん。何をしようと、お前の力では我に勝てん。これ以上の戦いは無意味だ』
『てめえには無意味だろうが、俺には意味がある。殺させて堪るかよ』
『言ったはずだ、それは最早勇者ではない。さあ、大人しく希望を差し出せ』
『友を友のままで逝かせてやりたいのなら、救世主に殺されたくなければな』
586 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 02:37:21.88 ID:nSr793NGO
盗賊「救世主だ? ざけんじゃねえ…」
盗賊「こいつが救世主なんぞになるわけがねえんだよ。こいつは、『勇者』だからな」
勇者『!!!』
戦士「そうか、ならば死ね」
戦士「魔を出す間など与えぬ。死人を庇いながらどこまで保つか見物だな」
盗賊「どこまで保つかなんて知るかよ。やるだけやるさ、こいつが目を覚ますまではな……」
戦士「その行動によって救世主が生まれ、再び歴史をなぞる結末を迎えるとしてもか?」
盗賊「……そうは、ならねえさ」
勇者『僕を求める声ではなく、僕を救う声。今まで聞いた声、それが僕を導くのなら……』
精霊『どんな形であれ、あなたがやった結果は想いとして必ず返ってくる』
587 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 02:47:57.63 ID:nSr793NGO
勇者『……精霊、君を信じるよ』スッ
【不滅の希望】
【最愛の息子】【唯一の景色】
【未来を切り拓く力】【私の王子様】
【夜明けをもたらす者】【愛すべき愚か者】
【不屈の闘志】【負けず嫌い】
【魔王すら救う者】【大好きな人】
【もう一人の我が子】【未来の息子】
【本物の英雄】【やさしいお兄ちゃん】
【偽善を貫き通す善なる者】
【何を奪われようと何かを与えようとする者】
勇者『これが、僕を救う声。僕を、勇者にしてくれる声……』
戦士「フヌ、まあいい……」
戦士「我を、絶望を産みながら希望を宿した裏切り者と共に砕け散れ」ズッ
588 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 02:52:10.46 ID:nSr793NGO
盗賊「(あ〜、こりゃ死んだな……)」
ガギャッッッ!!! パラパラッ…
戦士「何ッ!!」
ゴーレム「…………」ズズズ
戦士「馬鹿な。勇者が消えた今、まして自分の意志で出られるはずがーーー」
勇者「勇者は生きている。散るのは、お前だ」
戦士「!!?」
勇者「遅い。消え去れ絶望、お前は多くを奪いすぎた」
ゴシャッッッ!!!
勇者「これで…終わりだ……」
勇者「僕とお前を結びつけていた因縁因果。その何もかもが、これで終わ…り……」
589 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2017/02/21(火) 02:53:23.06 ID:nSr793NGO
寝ます明日で終わります
590 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 20:24:41.38 ID:sWlsxVByO
>>>>>>>>
特部隊長「貴様は、貴様だけは……」ダッ
僧侶「(速い。いえ、速…過ぎる!!)」
ギャリィッッッ!!!
特部隊長「全てが神に…運命によって定められているだと? ふざけるな……」
特部隊長「戦とは人の意思で起こり、人と人とが戦うものだ。神が介入する余地などない」
僧侶「貴方が否定しても揺らぎはしませんよ。こうあるべく定められているのですから」スッ
ぼぎャッッ…
特部隊長「がッ…」ガグンッ
魔導鎧「魔術防御壁を貫通。彼女の魔術は精霊に匹敵します。大尉、このままではーー」
特部隊長「大丈夫だ。まだ脚は動く、腕も動かせる。眼も見える。俺は、まだ戦える」
僧侶「(この者は、本当に人間なのでしょうか?)」
僧侶「(あの鎧によって威力軽減されているとはいえ、肉は裂け骨は砕けているはず……)」
591 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 20:27:46.17 ID:sWlsxVByO
特部隊長「まだだ。俺の戦は、まだ……」
僧侶「(何か、何かが、ずれている)」
特部隊長「俺は、俺の意志で此処に立っている。俺の意志で貴様と戦っている」
特部隊長「理由も意義も信念も神に預け、神の告げと称して命を奪う貴様等とは違う」
僧侶「(何故、立てる…この者は一体……)」
特部隊長「俺が奪った命、俺が守った命」
特部隊長「全ては俺の意志だ。運命が奪ったわけではない、運命が守ったわけでもない」
特部隊長「俺が照準を合わせ、俺が引き金を引き、俺が彼等の生を終わらせた」
592 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 20:30:17.95 ID:sWlsxVByO
特部隊長「俺は俺の意志で守った」
特部隊長「銃弾、剣、渦巻く憎悪や劣情に晒されながら生き抜こうとする彼女達……」
特部隊長「拘束され、組み敷かれ、踏みにじられ、辱められ、死ぬことすら許されず欲望に食い尽くされた」
特部隊長「俺は、命を奪った。奪ったからには背負わなければならない」
特部隊長「無念、怨恨、憎悪、慟哭。凍て付く戦場の、焼き焦がすような死を……」ザッ
僧侶「…………」ゾクッ
特部隊長「軍属、命令、任務。そんなものがなくとも、俺は戦場に立つ。立たなければならない」
僧侶「(鎧の王。この呼び名、あながち間違っていないのかもしれない)」
僧侶「(あの者、精霊のような魔術師でもない。ただの人間が何故ここまで…まさか……)」
特部隊長「神が戦場に立つことはない。戦場に神はいない。戦場に立つのは人間だけだ」ザッ
593 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 20:32:00.85 ID:sWlsxVByO
僧侶「(……やはり、間違いない)」
僧侶「(この者は踏み出した。人の身でありながら踏み出しつつある。理の外へ……)」
特部隊長「人であることを神に預けるな。貴様等が奪った命は、貴様等の命で償え」
僧侶「(この者は危険だ、いずれ必ず脅威となる。そうなる前に絶たなければーー)」
勇者『消え去れ絶望。お前は多くを奪いすぎた」
ゴシャッッッ!!!
勇者『これで…終わりだ……』
勇者『僕とお前を結びつけた因縁因果。あの夜から続いた何もかもが、これで終わ…り…』
僧侶「(空を覆っていた絶望の眼が消えた。勇者様、成し遂げたのですね。今、お迎えに参ります……)」
594 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 20:33:59.61 ID:sWlsxVByO
特部隊長「何を笑う、託神教」ズッ
ザンッッッ!!
僧侶「ッ、腕が…でも、この程度……」シュゥゥ
特部隊長「……魔術というのは便利だが、扱い次第で薬にも毒にもなり得る」
特部隊長「魔術は知識の道。極めれば命を引き延ばし、死を捻曲げることさえ可能となる」
特部隊長「魔術師とは人を癒すべく生まれた存在。その道から外れた時、その者は魔に堕ちる」
僧侶「何をーー」
特部隊長「精霊が教えてくれた言葉だ」ザッ
僧侶「!!!」ビクッ
『悪魔への怖れは神への裏切り。神の加護を疑っている証。お前は、神を否定した』
595 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 20:36:45.05 ID:sWlsxVByO
僧侶「(ッ、違う。私は怖れてなどいない)」
僧侶「(勇者様は成し遂げた。崩壊も近い。ならば、この者と戦う必要はない)」
僧侶「(これ以上、負傷者を出すわけにもいかない。今優先すべきは、皆の命……)」スッ
ゴゥッッッッ!!!
特部隊長「……くッ、退いたか」
魔導鎧「大尉、我々も此処を離れましょう。このままでは崩壊に巻き込まれてしまいます」
特部隊長「………ああ、そうだな」
特部隊長「だが、東部へ帰還する前に勇者と盗賊の下へ行かなければ……」
特部隊長「託神教がそう簡単に勇者を諦めるとは思えない。必ず動くはずだ」
特部隊長「あの魔術師…僧侶が勇者の下へ向かう可能性は非常に高い」
596 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 20:42:47.05 ID:sWlsxVByO
特部隊長「勇者と盗賊。あの二人の帰還を以て、この任務は終了する」
特部隊長「……問題は地下施設。この揺れだ。幾ら堅牢に作られているとはいえ怪我人は出る」
特部隊長「機体は何機か残してきたが、あれでは足りないだろう」
特部隊長「勇者と盗賊の下へは極少数で向かい、他機は地下施設へと帰還させる」
魔導鎧「了解しました。精霊の遺体はーー」
特部隊長「帰還する機体と共に東部へ移送」
特部隊長「少しばかり窮屈だろうが、この揺れが収まるまでは魔導鎧の中で待ってもらう」
魔導鎧「そんなに窮屈ですか?何なら出ても構いませんよ?」
597 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/21(火) 20:45:15.46 ID:sWlsxVByO
特部隊長「くっ、ははっ、はははっ!!」
特部隊長「いや、済まなかった。君なしで歩くのは無理なんだ。中にいさせてくれ」
魔導鎧「仕方ないですね。まあ、いいでしょう。放り出すのは止めておきます」
特部隊長「……魔導鎧、ありがとう。さあ、そろそろ行こうか」
魔導鎧「(僅かでも助けになれるのなら、私はそれでいい。しかし『あれ』は一体……)」
『俺は命を奪った。奪ったからには背負わなければならない』
『無念、怨恨、憎悪、慟哭。凍て付く戦場の、焼き焦がすような死を……』
魔導鎧「(あの時に感じた『何か』。あれが大尉が抱えているものならば、あれは……)」
598 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 00:04:56.00 ID:bsteboAZO
>>>>>>>
勇者「…終わっ…た…」フラッ
盗賊「お、おいっ!」
ガシッ…
勇者「……盗賊、見ててくれた?」
勇者「僕、やったよ? あの日から続いてたことが、やっと終わったんだ。やっと……」
盗賊「ッ、勇者、しっかりしろ。一緒に帰るんだ。どいつもこいつも、お前を待ってる」
勇者「……一緒には行けない」
勇者「もう、僕には時間がないんだ。もうすぐ、僕は勇者じゃなくなる」
勇者「今『こうして』いられるのは、皆の想いが繋ぎ止めてくれてるからなんだよ……」
勇者「でも、それも…もうじき消えてしまう。救いを求める声は凄く大きくて、とっても多いから……」
599 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 00:10:32.04 ID:bsteboAZO
盗賊「……何でだよ」
勇者「?」
盗賊「何で、お前が背負わなきゃならねえんだよ!!どいつもこいつも縋るだけじゃねえか!!」
盗賊「祈るだけ!願うだけ!!てめえらは何一つ自分でやろうとしねえ!!」
盗賊「世界が滅ぶ時も人任せだ!!何が救世主だ!何が救いだ!ふざけんじゃねえ!!」
盗賊「こいつが、勇者が救われねえなら意味ねえだろうがよ!!」
勇者「……盗賊…もういい。もういいよ…」
盗賊「いいわけねえだろ!お前はまだ始まったばっかりだ!!」
盗賊「こっからだろうが!! なあ、何でだよ…何でこうなっちまうんだ……」
ポタッ…ポタッポタッ……
勇者「……ありがとう、盗賊。僕は、君と出逢えて本当に良かった…」スッ
600 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 00:16:42.40 ID:bsteboAZO
盗賊「…………」スッ
ガシッ…ギュッ…
盗賊「ああ、俺もだよ。お前と出逢えて本当に良かった」
勇者「……盗賊、お願があるんだ」
盗賊「(……やめろ、やめてくれ。お前がそれを言っちまったら、俺はーー)」
勇者「僕は…僕は僕のままで死にたい。最期まで、勇者でいたいんだ……」
盗賊「ッ!!!」ギュッ
勇者「……父さんの剣を取ってくれないか。あれなら、僕を砕けるはずだ」
勇者「取ってくれるだけでいい、後は僕がやる。さあ、早く…そうしないと手遅れになる」
勇者「僕は救世主なんかになりたくない。君を、大事な人達を傷付けたくない。さあ、剣を……」
601 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 00:18:29.20 ID:bsteboAZO
盗賊「んなこと出来るかよ……」
盗賊「お前がこうならねえように、こうなることを防ぐ為に来たってのに…俺は……」
勇者「……君は、王だ」
盗賊「!!」
勇者「僕には僕の、君には君の道がある。君には王としてやるべきことがある」
勇者「僕が救世主になれば魔神族を殺すだろう。君は勿論、大人子供関係なく殺し尽くそうとするはずだ」
勇者「この夜の出来事は全ては魔神族の仕業だと、世界はそう思ってる。だから望むんだ……」
勇者「世界から異形種を…魔神族を消し去り、人の世を取り戻して欲しいと……」
勇者「人は真実を知らない。この流れを変えられるのは、君しかいない」
盗賊「俺が?んなこと出来るかよ」
勇者「出来るさ。君は優しい王様になれる。そして世界を、運命を変えるんだ」
602 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 00:30:46.38 ID:bsteboAZO
盗賊「へっ、そうかよ」
盗賊「でも、お前にそう言われると『そうなる』ような気がしてくるよ。不思議なもんだな……」
サァァァァァ…
勇者「雲間が晴れた。明るいね」
盗賊「ああ、眩しいくれえだ」
勇者「今は何時なんだろう。夜明けはまだなのかな?出来れば朝日を見たかったなぁ……」
盗賊「……本当にいいのか。これが、お前が考え抜いて出した答えなのか」
勇者「うん。やりたいことは沢山あるけど後悔はない。これでいいんだ」
盗賊「そうか…なあ、勇者」
勇者「ん?なに?」
盗賊「また、会えるか」
勇者「会えるさ。いつか必ず、また会える時が来る。その時が来るまで…お別れしよう」
603 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 01:04:10.67 ID:pgii9/+7O
勇者「……じゃあ、またね」ヂャキッ
盗賊「(これでいいのか?本当にこれしか道はねえのか?俺は何も与えられねえのか?)」
盗賊「(何もしないまま、目の前で勇者が死ぬ様を見て終わるのか?俺はーー)」
バシュッ!
盗賊「!!?」
僧侶「勇者様、お迎えに参りました」
僧侶「さあ、剣を置いて下さい。『そんなこと』をする必要はありません」スッ
勇者「盗賊!離れろッ!!」ズッ
僧侶「(ッ、させない!死なせない!!貴方は私の光!魔を滅ぼし人を導く救世主!!)」
僧侶「(例え傷付けることになろうと、共に来てもらわなければならない!!)」カッ
ゴッッッッッ!!!
勇者「ぐッ…」ドサッ
盗賊「がッ…くそっ!見えねえ!! 勇者!勇者ッッ!!」
604 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 01:28:06.35 ID:pgii9/+7O
僧侶「通しませんよ」ザッ
盗賊「てめえは…」
僧侶「魔王、貴方には此処で滅んで貰います。人の世の為に、安息の千年の為に」ヂャキッ
盗賊「ったく、どいつもこいつも…」
盗賊「どいつもこいつも勇者様勇者様か!揃いも揃って救いようのねえ奴等だな!!」ザッ
僧侶「(一撃、一撃で仕留める。如何に魔王であろうと魔は魔。この剣なら……)」ザッ
盗賊「屍の上に屍を築く者よ、亡者を従え歩く者よ、現世と常世の橋渡せ」
ゾゾゾゾゾゾッッッッ!!!
僧侶「なッ!!」
盗賊「『これ』はあんまし好きじゃねえが、てめえに付き合ってる暇はねえ!!」タンッ
僧侶「くっ…」
盗賊「ハッ!馬鹿正直に相手すると思ったのか馬鹿女!!死体と踊ってろ!!」
605 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 20:27:23.63 ID:9td5Sy6UO
勇者「(駄目だ、体に力が入らない)」
勇者「(あの人は僕を迎えに来たとか言ってたけど、救世主を欲してるだけだ)」
勇者「(あの人達に見つかる前に何とかしないと。父さんの剣は……ッ、探さなきゃ……)」
…ズリッ…ズリッ…ズリッ……
勇者「…ハァッ…ハァッ…何処だ、何処にある……」
勇者「(あの剣さえあれば、こんな争いは終わりに出来る。僕は、僕のままーー)」ズギッ
聖女『ほんの少し、僅かな間かもしれないけれど、あなたを必ず救ってくれる』
勇者「(もう駄目なのか。嫌だ、そんな終わりは絶対に嫌だ。僕は、勇者なんだ……?)」
『勇者様だ!見つけたぞ!こっちだ!!』
『凄まじい…何と傷ましい。おい、直ちに治癒班を寄越せ!大至急だ!!』
『勇者様!しっかりして下さい!!我々が来たからにはもう安心です!!』
勇者「(この人達が見てるのは僕じゃない、君達が求めてるのは…ッ!?)」
勇者「(ぐッ!想いが流れ込んでくる…頭が割れそうだ…苦しい…痛い…僕は…僕はーーー)」
606 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 20:30:33.86 ID:9td5Sy6UO
盗賊「(何処だ!何処にいる!?)」
盗賊「(畜生、土煙が酷え。あの女の魔術の所為でまるで見え……あっ、忘れてた)」
盗賊「(見透かせ鷹の眼、世界を見渡すその眼で全てを見せてくれ。友を、見せてくれ)」
盗賊「(……勇者は、向こうか)」
盗賊「(既に四、五人が囲んでやがる。なる程な、あの女が派手にぶっ放したのはこの為か)」
盗賊「(俺の視界奪って、その間に土煙に紛れた仲間が連れ去るってわけだ。ざけやがって……)」
盗賊「(どんな手を使おうが、是が非でも勇者を連れ去るつもりか。させるかよ!!)」ダッ
『ッ、魔王!!』
『止めろ!この者は決して勇者様に近付けるな!!』
盗賊「そこら中からわらわら湧き出やがって!虫かテメエらは!邪魔なんだよッッ!!」ゴッ
607 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 20:32:55.66 ID:9td5Sy6UO
『法術隊!防壁展開完了!!』
『良しッ!騎兵隊!槍兵隊!何としてでも奴を止めるぞ!!時を稼ぐのだ!!』
盗賊「ぐッ…退けッッ!!邪魔すんじゃねえ!!!てめえらに構ってる暇はーー」
『騎兵隊、槍兵隊、突撃せよ』
ドズッッ!ズドドドドッッッ!!
盗賊「がッは…畜生ッ!畜生ッッ!!!」
盗賊「(何だよ、もう少しだってのに届かねえのかよ。これで終わっちまうのかよ)」
盗賊「(俺が迷ったからか? 何も出来ねえクセに引き止めようとしちまったから……?)」
ズンッ! ガシュッ…ガシュッ…ガシュッ…
『何だ!魔王の援軍か!!』
『いや、これは…この魔力は…まさか追って来たというのか!?』
608 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 20:34:09.45 ID:9td5Sy6UO
盗賊「(今の音…どっかで……!!)」
特部隊長「いつまで膝を突いてるつもりだ。西部の勇者はその程度か?」スッ
盗賊「へっ、うるせえ。元素槍で刺されまくったんだぜ?膝突くぐらい許せよ」スッ
ガシッ…グイッ!
特部隊長「まだ行けるな」
盗賊「ああ、何とかな。つーか遅えんだよ。危うく死ぬとこだったじゃねえか」
特部隊長「そう言うな、これでも急いできたんだ。道は俺が開く。さあ、行くぞ」
盗賊「ありがとな。本当に、助かった……」
特部隊長「……見ない間に随分と変わったな」
特部隊長「それより、その辛気臭い顔は何だ。まるでらしくない。あの時のお前とは大違いだ」
609 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 20:35:35.66 ID:9td5Sy6UO
盗賊「あ?」
特部隊長「笑え、盗賊。『あの時』のように不敵に笑ってみせろ。その方が、お前に似合ってる」
盗賊「(笑え、か。ったく、キツいこと言ってくれるぜ)」
特部隊長「お前には訊きたいこと話したいことが山ほどあるんだ。勿論、勇者にも……」
特部隊長「何としても勇者を連れ帰る。この地獄を切り抜けて、在るべき場所へ」
盗賊「……ああ、そうだな」
特部隊長「さあ、行くぞ!!!」
『来るぞ!いいか、奴を人と思うな!!』
『あれは魔神族!鎧の王!!奴を含め、一機残らず破壊しろ!!勇者様に近付けるな!!』
盗賊「(勇者、今行くからな。もう少しだ。もう少しでお前に届く。だから、待ってろ)」
610 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 20:37:11.84 ID:9td5Sy6UO
盗賊「…ハァ…ハァッ…此処だ、この辺りに」
『勇者様、行きましょう。貴方の在るべき場所は此処ではありませぎッッッ…』
『勇者様!勇者様!?気を確かッッ…」
「な、何故だ。何故こんなことが、これでは告げと違ギァッッ!!!』
ゴシャッッ…ザシュッッ…ゴギャッッ…ザンッッ…
盗賊「(何だ、この気配は…何が……)」
…ザッ…ザッ…ザッ……
勇者「…………」フラッ
盗賊「勇者!無事か!?そっちで何があった!!」ダッ
611 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 20:43:31.98 ID:9td5Sy6UO
勇者「救世、此処に成る」
盗賊「ッ!!!」バッ
ザヒュッッッ!!
盗賊「……勇者、お前ーー」
勇者「救世の主ガ人導きし者ならば僕は勇者、そう在るべきはそう在るべく主の存在を否定する」
盗賊「……はっ、ははっ、何だよそりゃ…」
盗賊「そうならねえ為に必死こいて足掻いて藻掻いて!悩んで考え抜いて抗って!!」
盗賊「それでも結局こうなっちまうのか!これも運命だってのかよッッ!!」
勇者「全ては囚われ運命宿命の流れの中、水底から抜け出ることは叶わないって分かったんだ」ザッ
盗賊「……やめろ、やめてくれ」
勇者「救い求める者ノ罪を罰、世の穢れヲ悉く消し去り世を救う汝ノ訪れを僕ハ求めない」
612 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 20:45:51.05 ID:9td5Sy6UO
盗賊「勇者!目ぇ覚ませッ!!」
勇者「うつしよの穢れの主は混沌の海より出で、神を沈めし者が顕現せし時それは満ちる」ズォッ
ザシュッッッ!! ドズッッ!ヒュォッッ!
盗賊「がッッ…」ザザッ
こつんっ…
盗賊「これは…この剣は……!!」
剣士『多くの死と悲しみを乗り越えた先。その遥か彼方に真の自由はある』
剣士『『其処へ』辿り着くには長い長い時間が掛かるだろう。君自身も深い傷を負うだろう』
剣士『知らない方が良かったと、目を塞がれたまま生きていた方が良かったと思うかもしれない』
剣士『それでも君が本当の意味で勇者を助けたいと願うなら、それを覚悟しなければならない』
613 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 20:49:00.47 ID:9td5Sy6UO
盗賊「そうかよ、そういうことかよ」
盗賊「魔王、決して救われぬ咎人ってのは、きっと『こういうこと』を言ってんだろうな……」ガシッ
勇者「救世を望む罪人は魔に非ず人の原罪は極まり澱むのみと知り、僕は友に救い求め手を汚させるのか」
盗賊「………勇者」
勇者「彼の者は堕ち盗賊は友達だ生者亡者を引き連れ列を成す終末の僕を殺してくれ」
盗賊「なあ勇者、答えてくれよ。これも、運命だってのか……」
勇者「救世終わらせてくれ僕のままで」ダッ
盗賊「(ははっ…駄目だ、動けねえや)」
盗賊「(俺ってこんな奴だっけ。散々奪っといて散々殺して、最期はこのザマか)」
盗賊「(まあ、友達に殺されるんだったらいいか。俺は、幸せ者なのかもしれねえな……)」
614 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 20:50:42.64 ID:9td5Sy6UO
魔女『おい、どこから盗んだ』
盗賊『あ〜、西部の高いとこだよ。俺が行った時はタダだったんだ』
魔女『ただの窃盗だろうが……あんたさ、前科何犯なわけ』
盗賊『は?前科なんてねえよ。だって捕まってねえし』
魔女『……犯罪者だって自覚はしてんじゃん』
勇者『はははっ! 二人共、面白いなぁ』
魔女『あんたさぁ、こんな犯罪者と友達でいいわけ? 勇者でしょ?』
勇者『うーん。真面目な話し、盗賊は僕が出来ないことしてるから』
勇者『僕が極悪人を殺したら、きっと凄い騒ぎになるだろ?勇者が人を殺した…って』
魔女『まあ、そうなるだろうね』
勇者『だから、何て言うか……盗賊は、悪人の世界の勇者みたいな感じじゃないのかな』
勇者『……こんな時に思ってもないことを口にするな。彼等を助けたいから来たんだろ?』
勇者『君はそんなことをするような男じゃない。君は無慈悲な殺人鬼なんかじゃない』
盗賊『救いか、んなもんあんのかな?」
勇者『ある。誰にだってあるはずだ。それが小さくても大きくても、救いはあるよ』
615 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 21:00:22.23 ID:9td5Sy6UO
勇者「頼む生きてくれ盗賊」ズッ
盗賊「ッ!おァアアアアアアッッッッ!!」ヂャキッ
ズシャッッッッッ!!!
盗賊「…ハッ…ハァッ…ハァッ……うぐッ…」ガクンッ
勇者「…がッ…はッ…ぅあッ……」ドサッ
盗賊「勇者ッッ!!」ガシッ
勇者「…ごめ…ん…こんなこと…させて……」
盗賊「……いいんだ、謝るなことねえよ」
盗賊「この手はとうの昔に汚れちまってる。何てことねえ…何てことはねえのさ……」
勇者「…こうなることだけは避けたかった…君に…そんな顔させたくなかったのに……」
盗賊「勇者、俺はーー」
勇者「これ…を…預かって…欲しい…君になら…預けられる……」スッ
616 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 21:12:51.30 ID:9td5Sy6UO
盗賊「これは……」チャリ
勇者「また…会えたら…その時に…その時まで、君が守っていて欲しい……」
盗賊「……ああ、約束する。その時まで俺が守る。これは俺が預かっとく」
勇者「…あり…がとう……また……」
盗賊「……勇者?」
勇者「………………」
盗賊「……起きろよ…頼む、目を開けてくれ…もう終わったんだ…ほら、帰ろうぜ?」
勇者「………………」
盗賊「あッ…ああ…うォアアアアアアアッッ!!! 畜生ッ!ふざけんなッッ!!」
盗賊「何でだ!何で俺なんだッ!! 何で俺が生き残っちまうんだ!!!」
盗賊「何で俺が生きて!勇者が死ななきゃならねえんだ!!!」
ゴゴッッ…ゴゴゴゴゴ…
勇者「………………」
盗賊「世界救った友達殺して生き延びて、みっともなく喚いて叫んで…俺は、何なんだ…なあ、勇者……」
617 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 23:37:45.85 ID:9td5Sy6UO
>>>>>>>
王女「…………」
魔女「……先生、王女様に起きる気配が…本当に大丈夫なんでしょうか?」
魔導師「……うむ、確かに妙だな」
魔導師「生命の火を灯すことには成功した。そろそろ目覚めてもよい頃だろう」
魔導師「これは憶測でしかないが、王女自身が目覚めを拒んでいるのかもしれん」
王女『共に戦い、互いを支え合う……それは、わたくしには出来ないことですから』
魔女「……無力、戦うことの出来ない自分、勇者の枷になっている自分が許せない」
魔女「多分、そんな風に思っていたんだと思います。きっと、最期の時まで自分を責めて……」
魔導師「ふむ、なる程。となると、やはり王女自身が目覚めを望む以外にないだろう」
魔導師「生きるも死ぬも本人の意志次第だ。勇者が来れば手っ取り早いのだが……」
618 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 23:39:11.43 ID:9td5Sy6UO
魔導師「(何だ、この感覚は……?)」
サァァァァァ…フワッ…
勇者『……………』
魔女「勇…者…? えっ…でも、何か変な感じが…ううん、この勇者には『何も』感じない」
魔導師「(これは、念体。であれば本体、勇者は意識を失っている。或いは……)」
勇者『…………』スッ
王女「…ぁっ…ぅ……」
勇者『大丈夫。もう、君を縛るものはない』
勇者『僕の枷になってるという強い想い。それが君の目覚めを邪魔する枷になってる』
勇者『本当は逆なんだ。僕が、勇者そのものが、君の目覚めを妨げている枷なんだ』
勇者『……もう責めなくていい。君が君の目覚めを拒む『理由』は、もう居ないんだ』
619 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 23:40:18.64 ID:9td5Sy6UO
勇者『さあ、起きるんだ……』
勇者『なに者にも縛られず、君は君の人生を生きるんだ。新しい、人生を……』
王女「んっ…」
勇者『君には辛い思いをさせてしまった。最期に顔を見られてよかった。さようなら、王女様……』
魔女「勇者?」
勇者『……魔女、君の想いも伝わったよ。本当に嬉しかった。でもーー』
魔女「ううん、言わなくていい。分かってる、分かってるから……」
勇者『……炎、似合ってる』
魔女「へへっ、ありがと…」
勇者『母さんと王女様のこと、本当にありがとう。じゃあ…またね……』
620 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/22(水) 23:47:00.35 ID:9td5Sy6UO
魔女「うん…また後で……」
魔導師「…………」
勇者『……魔導師さん、後のことはお願いします』
魔導師「ああ、任せておけ』
魔導師「但し、あまり待たせるなよ? 女を待たせると碌なことにならんからな」
勇者『はい。出来るだけ早く帰れるように努力します。それじゃあ…また……』フワッ
サァァァァァ…
魔女「行っちゃった。勇者、あんなことまで出来たんだ……」
魔導師「(っ、全く、見かけによらず勝手な男だ。どう説明しろと言うのだ)」
魔女「あっ、王女様がーー」
魔導師「(王女は目覚める)」
魔導師(しかし勇者よ、『そのやり方』はあまりにも酷なのではないか?)」
魔導師「(生きて欲しいと願う想いは分かるが、残された者はどうなる)」
魔導師「(そうならぬ為にしたことなのだろうが、この娘がそう簡単に受け入れるとは思えん)」
621 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/23(木) 01:16:08.08 ID:ewMTPUagO
>>>>>>
盗賊「ッ、此処は……」
特部隊長「起きたか。飛行中だ、暴れるなよ」
盗賊「……どの辺だ?」
特部隊長「さあな。見ての通り、世界は大きく様変わりしてしまった……」
盗賊「……勇者は?俺達はどうなっちまったんだ?」
特部隊長「……我々が駆け付けた時には既に勇者の姿はなく、お前一人だった」
特部隊長「お前は迫り上がった岸壁の端で倒れていた。気を失ったのは失血の所為だろう」
盗賊「……奴等は?」
特部隊長「今頃は海の底だ」
特部隊長「あの後、地盤が酷く陥没したんだ。託神教の大半の兵士は波に呑み込まれた」
622 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/23(木) 01:18:22.24 ID:ewMTPUagO
盗賊「……託神教」
特部隊長「……盗賊、済まない」
盗賊「あ?何だよ急に」
特部隊長「勇者のことも捜索したんだが、見付けることは叶わなかった……」
盗賊「っ、仕方ねえさ……そうだ、勇者の父ちゃんは?」
特部隊長「他機が運んでいる」
特部隊長「何というか、正に憑き物が落ちたような安かな顔だったよ」
盗賊「そうか、そりゃ良かった……!!」ズキッ
僧侶『此方に渡して貰いましょうか』
僧侶『勇者様は、貴方のような穢れが触れてよい存在ではありません』
623 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/23(木) 01:21:01.84 ID:ewMTPUagO
盗賊『断る。誰が渡すかよ、クソ女」
盗賊『そんなに救世主様が欲しいってんなら、俺を殺して奪って行け。容赦はしねえ』
僧侶『そうですか。ならば仕方がありませんね。そうしましょう』スッ
ズズッッ…ゴゴゴッッ!!!
盗賊『足場が裂け…てめえ、仲間ごと巻き込むつもりか!!』
僧侶『……いいえ。これは皆からの願いなのです。失敗は、絶対に許されない』スッ
ズズンッッッ!!
勇者『……………』ズリッッ
ヒョゥゥゥ…
盗賊『ッ、勇者!!』
僧侶『先程の言葉をそっくり返します。貴方の相手をしている暇はありません。では…』フワッ
ガシッ…ギュッ……
勇者『………………』
僧侶『勇者様、後れ馳せながらお迎えにあがりました。酷い怪我……今、治します』スッ
624 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/23(木) 01:23:07.08 ID:ewMTPUagO
勇者『……………』シュゥゥゥ
僧侶『危険な真似をして申し訳ありませんでした。貴方を救う為とはいえ、崖から落とすなど……』
僧侶『ですが、勇者様を救う為には必要なことだったのです。どうか、どうかお許しを』ギュッ
盗賊『ッ、てめえッッ!勇者を返しやがれ!!』
僧侶『この方は貴方のものではありませんよ。まして、私や託神教のものでもありません』
勇者『……………』
僧侶『強いて言うならば、そうですね……』
僧侶『我々が、すべてが、この方のものなのです。この方は主、導く者なのですから』スッ
ゴゥッッッッ!!
盗賊『ッ、待て!待ちやがれ!!!勇者ッ!!』
625 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/23(木) 01:41:50.52 ID:ewMTPUagO
特部隊長「どうした、顔色が悪いぞ?」
盗賊「……悪りぃ、俺は一緒には行けねえ」バサッ
特部隊長「お、おい、急にどうしたんだ? 何かあったのなら話してくれ。仲間だろう?」
盗賊「仲間……」
勇者『頼む生きてくれ盗賊』
盗賊『ッ!おァアアアアアアッッッッ!!』
勇者『ごめ…ん…こんなこと…させて……』
勇者『こうなることだけは避けたかった…君に…そんな顔させたくなかったのに……』
盗賊「ッ!!」ギュッ
特部隊長「盗賊?」
盗賊「俺はもう仲間なんかじゃねえ。俺は勇者を殺した。この手で、友達を殺したんだ」
626 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/23(木) 01:44:04.15 ID:ewMTPUagO
特部隊長「なっ!!?」
盗賊「勇者の父ちゃんのこと、よろしく頼むわ。母ちゃんは魔女と一緒にいるからさ。頼んだぜ」
特部隊長「待て盗賊!! 一体何があったんだ!訳を話せ!! お前は何をーー」
盗賊「じゃあな、隊長さん。助けてくれてありがとよ……」
バサッ…ヒュォォォォ……
特部隊長「ッ、何がどうなっている。あいつが、盗賊が勇者を殺しただと?」
盗賊『ガキ共の中に銃持ってる奴がいてさ、あいつは俺を庇って撃たれたんだ』
盗賊『しかも『早く逃げて』なんて言いやがった。俺はもう訳が分からなくて、その場で泣いた』
盗賊『誰かと連むことは何度かあったが、裏切られたことはあっても救われたことは一度もない』
盗賊『俺を初めて救ってくれたのが、あいつなんだよ……』
特部隊長「いや、有り得ない。そんな馬鹿なことがあるはずがない。盗賊、お前に何があったんだ………」
627 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/23(木) 02:13:58.83 ID:1Wbv/56RO
>>>>>>>
王女「魔女さん、ありがとうございました」
魔女「……ううん、これくらいしか出来ないから。もう大丈夫?」
王女「ええ。ですが、わたくしが眠っている間に世界が裂けなんて…俄には信じられません」
王女「大地震に見舞われたというのに、何故わたくしは目を覚まさなかったのでしょう……」
魔女「(やっぱりだ。勇者に関わる記憶が消えてる。都合良く、改竄されている)」
魔女「(王女様を目覚めさせる為、勇者は自分に関する記憶を消した……)」
魔女「(どうやったのかは分からないけど、勇者が王女様の記憶を消したのは確かだ)」
魔導師「……………」
魔女「(先生もさっきから黙ったままだし。何があったんだろ?)」
628 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/23(木) 02:18:23.25 ID:1Wbv/56RO
王女「あの、魔女さん」
魔女「……へっ? どうしたの?」
王女「これは何です?これも魔女さんが?」
魔女「それは……」
王女「?」
魔女「(それは、勇者が王女様の為に編んだ組み紐。勇者、何で?何でこんなことをしたの?)」
魔導師「……魔女、話がある」
魔女「?」
魔導師「(娘の愛する男の死を伝える。それが、この夜最後の仕事か。気が滅入るな……)」
魔導師「(勇者よ、お前は確かに世界を救った。だが、お前を待つ者はどうなる?)」
魔導師「(これではあまりに救われない。残るのは悲しみと悔恨だけだ)」
魔導師「(責めはしない。しかし、お前自身が救われなければ皆も救われないのだ……)」
629 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/23(木) 02:43:26.14 ID:AkPmxC3dO
ーーーー
ーーー
ーー
ー
魔導師「魔女」
魔女「あ、先生。王女様は……」
魔導師「王女は東部へ送り届けた。疑問はあるようだったが、一先ずは心配ないだろう」
魔導師「それから、主だった地下施設も無事のようだ。北部の仲間もお前を待っているぞ?」
魔女「……………」
魔導師「……魔女」
魔女「……私なら大丈夫です。もう少し、盗賊が来るのを待ちます」
魔女「あいつなら、何がどうなったのか、勇者がどうなったのか知っているはずですから」
魔導師「……そうか」
630 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/23(木) 02:46:38.48 ID:AkPmxC3dO
ーーーー
ーーー
ーー
ー
魔女「もう、こんな時間だ……」パカッ
魔女「グスッ…盗賊の奴、遅いなぁ…まったく、何やってんだろ……」
魔女「……あんたまで帰って来なかったら、この先どうすればいいのか分かんないよ……」
631 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/23(木) 02:49:07.09 ID:AkPmxC3dO
勇者「救いたければ手を汚せ」
絶望と希望編 完
632 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/23(木) 02:52:58.86 ID:xCYYwjhDO
乙?
633 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2017/02/23(木) 02:54:58.19 ID:AkPmxC3dO
読んでくれた方、レスしてくれた方、本当にありがとうございます。
約一年に渡り、本当にありがとうございました。これで終わります。
634 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/23(木) 03:03:25.67 ID:Sc8+dgV0o
>>633
乙!
週末はもう一度最初から読み直すかな
635 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2017/02/23(木) 03:20:15.59 ID:AkPmxC3dO
【関連】
勇者「救いたければ手を汚せ」1
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1463238880/
勇者「救いたければ手を汚せ」2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473263217/
勇者「救いたければ手を汚せ」3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1480007826/
勇者「救いたければ手を汚せ」短編
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475602616/
636 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/23(木) 03:34:14.66 ID:AkPmxC3dO
これはこれで完結ですが、続きは既に考えてて書く予定です。
出来ることなら全部書きたいですが凄まじく長くなりそうなので困ったもんです
前スレは小ネタ書いて埋めて、このスレにも小ネタ書いて終わりにします
637 :
◆4RMqv2eks3Tg
[sage]:2017/02/23(木) 03:38:46.22 ID:AkPmxC3dO
これはこれで完結です。続きは既に考えてて書く予定です。
出来ることなら全部書きたいですが凄まじく長くなりそうです
前スレは小ネタ書いて埋めて、このスレにも小ネタ書いて終わりにします
一晩の出来事がこんなに長くなるとは思ってませんでした。
指摘質問矛盾があったら宜しくお願いします。寝ます。
638 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/23(木) 13:31:29.73 ID:TaOZTxMzO
一年間お疲れ
俺も勇者ss書いてるけどいつもコンスタントに上がってくるこのスレは途中からチラチラ覗いてた
最初から読んでみるわ
こんだけ長いssを完結させたこと自体が称賛に値するよ
本当に乙
639 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/24(金) 20:47:45.93 ID:jyn8OuhIO
>>>>>>>>
僧侶「僧侶、只今帰還致しました」
『よく戻りました。勇者様は御無事なのですか?』
僧侶「……現在は、現世から離れております」
僧侶「おそらく、度重なる戦と絶望の牙によるものが原因ではないかと……」
僧侶「これは私の至らなさ故、如何なる処罰をも受け入れる覚悟は出来ています」
『物質界からの解放。それもまた、告げです』
僧侶「ですがーー」
『僧侶よ、お前は傷付きを怖れず、魔の者共と戦い抜いた。それが『今』に繋がったのです』
『数多の困難を乗り越え、よく帰りました。勇者様は我々と共に在る。胸を張りなさい』
640 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/24(金) 20:48:28.70 ID:jyn8OuhIO
僧侶「あ、ありがとうございますっ…」
『僧侶よ、帰還したばかりで疲労は抜けないでしょうが、まだ終わりではありません』
僧侶「はい、承知しております。私は何すれば宜しいのですか?」
『急ぎ、教徒を聖堂へ』
『夜が明ける前に再臨の儀を行わねばなりません。皆で祈り、皆で迎えるのです』
『静寂、至善なる者、朝日を背に光輪の輝きに満ち、我等に来たりて我等の中に在り……』
『この告げは皆も存じているところでしょうが、再臨の儀は厳粛に執り行わなければなりません』
僧侶「承知しております」
『宜しい。では僧侶、儀を行う前に洗礼の間で勇者様の御身に触れた穢れを拭き取りなさい』
『穢れを取り除いた後は聖布で覆うのです。身も衣も無垢であらねばなりません』
641 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/24(金) 20:49:23.88 ID:jyn8OuhIO
僧侶「そ、そのような大任を私に?」
『何か問題が?』
僧侶「その、私のような者でよろしいのですか?他に相応しき者がいるのではないでしょうか……」
『貴方の他に誰がいると言うのです』
『僧侶よ、お前は共に立つ者。お前こそが相応しき者。卑下せず、自覚と自信を持ちなさい』
僧侶「……自覚と、自信…」
『魔を行使する戦士であり、告げに従う敬虔な信者。矛盾や後ろ暗さを感じ、己を責める心……』
僧侶「っ!!」ギュッ
『お前の気持ちはよく分かります。ですが、なればこそ、誇りを持つべきなのです』
『神を愛し、告げに従い、自らの務めを果たし、そうあるべく全うしなさい』
僧侶「は、はいっ!では、行って参ります!」ザッ
642 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/24(金) 20:51:25.64 ID:jyn8OuhIO
>>>>>>>
洗礼の間
勇者「……………」
僧侶「(綺麗な顔…まだ少年のような、あどけなさがある。肌も白くて、まるで……)」スッ
僧侶「(っ…私は一体何を……)」
僧侶「(これは穢れを祓う清めの儀。見惚れている場合じゃない!しっかりしないと!)」
勇者「…………」
僧侶「(ま、まずは服を脱がさないとですね。勇者様、失礼します)」
スルッ…ファサッ……
勇者「…………」
僧侶「(っ、凄まじい。腕や胸、腹部、至る所に傷痕がある。切り傷、刺し傷、元素火傷)」
僧侶「(貴方はこんなにも傷付きながら、他者の為に絶えず戦い続けていたのですね……)」
僧侶「(一瞬とは言え、あのような邪な感情に流された自分が恥ずかしい)」
643 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/24(金) 20:53:14.84 ID:jyn8OuhIO
僧侶「(お身体、お拭きしますね……)」
ギュッ…フキフキ……
僧侶「(次は背中を拭かないと…んっ! 案外、重いです)」
僧侶「(土術の手で支えれば楽なのでしょうが、清めで魔を扱うなど言語道断……)」
僧侶「(何とかして起こさないと。そうだ、首に手を回して一気に…んっ、ん〜っ!)」
僧侶「ハァッ…ハァッ…結構、大変ですね…」
フキフキ…
僧侶「(服の上からではほっそりして見えたけれど、鍛練によって引き締まった身体をしている)」
僧侶「(広い背中、厚い胸板、逞しい腕、しなやかな指、鍛え抜かれた脚。重いわけです……)」
僧侶「(男性の裸…すべてを見るのは初めてだ。けれど、羞恥や嫌悪は一切感じない)」
僧侶「(先ほどのような邪な感情も湧かない。こうしているだけで、不思議と満たされる)」
僧侶「(この方に尽くせるのなら、この方の傍らに立てたなら、どれだけ幸せだろうか……)」
ギュッ…フキフキ…
僧侶「(指先、足先、爪…これで、全て綺麗に出来ましたね。後は聖布を被せて……)」ファサッ
勇者「…………」
僧侶「……勇者様、お疲れ様でした。さあ、参りましょう」
644 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 00:54:48.99 ID:ptB8pPTxO
>>>>>>>
静寂と灯りがあった。
聖堂からは元素を含めた魔術に関連付けらる一切が廃されており、光源は揺らめく蝋燭の炎のみ。
集った数百人の信者は一様に跪き、瞑目し、栄光と導き、その顕れを祈っている。
教皇、枢機卿、司教といった者も例外ではない。
祈りの先にある者は蓮華を象った台座にあり、その身に彼等彼女等の祈りを一身に受けている。
断続的な地響きと吹き荒れる風が硝子窓を鳴らしたが、怖れを感じる者はなかった。
ただひたすらに静寂を貫き、ただひたすらに顕れを待ち、ただひたすらに願った。
長時間に渡り膝を突いていた為に膝から血を滲ませる者もいたが、意に介した様子はない。
教皇は予め信者の体調を考慮し、祈りは強制ではないとしていたが、聖堂から去る者はなかった。
一つたりとも願いの灯火は欠けることはなく、静寂の時だけが流れるのみである。
燭台の蝋燭が四度入れ替えられた頃には、地響きは収まり、荒ぶる吹雪も止んでいた。
645 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 00:56:51.82 ID:ptB8pPTxO
月は過ぎ去り、夜明けが近付いていた。
時期は真冬、本来であれば朝日など拝めるはずもない。だが、告げを信じる彼等彼女等には確信があった。
より厳密に言うならば、見えていた。瞑目しながらにして見えていた。
幾百幾千幾万、それ以上の願いが光の粒となり彼を包み込む様が見えたのである。
それは輝きの繭のようであり、揺り篭のようでもあり、母胎のようでもあった。
光の内側も光に溢れ、その姿は母の海で眠る赤子のようにも見えた。
ゆららかな黒髪は輝く銀髪へと変わり、数多の戦によって刻まれた傷痕は跡形もなく消えた。
願いのままに、想いのままに、彼は成る。
皆が母であり、皆が父であった。
望まれし者、望まれるままにある者は、母胎、形無き願いによって新たな肉体を得たのである。
いつしか願いは愛へ変わり、愛は存在へ変わり、存在は奇跡となった。
646 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 01:03:53.64 ID:ptB8pPTxO
そして遂に、彼は再臨した。
空を覆っていた暗雲を切り裂き、大いなる朝日が降り注ぐ、彼は目映い光を放ち、其処に在った。
光の海、母から生まれ出たばかりの身体には羊水があり、油を塗られているようにも見えた。
超然としながらも愛に満ちた表情であり、光を背に光を放っている。
誰もが息を呑み、誰もが涙した。
その姿は、すべてが望み、すべてが想い描いた救世の主そのもの。
暫しの静寂。
彼は眩い朝日を背に、皆に微笑みかけるようにしてゆっくりと言葉を紡いだ。
「見よ。日は昇り、夜は明けた」
「見よ、僕は確かに此処に在る」
「偽りなき者として、導く者として此処に在る。さあ、共に行こう。人の世、安息の千年を」
647 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 01:10:27.88 ID:ptB8pPTxO
勇者「救いたければ手を汚せ」
救世主再臨編
648 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 01:12:05.24 ID:ptB8pPTxO
本編はここまで後は小ネタ書きます
649 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 01:18:22.43 ID:ptB8pPTxO
【夢を】
想いは永久に消えず。
恋い焦がれながら愛を伝えることは叶わない。
彼が誰と結ばれようと諦めることは出来ず、この時計の針が何周しようと忘れることはない。
彼以外と家庭は作れない、彼と家庭を築くことは出来ない。
私は永遠に彼のことを想い続け、その想い遂げられることなく生を終える運命にある。
どんな人間にも、許されていることがある。
抱きしめる腕を失い、共に歩く脚を失い、姿映し出す瞳を失い、愛する人の声を捉える耳を失おうとも……
人は諦めること、忘れることを許されている。
私はそれを失った。自ら手放した。
夢は夢を忘れさせないように、諦められないように、一定の周期で私に幸せを見せる。
650 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 01:19:42.43 ID:ptB8pPTxO
夢を夢だと気付くことはない。
そこにあるのは、愛する人とのしあわせな家庭。あれほど夢見た、しあわせな家族だ。
傍には彼と、彼と私の子供が寝息を立てて眠っている。
私は少しだけ二人の寝顔を眺めて、今日の幸せな朝を実感するんだ。
何も特別なことはない、ごくごく普通の朝。
だけど、私にとっては最高の朝。
今日の朝が来た幸せを噛み締めて、それから二人を起こして朝ごはんを作る。
瞼を擦る二人の姿が微笑ましくて愛おしい。こんな朝を毎日迎えられることが嬉しくて堪らない。
子供を着替えさせている彼を見ながら配膳を済ませて、三人で「いただきます」を言う。
651 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 01:21:02.80 ID:ptB8pPTxO
毎日ご飯を作るのも楽しみの一つ。
食べ終えた後は食器を洗い、それから休む間もなくお弁当作り。彼も息子も手伝ってくれる。
息子が手伝ってくれたお陰で、お弁当が出来上がるのが少しばかり遅れてしまった。
けれど、それさえも楽しくて、それさえも嬉しくて仕方がない。
うん、今日もいい日だ。
洗濯物を干しながら空を見上げる。どうやら太陽の機嫌は良さそうだ。
きっと、今日も最良の日になるだろう。
目的地はなく、三人で行きたい場所へ行く。
右に彼、左に私、その真ん中で我が家の中心が、愛しい我が子が笑ってる。
今日の天気が雨だろうと晴れだろうと、二人がいれば毎日が最良になるのだと、私は思う。
652 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 01:23:00.23 ID:ptB8pPTxO
……夢は、そこで終わる。
最高の夢が、悪夢に変わる瞬間だ。
右手にはあの子の小さな手の感触、確かな温もりが残っている。
この夢を見るたびに涙が溢れる。
何度目だとか関係なく、家族を失う悲しみには到底耐えられそうにない。
失うも何も、これは夢。本当に何かを失ったわけじゃない。
それは分かっている。初めから家庭なんてないことも分かっている。
けれど、胸が張り裂けるような喪失感が容赦なく襲い掛かってくる。
その痛みが落ち着いた後で、私はいつもこう思ってしまう。
もしかしたら、あの夢こそが本来辿るべき未来だったのではないかって……
まあ、埒の明かない妄想想像だけどさ……
一つだけ確かなことは、私が望むものは夢の中でしか手に入らないということ。
現実では決して手に入れることの出来ないもの。
あの日に夢見た、私のしあわせ。
653 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 01:24:34.32 ID:ptB8pPTxO
現実に彼はいない。
此処に息子ははいない。
もう一度眠れば、あの夢の続きが見られるだろたうか。
もう一度眠れば、この痛みから解放されるのだろうか。
それが無理だってことは分かってる。だって、私がそうさせないようにしたんだから。
差し出した代価は、私のしあわせ。
幸せは幸せを忘れさせない為に、私に夢を見せる。夢を諦めさせないように夢を見せる。
失った痛みを忘れさせないように、私に幸せな夢を見せているのだろう。
瞼を閉じれば二人の笑顔が浮かび、耳を澄ませば二人の笑い声が聞こえてくるような気がした。
幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ辛い幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ。
こんな感じで、『つらい』って奴はいきなり来るから怖いんだ……
654 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2017/02/25(土) 01:29:59.64 ID:ptB8pPTxO
救世主編に続く感じで一旦終わります。
前スレは埋めるの面倒なので依頼出します。こっちはどうするか分かりません。
レスありがとうございました。
655 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/25(土) 22:56:48.66 ID:yZkaePJuO
【現実の人】
『ふぅ、この辺りも随分と良くなったなぁ』
『諦めずやってきた甲斐があった。まだ実を結んだとは言えないが、住むには問題ないだろう』
『それもこれも、魔術師の方々があってこそだ。あっちこっち飛び回って大変だろうに……』
『思えば、あの子達には随分と酷いこをとしてしまった。何とも罪なことを…』
『理解しようともせず黒魔術だ何だと騒ぎ立てて、あの夜もそうだ。俺達は、醜いな……』
『それでも我々を見捨てず見放さず、今でも世話になりっぱなしだ。まったく、頭が上がらんよ』
『……ほら、休憩は終わりだ。さっさと終わらせようぜ。オレたちは生きてんだ』
『醜い姿ばっかり見せちまったが、醜かろうが何だろうが生きてる以上は進むしかねえ』
『……そうだな、私達に止まってる暇はない。少しでも、あの日から進もう。少しでも…』
『………ああ、そうだな』
656 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2017/02/26(日) 01:10:48.09 ID:HEFKgcJsO
【怖れる者共】
『オークだ!オークが来たぞ!』
『くそっ!家だって直したばかり、畑だって耕したばりなのに!!』
『……此処は捨てよう。こうなれば逃げるしかない。せめて、女子供を先に逃がすんだ』
『だ、駄目だ!囲まれてる!!奴等、森に潜んでやがったんだ!!』
『……終わりだ…もう終わりだ…ひっ、ひぃっ』
ドッッ!ゴシャッッッ!!
『な、なんだ? オーク共が…吹っ飛んだ?』
『あ、あれは誰だ?この村にあんな奴は…』
『誰だろうが関係ない!あの数に一人で挑むなど無謀だ!!早く助けなければーー』
ゴゥッ…グシャッッッ!!
『ば、馬鹿な!鎧ごと砕きやがった!!な、何なんだアイツは……』
『大剣じゃあない。あれは、槍か?』
『……違う。ありゃあ金砕棒だ。あんなもんを振り回す奴は、一人しかいない』
657 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2017/02/26(日) 01:15:09.38 ID:HEFKgcJsO
『なら、あいつがーー』
ドッッ!ゴギャッッッ!!!
『悪鬼狩り、砕き人、噂には聞いていたが、まさか、あんな若者だったとはな』
『何でも子供の頃に、目の前で両親をオークに殺されたらしい。確か、妹も殺されたとか……』
『以来、オークを殺し続けてると?』
『完全種なのか?』
『いや、俺達と変わらない人間…らしいが、あれを見ると俄には信じられないな』
『何とも荒々しい男だ。しかし、復讐か…人の身で異形種に挑むなど無謀としか……』
『そうでもない。事実、彼は今も生きている。きっと、本気でオークを滅ぼすつもりなんだ』
『……骨肉を砕き、臓腑撒き散らして血の花を咲かす者。『散華師』とも呼ばれているらしい』
『散華師……』
散華師「これは、この棍棒はお前等の武器だ。俺を殺そうとした武器だ」
散華師「お前等の武器で、お前等を滅ぼす。最後の一匹まで打っ潰してやる」
ドガッッ!グシャッッッ…ボタボタッ…
散華師「怖いか、オーク共」
散華師「お前等にも、あの夜の恐怖を教えてやる。死の恐怖ってやつを思い知って、死ね」
658 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2017/02/26(日) 01:32:50.43 ID:HEFKgcJsO
しばらくは短いやつを書くと思います。
続きは新しいすれ立てようかと思ってます。
659 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/26(日) 02:48:21.72 ID:FXefCp5DO
乙
660 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/27(月) 07:31:54.17 ID:84ph0RqlO
もう終わりでいいよ
661 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/28(火) 22:13:24.68 ID:jeVdcHeKO
長い割にラストが雑だからモヤモヤしかない
662 :
◆4RMqv2eks3Tg
:2017/03/05(日) 00:11:53.23 ID:7lE0NY3IO
続きはもう少し固まったら書きます
長くなると思いますがよろしくお願いします
663 :
◆4RMqv2eks3Tg
:2017/03/05(日) 00:13:09.99 ID:7lE0NY3IO
続きはもう少し固まったら書こうと思っています
長くなると思いますがよろしくお願いします
664 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/06(月) 02:09:19.17 ID:UlQN72DDO
おk待ってる
665 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/03/12(日) 22:34:08.46 ID:sBycP4vxO
理解できない
666 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/24(水) 10:06:54.20 ID:QdS2ZyByo
地下街だのオークだのが出てきてから目が滑って内容が入ってこなくなった
それまでが引き込まれる文章であっただけに残念
667 :
ゴンベッサこと先原直樹の悲惨な末路
[sage]:2017/06/17(土) 17:17:03.53 ID:rXwgI9MH0
http://i.imgur.com/zqI2Qlo.jpg
先原直樹・ゴンベッサ
都道府県SSの痛いコピペ「で、無視...と。」の作者。
2013年、人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者を詐称し、
売名を目論むも炎上。そのあまりに身勝手なナルシズムに
パー速、2chにヲチを立てられるにいたる。
以来、ヲチに逆恨みを起こし、2017年現在に至るまでヲチスレを毎日監視。
バレバレの自演に明け暮れ、それが原因で騒動の鎮火を遅らせる。
しかし、自分はヲチスレで自演などしていない、別人の仕業だ、
などと、3年以上にわたって稚拙な芝居でスレに降臨し続けてきたが、
とうとう先日ヲチに顔写真を押さえられ、言い訳ができなくなった。
2011年に女子大生を手錠で監禁する事件を起こし、
警察に逮捕されていたことが判明している。
先原直樹・ゴンベッサ まとめwiki
http://www64.atwiki.jp/ranzers/
668 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/20(木) 22:24:59.57 ID:ShPQyBZ0O
読んでくれた方、改善点などあればお願いします
669 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/20(木) 22:42:33.16 ID:ud7oKpbIO
話の流れは好き
場面が移り変わる瞬間がわかりづらかった気がした
670 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/21(金) 00:46:19.51 ID:Za+ZoZszO
>>1
です
場面の移り変わりが急なのでしょうか
自分でもそこら辺が難しいと感じているのでちょっと考えてみます
ありがとうございます
671 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/21(金) 01:39:20.92 ID:714TczeW0
長い
必要ない展開が多い
何が書きたいのかわからない
672 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/21(金) 07:02:11.26 ID:x8MLqoahO
>>1
です
必要のない展開とはどの辺りでしょうか? 教えてくれるとありがたいです
673 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/21(金) 21:23:05.63 ID:SJ/CSXpoo
というか酉つけなよ忘れたの
674 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/02(月) 18:42:46.48 ID:tgxsRy7WO
古都キシュエナはラヤタハ山脈を越えた先にあるとされる
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