過去ログ - 【叫ぶような声も】能力者スレ【無痛になっていく】
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名無しのパー速民
[sage saga]
2018/08/10(金) 00:00:32.58 ID:BTSUizf10
>>39
――――――――――――、だけど。わたしは。イルちゃんを置いていきたくない。
イルちゃんに自分を不完全だなんて言ってほしくない、恵まれた人間が醜く争うのが憎いだなんて言ってほしくない。……だから、
癒せない病気も、治らない病気も、死ねないわたしには、――関係、ないから。イルちゃんが殺すしかできなくても、わたしは、死なないから。
【――かすかに唇を噛む気配がした。工場に入ることさえ叶わなかった自分だから、それ以上のことは、なんにも言えなかった】
【だから何にも言わなかった。それよりもあの子を悪く言わないでほしかった。それが悲しかった。あんなふうな顔をした子を、それ以上悪く言わないでほしくて】
【自分を助けてくれた子を悪く言わないでほしくて。だけれどそれと同時にきっと分かってもいた。そうして助けられた自分がこうして否定され続けているなら】
【きっと世界はあの子だって受け入れてあげないんだろうって分かっていた。ぐしゃりと握りしめられたヴェールはそれでも上等だったのか、よほどひどい皺は残らない】
【――あるいは気づくのかもしれない。それはきっと結婚式の時にするための逸品だった、とびきりに上等で、繊細で、世界一幸せな女の子を世界一綺麗にする、魔法がかかってる】
【人間が来るはずもない場所で少女は一人ぼっちでそれをかぶっていたんだった。だったら誰かを待っているのかもしれなかった。人間の男に期待なんてしないのかもしれなかった】
【そのくせいつか誰かのためにかぶったヴェールをひどく大事そうにしていて、だからこそ、相手にかぶしていたんだった。せめて悪いものから護られますようにと、きっと願って】
【だから俯いて泣いてしまう夕月をじっと見ていた。ぺたんとお姉さん座り。指先が伸びて。――握りしめるヴェールを優しく、けれど有無を言わさず、取り上げるんだろう】
【そうしてもう一度かけてやるんだった。それ以上の意味なんてなかった。寒さをやわらげられるはずがなかった。けれど一つだけおまじない】
あのね、――お母さんがね。教えてくれたんだ。桜花って名前は。その意味はね。
桜の花はいっつも楽しそうなひとに囲まれてるからだって。桜の花はね、楽しそうにしてるひとしか見たことがないんだって。
だから――そういう風に生きていけるようにって。そういう名前なんだって。だから、――だけど、わたしは、その名前を、棄ててしまったから。
…………それね、あげる。"取ってきたんだ"。でもね。……あげるよ。だから、笑ってて。
【散り誇る桜の花びらを無数に縫い取った細やかな刺繍が施されたウェディングヴェール。あなたにあげるって言って少女は笑うんだろう。きっと大事なものだった、でも、】
【笑っていてほしいから。そういう意味では自分が納得するために神様をしつくすと決めた自分より、きっと、相応しいから。――それに泣いていてほしくなかったから】
【名前のおまじないごと"あげる"。
わたしは――変えたいよ。
【――――納得できない世界には戻らない。だから。納得できる世界を望む。そうしたら彼女が戻った時に、世界は、"変わって"いるはずだから】
【どこまでも自分の都合だった。生きてきたことがしてきたことが無意味だなんて思いたくないだけだった。そのためだけに、世界まで巻き込もうとしているだけだった】
【――それでも、】
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