【ゆるゆりSS】きもちに寄り添う数秒間
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18:名無しNIPPER[sage saga]
2024/09/07(土) 23:07:09.87 ID:49voo3/L0
 そこにいたのは、クラスこそ違うが七森中で櫻子が仲良くしている同学年の友人たちだった。みんな同じ部活で、練習の帰りにそのまま立ち寄ったのか、体操着姿のままで屋台街をめぐっていたようだった。

「おおー!」
『来てたんだ! すっごい偶然!』

 突然の予期せぬ出会いに櫻子も反射的に嬉しくなってしまい、子犬のように駆け寄って、手を重ねてぴょんぴょんと喜んだ。まるで味方を見つけたような気分になって、テンションが昂ってしまう。「てかこれあげる」と一人に鈴カステラを差し出され、櫻子はおいしそうに頬張った。
 その後もしばらく矢継ぎ早に談笑を続ける。おおかたの予想通り、今日は夕方まで部活があったそうで、帰りにそのままこの駅までやってきて、これから花火が見えるポイントに向かうところらしい。

『てかさ、櫻子も一緒にいこーよ! 一人でしょ?』
「えっ?」

 一人の友人の提案に、周囲も賛同し始める。向日葵と来たことを慌てて説明しようと振り返ると、向日葵はいつの間にか少し離れた位置に移動して、所在なさげにスマホを見ていた。
 その横顔を見て、櫻子の中にどくんと何かが芽生えた。

『あっ、古谷さんもいたんだ! ごめーん』
『どうする? 古谷さんも来るー?』

 向日葵は面識の薄い同級生たちにおもむろに話しかけられ、遠慮がちに笑うと、櫻子に向かって手を振った。

「行って来たら。櫻子」
「え……」
「私は大丈夫ですから。やっぱり人多くて大変ですし、もう少しだけこのあたりを見たら、先に家に戻ってますわ」

 眉を下げ、困り顔で笑う向日葵。
 その姿が、あの日庭のビニールプールから見上げた、向日葵の物悲しそうな笑顔と重なった。


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