【ゆるゆりSS】きもちに寄り添う数秒間
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17:名無しNIPPER[sage saga]
2024/09/07(土) 23:05:24.28 ID:49voo3/L0
「これ、こっちで合ってるんですの?」
「わかんないけど、みんなこっちに向かってるじゃん!」

 駅前から続く人の列はゆっくりと一定の方向に流れている。櫻子と向日葵はよくわからないままにそれに流されていく。二人とも、花火を見るための専用席を予約したわけでもなかったし、このあたりはそんなに来たことがないため土地勘もない。

 やがて人ごみは屋台街に入っていき、夏の祭りらしくなってきた。あちこちから出店の香ばしい匂いや甘い匂いが漂ってくる。そのひとつひとつに目を奪われながら歩いている櫻子と、櫻子の手をとって迷子にならないように気を付けながら後をついていく向日葵。櫻子は何か買おうかと目移りさせているが、人気そうな屋台は行列ができてしまっており、物をひとつ買うだけでもなかなか大変そうだった。そうこう迷っているうちに人の波に流されてしまい、一定の位置に留まっていることもできない。
 かなり混むと思うよ、と姉からも言われていたが、想像以上だった。やっとの思いで人の波を外れ、よくわからない道端で熱気に当てられた身体を落ち着かせる向日葵と櫻子。こんなにも大変だったのかと、少々呆然としている。屋台の明かりで気づかなかったが、いつのまにか空もだいぶ暗くなっていた。

「こんなことだったら、花子たちみたいに家から見てた方がよかったかもね……」
「まあ、一理ありますけど……」

 空を見上げてみると、自分たちがいるところはまだ建物も多く、空が綺麗に見えるわけではない。このまま花火が始まってしまっても、満足に落ち着いて鑑賞することはできないだろう。

「……ど、どうする?」
「……」

 ここまで来ておいてなんだが、帰るのもアリかもしれないと二人が軽く思い始めていると、

『あれっ、櫻子じゃん!』

 後ろから突然、快活な声に話しかけられた。


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