16: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:49:42.22 ID:VN/U1bqQ0
領主のことを「お館さま」と呼び、食事を勧めるホストのような振る舞い。
察するに、デブはこの館の人間だろう。
しかし、どうして館の人間が俺達のような流れ者と席を同じくしている。
周りを見渡しても、どいつもこいつも薄汚れて生気のない顔で飯を貪っている。
17: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:50:13.48 ID:VN/U1bqQ0
「おいデブ! 酒はないのか?」
デブは、目を細めこちらを睨みつけてきたが、悲しいかな少しも恐ろしくない。
18: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:50:52.04 ID:VN/U1bqQ0
「月が出る頃には、魔物の軍勢は街を囲うだろう」
「お館様……」
19: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:51:22.48 ID:VN/U1bqQ0
「さて、そこのお前」
領主の青みがかった目が、俺の濁ったそれと交錯する。
20: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:51:58.21 ID:VN/U1bqQ0
「悪いが、剣や槍は既に枯れた。だが、代わりになるものを用意した」
領主が、テーブルナイフを握り俺の眉間に向ける。
思わずギョッとするが、向けられているのは俺の頭の先だ。
21: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:52:30.42 ID:VN/U1bqQ0
くそ、酒が欲しい。この震えを止めるにはもうそれしかない。
「やります」
22: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:53:44.40 ID:VN/U1bqQ0
俺は、愕然としていた。
どうしてそんな恐ろしいことが言える。
魔物の恐ろしさは、お前だって知っているはずだ。
23: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:54:14.78 ID:VN/U1bqQ0
「……領主さまが問題にしているのは、お前がまだガキだってことだ」
俺の言葉に、ガキが口を真一文字に結んだ。
どうして俺は、領主に助け舟を出しているのだろうか。
24: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:54:51.90 ID:VN/U1bqQ0
「僕は、妹を抱いてこの街まで逃げてきたんだ」
今度は、俺の開いた口がふさがらなかった。
酷い誤解だ。まったく話が通じてねえ。
25: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:55:21.72 ID:VN/U1bqQ0
俺は無言で立ち上がり、後ろに置かれた樽に向かった。
到底、武器とは呼べない農具の中からひざ丈ほどの棍棒を見つけ抜き取る。
羊や豚を〆るのに使ったのだろう。
棍棒には、既にいくつかの血のシミがついていた。
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