16:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:39:44.44 ID:I2AyKHWk0
やっぱり、ふたりの関係はもう戻らないところまで壊れてしまったのだろうか。
夜、やや腫れぼったい目を枕におしつけながら、花子はベッドに横になっていた。
櫻子は今日も変わらずに勉強を続けている。それもこれも向日葵と一緒になるためのはずなのに、どうしてふたりは昔のような関係に戻ろうとしないのだろうか。
櫻子のことも、向日葵のことも、もうわからない。
これが大人になるということなのだろうかと、花子は小さくため息をついた。
そんなことを考えている時、枕元のスマートフォンがメッセージを受け取った。
ちらりと見えた送り主のアイコンが視界に入り、花子は大きく目を見開いてそれを手に取る。
直接メッセージをもらうのは何カ月ぶりだろうか。送ってきたのはまさかの向日葵だった。
[まだ、起きてますか]
(ひ、ひま姉……っ)
[今日は本当に、ごめんなさい]
ふと、夕方に向日葵に抱きしめられていた時の感触を思い出す。
一方的に思いをまくしたててしまったが、「私からも伝えたいことがあります」という気持ちが、あの抱擁には込められていたような気がずっとしていた。
(ひま姉は……ちゃんとわかってくれてる……)
花子は、向日葵に会えない間もずっと、向日葵のことを信じていた。
櫻子が向日葵を裏切ってしまったとしても、向日葵が櫻子を裏切ることは絶対にないと、心の隅で頑なに思っていた。
[もしも花子ちゃんが良ければ、お話しませんか]
[玄関の鍵を開けておきますから]
最後のメッセージが届くころにはもう、花子はこっそりと家を抜け出す準備を終えていた。
櫻子に気付かれないよう、細心の注意を払って古谷家へと向かう。
空には満月が煌々と輝いていて、夜だとは思えないほど明るいような気がした。
33Res/102.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20