559: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/03(火) 12:37:58.45 ID:Sh64zN700
彼方「…………あんなに軋んでた床も、音鳴らなくなったね。雨漏りもしなくなったし……立て付けの悪かったドアもちゃんと開くようになったね。職員の人も何人も雇っててびっくりしちゃった。孤児院としては、もう安泰だね」
果林「…………」
彼方「果林ちゃんと一緒に……頑張ってきてよかったって……思ったよ……」
果林「…………彼方……」
彼方「……わたしたち……これからも頑張るね……世界中の人……救って見せるから。……この世界を、果林ちゃんたちと一緒に……救って見せるから」
果林「…………」
彼方「………………でも…………でも、ね……っ……」
彼方の声が、震えていた。
彼方「…………ほんとうは……おかあさんに……っ……すくわれた世界を……みせて、あげたかった……よぉ……っ……」
彼方は……肩を震わせて泣いていた。
……私はこのとき初めて、彼方の泣いている姿を見た。
葬式の間、泣きじゃくる遥ちゃんや、この家の小さな子たちの前では、絶対に見せなかったのに……彼方が、声を震わせて、泣いていた。
彼方「…………おかぁ……さん……っ…………ぐす……っ……ひっく……っ……」
果林「………………」
──この世界は理不尽だ。
理不尽に奪われて、泣く人ばかりの世界で……そんな中でも、誰かに与えて手を差し伸べてくれる人が……命を落とす。
私はギュッと……拳を握りしめた。
果林「…………こんな世界……間違ってる…………」
こんな、誰かが泣かなくちゃいけない世界のままで……いいはずがない。
果林「…………私が……変えるんだ…………」
こんな奪われるだけの世界を……私が、変えなくちゃ……いけないんだ。
👠 👠 👠
──ウルトラスペースシップによる本格的なウルトラスペースの調査が開始された。
調査メンバーはもちろん、私、彼方、愛、璃奈ちゃんの4人だ。
その中で……私たちは、ウルトラスペースの中に、いろいろな世界があることを知った。
荒廃しきった世界や、巨大な電気を帯びた樹木が張り巡らされた世界、一面に広がる砂漠の世界、宝石のような輝く鉱物があちこちに生えた洞窟の世界……。
本当にいろいろな世界があって……そこにはいろいろな種類のウルトラビーストが生息していた。
時に捕まえ、時に撃退し、時に逃げ……私たちは少しずつウルトラスペースとウルトラビーストという存在を理解していった。
その中で、テッカグヤ、デンジュモク、カミツルギ、ズガドーン……そして、2匹目のコスモッグを捕まえることに成功した。
それと同時に……並行して行っていた、ウルトラスペースシップの2台目を完成させたり……とにかく調査は順調に進んでいた。
ただ……そんな調査の中でも……私たちが見つけた世界の中に、文明がある世界は一つしか見つけることが出来なかった。
それも、遠く……自由に行き来するとなると、コスモッグの持っている途方のないエネルギーをもってしても、少し不自由があるというくらいには遠くにだ。
そんなある日のことだった。
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