179: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/21(水) 15:13:12.09 ID:/nLmInIK0
菜々母「あなた……大丈夫……?」
菜々父「……あ……あぁ……」
ご夫人も心配そうにしている。
菜々母「……顔色が悪いわ……。……あとは、私が話を伺うから……あなたは奥で休んでいて」
菜々父「…………しかし…………」
菜々母「いいから」
海未「ご無理は、なさらないでください……今、体調が優れないのであれば、後日でも大丈夫ですので」
菜々父「…………すみません……。……少し、席を外させてもらいます……」
そう言って、菜々の父親は重い足取りで奥の部屋へと下がっていった。
菜々母「…………主人は……菜々からポケモンを取り上げようとした結果、あの子が飛び出して行ってしまったことを……酷く後悔していました……。……それが、まさかこんな事態にまでなってしまうなんて……」
海未「心中……お察しします」
菜々母「ただ……勘違いはしないで欲しいんです。……主人が菜々からポケモンを遠ざけようとしていたのは、菜々を想ってのことなんです……。あの人は……幼少期にポケモンに襲われて親を失っていて……菜々には同じ想いをして欲しくないと……そう口にしていました……」
真姫「……菜々も同じようなことを言っていたわ」
菜々母「私は……このローズで生まれて、ポケモンとほとんど関わらずに育って、あの人と結婚しました。……私はポケモンと関わらない人生を不幸に思ったことはありませんし……少し、怖い存在だと今でも思っています。だから私も……ポケモンと関わらずに、菜々が幸せになれるのなら、その方がいいと思っていました……。ですが……私たちの、その考えが……ずっと、菜々を苦しめていた……」
真姫「…………」
菜々母「いえ……本当は……菜々がポケモンに興味を持っていることには……ずっと前から気付いていました……。だけど、あの人の主張も理解出来て……菜々がしたいことが出来なくて苦しんでいるとわかっていながら……あの人の意見も正しいからと、そんな風に自分に言い訳して……あの子の気持ちから、目を逸らしていたんです……っ……」
菜々の母親は、目元を押さえながら、そう話す。
菜々母「こんなことになるなら……もっと、話を聞いてあげればよかった……っ……菜々を……見てあげればよかった……っ……。……っ……」
彼女の目から、ぽろぽろと涙が零れる。
私は席を立ち、彼女に近付き、ハンカチを差し出す。
海未「……使ってください」
菜々母「……すみません……っ……」
さめざめと涙を流すナカガワ夫人を見て、
真姫「ごめんなさい……私も……隠れてポケモンを持たせたりせず、もっとご家族と向き合えるようなやり方を……ちゃんと考えてあげるべきでした……。……ごめんなさい」
再び頭を下げる真姫。
菜々母「あ、頭を上げてください……真姫さんは……菜々の夢を……叶えるために、あの子の傍に居てくれたんですよね……」
真姫「……その……つもりだったんだけどね」
真姫も、酷く後悔した顔をしていた。
その胸中は……わざわざ説明する必要もないでしょう。
菜々母「あの……真姫さん……」
真姫「……なんでしょうか……」
菜々母「あの子は……菜々は、ポケモントレーナー……だったんですよね」
真姫「……はい」
菜々母「今からでも、あの子が……その……ポケモントレーナーとして戦う姿を……確認出来るものは……残っていますか……?」
真姫「え……?」
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