720: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/03(土) 12:11:17.29 ID:ogLreJcM0
栞子「この姿、あまり馴染みがないかもしれませんね」
歩夢「う、うん……」
栞子「この子たちは今はもうない、ヒスイ……という地に生息していたポケモンなんです」
歩夢「ヒスイ……」
栞子「翡翠の巫女は、龍神様にお仕えすることの他に、このヒスイの地に生まれたポケモンたちを人知れず守るのも使命の一つとして代々受け継いできたんです」
歩夢「そうなんだ……。じゃあ、この子たちは栞子ちゃんの家族なんだね?」
栞子「家族……そうですね。私の家族です」
歩夢「そっか……じゃあ、私とおんなじだ」
栞子「?」
歩夢「私もお家にたくさんポケモンがいてね、小さい頃から家族同然に過ごしてきたんだ」
栞子「……だからですね」
歩夢「え?」
栞子「歩夢さんからは、少し不思議な雰囲気を感じていました」
歩夢「不思議な雰囲気……?」
栞子「はい。本来ここに住んでいるピィは警戒心が強くて、滅多に人間には近寄らないのですが……歩夢さんにはポケモンの警戒心を解く、不思議な雰囲気があるようです。それは恐らく、幼い頃から、ポケモンと家族同然に育ってきたからこそ、身に付いたものなのでしょう」
歩夢「そう……なのかな?」
栞子「ええ。だからこそ、ピィも心を許してくれたんだと思いますよ」
自覚はないけど……そうらしい。
栞子「他の部屋にも、別のヒスイのポケモンたちがいますが……特に仲の良い子はこの子たちなんです。あ、もちろん、ピィやピッピとも仲良しですよ」
歩夢「大切な子たちなんだね」
栞子「はい。この子たちがいるから、私は寂しくないんです。……寂しくありません」
そういう栞子ちゃんの声は……なんだか、強がっているような気がした。
歳は私と同じか……少し下くらいかな……。
そんな女の子がこんな薄暗い洞窟の中で、ずっと一人で過ごしていて、寂しさを感じないわけなんてない。
だから私は、
歩夢「……ねぇ、栞子ちゃん」
栞子「なんですか?」
歩夢「私と……お友達になってくれないかな?」
自然とそう提案していた。
栞子「お友達……ですか……?」
歩夢「うん。ダメかな……?」
栞子「ダメ……ではないです。そう言ってくださって嬉しいです。ですが……もう会うこともないでしょうから」
歩夢「え……」
栞子「本来、ここに外の人間が入ることも、存在を知らせることも、許されていないんです。今回はあくまで特例ですから」
歩夢「そっか……」
栞子「ですから……今日ここで見たことは、歩夢さんの心の中だけにしまっておいてください」
歩夢「……うん、わかった」
栞子「それでは……帰りの道をご案内します」
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