361: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/11/14(月) 17:27:53.28 ID:wroKVd390
ジム戦だけじゃない。
ドッグランでも私は何も出来なかった。怯えて、尻餅をついて、ただ震えているだけだった。
侑ちゃんが目の前で倒れていたのに……いつも私や私のポケモンたちを身を挺して守ってくれた侑ちゃんが、目の前で倒れていたのに、私は怖くて何も出来なかった。
先に離脱して、コメコシティで待っていたところに、気を失った侑ちゃんを背負った愛ちゃんが現れたときは、血の気が引いた。
もしバトルをして、また同じように侑ちゃんが怪我をしたら? そう思ったら、侑ちゃんがバトルに赴くこと自体が怖くなった。
だから、無理やりジム戦に行かせないような真似をして……挙げ句、一緒に戦っても足を引っ張ってばかりで……。
歩夢「私はきっと……最初からポケモントレーナーになんて向いてなくて……本当に何かの間違いで、図鑑を貰って……ポケモンを貰って……ここにいるのかなって……」
エマ「……」
歩夢「……そんな自分が悪いだけなのに……侑ちゃんに八つ当たりして……酷いこと言っちゃって……そんな自分が情けなくて……許せなくて……」
エマ「歩夢ちゃん……」
歩夢「侑ちゃんは優しいから……私が謝ったら、許してくれると思います……だけど、そうやって侑ちゃんの優しさに甘えてたら、結局私はずっと侑ちゃんのお荷物のままで……」
エマ「……侑ちゃんは歩夢ちゃんのこと、そんな風に思わないんじゃないかな」
歩夢「…………」
確かに侑ちゃんはそんなこと考えもしないと思う。だけど……。
歩夢「侑ちゃんはきっと、弱い私のことを守ろうとしちゃうから……私は……これ以上……侑ちゃんの負担に、なりたくない、です……」
きっと侑ちゃんは一人でいた方がトレーナーとして強くなれる気がする。
だから、足手まといな私が……これ以上、侑ちゃんの傍にいるべきじゃない。
歩夢「……ごめんなさい。やっぱり、こんなしょうもない話……聞かされても困っちゃいますよね……」
エマ「……しょうもなくなんかないよ。ありがとう、話してくれて」
歩夢「いえ……」
私は目を伏せる。
少しだけ空間が沈黙に包まれる。私から、何か言った方がいいかな……などと考えているとき、
「シャボー」「ラフット!!」
急に休憩室のドアを押し開けて、サスケとラビフットが部屋に入り込んできた。
歩夢「さ、サスケ!? ラビフットも……」
「シャボ」「ラビ」
サスケは器用に体をくねらせながら、いつもの定位置まで登り、私の肩の上で鎌首をもたげながら、頬ずりしてくる。
ラビフットもぴょんぴょんと飛び跳ねながら、私の膝の上に乗ってくる。
歩夢「サスケもラビフットも、もう元気いっぱいだね……よかった」
私は回復した2匹の姿を見て、心底安堵した。手持ちがあそこまで傷つくという経験も初めてだったから、尚更だ。
エマ「……歩夢ちゃん」
歩夢「?」
エマ「歩夢ちゃんは、これから……どうしたい?」
歩夢「どう……したい……。……私……どうしたいんだろう……」
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