エンド・オブ・ジャパンのようです
1- 20
245: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/07/26(水) 21:33:51.19 ID:1kNqHEos0
一つの“兵器”として見た場合、W号戦車は旧式もいいところだ。装甲厚、最高速、最大・有効射程、貫徹力、旋回性能………どれをとっても近現代の最新鋭戦車とは比べるべくもない。
対深海棲艦戦力として見れば尚の事で、カール自走臼砲や列車砲のような規格外でもない限り基本的には足止めすらろくに出来はしないだろう。

それでも、コレは“戦車”だ。単純比較では陸戦における最強兵器であり、王者。現代戦は対戦車火器も充実しているけれど、未だただの歩兵にとっては十分な脅威足り得る。

況してや、せいぜい角材や出刃包丁程度しか装備していない【暴徒】にとってその砲声は死の宣告に近い。

「ァ………ァ………』
『ゥ………グォ………」

W号がギリギリハマる程度の幅の路地、当然突入を測った“群れ”は密集する。
前衛の10人が飛来した砲弾に引き千切られ、中衛の10人は榴弾の着弾点周辺にいたばかりに肉の破片と化して宙をヒラヒラと舞う。後衛も内5人は爆風と砲弾の破片によって薙ぎ倒され、残る5人も吹き飛んできたかつての同胞の屍体や砕けたコンクリート塊の直撃を受けて虫の息で地面に転がっている。

「Panzer vor!!」

『キュッ」

障害が排除され、西住さんの指揮の下W号は再度動き出す。路地の出口付近で倒れていた生き残りが下半身を踏み潰されて微かに断末魔を上げていたけど、まぁ苦しみを長引かせない「介錯」として大目に見てほしいわね。右脇腹まるごとえぐり取られたような有様でそのまま放置されて生きてられるとは思い難いし。

それにしても。

(……結構、上手な発音だったわね)

Feuerはドイツ語で「発射」を、Panzer vorは同じく「戦車前進」を意味する言葉。

後者については、試合中実際に西住さんが発している様子がカメラで拾われている。その時の舌っ足らずな発音が可愛いったらなくて……コホンッ、ファンの間では言い慣れていない様子が初々しいということで人気の一因にもなった。
……その筈なのに、今口にした時の発音はとても流暢なものであるように感じられる。

前者に至っては、彼女が使ったことはただの一度もない。私が記憶する限り、黒森峰時代も含めて彼女の射撃命令は常に日本語で行われてきた。

そして、私の見間違いでなければ、砲撃を命じた時彼女の眼はほんの少し見開かれていたように思えた。

まるで、“何度も繰り返し練習していた単語を意図しないタイミングでうっかり出してしまった”とでも言いたげに。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
311Res/557.96 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice