21: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2022/04/24(日) 05:10:10.06 ID:bGZxlAIa0
『ごめっ……ごめんなさい……んっ……まゆは……まゆは!』
だって……まゆにはまだ、早すぎる。
まゆはまだ、十六歳なんだよ?
どれだけ聞きたくても許されない。聞きたいと願う事すら許されない。
だって俺は――可愛い一人娘を東京に送り出してくれたご両親から、この子を預かったんだから。
俺は――プロデューサーなんだから。
『だめっ……やめ……ん……ひゃん!』
けど今、俺は聞いている。甘く、胸を掻き立てる鳴き声を。
スマホで――遠く離れた場所から。
「まゆ……? まゆ……まゆ……まゆ?」
血の気が引き、目まいが襲う。
よろめく体を支えようと手を着くけど、着いた先が壁なのか床なのか、それすらもわからない。酩酊する視界は間断なく脳を揺さぶり、俺に壊れたラジオのようにただ一つの言葉を述べさせる。
まゆ、まゆ、まゆ。
大切な人、愛おしい存在、尊い女性。
だからこそ――触れてはいけなかった、穢してはいけなかった。
『ごめん……なさい。まゆは……今……プロデューサーさんじゃない人に……ああんっ!』
それが今、触れられている。自分の知らない誰かに。
こうして、穢されている。わざわざそれを俺に知らせようとする、ゲスな存在に。
『アハハハッ!』
笑い声が聞こえる。勝ち誇った声だ。幸せの育み方を知らずに、他人から奪って壊す事しかできない蛮族の笑いだ。
『アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! 聞こえてるかァい、プロデューサーちゃあん? アンタが大切に大切にしたまゆちゃんはいまぁ!』
「……止めろ」
止めてくれ、止めてくれ、止めてくれやめてくれヤメテクレヤメテクレヤメテクレ!
37Res/51.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20