20: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2022/04/24(日) 05:09:16.25 ID:bGZxlAIa0
自分のモノとは思えないしゃがれた声が出た。
返事は無い。ただ荒い息が聞こえる。未知の恐怖に怯える俺の吐息――だけではなかった。
耳に当ててるスマホからかすかに、だが確かに荒く――そして蠱惑的な息づかいが流れているのだ。
『プロ……デューサー……さん』
「まゆ! まゆ!?」
苦し気な声に思わず立ち上がる。スマホを握る手に力が入り、目がくらむ。
「どうしたまゆ!? 何かあったのか!? 今どこにいる!?」
行かないと。まゆを助けに行かないと。
ドアに向かおうとするけど、まるで水中のように体が重く、足がもつれて壁に手を突きながら出口を探す。
――見渡しても、ドアはどこにもない。
『ごめん……んっ……ごめん、なさい』
「まゆ? 大丈夫かまゆ? 何があったんだ?」
助けに行く事ができない今、自分に許されるのはただこのスマホを通じてまゆを話をするだけなのだと、誰に言われるでもなく一瞬で理解した。それに疑問を覚える事すらできない。
苦しむまゆの声に胸を引き裂かれる様な痛みを覚えながら、ただ一つ許された事に、すがるように、祈るようにまゆの安否を確認していると――
『まゆは……あんっ!』
「…………………………まゆ?」
甘い、声だった。
まゆはよく、俺に甘い声でささやいてくれる。
しかし、この甘さは知らない。
知ってはいけないモノ――許されないモノ。
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