3: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:13:35.99 ID:NHAPh+ft0
「今日は百合子に女房役やってもらおうと思ったんだけどなー」
と、昴さんに言われて断れる生物は存在するでしょうか。いえ、存在しないでしょう。
反語です。国語の授業で習いました。
4: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:14:14.45 ID:NHAPh+ft0
劇場の壁にぶつかるはずのボールが、そのまま消えてなくなりました。
場所的に、エントランスの大扉の少し横くらいでしょうか。いえ、細かい場所なんてどうでも良いですね。
何かオブジェクトがあってボールが見えなくなったわけではありません。私たちと劇場の壁の間に、視界を妨げるものはありませんでした。
5: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:14:52.53 ID:NHAPh+ft0
うわっ、なんだよビックリした。と昴さんは驚いてみせました。
私は必死に昴さんに説明しました。因果律の乱れ、超時空生物の侵攻、JKローリングがロバード・ガルブレイズ名で執筆した『私立探偵コーモラン・ストライク』シリーズ……。
しかし、いずれも昴さんの心には響かないようでした。しきりに首を傾げています。
しまった。東野圭吾あたりから始めるべきだったでしょうか。
6: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:15:57.30 ID:NHAPh+ft0
もしもし杏奈ちゃん、今どこにいる? 事務室でゲームしてたの、ゲーム中にごめんね。でもちょうど良かった。ちょっとエントランスに来て欲しいの。なんでって、詳しく話すと長くなるんだけど、エントランスの壁にぶつかった昴さんのボールが急に消えちゃったの! これはきっと私たちの劇場と、ウェザリングワールドが繋がって、私たちは魔法界から招待状を……あぁ、待って待って切らないで! お願い杏奈ちゃん。とにかくエントランスに来てもらえる? うん、別にここでゲームやってても大丈夫だから、あぁでも少しは私と一緒にこの世界の謎を解き明かしてくれると嬉しいかな……うん、うんセーブしてからで良いよ。トロフィー集め中だから時間がかかるかも? うん、うん、分かった。じゃあ待ってるね。
ぽちっ。よし、なんとか杏奈ちゃんは来てくれそう。
私の横では昴さんが
7: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:17:05.36 ID:NHAPh+ft0
「事件が私を呼んでいます。真壁瑞希です」
「ペイントのオイルをエイジングしてる間だけなら、アカンパニーしますよ」
「あれ、杏奈は?」
「あのゲーム、ボス倒すまでオートセーブにならないから、結構遅くなるかも……」
8: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:19:09.76 ID:NHAPh+ft0
「ロコも、エントランスのウォールでグラフィティしていたら、ちょっとルックアサイドした隙に、一瞬でクリアランスされていたことがあります」
「グラフィティってなんだ?」
「スプレーでウォールにペインティングすることですね」
9: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:20:03.96 ID:NHAPh+ft0
むむむ……と手詰まりの様子の御三方。
ふふっ、ここはこのリリー警部の助言が必要でしょうか。
チラッ、チラッ。
目で訴えるも誰にも気付いてもらえません。仕方ないので声を張ることにします。
10: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:20:44.52 ID:NHAPh+ft0
「え、オレ? 何すれば良いの?」
「ボールをウォールに向かってスロウすれば良いんじゃないですか?」
「そのボールが無くなったんだろ、何を投げれば良いんだよ」
再び私に皆さんの目が集まります。どうにも、注目を集めようとした時以外のタイミングで注目が集まるのは苦手です。しどろもどろになってしまいます。
11: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:21:36.20 ID:NHAPh+ft0
「それでは、物を投げるのではなく、グラフィティを再現してみては如何でしょう」
「わぁ、倫理観がイーストエンド……」
「まぁ、琴葉と律子にバレなきゃなんとかなるだろ」
「うーん、今日のロコのモチベーションはオイルペインティングだったのですが……まぁ、スプレーを持ってきますね。……あれ?」
12: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:22:14.55 ID:NHAPh+ft0
「こんなところに、ウォールなんてありましたっけ……?」
エントランスから入って右手側、ステージの脇を抜けて事務室へ向かう廊下。
そこに、私たちが良く知る廊下はありませんでした。
13: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:23:15.94 ID:NHAPh+ft0
「まずい」
咄嗟にそう思いました。口にも出ていました。
すぐに左側の廊下も確認します。同じように壁で塞がっていました。
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