ドラ「のび太くんが」のび「ドラえもんが」「「消えた!!?」」
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6: ◆86inwKqtElvs[saga]
2022/02/10(木) 21:31:15.64 ID:7TpWqrtf0

「………?」

 のび太が目を覚ました時、壁や天井全体がほんのりと光る不思議な部屋の中のベッドに眠っていた。窓はなく、家具もベッドぐらいしかない。唯一ある扉に向かって立ち上がろうとした時、

『目を覚ましましたか?』

 突然、どこからか声が聞こえてきた。水のように澄んだ、女性の声だった。

『すぐに向かいますね。少しお待ちください』

 本当にすぐに来た。
 銀髪に紫の瞳という、アニメやゲームのキャラクターのような整った顔立ちの女性だった。年齢は16,7歳ぐらいのように見える。

「お身体は大丈夫ですか?」

「えっと。ここ、どこですか?」

 状況の把握がついていかず、名乗ったりするよりもまず一番の疑問が口を突いて出た。
 女性は答える。

「ここは亜空間内に建設された基地です。亜空間というのは、普段あなたたちが住んでいる世界の次元と位相のずれた……そうですね、本の中のページがずれた世界と理解してください。亜空間を移動することによって、過去や未来に行くことも可能です」

 ただ、欲しい答えとは若干ずれていた。タイムマシンを使った冒険を何度も経験しているのび太にとって、今更亜空間の説明は必要なかった。
 しかし、女性が誠実に答えようとしていることはわかった。微笑みも優しく、悪い人ではないんだろうとのび太は楽観的に考える。

「えっと、あなたはだれなんですか?」

「この基地を拠点としてある活動を行っている者です。その中には、時空乱流……時の乱れですね、そういったものに巻き込まれた人の救助活動もあります」

「うーんと、えっと。つまり、タイムパトロールの人なんですか?」

「…………」 

 微笑はそのままに、女性は固まった。何かまずいことを言ったのかなとのび太は考えるが、よくわからない。

「あなたは21世紀の初め頃の人ではないのですか? 持ち物からそう判断させていただいたのですが」

「あ、はい。ボクはそうなんですけど。あ、あの持ち物は」

「すみません、危険物がないか検めさせていただきました。後ほど返却いたしますので」

 女性は後ろを向き、そのまま部屋を出ようとする。のび太は慌てて呼び止めた。

「す、すみません! あの、ボクは? あと、お姉さんの名前は?」

 女性は一瞬の間を置いた後、後者の質問のみに答える。

「私はA。アルファベットのAです。呼びにくければアルトとお呼びください」

 そう言って、アルトはのび太を振り返ることなく出て行った。

    ЖЖЖ

「……申し訳ありません。身元の確認を本人からとしたのが失敗でした」

 アルトはサブリーダーに向かって頭を下げる。

「キミは何も失敗していないし、謝るようなこともしていないよ」

 サブリーダーは柔らかい声でアルトの謝罪を流す。それでもアルトは黙って頭を下げていた。

「しかし、野比のび太君だったか。そういえば、キミは日本語は話せても、文字の読み書きは出来ないんだったね」

「地球の日本語は得意でなくて……」

「それだけ話せたら十分だよ。今は翻訳こんにゃくで言語学者は寂しい思いをしているからね。コミュニケーションとしては素晴らしい発明だが、相手の文化を知るにはやはりまず初めに言語を学ぶべきだよ」

 そこでサブリーダーの言葉が止まった。彼の話が脱線するのはよくあることで、だからアルトは黙る。

「そうだね。相手を知るためにはまず自分を紹介しないといけないか。ボク達は野比のび太君やドラえもんというロボットに危害を加えたいわけではないからね」

 サブリーダーは立ち上がる。

「野比のび太君に会いに行こう。彼にとっては時の裂け目にハマってしまったのは、何も理解できずに事態が終わるよりはずっといい事だったかもしれない」

 アルトも当然、サブリーダーについていく。



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