82: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:00:02.48 ID:86/EQe0g0
「私が……アイドル?」
それは、震えるような想像だ。
わたしもあんな風に、いつか見た目屋外ディスプレイの光景のように、光あふれる場所で咲けるのだろうか。
思い悩む私に一週間後、朋花のニュースが飛び込んできた。
「ほら凛、いつかのJ組の聖母サマだけどさ」
83: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:00:43.81 ID:86/EQe0g0
いつかの朋花の家で、私が応募には写真が必要だったことに同意した時、朋花が少し嬉しそうだった理由がわかった。
あの時、朋花はやはり嬉しかったのだ。
私がちゃんと要項を読んでいたから……アイドルになる方法をちゃんと読んでいたからだ……
そうだ、私もアイドルになる方法を知りたがっていた。
それはとりもなおさず――
84: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:01:17.26 ID:86/EQe0g0
私もアイドルになりたかったんだ……
85: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:02:04.58 ID:86/EQe0g0
後悔しても、もう遅い。
39プロジェクトは終了し、アイドル候補生の募集は終わってしまっているのだから。
今更ながら、私はあの時に朋花と一緒に、朋花に誘われた募集に応募していれば良かったと悔いた。
なくしてしまって、人は初めて手にしていた物の大きさに気づく。
怖じ気付いて逃げ出したその夢は、思い返せば私が初めて興奮するような、なりたい姿だった。
86: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:02:46.50 ID:86/EQe0g0
遅ればせながら、自分もアイドルになりたかったのだと気づいた。
朋花も私が、アイドルになるのを待っているとわかった。
そんな私に……というかうちの店に、またしても私の運命を変える来客があった。
そう、運命はいつも花を求めてやって来るのだ。
87: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:03:21.54 ID:86/EQe0g0
「あの……」
「いらっしゃ……」
来客に挨拶しようとして、私は絶句した。
うちの店はお父さんが「バーベナも店頭に飾れるぞ」と自慢するほどに入り口が高い。
88: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:04:02.36 ID:86/EQe0g0
「えと、ご贈用答ですか?」
「……」
「あの……?」
「……失礼ですが、アイドルにご興味は?」
「はあ?」
89: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:04:43.63 ID:86/EQe0g0
それから半年後――
90: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:05:22.80 ID:86/EQe0g0
「あれ? どこ行くんだよ、朋花」
「もうすぐ本番ですよ、朋花さん」
既にステージ衣装を身にまとった朋花に、永吉昴と七尾百合子が声をかける。
「わかっていますよ〜。ただちょっと、どうしてもステージに上がる前にお目にかかって用事を済ませたい方がおられまして〜」
「誰のことですか?」
91: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:05:57.11 ID:86/EQe0g0
「おーい、凛。なんかお客さん来てるんだってさ」
「765プロの新人アイドルの娘らしいんだけど、知り合い?」
控え室で、ユニット仲間の神谷奈緒と北条加蓮に声をかけられ、笑みを浮かべて立ち上がる。
「来たね。待ってたよ……」
92: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:06:33.34 ID:86/EQe0g0
「口げんかですよ〜」
「口げんかだよ」
「ええええええっっっ!?」×4
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