74: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:54:07.09 ID:86/EQe0g0
「プリントアウトはどうするの?」
「私がコンビニでやりますよ〜」
「えっ?」
「? なんですか〜?」
「朋花、コンビニとか行くんだ」
75: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:54:43.26 ID:86/EQe0g0
「この茶室は、燕庵を模した良い茶室なので、私も凛さんが空気に見合うと思っていたので残念ですが、その景色はまた次の機会にいたしましょう〜」
えんなん?
と、朋花にまた聞こうと思ったがやめておいた。
それに私が茶室の風景に合うはずがない。
朋花だから、この庭に負けないで咲いていられるのだ。
76: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:55:31.62 ID:86/EQe0g0
帰り際、朋花が門まで見送ってくれた。
朋花はなにやら紙でくるんでそのくるんだ部分を綺麗な紐で結んだ物を取り出した。
私は朋花からその紙包みを受け取る。
そうか、これが例のお茶菓子か。
77: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:56:14.31 ID:86/EQe0g0
私は夕食の後、お父さんやお母さんにそれを出して見せた。
「チョコレート好きの凛が、和菓子とは珍しいな」
「今日、友達の家でもらって。せっかくだから」
「凛……これは……」
お母さんが、干菓子の入っていた紙包みのその和紙を丁寧に広げる。
78: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:56:57.45 ID:86/EQe0g0
部屋に帰ると私は、スマホで紙に書いてあった百人一首を検索してみる。
「待ち出るつる……か……な、と。なになに? こ、恋の歌!?」
あやうくベッドから落ちそうになりながら、私はスマホの画面に並んだ訳文を読む。
「今すぐに参ります、とあなたが言ったばかりに九月の長夜を眠らずに待っているうちに、夜明けの月である有明の月が出てきてしいました……」
79: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:57:59.14 ID:86/EQe0g0
待っている。来てくれないと、寂しいよ……と。
80: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:58:37.31 ID:86/EQe0g0
私は朋花と比して、自分のことを「自分なんて」と思いがちだが、朋花は違う。私をライバルと認めてくれている。出会った最初の頃からそう言っていた。
ライバルということは、同じぐらいすごいということだ。
そのライバルが、私を待ってると言ってくれている。
同時に友達して、寂しいとも言ってくれている。
81: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:59:18.13 ID:86/EQe0g0
でも……
82: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:00:02.48 ID:86/EQe0g0
「私が……アイドル?」
それは、震えるような想像だ。
わたしもあんな風に、いつか見た目屋外ディスプレイの光景のように、光あふれる場所で咲けるのだろうか。
思い悩む私に一週間後、朋花のニュースが飛び込んできた。
「ほら凛、いつかのJ組の聖母サマだけどさ」
83: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:00:43.81 ID:86/EQe0g0
いつかの朋花の家で、私が応募には写真が必要だったことに同意した時、朋花が少し嬉しそうだった理由がわかった。
あの時、朋花はやはり嬉しかったのだ。
私がちゃんと要項を読んでいたから……アイドルになる方法をちゃんと読んでいたからだ……
そうだ、私もアイドルになる方法を知りたがっていた。
それはとりもなおさず――
84: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:01:17.26 ID:86/EQe0g0
私もアイドルになりたかったんだ……
101Res/65.97 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20