79: ◆QlCglYLW8I[saga]
2021/10/02(土) 19:40:47.54 ID:gfGIXtqkO
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牧場を出た後、あたしたちは海ほたるに寄ったぐらいで、ほぼ真っすぐにうちに帰った。
「ラブホに行かない?」と誘ったけど、「それはまたでいい」と断られた。俊太郎にしては珍しいけど、そういう気分でないのはよく理解できる。
身体を使って繋がりを確認したいなんて……不安なのは、あたしもかもしれない。
車から降りる時、俊太郎が言った。
「今日はありがとう。……とても、幸せだった」
「うん。来週から、頑張ってね」
「ありがと。……今度、由梨花の家に行っていい?」
「え、うち?」
俊太郎が、小さく首を縦に振った。
「一度、見ておきたくって」
「休日に、だよね?パパとママ、両方揃ってた方がいい?」
正直、ここで両親に挨拶しようというのは意外だった。もちろん、2人には俊太郎のことは話している。今のところ、好印象は持ってもらえている、はずだ。
ただ、将来俊太郎とどうなるかなんて、まだ分からない。俊太郎と結婚というのは、考えたことがないわけじゃないけど、そうだとしてもずっと先のことのはずだ。今のタイミングで両親に紹介するのは、少し早い気がする。
「……それは気にしないよ。ご両親に会えればそれはそれで構わないけど」
どういうつもりだろう?さすがに、親がいるのにいちゃつくほど、あたしも俊太郎も常識がない人間じゃない。
「一応、帰ったら予定聞いてみる。じゃ、またね」
「うん……また」
例の悪夢のこと、気にしているのかな。どこか引っかかりなら、あたしは車のハンドルを切った。
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