77: ◆QlCglYLW8I[saga]
2021/10/02(土) 19:39:39.66 ID:gfGIXtqkO
……と、その時。
俊太郎の表情が、急に崩れた。
「う、ううっ……」
「ど、どうしたの?」
彼は涙目であたしを見ると、強く唇を噛む。精神的に参っていたから、ほっとして感情が緩んでしまったのだろうか。
「由梨花っ……」
俊太郎が何かを言いかけて、やめた。間違いない、何かを隠している。
「辛いことがあったら、言って?少しは楽になるかも」
「……違う、そうじゃないんだ……ただ……」
「ただ?」
俊太郎が口を開きかけて、閉じた。頰に涙が伝っている。
「……今は、言えない。言えないけど……」
あたしは、少しイラっとした。隠し事をされたままなのは、それがどんな理由であれ、いい気分じゃない。「ちゃんと言ってよ!」と喉まで出かけた。
……その刹那、あたしの身体は強く抱きしめられた。嗚咽が、耳元で聞こえる。
「ちょ、ちょっと……」
周りの親や子供たちの目が、あたしたちに集まったのが分かった。正直、これは気恥ずかしい。
でも、俊太郎は泣くのをやめなかった。身体を離そうとするのをやめ、あたしはそっと彼の頭を撫でる。甘えさせてばかりじゃダメだと、分かっているのにな。
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