76: ◆QlCglYLW8I[saga]
2021/10/02(土) 19:39:01.26 ID:gfGIXtqkO
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羊やアルパカと戯れているうちに、すぐにお昼になった。絶叫マシーンや派手なショーがなくても、意外と時間は早く流れる。台風一過、空が透き通るように青い。
はじめは所在なげにしていた俊太郎も、あたしに連れられて動物たちに触っているうちに、まんざらでもない様子になった。俊太郎は、何か難しいゼミに入っている、らしい。その準備とかで、気が張り詰めている所はあるのだろう。今の彼に必要なのは、こういうゆっくりとした時間なのだ。
「ここでいっか」
あたしは広い芝生の広場を見つけると、リュックからシートを取り出した。
「え」
「ほら、座って。お弁当、用意してあるよ」
俊太郎が、少し目を見開いた。
「まさか、由梨花が作ったの?」
「そ。俊太郎んちに行く時、ご飯は外か俊太郎が作るかだったじゃない。たまには、ね?」
「料理、あまりしないかと思ってた」
「そんなことないよ?ただ、機会がなかっただけ」
あたしは、大きい弁当箱を置いた。中身はおにぎりとウインナー、そして卵焼きという定番だ。そこに、小さなハンバーグとポテサラ。
作るのには、1時間ぐらいかかった。ママからは「手伝おうか」と言われたけど、冷凍食品なしで全部手作りしたかったのだ。
結果、卵焼きは少し焦げたし、ハンバーグはちょっと形崩れした。それでも、やってみることが大事なのだ。
俊太郎が、少し笑った。笑い顔を見るのは、かなり久しぶりな気がする。
「まるで、遠足みたいだな」
「そういうこと。大人の遠足も、悪くないでしょ?」
俊太郎はハンバーグを口にすると、「うん、美味しい」とつぶやいた。あたしもつられて笑顔になる。
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